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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135927
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】磁気記録再生装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   G11B 5/02 20060101AFI20240927BHJP
   G11B 5/09 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G11B5/02 S
G11B5/09 311Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046838
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 香里
(72)【発明者】
【氏名】松本 拓也
(57)【要約】

【課題】 潤滑剤の硬化を抑制しながら熱アシスト磁気記録を行う。
【解決手段】 実施形態かかる磁気記録再生装置は、表面に潤滑剤が設けられた磁気記録媒体、前記磁気記録媒体に対して磁気記録を行う熱アシスト磁気記録ヘッド、湿度センサ、及び前記湿度センサの検知結果に対応して前記熱アシスト磁気記録ヘッドのライト手順を制御するライト手順制御部を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に潤滑剤が設けられた磁気記録媒体、
前記磁気記録媒体に対して磁気記録を行う熱アシスト磁気記録ヘッド、
湿度センサ、及び
前記湿度センサの検知結果に対応して前記熱アシスト磁気記録ヘッドのライト手順を制御するライト手順制御部を含む磁気記録再生装置。
【請求項2】
前記ライト手順は、連続ライト時間であり、前記ライト手順制御部は、前記連続ライト時間の上限値を設定する請求項1に記載の磁気記録再生装置。
【請求項3】
前記ライト手順は、連続ライト時間であり、前記ライト手順制御部は、前記湿度センサの検知結果から得られた湿度が高いほど、前記連続ライト時間を短く設定する請求項1に記載の磁気記録再生装置。
【請求項4】
前記ライト手順は、ライト時間比率であり、前記ライト手順制御部は、前記ライト時間比率の上限値を設定する請求項1に記載の磁気記録再生装置。
【請求項5】
前記ライト手順は、ライト時間比率であり、前記ライト手順制御部は、前記湿度センサの検知結果から得られた湿度が高いほど、前記ライト時間比率を短く設定する請求項1に記載の磁気記録再生装置。
【請求項6】
1以上の熱アシスト磁気記録ヘッドをさらに含み、前記ライト手順制御部は、前記熱アシスト磁気記録ヘッドの前記連続ライト時間または前記ライト時間比率が設定値を超えた場合、前記熱アシスト磁気記録ヘッドを変更する請求項1に記載の磁気記録再生装置。
【請求項7】
前記ライト手順制御部は、前記熱アシスト磁気記録ヘッドの前記連続ライト時間または前記ライト時間比率が設定値を超えた場合、前記熱アシスト磁気記録ヘッドの非ライト動作を行う請求項1に記載の磁気記録再生装置。
【請求項8】
表面に潤滑剤が設けられた磁気記録媒体、前記磁気記録媒体に対して磁気記録を行う熱アシスト磁気記録ヘッド、湿度センサ、及び前記熱アシスト磁気記録ヘッドのライト手順を制御するライト手順制御部を含む磁気記録再生装置を使用し、前記湿度センサの検知結果に対応して前記熱アシスト磁気記録ヘッドのライト手順を制御する磁気記録再生装置の制御方法。
【請求項9】
前記ライト手順は、連続ライト時間であり、前記ライト手順制御部は、前記連続ライト時間の上限値を設定する請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ライト手順は、連続ライト時間であり、前記ライト手順制御部は、前記湿度センサの検知結果から得られた湿度が高いほど、前記連続ライト時間を短く設定する請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記ライト手順は、ライト時間比率であり、前記ライト手順制御部は、前記ライト時間比率の上限値を設定する請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記ライト手順は、ライト時間比率であり、前記ライト手順制御部は、前記湿度センサの検知結果から得られた湿度が高いほど、前記ライト時間比率を短く設定する請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