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特開2024-135914油状組成物、ソフトカプセル及びその製造方法、並びにソフトカプセルにおけるω-3系脂肪酸含有組成物の不快臭の抑制方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135914
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】油状組成物、ソフトカプセル及びその製造方法、並びにソフトカプセルにおけるω-3系脂肪酸含有組成物の不快臭の抑制方法
(51)【国際特許分類】
   A23D 9/007 20060101AFI20240927BHJP
   A61K 31/202 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20240927BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20240927BHJP
   A23L 33/12 20160101ALI20240927BHJP
【FI】
A23D9/007
A61K31/202
A61K9/48
A61K47/46
A23L5/00 L
A23L33/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046819
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】715011078
【氏名又は名称】アサヒグループ食品株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000000055
【氏名又は名称】アサヒグループホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】安井 和歌奈
(72)【発明者】
【氏名】衛藤 良貴
【テーマコード(参考)】
4B018
4B026
4B035
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4B018LE02
4B018MD04
4B018MD11
4B018MD12
4B018MD15
4B018MD33
4B018MD36
4B018MD47
4B018MD81
4B018ME14
4B018MF02
4B018MF08
4B026DC01
4B026DG09
4B026DG20
4B026DL01
4B026DL02
4B026DL03
4B026DL09
4B026DP01
4B026DX10
4B035LC01
4B035LC06
4B035LE11
4B035LG02
4B035LG07
4B035LG12
4B035LG17
4B035LG31
4B035LG50
4B035LP36
4C076AA56
4C076BB01
4C076CC21
4C076DD38H
4C076EE30H
4C076EE38H
4C076EE56T
4C076FF52
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA05
4C206MA02
4C206MA05
4C206MA57
4C206MA72
4C206NA09
4C206ZC21
(57)【要約】
【課題】ω-3系脂肪酸含有組成物に由来する不快臭が低減された油状組成物、ソフトカプセル及びその製造方法、並びにソフトカプセルにおけるω-3系脂肪酸含有組成物の不快臭の抑制方法を提供する。
【解決手段】ω-3系脂肪酸含有組成物と、酵母菌体から分離された酵母細胞壁を含む酵母細胞壁含有組成物とを含む油状組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ω-3系脂肪酸含有組成物と、酵母菌体から分離された酵母細胞壁を含む酵母細胞壁含有組成物とを含むことを特徴とする油状組成物。
【請求項2】
前記酵母細胞壁含有組成物の前記油状組成物における含有量が、0質量%超40質量%以下である請求項1に記載の油状組成物。
【請求項3】
前記酵母細胞壁含有組成物(B)に対する前記ω-3系脂肪酸含有組成物(A)の割合(A/B×100)が、150質量%~20,000質量%である請求項1から2のいずれかに記載の油状組成物。
【請求項4】
請求項1から2のいずれかに記載の油状組成物を内容物に含むことを特徴とするソフトカプセル。
【請求項5】
請求項1から2のいずれかに記載の油状組成物を内容物に配合することを含むことを特徴とするソフトカプセルの製造方法。
【請求項6】
請求項1から2のいずれかに記載の油状組成物を内容物に配合することを含むことを特徴とするソフトカプセルにおけるω-3系脂肪酸含有組成物の不快臭の抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油状組成物、ソフトカプセル及びその製造方法、並びにソフトカプセルにおけるω-3系脂肪酸含有組成物の不快臭の抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、不規則な食生活や美容への意識の高まりなどに伴い、必要な栄養素を効率的に補給するため、たんぱく質、アミノ酸、ビタミン、ミネラル等の栄養素や、様々な栄養素を含む植物や動物原料由来の抽出物などの機能性成分を含有する栄養補助食品やサプリメントへの需要が高まっている。
