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<図1>
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135918
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】内燃機関の無接点点火装置
(51)【国際特許分類】
   F02P 3/04 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
F02P3/04 304D
F02P3/04 301E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046823
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000215187
【氏名又は名称】追浜工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100133411
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 龍郎
(74)【代理人】
【識別番号】100067677
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 彰司
(72)【発明者】
【氏名】梶山 良介
【テーマコード(参考)】
3G019
【Fターム(参考)】
3G019BA02
3G019CA02
3G019DC06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】内燃機関の無接点点火装置において、部品の個体差等によりロータとコイル間で発生する起電力の差が生じても、点火時期に狂いが生じることを防止する。
【解決手段】磁石を挟んで配置された2つの磁極を有するロータと、該ロータに対向配置され、エキサイタコイルまたはトリガコイルが巻装されたコアーとを有し、制御信号の入力を受けて充電された電荷をイグニッションコイルに供給するようにスイッチングする内燃機関の無接点点火制御装置において、前記エキサイタコイルまたはトリガコイルの誘起電圧に基づいて得られる周期幅と任意の誘起電圧の間隔から補正係数Zを算出し、前記無接点点火装置における部品の個体差や使用環境により前記ロータと前記エキサイタコイルまたは前記トリガコイルとの間で発生する起電力に差が生じた場合、前記補正係数Zに基づいて、前記誘起電圧の間隔の補正をする構成となっている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁石を挟んで配置された複数の磁極を有するロータと、該ロータに対向配置され、エキサイタコイルまたはトリガコイルが巻装されたコアーと、前記エキサイタコイルの誘起電圧を充電する点火用充放電コンデンサと、前記エキサイタコイルまたはトリガコイルが誘起する電圧を、所定のプログラムに従って信号波形処理を実施して得られた制御信号を出力する制御手段と、前記制御信号の入力を受けて前記点火用充放電コンデンサの電荷をイグニッションコイルに供給するようにスイッチングされるスイッチング素子とを有し、 前記制御手段が、 前記エキサイタコイルまたはトリガコイルの誘起電圧に基づいて得られる周期幅と任意の誘起電圧の間隔から補正係数Zを算出し、 無接点点火装置における個体差や使用環境により前記ロータと前記エキサイタコイルまたはトリガコイルとの間で発生する起電力に差が生じた場合、前記補正係数Zに基づいて、前記誘起電圧の間隔の補正を行うことを特徴とする内燃機関の無接点点火装置。
【請求項2】
前記制御手段は、セグメントの速度を、前記エキサイタコイルまたはトリガコイルの誘起電圧に基づいて得られる任意の誘起電圧の幅の速度とした場合、所定の周期速度において、前記所定の周期速度における基準セグメントの速度と実際のセグメントの速度とを比較し、その差分から補正係数を算出することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の無接点点火制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記補正係数を記憶しておき、その記憶された前記補正係数を用いて、前記実際のセグメントの速度を補正することを特徴とする請求項2に記載の内燃機関の無接点点火装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正確な時期に点火を行うようにトリガ制御する内燃機関の無接点点火装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の内燃機関の無接点点火装置として、例えば、磁極を持ったロータの回転時に、エキサイタコイルが誘起した電圧を点火用充放電コンデンサに充電し、この充放電コンデンサに充電した電荷を、トリガコイルが誘起した電圧によってスイッチされるスイッチング素子を通じて、イグニッションコイルに供給するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