記磁気記録再生装置は、1以上の熱アシスト磁気記録ヘッドをさらに含み、前記ライト手順制御部は、前記熱アシスト磁気記録ヘッドの前記連続ライト時間または前記ライト時間比率が設定値を超えた場合、前記熱アシスト磁気記録ヘッドを変更する請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記ライト手順制御部は、前記熱アシスト磁気記録ヘッドの前記連続ライト時間または前記ライト時間比率が設定値を超えた場合、前記熱アシスト磁気記録ヘッドの非ライト動作を行う請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気記録再生装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱アシスト磁気記録ヘッドを搭載した磁気記録再生装置においては、ヘッドの発熱により磁気記録媒体の保護層上に設けられた潤滑剤が硬化し、レーザー照射端の周囲を覆う現象が確認される。潤滑剤の硬化については、磁気記録再生装置内の雰囲気の湿度により潤滑剤の分解が促進され、結果として硬化が起こりやすくなる。硬化した潤滑剤は突起となり、磁気記録媒体への傷発生や、潤滑剤のピックアップによる動作不良等様々なエラーを引き起こす。そのため、潤滑剤硬化が起きにくくなるように、湿度を一定値以下に保つ必要がある。
【0003】
しかし、実際の装置の使用においては、湿度が一定に保たれる状況は起こりにくく、環境や使用条件によって変動するのが一般的である。このような状況下で、装置の性能を最大化しながらも潤滑剤の硬化を抑制することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第10734035号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2020/0395049号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態は、潤滑剤の硬化を抑制しながら熱アシスト磁気記録を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、表面に潤滑剤が設けられた磁気記録媒体、前記磁気記録媒体に対して磁気記録を行う熱アシスト磁気記録ヘッド、湿度センサ、及び前記湿度センサの検知結果に対応して前記熱アシスト磁気記録ヘッドのライト手順を制御するライト手順制御部を含む磁気記録再生装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に関する磁気記録再生装置の一例の構成を表すブロック図である。
図2】第1実施形態に係る磁気記録再生装置の分解斜視図の一部である。
図3】磁気ヘッド10およびサスペンションを示す側面図である。
図4】第1実施形態に係る磁気記録再生装置の一部の横断面図である。
図5】第2実施形態に係る磁気記録再生装置の制御方法の一例を表すフロー図である。
図6】ライト手順制御部の他の一例を表すブロック図である。
図7】装置内湿度とライト手順との関係を表すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
第1実施形態に係る磁気記録再生装置は、表面に潤滑剤が設けられた磁気記録媒体、磁気記録媒体に対して磁気記録を行う熱アシスト磁気記録ヘッド、湿度センサ、及び湿度センサの検知結果に対応して熱アシスト磁気記録ヘッドのライト手順を制御するライト手順制御部を含む。
【0009】
また、第2実施形態に係る磁気記録再生装置の制御方法は、上記第1実施形態に係る磁気記録再生装置を使用し、湿度センサの検知結果に対応して熱アシスト磁気記録ヘッドのライト手順を制御する。
【0010】
熱アシスト磁気記録ヘッドは、例えば主磁極、補助磁極、熱アシスト素子としての近接場光素子、及び近接場光素子に対しレーザー光を出力するレーザー光源を含み、レーザー光を近接場光素子に当てることで、素子先端から近接場光を発生させ、高い垂直磁気異方性を有する記録層を局所的に加熱しながら記録を行うことができる。
【0011】
湿度センサは、磁気記録再生装置の任意の場所に設置することができる。また、必要に応じて気圧センサをさらに設けることができる。
潤滑剤は、例えば、磁気記録媒体の記録層を保護する保護層表面に適用される。近接場光により記録層が加熱されるとともに潤滑層も加熱され得る。
ライト手順は、例えば、熱アシスト磁気記録ヘッドによる記録層に対する連続ライト時間、あるいは熱アシスト磁気記録ヘッドによる記録層に対するライト時間比率などである。
