IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 積水化学工業株式会社の特許一覧

特開2024-135939繊維強化複合材製造用材料セット及び繊維強化複合材の製造方法
<>
  • 特開-繊維強化複合材製造用材料セット及び繊維強化複合材の製造方法 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135939
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】繊維強化複合材製造用材料セット及び繊維強化複合材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/06 20060101AFI20240927BHJP
   D06M 23/16 20060101ALI20240927BHJP
   C08J 5/04 20060101ALI20240927BHJP
   D06M 23/08 20060101ALI20240927BHJP
   D06M 15/59 20060101ALN20240927BHJP
   D06M 15/55 20060101ALN20240927BHJP
   D06M 101/40 20060101ALN20240927BHJP
【FI】
C08J5/06
D06M23/16
C08J5/04 CEZ
D06M23/08
D06M15/59
D06M15/55
D06M101:40
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046857
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中塚 和希
【テーマコード(参考)】
4F072
4L031
4L033
【Fターム(参考)】
4F072AA07
4F072AB10
4F072AB22
4F072AC05
4F072AD23
4F072AE06
4F072AF06
4F072AG03
4F072AH04
4F072AH21
4L031AA27
4L031AB01
4L031BA31
4L031CA06
4L033AA09
4L033AB01
4L033AC12
4L033CA20
4L033CA49
4L033CA55
(57)【要約】
【課題】得られる繊維強化複合材において、曲げ強度を高めることができ、かつ、曲げ強度のばらつきを抑えることができる繊維強化複合材製造用材料セットを提供する。
【解決手段】本発明に係る繊維強化複合材製造用材料セットは、繊維強化複合材を製造するための材料セットであって、母材樹脂成分と繊維束との材料セットであり、前記母材樹脂成分と前記繊維束との組み合わせが、特定の測定方法により測定される母材樹脂成分の上昇高さが2.5cm以上となる組み合わせである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化複合材を製造するための材料セットであって、
母材樹脂成分と繊維束との材料セットであり、
前記母材樹脂成分と前記繊維束との組み合わせが、下記の測定方法により測定される母材樹脂成分の上昇高さが2.5cm以上となる組み合わせである、繊維強化複合材製造用材料セット。
母材樹脂成分の上昇高さの測定方法:前記繊維束を切断し、長さ50cm及び繊維数24000本の繊維束Xを得る。前記繊維束Xの一端に重さ25gの重りを吊り下げ、前記繊維束Xの前記一端から他端に向かって5cmの位置まで、前記繊維束Xを前記重りごと、溶融状態の前記母材樹脂成分に浸漬する。浸漬してから24時間以上経過した後に、前記繊維束Xから離れた位置の母材樹脂成分の上面と、前記繊維束Xに接している位置の母材樹脂成分の上面との距離を測定し、前記距離を母材樹脂成分の上昇高さとする。
【請求項2】
前記繊維束が、繊維と、前記繊維の外表面上に付着したサイジング剤とを含む、請求項1に記載の繊維強化複合材製造用材料セット。
【請求項3】
前記サイジング剤が、前記繊維の外表面上にて、離散的に付着している、請求項2に記載の繊維強化複合材製造用材料セット。
【請求項4】
前記繊維束が、繊維と、前記繊維間に配置されたフィラーとを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の繊維強化複合材製造用材料セット。
【請求項5】
前記繊維束の繊維が、炭素繊維である、請求項1~3のいずれか1項に記載の繊維強化複合材製造用材料セット。
【請求項6】
前記母材樹脂成分が、熱硬化性樹脂と、硬化剤とを有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の繊維強化複合材製造用材料セット。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか1項に記載の繊維強化複合材製造用材料セットを用いて繊維強化複合材を製造する方法であって、
