(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135952
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】電力制御装置
(51)【国際特許分類】
G05F 1/67 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
G05F1/67 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046876
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊澤 真治
【テーマコード(参考)】
5H420
【Fターム(参考)】
5H420BB03
5H420BB12
5H420BB14
5H420CC03
5H420DD02
5H420EA14
5H420EA20
5H420FF03
5H420FF04
5H420FF24
5H420FF25
5H420FF26
5H420LL04
(57)【要約】
【課題】最大電力点の探索に並行して異常を判定する。
【解決手段】電力制御装置10は、太陽電池パネル2から入力される電力の電圧を変換して出力する電力変換部30と、電力変換部30に対して探索制御を行った後に追従制御を行う制御部28と、異常を判定する異常判定部29と、を備える。探索制御は、電力変換部30の入力側及び出力側のうち一方側の電圧及び電流のいずれかを調整対象とし、上記調整対象を所定幅で段階的に変化させ、所定幅の各段階で上記一方側の電力のうち最大の電力である最大電力を検出する制御である。追従制御は、電力変換部30の上記一方側の電力を探索制御で検出された最大電力に追従させる制御である。異常判定部29は、探索制御中における上記一方側の電圧及び電流の少なくとも片方に基づいて異常を判定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池パネルから入力される電力を制御するとともに、前記太陽電池パネルから入力される電力に基づいて異常を判定する電力制御装置であって、
前記太陽電池パネルから入力される電力の電圧を変換して出力する電力変換部と、
前記電力変換部に対して探索制御を行った後に追従制御を行う制御部と、
異常を判定する異常判定部と、
を備え、
前記探索制御は、前記電力変換部の入力側及び出力側のうち一方側の電圧及び電流のいずれかを調整対象とし、前記調整対象を所定幅で段階的に変化させ、前記所定幅の各段階で前記一方側の電力のうち最大の電力である最大電力を検出する制御であり、
前記追従制御は、前記電力変換部の前記一方側の電力を前記探索制御で検出された前記最大電力に追従させる制御であり、
前記異常判定部は、前記探索制御中における前記一方側の電圧及び電流の少なくとも片方に基づいて異常を判定する
電力制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記探索制御において、前記調整対象が目標値となるようにフィードバック制御を行い、前記目標値を前記所定幅で段階的に変化させることで、前記調整対象を前記所定幅で段階的に変化させ、
前記異常判定部は、前記所定幅で前記調整対象を段階的に変化させたときの所定の段階において、前記目標値が変化してから所定時間経過後の前記調整対象に基づいて異常を判定する
請求項1に記載の電力制御装置。
【請求項3】
前記異常判定部は、前記調整対象と変化後又は変化前の前記目標値とに基づいて異常を判定する
請求項2に記載の電力制御装置。
【請求項4】
前記異常判定部は、前記調整対象に基づく値と変化後又は変化前の前記目標値との差が予め定められた正常範囲外である場合に、異常が生じたと判定する
請求項3に記載の電力制御装置。
【請求項5】
前記異常判定部は、前記探索制御中における前記一方側の電圧波形及び電流波形に基づいて前記太陽電池パネルを含む測定対象のインピーダンスを測定し、測定したインピーダンスに基づいて異常を判定する
請求項1に記載の電力制御装置。
【請求項6】
前記異常判定部は、測定したインピーダンスが予め定められた正常範囲外である場合に、異常が生じたと判定する
請求項5に記載の電力制御装置。
【請求項7】
車両に搭載される車載用の電力制御装置であって、
車両に搭載された前記太陽電池パネルから入力される電力を制御するとともに、前記太陽電池パネルから入力される電力に基づいて異常を判定する
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の電力制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、パワーコンディショナが開示されている。このパワーコンディショナは、最大電力点追従制御であるMPPT制御によって、発電電力が最大となる最大電力点(MPP)を見つけだす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、MPPT制御を行う構成においては、最大電力点の探索に並行して異常を判定できることが望ましい。
【0005】
