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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135934
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】解析装置及び解析プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01R 27/02 20060101AFI20240927BHJP
   G01R 27/28 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G01R27/02 A
G01R27/28 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046850
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浜地 健次
【テーマコード(参考)】
2G028
【Fターム(参考)】
2G028AA01
2G028AA05
2G028BB10
2G028CG08
2G028CG15
2G028CG19
2G028DH11
(57)【要約】
【課題】抵抗及びインダクタの直列接続体に対してキャパシタが並列接続されたとみなせる回路の回路定数を良好に解析することができる解析装置を提供する。
【解決手段】解析装置(1)は、周波数特性測定装置でのシリーズ・スルー測定法によって測定されたDUTのSパラメータに含まれる反射特性及び透過特性を用い、前記反射特性及び前記透過特性のゲインと位相から、ポールの周波数、零点の周波数、前記ゲインのDC成分に近似できる低周波部分を抽出するように構成された抽出部(3)と、前記ポールの周波数、前記零点の周波数、及び前記低周波部分から、前記DUTの等価回路の回路定数を算出するように構成された算出部(4)と、を備える。前記等価回路は、抵抗及びインダクタの直列接続体に対してキャパシタが並列接続されたとみなせる回路である。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数特性測定装置でのシリーズ・スルー測定法によって測定されたDUTのSパラメータに含まれる反射特性及び透過特性を用い、前記反射特性及び前記透過特性のゲインと位相から、ポールの周波数、零点の周波数、前記ゲインのDC成分に近似できる低周波部分を抽出するように構成された抽出部と、
前記ポールの周波数、前記零点の周波数、及び前記低周波部分から、前記DUTの等価回路の回路定数を算出するように構成された算出部と、
を備え、
前記等価回路は、抵抗及びインダクタの直列接続体に対してキャパシタが並列接続されたとみなせる回路である、解析装置。
【請求項2】
前記反射特性及び前記透過特性の前記ゲインと前記位相のパターンが第1パターン及び第2パターンを含み、
前記反射特性及び前記透過特性の前記ゲインと前記位相が前記第1パターンであるときに、前記算出部は前記透過特性を用い、
前記反射特性及び前記透過特性の前記ゲインと前記位相が前記第2パターンであるときに、前記算出部は前記反射特性を用いる、請求項1に記載の解析装置。
【請求項3】
前記反射特性及び前記透過特性の前記ゲインと前記位相が前記第1パターンであるときに、前記反射特性の前記位相は180°回らず、
前記反射特性及び前記透過特性の前記ゲインと前記位相が前記第2パターンであるときに、前記反射特性の前記位相は180°回る、請求項2に記載の解析装置。
【請求項4】
前記反射特性及び前記透過特性の前記ゲインと前記位相が前記第1パターンであるときに、前記算出部は、前記回路の伝送線路の特性インピーダンスZ及び前記抵抗の抵抗値Rで表される式2Z/Rを0とみなす、請求項2又は請求項3に記載の解析装置。
【請求項5】
前記反射特性及び前記透過特性の前記ゲインと前記位相が前記第1パターンであるときに、前記算出部は、前記インダクタのインダクタンスL、前記回路の伝送線路の特性インピーダンスZ、前記抵抗の抵抗値R、及びラプラス変換の変数sで表される式 |(2LZ/R)s|を0とみなす、請求項2又は請求項3に記載の解析装置。
【請求項6】
前記反射特性及び前記透過特性の前記ゲインと前記位相が前記第2パターンであるときに、前記算出部は、前記回路の伝送線路の特性インピーダンスZ及び前記抵抗の抵抗値Rで表される式2Z/Rを0とみなさない、請求項2又は請求項3に記載の解析装置。
【請求項7】
コンピュータを、