連続ライト時間は、アイドル状態ではない動作時における連続した書き込み(write)時間のことをいう。
ライト時間比率(write duty)は、HDD駆動時間合計に対する書き込み(write)時間のことをいう。
なお、ライト時間比率が所定値(%)以上の状態が続いている時間を連続ライト時間と任意に定めることもできる。
【0012】
ライト手順制御部は、連続ライト時間の上限値、あるいはライト時間比率の設定値を超えないように制御を行う。ライト手順制御部は、種々の処理例えば、湿度センサの検知結果に対応した連続ライト時間あるいはライト時間比率の換算、連続ライト時間の設定値(上限値)あるいはライト時間比率の設定値の設定、連続ライト時間あるいはライト時間比率の測定、及び熱アシスト磁気記録ヘッドの変更、及び熱アシスト磁気記録ヘッドの非ライト動作などを行うことができる。また、ライト手順制御部は、装置内の湿度に応じて各熱アシスト磁気記録ヘッドのライト手順を設定することが可能である。
【0013】
連続ライト時間の上限値とは、磁気記録再生装置が動作不良を起こすまで連続してライト動作を行った時間をいう。例えば複数台の磁気記録再生装置において、各々動作不良を起こすまで連続してライト動作を行った時間を測定し、その平均値を連続ライト時間の上限値データとして取っておくことができる。
また、ライト時間比率の設定値は、磁気記録再生装置が動作不良を起こすライト時間比率をいう。例えば複数台の磁気記録再生装置において、ライト動作が動作不良を起こしたときのライト時間比率を測定し、その平均値を設定値データとして取っておくことができる。
【0014】
磁気記録再生装置内の湿度が上がった状態で熱アシスト磁気記録を実施すると、加熱による潤滑剤の分解で、熱アシスト磁気記録ヘッドへの潤滑剤のピックアップが増加する傾向がある。また、ピックアップされた潤滑剤は、磁気ヘッド上でレーザーの発熱によりリフロー不能な状態にまで硬化し、シークエラー等の動作不良を引き起こす傾向がある。これに対し、ピックアップされた潤滑剤の硬化が起きる前に、ライト手順制御部により、熱アシスト磁気記録、熱アシスト磁気記録ヘッドの変更あるいは非ライト動作を行うと、潤滑剤のリフローを促し、硬化を抑制することが可能である。
【0015】
実施形態によれば、熱アシスト磁気記録ヘッドを有する磁気記録再生装置に、湿度センサ、及び湿度センサの検知結果に対応して熱アシスト磁気記録ヘッドのライト手順を制御するライト手順制御部を設けることにより、潤滑剤の硬化を抑制しながら熱アシスト磁気記録を行うことができる。
【0016】
実施例
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更であって容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0017】
実施例1
まず、図1を参照して、第1実施形態に関するディスクドライブの一例の構成を説明する。なお、図1に示す磁気記録再生装置であるディスクドライブの構成は、後述する各実施形態にも適用される。
図1に示すように、ディスクドライブ200は、垂直磁気記録媒体である磁気ディスク(以下単にディスクと表記する)1、及び後述する磁束制御層を有する磁気ヘッド10が組み込まれた垂直磁気記録方式の磁気ディスク装置である。
図2は、第1実施形態に係る磁気記録再生装置の分解斜視図の一部である。
図2は、第1実施形態に係る磁気記録再生装置において、複数の磁気ディスク1、及び複数の磁気ヘッド10が筐体51内に納められた様子を表わし、蓋部は省略している。である。
【0018】
ディスク1は、スピンドルモータ(SPM)2に固定されて、回転運動するように取り付けられている。磁気ヘッド10は、アクチュエータ3に搭載されており、ディスク1上の半径方向に移動するように構成されている。アクチュエータ3は、ボイスコイルモータ(VCM)4により回転駆動する。磁気ヘッド10は、ライトヘッド10W、リードヘッド10R、熱アシスト部100を備えている。ライトヘッド10Wは、磁気ディスク1にデータをライトする。リードヘッド10Rは、磁気ディスク1からデータをリードする。熱アシスト部100は、ライトヘッド10Wがデータを磁気ディスク1にライトする場合に、データのライトをアシストする。磁気ヘッド10は、単独または複数の磁気ヘッドを含むことができる。湿度センサ9は、装置雰囲気の湿度を検知するために磁気ディスク装置内の任意の場所に設けられている。図2では、湿度センサ9は、ベース52の底壁52a上の空いたスペース例えば変換コネクタ等の電子部品が実装された基板ユニット(FPCユニット)53と磁気ディスク1の間に設置されている。また、必要に応じて、図示しない気圧センサをさらに設けることができる。