本開示は、最大電力点の探索に並行して異常を判定し得る技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の電力制御装置は、
太陽電池パネルから入力される電力を制御するとともに、前記太陽電池パネルから入力される電力に基づいて異常を判定する電力制御装置であって、
前記太陽電池パネルから入力される電力の電圧を変換して出力する電力変換部と、
前記電力変換部に対して探索制御を行った後に追従制御を行う制御部と、
異常を判定する異常判定部と、
を備え、
前記探索制御は、前記電力変換部の入力側及び出力側のうち一方側の電圧及び電流のいずれかを調整対象とし、前記調整対象を所定幅で段階的に変化させ、前記所定幅の各段階で前記一方側の電力のうち最大の電力である最大電力を検出する制御であり、
前記追従制御は、前記電力変換部の前記一方側の電力を前記探索制御で検出された前記最大電力に追従させる制御であり、
前記異常判定部は、前記探索制御中における前記一方側の電圧及び電流の少なくとも片方に基づいて異常を判定する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、最大電力点の探索に並行して異常を判定し得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る太陽電池パネル用の電力制御装置を含む車両の構成を概略的に例示するブロック図である。
【
図2】
図2は、
図1の電力制御装置に含まれるMPPT回路、制御部及び異常判定部を概略的に例示する回路図である。
【
図3】
図3は、第1探索制御中における、経過時間と入力電圧との関係、経過時間と入力電流との関係、経過時間と入力電力との関係を対応させて示すグラフである。
【
図4】
図4は、経過時間と目標電流との関係、理想的な電流波形を対応させて示すグラフである。
【
図5】
図5は、入力電流が正常範囲外であるか否かを判定する処理を概念的に示す説明図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態における太陽電池パネルのコールコールプロットと、正常範囲を示すグラフである。
【
図7】
図7は、太陽電池パネルを含む測定対象のインピーダンスが正常範囲外であるか否かを判定する処理を概念的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
以下では、本開示の実施形態が列記されて例示される。
【0010】
〔1〕太陽電池パネルから入力される電力を制御するとともに、前記太陽電池パネルから入力される電力に基づいて異常を判定する電力制御装置であって、
前記太陽電池パネルから入力される電力の電圧を変換して出力する電力変換部と、
前記電力変換部に対して探索制御を行った後に追従制御を行う制御部と、
異常を判定する異常判定部と、
を備え、
前記探索制御は、前記電力変換部の入力側及び出力側のうち一方側の電圧及び電流のいずれかを調整対象とし、前記調整対象を所定幅で段階的に変化させ、前記所定幅の各段階で前記一方側の電力のうち最大の電力である最大電力を検出する制御であり、
前記追従制御は、前記電力変換部の前記一方側の電力を前記探索制御で検出された前記最大電力に追従させる制御であり、
前記異常判定部は、前記探索制御中における前記一方側の電圧及び電流の少なくとも片方に基づいて異常を判定する
電力制御装置。
【0011】
上記電力制御装置の異常判定部は、探索制御中における一方側の電圧及び電流の少なくとも片方に基づいて異常を判定する。つまり、上記電力制御装置は、最大電力点の探索に並行して異常を判定することができる。なお、ここでいう「異常」には、単なる異常だけでなく、経年や環境要因の劣化も含まれる。
【0012】
〔2〕前記制御部は、前記探索制御において、前記調整対象が目標値となるようにフィードバック制御を行い、前記目標値を前記所定幅で段階的に変化させることで、前記調整対象を前記所定幅で段階的に変化させ、
前記異常判定部は、前記所定幅で前記調整対象を段階的に変化させたときの所定の段階において、前記目標値が変化してから所定時間経過後の前記調整対象に基づいて異常を判定する
〔1〕に記載の電力制御装置。
【0013】
目標値が変化した直後の電圧及び電流は大きく変化しやすい。上記電力制御装置は、目標値が変化してから所定時間経過後の調整対象に基づいて異常を判定するため、誤判定を防ぎやすい。
【0014】
〔3〕前記異常判定部は、前記調整対象と変化後又は変化前の前記目標値とに基づいて異常を判定する
〔2〕に記載の電力制御装置。
【0015】
上記電力制御装置は、変化後又は変化前の目標値を利用して異常を判定することができる。
【0016】
〔4〕前記異常判定部は、前記調整対象に基づく値と変化後又は変化前の前記目標値との差が予め定められた正常範囲外である場合に、異常が生じたと判定する
〔3〕に記載の電力制御装置。
【0017】
上記電力制御装置は、簡易な構成によって異常を判定することができる。
【0018】
〔5〕前記異常判定部は、前記探索制御中における前記一方側の電圧波形及び電流波形に基づいて前記太陽電池パネルを含む測定対象のインピーダンスを測定し、測定したインピーダンスに基づいて異常を判定する
〔1〕に記載の電力制御装置。
【0019】