周波数特性測定装置でのシリーズ・スルー測定法によって測定されたDUTのSパラメータに含まれる反射特性及び透過特性を用い、前記反射特性及び前記透過特性のゲインと位相から、ポールの周波数、零点の周波数、前記ゲインのDC成分に近似できる低周波部分を抽出するように構成された抽出部、並びに、
前記ポールの周波数、前記零点の周波数、及び前記低周波部分から、前記DUTの等価回路の回路定数を算出するように構成された算出部として機能させ、
前記等価回路は、抵抗及びインダクタの直列接続体に対してキャパシタが並列接続されたとみなせる回路である、解析プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に開示されている発明は、抵抗及びインダクタの直列接続体に対してキャパシタが並列接続されたとみなせる回路の回路定数を解析する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
解析対象回路のSパラメータは、ベクトル・ネットワークアナライザ等の周波数特性測定装置によって測定される(例えば特許文献1参照)。
【0003】
解析対象回路の回路定数を解析する方法としては、解析対象回路のSパラメータをインピーダンスに変換してフィッティング等が実行されることによって、集中定数としての回路定数を同定する方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-160356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した解析方法は、原理的にSパラメータからインピーダンスへの変換時に一部のデータを破棄することになるため、回路定数を上手く同定できない場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書中に開示されている解析装置は、周波数特性測定装置でのシリーズ・スルー測定法によって測定されたDUTのSパラメータに含まれる反射特性及び透過特性を用い、前記反射特性及び前記透過特性のゲインと位相から、ポールの周波数、零点の周波数、前記ゲインのDC(Direct Current)成分に近似できる低周波部分を抽出するように構成された抽出部と、前記ポールの周波数、前記零点の周波数、及び前記低周波部分から、前記DUTの等価回路の回路定数を算出するように構成された算出部と、を備える。前記等価回路は、抵抗及びインダクタの直列接続体に対してキャパシタが並列接続されたとみなせる回路である。
【0007】
本明細書中に開示されている解析プログラムは、コンピュータを、周波数特性測定装置でのシリーズ・スルー測定法によって測定されたDUTのSパラメータに含まれる反射特性及び透過特性を用い、前記反射特性及び前記透過特性のゲインと位相から、ポールの周波数、零点の周波数、前記ゲインのDC成分に近似できる低周波部分を抽出するように構成された抽出部、並びに、前記ポールの周波数、前記零点の周波数、及び前記低周波部分から、前記DUTの等価回路の回路定数を算出するように構成された算出部として機能させる。前記等価回路は、抵抗及びインダクタの直列接続体に対してキャパシタが並列接続されたとみなせる回路である。
【発明の効果】
【0008】
本明細書中に開示されている発明によれば、抵抗及びインダクタの直列接続体に対してキャパシタが並列接続されたとみなせる回路の回路定数を良好に解析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、DUTの等価回路を示す図である。
図2図2は、二端子対回路を示す図である。
図3図3は、第1パターンにおける反射特性のゲイン及び位相を示す図である。
図4図4は、第1パターンにおける透過特性のゲイン及び位相を示す図である。
図5図5は、第1パターンにおける透過特性のゲイン及び位相を示す図である。
図6図6は、第2パターンにおける反射特性のゲイン及び位相を示す図である。
図7図7は、第2パターンにおける反射特性のゲイン及び位相を示す図である。
図8図8は、一実施形態に係る解析装置の概略構成を示す図である。
図9図9は、解析装置の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<Sパラメータの測定>
DUT(Device Under Test)のSパラメータは、ベクトル・ネットワークアナライザ等の周波数特性測定装置でのシリーズ・スルー測定法によって測定される。
【0011】
