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  • 特開-パネル固定金具 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135907
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】パネル固定金具
(51)【国際特許分類】
   E04B 5/02 20060101AFI20240927BHJP
   E04B 5/10 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
E04B5/02 J
E04B5/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046810
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】595027099
【氏名又は名称】株式会社ニッケンビルド
(74)【代理人】
【識別番号】100174207
【弁理士】
【氏名又は名称】筬島 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】前田 知之
(72)【発明者】
【氏名】眞壁 昭紀
(72)【発明者】
【氏名】阿部 いつき
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 公一
(57)【要約】
【課題】締結作業中のナットの共回り防止、また、前記上フランジとの接触面積を大きくすることによる固定強度、安定性の向上を実現できるパネル固定金具を提供する。
【解決手段】金属製床パネル10を梁材11の上フランジ11aの上面に敷設するに際し、金属製床パネル10を梁材11に固定するためのパネル固定金具1である。パネル固定金具1は、上側部材2と下側部材3と連結ボルト4とからなる。前記下側部材3は、梁材11の上フランジ11aの下面に当接する支持腕部3aと、立ち上がり首部3bと、ボルト締結用肩部3cとを有する。前記ボルト締結用肩部3cは、前記溝形断面を形成する上面部31および両側面部32のうち、前記上面部31に、前記連結ボルト4を貫通させるボルト通し孔31aが形成され、前記両側面部32は、前記連結ボルト4を締結するナット5を回転不能に収容する幅寸とされている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面板にパネル幅方向に長いスリットがパネル長手方向に所定の間隔をあけて連続的に設けられた金属製床パネルを梁材の上フランジの上面に敷設するに際し、前記金属製床パネルを前記梁材に固定するためのパネル固定金具であって、
前記パネル固定金具は、前記上面板に上方から位置決め固定される上側部材と、前記梁材の上フランジの下面に当接する略水平な支持腕部を備えた下側部材と、前記上側部材と前記下側部材とを鉛直方向に貫通する連結ボルトとを有し、
前記下側部材は、下方に開口する溝形断面であって、前記支持腕部と、前記上面板の下面に突き当たる立ち上がり首部と、前記支持腕部と前記立ち上がり首部との間に段状に屈曲形成されたボルト締結用肩部とを有し、
前記ボルト締結用肩部は、前記下方に開口する溝形断面を形成する上面部および両側面部のうち、前記上面部に、前記連結ボルトを貫通させるボルト通し孔が形成され、前記両側面部は、前記連結ボルトを締結するナットを回転不能に収容する幅寸とされていることを特徴とする、パネル固定金具。
【請求項2】
前記下側部材は、前記パネル長手方向に90mm以上の長さに設定されていることを特徴とする、請求項1に記載したパネル固定金具
【請求項3】
前記ボルト締結用肩部に形成したボルト通し孔は、ルーズ孔に形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載したパネル固定金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、各種工場の安全通路、作業床、或いはプラットフォーム、ヘリポート、メンテナンスデッキ等の床板材として好適に用いられる金属製床パネルのうち、空気や光を通すスリットを規則的に設けた金属製床パネルの技術分野に属し、さらにいえば、前記金属製床パネルを梁材に固定するために用いられるパネル固定金具に関する。
【背景技術】
【0002】
空気や光を通すスリットを規則的に設けた金属製床パネルは、通常、板厚が1.6mm~2.0mm程度の細長い1枚の薄鋼板を打ち抜き加工および曲げ加工により、上面板と側面板とで下向き略コ字形の断面をなし、前記上面板にパネル幅方向に長いスリットがパネル長手方向に所定の間隔をあけて連続的に形成された構造として製造される。