前記内燃機関の無接点点火装置では、前記内燃機関の回転数、つまり前記ロータの回転数が上昇すると、これとともに前記スイッチング素子のトリガタイミングも早まり、前記内燃機関が設定回転数に向かって上昇するが、高速域での回転計の読み取り不良を改善するために、エキサイタ(Exc)制御からトリガ(Trig)制御への変更がなされている。
【0004】
上記トリガ制御においては、点火精度を上げるために、前記トリガコイルの誘起電圧に基づいて得られる最初のパルスの第1のセグメントから回転数を決定して設定した点火タイマーにて点火を実行するようにしたものが提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開2001‐193619号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、かかるトリガ制御による無接点点火装置では、部品の個体差や使用環境等により前記ロータとコイル間で発生する起電力の差が生じてしまい、その起電力の差により、前記トリガコイルよりの波形が大きく変わり、前記第1のセグメントが変化して、点火時期に狂いが生じる問題点があった。
【0007】
上記ロータとコイル間で起電力の差が発生してしまう原因としては、コ字状コアーの両脚部の円弧状に形成され端面とロータの外周面との間のエアギャップ(距離)が変化することや温度が変化することが想定される。
【0008】
本発明は前記のような従来の問題点に着目してなされたものであり、前記部品の個体差や使用環境等によりロータとコイル間で発生する起電力の差が生じても、前記第1のセグメントの変化を自動的に補正して、点火時期の狂いを防止することができる内燃機関の無接点点火装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的達成のために、本発明に係る内燃機関の無接点点火装置は、磁石を挟んで配置された複数の磁極を有するロータと、該ロータに対向配置され、エキサイタコイルまたはトリガコイルが巻装されたコアーと、前記エキサイタコイルの誘起電圧を充電する点火用充放電コンデンサと、前記エキサイタコイルまたはトリガコイルが誘起する電圧を、所定のプログラムに従って信号波形処理を実施して得られた制御信号を出力する制御手段と、前記制御信号の入力を受けて前記点火用充放電コンデンサの電荷をイグニッションコイルに供給するようにスイッチングされるスイッチング素子とを有し、前記制御手段が、前記エキサイタコイルまたはトリガコイルの誘起電圧に基づいて得られる周期幅と任意の誘起電圧の間隔から補正係数Zを算出し、無接点点火装置における個体差や使用環境により前記ロータと前記エキサイタコイルまたはトリガコイルとの間で発生する起電力に差が生じた場合、前記補正係数Zに基づいて、前記誘起電圧の間隔の補正を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、内燃機関の無接点点火装置において、前記部品の個体差や使用環境等によりロータとコイル間で発生する起電力の差が生じても、誘起電圧の間隔を自動的に補正して、点火時期に狂いが生じることを防止することができる。従って、前記部品の個体差として、前記コ字状コアーの両脚部の円弧状に形成され端面と前記ロータの外周面との間のエアギャップ(距離)等が変化しても、正確な時期に点火を行うように制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態による内燃機関の無接点点火装置の要部構成を一部破断して示す正面図である。
図2】本発明の実施形態による内燃機関の無接点点火装置を示す回路図である。
図3図2に示す無接点点火装置において、所定のプログラムに基づくマイクロコンピュータによる補正動作を含む信号波形処理のフローチャートである。
図4】従来の無接点点火装置において、エアギャップ(距離)の変化により、前記第1のセグメントseg1に変化が生じ、点火時期に狂いが生じることを示すタイムチャートである。
図5】従来の無接点点火装置において、前記エアギャップと前記第1のセグメントseg1の速度との関係を測定した結果を示すテーブル図である。
図6】従来の無接点点火装置において、前記エアギャップをパラメーターとした前記第1のseg1の速度と周期速度との関係を示すグラフ図である。
図7図2に示す無接点点火装置において、設定した補正区間における基準seg1速度と、各エアギャップでの実際のseg1速度および補正係数Zとの関係のテーブル図である。
図8図2に示す無接点点火装置において、前記エアギャップが0.15mmおよび0.5mmの場合の前記補正係数Zの変化を示すグラフ図である。
図9図2に示す回路図における信号波形を示すタイミングチャートである。
図10】本願発明による効果をベンチ測定により確認した場合の所定のエアギャップにおける補正前第1のseg1速度と補正後第1のseg1速度とを示すテーブル図である。
図11図10に示すベンチ測定結果において、エアギャップが0.2mmにおける補正前後のseg1速度の測定結果を示すグラフ図である。
図12図10に示すベンチ測定結果において、エアギャップが0.4mmにおける補正前後のseg1速度の測定結果を示すグラフ図である。