DUTのSパラメータを測定する手法としては、特許文献1で提案されている手法が望ましいが、特許文献1で提案されている手法に限定されない。例えば、DUTのSパラメータを測定する手法として、4種類の校正用基板を必要とする手法が採用されてもよい。ここで、4種類の校正用基板とは、DUTの代わりにShortさせた基板、DUTの代わりにOpenにした基板、DUTの代わりに負荷(Load)が実装された基板、及びDUTが実装されたサンプル基板からDUTが実装された部分を除去したThru基板である。
【0012】
後述する解析装置1の解析対象であるDUTの等価回路は、図1に示す回路、すなわち抵抗R1及びインダクタL1の直列接続体に対してキャパシタC1が並列接続されたとみなせる回路である。図1に示す回路のインピーダンスZは、抵抗R1の抵抗値R、インダクタL1のインダクタンス値L、キャパシタC1の静電容量値C、及びラプラス変換の変数sを用いた下記の式(1)で表される。
【数1】
【0013】
シリーズ・スルー測定法が実施される場合、図1に示す回路は、図2に示す二端子対回路で表すことができる。図2に示す二端子対回路のFパラメータは、図1に示す回路のインピーダンスZを用いた下記の式(2)で表される。
【数2】
【0014】
<回路定数の解析手法>
後述する解析装置1で用いられる解析手法、すなわち図1に示す回路の回路定数を解析する手法が以下において説明される。
【0015】
上記の式(2)で表されるFパラメータは、下記の式(3)のようにSパラメータに変換することができる。なお、下記の式(3)中のZは、図1に示す回路の伝送線路の特性インピーダンスである。図1に示す回路の伝送線路の特性インピーダンスZの具体的な値は、例えば50Ωである。
【数3】
【0016】
そして、下記の式(4)が成り立つ。
【数4】
【0017】
以上により、図1に示す回路のSパラメータに含まれる反射特性S11及びS22は下記の式(5)で表され、図1に示す回路のSパラメータに含まれる透過特性S21及びS12は下記の式(6)で表される。
【数5】
【0018】
図1に示す回路の反射特性S11及びS22並びに透過特性S21及びS12のゲインと位相のパターンは、第1パターン及び第2パターンを含む。
【0019】
第1パターンは、2LZ/RがLに対して十分に小さい場合、又は、|(2LZ/R)s|がRに対して十分に小さくなる周波数範囲である場合である。換言すると、第1パターンは、2Z/Rを0とみなすことができる場合、又は、|(2LZ/R)s|を0とみなすことができる周波数範囲である場合である。
【0020】
第1パターンでは、反射特性S11は下記の式(7)で表される。そして、第1パターンにおける反射特性S11のゲイン及び位相は図3に示すようになる。
【数6】
【0021】
また、|2LZ|が1に対して十分に小さい場合(概ね周波数が1013[Hz]以下である場合)、第1パターンでは、透過特性S21は下記の式(8)で表される。そして、|2LZ|が1に対して十分に小さい場合、第1パターンにおける透過特性S21のゲイン及び位相は図4に示すようになる。
【数7】
【0022】
DC成分に近似できる低周波部分のゲインGLOW、ポールの周波数f、零点の周波数fzeroは、以下のように表される。したがって、まずゲインGLOWから抵抗R1の抵抗値Rが求まり、次に零点の周波数fzeroからキャパシタC1の静電容量値Cが求まり、最後にポールの周波数fからインダクタL1のインダクタンス値Lが求まる。なお、反射特性S11のゲインの変曲点周波数fはポールの周波数fとほぼ同じなるため、ポールの周波数fが抽出し難い場合等には反射特性S11のゲインの変曲点周波数fが参照されてもよい。
【数8】
【0023】
抵抗R1の抵抗値R、インダクタL1のインダクタンス値L、及びキャパシタC1の静電容量値Cの組み合わせによっては、零点の周波数fzeroがポールの周波数fより高くなる場合がある。この場合には、第1パターンにおける透過特性S21のゲイン及び位相は図5に示すようになる。
【0024】
第2パターンは、2LZ/RがLに対して十分に小さくない場合、又は、|(2LZ/R)s|がRに対して十分に小さくない周波数範囲である場合である。換言すると、第2パターンは、2Z/Rを0とみなすことができない場合、又は、|(2LZ/R)s|を0とみなすことができない周波数範囲である場合である。
【0025】
第2パターンでは、反射特性S11は下記の式(9)で表される。そして、第2パターンにおける反射特性S11のゲイン及び位相は図6に示すようになる。
【0026】
なお、第2パターンでは、透過特性S21の活用は難しい。透過特性S21の分母のsの項を無視できるのは周波数が10[Hz]以下であり、透過特性S21の分母のsの項を無視できるのは周波数が10[Hz]以下である。そして、一般的な周波数特性測定装置の周波数測定範囲は10[Hz]より高く、一般的な周波数特性測定装置では10[Hz]以下の測定ができないからである。また、10[Hz]以下の測定が可能な周波数特性測定装置を用いる場合でも、10[Hz]以下の測定は低周波故に測定に時間がかかるからである。
