(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135916
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】二酸化炭素変換装置
(51)【国際特許分類】
C25B 1/23 20210101AFI20240927BHJP
C25B 15/08 20060101ALI20240927BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20240927BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20240927BHJP
C25B 5/00 20060101ALI20240927BHJP
C01B 32/40 20170101ALI20240927BHJP
F02C 3/20 20060101ALI20240927BHJP
F02C 3/34 20060101ALI20240927BHJP
F02C 6/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C25B1/23
C25B15/08 304
C25B1/04
C25B9/00 A
C25B5/00
C25B9/00 H
C01B32/40
F02C3/20
F02C3/34
F02C6/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046821
(22)【出願日】2023-03-23
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、環境省、二酸化炭素の資源化を通じた炭素循環社会モデル構築促進事業「人工光合成技術を用いた電解による地域のCO2資源化検討事業」委託業務、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 斗
【テーマコード(参考)】
4G146
4K021
【Fターム(参考)】
4G146JA01
4G146JB04
4G146JC01
4G146JD02
4K021AA01
4K021AA09
4K021BA02
4K021BA17
4K021BC01
4K021BC02
4K021BC04
4K021CA08
4K021CA11
4K021DB31
4K021DB36
4K021DB43
4K021DB53
4K021DC01
4K021DC03
4K021DC11
4K021DC15
(57)【要約】
【課題】CO
2の大気中への放出を低減し、CO
2の有効利用率を高めることを可能にしたCO
2変換装置を提供する。
【解決手段】実施形態のCO
2変換装置1は、CO
2を供給するCO
2供給部2と、CO
2供給部2からCO
2が供給され、CO
2を還元してCOに転換するカソード室3、及び被酸化物を酸化して酸化物を生成するアノード室4とを備えるCO
2電解部5と、燃料を供給する燃料供給部6と、アノード室4から排出されるO
2-CO
2含有ガスが供給されると共に、燃料供給部6から燃料が供給され、O
2-CO
2含有ガスで燃焼させる酸素燃焼発電部7と、酸素燃焼発電部7から排出される水蒸気-CO
2含有ガスを冷却して凝縮させる凝縮器8と、凝縮器8から排出される水-CO
2二相流体を水とCO
2に分離する気液分離器9とを具備する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給部と、
前記二酸化炭素供給部から二酸化炭素が供給され、前記二酸化炭素を還元して一酸化炭素に転換するカソード室と、被酸化物を酸化して酸化物を生成するアノード室とを備える二酸化炭素電解部と、
燃料を供給する燃料供給部と、
前記二酸化炭素電解部の前記アノード室から排出される酸素-二酸化炭素含有ガスが供給されると共に、前記燃料供給部から前記燃料が供給され、前記酸素-二酸化炭素含有ガスで燃焼させる酸素燃焼発電部と、
前記酸素燃焼発電部から排出される水蒸気-二酸化炭素含有ガスを冷却して凝縮させる凝縮器と、
前記凝縮器から排出される水-二酸化炭素二相流体を水と二酸化炭素に分離する気液分離器と
を具備する二酸化炭素変換装置。
【請求項2】
前記気液分離器は、前記水-二酸化炭素二相流体から分離された二酸化炭素を前記二酸化炭素電解部の前記カソード室に供給するように構成されている、請求項1に記載の二酸化炭素変換装置。
【請求項3】
前記気液分離器は、分離された水の少なくとも一部を前記二酸化炭素電解部の前記アノード室に電解液の一部として供給するように構成されている、請求項1に記載の二酸化炭素変換装置。
【請求項4】
前記酸素燃焼発電部は、クローズドサイクルガスタービン、タービンコンバインドサイクル発電、グラーツサイクルガスタービン、超臨界CO2タービン、又は酸素燃料燃焼装置を備える、請求項1に記載の二酸化炭素変換装置。
【請求項5】
