(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135905
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】自律移動体制御システム、自律移動体制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G05D 1/43 20240101AFI20240927BHJP
【FI】
G05D1/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046808
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】山崎 元明
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA02
5H301BB05
5H301BB10
5H301BB14
5H301CC03
5H301CC06
5H301GG08
5H301GG11
5H301GG16
5H301QQ06
(57)【要約】
【課題】自律移動体が自律移動不可の状態で停止した際の位置が的確に把握されるようにする。
【解決手段】自律的に移動可能な自律移動モードと、自律的移動が停止されるとともに手動で移動可能な非自律移動モードと、を設定可能な自律移動体を制御する、自律移動体制御システムであって、前記自律移動モードから前記非自律移動モードに設定が変更されたときに前記自律移動体が推定していた自己位置を、自律移動停止位置として記憶する停止位置記憶部を備えて自律移動体制御システムを構成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律的に移動可能な自律移動モードと、自律的移動が停止されるとともに手動で移動可能な非自律移動モードと、を設定可能な自律移動体を制御する、自律移動体制御システムであって、
前記自律移動モードから前記非自律移動モードに設定が変更されたときに前記自律移動体が推定していた自己位置を、自律移動停止位置として記憶する停止位置記憶部
を備える自律移動体制御システム。
【請求項2】
前記停止位置記憶部が記憶する自律移動停止位置を障害物の存在する位置として報知することが報知装置にて行われるように制御する報知制御部をさらに備える
請求項1に記載の自律移動体制御システム。
【請求項3】
前記停止位置記憶部が記憶する自律移動停止位置に基づいて、所定の目的に応じた移動のための経路を変更する経路変更部をさらに備える
請求項1または2に記載の自律移動体制御システム。
【請求項4】
前記非自律移動モードが設定されているときの自律移動体の位置を検出する位置検出部と、
前記自律移動体が前記非自律移動モードから前記自律移動モードに復帰したことに応じて、前記位置検出部が検出した位置を前記自律移動体の現在位置として更新する位置更新部とをさらに備える
請求項1または2に記載の自律移動体制御システム。
【請求項5】
前記位置検出部は、自律移動体の移動可能範囲において自律移動体を検出するように設けられるセンサの出力に基づいて、前記移動可能範囲における自律移動体の位置を検出する
請求項4に記載の自律移動体制御システム。
【請求項6】
前記位置検出部は、前記自律移動停止位置と、自律移動体において当該自律移動体の移動方向と移動距離とを検出可能に設けられたセンサの出力とに基づいて自律移動体の位置を検出する
請求項4に記載の自律移動体制御システム。
【請求項7】
自律的に移動可能な自律移動モードと、自律的移動が停止されるとともに手動で移動可能な非自律移動モードと、を設定可能な自律移動体を制御する、自律移動体制御システムにおける自律移動体制御方法であって、
停止位置記憶部が、前記自律移動モードから前記非自律移動モードに設定が変更されたときに前記自律移動体が推定していた自己位置を、自律移動停止位置として記憶するステップ
を含む自律移動体制御方法。
【請求項8】
自律的に移動可能な自律移動モードと、自律的移動が停止されるとともに手動で移動可能な非自律移動モードと、を設定可能な自律移動体を制御する、自律移動体制御システムが備えるコンピュータを、
前記自律移動モードから前記非自律移動モードに設定が変更されたときに前記自律移動体が推定していた自己位置を、自律移動停止位置として記憶する停止位置記憶部
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律移動体制御システム、自律移動体制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットが、非常停止信号を受信したとき、または自己位置を検出するための自己位置検出信号が受信されなくなったときに、自己を非常停止させるようにした技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば上記の非常停止等のように、ロボット等の自律移動体の自律的な移動を強制的に停止させた際には、自律移動体が停止した位置が自律移動体を制御するシステムにおいて的確に把握されることが好ましい。