【0003】
栄養補助食品やサプリメントには、錠剤、ハードカプセル、ソフトカプセル、顆粒などの形態が存在する。これらの中で、ソフトカプセルは、油状成分原料を配合する際によく使用される。
【0004】
前記油状成分としては、例えば、ドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)等のω-3系脂肪酸、ω-3系脂肪酸を含む油(以下、これらをまとめて「ω-3系脂肪酸含有組成物」と称することがある。)などが知られており、これらを含有するサプリメントも市販されている。
【0005】
一方、ω-3系脂肪酸含有組成物を含有するソフトカプセルは原料に由来する不快臭がある。そのため、飲用意欲が低下し、摂取するのが困難であるという課題がある。
【0006】
これまでに、例えば、ビタミンB群から選択される少なくとも1種の化合物と、アミノ酸又はその塩とを含有する栄養補助組成物の不快臭を抑制する技術として、特定の食物繊維を配合する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
酵母からエキスを抽出した後に残る酵母細胞壁含有組成物は、たんぱく質が多く含まれている有用な素材である。
これまでに、例えば、たんぱく質などの栄養素を含み、さらに血糖値上昇抑制効果または中性脂肪上昇抑制効果等の健康機能性を有する組成物として、酵母菌体または酵母残渣の細胞壁分解酵素処理物である酵母たんぱく質含有組成物が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2021-180614号公報
【特許文献2】特開2020-183364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記したように、ω-3系脂肪酸含有組成物を含有するソフトカプセルは原料に由来する不快臭があり、摂取するのが困難であるという課題が生じており、不快臭が低減された製品の上市が求められていた。
【0010】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、ω-3系脂肪酸含有組成物に由来する不快臭が低減された油状組成物、ソフトカプセル及びその製造方法、並びにソフトカプセルにおけるω-3系脂肪酸含有組成物の不快臭の抑制方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、酵母細胞壁含有組成物を用いることで、ω-3系脂肪酸含有組成物を含む油状組成物及びソフトカプセルにおけるω-3系脂肪酸含有組成物に由来する不快臭を低減することができることを知見した。
【0012】
本発明は、本発明者らの前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> ω-3系脂肪酸含有組成物と、酵母菌体から分離された酵母細胞壁を含む酵母細胞壁含有組成物とを含むことを特徴とする油状組成物である。
<2> 前記酵母細胞壁含有組成物の前記油状組成物における含有量が、0質量%超40質量%以下である前記<1>に記載の油状組成物である。
<3> 前記酵母細胞壁含有組成物(B)に対する前記ω-3系脂肪酸含有組成物(A)の割合(A/B×100)が、150質量%~20,000質量%である前記<1>から<2>のいずれかに記載の油状組成物である。
<4> 前記<1>から<3>のいずれかに記載の油状組成物を内容物に含むことを特徴とするソフトカプセルである。
<5> 前記<1>から<3>のいずれかに記載の油状組成物を内容物に配合することを含むことを特徴とするソフトカプセルの製造方法である。
<6> 前記<1>から<3>のいずれかに記載の油状組成物を内容物に配合することを含むことを特徴とするソフトカプセルにおけるω-3系脂肪酸含有組成物の不快臭の抑制方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、ω-3系脂肪酸含有組成物に由来する不快臭が低減された油状組成物、ソフトカプセル及びその製造方法、並びにソフトカプセルにおけるω-3系脂肪酸含有組成物の不快臭の抑制方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(油状組成物)
本発明の油状組成物は、ω-3系脂肪酸含有組成物と、酵母細胞壁含有組成物とを少なくとも含み、必要に応じて更にその他の成分を含む。
【0015】
<ω-3系脂肪酸含有組成物>
前記ω-3系脂肪酸含有組成物は、油状成分である。
前記ω-3系脂肪酸含有組成物は、ω-3系脂肪酸のみからなるものであってもよいし、ω-3系脂肪酸以外の成分を含むものであってもよい。
【0016】
前記ω-3系脂肪酸としては、特に制限はなく、公知のものを適宜選択することができ、例えば、DHA、EPA、アラキドン酸などが挙げられる。
【0017】
前記ω-3系脂肪酸以外の成分を含むものとしては、特に制限はなく、公知のものを適宜選択することができ、例えば、前記ω-3系脂肪酸を含有する油などが挙げられる。前記ω-3系脂肪酸を含有する油における前記ω-3系脂肪酸の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0018】