燃焼により生成される水及び二酸化炭素、及び前記酸素-二酸化炭素含有ガス中の二酸化炭素の少なくとも1つは、前記酸素燃焼発電部の循環媒体として供給される、請求項4に記載の二酸化炭素変換装置。
【請求項6】
前記気液分離器から排出される水及び二酸化炭素の少なくとも1つは、前記酸素燃焼発電部の循環媒体として供給される、請求項4に記載の二酸化炭素変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、二酸化炭素変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ガス、石炭、石油等の化石燃料を燃焼させることで発生する二酸化炭素(CO2)は、温室効果による地球温暖化の主因と考えられており、化石燃料の使用削減が求められている。CO2発生源から排出される排ガスからCO2を除去し、排ガスから除去したCO2を原料とする化学合成が行われている。その一環として、CO2及び水(H2O)を電解して一酸化炭素(CO)及び酸素(O2)を生成する二酸化炭素変換装置(電解装置)の開発が進められている。二酸化炭素変換装置においては、生成したCOと同僚程度のCO2が酸素生成側に移動し、酸素と共に放出される。その結果、二酸化炭素変換装置に供給されるCO2の有効利用率は50%以下と低いという課題がある。そこで、CO2の大気中への放出を低減すると共に、CO2の有効利用率を高めることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-138905号公報
【特許文献2】特開2021-191118号公報
【特許文献3】特許第71760225号
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】J.A.Rabinowiz et al., Nature Communications, 11, Article number:5231(2020)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、CO2の大気中への放出を低減し、CO2の有効利用率を高めることを可能にした二酸化炭素変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の二酸化炭素変換装置は、二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給部と、前記二酸化炭素供給部から二酸化炭素が供給され、前記二酸化炭素を還元して一酸化炭素に転換するカソード室と、被酸化物を酸化して酸化物を生成するアノード室とを備える二酸化炭素電解部と、燃料を供給する燃料供給部と、前記二酸化炭素電解部の前記アノード室から排出される酸素-二酸化炭素含有ガスが供給されると共に、前記燃料供給部から前記燃料が供給され、前記酸素-二酸化炭素含有ガスで燃焼させる酸素燃焼発電部と、前記酸素燃焼発電部から排出される水蒸気-二酸化炭素含有ガスを冷却して凝縮させる凝縮器と、前記凝縮器から排出される水-二酸化炭素二相流体を水と二酸化炭素に分離する気液分離器とを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態の二酸化炭素変換装置を示す図である。
【
図2】実施形態の二酸化炭素変換装置において燃料として水素(H
2)を用いた場合の各部の生成ガスとその生成量を示す図である。
【
図3】実施形態の二酸化炭素変換装置において燃料としてメタン(CH
4)を用いた場合の各部の生成ガスとその生成量を示す図である。
【
図4】実施形態の二酸化炭素変換装置において燃料として炭素(C)を用いた場合の各部の生成ガスとその生成量を示す図である。
【
図5】実施形態の二酸化炭素変換装置において燃料として水素(H
2)と一酸化炭素(CO)を用いた場合の各部の生成ガスとその生成量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の二酸化炭素変換装置について、図面を参照して説明する。以下に示す各実施形態において、実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、その説明を一部省略する場合がある。図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各部の厚さの比率等は現実のものとは異なる場合がある。なお、以下の説明における“~”の記号は、それぞれの数値の上限値と下限値の間の範囲を示すものである。その場合、各数値範囲は上限値及び下限値を含むものである。
【0009】
図1は実施形態の二酸化炭素変換装置を示す図である。
図1に示す二酸化炭素(CO
2)変換装置1は、CO
2を供給するCO
2供給部2と、CO
2を還元して一酸化炭素(CO)に変換するカソード室3及び被酸化物を酸化して酸化物を生成するアノード室4を備えるCO
2電解部5と、燃料を供給する燃料供給部6と、CO