【0019】
さらに、ディスクドライブは、ヘッドアンプ集積回路(以下、ヘッドアンプICと表記する)11と、リード/ライトチャネル(R/Wチャネル)12と、ハードディスクコントローラ(HDC)13と、マイクロプロセッサ(MPU)14と、ドライバIC16と、メモリ17とを有する。R/Wチャネル12、HDC13及びMPU14は、1チップの集積回路からなるコントローラ15に組み込まれている。
【0020】
ヘッドアンプIC11は、後述するように、熱アシストを行うためのレーザーダイオードを駆動するための回路群を含む。さらに、ヘッドアンプIC11は、R/Wチャネル12から供給されるライトデータに応じた記録信号(ライト電流)を記録ヘッド10Wに供給するドライバを含む。また、ヘッドアンプIC11は、再生ヘッド10Rから出力されたリード信号を増幅して、R/Wチャネル12に伝送するリードアンプを含む。
【0021】
R/Wチャネル12は、リード/ライトデータの信号処理回路である。HDC13は、ディスクドライブとホスト18とのインターフェースを構成し、リード/ライトデータの転送制御を実行する。
MPU14は、ディスクドライブの主制御部であり、リード/ライト動作の制御および磁気ヘッド10の位置決めに必要なサーボ制御を実行する。さらに、MPU14は、湿度センサ9からの検知結果に対応して熱アシスト磁気記録用のライトヘッド10Wのライト手順を制御するライト手順制御部19を含む。
【0022】
メモリ17は、DRAMからなるバッファメモリ及びフラッシュメモリなどを含む。
図3は、磁気ヘッド10およびサスペンションを示す側面図である。
図3に示すように、各磁気ヘッド10は、浮上型のヘッドとして構成され、ほぼ直方体形状のスライダ42とこのスライダ42の流出端(トレーリング端)に設けられた記録再生用のヘッド部44とを有している。磁気ヘッド10は、サスペンション34の先端部に設けられたジンバルばね41に固定されている。各磁気ヘッド10は、サスペンション34の弾性により、磁気ディスク1の表面に向かうヘッド荷重Lが印加されている。図2に示すように、各磁気ヘッド10は、サスペンション34およびアーム上に固定された配線部材(フレキシャ)35を介してヘッドアンプIC11およびHDC13に接続される。
【0023】
次に、磁気ディスク1および磁気ヘッド10の構成について詳細に説明する。
図4は、磁気ディスク装置の一部であるライトヘッド10Wと磁気ディスク1の横断面図である。
磁気ディスク1は、基板20と、基板20上に順に積層されたヒートシンク層21、結晶配向層22、垂直記録層23、及び表面に潤滑剤が塗付された保護膜24を有する。垂直記録層23はディスク面に対して垂直方向に大きな異方性をもつ。結晶配向層22は、その垂直記録層23の配向性を向上させるために垂直記録層23の下に配置される。ヒートシンク層21は、加熱領域の広がりを抑制するために結晶配向層22の下に配置される。保護膜24は垂直記録層23の上部に配置され、垂直記録層23を保護する。
【0024】
磁気ヘッド10は、記録ヘッド10Wと再生用ヘッド10Rが分離された分離型磁気ヘッドであり、記録ヘッド10Wはディスク面に対して垂直方向磁界を発生させる高透磁率材料からなる主磁極40と、その主磁極40に磁束を流す主磁極と磁気的に接合されたトレーリングヨーク50と、主磁極40のリーディング側に配置された主磁極直下の磁路を効率的に閉じるために設けられたリターンシールド磁極60と、主磁極40に磁束を流すためにトレーリングヨークおよびリターンシールド磁極を含む磁路に巻きつくように配置されたコイル70と、記録ヘッドの浮上高さを制御するためのヒーター80と、主磁極40のリーディング側に、磁気記録媒体1の垂直記録層23を加熱する近接場光を発生させる近接場光素子30と、近接場光発生用の光を伝播させるための導波路31で構成される。光源はレーザーダイオード32がアクチュエータアッセンブリ4のスライダにマウントする形で組み込まれている。近接場光素子30としては、例えばAu、Pd、Pt、Rh、またはIr、またはこれらのうちのいくつかの組合せからなる合金を用いることができる。主磁極と近接場光素子との間に設けられる絶縁層として、例えばSiO、Al等からなる酸化物を用いることができる。
【0025】