【0005】
そこで、本発明は上記した課題を考慮して、自律移動体が自律移動不可の状態で停止した際の位置が的確に把握されるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決する本発明の一態様は、自律的に移動可能な自律移動モードと、自律的移動が停止されるとともに手動で移動可能な非自律移動モードと、を設定可能な自律移動体を制御する、自律移動体制御システムであって、前記自律移動モードから前記非自律移動モードに設定が変更されたときに前記自律移動体が推定していた自己位置を、自律移動停止位置として記憶する停止位置記憶部を備える自律移動体制御システムである。
【0007】
本発明の一態様は、自律的に移動可能な自律移動モードと、自律的移動が停止されるとともに手動で移動可能な非自律移動モードと、を設定可能な自律移動体を制御する、自律移動体制御システムにおける自律移動体制御方法であって、停止位置記憶部が、前記自律移動モードから前記非自律移動モードに設定が変更されたときに前記自律移動体が推定していた自己位置を、自律移動停止位置として記憶するステップを含む自律移動体制御方法である。
【0008】
自律的に移動可能な自律移動モードと、自律的移動が停止されるとともに手動で移動可能な非自律移動モードと、を設定可能な自律移動体を制御する、自律移動体制御システムが備えるコンピュータを、前記自律移動モードから前記非自律移動モードに設定が変更されたときに前記自律移動体が推定していた自己位置を、自律移動停止位置として記憶する停止位置記憶部として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、自律移動体が自律移動不可の状態で停止した際の位置が的確に把握されるようになるとの効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態における自律移動体制御システムの全体的な構成例を示す図である。
【
図2】本実施形態における自律移動体の機能構成例を示す図である。
【
図3】本実施形態における自律移動体制御装置の機能構成例を示す図である。
【
図4】本実施形態における自律移動体制御システムが実行する処理手順例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本実施形態における自律移動体制御システムの全体的な構成例を示している。同図の自律移動体制御システムは、建物BL内にて1以上の自律移動体100が移動するようにされている環境に対応して、自律移動体100の移動を制御するようにされる。
【0012】
同図においては、建物BL内に3つの自律移動体100が存在している状態が示されているが、建物BL内に存在する自律移動体100の数については特に限定されない。
【0013】
なお、建物BLにおいては、例えば部屋の仕切り、通路、設置物等が存在する環境であってよいが、同図ではこのような環境を省略して示している。
【0014】
自律移動体100は、建物BLにおいて、自律運転により移動することが可能とされている。
本実施形態の自律移動体100の用途は特に限定されない。自律移動体100は、例えば物資を運搬する自律移動車両や配送ロボット、人を案内する案内ロボット、監視ロボット等をあげることができる。
【0015】
自律移動体100の自律運転を実現する技術については特に限定されないが、例えば自律運転のために周囲形状を把握する技術としてはLiDAR(Light Detection and Ranging)を用いてもよい。LiDARは、パルス状のレーザ光を周囲に照射してから反射光が受光されるまでの時間に基づいて距離を計測する技術である。自律移動体100では、LiDARによって周囲にある物体との距離を計測して、周囲環境の形状を示す周囲環境データを生成し、自己位置を推定する。
【0016】
本実施形態の自律移動体制御システムは、自律移動体制御装置200を備える。自律移動体制御装置200は、自律移動体100と通信可能に接続される。
自律移動体制御装置200は、必要に応じて、制御対象の自律移動体100の移動、停止を制御する。また、自律移動体制御装置200は、自律移動体100の目的地までの移動経路を設定し、設定した移動経路による移動を自律移動体100に指示してもよく、さらには制御対象の自律移動体100の稼働履歴、移動軌跡等を記憶してもよい。
【0017】
なお、自律移動体制御装置200は、例えば建物BLの外部のクラウドに設けられるサーバとされ、ネットワークを介して自律移動体100と接続されてもよい。また、自律移動体制御装置200は、例えば建物BLの内部に設置されるサーバ上に構築され、建物BL内部のネットワークを介して自律移動体100と通信可能に接続されてもよい。
