(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135938
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】露光装置用露光ヘッド、露光装置および露光方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20240927BHJP
G02B 5/04 20060101ALI20240927BHJP
G02B 5/08 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G03F7/20 501
G02B5/04 A
G02B5/04 B
G02B5/08 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046856
(22)【出願日】2023-03-23
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2022年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「省エネエレクトロニクスの製造基盤強化に向けた技術開発事業/半導体製造装置の高度化に向けた開発/三次元積層関連の革新的な後工程用露光装置の研究開発」の委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000128496
【氏名又は名称】株式会社オーク製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 真
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】奥山 隆志
【テーマコード(参考)】
2H042
2H197
【Fターム(参考)】
2H042CA06
2H042CA14
2H042CA17
2H042DB01
2H042DD04
2H197AA05
2H197AA28
2H197BA02
2H197BA06
2H197BA16
2H197CA01
2H197CA05
2H197CA07
2H197CC05
2H197CC11
2H197CC16
(57)【要約】
【課題】DMDなどの光変調素子アレイを備えた露光装置において、パターンの高解像度化に適応した分割光学系を提供する。
【解決手段】露光装置10は、露光ヘッド20を備え、露光ヘッド20は、DMD22、第1結像光学系30、分割光学系40、第2結像光学系50を含む投影光学系25を備える。分割光学系40は、第1結像光学系30の結像面に位置する入射面によって分割されたパターン像を、異なる走査バンド領域B1~B3に投影する。そして、各分割パターン像の結像面から投影エリアTA1~TA3までの光路長が互いに等しくなるように、分岐光学系42が構成される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光変調素子アレイで変調された光を分割し、露光面に、複数の分割光をそれぞれ結像させる投影光学系を備え、
前記投影光学系が、前記光変調素子アレイで変調された光の結像面の位置に入射面のある分割光学系を備え、
前記分割光学系が、前記複数の分割光それぞれに対して定められた前記結像面から前記露光面までの光路長を、揃えていることを特徴とする露光装置用露光ヘッド。
【請求項2】
前記分割光学系が、前記複数の分割光をそれぞれ異なる経路で前記露光面へ導く、複数の反射面を有し、
前記複数の分割光の前記結像面から前記露光面までの光路長がそれぞれ等しくなるように、前記複数の反射面が設置されることを特徴とする請求項1に記載の露光装置用露光ヘッド。
【請求項3】
前記分割光学系が、平行平面関係にあって、中央の分割光を反射する反射面対を有し、
前記反射面対が、他の分割光の光路長に合わせて、互いの距離間隔および位置が定められていることを特徴とする請求項1に記載の露光装置用露光ヘッド。
【請求項4】
前記結像面の下方に位置する反射面の幅が、前記結像面の下方に向けて拡大していることを特徴とする請求項3に記載の露光装置用露光ヘッド。
【請求項5】
前記反射面対が、一対のミラー、または一対のプリズムの内面反射面として構成されることを特徴とする請求項3に記載の露光装置用露光ヘッド。
【請求項6】
前記分割光学系が、前記光変調素子アレイで変調された光を、2n+1(nは1以上の整数)のパターン光に分割し、
前記分割光学系が、中央の分割光を、前記露光面において、前記投影光学系の光軸から最も離れた位置に結像させることを特徴とする請求項1に記載の露光装置用露光ヘッド。
【請求項7】