図13】ベンチ測定に基づく所定のエアギャップにおける補正前第1のseg1速度と補正後第1のseg1速度との誤差率を示すテーブル図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態による内燃機関の無接点点火装置を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態による内燃機関の無接点点火装置の要部構成を一部破断して示す正面図である。
【0014】
図1において、無接点点火装置を構成するトリガコイル1およびエキサイタコイル2が、コ字状コアー8の両脚部8a、8bにそれぞれ巻装されている。ここでは、前記エキサイタコイル2がロータ3の回転(矢印)4方向側の脚部8bに巻装され、前記トリガコイル1がこの回転方向とは反対側にある脚部8aに巻装されている。
【0015】
また、前記コ字状コアー8の対向位置に、前記ロータ3が高速回転可能に配置されている。該ロータ3は、アルミなどの非磁性の円柱状ブロックからなり、該円柱状ブロックには、磁石5を挟むようにして、一対の磁極6、7が埋設されている。
【0016】
前記磁極6、7は、前記ロータ3の外周に一部が露出しており、該ロータ3の回転中に前記コ字状コアー8の両脚部8a、8b端面に対向状態にて通過可能となっている。
【0017】
また、前記コ字状コアー8の両脚部8a、8b端面は、円弧状に形成され、前記ロータ3の外周面に対して一定幅のエアギャップ(距離)を保持可能に配置されている。
【0018】
なお、前記磁極6、7のサイズおよび設置間隔と、前記コアー8の両脚部8a、8bのサイズおよび間隔は、充放電コンデンサの充放電タイミングやトリガタイミングに応じて設定されている。
【0019】
図2は、図1に示した前記内燃機関の無接点点火装置の回路図である。同図において、前記エキサイタコイル2にはダイオード9、点火用充放電コンデンサ10およびイグニッションコイル11の一次コイル11aが直列接続され、前記エキサイタコイル2が誘起する正の電圧を前記点火用充放電コンデンサ10に充電する充電回路を構成している。
【0020】
前記点火用充放電コンデンサ10は、スイッチング素子としてのサイリスタ12のアノード・カソードおよびイグニッションコイル11の一次コイル11aとともに直列接続されている。前記サイリスタ12およびイグニッションコイル11は、前記点火用充放電コンデンサ10の充電電荷を前記イグニッションコイル11の1次コイル11aへ放電する放電回路を構成している。
【0021】
前記構成によれば、前記サイリスタ12がトリガされて導通したとき、前記点火用充放電コンデンサ10の充電電荷を前記イグニッションコイル11に放出する。なお、前記サイリスタ12は、トリガによって前記エキサイタコイル2をシャントして前記点火用充放電コンデンサ10への充電を阻止するようにも機能する。
【0022】
さらに、前記イグニッションコイル11の二次コイル11bには点火プラグ13が接続されている。前記サイリスタ12のアノード・カソード間には、充放電コンデンサ10に対する電圧充電用を兼ねる逆流防止用のダイオード14が接続されている。
【0023】
一方、トリガコイル1の両端子には、制御信号を出力する制御手段としてのマイクロコンピュータ(マイコン)15が接続されている。該マイクロコンピュータ15の出力端子には、前記制御信号(トリガパルス)を入力するための前記サイリスタ12のゲートが接続されている。
【0024】
前記マイクロコンピュータ15は、前記トリガコイル1が誘起する電圧を波形整形し、デジタル変換して、所定のプログラムに従って信号波形処理を実施し、得られた制御信号を、前記サイリスタ12のゲートに入力するように機能する。なお、前記マイクロコンピュータ15が、前記エキサイタコイル2よりの制御信号を前記サイリスタ12へ入力するような構成としても良い。
【0025】
ここで、前記マイクロコンピュータ15は、RAM、ROM、CPUを有しており、前記ROMに記憶された前記所定のプログラムに基づいて、前記RAMを使用した前記CPUによる演算処理により、後述する補正動作を含む信号波形処理を実行する。
【0026】
従って、前記マイクロコンピュータ15は、内燃機関の始動開始時は、内燃機関の1回転ごとに前記トリガコイル1の誘起電圧に基づいて得られる制御信号により前記サイリスタ12を駆動し、内燃機関始動後は、内燃機関の1回転ごとに前記トリガコイル1の2つの正の誘起電圧に基づいて得られる1つの制御信号により、前記サイリスタ12を駆動する。
【0027】
そして、前記マイクロコンピュータ15は、前記所定のプログラムに従った信号波形処理において、以下の本願発明の要旨を実行するようになっている。
【0028】
すなわち、従来技術では、前記部品の個体差や使用環境等により前記ロータ3と前記エキサイタコイル2または前記トリガコイル1との間で発生する起電力の差が生じてしまった場合、その起電力の差により、トリガコイルよりの波形が大きく変わり、トリガコイルの誘起電圧に基づいて得られる最初のパルスの第1のセグメントseg1が変化し、それにより、速度の読み違いが発生して点火時期に狂いが生じる。
【0029】
ここで、上記第1のセグメントseg1とは、以下のように定義される。
【0030】