前記繊維束の繊維間部分に、前記母材樹脂成分を含浸させる含浸工程を備える、繊維強化複合材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化複合材を製造するための材料セットに関する。また本発明は、上記材料セットを用いる繊維強化複合材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マトリックス樹脂が、炭素繊維等の強化繊維によって強化された繊維強化複合材が知られている。繊維強化複合材は、軽量でありながら、強度、剛性及び寸法安定性に優れるという利点を有する。そのため、繊維強化複合材は、自動車及び航空機等の車両、事務機器、ICトレイ、ノートパソコンの筐体、止水板、並びに風車翼等の様々な用途に用いられており、その需要は年々増加しつつある。
【0003】
繊維強化複合材は、繊維束の繊維間部分にマトリックス樹脂(母材樹脂成分)を含浸させることにより製造されている。しかしながら、繊維間部分に母材樹脂成分を良好に含浸させることは困難である。繊維間部分に母材樹脂成分が含浸していない部分(ボイド)が存在すると、その部分に起因して、繊維強化複合材の曲げ強度が低下したり、曲げ強度のばらつきが大きくなったりする。
【0004】
従来、繊維間部分に母材樹脂成分を良好に含浸させるための方法として、繊維との濡れ性を高めるように変質された母材樹脂を用いる方法、及び下記の特許文献1に記載のように気流によって繊維の間隔を広げる方法等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-172562号公報
【特許文献2】特開2016-056491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
繊維との濡れ性を高めるように変質された母材樹脂を用いる方法では、母材樹脂成分の繊維間部分への含浸性をある程度高めることができるものの、変質された母材樹脂に起因して、繊維強化複合材の曲げ強度が低下することがある。
【0007】
特許文献1に記載のような気流によって繊維の間隔を広げる方法では、繊維束の全体を均一に開繊することが困難であるため、母材樹脂成分の繊維間部分への含浸性を十分に高めることは困難である。そのため、繊維強化複合材の曲げ強度を十分に高めることができなかったり、曲げ強度のばらつきを十分に小さくすることができなかったりする。
【0008】
本発明の目的は、得られる繊維強化複合材において、曲げ強度を高めることができ、かつ、曲げ強度のばらつきを抑えることができる繊維強化複合材製造用材料セットを提供することである。また、本発明は、上記繊維強化複合材製造用材料セットを用いる繊維強化複合材の製造方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書において、以下の繊維強化複合材製造用材料セット及び繊維強化複合材の製造方法を開示する。
【0010】
項1.繊維強化複合材を製造するための材料セットであって、母材樹脂成分と繊維束との材料セットであり、前記母材樹脂成分と前記繊維束との組み合わせが、下記の測定方法により測定される母材樹脂成分の上昇高さが2.5cm以上となる組み合わせである、繊維強化複合材製造用材料セット。
【0011】
母材樹脂成分の上昇高さの測定方法:前記繊維束を切断し、長さ50cm及び繊維数24000本の繊維束Xを得る。前記繊維束Xの一端に重さ25gの重りを吊り下げ、前記繊維束Xの前記一端から他端に向かって5cmの位置まで、前記繊維束Xを前記重りごと、溶融状態の前記母材樹脂成分に浸漬する。浸漬してから24時間以上経過した後に、前記繊維束Xから離れた位置の母材樹脂成分の上面と、前記繊維束Xに接している位置の母材樹脂成分の上面との距離を測定し、前記距離を母材樹脂成分の上昇高さとする。
【0012】
項2.前記繊維束が、繊維と、前記繊維の外表面上に付着したサイジング剤とを含む、項1に記載の繊維強化複合材製造用材料セット。
【0013】
項3.前記サイジング剤が、前記繊維の外表面上にて、離散的に付着している、項2に記載の繊維強化複合材製造用材料セット。
【0014】
項4.前記繊維束が、繊維と、前記繊維間に配置されたフィラーとを含む、項1~3のいずれか1項に記載の繊維強化複合材製造用材料セット。
【0015】
項5.前記繊維束の繊維が、炭素繊維である、項1~4のいずれか1項に記載の繊維強化複合材製造用材料セット。
【0016】
項6.前記母材樹脂成分が、熱硬化性樹脂と、硬化剤とを有する、項1~5のいずれか1項に記載の繊維強化複合材製造用材料セット。
【0017】