磁気ディスク装置200に使用可能な熱アシスト磁気記録の記録方式として、半径方向に間隔を置いてトラックをライトし、隣接するトラックが重ならないように記録を行う通常記録方式いわゆるCMR(Conventional Magnetic Recording)、半径方向に順に重ねられたトラックを有し、隣接するトラックの一部に重ねて記録する瓦記録方式いわゆるSMR(Shingled Magnetic Recording)、または隣接するトラックが互い違いに重ねられたボトムトラックとトップトラックとを有し、ボトムトラックに記録したのちに、インターレースされたトップトラックにボトムトラックに重ねて記録するインターレース記録方式いわゆるIMR(Interlaced Magnetic Recording)、あるいはそれらの組み合わせがあげられる。
【0026】
図5に、第2実施形態に係る磁気記録再生装置の制御方法の一例を表すフロー図を示す。
図5のフロー図は、湿度に対応した熱アシスト磁気記録ヘッドのライト手順の制御動作の一例を表す。
ライト手順の制御動作の前に、予め、ライト手順の制御を行うために使用するライト手順の設定値(制御モード)を決定しておく。ここでは、連続ライト時間の上限値、ライト時間比率の設定値、またはその両方を用いるかを決めておく。
【0027】
図示するように、ライト手順の制御動作を開始し、まず、湿度を湿度センサ9にて測定するタイミングであるか判定する(ST1)。Noの場合には、ライト手順の制御動作を終了する。Yesの場合には、湿度センサ9を用いて湿度測定を行う(ST2)。測定は1回でもよいが、例えば5回~10回の測定を行い、その平均値を用いることで誤差の少ない値を得ることもできる。この湿度は装置温度における相対湿度(装置に含まれる水蒸気分圧/ 装置温度での飽和水蒸気圧)として得られる。ここで、測定された湿度に対し、ライト手順の設定値の換算を行う(ST3)。ここでは、あらかじめ決めておいたライト手順の設定値、例えば連続ライト時間の上限値、ライト時間比率の設定値、またはその両方について換算を行う。例えば、以下の式(1)、式(2)で換算値を与えることができる。
【0028】
ln(ライト時間比率設定値(%))=ln(装置相対湿度(%))×A+B
…(1)
式中、A、Bは、各々、ライト時間比率と装置湿度の自然対数との関係式の傾きと切片を表す。
【0029】
ln(連続ライト時間上限値(時間))=ln(装置相対湿度(%))×A+B
…(2)
式中、A、Bは、各々、連続ライト時間上限に対する傾きと切片である。
【0030】
ライト時間比率と連続ライト時間上限値の自然対数は、装置相対湿度の自然対数と比例関係にある。
その後、記録(再生)動作を行う(ST4)。
一定時間が経過した後、ライト手順に関する測定を行う(ST5)。ライト手順に関する測定として、あらかじめ決めておいたライト手順例えば連続ライト時間、ライト時間比率、またはその両方について測定を行うことができる。続いて、ライト手順に関する測定結果が、設定値を超えているか判定する(ST6)。Noの場合、ライト手順の制御動作を終了する。Yesの場合、ライト手順制御部19によりライト手順が設定値を超えないように制御する(ST7)。ライト手順制御部19は、磁気ヘッド10が複数の磁気ヘッドを含む場合、磁気ヘッドを他のヘッドに変更するか、あるいは磁気ヘッドの変更をせずに、例えばリード、またはアイドルなどの非ライト動作を行った後、ライト手順の制御動作を終了する。
【0031】
ライト手順の制御動作を終了した後、一定時間が経過したとき、ライト手順の制御動作を再開し、ST1からST7の工程を繰り返し行う。
ST6の工程において、ライト手順に関する測定結果が、設定値を超えているか判定して、Noである場合、ライト手順の制御動作を終了せずに、記録(再生)動作(ST4)と、ライト手順に関する測定(ST5)と、判定(ST6)を一定時間繰り返すことが可能である。
【0032】
図6に、ライト手順制御部の他の一例を表すブロック図を示す。
ライト手順制御部19-1は、図1のライト手順制御部19の代わりに用いることが可能である。図示するように、湿度センサ9からの湿度情報を記録する記録部68と、記録部68からの湿度情報に基づいてライト手順の設定値を演算する演算部69と、ライト手順に関する測定結果がライト手順の設定値を超えた場合に、ライト手順の制御を決定する決定部62と、決定部62の決定結果を受けて、ライト手順の制御を指示する指示部63と、記録部68、演算部69、決定部62、及び指示部63と接続され、ライト手順制御部19-1全体を制御する主制御部61とを有する。記録部68は、湿度初期値記録部64と湿度更新値記録部65を含み、演算部69は、ライト時間比率設定値演算部66と連続ライト時間上限値演算部67を含む。
【0033】