前記ω-3系脂肪酸含有組成物の具体例としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、不快臭抑制効果がより得られる点で、非動物性原料由来のものが好ましく、藻由来DHA、エゴマ油、亜麻仁油がより好ましく、藻由来DHA、エゴマ油が特に好ましい。
【0019】
前記藻由来DHAにおける藻としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、微細藻類シゾキトリウム属種(Schizochytrium sp.)などが挙げられる。
【0020】
前記ω-3系脂肪酸含有組成物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記ω-3系脂肪酸含有組成物は、市販品を使用してもよいし、適宜調製したものを使用してもよい。
【0021】
前記ω-3系脂肪酸含有組成物の前記油状組成物における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60質量%以上が好ましく、65質量%~99.9質量%がより好ましい。
【0022】
<酵母細胞壁含有組成物>
前記酵母細胞壁含有組成物とは、酵母菌体から分離された酵母細胞壁を含む組成物である。
【0023】
前記酵母細胞壁含有組成物は、市販品を使用してもよいし、適宜調製したものを使用してもよい。
【0024】
前記酵母細胞壁含有組成物の調製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、培養乃至醸造した酵母菌を洗浄し、不純物を除去した後、エキス分を抽出することで、残った残渣(酵母細胞壁含有組成物)を得る方法などが挙げられる。
【0025】
前記酵母の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、パン酵母、ビール酵母、トルラ酵母などが挙げられる。
前記酵母の属としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、サッカロマイセス(Saccharomyces)属、キャンディダ(Candida)属などが挙げられる。これらの中でも、サッカロマイセス(Saccharomyces)属が好ましい。
前記サッカロマイセス(Saccharomyces)属の酵母の具体例としては、Saccharomyces cerevisiaeなどが挙げられる。
前記キャンディダ(Candida)属の酵母の具体例としては、Candida utilisなどが挙げられる。
前記酵母は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
前記エキス分の抽出方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、熱水抽出、自己消化、酵素分解などが挙げられる。これらの中でも、熱水抽出が好ましい。
【0027】
前記酵母細胞壁含有組成物の態様としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、泥状のもの、圧搾して水分を減らしたもの、乾燥して更に水分を減らしたもの、粉状のもの、液中に懸濁させたものなどが挙げられる。これらの中でも、粉状のものを好適に用いることができる。
前記乾燥の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ドラムドライやスプレードライにより乾燥する方法などが挙げられる。
【0028】
前記酵母細胞壁含有組成物の前記油状組成物における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0質量%超40質量%以下が好ましく、0.5質量%~35質量%がより好ましい。
【0029】
前記酵母細胞壁含有組成物(B)に対する前記ω-3系脂肪酸含有組成物(A)の割合(A/B×100)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、150質量%~20,000質量%であることが好ましい。
【0030】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンA、ビタミンD、アミノ酸、ミネラル、上記以外の油状成分(例えば、ノコリギヤシエキス、甘草エキスなど)、ポリフェノール類などが挙げられる。前記その他の成分は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。前記その他の成分は、市販品を適宜使用することができる。
【0031】
前記その他の成分の前記油状組成物における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0032】
前記油状組成物の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記ω-3系脂肪酸含有組成物と、前記酵母細胞壁含有組成物と、必要に応じて前記その他の成分とを混合する方法などが挙げられる。