【数9】
【0027】
ここで、反射特性S11は以下のようにも表される。
【数10】
【0028】
そうすると、ポールの周波数fは以下のように表される。
【数11】
【0029】
また、零点の周波数fzeroは以下のように表され、DC成分に近似できる低周波部分のゲインGLOWは以下のように表される。
【数12】
【0030】
したがって、まずゲインGLOWから抵抗R1の抵抗値Rが求まり、次に零点の周波数fzeroからキャパシタC1の静電容量値Cが求まり、最後にポールの周波数fからインダクタL1のインダクタンス値Lが求まる。
【0031】
抵抗R1の抵抗値R、インダクタL1のインダクタンス値L、及びキャパシタC1の静電容量値Cの組み合わせによっては、零点の周波数fzeroがポールの周波数fより高くなる場合がある。この場合には、第2パターンにおける反射特性S11のゲイン及び位相は図7に示すようになる。
【0032】
<解析装置>
図8は、一実施形態に係る解析装置の概略構成を示す図である。図8に示す解析装置1は、取得部2と、抽出部3と、算出部4と、表示部5と、操作部6と、を備える。
【0033】
図8に示す解析装置1は、マイクロコンピュータ等の制御部CNT1と、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等のメモリM1と、を備える。メモリM1には、解析プログラムP1が記憶されている。制御部CNT1が解析プログラムP1を実行することで、制御部CNT1は、抽出部3及び算出部4として機能する。
【0034】
取得部2は、周波数特性測定装置でのシリーズ・スルー測定法によって測定されたDUTのSパラメータを取得する。取得部2は、例えば、周波数特性測定装置との間に通信を行う通信インターフェースであってもよく、DUTのSパラメータを記憶する可搬型記憶媒体からデータを読み出すことができるデータ読み出し部等であってもよい。
【0035】
抽出部3は、取得部2によって取得されたDUTのSパラメータに含まれる反射特性及び透過特性を用い、反射特性及び透過特性のゲインと位相から、ポールの周波数f、零点の周波数fzero、ゲインのDC成分に近似できる低周波部分(ゲインGLOW)を抽出する。抽出部3は、キーボード、ポインティングデバイス等の操作部6から出力される信号(ユーザの操作に応じた信号)に基づき、ポールの周波数f、零点の周波数fzero、ゲインのDC成分に近似できる低周波部分(ゲインGLOW)を抽出してもよい。また、抽出部3は、反射特性及び透過特性のゲインと位相の周波数特性を参照して、ポールの周波数f、零点の周波数fzero、ゲインのDC成分に近似できる低周波部分(ゲインGLOW)を自動的に抽出してもよい。
【0036】
算出部4は、ポールの周波数f、零点の周波数fzero、及びゲインのDC成分に近似できる低周波部分(ゲインGLOW)から、DUTの等価回路の回路定数(抗R1の抵抗値R、インダクタL1のインダクタンス値L、キャパシタC1の静電容量値C)を算出する。
【0037】
表示部5は、例えば、反射特性及び透過特性のゲインと位相の周波数特性を示すグラフ(図3等に示すグラフ)を表示する。ユーザは、表示部5の表示内容を参照して、ポールの周波数f、零点の周波数fzero、ゲインのDC成分に近似できる低周波部分(ゲインGLOW)を抽出するための操作を操作部6に対して行うことができる。
【0038】
算出部4は、反射特性及び透過特性のゲインが第1パターン、第2パターンのいずれかであるかを判別する。算出部4は、操作部6から出力される信号(ユーザの操作に応じた信号)に基づき、反射特性及び透過特性のゲインが第1パターン、第2パターンのいずれかであるかを判別してもよい。また、算出部4は、反射特性及び透過特性のゲインと位相の周波数特性を参照して、反射特性及び透過特性のゲインが第1パターン、第2パターンのいずれかであるかを自動的に判別してもよい。
【0039】
例えば、反射特性の位相が180°回らない場合に、算出部4は、反射特性及び透過特性のゲインが第1パターンであると判別し、反射特性の位相が180°回る場合に、算出部4は、反射特性及び透過特性のゲインが第2パターンであると判別すればよい。
【0040】