前記分割光学系が、前記光変調素子アレイで変調された光を、あらかじめ定められた中央付近の領域に結像する光を除き、2n(nは1以上の整数)のパターン光に分割することを特徴とする請求項1に記載の露光装置用露光ヘッド。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の露光装置用露光ヘッドを備え、
前記光変調素子アレイで変調された光を分割し、露光面の副走査方向に沿って互いに異なる走査バンド領域に、複数の分割光をそれぞれ結像させることを特徴とする露光装置。
【請求項9】
光変調素子アレイで変調された光を用いて被描画体の露光面に露光する露光方法であって、
投影光学系によって、光変調素子アレイで変調された光を分割し、露光面の副走査方向に沿って互いに異なる走査バンド領域に、複数の分割光をそれぞれ結像させる露光方法であって、
前記光変調素子アレイで変調された光の結像面の位置に入射面のある分割光学系によって、前記結像面から、露光面上での相対的位置関係があらかじめ定められた複数の分割露光領域までの光路長を、揃える
ことを特徴とする露光方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DMD(Digital Micro-mirror Device)などの光変調素子アレイを用いてパターンを基板などへ投影する露光装置に関し、特に、パターン光を露光面へ投影する投影光学系に関する。
【背景技術】
【0002】
DMDを備えた露光装置では、可動ミラーをマトリクス状に配列させた光変調素子アレイを制御し、光変調素子アレイで変調した光を、パターン光として基板に投影する。
【0003】
露光装置では、分割光学系を用いることによってパターン光を分割し、基板に投影することが可能である(特許文献1参照)。そこでは、光変調素子アレイで反射した光を、結像面の位置に入射面のある分割光学系によって分割する。そして、分割された複数のパターン光を、副走査方向に沿ってそれぞれ異なる走査バンド領域に投影する。
【0004】
また、結像面位置に入射面のあるプリズムと、反射光学系とを組み合わせた分割光学系も提案されている(特許文献2参照)。そこでは、反射光学系の一部を平行移動、あるいは回転移動させることにより、分割パターン像の露光面上での結像位置を移動させる。また、反射光学系の代わりに相対移動可能な一対のプリズムを配置することによって、同様に結像位置を調整(変更)することができる。
【0005】
投影光学系に分割光学系を配置した場合、分割されたパターン光を、露光面上において合焦させる必要がある。そのため、分割光学系から出射したパターン光の光路長を調整する光路長調整用光学部材が、基板側に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-247711号公報
【特許文献2】特開2021-96300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
パターンの高解像度化に伴い、投影光学系の高NA化が求められる。しかしながら、NAを高めることは、投影光学系の大型化を招く。DMDなどの光変調素子アレイの反射光は、進行とともに拡がるため、分割光学系内の光路長が長くなると、分割光学系自体のサイズも大型化する。
【0008】
一方、分割光学系は、光変調素子アレイの反射光の結像面と、分割光学系下方に設けられる結像光学系の入射面との間に配置しなければならず、配置スペースに制約がある。
【0009】
したがって、DMDなどの光変調素子アレイを備えた露光装置において、パターンの高解像度化に適応した分割光学系を構成することが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の露光装置用露光ヘッドは、光変調素子アレイで変調された光を分割し、露光面に、複数の分割光をそれぞれ結像させる投影光学系を備える。露光装置では、光変調素子アレイで変調された光を分割し、露光面の副走査方向に沿って互いに異なる走査バンド領域に、複数の分割光をそれぞれ結像させる。
【0011】
投影光学系は、光変調素子アレイで変調された光の結像面の位置に入射面のある分割光学系を備える。そして、本発明の分割光学系は、複数の分割光それぞれに対して定められた結像面から露光面までの光路長を、揃えている。
【0012】
ここで、「複数の分割光それぞれに対して定められた結像面から露光面までの光路長」とは、軸回転、平行移動などの可動ミラーによって任意の分割光の光路長を変調、調整されることがなく、露光装置に露光装置用露光ヘッドが組み込まれた段階で定められた段階で、各分割光それぞれの露光領域(ここでは、分割露光領域という)までの光路長を表す。
【0013】