上記電力制御装置は、探索制御中に測定した測定対象のインピーダンスに基づいて異常を判定することができる。
【0020】
〔6〕前記異常判定部は、測定したインピーダンスが予め定められた正常範囲外である場合に、異常が生じたと判定する
〔5〕に記載の電力制御装置。
【0021】
上記電力制御装置は、インピーダンスを利用した異常の判定を、簡易な構成で実現することができる。
【0022】
〔7〕車両に搭載される車載用の電力制御装置であって、
車両に搭載された前記太陽電池パネルから入力される電力を制御するとともに、前記太陽電池パネルから入力される電力に基づいて異常を判定する
〔1〕から〔6〕のいずれか一つに記載の電力制御装置。
【0023】
上記電力制御装置は、太陽電池パネルが車両に搭載される構成において異常を判定することができる。
【0024】
[本開示の実施形態の詳細]
1.第1実施形態
1-1.車載システムの概要
図1には、車両1に搭載される電力制御システムである車載システム1Aが例示される。車載システム1Aは、太陽電池パネル2と、電力制御装置10と、バッテリ6と、状態監視装置8とを備える。車両1の種類は特に限定されず、移動体であれば、例えば、電気自動車であってもよく、ハイブリッド車であってもよい。
【0025】
太陽電池パネル2は、例えば、光エネルギを電力に変換する太陽電池セルを複数接続して構成され、これら複数の太陽電池セルが照射光に応じて発電した電力を電力制御装置10に対して出力する。車両1には、このような太陽電池パネル2が複数設けられる。これら複数の太陽電池パネル2の各々は、電力制御装置10に電気的に接続される。具体的には、複数の太陽電池パネル2は、太陽電池パネル2A,2B,2Cを含む。3つの太陽電池パネル2A,2B,2Cのそれぞれは、車両1において互いに異なる位置に配置され、それぞれが露出した形で配置される。太陽電池パネル2Aは、後述の第1のMPPT回路22A(以下、MPPT22Aともいう)に電気的に接続され、MPPT回路22Aに電力を供給し得る。太陽電池パネル2Bは、後述の第2のMPPT回路22B(以下、MPPT22Bともいう)に電気的に接続され、MPPT回路22Bに電力を供給し得る。太陽電池パネル2Cは、後述の第3のMPPT回路22C(以下、MPPT22Cともいう)に電気的に接続され、MPPT回路22Cに電力を供給し得る。
【0026】
バッテリ6は、車載バッテリである。バッテリ6は、例えば、駆動用のモータ(車両の車輪に動力を与えるモータ)に電力を供給し得る高圧バッテリである。バッテリ6としては、例えば、リチウムイオン電池などが好適に用いられる。バッテリ6は、自身の両端から所定の直流電圧を出力し得る。バッテリ6の高電位側の電極は導電路61に電気的に接続され、バッテリ6の低電位側の電極は導電路62に電気的に接続される。
【0027】
状態監視装置8は、検出部、通信部、情報処理部などを備えた制御装置として構成され、バッテリ6の状態を監視する機能と外部と通信を行う機能とを有する。例えば、状態監視装置8は、バッテリ6の出力電圧(両端電圧)を検出し、制御部28にバッテリ6の出力電圧を送信する機能を有する。バッテリ6の出力電圧は、バッテリ6において最も電位が高い高電位側電極の電位と最も電位が低い低電位側電極の電位との電位差である。
【0028】
なお、詳細な図示は省略されているが、車載システム1Aには、バッテリ6を構成するセルの過充電、過放電を防ぐ機能、セルの過電流を防ぐ機能、セルの温度管理を行う機能、電池残量を算出する機能、セル電圧の均等化(セルバランス)を行う機能などを有するバッテリマネージメントシステム(BMS)が設けられる。
【0029】
電力制御装置10は、太陽電池パネル用の電力制御装置である。電力制御装置10は、複数の太陽電池パネル2A,2B,2Cの各々から電力の供給を受け、この電力に基づく出力電力をバッテリ6に供給し得る。電力制御装置10は、太陽電池パネル2から入力される電力を制御する機能を有し、内部で降圧動作や昇圧動作を行い得る。
【0030】
1-2.電力制御装置の基本構成
電力制御装置10は、複数のMPPT回路22A,22B,22C、コンデンサ24、絶縁型コンバータ26、制御部28、及び異常判定部29を備える。
【0031】
複数のMPPT回路22A,22B,22Cのうち、太陽電池パネル2Aに接続されるとともに太陽電池パネル2Aから電力供給を受ける回路が第1のMPPT回路22Aである。太陽電池パネル2Bに接続されるとともに太陽電池パネル2Bから電力供給を受ける回路が第2のMPPT回路22Bである。太陽電池パネル2Cに接続されるとともに太陽電池パネル2Cから電力供給を受ける回路が第3のMPPT回路22Cである。第1のMPPT回路22A、第2のMPPT回路22B、第3のMPPT回路22Cは、入力側の接続先がそれぞれ異なるが、回路構成は互いに同一であり、同一の機能を有する。第1のMPPT回路22A、第2のMPPT回路22B、第3のMPPT回路22Cはいずれも制御部28によって制御される。以下の説明は、主として
図2に示される第1のMPPT回路22Aに関するが、いずれのMPPT回路も第1のMPPT回路22Aと同一の回路構成をなす。
【0032】