2電解部2のアノード室4から排出される酸素(O
2)-二酸化炭素(CO
2)含有ガスが供給され、かつ燃料供給部6から燃料が供給され、O
2-CO
2含有を燃焼させる酸素燃焼発電部7と、酸素燃焼発電部7から排出される水蒸気(H
2O)-二酸化炭素(CO
2)含有ガスを冷却して凝縮させる凝縮器8と、凝縮器8から排出される水(H
2O)-二酸化炭素(CO
2)二相流体を水(H
2O)と二酸化炭素(CO
2)に分離する気液分離器9とを具備する。
【0010】
CO2供給部2としては、二酸化炭素(CO2)含有ガスからCO2を回収して供給する装置やCO2貯蔵部が用いられる。例えば、CO2供給部2は火力発電所、廃棄物焼却場、製鉄所等から排出されるCO2を含む排出ガス(CO2含有ガス)G1からCO2を分離回収し、CO2濃度を高めたCO2ガスG2をCO2電解部5に供給するように構成されている。そのようなCO2供給部2においては、例えばアミン水溶液のような化学吸収液を用いる化学吸収法、メタノール、ポリエチレングリコール溶液のような物理吸収液を用いる物理吸収法、アミン化合物のような固体吸収剤を用いた固体吸収法、CO2分離膜を用いた膜分離法、ゼオライト等の無機物を吸着材として用いる物理吸着法、PSA(Pressure Swing Adsorption(圧力変動吸着法))法、TSA(Thermal Swing Adsorption(温度変動吸着法)法等が適用される。例えば、アミン水溶液を用いた化学吸収法及び装置では、アミン水溶液が噴霧される吸収塔に排出ガスG1を供給し、CO2を吸収したアミン水溶液を再生塔で加熱してアミン水溶液から放散されるCO2を回収する。CO2供給部2に適用するCO2の回収方法及び装置は、特に限定されるものではなく、排出ガスG1からCO2を回収することが可能な各種の方法及び装置を適用することができる。
【0011】
CO2電解部5は電解セルを有するCO2電解装置であり、カソード室(還元部)3とアノード室(酸化部)4とを備えている。カソード室3は還元電極(カソード)を備え、アノード室4は酸化電極(アノード)を備えており、少なくともアノード室4には電解液が流通又は満たされている。カソード室3は、CO2ガスを流通させるようにしてもよいし、CO2を含む電解液を流通又は満たすようにしてもよい。カソード室3又はアノード室4において、電解液には水(H2O)を用いた溶液、例えば任意の電解質を含む水溶液が用いられる。電解質を含む水溶液としては、リン酸イオン(PO4
2-)、ホウ酸イオン(BO3
3-)、ナトリウムイオン(Na+)、カリウムイオン(K+)、カルシウムイオン(Ca2+)、リチウムイオン(Li+)、セシウムイオン(Cs+)、マグネシウムイオン(Mg2+)、塩化物イオン(Cl-)、炭酸水素イオン(HCO3
-)、炭酸イオン(CO3
2-)、水酸化物イオン(OH-)等を含む水溶液が挙げられる。電解液の具体例としては、KOH、KHCO3、K2CO3等が溶解されたアルカリ水溶液が挙げられる。
【0012】
カソード室3には、CO2供給部2からCO2ガスG2が供給される。カソード室3は、図示しない還元電極に面するガス流路を有し、そのようなガス流路にCO2ガスが供給される。アノード室4は、例えば図示しない酸化電極に面する液体流路を有し、そのような液体流路に電解液が供給される。還元電極及び酸化電極には図示しない電源が接続されている。カソード室3とアノード室4とは、水素イオン(H+)、水酸化物イオン(OH-)、炭酸イオン(CO3
2-)、炭酸水素イオン(HCO3
-)等のイオンを移動させることが可能な隔膜10、例えばイオン交換膜により分離されている。CO2電解部5は、単一の電解セルやそれらを面方向に接続した構造を有していてもよいし、複数の電解セルが積層されて一体化されたスタック構造を有していてもよい。
【0013】
CO2電解部5のカソード室3及びアノード室4においては、以下に示すような反応が生じる。カソード室3においては、下記の(1)式に示すように、CO2の電解反応及び還元反応が生じる。カソード室3では、CO2の還元反応によりCOと炭酸イオン(CO3
2-)が生成される。
2CO2+2e- → CO+CO3
2- …(1)
カソード室3で生成された炭酸イオン(CO3
2-)は、隔膜10を介してアノード室4に移動する。アノード室4においては、下記の(2)式に示すように、カソード室3で生成され、隔膜10を介して移動した炭酸イオン(CO3
2-)の酸化反応が生じ、これによりCO2とO2とが生成される。
CO3
2- → CO2+0.5O2+2e- …(2)
【0014】
さらに、カソード室3においては、CO2の電解反応(還元反応)と同時に、電解液中のH2Oの電解反応(還元反応)が生じ、下記の(3)式に示すように、水素(H2)と水酸化物イオン(OH-)とが生成される。
2H2O+2e- → H2+2OH- …(3)
カソード室3で生成された水酸化物イオン(OH-)は、隔膜10を介してアノード室4に移動する。そして、下記の(4)式に示すように、アノード室4で水(H2O)と酸素(O2)が生成される。