前記金属製床パネルは、幅200~250mm程度、長さ200~6000mm(特には1500~3000mm)程度、高さ40~60mm程度、スリット幅20mm程度の形状に成形したものを、所定の平面領域に対し、梁材の上面(具体的にはH形鋼等の梁材の上フランジの上面)に縦横方向に連続的に敷設して床構造体を構築するが、通気性や採光性が良好で明るく清潔な環境が保持できて美観に優れている等の利点から、近年、近代設備の工場や倉庫等、実に様々な場所で実施されている(例えば、特許文献1の足場板60、特許文献2の金属製床パネル10を参照)。
【0003】
一方、前記金属製床パネルを梁材に固定するために用いられるパネル固定金具は、前記上面板に上方から位置決め固定される上側部材と、前記梁材の上フランジの下面へ当接させて支持する水平部を備えた略L字状の下側部材と、前記上側部材と前記下側部材とを鉛直方向に貫通する連結ボルトとで構成されるのが一般的である。
【0004】
前記パネル固定金具を構成する前記下側部材は、前記梁材の上フランジの下面に当接して支持する水平部に、前記連結ボルトをねじ込む構成であり、いわば、前記水平部が、上フランジの下面を支持する役割と、前記連結ボルトを締結する役割とを兼ねる構成で実施していた(例えば、特許文献1の図5等、特許文献2の図4等を参照)。
そのため、前記連結ボルトに、ボルト軸が長い特殊ボルト(例えば、全長が87mm程度)を使用する必要があり、自ずと部材単価が高くなり、経済性の点で改善するべき課題があった。
【0005】
前記課題を踏まえ、例えば、下記特許文献3に係るスーパーC用金具Aは、前記下柱部材について、前記上フランジの下面を支持する水平部の上位に、前記連結ボルトを締結する部位を別異に設けることで、従来の略L字状の下側部材に用いていた連結ボルトよりもボルト軸が短い連結ボルトの使用を可能とするので、前記課題である経済性を改善していると云える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-53683号公報
【特許文献2】特開2019-143423号公報
【特許文献3】双福鋼器株式会社のスーパーC用金具A[令和5年1月25日検索]、インターネットURL:https://www.soufuku.com/pwf/superc.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献3に係るスーパーC用金具Aは、経済性の改善は認められるものの、前記下側部材を、下面部と両側面部とで上方に開口する溝形断面を略L字状に屈曲形成して実施しているので、下記する課題があった。
すなわち、前記連結ボルトに締結するためのナットを、前記溝形断面の下面部の下側に設けて締結作業を行う必要があり、そのため、締結作業中のナットの共回りを防止するべく、特殊ナットを必要とする等の課題があった。
また、前記溝形断面の両側面部の上端がそれぞれ前記梁材の上フランジの下面に平行に線接触状態で支持する構成であるが故に、前記上フランジとの接触面積が小さく、固定強度、安定性について改善の余地があるほか、前記上フランジの損傷を招く虞もあった。
【0008】
したがって、本発明は、上述した背景技術の課題に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、前記下側部材の形態に工夫を施すことにより、従来の略L字状の下側部材に用いていた連結ボルトよりもボルト軸が短い連結ボルトの使用を可能とすることはもとより、締結作業中のナットの共回り防止、また、前記上フランジとの接触面積を大きくすることにより固定強度、安定性の向上を実現できる、経済性、施工性、及び安定性に優れた下側部材、ひいてはパネル固定金具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係るパネル固定金具は、上面板にパネル幅方向に長いスリットがパネル長手方向に所定の間隔をあけて連続的に設けられた金属製床パネルを梁材の上フランジの上面に敷設するに際し、前記金属製床パネルを前記梁材に固定するためのパネル固定金具であって、
前記パネル固定金具は、前記上面板に上方から位置決め固定される上側部材と、前記梁材の上フランジの下面に当接する略水平な支持腕部を備えた下側部材と、前記上側部材と前記下側部材とを鉛直方向に貫通する連結ボルトとを有し、
前記下側部材は、下方に開口する溝形断面であって、前記支持腕部と、前記上面板の下面に突き当たる立ち上がり首部と、前記支持腕部と前記立ち上がり首部との間に段状に屈曲形成されたボルト締結用肩部とを有し、