すなわち、後述する図4(b)および図9に示すように、前記トリガコイル1の誘起電圧に基づいて得られる2つの正の入力パルスp1、p2を、第1のセグメントseg1~第4のセグメントseg4として現した場合の最初のセグメントを第1のセグメントseg1とする。そのため、前記第1のセグメントseg1の時間は、前記トリガコイル1の誘起電圧に基づいて得られる2パルスの最初のパルスの時間と同じである。
【0031】
なお、この第1のセグメントseg1の速度に基づいて、回転数が決定され、その回転数により点火タイマーが設定されて、トリガパルスp5の立ち上がりが制御され、点火が実行される。
【0032】
本願発明においては、前記マイクロコンピュータ15が、その点火時期の狂いを、エンジン始動後の任意の回転回数までに、周期速度Xの時の第1のセグメントseglの速度Yを比較して補正係数Zを算出し、その補正係数Zに基づいてトリガ信号の入力タイミングを変えるように補正する補正動作を実行することを要旨とする。
すなわち、補正係数Zは、前記トリガコイル1の誘起電圧に基づいて得られる周期幅と任意の誘起電圧の間隔から算出される。なお、補正係数Zを前記エキサイタコイル2の誘起電圧に基づいて得られる周期幅と任意の誘起電圧の間隔から算出するようにしても良い。
【0033】
このため、前記マイクロコンピュータ15は、後述するように、前記所定のプログラムによる点火タイマーの機能、前記補正係数Zの算出および記憶機能、前記補正係数Zに基づくsegl速度の補正機能等を有するようになっている。
【0034】
なお、後述する各補正区間で周期測定して算出した前記補正係数Zを予め記憶するために、前記RAMとは別途に記憶部を設けるようにしても良い。
【0035】
次に、図3のフローチャートを参照して、後述する補正動作を含む信号波形処理について説明する。
【0036】
図3は、図2に示す無接点点火装置において、所定のプログラムに基づくマイクロコンピュータによる補正動作を含む信号波形処理のフローチャートである。
【0037】
まず、前記マイクロコンピュータ15による補正動作を含む信号波形処理を実行する前に、前準備として、図3のステップ101において、前記補正係数Zを算出し、ステップ103において、その補正係数Zを、設定された補正区間に対応して決定し、ステップ105において、その補正区間に対応して決定された補正係数Zを記憶する。
【0038】
以下に、前記各補正区間で周期測定して算出した前記補正係数Zについて説明する。
【0039】
まず、前記無接点点火装置において、部品の個体差や使用環境により前記ロータ3と前記エキサイタコイル2または前記トリガコイル1との間で発生する起電力の差が生じてしまい、その起電力の差により、前記エキサイタコイル2または前記トリガコイル1よりの波形が大きく変わり、前記第1のセグメントseg1が変化し、その変化した前記第1のセグメントseg1により、回転数が決定され、それにより、前記マイクロコンピュータ15が、速度の読み違いを起こして点火時期に狂いが生じる問題点について説明する。
この実施形態では、以降、前記トリガコイル1よりの波形が大きく変わった場合について説明する。
【0040】
なお、前記部品の個体差や使用環境として想定されるものとしては、前記コ字状コアー8の両脚部8a、8bの円弧状の端面と前記ロータ3の外周面との間の前記エアギャップ(距離)が変化することや温度が変化することがあげられる。
【0041】
この実施形態では、前記部品の個体差として、上記エアギャップ(距離)が変化する場合について説明する。
【0042】
前記エアギャップの距離の変化は、前記コイル1、2と前記ロータ3の取り付け誤差によって起こり、通常前記ロータ3とコイル1、2の鉄心(コ字状コアー8)間は0.3mmと大変狭く、0.1mmでもずれてしまうと影響が大きく出る。
【0043】
また、前記使用環境の変化として、温度が変化する場合もある。磁石は低温になれば磁力が強くなるため前記エアギャップが狭まった状況と同じになり、一方で暑い環境にさらされれば磁力が落ちるため前記エアギャップが広がった状況と同じとなる。
【0044】
図4は、無接点点火装置において、前記エアギャップ(距離)の変化により前記ロータ3とコイ1、2ル間で発生する起電力の差が生じてしまい、前記第1のセグメントseg1が変化し、それにより、前記マイクロコンピュータ15で速度の読み違いが発生して点火時期に狂いが生じることを示すタイムチャートである。図4では、前記トリガコイル1が誘起する正の入力電圧に基づいて前記ロータ3の1回転ごとに得られる2つ1組のパルスp1、p2を示している。
【0045】
ここで、図4(a)は、前記エアギャップが0.5mmの場合の2つ1組のパルスp1、p2の波形を示し、図4(b)は、前記エアギャップが0.3mmの場合の2つ1組のパルスp1、p2の波形を示し、図4(c)は、前記エアギャップが0.15mmの場合の2つ1組のパルスp1、p2の波形を示す。なお、この実施形態の場合、図4(b)の前記エアギャップが0.3mmの場合を中央値として基準としている。また、この図4においては、基準周期速度が3000r/minの場合を示している。
【0046】
図4(b)の前記エアギャップが0.3mm(基準値)の場合、前記2つ1組のパルスp1、p2の第1のセグメントseg1の時間は変化せず、後の第2および第3のセグメントseg2およびseg3の時間および時間と同じ時間となり、点火時期はIgnbとなり、正常な点火時期となる。