【0018】
また、本実施形態の自律移動体制御システムは、位置検出装置300とセンサ400とを備える。位置検出装置300は、センサ400の出力に基づいて建物BLにおける自律移動体100の位置を検出する。
【0019】
センサ400は、建物BLにおける所定の位置に設けられ、建物BLに存在する自律移動体を検出するセンサである。建物BLにおいて設けられるセンサ400の数は特に限定されない。
【0020】
センサ400は、例えばカメラであってよい。カメラとしてのセンサ400は、それぞれ建物BLにおいてそれぞれ異なる所定の範囲を撮像するように設けられる。或る複数のカメラは他のカメラと撮像範囲の一部が重複してよい。
【0021】
位置検出装置300は、カメラとしてのセンサ400のそれぞれが撮像を行って出力した撮像画像を取得する。位置検出装置300は、取得した撮像画像の建物BLにおける撮像範囲と、撮像画像における自律移動体100の位置とに基づいて、建物BLにおける自律移動体の位置を検出してよい。
【0022】
また、センサ400の種別はカメラ以外であってもよい。例えば、センサ400は、建物BLの所定位置ごとに設けられるタグリーダであってもよい。
この場合のタグリーダとしてのセンサ400は、自律移動体100のそれぞれに備えられたICタグと無線通信を行う。ICタグには、対応の自律移動体100を示す自律移動体IDが記憶されてよい。センサ400は、自律移動体100が備えるICタグとの通信により、通信先のICタグに記憶された自律移動体IDを取得する。
この場合の位置検出装置300は、センサ400から取得した自律移動体IDを、取得元のセンサ400の位置を示す位置情報と対応付けることで、自律移動体100の位置を検出することができる。
【0023】
位置検出装置300は、検出した自律移動体100の位置を示す位置情報を自律移動体制御装置200に送信する。
本実施形態において、位置検出装置300が出力する位置情報は、自律移動体100自体が自己の位置を検出しないものである場合には、自律移動体制御装置200が自律移動体100の移動制御を行うにあたって自律移動体100の位置を認識するのに用いられる。
また、後述するように、位置検出装置300が出力する位置情報は、自律移動体100が非自律移動モードから自律移動モードに復帰する際に、当該自律移動体100の現在位置を更新する際にも利用される。
【0024】
本実施形態の自律移動体100は、自律移動モードと非自律移動モードとの間でモードを切り替えることが可能とされている。
自律移動モードは、自律移動体100が自律運転により移動するようにされたモードである。
非自律移動モードは、自律移動体100が自律運転を行わずに停止するようにされたモードである。非自律移動モードの自律移動体100は、電源がシャットダウンされて完全に動作を停止しているのではなく、通電状態にあって情報処理機能、通信機能等のように内部のコンピュータの処理は実行可能である。また、非自律移動モードの自律移動体100は、例えば自律移動体100の移動機構部におけるモータ等の原動機の動力が駆動輪等から切り離されて伝達されない状態(動力切断状態)となる。動力切断状態では、駆動輪が自由回転できることから、例えば人が自律移動体100を引いたり押したりすることで、手動で移動させることが可能である。
【0025】
自律移動モードから非自律移動モードへの切り替えは、自律移動体100の所定位置にて備えられる物理的なボタン操作子(自律移動停止ボタン)の操作に応じて行われる。
なお、自律移動停止ボタンは、例えば自律移動体100の表示部において画像として表示されるボタンであってもよい。
また、非自律移動モードから自律移動モードへの切り替え(復帰)は、自律移動停止ボタンとは異なる所定の操作を自律移動体100に対して行うことで可能とされてもよいし、再度、自律移動停止ボタンを操作することで可能なようにされてもよい。
【0026】
自律移動モードの自律移動体100を非自律移動モードに切り替えるための自律移動停止ボタンの操作は、例えば自律移動体100に何らかのトラブルが生じた場合や自律移動体100が当初の想定と異なる方向に移動を開始した場合など、自律移動体100の自律運転による移動を緊急に停止させたい場合に行われる。
【0027】
ここで、非自律移動モードにより停止している自律移動体100は、建物BLにおいて1つの障害物となり得る。このため、自律移動体制御装置200は、建物BLにて非自律移動モードにより停止している自律移動体100を考慮して、他の自律移動体100の自律移動を制御することが求められる。
【0028】
そこで、本実施形態の自律移動体100は、自律移動モードから非自律移動モードに切り替わって停止したタイミングで、自己が測位していた現在位置を示す位置情報を、自律移動体制御装置200に送信するようにされる。