その意味において、本発明の分割光学系は、少なくとも光を分割する光学系に関し、光路長を変更可能な可動ミラーを含まず、あるいは、光路長調整部材を含まない光学系とみなすことができる。複数の分割露光領域は、露光面上での相対的位置関係があらかじめ定められているといえる。
【0014】
そして、可動ミラーや光路長調整部材などを含まない本発明の分割光学系は、複数の分割光の露光面上での結像位置が同一平面上となるように、光路長を揃えている光学系として構成されているということができる。
【0015】
分割光学系の形態は様々であり、ミラーやプリズム、あるいはそれらの組み合わせで構成することが可能である。例えば、分割光学系は、複数の分割光をそれぞれ異なる経路で露光面へ導く、複数の反射面を備えるように構成することができる。そして、結像面から露光面までの光路長がそれぞれ等しくなるように、複数の反射面が設置される。
【0016】
例えば、分割光学系は、平行平面関係にあって、中央の分割光を反射する反射面対を備えるように構成することができる。この場合、他の分割光の光路長に合わせて、中央の分割光に応じた反射面対の互いの距離間隔および位置を定めることによって、光路長を揃えることができる。
【0017】
反射面対は、例えば、一対のミラー、または一対のプリズムの内面反射面として構成することができる。反射面対が、一対のプリズムの内面反射面として構成される場合、分割光学系が、一対のプリズムの間に介在する平行平面板を備えるように構成することができる。
【0018】
反射面対を備えた分割光学系の構成においては、分割光学系の入射面から下方への光の拡がりを考慮し、結像面の下方に位置する反射面の幅が、結像面の下方に向けて拡大するように、反射面を構成することができる。
【0019】
分割光学系は、光の分割数(分岐の数)に合わせて構成することができる。例えば、分割光学系は、光変調素子アレイで変調された光奇数、すなわち2n+1(nは1以上の整数)のパターン光に分割することが可能である。この場合、分割光学系は、中央の分割光を、投影光学系の光軸から最も離れた位置に結像させるように構成することができる。
【0020】
また、分割光学系は、光変調素子アレイで変調された光を、2n(nは1以上の整数)のパターン光に分割することができる。この場合、分割光学系は、入射面中央付近に隙間を設けるなどすることにより、あらかじめ定められた中央付近の領域に結像する光を除いて分割するように構成することができる。
【0021】
本発明の他の態様である露光方法は、光変調素子アレイで変調された光を用いて被描画体の露光面に露光する露光方法であって、投影光学系によって、光変調素子アレイで変調された光を分割し、露光面の副走査方向に沿って互いに異なる走査バンド領域に、複数の分割光をそれぞれ結像させる露光方法であって、光変調素子アレイで変調された光の結像面の位置に入射面のある分割光学系によって、結像面から、露光面上での相対的位置関係があらかじめ定められた複数の分割露光領域までの光路長を、揃える。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、DMDなどの光変調素子アレイを備えた露光装置において、パターンの高解像度化に適応した分割光学系を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】第1の実施形態である露光装置を模式的に示した斜視図である。
【
図2】露光ヘッドの内部構成を模式的に示した図である。
【
図3】3つの分割パターン像に応じたDMDにおける分割領域、および露光面に投影される3つの分割パターン像の位置を示した図である。
【
図7】分岐光学系の変形例となる反射光学系の一部を示した斜視図である。
【
図9】分岐光学系の変形例となる反射光学系を示した斜視図である。
【
図10】第2の実施形態における分割光学系の概略的斜視図である。
【
図11】第2の実施形態における分割光学系の中央部分の概略的断面図である。
【
図12】第2の実施形態における露光面に投影される5つの分割パターン像の位置を示した図である。
【
図13】第3の実施形態における分割光学系の概略的斜視図である。
【
図14】第3の実施形態における露光面に投影される6つの分割パターン像の位置を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、第1の実施形態である露光装置を模式的に示した斜視図である。
【0025】
露光装置10は、フォトレジストなどの感光材料を塗布、あるいは貼り付けた基板Wに対し、パターン光を直接投影するマスクレス露光装置であって、ゲート状構造体12と、基台14とを備える。基板Wは、基台14によって支持される描画テーブル15に搭載される。