項7.項1~6のいずれか1項に記載の繊維強化複合材製造用材料セットを用いて繊維強化複合材を製造する方法であって、前記繊維束の繊維間部分に、前記母材樹脂成分を含浸させる含浸工程を備える、繊維強化複合材の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る繊維強化複合材製造用材料セットは、繊維強化複合材を製造するための材料セットである。本発明に係る材料セットは、母材樹脂成分と繊維束との材料セットである。本発明に係る材料セットでは、上記母材樹脂成分と上記繊維束との組み合わせが、特定の測定方法により測定される母材樹脂成分の上昇高さが2.5cm以上となる組み合わせである。本発明に係る材料セットでは、上記の構成が備えられているので、得られる繊維強化複合材において、曲げ強度を高めることができ、かつ、曲げ強度のばらつきを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、母材樹脂成分の上昇高さの測定方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0021】
(繊維強化複合材製造用材料セット)
本発明に係る繊維強化複合材製造用材料セット(以下、「材料セット」と略記することがある)は、繊維強化複合材を製造するための材料セットである。
【0022】
本発明に係る材料セットは、母材樹脂成分と繊維束との材料セットである。本発明に係る材料セットは、母材樹脂成分(第1の材料)と繊維束(第2の材料)とを有する。本発明に係る材料セットは、母材樹脂成分と繊維束との組み合わせである。
【0023】
本発明に係る材料セットでは、上記母材樹脂成分と上記繊維束との組み合わせが、下記の測定方法により測定される母材樹脂成分の上昇高さが2.5cm以上となる組み合わせである。
【0024】
母材樹脂成分の上昇高さの測定方法:上記繊維束を切断し、長さ50cm及び繊維数24000本の繊維束Xを得る。上記繊維束Xの一端に重さ25gの重りを吊り下げ、上記繊維束Xの上記一端から他端に向かって5cmの位置まで、上記繊維束Xを上記重りごと、溶融状態の上記母材樹脂成分に浸漬する。浸漬してから24時間以上経過した後に、上記繊維束Xから離れた位置の母材樹脂成分の上面と、上記繊維束Xに接している位置の母材樹脂成分の上面との距離を測定し、上記距離を母材樹脂成分の上昇高さとする。
【0025】
本発明に係る材料セットでは、上記の構成が備えられているので、得られる繊維強化複合材において、曲げ強度を高めることができ、かつ、曲げ強度のばらつきを抑えることができる。本発明に係る材料セットでは、上記母材樹脂成分と上記繊維束との組み合わせが、上記母材樹脂成分の上昇高さが2.5cm以上となる組み合わせであるので、繊維強化複合材の製造時における含浸工程において、上記母材樹脂成分が上記繊維束の繊維間部分に良好に含浸する。そのため、ボイドの少ない繊維強化複合材を良好に得ることができ、従って、曲げ強度が高く、かつ、曲げ強度のばらつきが抑えられた繊維強化複合材を良好に得ることができる。
【0026】
上記母材樹脂成分の上昇高さの測定方法について、図1を参照しつつ、より詳細に説明する。
【0027】
図1は、母材樹脂成分の上昇高さの測定方法を説明するための図である。図1(a)は、母材樹脂成分の上昇高さの測定を開始したとき(繊維束Xを重りごと、溶融状態の母材樹脂成分に浸漬したとき)の図であり、図1(b)は、母材樹脂成分の上昇高さの測定を終了したとき(繊維束Xを重りごと、溶融状態の母材樹脂成分に浸漬してから24時間以上経過したとき)の図である。
【0028】
まず、繊維束を切断し、長さ50cm及び繊維数24000本の1束の繊維束Xを得る。繊維束Xが炭素繊維束の場合、繊維束Xの重さは約0.8gとなる。図1において、繊維束Xは、符号Xで示されている。繊維束Xは、一端Xaと他端Xbとを有する。一端Xaと他端Xbとは、繊維束Xの長さ方向の両端部である。繊維束Xの一端Xaに重さ25gの重り5を吊り下げ、繊維束Xの他端Xbをスタンドに固定する。重り5は、フック付き重りである。すなわち、重り5は、重り本体とフックとを備える。次いで、繊維束Xの一端Xaと他端Xbとを結ぶ方向が重力方向となるように、重り5が吊り下げられた繊維束Xを、溶融状態の母材樹脂成分1に浸漬する。より具体的には、繊維束Xの一端Xaから他端Xbに向かって5cmの位置まで、繊維束Xを重り5ごと、溶融状態の母材樹脂成分1に浸漬する。図1において、Lは、繊維束Xの浸漬距離である。すなわち、図1において、Lで示された距離が5cmである。また、重り5が吊り下げられていることによって、繊維束Xはある程度の張力を有する。溶融状態の母材樹脂成分1は、例えば、容器に入れられている。
【0029】
重り5の市販品としては、ナリカ社製「力学実験用おもり(真鍮製):C15-1400-01」等が挙げられる。重り5の形状は特に限定されない。浮力を均一とするため、重り5の比重は8.45であることが好ましい。
【0030】