前記油状組成物は、後述する本発明のソフトカプセルの内容物などとして好適に用いることができる。
【0033】
(ソフトカプセル)
本発明のソフトカプセルは、本発明の油状組成物を少なくとも内容物に含み、必要に応じて更にその他の成分を含む。
前記ソフトカプセルは、前記内容物が、カプセル皮膜内に含有されている。
【0034】
<油状組成物>
前記油状組成物は、上記した本発明の油状組成物である。
【0035】
<その他の成分>
前記内容物におけるその他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上記した油状組成物におけるその他の成分と同様のものなどが挙げられる。
【0036】
前記内容物におけるその他の成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記内容物は、前記油状組成物のみからなるものであってもよい。
【0037】
<カプセル皮膜>
前記カプセル皮膜としては、特に制限はなく、公知のものを適宜選択することができる。
【0038】
前記カプセル皮膜に含まれる成分としては、特に制限はなく、公知の成分を適宜選択することができ、例えば、ゼラチン、酸処理でん粉、カラギナン、可塑剤、着色剤、光隠ぺい剤、防腐剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
前記可塑剤の具体例としては、グリセリン、ソルビトール、マルチトール、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。
【0040】
前記着色剤の具体例としては、カラメル、タール色素、ロースト酵母などが挙げられる。
【0041】
前記光隠ぺい剤の具体例としては、酸化チタンなどが挙げられる。
【0042】
前記防腐剤の具体例としては、パラベンなどが挙げられる。
【0043】
前記カプセル皮膜に含まれる成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0044】
前記ソフトカプセルの形状、構造、大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記ソフトカプセルにおける前記内容物の含有量としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0045】
前記ソフトカプセルは、栄養補助食品やサプリメントとして好適に用いることができる。
【0046】
本発明によれば、飲用意欲低下の原因となっていたω-3系脂肪酸含有組成物に由来する不快臭が低減されたソフトカプセルとすることができる。
【0047】
前記ソフトカプセルの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、後述する本発明のソフトカプセルの製造方法により、好適に製造することができる。
【0048】
(ソフトカプセルの製造方法)
本発明のソフトカプセルの製造方法は、配合工程を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
前記ソフトカプセルの製造方法は、前記配合工程以外は、カプセル皮膜液調製工程、成形工程、乾燥工程などの公知の工程を適宜選択することができる。
【0049】
<配合工程>
前記配合工程は、本発明の油状組成物を内容物に配合する工程である。
【0050】
前記配合工程の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ω-3系脂肪酸含有組成物と、酵母細胞壁含有組成物と、必要に応じて更にその他の成分とを混合し、ソフトカプセルの内容物とする方法などが挙げられる。
前記ω-3系脂肪酸含有組成物、前記酵母細胞壁含有組成物、及び前記その他の成分は、上記した本発明の(油状組成物)の項目に記載したものと同様であり、好ましい態様も同様である。
また、前記内容物における各成分の含有量は、本発明の(油状組成物)の項目に記載した油状組成物における各成分の含有量と同様である。
【0051】
<カプセル皮膜液調製工程>
前記カプセル皮膜液調製工程では、ゼラチンを可塑剤と共に水に加熱溶解させ、所望する粘度の混合液を調製する。前記混合液には、必要に応じて、着色剤、光隠ぺい剤、防腐剤などを添加してもよい。前記混合液は、脱泡処理することが好ましい。
【0052】
<成形工程>
前記成形工程の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の方法を適宜選択することができ、例えば、ロータリーダイ法、滴下法などが挙げられる。
【0053】
前記ロータリーダイ法に用いる装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一般的に、前記カプセル皮膜液をシート状に成形するキャスティングドラムと、該表面に成形鋳型が形成された一対のダイロールと、ダイロール間に配されたくさび状のセグメントと、セグメント内に内容物を圧入すると共にセグメントの先端から内容物を押し出すポンプとを備える装置が挙げられる。