【0026】
描画テーブル15は、ステージ駆動機構(図示せず)によって、主走査方向(以下、X方向ともいう)、副走査方向(以下、Y方向ともいう)に移動可能である。描画テーブル15に対しては、互いに直交するX-Y-Z座標系が規定されている。
【0027】
基台14を跨ぐように配置されたゲート状構造体12には、光源部16が設けられている。光源部16は、水銀ランプ、LED、あるいはレーザダイオードなどによって構成される。また、基台14には、複数の露光ヘッド20(ここでは2つ)が所定間隔で並んで設置されている。露光ヘッド20による露光動作によって、パターンが基板Wに投影される。
【0028】
図2は、露光ヘッド20の内部構成を模式的に示した図である。
【0029】
露光ヘッド20は、DMD(Digital Micro-mirror Device)22と、投影光学系25とを備える。光源部16から照射された照明光は、照明光学系17を介してDMD22へ導かれる。DMD22は、数μm~数十μmの微小矩形状マイクロミラーをマトリクス状に2次元配列させたデバイスとして構成することが可能である。
【0030】
DMD22では、メモリセルに格納される制御信号(露光データ)に基づいて、各マイクロミラーがそれぞれ選択的にON/OFF制御される。ON状態のマイクロミラーで反射した光、すなわち変調された光は、ミラー(図示せず)を介して投影光学系25へ導かれる。
【0031】
投影光学系25は、パターン光を基板Wの露光面に結像させる光学系であり、第1結像光学系30、分割光学系40、第2結像光学系50を備える。第1結像光学系30は、DMD22によって変調された光を、焦点位置にある結像面(以下、第1結像面ともいう)に結像させるとともに、パターン像全体を所定倍率で拡大する。
【0032】
分割光学系40は、第1結像面に結像したパターン光を、複数のパターン光に分割する。ここでは、分割光学系40が、第1結像面上においてパターン光を3つに分岐させる。言い換え得れば、パターン像全体を3つのパターン像(以下、分割パターン像という)に分割する。第2結像光学系50は、分割光学系40による3つのパターン光(以下、分割光ともいう)を、基板Wの露光面に結像させる。
【0033】
分割光学系40は、第2結像光学系50に組み込まれた光学系とみなすことができる。第2結像光学系50の前側焦点位置にある結像面は、第1結像光学系30の結像面(焦点位置)に一致し、また、後側焦点位置にある結像面は、基板Wの露光面と一致する。
【0034】
露光ヘッド20は、ここでは主走査方向(X方向)に対して微小角度傾斜した状態で配置されている。描画テーブル15を-X方向に沿って移動させ、基板Wが移動するのに伴い、DMD22による投影エリア(露光領域)が主走査方向(+X方向)に相対移動する。そして、投影エリアの位置に応じたパターン光を照射する露光動作が、所定の露光ピッチに応じて実行される。
【0035】
ここでは、ステップ&リピート方式あるいは連続移動方式に従って、多重露光(オーバラップ露光)動作が実行される。X方向に沿った走査が終了すると、描画テーブル15を副走査方向に移動させ、描画テーブル15を往復移動させる。これにより、基板W全体にパターンが形成される。
【0036】
図3は、3つの分割パターン像に応じたDMDにおける分割領域、および露光面に投影される3つの分割パターン像の位置を示した図である。
図3を用いて、パターン像の分割および投影位置について説明する。
【0037】
図3に示すように、DMD22の反射面には、主走査方向(X方向)に対応する横方向に沿って3等分した部分領域DM1、DM2、DM3(以下、分割領域という)が規定されている。DMD22全体のパターン像は、分割光学系40によって、分割領域DM1、DM2、DM3ごとに異なる位置へ投影される。
【0038】
分割光学系40によって形成される3つの分割パターン像MP1、MP2、MP3は、基板Wの露光面で、副走査方向Yに沿って異なる走査バンド領域B1~B3に投影される。第1結像面FS、すなわち分割光学系40の入射面に形成される中央の分割パターン像MP2は、走査バンド領域B1に投影される。また、その左側の分割パターン像MP1が走査バンド領域B2に投影され、右側の分割パターン像MP3が、走査バンド領域B3に投影される。なお、3つの分割パターン像MP1、MP2、MP3の一部を互いにオーバラップさせながら投影してもよい。
【0039】
分割光学系40は、露光動作中、連なった走査バンド領域B1~B3に渡って同時にパターン形成することを可能にする。DMD22の分割領域DM1、DM2、DM3では、それぞれ走査バンド領域B1、B2、B3に形成すべきパターン像の描画データに基づいて、各マイクロミラーがON/OFF制御される。