前記ボルト締結用肩部は、前記下方に開口する溝形断面を形成する上面部および両側面部のうち、前記上面部に、前記連結ボルトを貫通させるボルト通し孔が形成され、前記両側面部は、前記連結ボルトを締結するナットを回転不能に収容する幅寸とされていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した発明において、前記下側部材は、前記パネル長手方向に90mm以上の長さに設定されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載した発明は、請求項1又は2に記載した発明において、前記ボルト締結用肩部に形成したボルト通し孔は、ルーズ孔に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るパネル固定金具によれば、以下の効果を奏する。
(1)下側部材について、梁材の上フランジの下面を支持する支持腕部の上位に、前記連結ボルトを締結するボルト締結用肩部を別異に設けた構成で実施するので、従来の下側部材の締結に用いていた連結ボルト(特殊ボルト)よりもボルト軸が短い連結ボルトを使用できる。よって、経済性に優れたパネル固定金具を実現できる。
(2)下側部材を形成する上面部が梁材の上フランジの下面に面接触状態で当接して支持するので、従来の両側面部が線接触状態で当接する下側部材と比し、前記上フランジとの接触面積が飛躍的に大きくなり、固定強度、安定性の向上を図ることができる。また、前記上フランジの損傷を招く恐れがほとんどなくなった。
(3)下側部材を形成する両側面部が、前記連結ボルトを締結するナットを回転不能に収容する幅寸とされているので、締結作業中のナットの共回りを容易に防止できる。よって、通常の六角ナットで実施できる等、経済性、施工性に優れたパネル固定金具を実現できる。
(4)また、前記梁材の上フランジの下面を支持する支持腕部の上位に、前記連結ボルトを締結するボルト締結用肩部を別異に設けた上下二段の構成で実施するので、ボルト締結用肩部を起点とし、その下位に延設される支持腕部の上下の揺動(遊動)を許容する構成を実現できる。この揺動の大きさは、前記ボルト締結用肩部に形成されるボルト通し孔をルーズ孔に形成することでより一層大きくすることができる。そうすると、従来は挟持できなかった大きい板厚の上フランジを挟持できる等、フレキシビリティに優れたパネル固定金具を実現できる。具体的に、従来、前記上フランジ厚が6~17mmの場合、6~11mm対応の下側部材と、12~17mm対応の下側部材との2種の下側部材を用意する必要があり、現場で誤使用の可能性があるほか、管理・保管に手間やコストが掛かっていた。しかし、本発明に係る下側部材によれば、前記6~17mmの上フランジ厚に対し、1種類の下側部材で対応可能となるので、現場での誤使用の可能性がなくなり、その分、管理・保管を簡略化でき、施工性、作業管理性に優れた下側部材、ひいてはパネル固定金具を実現できる。本発明に係る下側部材によれば、前記支持腕部の突き出し寸法をより長く形成する等の工夫を施すことにより、6~26mmの上フランジ厚に対しても、1種類の下側部材で対応することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係るパネル固定金具を示した正面図である。
図2】Aは、本発明に係るパネル固定金具の下側部材を示した正面図であり、Bは、Aの右側面図であり、Cは、Aの平面図である。
図3図1のパネル固定金具を用いた金属製床パネルと梁材との固定構造を示した平面図である。
図4図3のX-X線矢視断面図である。
図5図3のY-Y線矢視断面図である。
図6図2の下側部材のバリエーションを示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明に係るパネル固定金具の実施例を図面に基づいて説明する。
【0015】
本発明に係るパネル固定金具は、図3図5に示したように、上面板10aと側面板10bとで下向き略コ字形の断面をなし、前記上面板10aにパネル幅方向に長いスリットSがパネル長手方向に所定の間隔をあけて連続的に設けられた金属製床パネル10を梁材11の上フランジ11aの上面に敷設するに際し、前記金属製床パネル10を前記梁材11に固定するためのパネル固定金具1である。
前記パネル固定金具1は、前記金属製床パネル10のスリットSを利用し、前記スリットSの上方からの作業で前記金属製床パネル10を前記梁材11に固定する、所謂ワンウェイ作業タイプのパネル固定金具である。
【0016】
前記パネル固定金具1は、図1等に示したように、前記上面板10aに上方から位置決め固定される上側部材2と、前記梁材11の上フランジ11aの下面に当接する略水平な支持腕部3aを備えた下側部材3と、前記上側部材2と前記下側部材3とを鉛直方向に貫通する連結ボルト4とを有する。ちなみに、図1中の符号5は、前記連結ボルト4を締結するためのナット(六角ナット)5である。
【0017】