前記装置では、まず、60℃~100℃に保持されてゾル状態にあるカプセル皮膜液が、キャスティングドラム表面に流延され、冷却されてゾル化することによりシート化される。次いで、形成されたシートの2枚が、セグメントに沿って一対のダイロール間に送られる。そして、一対のダイロールの相反する方向への回転に伴い、2枚のシートがヒートシールされ、上方に開放したカプセルが形成されると、この中にセグメントから押し出された内容物が充填される。前記充填と同時に、2枚のシートが上部でヒートシールされ、閉じた内部空間に内容物が充填されたソフトカプセルが得られる。
【0054】
<乾燥工程>
前記乾燥工程は、前記ソフトカプセルが所定の水分含量となるまで乾燥させる工程である。
前記乾燥に用いる装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、調湿乾燥機などが挙げられる。
【0055】
本発明のソフトカプセルの製造方法によれば、飲用意欲低下の原因となっていたω-3系脂肪酸含有組成物に由来する不快臭が低減されたソフトカプセルを簡易な方法で効率良く製造することができる。
【0056】
(ソフトカプセルにおけるω-3系脂肪酸含有組成物の不快臭の抑制方法)
本発明のソフトカプセルにおけるω-3系脂肪酸含有組成物の不快臭の抑制方法は、配合工程を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
【0057】
<配合工程>
前記配合工程は、本発明の油状組成物を内容物に配合する工程である。
前記配合工程は、上記した本発明の(ソフトカプセルの製造方法)の項目に記載した配合工程と同様にして行うことができる。
【0058】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上記した本発明の(ソフトカプセルの製造方法)の項目に記載したカプセル皮膜液調製工程、成形工程、乾燥工程などが挙げられる。
【0059】
本発明のソフトカプセルにおけるω-3系脂肪酸含有組成物の不快臭の抑制方法によれば、飲用意欲低下の原因となっていたω-3系脂肪酸含有組成物に由来する不快臭を抑制することができる。
【実施例0060】
以下に試験例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの試験例に何ら限定されるものではない。
【0061】
(試験例1)
<ソフトカプセルの製造>
-内容物の調製-
下記表1~7に記載の処方で各成分を混合し、ソフトカプセルに充填する内容液とした。
使用した「ω-3系脂肪酸含有組成物」及び「酵母細胞壁含有組成物」の詳細は下記のとおりである。なお、これらは一例として用いたものである。
【0062】
[ω-3系脂肪酸含有組成物]
・ 藻由来DHA(製品名「Omegative DHA700 ALGAE SENSORY Qualitysilver5」、島貿易株式会社製)
・ エゴマ油(製品名「エゴマ油」、サミット製油株式会社製)
・ 亜麻仁油(製品名「亜麻仁油」、サミット製油株式会社製)
・ EPA(製品名「Omegative EPA 70 TG QSI」、島貿易株式会社製)
・ アラキドン酸(製品名「SUNTGA40S」、日本水産株式会社製)
【0063】
[酵母細胞壁含有組成物]
乾燥酵母(ハイパーイーストHG-DY、アサヒグループ食品株式会社製)を熱水抽出した後、遠心分離して得た水不溶画分を乾燥し、酵母細胞壁含有組成物とした。
【0064】
-皮膜の調製-
下記処方のシート状の皮膜を常法により、調製した。
[皮膜処方]
・ 酸処理でん粉 ・・・ 45質量部
(C☆BatterCrisp 06095、カーギルジャパン合同会社製)
・ グリセリン ・・・ 38質量部
(食品添加物グリセリン、花王株式会社製)
・ カラギナン ・・・ 17質量部
(SANTIAGEL USC 28、カーギルジャパン合同会社製)
【0065】
-ソフトカプセルの製造-
ロータリーダイ式成形装置(SSM-A4IL-C、株式会社三協製)を使用して、前記内容液及び前記皮膜からなるソフトカプセル(オーバル10号、総重量 635mg、中身重量 420mg)を得た。
【0066】
<評価>
上記で得られたソフトカプセルの不快臭について、試験例1-1~1-9では試験例1-1のソフトカプセルの不快臭を5点とし、不快臭の強さに応じて1点~10点(不快臭が弱いほど点数が低く、不快臭が強いほど点数が高い)の10段階で評価した。また、試験例1-10~1-15では試験例1-10のソフトカプセルの不快臭を5点とし、試験例1-16~1-18では試験例1-16のソフトカプセルの不快臭を5点とし、試験例1-19~1-22では試験例1-19のソフトカプセルの不快臭を5点とし、試験例1-23~1-26では試験例1-23のソフトカプセルの不快臭を5点とし、同様に10段階で評価した。評価は10名の訓練された評価者により実施し、その平均点を下記の表1~7に示した。
本評価における不快臭とは、後に残る劣化した油の臭いのことをいう。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
【表3】
【0070】
【表4】
【0071】
【表5】
【0072】
【表6】
【0073】
【表7】
【0074】
以上のように、ω-3系脂肪酸含有組成物を含む油状組成物に酵母細胞壁含有組成物を配合することで、ω-3系脂肪酸含有組成物に由来する不快臭を低減することができることが示された。