【0040】
露光動作中に3つの分割パターン像MP1、MP2、MP3が形成される投影エリア(分割露光領域)TA1、TA2、TA3は、主走査方向(X方向)に沿って互いに所定間隔Lだけ離れている。投影エリアTA1、TA2、TA3の互いの相対的位置関係、すなわち、X、Y方向に沿った互いの距離間隔は、あらかじめ規定されている。ここでは、投影エリアTA3が先頭の投影位置に該当し、投影エリアTA2、TA1が所定時間遅れて同じX座標位置を通過していく。露光装置10の制御部(図示せず)は、投影エリアTA1、TA2、TA3の位置に応じて露光動作制御を実行する。なお、露光動作時のデータ処理に関しては、特許文献1と同様のデータ処理を適用することが可能であり、詳細な説明はここでは省略する。
【0041】
本実施形態では、分割光学系40が、DMD22によって変調した光を3つのパターン光に分割し、分割光を分岐させて走査バンド領域B1~B3にそれぞれ結像させる。このとき、中央部の分割パターン光を、投影光学系25の光軸Cから最も離れた走査バンド領域B1に結像させる。また、分割光学系40は3つの分割パターン光の結像面(第1結像面)FSから投影エリアTA1~TA3までの光路長を揃えている。すなわち、各分割光はそれぞれ異なる経路を通って異なる走査バンド上で結像し、各分割光の光路長はそれぞれ等しくなる。また、分割光学系40の各反射面は、第1結像面FSから投影エリアTA1~TA3までの光路長がそれぞれ等しくなるように設置される。
【0042】
図4は、分割光学系40の概略的斜視図である。
図5は、分割光学系40の概略的分解斜視図である。
図6は、分割光学系40の中央部の概略的断面図である。
図4~6を用いて、分割光学系40の構成について説明する。
【0043】
上述したように、分割光学系40の入射面MPは、光軸Cに沿って第1結像面FSの位置にあって、分割光学系40は、DMD22全体のパターン像を入射面MPにおいて3つの分割パターン像MP1~PM3に分割する。また、分割光学系40は、中央部分の分割パターン像MP2の光を、投影エリアTA2に向けて進行させる光学系(以下、分岐光学系という)42と、その両側の分割パターン像MP2、PM3の光を投影エリアTA2、TA3に向けてそれぞれ進行させる光学系(以下、分岐光学系という)46、48を備える。
【0044】
分岐光学系42、および分岐光学系46、48は、ここではプリズムとして構成されている。
図5に示すように、分岐光学系42は、三角柱状のプリズム43と、光軸Cに沿った断面が台形であって、主走査方向に沿った側面が三角形状、副走査方向に沿った側面が台形であるプリズム44から構成される。
【0045】
図6に示すように、プリズム43の側面43Sとプリズム44の側面44Sは、面全体で接している。また、プリズム44は、DMD22の分割領域DM2に応じた反射光が結像する入射面MP02を有し、入射面MP02の下方に位置するプリズム内面44Rが、反射面として構成される。また、プリズム43の内面43Rが、反射面として構成される。反射面43R、44Rは、互いに平行平面関係にある。
【0046】
分岐光学系46は、2つのプリズム46A、46Bから構成されている。プリズム46Aは、互いに平行平面関係にある一対の反射面47R1、47R2を備えている。反射面47R1は、その一辺が入射面MPに沿って延び、副走査方向(Y方向)に応じた方向にパターン像を分割する境界ラインR1を規定する。プリズム46Aの底面で接するプリズム46Bは、互いに平行平面関係にある一対の反射面47R3、47R4を有する。
【0047】
分岐光学系48も、分岐光学系46と同様、パターン像分割の境界ラインR2が規定される入射面MP03を有するプリズム48Aと、プリズム48Bから構成される。また、プリズム48A、48Bは、プリズム46A、46Bと同様、それぞれ一対の反射面を有する。なお、分岐光学系46、48の反射面対の構成については、特許文献1に記載された一対の反射光学系と同様の構成であり、詳しい説明は省略する。
【0048】
本実施形態では、分岐光学系42、46、48それぞれの入射面MP01、MP02、MP03から露光面までの光路長が互いに等しくなるように、分割光学系40が構成されている。具体的には、分岐光学系42の入射面MP02に入射する分割光の投影エリアTA2までの光路長PL2が、分岐光学系46、48の入射面MP01、MP03に入射する分割光の投影エリアTA1、TA3までの光路長PL1、PL3と等しくなるように、分岐光学系42のプリズム43、44が構成されている。
【0049】