導電路11A,11Bは、太陽電池パネル2Aでの発電に基づく電力を電力変換部30に供給するための電力路である。導電路11Aは、太陽電池パネル2Aから供給される電力に基づく入力電流が電力変換部30に向かって流れる導電路であり、導電路11A,11Bは、太陽電池パネル2Aから供給される電力に基づく入力電圧が印加され得る導電路である。導電路12A,12Bは、第1のMPPT回路22Aから供給される電力が伝送される電力路である。導電路12Aは、第1のMPPT回路22Aから供給される出力電流が流れる導電路である。導電路12A,12Bは、第1のMPPT回路22Aから供給される出力電圧が印加され得る導電路である。
【0033】
MPPT回路22Aは、電力変換部30、検出部41、42などを備える。MPPT回路22Aは、制御部28によって制御され得る回路である。MPPT回路22Aは、制御部28からの制御を受けてMPPT(Maximum Power Point Tracking)方式で動作し得る回路である。
【0034】
電力変換部30は、非絶縁型のDCDCコンバータとして構成され、具体的には公知のチョッパ回路として構成される。電力変換部30は、一対の導電路11A,11Bと一対の導電路12A,12Bとの間に設けられ、太陽電池パネル2Aから供給される電力に基づく入力電力を昇圧するように昇圧動作を行い、出力電力を供給するように電力変換を行う。電力変換部30が上記昇圧動作を行う場合、一対の導電路11A,11B間に印加される入力電圧に基づき、この入力電圧よりも高い出力電圧を一対の導電路12A,12B間に印加するように昇圧を行う。導電路11Aに印加される電圧とは、導電路11Bを基準とする導電路11Aの電圧であり、具体的には、導電路11A,11B間の電位差である。導電路12Aに印加される電圧とは、導電路12Bを基準とする導電路12Aの電圧であり、具体的には、導電路12A,12B間の電位差である。
【0035】
図2の例では、電力変換部30は、昇圧動作が可能な回路構成となっているが、降圧動作が可能な回路構成、または、昇圧動作と降圧動作の両方が可能な回路構成に変更することもできる。例えば、電力変換部30が降圧動作を行うような回路構成が採用される場合、電力変換部30は、一対の導電路11A,11B間に印加される電圧に基づき、この電圧よりも低い電圧を一対の導電路12A,12B間に印加するように降圧を行う。
【0036】
電力変換部30は、第1素子31、第2素子32、インダクタ34、駆動回路38などを備える。
【0037】
インダクタ34の一端は、第1素子31と第2素子32との間の接続部に接続され、第1素子31のアノード及び第2素子32のドレインに電気的に接続される。インダクタ34の他端は、導電路11A(具体的には、導電路11Aにおいて、検出部41よりも電力変換部30側の部分)に電気的に接続される。第1素子31は、ダイオードであり、アノードがインダクタ34及び第2素子32に電気的に接続され、カソードが導電路12A(具体的には、導電路12Aにおいて、検出部42よりも電力変換部30側の部分)に電気的に接続される。第2素子32は、半導体スイッチ素子によって構成され、
図2の例ではNチャネル型のMOSFETである。第2素子32のソースには、導電路13が電気的に接続される。第2素子32のゲートには、駆動回路38からの駆動信号及び非駆動信号が入力される。第2素子32は、駆動回路38からゲートに駆動信号(ハイレベル信号)が与えられている場合にオン状態となる。第2素子32は、駆動回路38からゲートに非駆動信号(ローレベル信号)が与えられている場合にオフ状態となる。
【0038】
検出部41は、電流検出部と電圧検出部とを有する。検出部41は、導電路11Aの途中に設けられる。検出部41の電流検出部は、導電路11Aにおいて当該電流検出部の検出位置の電流値を特定し得る検出値を制御部28及び異常判定部29に与える。検出部41の電圧検出部は、導電路11Aにおいて当該電圧検出部の検出位置の電圧値(導電路11A,11B間の電圧値)を特定し得る検出値を制御部28及び異常判定部29に与える。
【0039】
検出部42は、電流検出部と電圧検出部とを有する。検出部42は、導電路12Aの途中に設けられる。検出部42の電流検出部は、導電路12Aにおいて当該電流検出部の検出位置の電流値を特定し得る検出値を制御部28及び異常判定部29に与える。検出部42の電圧検出部は、導電路12Aにおいて当該電圧検出部の検出位置の電圧値(導電路12A,12B間の電圧値)を特定し得る検出値を制御部28及び異常判定部29に与える。
【0040】
制御部28は、例えば、様々な演算処理を行うCPU、各種情報を記憶する記憶部(ROM、RAM等)、外部装置と通信を行うための通信インタフェースである通信部、などを含んで構成される。制御部28には、検出部41,42からの各検出信号が与えられる。制御部28は、電力変換部30に昇圧動作や降圧動作を行わせ得る。具体的には、制御部28は、複数のMPPT回路22A,22B,22Cに設けられた各駆動回路(
図2の第1のMPPT回路22Aでは駆動回路38)に対してPWM信号を出力する。各駆動回路は、制御部28から自身に与えられたPWM信号に同期したPWM信号を出力する。
【0041】