【0047】
そして、図4(a)の前記エアギャップが0.5mmの場合(基準値から0.2mm広がった場合)、2つ1組のパルスp1、p2の前記第1のセグメントseg1aの時間は小さく変化し、後の第2および第3のセグメントseg2aおよびseg3aの時間より短い時間となる。以下、前記第1のセグメントseg1は、前記seg1と略して記載する。
【0048】
すなわち、前記エアギャップが0.5mmの場合(基準値から0.2mm広がった場合)、トリガコイルの最初の波形が小さくなり、それにより、前記seg1の速度が早くなり、前記seg1a時間が小さくなる。そのため、前記マイクロコンピュータ15が、通常(0.3mm(基準値))より高回転だと誤認し、点火のタイミングを取る点火タイマーの設定時間が短くなり、進角側での点火となり、図4(a)に示すように、点火時期はIgnaとなり、点火時期に狂いが生じる。
【0049】
そして、図4(c)の前記エアギャップが0.15mmの場合(基準値から0.15mm狭まった場合)、2つ1組のパルスp1、p2の第1のセグメントseg1cの時間は大きく変化し、後の第2および第3のセグメントseg2cおよびseg3cの時間より長い時間となる。
【0050】
すなわち、前記エアギャップが0.15mmの場合(基準値から0.15mm狭まった場合)、トリガコイルの最初の波形が大きくなり、それにより、前記seg1cの速度が遅くなり、前記seg1c時間が大きくなる。そのため、前記マイクロコンピュータ15が、通常(0.3mm(基準値))より低回転だと誤認し、点火のタイミングを取る点火タイマーの設定時間が長くなり、遅角側での点火となり、図4(c)に示すように、点火時期はIgncとなり、点火時期に狂いが生じる。
【0051】
また、図4に示すように、どの大きさの前記エアギャップのおいても1周期が同一であることがわかる。すなわち、周期速度は、前記エアギャップに影響されずに一定となっている。
【0052】
なお、前記エアギャップと前記seg1の速度との関係を測定した結果を、図5のテーブルに示す。なお、前記seg1の速度は、前記ロータ3の回転距離と前記seg1の時間から導き出せる。
【0053】
図5に示すように、前記エアギャップが変わると、前記seg1の速度が変化することがわかる。図5は、前記エアギャップ変化による前記seg1速度の変化を示すテーブルである。
【0054】
すなわち、図5に示すように、基準周期速度が3000r/minの場合、図4(b)の前記エアギャップが0.3mm(基準値)の場合、前記第1のセグメントseg1のseg1速度は、3000r/minとなり、図4(a)の前記エアギャップが0.5mmの場合(基準値から0.2mm広がった場合)、前記第1のセグメントseg1aのseg1a速度は、3650r/minとなり、図4(c)の前記エアギャップが0.15mmの場合(基準値から0.15mm狭まった場合)、前記第1のセグメントseg1cのseg1c速度は、2150r/minとなることがわかる。このように、前記エアギャップの変化により、前記seg1速度が変わり、それにより、前記seg1時間が変わり、前記マイクロコンピュータ15が、通常より高回転あるいは低回転だと誤認し、点火時期に狂いが生じる。
【0055】
また、この実施形態では、前記ロータ3と前記コイル1、2との間で発生する起電力の差が生じてしまう部品の個体差として、上記エアギャップ(距離)が変化する場合について説明したが、使用環境として、温度が変化する場合もあり、この場合、温度と前記seg1の速度との関係を測定して置くこととなる。
【0056】
また、前記エアギャップをパラメーターとした前記seg1の速度と周期速度との関係を図6のグラフに示す。
【0057】
図6のグラフに示すように、各周期速度における前記seg1の速度は、前記エアギャップ(距離)の大きさにより異なることがわかる。
【0058】
そこで、前記図3のステップ101およびステップ103における前記補正係数Zの求め方であるが、前述したように、前記周期速度が、前記エアギャップに影響されずに一定となっているので、所定の周期速度において、前記所定の周期速度における基準seg1の速度と実際のseg1の速度とを比較し、その差分から補正係数Zを求めるようにしている。
【0059】
具体的に説明すると、まず、内燃機関の始動後においては、任意の回転回数まで前記周期速度とseg1時間とを比較する。そして、この任意の回転回数までは、始動点火として進角側で点火する。その後は、所定の周期速度において、前記所定の周期速度における基準seg1の速度と実際のseg1の速度とを比較し、その差分から補正係数Zを求める。
【0060】
ここで、前記seg1時間とは、図9(b)に示すように、前記トリガコイル1の誘起電圧に基づいて得られる2つの正の入力パルスp1、p2の最初のパルスp1の時間であり、実際のseg1の速度と対応する。
【0061】
ただ、前記補正係数Zを決定する回転数(周期速度)は、複数箇所設け、測定する毎に補正カーブを修正する。これは、前記補正係数Zを決定する回転数(周期速度)を1点にしてしまうと、中央値から外れた回転数になるにつれて、補正が不十分となる傾向があるためである。
【0062】