より具体的に説明すると、光路長PL2が光路長PL1、PL2と等しくなるように、分岐光学系42の反射面43R、44Rとの間の距離間隔、すなわちプリズム43、44の厚さが定められている。また、反射面43R、44Rの位置、すなわち傾斜角度(反射角度)が定められている。例えば、反射面43R、44Rの位置を調整したプリズム43、44を構成することにより、光路長PLを調整することができる(
図6の符号AY参照)。
【0050】
上述したように、3つの分割光の投影エリアTA1、TA2、TA3は、その相対的位置関係があらかじめ定められており、主走査方向、副走査方向に沿った互いの距離間隔は一定である。光路長PL1~PL3が互いに等しいことにより、分岐光学系42、46、48下方に、分割光ごとに個別に光路調整するための光学部材が配置されていない。
【0051】
以上説明したように、本実施形態では、露光ヘッド20が、DMD22、第1結像光学系30、分割光学系40、第2結像光学系50を含む投影光学系25を備え、分割光学系40は、第1結像光学系30の結像面に位置する入射面によって分割されたパターン像を、異なる走査バンド領域B1~B3に投影する。そして、各分割パターン像の結像面から投影エリアTA1~TA3までの光路長が互いに等しくなるように、分岐光学系42が構成されている。投影光学系25の光軸C方向に沿ってコンパクトな分割光学系40を構成することで、高NA化のために投影光学系25が大型化となり、第1結像光学系30の第1結像面FSと第2結像光学系50の入射面との間のスペースに制約が生じても、分割光学系40の配置が可能となる。
【0052】
以上説明した分割光学系40は、それぞれプリズムで構成される分岐光学系42、46、48によって構成されている。しかしながら、プリズムの代わりにミラーで構成することも可能である。
【0053】
図7は、分岐光学系42の代替であって変形例となる反射光学系の一部を示した斜視図である。
図8は、変形例である反射光学系の断面図である。
図9は、分岐光学系46の代替であって変形例となる反射光学系を示した斜視図である。
【0054】
図8に示すように、分岐光学系42’は、互いに平行平面関係にある一対のミラー43’R、44’Rによって構成される。互いの距離間隔、位置は、上述した分岐光学系42と同様、光路長L1、L2、L3が互いに等しくなるように定められている。
【0055】
図9に示すように、分岐光学系46’は、互いに平行平面関係にある一対のミラー47’R1、47’R2と、互いに平行平面関係にある一対のミラー47’R3、47’R4から構成される。一対のミラー47’R1、47’R2は、上述した分岐光学系46の反射面対47R1、47R2に対応し、一対のミラー47’R3、47’R4は、上述した分岐光学系46の反射面対47R3、47R4に対応している。分岐光学系42’を間に挟んで反対側にある分岐光学系(ここでは図示せず)についても、同様に2対のミラーで構成されている。
【0056】
図7には、分岐光学系42’における一方のミラー44’Rを示している。ミラー44’Rは、第1結像面FSから入射する分割光の拡がりを考慮し、下方に向けてそのサイズ(幅)が拡がっている。
【0057】
このようなミラーで構成される分岐光学系によって分割光学系を構成することにより、波長の違いによる光路長の変化が生じない。したがって、マルチバンドの光を照射する光源に適応することができる。
【0058】
次に、
図10~12を用いて、第2の実施形態である露光装置について説明する。第2の実施形態では、DMDで変調した光を、5つのパターン光として分割し、投影する。
【0059】
図10は、第2の実施形態における分割光学系の概略的斜視図である。
図11は、第2の実施形態における分割光学系の中央部分の概略的断面図である。
【0060】
分割光学系140は、プリズム150と反射光学系160とを備える。第1結像面FSと同じ位置にある入射面MPでは、DMD22全体のパターン像が、5つのパターン像に分割される。分岐光学系142は、その中央部分の分割パターン像の光を分岐する光学系であり、第1の実施形態と同様の形状をもつプリズム143と、プリズムプリズム144とを備え、さらに、平行平面板145を備えている。プリズム143の一部は、プリズム150に組み込まれている。
【0061】
図11に示すように、プリズム143、144は、互いに平行平面関係にある反射面143R、144Rをそれぞれ有する。また、平行平面板145が、プリズム143、144の間に介在し、プリズム143、144の側面143S、144Sと接している。
【0062】
図12は、第2の実施形態における露光面に投影される5つの分割パターン像の位置を示した図である。
【0063】
図12に示すように、5つの分割パターン像MP’1~MP’5は、互いに異なる走査バンド領域B1~B5にそれぞれ投影される。5つの分割パターン像MP’1~MP’5の投影エリアTA’1~TA’5の相対的な位置関係は、あらかじめ定められている。