また、重り5を繊維束Xの一端Xaに固定する方法としては、繊維束に結び目を作り、重り5のフックを結び目にひっかける方法等が挙げられる。なお、繊維束Xの結び目付近では、繊維束Xにヨレ等が生じてしまい、繊維束Xの真直性が損なわれることがある。そのため、重り5の重り本体の上面から溶融状態の母材樹脂成分1の液面(上面)までの距離は4cm以上とすることが好ましい。
【0031】
母材樹脂成分1が熱硬化性樹脂と硬化剤とを有する場合には、繊維強化複合材を製造する際の熱硬化性樹脂と硬化剤との配合割合で該熱硬化性樹脂と該硬化剤とを混合して溶融状態の母材樹脂成分1を得た後すぐに、繊維束Xを重り5ごと該溶融状態の母材樹脂成分1に浸漬することが好ましい。上記母材樹脂成分の上昇高さの測定方法を実施する際の上記熱硬化性樹脂と上記硬化剤との配合割合は、例えば、上記熱硬化性樹脂100重量部に対して、上記硬化剤27重量部とすることができる。また、上記母材樹脂成分の上昇高さの測定方法の実施温度は、25℃とすることができる。なお、上記熱硬化性樹脂が即硬化性樹脂である場合は、硬化剤を除く主剤のみでの評価としてもよい。
【0032】
母材樹脂成分1が熱可塑性樹脂の場合には、繊維強化複合材を製造する際の含浸工程における含浸温度と同じの温度を有する熱可塑性樹脂(溶融状態の熱可塑性樹脂)を用いて、上記母材樹脂成分の上昇高さの測定方法を実施する。例えば、含浸温度が250℃の場合には、上記母材樹脂成分の上昇高さの測定方法でも、250℃の母材樹脂成分1で実施するものとする。この場合、母材樹脂成分1(熱可塑性樹脂)に繊維束Xを重り5ごと浸漬した際に、母材樹脂成分1が冷めてしまい、母材樹脂成分1が硬化することがあるが、硬化した母材樹脂成分1が加熱により再び溶融した時間を、浸漬時の開始時間とする。また、母材樹脂成分1(熱可塑性樹脂)は、液面の上昇に伴い、冷えて硬化することがあるため、雰囲気全体が一様な環境、例えば、オーブンの中などで上記母材樹脂成分の上昇高さの測定方法を実施する必要がある。
【0033】
溶融状態の母材樹脂成分1に、繊維束Xを重りごと浸漬してから24時間以上放置する。このとき、溶融状態の母材樹脂成分1は、毛細管現象により、繊維束X中に浸透していく。また、溶融状態の母材樹脂成分1に、繊維束Xを重りごと浸漬してから24時間以上放置することにより、繊維束Xから離れた位置の母材樹脂成分1の上面と、繊維束Xに接している位置の母材樹脂成分1の上面とが、平衡状態になる。
【0034】
浸漬してから24時間以上経過した後に、繊維束Xから離れた位置の母材樹脂成分1の上面と、繊維束Xに接している位置の母材樹脂成分1の上面との距離Hを測定し、距離Hを母材樹脂成分の上昇高さとする。なお、繊維束Xの構造によっては、繊維束Xに接している位置の母材樹脂成分1の上面の高さが一定ではないことがある。この場合には、繊維束Xから離れた位置の母材樹脂成分1の上面と、繊維束Xに接している位置の母材樹脂成分1の上面の最大高さ位置との距離Hを測定し、距離Hを母材樹脂成分の上昇高さとする。
【0035】
溶融状態の母材樹脂成分1が熱硬化性樹脂と硬化剤とを含む場合には、母材樹脂成分の液面の上昇と硬化反応とが同時に進行するが、母材樹脂成分の上昇高さは、繊維束Xを溶融状態の母材樹脂成分1に浸漬してから24時間以上経過した後に測定する。もっとも、繊維束Xを溶融状態の母材樹脂成分1に浸漬してから24時間経過する前に、母材樹脂成分1が硬化する場合もある。
【0036】
本発明の効果を発揮する観点から、上記母材樹脂成分の上昇高さは2.5cm以上である。
【0037】
上記母材樹脂成分の上昇高さは、好ましくは3.0cm以上、より好ましくは3.4cm以上である。上記母材樹脂成分の上昇高さが上記下限以上であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。なお、上記母材樹脂成分の上昇高さは、5.0cm以下であってもよく、4.0cm以下であってもよい。
【0038】
上記母材樹脂成分の上昇高さを2.5cm以上とする方法としては、例えば、以下の方法等が挙げられる。(1)繊維束として、フィラーによって開繊された繊維束を用いる方法。(2)繊維束の繊維の外表面上にサイジング剤を離散的に付着させる方法。上記(2)の方法としては、(2-1)繊維束の繊維の外表面に付着させたサイジング剤を、有機溶剤等を用いて部分的に除去する方法、(2-2)繊維束の繊維の外表面に付着したサイジング剤を熱処理により、焼き飛ばす又は炭化する方法等が挙げられる。
【0039】
以下、本発明に係る材料セットについて更に説明する。
【0040】
<母材樹脂成分>
上記材料セットは、母材樹脂成分を有する。上記母材樹脂成分としては、母材樹脂及び硬化剤等が挙げられる。
【0041】
上記母材樹脂としては、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂等が挙げられる。上記母材樹脂成分は、上記熱硬化性樹脂と硬化剤とを有するか、又は、熱可塑性樹脂であることが好ましく、上記熱硬化性樹脂と硬化剤とを有することがより好ましい。なお、上記母材樹脂成分が上記熱硬化性樹脂と硬化剤とを有する場合に、通常、上記材料セットにおける上記母材樹脂成分は、上記熱硬化性樹脂と硬化剤とが混合される前の状態である。