自律移動体制御装置200は、自律移動体100から送信された位置情報を記憶する。自律移動体制御装置200は、記憶した位置情報を利用して、例えば同じ建物BLに存在する他の自律移動モードの自律移動体100が非自律移動モードで停止中の自律移動体100の位置(自律移動停止位置)を回避して目的地に到達できるように制御してよい。具体的には、自律移動体制御装置200は、例えば、他の自律移動モードの自律移動体100の現在位置及び目的地と、記憶した自律移動停止位置とを利用して、他の自律移動モードの自律移動体100が自律移動停止位置を回避して目的地に到達するまでの経路を計算し、計算した経路を他の自律移動モードの自律移動体100に送信する。他の自律移動モードの自律移動体100は、送信された経路により目的地に移動するようにされる。この結果、他の自律移動モードの自律移動体100は、自律移動停止位置を回避して適切に目的地にまで移動することができる。
【0029】
自律移動停止位置を回避した経路の計算は、他の自律移動体100が実行してもよい。この場合、自律移動体制御装置200は、非自律移動モードに切り替えられた自律移動体100から送信された位置情報を、他の自律移動モードの自律移動体100に送信する。他の自律移動モードの自律移動体100は、例えば、自己が記憶する建物BLのマップを利用して、受信した位置情報が示す自律移動停止位置を回避して現在位置から目的地に到達する経路を計算し、計算した経路を移動する。
【0030】
また、本実施形態の自律移動体制御装置200は、非自律移動モードに切り替えられた自律移動体100から送信された位置情報を利用して、例えば報知装置500に対して、建物BLにて非自律移動モードで停止中の状態の自律移動体100の自律移動停止位置を示す報知情報を送信してよい。報知装置500は、受信した報知情報に基づいて、建物BLにおける人や建物BL内の設備に、非自律移動モードで停止中の自律移動体100が存在することを報知してよい。報知の具体例として、報知装置500は、表示部にて建物BLのマップ上で自律移動停止位置を示す表示を行ってよい。
報知装置500は、例えば建物BLに存在する人が所持するスマートフォン、タブレット端末、ウェアラブル端末、パーソナルコンピュータ等であってよい。また報知装置500は、例えば建物BL内の中央監視設備、館内表示設備(デジタルサイネージ)等であってよい。
【0031】
また、非自律移動モードに切り替えられた自律移動体100が停止している位置(自律移動停止位置)が、建物BLにおいて定められた避難経路上に存在してしまう状態となる場合がある。そこで、本実施形態の自律移動体制御装置200は、自律移動体100の自律移動停止位置が、建物BLにおいて定められた避難経路上に存在したと判定した場合には、自律移動停止位置を回避した避難経路(代替避難経路)を計算する。
自律移動体制御装置200は、例えば計算した代替避難経路の情報を報知装置に送信してよい。報知装置500は、受信した代替避難経路の情報を利用して、建物BLにおける避難経路が代替避難経路に変更されたことを報知してよい。
【0032】
また、非自律移動モードに切り替えられて停止した自律移動体100は、動力切断状態にあることから、人が手動で移動させることができる。例えば、自律移動体100の管理担当者は、自律移動体100について、非自律移動モードに切り替えたうえで、建物BL内の他の自律移動体100や人の通行の妨げとならないような場所に移動させることができる。
【0033】
また、管理担当者が、非自律移動モードの自律移動体100を手動で移動させたうえで、自律移動モードに復帰させる操作を行う場合もある。この場合、自律移動体100は、手動による移動後の位置から自律運転を開始することになる。自律運転を開始するにあたり、自律移動体100は、自己の現在位置を把握していることが求められる。
しかしながら、自律移動体100は、非自律移動モードでは自律運転に対応する処理については停止していることから、手動で移動されることに応じて変化する自己の現在位置を取得していない。このときに、自律移動体100が保持(記憶)している最新の現在位置は、非自律移動モードに切り替えられたタイミングで取得した現在位置となっている。この場合、自律移動モードに復帰した自律移動体100は、移動前の現在位置を起点として移動を開始することになり、自律運転に支障をきたす可能性がある。
そこで、本実施形態においては、非自律移動モードから自律移動モードに復帰した自律移動体100が、位置検出装置300が検出した当該自律移動体100の現在位置により自己が保持する現在位置を更新したうえで、自律運転を再開するようにされる。
【0034】
図2は、自律移動体100の機能構成例を示している。同図の自律移動体100は、通信部101、センサ部102、移動機構部103、ユーザインターフェース部104、自律移動停止ボタン105、制御部106、及び記憶部107を備える。