ここでは、補正係数Z=基準seg1速度÷実際のseg1速度として、補正係数Zを求める。すなわち、前記トリガコイル1の誘起電圧に基づいて得られる周期幅と任意の誘起電圧の間隔から補正係数Zが算出される。
【0063】
図7は、上記方法で求めた、設定した補正区間における基準seg1速度と、各エアギャップでの前記実際のseg1速度および前記補正係数Zとの関係のテーブルを示す図である。
【0064】
図7に示すように、例えば、3000r/minの基準周期速度(補正区間4)において、実際のseg1速度が2150r/minであった場合、前記エアギャップが0.15mmと推定され、基準seg1速度が3000r/minであるので、補正係数Zは、基準seg1速度(3000r/min)÷実際のseg1速度(2150r/min)から、1.40となる。
【0065】
また、図7に示すように、例えば、3000r/minの基準周期速度(補正区間4)において、実際のseg1速度が3650r/minであった場合、前記エアギャップが0.5mmと推定され、基準seg1速度が3000r/minであるので、補正係数Zは、基準seg1速度(3000r/min)÷実際のseg1速度(3650r/min)から、0.82となる。
【0066】
なお、この図7に示す実施形態の場合、基準周期速度に基づいて6つの補正期間に分けて、6つの補正区間毎に20周期測定した平均値から前記補正係数Zを算出している。すなわち、前記基準周期速度が、1750r/min以下の場合を区間1とし、前記基準周期速度が、1750r/minから2250r/minの場合を区間2とし、前記基準周期速度が、2250r/minから2750r/minの場合を区間3とし、前記基準周期速度が、2750r/minから3250r/minの場合を区間4とし、前記基準周期速度が、3250r/minから3750r/minの場合を区間5とし、前記基準周期速度が、3750r/min以上の場合を区間6とし、この6つの補正区間毎に20周期測定した平均値から前記補正係数Zを算出している。
【0067】
図8は、上述のように決定された前記エアギャップが0.15mmおよび0.5mmの場合の前記補正係数Zの変化を示すグラフである。
【0068】
このようにして求められた補正係数Zは、図7に示すようなテーブルとして、前記マイクロコンピュータ15の前記RAM等の記憶手段に予め記憶される(前記図3のステップ105)。
【0069】
この図7で示す例では、補正区間を6箇所とし、その各補正区間で20周期測定した平均値から前記補正係数Zを算出するようにしている。
【0070】
次に、図3のステップ107において、前記マイクロコンピュータ15により、実機における内燃機関が作動され、ステップ109において、前記マイクロコンピュータ15により、前記補正係数Zの設定が行われる。
【0071】
まず、この内燃機関を作動させると、前記ロータ3が図1において矢印4方向に回転し、該ロータ3に対向する前記コアー8上の前記トリガコイル1およびエキサイタコイル2には、図9(a)、(e)に示す波形の電圧がそれぞれ誘起される。
図9は、図2に示す回路図における信号波形を示すタイミングチャートである。
【0072】
前記エキサイタコイル2の誘起電圧のうち、正の電圧は前記ダイオード9およびイグニッションコイル11の一次コイル11aを介して、前記点火用充放電コンデンサ10に印加され、該点火用充放電コンデンサ10に電荷が充電される。この充電電荷は、図9(d)に示すように、後述の放電タイミングまで保持される。
【0073】
一方、トリガコイル1の誘起電圧は、前記エキサイタコイル2の、正の誘起電圧の立ち上がりより所定周期進んで立ち下がって、前記マイクロコンピュータ15に入力されている。
【0074】
前記マイクロコンピュータ15は、前記トリガコイル1の誘起電圧を波形整形し、設定レベルを超える正負の電圧から、図9(b)に示すような、2つの正の入力パルスp1、p2をそれぞれ取り出して認識する。ここで、図9(b)は、図9(a)の正の入力電圧に基づいて得られた正のパルスp1、p2である。
【0075】
ここで、前記マイクロコンピュータ15は、所定のプログラムの基づく点火タイマー機能を有しており、以下に説明するように、この点火タイマーにより点火動作が行われる。
【0076】
すなわち、前記マイクロコンピュータ15は、図9(b)に示すような2つの正の入力パルスp1、p2から、前記seg1の時間から前記ロータ3の回転数を決定し、その回転数から所定のカウント値を設定し、その所定のカウント値に基づいて、制御信号として、図9(c)に示すパルスp5を立ち上げる。
【0077】
内燃機関の起動時においては、前記マイクロコンピュータ15は、図9(c)に示すパルスp5を制御信号として、サイリスタ12のゲートに入力する。
【0078】
次に、上記ステップ109における補正係数Zの設定について説明する。
【0079】
図4を用いて前述したように、前記エアギャップ(距離)の変化により前記ロータ3とコイ1、2ル間で発生する起電力の差が生じてしまうと、前記seg1が変化し、前記マイクロコンピュータ15は、速度の読み違いを起こし、点火タイマーのカウント値を間違って算出し、点火時期に狂いが生じるものであった。
【0080】
そこで、この点火時期に狂いを補正するため、図7および図8に示すように決定された補正係数Zを、実機において設定する。