【0042】
上記母材樹脂としては、塩化ビニル系樹脂、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリアリールエーテルケトン樹脂(PAEK)、ポリエーテルサルフォン樹脂(PES)、ポリエーテルケトンケトン樹脂(PEKK)、熱可塑性ポリイミド樹脂(PI)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリフタルアミド樹脂(PPA)、ポリアミド樹脂(PA)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、及びポリウレタン樹脂等が挙げられる。
【0043】
繊維との複合化を容易にする観点及び含浸性をより一層高める観点からは、上記母材樹脂は、熱硬化性樹脂であることが好ましく、エポキシ樹脂又はポリウレタン樹脂であることがより好ましく、エポキシ樹脂であることが更に好ましい。
【0044】
上記硬化剤として、熱硬化性樹脂の種類に応じた従来公知の硬化剤を使用可能である。
【0045】
<繊維束>
上記材料セットは、繊維束を有する。上記繊維束は、繊維を含む。上記繊維束は、繊維と、上記繊維の外表面上に付着したサイジング剤とを含むことが好ましい。上記繊維束は、繊維と、上記繊維間に配置されたフィラーとを含むことが好ましい。上記繊維束は、繊維と、上記繊維の外表面上に付着したサイジング剤と、上記繊維間に配置されたフィラーとを含むことがより好ましい。上記繊維束は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0046】
上記繊維束の形態としては、一方向連続繊維(UD)、織物、及び編物等が挙げられる。上記編物としては、NCF(ノンクリンプファブリック)等が挙げられる。
【0047】
得られる繊維強化複合材の強度をより一層高める観点からは、上記繊維束の形態は、一方向連続繊維、編物又は織物であることが好ましく、織物であることがより好ましい。上記繊維束は、複数の繊維束が厚み方向に積層された繊維束であってもよい。
【0048】
<<繊維>>
上記繊維束は、複数の繊維を含む。上記繊維は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0049】
上記繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、金属繊維、炭化ケイ素繊維、バサルト繊維、天然繊維及びアラミド繊維等が挙げられる。上記天然繊維としては、竹繊維及び麻繊維等が挙げられる。
【0050】
得られる繊維強化複合材の曲げ強度及び圧縮強度をより一層高める観点からは、上記繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、又はアラミド繊維を含むことが好ましい。
【0051】
得られる繊維強化複合材の軽量化の観点及び得られる繊維強化複合材の機械的強度をより一層高める観点からは、上記繊維は、炭素繊維、又はアラミド繊維であることが好ましく、炭素繊維であることがより好ましい。
【0052】
繊維強化複合材の製造コストを抑える観点からは、上記繊維は、ガラス繊維であることが好ましい。
【0053】
上記炭素繊維としては、PAN系炭素繊維、及びPITCH系炭素繊維等が挙げられる。
【0054】
上記繊維は連続繊維であることが好ましい。上記連続繊維は、例えば、一方向連続繊維(UD;Uni Direction繊維)及び織物等に含まれる繊維であり、断面方向に連続的に存在する。
【0055】
<<サイジング剤>>
上記繊維束は、上記繊維の外表面上に付着したサイジング剤を含むことが好ましい。この場合には、上記母材樹脂成分の上昇高さを高くしやすくなり、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。上記サイジング剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0056】
上記サイジング剤としては、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、オレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、及びポリエチレングリコール樹脂等が挙げられる。
【0057】
上記サイジング剤は、母材樹脂と反応性の高い官能基を有する樹脂であることが好ましい。例えば、母材樹脂がエポキシ樹脂である場合、該母材樹脂と反応性の高い官能基としては、エポキシ基、水酸基、アミノ基、チオール基、カルボキシル基、及びスルホキシド基等が挙げられる。この場合には、母材樹脂との親和性が良好になり、上記母材樹脂成分の上昇高さを高くしやすくなる。