【0035】
通信部101は、自律移動体制御装置200と通信を実行する。
【0036】
センサ部102は、障害物を検知したり、自己位置を推定したりするための情報を検知するものである。本実施形態では、自律運転のために周囲形状を把握する技術としてLiDAR(Light Detection and Ranging)を用いた。つまり、センサ部102は、レーザ光の照射部と、反射されたレーザ光を受光する受光部と、を備える。パルス状のレーザ光を照射部で周囲に照射してから、反射光が受光部で受光されるまでの時間に基づいて距離を計測することにより周囲環境の形状を示す周囲環境データを生成し、自己位置を推定できるように構成されている。したがって、本実施形態では、このセンサ部102を用いてLiDARにより生成される周囲環境データから周囲の物体の距離が測定可能とされている。
なお、センサ部102は、例えばGPS(Global Positioning System)等に対応するデバイスを備えることで自己位置を測定可能としてもよい。
【0037】
移動機構部103は、自律移動体100の移動を可能とする駆動機構である。移動機構部103は、入力された情報に基づき、自律移動体100を前進、または後進の他、左右への方向転換も可能に構成されている。
【0038】
ユーザインターフェース部104は、ユーザが操作を行うことで情報を入力可能な入力デバイスが含まれている。入力デバイスは、例えば押下可能なボタンの他、ユーザの音声を集音するマイクロフォンであってもよい。なお、ユーザインターフェース部104は、さらに音や音声を発することが可能なスピーカ、光や映像を表示可能な表示部、などのユーザに対して情報を報知可能な報知手段を有していてもよい。また、入力デバイスとしては、タブレット・スマートフォン・パーソナルコンピュータなどの画面上で動作される操作画面(アプリケーション画面・ブラウザ画面等)であってよい。
【0039】
自律移動停止ボタン105は、自律移動体100を自律移動モードから非自律移動モードに切り替える操作が行われるボタンである。なお、自律移動停止ボタン105は、自律移動体100を非自律移動モードから自律モードに切り替える(復帰させる)操作にも用いられてよい。
【0040】
制御部106は、自律移動体100における各種の制御を実行する。例えば制御部106は、入力デバイスに対するユーザからの入力に応じた動作をするように移動機構部103を制御する他、ユーザインターフェース部104の入力デバイスとしてマイクロフォンを用いた場合にあっては、マイクロフォンにより集音された音声について音声認識を行い、自律移動体100が認識した結果に応答した動作を行うように制御する。また制御部106は、入力デバイスに対するユーザからの入力に応じた出力として、ユーザインターフェース部104のスピーカから音声を出力したり、ユーザインターフェース部104の表示部に情報を表示したりしてもよい。制御部106としての機能は、自律移動体100がハードウェアとして備えるCPU(Central Processing Unit)がプログラムを実行することにより実現される。
【0041】
記憶部107は、自律移動体100に対応する各種の情報を記憶する。
【0042】
図3は、自律移動体制御装置200の機能構成例を示している。同図の自律移動体制御装置200は、通信部201、制御部202、及び記憶部203を備える。
通信部201は、自律移動体100、位置検出装置300、及び報知装置500と通信を行う。
【0043】
制御部202は、自律移動体制御装置200における制御を実行する。制御部202としての機能は、自律移動体制御装置200がハードウェアとして備えるCPU(Central Processing)がプログラムを実行することにより実現される。
【0044】
制御部202は、位置管理部221、報知制御部222、及び経路変更部223を備える。
【0045】
位置管理部221(位置更新部の一例)は、制御対象の自律移動体100の位置を管理する。具体的に、位置管理部221は、自律移動モードから非自律移動モードに切り替わったことに応じて自律移動体100が送信した現在位置を、当該自律移動体100の自律移動停止位置として停止位置記憶部231に記憶させる。また、位置管理部221は、制御対象の自律移動体100が非自律移動モードから自律移動モードに復帰したことに応じて、当該自律移動体100がこれまで保持していた自己の現在位置(自律移動停止位置)を更新させる制御を行ってよい。
【0046】
報知制御部222は、制御対象の自律移動体100のうちで自律移動モードから非自律移動モードに切り替わった自律移動体100に対応する報知が報知装置500にて行われるように制御する。報知制御部222は、前述のように報知情報を報知装置500に送信することにより、報知装置500にて報知が行われるようにしてよい。