【0064】
中央部分の分割パターン像MP’3は、投影光学系25の光軸Cから最も離れた走査バンド領域B1に投影される。そして、第1の実施形態と同様、入射面MP(第1結像面FS)から5つの分割パターン像MP’1~MP’5の投影エリアTA’1~TA’5までの光路長が互いに等しくなるように、反射面143R、144Rの距離間隔、位置および平行平面板の厚さT(
図12参照)が定められる。特に第2の実施形態では、平行平面板145の厚さTの調整により、光路長PL’が調整される。
【0065】
なお、プリズム150の分岐光学系142を除く部分の構成、および反射光学系160の構成は、特許文献2に示すようなプリズムおよびミラー対によって構成することが可能であり、ここでの詳細な説明は省略する。
【0066】
このように5つの分割パターン像MP’1~MP’5を連なった走査バンド領域B1~B5にそれぞれ投影することにより、より広い露光幅で露光を同時に実行することが可能となり、サイズの大きい基板に対しても、スループットを向上させることができる。また、光路長調整用の光学部材を配置しないため、コンパクトな分割光学系を構成することができる。
【0067】
次に、
図13、14を用いて、第3の実施形態である露光装置について説明する。第3の実施形態では、DMDで変調した光を、6つのパターン光として分割し、投影する。
【0068】
図13は、第3の実施形態における分割光学系の概略的斜視図である。分割光学系240は、プリズム250と、その下方に位置する図示しない反射光学系とを備え、分岐光学系242、242’を備えている。ただし、ここでは、プリズム250に組み込まれるプリズム244、244’のみ図示している。また、分岐光学系242、242’を除くプリズム250の構成および図示しない反射光学系に関しては、第2の実施形態と同様、特許文献2に記載されたプリズムおよび反射光学系の構成を適用することが可能である。
【0069】
プリズム244、244’は、第1の実施形態のプリズム44と同様の形状であり、また、第1の実施形態のプリズム44と同様の形状である図示しない三角柱状のプリズムを備え、さらに、第1の実施形態と同様に図示しない平行平面板を間に介在させている。
【0070】
プリズム244、244’は、主走査方向Xに沿って所定の距離間隔GSの隙間をあけて配置されている。そして、プリズム244、244’の入射面MP03、MP04の下方に位置する内面反射面が、下方に向けてそのサイズ(幅)を拡大させている。
【0071】
プリズム244、244’は、副走査方向に関して互いの向きが逆になるように配置されている。したがって、分岐光学系242、242’における分割光の進行方向は、互いに反対方向となる。その一方で、互いの光路長は等しい。分岐光学系242、242’それぞれの断面は、第2の実施形態と同様の断面形状となる。
【0072】
第1、第2の実施形態と同様、分岐光学系242、242’の光路長が他の分割パターン像の光路長と等しくなるように、平行平面関係にある反射面の距離間隔と位置、および平行平面板の厚さが定められている。なお、分割光学系240の中央部に所定の距離間隔GSの隙間を設けているため、露光処理では、その部分に応じたDMD領域に対し、OFFデータを設定すればよい。
【0073】
図14は、第3の実施形態における露光面に投影される6つの分割パターン像の位置を示した図である。
【0074】
図14に示すように、中央部に近い分割パターン像MP”3、MP”4が、投影光学系25の光軸Cから最も離れた走査バンド領域B1、B6に投影される。そして、その両側にある分割パターン像MP”1、MP”2、MP”5、MP”6は、それぞれ走査バンド領域B2~B5に投影される。分割パターン像MP”1~MP”6の投影エリアTA”1~TA”6に関しては、その相対的位置関係があらかじめ定められている。
【0075】
このように第3の実施形態によれば、DMDで変調した光を、6つの分割光に分割し、基板Wに投影させることができる。これにより、コンパクトな分割光学系を構成しながら、より一層スループットを向上させることができる。
【0076】
第2、第3の実施形態では、分割光学系をプリズムで構成しているが、第1の実施形態の変形例と同様、ミラー対によって構成してもよい。また、3分割、5分割に限定されず、奇数の分割光を投影する分割光学系を構成することが可能である。さらに、6分割以外で偶数の分割光を投影する分割光学系を構成してもよい。
【符号の説明】
【0077】
10 露光装置
20 露光ヘッド
25 投影光学系
30 第1結像光学系
40 分割光学系
50 第2結像光学系
FS 第1結像面(結像面)