【0058】
上記サイジング剤は、上記繊維の外表面上の全体に付着していてもよく、上記繊維の外表面上の一部に付着していてもよい。
【0059】
上記サイジング剤は、上記繊維の外表面上の一部に付着していることが好ましく、上記繊維の外表面上にて、離散的に付着していることがより好ましい。この場合には、上記母材樹脂成分の上昇高さを高くしやすくなる。
【0060】
上記繊維の外表面上に上記サイジング剤を離散的に付着させる方法としては、例えば、以下の(1)又は(2)の方法等が挙げられる。(1)樹脂エマルジョン型サイジング剤を用いて繊維表面への付着状態を制御して、上記繊維の外表面上に上記サイジング剤を離散的に付着させる方法。(2)上記繊維の外表面上の全体に上記サイジング剤が付着した繊維束を高温(例えば、300度以上)で加熱する方法。
【0061】
上記繊維束において、上記繊維と上記サイジング剤との合計100重量%中、上記サイジング剤の含有量(繊維に付着しているサイジング剤の量)は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、更に好ましくは1.0重量%以上、好ましくは7.0重量%以下、より好ましくは5.0重量%以下、更に好ましくは3.0重量%以下である。
【0062】
<<フィラー>>
上記繊維束は、上記繊維間に配置されたフィラーを含むことが好ましい。フィラーを含む上記繊維束は、開繊繊維束であることが好ましい。上記繊維束は、フィラーを含む開繊繊維束であることが好ましい。この場合には、上記母材樹脂成分の上昇高さを高くしやすくなり、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。上記フィラーは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0063】
上記フィラーは、上記繊維の外周面上に配置されていることが好ましい。上記フィラーは、サイジング剤を介して上記繊維の外周面上に配置されていてもよい。
【0064】
上記フィラーは、有機粒子(有機フィラー)であってもよく、無機粒子(無機フィラー)であってもよい。
【0065】
上記有機粒子としては、エポキシ系樹脂粒子、フェノール系樹脂粒子、メラミン系樹脂粒子、尿素樹脂粒子、不飽和ポリエステル樹脂粒子及びオキサジン樹脂粒子等の熱硬化性樹脂粒子;ジビニルベンゼン樹脂粒子;ポリオレフィン樹脂粒子;ポリブチレンテレフタレート樹脂粒子;ポリエチレンテレフタレート樹脂粒子;アクリル系樹脂粒子;ポリカーボネート系樹脂粒子等が挙げられる。上記有機粒子の材料は、上記母材樹脂と同じであってもよい。
【0066】
上記無機粒子としては、シリカ粒子、金属粒子、炭素粒子、及び炭酸カルシウム粒子等が挙げられる。上記金属粒子としては、アルミナ粒子、酸化チタン粒子、フェライト粒子、鉄粒子、及び銅粒子等が挙げられる。上記炭素粒子としては、アモルファスカーボン粒子、及びグラファイト粒子等が挙げられる。
【0067】
上記フィラーは、無機粒子又は有機粒子であることが好ましく、無機粒子であることがより好ましい。上記繊維強化複合材は、無機粒子又は有機粒子を含むことが好ましく、無機粒子を含むことがより好ましい。この場合には、繊維束の開繊状態が良好に維持されるので母材樹脂成分の含浸性をより一層高めることができ、従って、繊維強化複合材の圧縮強度等の各種物性をバランスよく高めることができる。
【0068】
上記フィラーは、シリカ粒子、金属粒子、炭素粒子、炭酸カルシウム粒子、タルク粒子、又は有機粒子を含むことがより好ましく、シリカ粒子、アルミナ粒子、酸化チタン粒子、炭素粒子、炭酸カルシウム粒子、タルク粒子、又はジビニルベンゼン樹脂粒子を含むことが更に好ましい。上記フィラーは、シリカ粒子であることが特に好ましい。この場合には、繊維束の開繊状態が良好に維持されるので母材樹脂成分の含浸性をより一層高めることができ、従って、繊維強化複合材の圧縮強度等の各種物性をバランスよく高めることができる。
【0069】
上記フィラーの形状は特に限定されない。上記フィラーの形状は、球状であってもよく、扁平状、鱗片状及び立方体状等の球形状以外の形状であってもよい。上記フィラーの形状は、球状であることが好ましい。
【0070】
上記フィラーの粒子径の平均値は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、更に好ましくは1μm以上、好ましくは10μm以下、より好ましくは7μm以下、更に好ましくは5μm以下である。上記粒子径の平均値が上記下限以上及び上記上限以下であると、繊維束の開繊状態が良好に維持されるので母材樹脂成分の含浸性をより一層高めることができ、従って、繊維強化複合材の圧縮強度等の各種物性をバランスよく高めることができる。
【0071】