また、報知制御部222は、自律移動モードから非自律移動モードに切り替わった自律移動体100が存在したことに応じて経路変更部223が変更した避難経路の情報を報知装置500に送信することで、報知装置500にて避難経路が報知されるように制御してもよい。
【0047】
経路変更部223は、制御対象の自律移動体100のうちのいずれかが建物BLにおいて非自律移動モードに切り替わって自律移動停止位置にて停止した状態となったことに応じて、同じ建物BL内で動作する他の自律移動体100の経路変更の制御を実行する。
具体的に、経路変更部223は、建物BLにおいて自律移動モードにより移動している自律移動体100ごとに、自律移動モードから非自律移動モードに切り替わって停止した自律移動体100の自律移動停止位置を回避した移動経路を再計算し、計算した移動経路により移動させるように制御してよい。
また、経路変更部223は、前述のように、自律移動停止位置を回避した代替避難経路を計算し、計算した代替避難経路の情報を報知装置500に送信してよい。
【0048】
記憶部203は、自律移動体制御装置200に対応する各種の情報を記憶する。記憶部203は、停止位置記憶部231、現在位置情報記憶部232、マップ情報記憶部233を備える。
【0049】
停止位置記憶部231は、位置管理部221の制御に応じて、建物BLにおいて非自律移動モードに切り替わったことに応じて停止した自律移動体100現在位置を、停止位置として記憶する。また、停止位置記憶部231は、前述のように位置管理部221の制御により、制御対象の自律移動体100が非自律移動モードから自律移動モードに復帰したことに応じて、当該自律移動体100がこれまで保持していた自己の現在位置(自律移動停止位置)の記憶を更新する。
【0050】
現在位置情報記憶部232は、位置検出装置300が検出した非自律移動モードの自律移動体100の現在位置を記憶する。
【0051】
マップ情報記憶部233は、建物BLのマップの情報(マップ情報)を記憶する。マップ情報には、建物BLにおいて設定された避難経路を示す情報も含まれてよい。
【0052】
図4のフローチャートを参照して、自律移動体100の非常停止に応じて自律移動体制御システムが実行する処理手順例について説明する。
【0053】
まず、自律移動体100が実行する処理手順例について説明する。
ステップS100:自律移動体100において制御部106は、自律移動モードを設定して自律運転の処理を実行する。
【0054】
ステップS102:自律移動モードが設定されている状態において、制御部106は、自律移動停止ボタン105が操作されたか否かを判定する。
【0055】
ステップS104:制御部106は、自律移動停止ボタン105が操作されたことに応じて、これまでの自律移動モードから非自律移動モードに切り替えを行う。非自律移動モードに切り替えられたことに応じて、自律移動体100は動力切断状態となり停止する。
【0056】
ステップS106:制御部106は、非自律移動モードへの切り替えに応じて、自律移動体制御装置200に非自律移動モード切替通知を送信する。非自律移動モード切替通知は、当該自律移動体100が非自律移動モードに切り替わったことを通知する情報である。
【0057】
ステップS108:制御部106は、自律移動体100の現在位置が取得されているか否かを判定する。例えば、制御部106は、定常的にセンサ部102の出力に基づいて自己位置を取得するようにされているが、自律移動体100の動作状況や周囲環境等によっては、現在位置が取得できていない場合がある。
そこで、制御部106は、非自律移動モードに切り替えられたタイミングにて自己の現在位置が取得できているか否かについて判定する。
【0058】
ステップS110:ステップS108にて現在位置が取得できていると判定された場合、制御部106は、自律移動体100が停止したときの現在位置を示す位置情報を、自律移動体制御装置200に送信する。送信される位置情報には、送信元の自律移動体100を示す自律移動体IDが付加される。
【0059】
ステップS112:非自律移動モードが設定されている状態のもとで、制御部106は、自律移動モードに復帰する操作が行われるのを待機する。
【0060】
ステップS114:自律移動モードに復帰する操作が行われると、制御部106は、自律移動体制御装置200に対して、自律移動モードに復帰したことの通知(復帰通知)を送信する。復帰通知には、送信元の自律移動体100を示す自律移動体IDが含まれる。
【0061】
ステップS116:ステップS114による復帰通知の送信に応じて、自律移動体制御装置200は、位置検出装置300が検出した自律移動体100の現在位置を示す現在位置情報を送信する。制御部106は、送信された現在位置情報が示す現在位置により、自律移動体100が保持する自己の現在位置を更新する。