図9は、解析装置1の動作例を示すフローチャートである。まず、解析装置1の取得部2は、周波数特性測定装置でのシリーズ・スルー測定法によって測定されたDUTのSパラメータを取得する(ステップ#10)。次に、解析装置1の抽出部3は、反射特性及び透過特性のゲインと位相から、ポールの周波数f、零点の周波数fzero、ゲインのDC成分に近似できる低周波部分(ゲインGLOW)を抽出する(ステップ#20)。そして、解析装置1の算出部4は、DUTの等価回路の回路定数を算出し(ステップ#30)、フロー動作を終了する。
【0041】
解析装置1は、Sパラメータからインピーダンスへの変換時に一部のデータを破棄するという処理を実行せずに、DUTの等価回路の回路定数を算出することができるので、DUTの等価回路の回路定数を良好に解析することができる。
【0042】
<その他>
発明の構成は、上記実施形態のほか、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【0043】
<付記>
上述の実施形態にて具体的構成例が示された本開示について付記を設ける。
【0044】
本開示の解析装置(1)は、抵抗及びインダクタの直列接続体に対してキャパシタが並列接続されたとみなせる回路を測定対象とした周波数特性測定装置でのシリーズ・スルー測定法によって測定されたDUTのSパラメータに含まれる反射特性及び透過特性を用い、前記反射特性及び前記透過特性のゲインと位相から、ポールの周波数、零点の周波数、前記ゲインのDC成分に近似できる低周波部分を抽出するように構成された抽出部(3)と、前記ポールの周波数、前記零点の周波数、及び前記低周波部分から、前記DUTの等価回路の回路定数を算出するように構成された算出部(4)と、を備え、前記等価回路は、抵抗(R1)及びインダクタ(L1)の直列接続体に対してキャパシタ(C1)が並列接続されたとみなせる回路である構成(第1の構成)である。
【0045】
上記第1の構成の解析装置において、前記反射特性及び前記透過特性の前記ゲインと前記位相のパターンが第1パターン及び第2パターンを含み、前記反射特性及び前記透過特性の前記ゲインと前記位相が前記第1パターンであるときに、前記算出部は前記透過特性を用い、前記反射特性及び前記透過特性の前記ゲインと前記位相が前記第2パターンであるときに、前記算出部は前記反射特性を用いる構成(第2の構成)であってもよい。
【0046】
上記第2の構成の解析装置において、前記反射特性及び前記透過特性の前記ゲインと前記位相が前記第1パターンであるときに、前記反射特性の前記位相は180°回らず、前記反射特性及び前記透過特性の前記ゲインと前記位相が前記第2パターンであるときに、前記反射特性の前記位相は180°回る構成(第3の構成)であってもよい。
【0047】
上記第2又は第3の構成の解析装置において、前記反射特性及び前記透過特性の前記ゲインと前記位相が前記第1パターンであるときに、前記算出部は、前記回路の伝送線路の特性インピーダンスZ及び前記抵抗の抵抗値Rで表される式2Z/Rを0とみなす構成(第4の構成)であってもよい。
【0048】
上記第2又は第3の構成の解析装置において、前記反射特性及び前記透過特性の前記ゲインと前記位相が前記第1パターンであるときに、前記算出部は、前記インダクタのインダクタンスL、前記回路の伝送線路の特性インピーダンスZ、前記抵抗の抵抗値R、及びラプラス変換の変数sで表される式 |(2LZ/R)s|を0とみなす構成(第5の構成)であってもよい。
【0049】
上記第2~第5いずれかの構成の解析装置において、前記反射特性及び前記透過特性の前記ゲインと前記位相が前記第2パターンであるときに、前記算出部は、前記回路の伝送線路の特性インピーダンスZ及び前記抵抗の抵抗値Rで表される式2Z/Rを0とみなさない構成(第6の構成)であってもよい。
【0050】
本開示の解析プログラムは、コンピュータを、周波数特性測定装置でのシリーズ・スルー測定法によって測定された前記DUTのSパラメータに含まれる反射特性及び透過特性を用い、前記反射特性及び前記透過特性のゲインと位相から、ポールの周波数、零点の周波数、前記ゲインのDC成分に近似できる低周波部分を抽出するように構成された抽出部(3)、並びに、前記ポールの周波数、前記零点の周波数、及び前記低周波部分から、前記DUTの等価回路の回路定数を算出するように構成された算出部(4)として機能させ、前記等価回路は、抵抗及びインダクタの直列接続体に対してキャパシタが並列接続されたとみなせる回路である構成(第7の構成)である。
【符号の説明】
【0051】
1 解析装置
2 取得部
3 抽出部
4 算出部
5 表示部
6 操作部
C1 キャパシタ
L1 インダクタ
R1 抵抗
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9