コンデンサ24は、一方の電極が導電路51に電気的に接続され、他方の電極が導電路52に電気的に接続される。一対の導電路51,52との間で充放電を行い得る。導電路51は、導電路12A,14A,16Aの各々に短絡するように各々に電気的に接続される。導電路52は、導電路12B,14B,16Bの各々に短絡するように各々に電気的に接続される。
【0042】
絶縁型コンバータ26は、絶縁型のDCDCコンバータである。絶縁型コンバータ26は、一対の導電路51,52間に印加された電圧を昇圧して導電路61,62に直流電圧を印加する昇圧動作を行い得る。絶縁型コンバータ26は、一対の導電路61,62間に印加された電圧を降圧して導電路51,52に直流電圧を印加する降圧動作を行い得る。絶縁型コンバータ26の制御は、例えば制御部28が行う。
【0043】
異常判定部29は、異常を判定する。異常判定部29は、例えば、様々な演算処理を行うCPU、各種情報を記憶する記憶部(ROM、RAM等)、外部装置と通信を行うための通信インタフェースである通信部、などを含んで構成される。異常判定部29を構成するCPU、記憶部、通信部は、制御部28を構成するCPU、記憶部、通信部と同じであってもよいし、異なっていてもよい。異常判定部29には、検出部41からの検出信号が与えられる。異常判定部29は、異常判定部29は、検出部41からの検出信号に基づいて異常を判定する。
【0044】
1-3.電力制御装置の動作
以下の説明では、「一方側」は、電力変換部30を基準としたときの太陽電池パネル2側であり、MPPT回路22Aでは、導電路11A,11B側である。「一方側の電圧」は、導電路11A,11B間に印加される電圧であり、「一方側の電流」は、導電路11Aを流れる電流であり、「一方側の電力」は、導電路11A,11Bによって伝送される電力である。
【0045】
電力制御装置10では、制御部28が電力調整制御を行い得る。電力調整制御は、探索制御の後に追従制御を行う制御である。制御部28は、予め定められた一定時間ごと(例えば、60~600秒ごと)に電力変換部に対して探索制御を実行してもよいし、太陽電池パネル2の日射条件が急変したと判断したときに電力変換部に対して探索制御を実行してもよい。そして、制御部28は、探索制御の後に探索制御を反映した追従制御を電力変換部に対して実行する。具体的には、制御部28は、ある時期に電力変換部に対して探索制御を行った場合、当該探索制御が終了してから次の探索制御の開始時期が到来するまでは電力変換部に対して上記「一方側の電力」を直近の探索制御で得られた第2最大電力に追従させるように追従制御を実行する。制御部28は、このように「探索制御を行った後に追従制御を行う電力調整制御」を繰り返し実行する。そして、制御部28が実行する探索制御は、第1探索制御と第2探索制御とを含む。
【0046】
第1探索制御は、電力変換部30に電力変換動作(具体的には上述の昇圧動作)を行わせつつ、導電路11Aを流れる電流(一方側の電流)を第1電流幅Δ1で段階的に増加させるように電力変換部30を制御し、且つ、第1電流幅Δ1で導電路11Aを流れる電流を段階的に増加させたときの各段階での導電路11A,11Bの電力(一方側の電力)に基づいて、段階的に増加させた全段階における導電路11A,11Bの最大電力(第1最大電力)を検出する制御である。
【0047】
制御部28は、第1探索制御を行う場合、第2素子32に対して駆動信号と非駆動信号を交互に繰り返すオンオフ信号(具体的には、PWM(Pulse Width Modulation)信号)を与えるようにオンオフ制御(具体的にはPWM制御)を行い、第2素子32をオンオフさせることで電力変換部30に昇圧動作を行わせる。本実施形態では、探索制御及び追従制御のいずれにおいても、制御部28が出力するPWM信号の周波数及び駆動回路38が第2素子32に出力するPWM信号の周波数は、1kHz以上であり、望ましくは、100kHz以上である。なお、PWM信号の周波数は使用するスイッチングデバイスおよび周辺素子の高周波での損失及びEMC(電磁両立性)の観点から1000kHz以下とすることが望ましい。
【0048】
制御部28は、このようなPWM制御によって電力変換部30に昇圧動作を行わせつつ、導電路11Aを流れる電流(一方側の電流)を第1電流幅Δ1で段階的に増加させるように電力変換部30を制御する。制御部28は、第1探索制御中には、導電路11Aを流れる電流(一方側の電流)を各段階での目標電流とするように上記PWMのデューティを調整する。例えば、第1探索制御中において導電路11Aを流れる電流をI1とすべき場面では、制御部28は、検出部41の検出値を取得して導電路11Aを流れる電流をモニタしつつ、導電路11Aを流れる電流をI1で維持するように第2素子32のゲートに与えるPWM信号のデューティを調整する。そして、制御部28は、第1探索制御において導電路11Aを流れる電流を段階的に切り替える場合の各段階の各期間の長さT1を0.05ms以上且つ100ms未満とする。代表例では、T1は、例えば1msである。
【0049】