当該ステップS116の処理が実行されると、ステップS100に処理が戻される。このようにステップS100に処理が戻されることで、制御部106は、これまでの非自律移動モードから自律移動モードに切り替えを行い、ステップS116により更新された現在位置を基点として自律移動を開始する。
【0062】
次に、自律移動体制御装置200が実行する処理手順例について説明する。
ステップS200:自律移動体制御装置200において位置管理部221は、ステップS106により自律移動体100から送信された非自律移動モード切替通知が受信されるのを待機している。
【0063】
ステップS202:自律移動体100から送信された非自律移動モード切替通知が受信されると、位置管理部221は、さらに、自律移動体100がステップS110により送信する現在位置情報が受信されたか否かを判定する。
【0064】
ステップS204:ステップS202にて現在位置情報が受信されなかった場合には、自律移動体100が非自律移動モードへの切り替えのタイミングで現在位置を取得していなかったことになる。この場合、位置管理部221は、位置検出装置300に現在位置情報要求を送信する。現在位置情報要求には、対象の自律移動体100を示す自律移動体IDが含まれる。
【0065】
ステップS206:位置管理部221は、自律移動体100がステップS110により送信した現在位置情報が示す現在位置、もしくはステップS204による現在位置情報要求の送信に応じて位置検出装置300が送信した現在位置情報が示す現在位置を、対象の自律移動体100の自律移動体IDに対応付けて、自律移動停止位置として停止位置記憶部231に記憶させる。
【0066】
ステップS208:経路変更部223は、今回非自律移動モードに切り替えられ自律移動停止位置に存在することとなった自律移動体100を障害物として認識する。経路変更部223は、同じ建物BLにおいて他の自律移動モードの自律移動体100に対応して現状想定している経路に対して上記のように認識した障害物が妨害すると判定した場合、当該障害物を回避する経路が再設定されるように制御する。
このために、経路変更部223は、建物BLにおける自律移動モードの自律移動体100ごとに、非自律移動モードの自律移動体100の位置(自律移動停止位置)を障害物とみなし、現状想定している経路に対して障害となると判定した場合、当該障害物を回避する経路を再計算する。経路変更部223は、再計算した経路を自律移動モードの自律移動体100のそれぞれに送信する。自律移動モードの自律移動体100は、受信した経路により自身が移動する経路を設定し、自律運転を実行する。
あるいは、経路変更部223は、ステップS206により記憶した自律移動停止位置を含む経路変更要求を自律移動モードの自律移動体100のそれぞれに送信してよい。この場合の自律移動モードの自律移動体100は、受信した経路変更要求に含まれる自律移動停止位置を障害物と認識し、その障害物が現状の経路において障害になると判定した場合、当該障害物を回避するように経路を再計算し、再計算した経路を設定してもよい。
【0067】
ステップS210:また、経路変更部223は、ステップS202により記憶した自律移動停止位置にて存在する自律移動体100が避難経路に対して支障をきたすと判定した場合には、自律移動停止位置にて存在する自律移動体100を回避した代替避難経路を策定する。報知制御部222は、策定した代替避難経路を報知装置500に送信することで、報知装置500にて避難経路が変更されたことの報知が行われるようにする。
【0068】
ステップS220:また、位置管理部221は、非自律移動モードに切り替えられた自律移動体100がステップS114により送信した復帰通知が受信されるのを待機する。
【0069】
ステップS222:位置管理部221は、受信された復帰通知に含まれる自律移動体IDが示す自律移動体100の現在位置を示す現在位置情報を要求する現在位置情報要求を送信する。
【0070】
ステップS224:位置管理部221は、ステップS222により送信した現在位置情報要求に応答して位置検出装置300から送信された現在位置情報を受信する。
【0071】
ステップS226:位置管理部221は、ステップS224により受信された現在位置情報を、非自律移動モードで停止していた自律移動体100に送信する。
【0072】
なお、経路変更部223は、ステップS220~S226を実行するとともに、ステップS204により経路を設定した他の自律移動体100を対象に、自律移動モードに復帰した自律移動体100を障害物から除外した経路を設定してよい。
また、経路変更部223は、ステップS208にて設定された代替避難経路を規定の避難経路に変更し、規定の避難経路に変更されたことの通知を報知装置500に送信してよい。
【0073】
次に、位置検出装置300が実行する処理手順例を説明する。