前記下側部材3は、下方に開口する溝形断面であって、前記支持腕部3aと、前記上面板10aの下面に突き当たる立ち上がり首部3bと、前記支持腕部3aと前記立ち上がり首部3bとの間に段状に屈曲形成されたボルト締結用肩部3cとを有する。
前記ボルト締結用肩部3cは、前記下方に開口する溝形断面を形成する上面部31および両側面部32のうち、前記上面部31に、前記連結ボルト4を貫通させるボルト通し孔31aが形成され、前記両側面部32は、前記連結ボルト4を締結する前記ナット(例えば六角ナット)5を回転不能に収容する幅寸(使用するナット5の対辺寸法よりも長く、対角寸法よりも短い長さ)とされている。
【0018】
そして、図3図5に示したように、前記下側部材3の前記支持腕部3aと前記上側部材2とで前記梁材11の上フランジ11aと前記上面板10aとが挟持された状態で、前記下側部材3の前記ボルト締結用肩部3cの前記ボルト通し孔31aに前記連結ボルト4を通し前記ナット5で締結することにより、前記金属製床パネル10が前記梁材11に固定される構成である。ちなみに、図6には、図1図5に用いる下側部材3と比し、支持腕部3aが長い下側部材3’を示している。
【0019】
前記上側部材2は、本実施例では、図1等に示したように、中間部に前記スリットSへ嵌まる凹部2aを備えて前記上面板10aに載る形状とされ、その両端部に、前記スリットSに掛け止まり、かつ水平方向への回動を阻止して位置決め作業を容易ならしめる下向き突起部2bが延設されている。前記凹部2aには前記連結ボルト4を鉛直方向(上下方向)に貫通させるボルト通し孔2cが設けられている。
さらに、前記上側部材2は、前記上面板10aに凸エンボス等の突起を有する金属製床パネル10にも容易に対応できるよう、位置決め用の貫通孔2dが設けられている(図3参照)。すなわち、前記金属製床パネル10は、図示は省略するが、上面板10aがフラットなタイプと、上面板10aに滑り止め用の多数の凸エンボス(突起)を形成したノンスリップタイプとがあるが、本発明に係るパネル固定金具1の上側部材2は、その両方に対して好適に実施できる。
【0020】
前記金属製床パネル10は、一例として、板厚が1.6mm~2.0mm程度の細長い1枚の薄鋼板を打ち抜き加工および曲げ加工により、上面板10aと、下端に内向きのリップ部が延設された側面板10bとで下向き略コ字形の断面をなし、前記上面板10aにパネル幅方向に長いスリットSがパネル長手方向に所定の間隔をあけて連続的に形成された構造として製造される。
前記金属製床パネル10の大きさは、幅寸が200~250mm程度、長さが200~6000mm(特には1500~3000mm)程度、高さが40~60mm程度、スリット(S)幅が20mm程度で実施される。
【0021】
次に、前記パネル固定金具1を構成する各部材の大きさについて説明する。
前記上側部材2は、板厚が2.3mm程度、長さ(図1の符号G参照)が、70mm程度、幅寸が、スリットS内への落下を防止するためスリットSの幅(20mm程度)よりは十分に幅拡の47mm程度、凹部2aの高さ(深さ)は、安全上の理由から連結ボルト4の頭部が上方に突き出ない6.5mm程度、ボルト通し孔2cの径は9mm程度、下向き突起2bの高さ(同符号H参照)は13mm程度で実施されている。
前記下側部材3は、板厚が2.3mm程度、幅寸(前記両側面部32の間隔)が、スリットS内を通過可能な18mm程度、長さ(図2の符号R参照)が91mm程度、高さ(同符号Q参照)が86mm程度、ボルト通し孔31aの径は9~11mm程度で実施されている。その他、参考までに、同符号Lが56mm程度、同符号Mが35mm程度、同符号Nが14mm程度で実施されている。
前記連結ボルト(頭付きボルト)4は、軸径が8mm(M8)、全長が37mm程度で実施されている。これは、従来使用していた全長が87mmの連結ボルトの半分以下である。
【0022】
なお、上記段落[0020]、[0021]に記載した各寸法はあくまでも一例に過ぎず、構造設計に応じて適宜設計変更可能である。また、下側部材3におけるボルト締結用肩部3cを形成する高さ位置も、図示例に限定されず、構造設計に応じて適宜設計変更可能である。
【0023】
次に、上記構成のパネル固定金具1を用いた金属製床パネル10と梁材11との固定方法について説明する。
【0024】
先ず、準備段階として現場に搬入する際に、図1に示したように、前記パネル固定金具1を構成する上側部材2と下側部材3とを連結ボルト4及びナット5を用いて串刺し状に連結しておく。現場での作業効率を高めるほか、前記各部材の(主にスリットSからの)落下防止、紛失防止のためである。
【0025】
前記準備が整った段階で、前記パネル固定金具1は、図1の状態よりも連結ボルト4を緩めておき、前記下側部材3を、前記梁材11の近傍上の所定スリットS内へ上方から挿入し、前記下側部材3の前記支持腕部3aを、前記梁材11の上フランジ11aの下面よりも下方に位置させる。