上記フィラーの粒子径の平均値は、繊維束の断面の電子顕微鏡写真から、画像解析ソフト(例えば、三谷商事社製「WinROOF」)を用いて求められる。なお、得られる繊維強化複合材の断面の電子顕微鏡写真から、画像解析ソフト(例えば、三谷商事社製「WinROOF」)を用いて求めてもよい。
【0072】
上記フィラーの粒子径の平均値は、数平均粒子径であり、繊維束又は繊維強化複合材の断面にて観察されるフィラーの粒子径の相加平均値である。上記粒子径とは、上記断面で観察されるフィラーの円相当径の直径を意味する。
【0073】
上記フィラーの粒子径の平均値は、100個以上のフィラーから求められることが好ましい。得られた電子顕微鏡写真に100個以上のフィラーが存在しない場合には、フィラーの個数が100個以上となるまで、新たな領域を電子顕微鏡で撮影することが好ましい。
【0074】
上記繊維と上記サイジング剤との合計100重量部に対して、上記フィラーの含有量は、好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.1重量部以上、好ましくは10.5重量部以下、より好ましくは5.0重量部以下である。上記フィラーの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、繊維束の開繊状態が良好に維持されるので母材樹脂成分の含浸性をより一層高めることができ、従って、繊維強化複合材の圧縮強度等の各種物性をバランスよく高めることができる。
【0075】
上記フィラーを含む繊維束(開繊繊維束)を得る方法としては、下記の(i)、(ii)、及び(iii)の方法等が挙げられる。
【0076】
(i)サイジング剤とフィラーとを含む液を、繊維(繊維束本体)に接触させて、繊維の外表面にフィラーを接着する方法。
【0077】
(ii)サイジング剤と繊維(繊維束本体)とを接触させた後、フィラーを含む液を、サイジング剤が付着した繊維(サイジング剤付き繊維束本体)に接触させて、繊維の外表面にフィラーを接着する方法。
【0078】
(iii)サイジング剤が付着した繊維(サイジング剤付き繊維束本体)を用意し、このサイジング剤付き繊維束本体に、フィラーを含む液を接触させて、繊維の外表面にフィラーを接着する方法。
【0079】
なお、フィラーを含む液と繊維との接触方法としては、スプレー、塗布、及び浸漬等の方法が挙げられる。
【0080】
フィラーと接触した繊維(繊維束本体)を回転又は振動させたり、ローラー等で扱いたりすることにより、フィラーを含む液が繊維表面に濡れ拡がり、フィラーが繊維間部分に入り込み、フィラーを含む繊維束(開繊繊維束)を得ることができる。
【0081】
フィラーを含む液の繊維表面への濡れ拡がり性を高める観点から、フィラーを含む液は、有機溶媒を含むことが好ましい。上記有機溶媒としては特に限定されない。作業性の観点からは、上記有機溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、テトラヒドロフラン、又はアセトンを含むことが好ましい。なお、粒子を含む液は、水を含んでいてもよい。
【0082】
なお、溶媒(有機溶媒及び水等)を除去するために、フィラーを含む液と繊維とを接触させた後、加熱又は乾燥して、上記溶媒を除去することにより、上記開繊繊維束を得ることができる。
【0083】
<他の成分>
上記材料セットは、上記母材樹脂成分及び上記繊維束の双方とは異なる他の成分(他の材料)を有していてもよい。
【0084】
(繊維強化複合材の製造方法)
上述した材料セットを用いて繊維強化複合材を製造することができる。本発明に係る繊維強化複合材の製造方法は、上記繊維束の繊維間部分に、上記母材樹脂成分を含浸させる含浸工程を備える。
【0085】
上記繊維束の繊維間部分に上記母材樹脂成分を含浸させる方法は特に限定されない。例えば、溶融した母材樹脂成分を、シートダイ等を用いてフィルム状に押し出し、上記繊維束上に積層した後、加熱しながら圧縮することにより母材樹脂成分を繊維束の繊維間部分に含浸させる方法等が挙げられる。
【0086】
上記母材樹脂の溶融温度をT℃とする。上記含浸工程における含浸温度は、好ましくは(T+20)℃以上、より好ましくは(T+40)℃以上、好ましくは(T+150)℃以下、より好ましくは(T+100)℃以下である。上記含浸温度が上記下限以上及び上記上限以下であると、含浸性をより一層高めることができ、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0087】
上記母材樹脂の溶融温度(T)は、示差走査熱量計(DSC)により測定することができる。
【0088】
以下、実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0089】
以下の母材樹脂成分を用意した。
【0090】
(母材樹脂成分)