ステップS300:位置検出装置300は、ステップS204もしくはステップS222により自律移動体制御装置200から送信される現在位置検出要求が受信されるのを待機する。
【0074】
ステップS302:現在位置検出要求を受信すると、位置検出装置300は、センサ400の出力(例えば、撮像画像やタグ情報)に基づいて、受信した現在位置検出要求に含まれる自律移動停止位置に存在する位置検出対象としての自律移動体100を特定する。
【0075】
ステップS304:位置検出装置300は、センサ400の出力に基づいて、ステップS302により特定された位置検出対象としての自律移動体100の現在位置を検出する。
【0076】
ステップS306:位置検出装置300は、位置検出対象の自律移動体100について検出された現在位置を示す現在位置情報を、自律移動体制御装置200に送信する。
【0077】
上記実施形態においては、非自律移動モードに切り替えられた自律移動体100の現在位置を位置検出装置300が検出するようにされていた。
本実施形態の変形例として、非自律移動モードに切り替えられた自律移動体100の現在位置を、当該非自律移動モードに切り替えられた自律移動体100自体が検出するようにされてよい。この場合、非自律移動モードの自律移動体100は、自律移動停止位置から手動で移動される際に、自己の進行方向と移動距離とを検出し、自律移動停止位置と検出した進行方向と移動距離とを利用して自己の現在位置を計算するようにされてよい。この場合、非自律移動モードの自律移動体100は、例えばジャイロセンサ等により自己の進行方向を検出し、移動機構部において車輪の回転等を検出するように設けられたセンサ等により自己の移動距離を計算してよい。この場合、自律移動体100は、自律移動モードに復帰した際に、検出した自己の現在位置を移動開始位置として、自律運転を開始してよい。
【0078】
なお、上述の自律移動体100、自律移動体制御装置200、位置検出装置300、センサ400、及び報知装置500等の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより上述の自律移動体100、自律移動体制御装置200、位置検出装置300、センサ400、及び報知装置500等の処理を行ってもよい。ここで、「記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行する」とは、コンピュータシステムにプログラムをインストールすることを含む。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、インターネットやWAN、LAN、専用回線等の通信回線を含むネットワークを介して接続された複数のコンピュータ装置を含んでもよい。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置のことをいう。このように、プログラムを記憶した記録媒体は、CD-ROM等の非一過性の記録媒体であってもよい。また、記録媒体には、当該プログラムを配信するために配信サーバからアクセス可能な内部または外部に設けられた記録媒体も含まれる。配信サーバの記録媒体に記憶されるプログラムのコードは、端末装置で実行可能な形式のプログラムのコードと異なるものでもよい。すなわち、配信サーバからダウンロードされて端末装置で実行可能な形でインストールができるものであれば、配信サーバで記憶される形式は問わない。なお、プログラムを複数に分割し、それぞれ異なるタイミングでダウンロードした後に端末装置で合体される構成や、分割されたプログラムのそれぞれを配信する配信サーバが異なっていてもよい。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、ネットワークを介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0079】
2015年9月の国連サミットにおいて採択された17の国際目標として「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」がある。本実施形態に係る自律移動体制御システムは、このSDGsの17の目標のうち、例えば「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」の目標などの達成に貢献し得る。
【符号の説明】
【0080】
100 自律移動体、101 通信部、102 センサ部、103 移動機構部、104 ユーザインターフェース部、105 自律移動停止ボタン、106 制御部、107 記憶部、200 自律移動体制御装置、201 通信部、202 制御部、203 記憶部、221 位置管理部、222 報知制御部、223 経路変更部、231 停止位置記憶部、232 現在位置情報記憶部、233 マップ情報記憶部、300 位置検出装置、400 センサ、500 報知装置、BL 建物