制御部28は、第1探索制御を開始した直後の最初の目標電流がI1である場合、導電路11Aを流れる電流をI1とする調整(第1段階の調整)を時間T1行った後、目標電流をΔ1大きくして導電路11Aを流れる電流をI1+Δ1とする調整(第2段階の調整)を行い、次いで、目標電流を更にΔ1大きくして導電路11Aを流れる電流をI1+Δ1×2とする調整(第3段階の調整)を行う。このように、制御部28は、電力変換部30に対して上述の昇圧動作を行わせながら第n段階目の目標電流をI1+Δ1×(n-1)とするように導電路11Aを流れる電流を時間T1毎に段階的に上昇させる。
【0050】
図3の中段のグラフは、このような第1探索制御中の入力電流(導電路11Aを流れる電流)と経過時間との対応関係を示すグラフである。
図3のグラフにおいて、I1は、上記最初の目標電流であり、I4は、全段階のうちの最後の目標電流である。つまり、
図3の例では、電流値I1から電流値I4までΔ1毎に段階的に電流を上昇させる。
図3上段のグラフは、第1探索制御中の入力電圧(導電路11A,11B間に印加される電圧)と経過時間との対応関係を示すグラフである。
図3下段のグラフは、第1探索制御中の入力電力(導電路11A,11Bを介して供給される電力)と経過時間との対応関係を示すグラフである。Δ1は、例えば、電力変換部30に電力を供給する太陽電池パネル2Aの定格電圧又は最大電圧の1/Xの値である。Xの値は、上述の第1探索制御における段階の数よりも大きくすることができる。Δ1は、例えば、太陽電池パネル2Aの定格電圧の1%~10%の範囲内であることが望ましい。
【0051】
制御部28は、
図3の中段のグラフのように、第1電流幅Δ1で導電路11Aを流れる電流を段階的に増加させたときの各段階での導電路11A,11Bの電力(一方側の電力)を検出する。具体的には、制御部28は、各段階の時間T1において、開始時点t0から所定時間T3(T3=T1-T2)経過した後の時間T2において一定のサンプリング間隔で導電路11A,11Bの電力を所定回数(N回)検出し、そのN回の電力検出値を所定の統計手法を用いて評価して各段階の電力を算出する。「所定の統計手法を用いた評価」は、例えば、N回の平均値であってもよく、N回のうちの中央値であってもよく、N回のうちの最大値及び最小値を除いた平均値であってもよく、その他の統計手法であってもよい。代表例では、N回の平均値が用いられ、例えば、導電路11Aを流れる電流をI1とする第1段階の時間T1では、第1段階の開始時点から所定時間T3(T3=T1-T2)経過した後の時間T2において一定のサンプリング間隔で導電路11A,11Bの電力をN回検出し、そのN回の電力検出値の平均値を第1段階(電流値I1の期間)の電力値とする。第2段階、第3段階・・・の各期間についても、同様の方法で各電力値を算出する。制御部28は、このような第1探索制御を予め定められた段階数の全部で行い、全段階の各電力値が得られた後、全段階の各電力値のうちの最大値を第1最大電力とする。
図3中段のグラフの例では、第1最大電力がP1であり、この第1最大電力P1が得られた期間の入力電流(導電路11Aを流れる電流)は、I3である。なお、時間T3は、長さT1の所定割合の時間であり、時間T2の時間帯は、各期間において長さT1の所定割合の時間が経過した後の時間帯である。
【0052】
制御部28は、上述の第1探索制御の後、次の追従制御を行う前に第2探索制御を行う。第2探索制御は、電力変換部30に昇圧動作を行わせつつ、導電路11Aを流れる電流(一方側の電流)を第2電流幅Δ2で段階的に増加させるように電力変換部30を制御し、且つ、第2電流幅Δ2で導電路11A,11B間の電圧を段階的に増加させたときの各段階での導電路11A,11Bの電力(一方側の電力)に基づいて、段階的に増加させた全段階における導電路11A,11Bの最大電力(第2最大電力)を検出する制御である。第2探索制御の各段階の制御は、第1探索制御の各段階の制御と同様である。第2電流幅Δ2は、第1電流幅Δ1よりも小さい値であり、例えば、Δ1の1%~50%の範囲であることが望ましい。
【0053】
第2探索制御における開始電流値I2は、上記第1探索制御における第1最大電力での入力電流(導電路11Aを流れる電流)の値I3よりも小さく且つ第1探索制御の各段階のうちの最も低い電流値I1よりも大きい電流値である。
図3の例では、開始電流値I2は、電流値I3から第1探索制御の段階をZ段階下げた値であり、例えば、V2=V3-Δ1×Zの式で表すことができる。
図3の例ではZは8であるが、この値以外であってもよい。第2探索制御は、この開始電流値I2から第2電流幅Δ2で導電路11Aを流れる電流(一方側の電流)を段階的に増加させる。制御部28は、第2探索制御でも、上述のPWM制御を行い、第2素子32に対してPWM信号を与えることで電力変換部30に昇圧動作を行わせる。
【0054】
制御部28は、このようなPWM制御によって電力変換部30に昇圧動作を行わせつつ、導電路11Aを流れる電流(一方側の電流)を第2電流幅Δ2で段階的に増加させるように電力変換部30を制御する。制御部28は、第2探索制御中でも、導電路11Aを流れる電流(一方側の電流)を各段階での目標電流とするように上記PWMのデューティを調整する。例えば、第2探索制御中において導電路11Aを流れる電流をI2とすべき場面では、制御部28は、検出部41の検出値を取得して導電路11Aを流れる電流をモニタしつつ、導電路11Aを流れる電流をI2で維持するように第2素子32のゲートに与えるPWM信号のデューティを調整する。制御部28は、第2探索制御でも、導電路11Aを流れる電流を段階的に切り替える場合の各段階の各期間の長さT1を0.05ms以上且つ100ms未満とする。代表例では、T1は、例えば1msである。