【0081】
具体例を用いて説明すれば、前述したように、例えば、図4(a)の前記エアギャップが0.5mmの場合(基準値から0.2mm広がった場合)、前記第1のセグメントseg1aの速度が速くなり、それにより、seg1a時間は小さく変化し、後の第2のセグメントseg2aおよび第3のセグメントseg3aのseg2a時間およびseg3a時間より短い時間となる。
【0082】
そのため、前記マイクロコンピュータ15は、速度の読み違いを起こし、通常より高回転だと誤認し、点火タイマーのカウント値を短く算出し、点火タイマーが短くなり、進角側で点火するようになり、点火時期に狂いが生じる。
【0083】
図4(b)に示すように、前記エアギャップが0.3mmの基準値の場合、点火時期は、Ignbとなるが、図4(a)に示すように、前記エアギャップが0.5mmの場合、点火時期は、Ignaとなり、点火タイマーが短くなり、進角側で点火するようになり、点火時期に狂いが生じる。
【0084】
そこで、前記マイクロコンピュータ15は、上述のように設定した補正係数Zを用いて、以下のように点火時期に狂いを補正するようにしている。
【0085】
まず、図4(b)に示す前記エアギャップが0.3mmの基準値の場合で、基準周期速度が3000r/minにおいては、図5に示すように、前記第1のセグメントseg1のseg1速度は、3000r/minとなるが、図4(a)の前記エアギャップが0.5mmの場合(基準値から0.2mm広がった場合)、図5に示すように、前記第1のセグメントseg1aのseg1a速度は、3650r/minとなる。
【0086】
そこで、前記マイクロコンピュータ15は、基準周期速度の3000r/minと、前記第1のセグメントseg1aのseg1a速度の3650r/minとを比較し、前記エアギャップが0.5mmと判断し、図7のテーブルから、0.82の補正係数Zをピックアップして設定する。
【0087】
次に、図3のステップ111において、前記マイクロコンピュータ15により、実際のseg1速度に基づく前記補正係数Zを用いた補正動作がおこなわれる。
【0088】
上記補正動作を図4に示す具体例に基づいて説明する。
【0089】
図4(a)の前記エアギャップが0.5mmの場合(基準値から0.2mm広がった場合)、前記マイクロコンピュータ15は、上記ステップ109において設定された0.82の補正係数Zをseg1a速度(3650r/min)に乗算して、seg1a速度を補正する。
【0090】
それにより、seg1a速度は、3650r/min×0.82=2993r/minとなり、前記エアギャップが0.3mmの基準値の場合とほぼ同じとなる。
【0091】
すなわち、前記実際のseg1の速度が前記基準seg1の速度に近づくように補正される。
【0092】
前記マイクロコンピュータ15は、その補正されたseg1a速度(2993r/min)に基づいて、前記点火タイマーのカウント値を算出し、その所定のカウント値に基づいて、制御信号として、図9(c)に示すパルスp5を立ち上げる。
【0093】
この場合、点火タイマーのカウント値は、前記エアギャップが0.3mmの基準値の場合と同じとなるので、点火時期に狂いが生じることがなくなる。
【0094】
また、例えば、基準周期速度が2750r/minから3250r/minの区間4の場合において、実際のseg1速度が2150r/minであった場合(図4(c)参照)、前記マイクロコンピュータ15は、前記図7のテーブルより、前記エアギャップが0.15mmと判断し、1.40の補正係数Zを用いて前記seg1速度を補正して認識する。
【0095】
それにより、前記マイクロコンピュータ15の認識するseg1速度は、2150r/min×1.40=3010r/minとなり、基準周期速度である3000r/minと近くなる。従って、前記マイクロコンピュータ15は、低回転だと誤認することなく、点火時期に狂いが生じることが無くなる。
【0096】
前記エアギャップが0.3mmの基準値の場合、補正係数Zは1となり、前記seg1速度の実質的な補正は行われない。
【0097】
なお、上述したステップ109、111における前記補正係数Zの設定および実際のseg1速度に基づく前記補正係数Zを用いた補正動作は、基準周期速度の変化に伴って、図7に示す補正区間1~6毎に対応して行われる。
【0098】
なお、前記制御信号p5の出力によって前記サイリスタ12がトリガされると、1周期前に前記充放電コンデンサ10に充電されていた充電電荷が、前記サイリスタ12のアノード、カソードを通して前期イグニッションコイル11の一次コイル11aに放電される。このため、前記二次コイル11bには瞬時に高電圧が印加され、前記点火プラグ13に火花が発生し、内燃機関内の混合気に着火が行われる。
【0099】
このように、本実施形態によれば、前記エアギャップ(距離)の変化により前記ロータ3とコイ1、2ル間で発生する起電力の差が生じても、前もって設定した補正係数Zにより、前記seg1速度を補正するので、前記マイクロコンピュータ15が、点火タイマーのカウント値を間違って算出することがなく、点火時期に狂いが生じることもなくなる。
【0100】