次に、前記下側部材3の前記支持腕部3aの向きを略90度回転させた後に引き上げて、その支持腕部3aを梁材11の上フランジ11aの下面に当接させると共に、立ち上がり首部3bの上端を金属製床パネル10の上面板10aの下面へ当接させる。
次に、前記上側部材2を、その凹部2aを対応するスリットSへ嵌め込んだ状態で上面板10a上に載せ、前記連結ボルト4を緩めた状態からナット5にねじ込む。そうすると、図4図6に示したように、前記ボルト締結用肩部3cにおいて、回転不能状態のナット5を連結ボルト4でしっかり締結する構造を呈し、ひいては、前記下側部材3と前記上側部材2とで前記梁材11の上フランジ11aと前記上面板10aとを挟持しつつ前記金属製床パネル10を梁材11に固定することができる。
上記した作業工程をパネル固定金具1の数量に応じて繰り返し行い、もって前記金属製床パネル10と梁材11との固定構造を実現し、ひいては床構造体を構築する。
【0026】
かくして、前記パネル固定金具1を用いた金属製床パネル10と梁材11との固定構造は、前記連結ボルト4で串刺し状に連結されたパネル固定金具1の前記下側部材3と前記上側部材2とが協働して前記梁材11の上フランジ11aと前記上面板10aとを挟持した状態を呈する。
【0027】
したがって、本発明に係るパネル固定金具1によれば、以下の効果を奏する。
(1)下側部材3について、梁材11の上フランジ11aの下面を支持する支持腕部3aの上位に、前記連結ボルト4を締結するボルト締結用肩部3cを別異に設けた構成で実施するので、従来の下側部材の締結に用いていた連結ボルト(特殊ボルト)よりもボルト軸が短い連結ボルトを使用できる。具体的に、本実施例では全長が半分以下の長さの連結ボルト4を使用できる。よって、経済性に優れたパネル固定金具1を実現できる。
(2)下側部材3を形成する上面部31が梁材11の上フランジ11aの下面に面接触状態で当接して支持するので、従来の両側面部が線接触状態で当接する下側部材と比し、前記上フランジ11aとの接触面積が飛躍的に大きくなり、固定強度、安定性の向上を図ることができる。前記上フランジ11aの損傷を招く恐れがほとんどなくなった。
(3)下側部材3を形成する両側面部32が、前記連結ボルト4を締結するナット5を回転不能に収容する幅寸とされているので、締結作業中のナット5の共回りを容易に防止できる。よって、通常の六角ナットで実施できる等、経済性、施工性に優れたパネル固定金具1を実現できる。
(4)また、前記梁材11の上フランジ11aの下面を支持する支持腕部3aの上位に、前記連結ボルト4を締結するボルト締結用肩部3cを別異に設けた上下二段の構成で実施するので、ボルト締結用肩部3cを起点とし、その下位に延設される支持腕部3aの上下の揺動(遊動)を許容する構成を実現できる。この揺動の大きさは、前記ボルト締結用肩部3cに形成されるボルト通し孔31aをルーズ孔に形成することでより一層大きくすることができる。そうすると、従来は挟持できなかった大きい板厚の上フランジ11aを挟持できる等、フレキシビリティに優れたパネル固定金具を実現できる。具体的に、従来、前記上フランジ11aの板厚が6~17mmの場合、6~11mm対応の下側部材と、12~17mm対応の下側部材との2種の下側部材を用意する必要があり、現場で誤使用の可能性があるほか、管理・保管に手間やコストが掛かっていた。しかし、本発明に係る下側部材3によれば、前記6~17mmの上フランジ11aの板厚に対し、1種類の下側部材3で対応可能となるので、現場での誤使用の可能性がなくなり、その分、管理・保管を簡略化でき、施工性、作業管理性に優れた下側部材3、ひいてはパネル固定金具1を実現できる。本発明に係る下側部材3によれば、前記支持腕部3aの突き出し寸法(図2の符号L参照)を、より(例えば3cm程度)長く形成する等の工夫を施すことにより、6~26mmの上フランジ11aの板厚に対しても、1種類の下側部材3で対応することもできる。
【0028】
以上、実施例を図面に基づいて説明したが、本発明は、図示例の限りではなく、その技術的思想を逸脱しない範囲において、当業者が通常に行う設計変更、応用のバリエーションの範囲を含むことを念のために言及する。
【符号の説明】
【0029】
1 パネル固定金具
2 上側部材
2a 凹部
2b 下向き突起
2c ボルト通し孔
2d 貫通孔
3 下側部材
31 上面部
31a ボルト通し孔
32 側面部
3a 支持腕部
3b 立ち上がり首部
3c ボルト締結用肩部
4 連結ボルト
5 ナット(六角ナット)
10 金属製床パネル(床パネル)
10a 上面板
10b 側面板
11 梁材
11a 上フランジ
S スリット
図1
図2
図3
図4
図5
図6