【0055】
制御部28は、第2探索制御を開始した直後の最初の目標電流がI2である場合、導電路11Aを流れる電流をI2とする調整(第1段階の調整)を時間T1行った後、目標電流をΔ2大きくして導電路11Aを流れる電流をI2+Δ2とする調整(第2段階の調整)を行い、次いで、目標電流を更にΔ2大きくして導電路11Aを流れる電流をI2+Δ2×2とする調整(第3段階の調整)を行う。このように、制御部28は、電力変換部30に対して上述の昇圧動作を行わせながら第m段階目の目標電圧をI2+Δ2×(m-1)とするように導電路11Aを流れる電流を時間T1毎に段階的に上昇させる。
【0056】
制御部28は、第2探索制御中には、第2電流幅Δ2で導電路11Aを流れる電流を段階的に増加させたときの各段階での導電路11A,11Bの電力(一方側の電力)を検出する。具体的には、各段階の時間T1において、開始時点t0から所定時間T3(T3=T1-T2)経過した後の時間T2において一定のサンプリング間隔で導電路11A,11Bの電力を所定回数(N回)検出し、そのN回の電力検出値を所定の統計手法を用いて評価して各段階の電力を算出する。「所定の統計手法を用いた評価」は、例えば、N回の平均値であってもよく、N回のうちの中央値であってもよく、N回のうちの最大値及び最小値を除いた平均値であってもよく、その他の統計手法であってもよい。代表例では、N回の平均値が用いられ、例えば、導電路11Aを流れる電流をI2とする第1段階の時間T1では、第1段階の開始時点から所定時間T3(T3=T1-T2)経過した後の時間T2において一定のサンプリング間隔で導電路11A,11Bの電力をN回検出し、そのN回の電力検出値の平均値を第1段階(電流値I2の期間)の電力値とする。第2段階、第3段階・・・の各期間についても、同様の方法で各電力値を算出する。制御部28は、このような第2探索制御を電流値I2からI4までの各段階の全部で行い、全段階の各電力値が得られた後、全段階の各電力値のうちの最大値を第2最大電力P2とする。
【0057】
追従制御は、電力変換部30の一方側の電力を探索制御で検出された第2最大電力P2に追従させる制御である。具体的には、電力変換部30の入力電力(導電路11A,11Bを介して供給される電力)を上記電力P2とするように電力変換部30に昇圧動作を行わせる制御である。制御部28は、追従制御において導電路11A,11Bを介して供給される入力電力をP2とすべき場面では、検出部41の検出値を取得して導電路11Aを流れる電流及び導電路11A,11B間の電圧をモニタしつつ、導電路11A,11Bを介して供給される入力電力をP2とするように第2素子32のゲートに与えるPWM信号のデューティを調整する。
【0058】
なお、上述の説明では、主に、MPPT回路22Aの昇圧動作や降圧動作が説明されたが、MPPT回路22B,22Cも、制御部28によってMPPT回路22Aと同様に制御されることで昇圧動作や降圧動作を行い得る。例えば、MPPT回路22Bは、一対の導電路13A,13B間に印加された電圧を昇圧して一対の導電路14A,14B間に印加する昇圧動作を行うこともでき、一対の導電路14A,14B間に印加された電圧を昇圧して一対の導電路13A,13B間に印加する降圧動作を行うこともできる。MPPT回路22Cは、一対の導電路15A,15B間に印加された電圧を昇圧して一対の導電路16A,16B間に印加する昇圧動作を行うこともでき、一対の導電路16A,16B間に印加された電圧を昇圧して一対の導電路15A,15B間に印加する降圧動作を行うこともできる。そして、制御部28は、MPPT回路22B,22Cに対してもMPPT回路22Aと同様の方法でMPPT制御を行い得る。
【0059】
また、電力制御装置10は、太陽電池パネル2から入力される電力に基づいて異常を判定する。電力制御装置10の異常判定部29は、探索制御中における入力側の電流に基づいて異常を判定する。
【0060】
異常判定部29は、第1探索制御中における入力側の電流に基づいて異常を判定する。異常判定部29は、第1電流幅Δ1で導電路11Aを流れる電流を段階的に増加させたときの所定の段階において、目標電流が変化してから所定時間経過後の入力側の電流に基づいて異常を判定する。所定の段階は、特定の1の段階であってもよいし、複数の段階であってもよいし、全段階であってもよい。
【0061】
異常判定部29は、入力側の電流と変化前の目標電流とに基づいて異常を判定する。具体的には、異常判定部29は、入力側の電流に基づく値と変化前の目標電流との差が正常範囲外であるか否かを判定する。入力側の電流に基づく値は、入力側の電流そのものであってもよいし、入力側の電流を温度などに応じて補正した値であってもよい。正常範囲は、異常判定部29に予め記憶されている。正常範囲は、段階ごとに定められていてもよいし、複数の段階で共通となるように定められていてもよいし、全段階で共通であってもよい。異常判定部29は、入力側の電流に基づく値と変化前の目標電流との差が正常範囲外である場合に異常が生じたと判定する。