エポキシ樹脂とその硬化剤(ナガセケムテックス社製、主剤「XNR6715」、硬化剤「XNH6815」)
【0091】
以下の繊維束の材料を用意した。
【0092】
(繊維)
炭素繊維1(東レ社製「T700-60E」)
サイジング剤が付着した炭素繊維2(帝人社製「HTS-40」、サイジング剤:ポリエチレングリコール系サイジング剤)
サイジング剤が付着した炭素繊維3(東レ社製「T700-50C」、サイジング剤:エポキシ系サイジング剤)
【0093】
(サイジング剤)
ポリイミドエマルジョン(MICHELMAN社製「HP-1632」)
【0094】
(フィラー)
シリカ粒子(AGCエスアイテック社製「サンスフェア L-31」)
【0095】
<繊維束Aの作製>
炭素繊維1、ポリイミドエマルジョン(サイジング剤)、及びシリカ粒子(フィラー)を用いて、以下のようにして、開繊繊維束である繊維束Aを作製した。2重量部のポリイミドエマルジョンと100重量部のエタノール水(エタノールの含有量:60重量%)とを混合して、混合溶液を得た。得られた混合溶液に2重量部のシリカ粒子を添加し、開繊液を得た。開繊液中に炭素繊維1を通過させて、開繊繊維束である繊維束Aを得た。なお、繊維束Aでは、エマルジョンに含まれるポリイミド樹脂が炭素繊維の外表面上にて、離散的に付着していた。また、繊維束Aでは、フィラーが繊維間に配置されていた。
【0096】
<繊維束Bの作製>
炭素繊維2を、室温、屋内及び空気中にて1年間保管したものを繊維束Bとした。繊維束Bに付着しているサイジング剤は非常に少量であり、炭素繊維の外表面上にて、離散的に付着していた。
【0097】
<繊維束Cの作製>
炭素繊維3を、室温、屋内及び空気中にて2年間保管したものを繊維束Cとした。繊維束Cでは、サイジング剤が炭素繊維の外表面上にて、離散的に付着していた。
【0098】
<繊維束Dの作製>
炭素繊維3を350℃にて10分間加熱したものを繊維束Dとした。加熱は、マッフル炉を使用して、空気雰囲気下で行った。なお、繊維束Dでは、サイジング剤が焼成により部分的に除去され、炭素繊維の外表面上にて、離散的に付着していた。
【0099】
<繊維束Eの作製>
炭素繊維3を、繊維束Eとした。なお、繊維束Eでは、サイジング剤が炭素繊維の外表面上の全体に付着していた。
【0100】
(実施例1~4及び比較例1)
(1)材料セット(母材樹脂成分と繊維束との組み合わせ):
母材樹脂成分と繊維束との組み合わせが、表1に記載の組み合わせとなるように、材料セットを得た。
【0101】
(2)母材樹脂成分の上昇高さの測定:
上述した方法に従って、母材樹脂成分の上昇高さを測定した。なお、重りとしては、ナリカ社製「力学実験用おもり(真鍮製):C15-1400-01」を用いた。また、母材樹脂成分として、主剤(母材樹脂)100重量部に対して硬化剤27重量部を混合して、溶融状態の母材樹脂成分を作製した。また、母材樹脂成分の上昇高さの測定は、温度25℃の環境下で行った。母材樹脂成分の上昇高さの結果を下記の表1に示した。
【0102】
(3)繊維強化複合材の作製:
インフュージョン成形により、繊維強化複合材を作製した。具体的には、以下のようにして繊維強化複合材を作製した。まず、繊維束の繊維同士が並行になるように繊維束を並べ、離形布及びアウターメディアと共にバギングを行った。バギングを行ったのち、真空ポンプを用いて系内を真空にし、繊維束を母材樹脂成分に含浸した。なお、母材樹脂成分として、主剤(母材樹脂)100重量部に対して硬化剤27重量部を混合したものを用いた。繊維束を母材樹脂成分に含浸させた状態で、温度25℃の環境下で24時間静置したのち、80℃のオーブンで2時間静置し、母材樹脂成分を硬化させた。硬化が完了した後、オーブンから、得られた繊維強化複合材を取り出した。なお、得られた繊維強化複合材の繊維体積含有率(Vf)は、表1に示した。
【0103】
(評価)
(1)繊維強化複合材の曲げ強度及びそのばらつき
得られた繊維強化複合材を切り出して、曲げ試験規格(JIS K7074)に準拠した縦80mm×横15mm×厚み2mmのサイズを有する繊維強化複合材を得た。この繊維強化複合材の曲げ強度を、JIS K7074に準拠して、25℃にて測定した。なお、試験は繰り返し4回行い、曲げ強度の平均値と標準偏差とを求めた。繊維強化複合材の曲げ強度及びそのばらつきを以下の基準で判定した。
【0104】
<繊維強化複合材の曲げ強度の平均値>
○:曲げ強度の平均値が800MPa以上
×:曲げ強度の平均値が800MPa未満
【0105】
<繊維強化複合材の曲げ強度のばらつき>
○:曲げ強度の標準偏差が100MPa未満
×:曲げ強度の標準偏差が100MPa以上
【0106】
構成及び結果を下記の表1に示す。
【0107】
【表1】
【符号の説明】
【0108】
1…母材樹脂成分
5…重り(フック付き重り)
H…距離(母材樹脂成分の上昇高さ)
L…繊維束Xの浸漬距離(5cm)
X…繊維束(繊維束X)
Xa…一端
Xb…他端
図1