図10図13に、上述した本願発明による効果をベンチ測定により確認した結果を示す。図10は、前記ベンチ測定に基づくエアギャップ0.2mmおよび0.4mmにおける補正前seg1速度と補正後seg1速度とを示すテーブル図であり、図11は、エアギャップが0.2mmにおける補正前後のseg1速度の測定結果を示すグラフ図であり、図12は、エアギャップが0.4mmにおける補正前後のseg1速度の測定結果を示すグラフ図であり、図13は、ベンチ測定に基づく0.2mmおよび0.4mmのエアギャップにおける補正前seg1速度と補正後seg1速度との誤差率を示すテーブル図である。
【0101】
このベンチ測定では、測定条件として、エアギャップを0.2mmおよび0.4mmにした場合、図10に示すように、例えば、基準周期速度が3000r/minの場合、エアギャップが0.2mmにおいては、前記補正前seg1速度が、2303r/minであるのに対して、前記補正後seg1速度が、3228r/minとなり、前記基準周期速度の3000r/minに近づいている。
【0102】
エアギャップが0.4mmにおいては、前記補正前seg1速度が、3534r/minであるのに対して、前記補正後seg1速度が、2897r/minとなり、前記基準周期速度の3000r/minに近づいている。
【0103】
この前記seg1速度の補正の効果をグラフで示すと図11および図12のようになる。
【0104】
図11のエアギャップが0.2mmの場合に示すように、前記補正後seg1速度の変化(太線)は、前記補正前seg1速度の変化(中太線)に比べ、前記基準のseg1速度の変化(細線)により近くなっている。
【0105】
また、図12に示すエアギャップが0.4mmの場合も同様に、前記補正後seg1速度の変化(太線)は、前記補正前seg1速度の変化(中太線)に比べ、前記基準のseg1速度の変化(細線)により近くなっている。
【0106】
上記測定結果を0.2mmおよび0.4mmのエアギャップにおける前記補正前seg1速度と前記補正後seg1速度との誤差率で示すと図13のテーブルとなる。
【0107】
図13に示すように、このベンチ測定では、前記エアギャップが0.2mmの場合、前記補正前のseg1速度の誤差率の平均が27.3%であるのに対して、前記補正後のseg1速度の誤差率の平均が5.0%となり、大きく改善していることが判る。
【0108】
同様に、エアギャップが0.4mmの場合、前記補正前のseg1速度の誤差率の平均が22.0%であるのに対して、前記補正後のseg1速度の誤差率の平均が5.7%となり、大きく改善していることが判る。
以上、本発明によれば、個体差や使用環境(エアギャップ・温度・磁力など)によって制御波形が変化してしまう事に対し、まず一定の回転数における波形間(場所は特定しない)の時間を基準として持っていて、周期速度が任意の値のときの上記波形間の時間を測定し、基準の時間と比較、係数を算出し時間を補正することで、コイルごとの波形差を小さくすることができる。
そして、上記のように、波形差を小さくできるということは、点火時期の差が小さくなるだけではなく、回転数を正しく読み取ることができるため回転数に起因する制御のバラツキが少なくなるメリットがある。
【0109】
本願発明は、上述した実施形態に限定されない。
【0110】
すなわち、上述した実施形態では、前記ロータ3と前記エキサイタコイル2および前記トリガコイル1との間で発生する起電力の差が生じる部品の個体差として、前記コ字状コアー8の両脚部8a、8bの円弧状の端面と前記ロータ3の外周面との間のエアギャップ(距離)の変化を挙げて説明したが、これに限定されず、部品の個体差として、温度の変化を挙げることもできる。
【0111】
すなわち、前記内燃機関の温度が変化することによっても、前記ロータ3と前記エキサイタコイル2および前記トリガコイル1との間で発生する起電力が変化するので、上述した実施形態におけるパラメーターとしての前記エアギャップを前記内燃機関の温度と置き換えて実施することも可能である。
【0112】
これは、磁石は低温になれば磁力が強くなるため前記エアギャップが狭まった状況と同じになり、一方で暑い環境にさらされれば磁力が落ちるため前記エアギャップが広がった状況と同じとなるためである。
【0113】
また、前記部品の個体差や使用環境のパラメーターとして、前記エアギャップと前記内燃機関の温度との両方を用いて実施することも可能である。
【0114】
また、上述した実施形態では、本願発明を、前記点火タイマー機能を有するマイクロコンピュータ15の制御に適用したが、前記点火タイマー機能は必須ではなく、前記点火タイマー機能を持たないマイクロコンピュータ15の制御に適用することも可能である。
【0115】
なお、上述したように、本実施の形態を記載したが、この開示の一部をなす記載及び図面は、限定するものと理解すべきでない。ここで記載していない様々な実施の形態等が含まれる。
【符号の説明】
【0116】
1 トリガコイル
2 エキサイタコイル
3 ロータ
5 磁石
6、7 磁極
8 コアー
10 充放電コンデンサ
11 イグニッションコイル
12 サイリスタ(スイッチング素子)
13 点火プラグ
15 マイクロコンピュータ(制御手段)
seg1 第1のセグメント
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13