2OH- → 0.5O2+H2O+2e- …(4)
【0015】
また、アノード室4においては、下記の(5)式に示すように、電解液中の水(H2O)が電気分解され、酸素(O2)と水素イオン(H+)とが生成される。
2H2O → 4H++O2+4e- …(5)
生成された水素イオン(H+)は、隔膜10を介してカソード室3に移動する。カソード室3に水素イオン(H+)が到達し、外部回路を通って電子(e-)が到達したカソード室3においては、下記の(6)式に示す反応により水素が発生する。
4H++4e- → 2H2 …(6)
【0016】
カソード室3においては、(1)式に示すCO2の還元反応によりCOが生成されると共に、(3)式に示すH2Oの電解反応及び(6)式に示す反応によりH2が生成される。カソード室3で生成されたCO及びH2は、未反応のCO2と共にカソード室3から排出される。カソード室3から排出される、COとH2とCO2を含む混合ガスG3は、例えば有機物の合成反応の原料ガスの一部として、有機物合成部11に供給される。有機物合成部11には、有機物の合成反応の原料ガスの一部として、CO及びH2を含む混合ガスG3とは別に、水素(H2)が必要に応じて供給される。
【0017】
有機物合成部11においては、例えばフィッシャー・トロプシュ合成反応を利用した有機物の合成反応、例えば炭化水素、アルコール、その他の有機物等を合成する反応が行われる。有機物合成部11で合成される有機物の具体例としては、炭素含有の液体燃料等が挙げられる。有機物合成部11の生成物(有機物)は、有機物合成部11から排出され、例えば別途設置されたタンク等の貯蔵設備(図示せず)に送られる。
【0018】
一方、CO2電解部5のアノード室4では、上記した(2)式及び(4)式に示すように、炭酸イオン(CO3
2-)及び水酸化物イオン(OH-)の酸化により、酸素(O2)と二酸化炭素(CO2)が生成される。アノード室4で生成されたO2及びCO2を含有するガス(O2-CO2含有ガス)は、電解液と共にアノード室4から排出される。O2-CO2含有ガスを含む電解液VL1は、アノード室4の排出配管に接続された第1気液分離部12に送られて、O2-CO2含有ガスG4が電解液から分離される。分離された電解液は、図示していないがアノード室4に返送される。分離されたO2-CO2含有ガスG4のCO2濃度は60体積%以上程度と高いため、そのまま大気中に放出した場合にはCO2の有効活用を妨げることになる。さらに、O2-CO2含有ガスG4は比較的多くのO2を含むため、そのままカソード室3に送るとCO2電解部5の動作や機能を低下させることになる。そこで、CO2電解部5のアノード室4から排出され、第1気液分離部12で分離回収されたO2-CO2含有ガスG4は、酸素燃焼発電部7に送られる。
【0019】
酸素燃焼発電部7としては、クローズドサイクルガスタービン、タービンコンバインドサイクル発電、グラーツサイクルガスタービン、超臨界CO2タービン、酸素燃料燃焼装置(Oxy-Fuel Combustion Device)等を適用することができる。これらは水素等を燃料として、O2-CO2含有ガス中のO2を効率よく消費することができ、さらに燃焼に基づいてガスタービン等を効率よく稼働させることができるため、O2-CO2含有ガス中のO2を酸化剤として発電することが可能である。酸素燃焼発電部7で発電した電力は、CO2電解部5の動作電力の一部として使用することができる。
【0020】
酸素燃焼発電部7でO2-CO2含有ガスを燃焼反応で消費するにあたって、酸素燃焼発電部7にはO2-CO2含有ガスG4に加えて、燃料供給部6から燃料が供給される。燃料供給部6から供給する燃料は、特に限定されるものではなく、水素(H2)、炭素(C)、一酸化炭素(CO)、メタン(CH4)のような低級炭化水素等のいずれであってもよい。燃料供給部6は酸素吹ガス化炉等であってもよい。燃料供給部6から供給する燃料は、O2-CO2含有ガス中のO2に対して当量比で供給することが好ましい。酸素燃焼発電部7において、O2はH2O又はCO2に変換される。例えば、燃料として水素(H2)を供給した場合、H2Oが生成される。燃料として炭素(C)や一酸化炭素(CO)を供給した場合、CO2が生成される。燃料としてメタン(CH4)等を供給した場合も同様であり、H2OやCO2が生成される。生成されたCO2は、O2-CO2含有ガス中のCO2と同時に回収される。
【0021】
酸素燃焼発電部7としてクローズドサイクルガスタービン、タービンコンバインドサイクル発電、グラーツサイクルガスタービン、超臨界CO2タービン、酸素燃料燃焼装置(Oxy-Fuel Combustion Device)等を使用した際に、単に燃料を供給して燃焼を行うと、酸素燃焼発電部7が高温化する。そのような点に対して、生成したH2O(例えば水蒸気)やCO2を循環媒体として使用することによって、酸素燃焼発電部7の高温化を抑制することができる。例えば、クローズドサイクルガス、タービンコンバインドサイクル発電、グラーツサイクルガスタービンでは、H2OやCO2が循環媒体として用いられる。超臨界CO2タービンや酸素燃料燃焼装置(Oxy-Fuel Combustion Device)では、CO2が循環媒体として用いられる。これらによって、酸素燃焼発電部7を安全に効率よく運転することができる。