ライト手順制御部19-1を用いると、図5のST2の工程で湿度測定を行ったとき、記録部68では、湿度測定結果の初期値を湿度初期値記録部64に記録し、ST1からST7の工程を2回以上繰り返した場合には、湿度測定の結果の更新値を湿度更新値記録部65に記録することができる。演算部69では、図5のST3の工程におけるライト手順の設定値を換算することが可能である。ライト手順の設定値がライト時間比率の設定値であるとき、ライト時間比率設定値演算部66は、記録部68からの湿度情報に基づいてライト時間比率の設定値を演算することができる。また、ライト手順の設定値が連続ライト時間上限値であるとき、連続ライト時間上限値演算部67は、記録部68からの湿度情報に基づいて連続ライト時間の上限値を演算することができる。また、決定部62は、ST6の工程での判定結果を受けてライト手順の制御を決定することができる。さらに、指示部63は、決定部62の決定結果を受けてライト手順の制御を指示することができる。ここでは、例えばヘッドアンプIC11を制御して磁気ヘッドの変更、あるいは非ライト動作を行うことができる。
【0034】
図7に、装置内湿度とライト手順との関係を表すグラフ図を示す。
図中、301は、湿度に対する連続ライト時間の上限値、あるいはライト時間比率を表すグラフを示す。
図示するように、湿度が高くなるほど、連続ライト時間の上限、あるいはライト時間比率は低くなる。
このようなことから、ライト手順が連続ライト時間であるとき、ライト手順制御部19は、湿度センサの検知結果が高いほど、連続ライト時間を短く設定することができる。また、ライト手順がライト時間比率であるとき、ライト手順制御部19は、湿度センサの検知結果が高いほど、ライト時間比率を短く設定することができる。
【0035】
実施例2
図1と同様の構成を有する磁気ディスク装置を40台準備した。
各装置内の湿度は20%±3%とした。比較例1として20台をライト時のライト手順の制御なしの状態で、実施例2として20台をライト手順の制御ありの状態で、それぞれ集中ライト試験をライト積算時間で700時間行った。集中ライト中は各ヘッドのライト時間比率が90%となるように設定した。制御モードは、ライト時間比率とし、式(1)を用いて換算値を求めた。
【0036】
式中、AおよびBは-1.1および2.2とした。この計算結果から得られるライト時間比率はおよそ33%であった。ライト時間比率が33%を上回るだけライト動作が行われた場合、アイドル状態で待機を行った。
試験前後でビットエラーレート(BER)を測定し、エラー率が10の-1.8乗を上回るものについてはNGと判定した。試験前のNG数は両条件で0台であった。試験後のNG数を下記表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
実施例2によれば、NG数は0台であったが、制御なしの装置では、NG数は20台となった。評価後に装置を分解し、ヘッド周辺部のAFM観察を行ったところ、ヘッド周囲に潤滑剤が凝集・硬化し、ヘッドの円滑な動作を妨げていたことがわかった。
【0039】
実施例3
図1と同様の構成を有する磁気ディスク装置を40台準備した。
各装置内の湿度は10%±3%とし、比較例2として、20台をライト時のライト手順の制御なしの状態で、実施例3として20台をライト手順の制御ありの状態で、それぞれ集中ライト試験をライト積算時間で700時間行った。集中ライト中は各ヘッドのライト時間比率が90%となるように設定した。制御モードは連続ライト時間とし、ライト時間比率50%以上である時間を連続ライト時間とみなした。ここで、式(2)を用いて換算値を求めた。
【0040】
式中、AおよびBは-1.2および4.7とした。この計算結果から得られる連続ライト上限時間は8.7時間である。連続ライト上限時間を上回るだけライト動作が行われた場合、設定値のライト時間比率が50%を下回るようになるだけの時間、何もしない時間(アイドル)を挿入した。
試験前後でビットエラーレート(BER)を測定し、エラー率が10の-1.8乗を上回るものについてはNGと判定した。試験前のNG数は両条件で0台であった。試験後のNG数を下記表2に示す。
【0041】
【表2】
【0042】
実施例3によれば、NG数は0台であったが、制御なしの装置では、NG数は20台となった。評価後に装置を分解し、ヘッド周辺部のAFM観察を行ったところ、ヘッド周囲に潤滑剤が凝集・硬化し、ヘッドの円滑な動作を妨げていたことがわかった。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0044】
1…磁気記録媒体、10,10W,10R…熱アシスト磁気記録ヘッド、9…湿度センサ、19…ライト手順制御部、200…磁気記録再生装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7