【0022】
酸素燃焼発電部7からは、H2O(水蒸気)-CO2含有ガスG5が排出される。H2O(水蒸気)-CO2含有ガスG5は、凝縮器8に送られて冷却され、水蒸気(H2O)を凝縮して水に変換する。凝縮器8からは、水蒸気(H2O)の凝縮による水を含む水(H2O)-二酸化炭素(CO2)の二相流体VL2が排出される。H2O-CO2二相流体VL2は、第2気液分離器9に送られる。第2気液分離器9において、H2O-CO2二相流体VL2中の水が分離される。分離された水(H2O)の少なくとも一部は、CO2電解部のアノード室4に供給される電解液の一部として使用してもよいし、あるいは循環媒体として酸素燃焼発電部7に返送するようにしてもよい。第2気液分離器9で分離されたCO2ガスG6は、ガス混合器13に送られる。ガス混合器13はCO2電解部5のカソード室3に接続されている。ガス混合器13において、第2気液分離器9で分離されたCO2ガスG6はCO2ガスG2と混合されて、カソード室3に供給される。第2気液分離器9から排出される水及び二酸化炭素の少なくとも1つは、酸素燃焼発電部7の循環媒体として使用してもよい。
【0023】
上述したように、CO2電解部5のアノード室4から排出されるO2-CO2含有ガスG4を酸素燃焼発電部7で燃焼させて、O2-CO2含有ガスG4中のO2をH2OやCO2に変換することによって、カソード室3における動作不良や機能低下等を抑制した上で、アノード室4で副次的に生成され、第2気液分離器9で分離されたCO2ガスをCO2電解部5のカソード室3に返送することができる。さらに、O2-CO2含有ガスG4中のO2をCO2として再生成することができる。これらによって、二酸化炭素変換装置1におけるCO2の大気中への放出を低減した上で、CO2の有効利用率を高めることができ、かつ装置利用効率を向上させることが可能になる。
【0024】
図2ないし
図5に実施形態の二酸化炭素変換装置1において使用した燃料の種類と各部のガスの生成量との関係を示す。
図2は実施形態の二酸化炭素変換装置1における燃料として水素(H
2)を用いた場合の各部のガスの生成量を示す図である。
図3は実施形態の二酸化炭素変換装置1における燃料としてメタン(CH
4)を用いた場合の各部のガスの生成量を示す図である。
図4は実施形態の二酸化炭素変換装置1における燃料として炭素(C)を用いた場合のガスの各部の生成量を示す図である。
図5は実施形態の二酸化炭素変換装置1における燃料として水素(H
2)と一酸化炭素(CO)を用いた場合の各部のガスの生成量を示す図である。これらの図において、各部の数値は対象ガスの容量を示している。いずれの燃料を用いた場合にも、CO
2を有効利用することができる。
【0025】
なお、第2気液分離器9から排出された水の一部は、CO2電解部5に供給するようにしてもよい。また、図示していないが、第2気液分離器9で回収された水やCO2の一部は酸素燃焼発電部7の循環媒体として利用することができる。図示していないが、各機器間に流体を供給するためのポンプ、圧縮機、ブロワー、制御装置等が存在する。第2気液分離器9から放出されるCO2中における酸素の残存を避けるために、酸素燃焼発電部7での燃料/酸素比は当量比よりもわずかに大きく設定してして酸素の残存を防止することが好ましい。あるいは、第2気液分離器9上流又は下流側に触媒燃焼器を設け、水素等と残存酸素を反応させるようにしてもよい。燃焼触媒としてはPt、Pdが用いられる。
【0026】
なお、上述した各実施形態の構成は、それぞれ組合せて適用することができ、また一部置き換えることも可能である。ここでは、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図するものではない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施し得るものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の省略、置き換え、変更等を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同時に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0027】
1…CO2変換装置、2…CO2供給部、3…カソード室、4…アノード室、5…CO2電解部、6…燃料供給部、7…酸素燃焼発電部、8…凝縮器、9…第2気液分離器、10…隔膜、11…有機合成部、12…第1気液分離器、13…ガス混合器。