【0062】
異常判定部29は、各段階において、複数の判定タイミングで入力側の電流を取得し、各電流の値に基づいて異常を判定する。複数の判定タイミングは、目標電流が変化したタイミングTJ0からの経過時間によって規定されている。上述したように、各段階の各期間の長さT1は、代表例では1msである。第1の判定タイミングTJ1は、例えば0.2msである。第2の判定タイミングTJ2は、例えば、0.4msである。上記正常範囲は、判定タイミングごとに定められている。
【0063】
正常範囲は、例えば以下の様に定められる。
図4の上段には、目標電流の経時的変化を示すグラフが示されている。
図4の下段には、目標電流が変化したときの理想的な電流波形W0が示されている。第1の判定タイミングTJ1での理想的な電流値ID1と変化前の目標電流TGBとの差をD1とする。この場合、D1-第1電流幅Δ1×Rが、第1の判定タイミングTJ1に対応する正常範囲の下限値に定められる。D1+第1電流幅Δ1×Rが、第1の判定タイミングTJ1に対応する正常範囲の上限値に定められる。Rは、係数であり、例えば、0.1以上で且つ0.5以下の値に設定される。第2の判定タイミングTJ2に対応する正常範囲についても、第1の判定タイミングTJ1に対応する正常範囲と同様に定められる。
【0064】
異常判定部29は、例えば以下の様に異常を判定する。
図5には、目標電流が変化したときに入力側の電流が電流波形W1のようになる例が示されている。異常判定部29は、目標電流が変化して第1の判定タイミングTJ1になると、入力側の電流の値を取得する。そして、異常判定部29は、取得した電流と変化前の目標電流との差DJ1を算出し、算出した差DJ1が、第1の判定タイミングTJ1の正常範囲外であるか否かを判定する。異常判定部29は、差DJ1が正常範囲外であると判定し、異常が生じたと判定する。また、異常判定部29は、第2の判定タイミングTJ2になると、入力側の電流の値を取得する。そして、異常判定部29は、取得した電流と変化前の目標電流との差DJ2を算出し、算出した差DJ2が、第2の判定タイミングTJ2の正常範囲外であるか否かを判定する。異常判定部29は、差DJ2が正常範囲内であると判定し、異常が生じたと判定しない。
【0065】
1-4.効果の例
電力制御装置10は、第1探索制御によって最大電力点の検出を相対的に大まかに行った後、第2探索制御によって最大電力点の検出をより細かく行うことができる。そして、第2探索制御では、第1探索制御で検出された最大電力点に寄せた電流領域で最大電力点の検出が行われるため、第1探索制御と同等の電流領域で検出を行う方法と比較して、検出の迅速化が図られる。更に、電力制御装置10は、第1探索制御及び第2探索制御のいずれでも、各段階の各期間の長さを100ms未満とするため、第1探索制御及び第2探索制御のいずれでも 電流の上昇速度を大きくすることができる。
【0066】
電力制御装置10の異常判定部29は、探索制御中における入力側の電流に基づいて異常を判定する。つまり、電力制御装置10は、最大電力点の探索に並行して異常を判定することができる。
【0067】
目標電流が変化した直後の電圧及び電流は大きく変化しやすい。電力制御装置10は、目標電流が変化してから所定時間経過後の入力側の電流に基づいて異常を判定するため、誤判定を防ぎやすい。
【0068】
電力制御装置10は、変化前の目標電流を利用して異常を判定することができる。電力制御装置10は、簡易な構成によって異常を判定することができる。電力制御装置10は、太陽電池パネル2が車両1に搭載される構成において異常を判定することができる。
【0069】
2.第2実施形態
第2実施形態では、太陽電池パネルを含む測定対象のインピーダンスに基づいて異常を判定する構成について説明する。なお、第2実施形態の電力制御装置は、第1実施形態で説明した
図1及び
図2に示す構成と同じであるため、
図1及び
図2を参照して説明する。
【0070】
第2実施形態では、異常判定部29が、探索制御中における入力側の電圧波形及び電流波形に基づいて太陽電池パネル2を含む測定対象のインピーダンスを測定し、測定したインピーダンスに基づいて異常を判定する。探索制御中において目標電流が変化したときには、電圧波形と電流波形との間にインピーダンスに応じた位相差が生じる。この位相差を利用して、異常判定部29は、太陽電池パネル2を含む測定対象のインピーダンスを測定する。ここで、測定対象とは、太陽電池パネル2、及び太陽電池パネル2から電力変換部30までの経路(具体的には、導電路11A,11B,13A,13B,15A,15B)である。
【0071】
異常判定部29は、測定したインピーダンスが予め定められた正常範囲外である場合に、異常が生じたと判定する。
【0072】
正常範囲は、例えば以下の様に定められる。
図6に示すように、正常時の太陽電池パネル2を用いて、太陽電池パネル2のコールコールプロットが測定される。そして、測定したコールコールプロットを基に、
図6に示す正常範囲ARが定められる。なお、
図6では、横軸が実部で、縦軸が虚部である。
【0073】
異常判定部29は、探索制御中において目標電流が変化したときに、検出部41の検出値に基づいて電圧波形及び電流波形を取得する。そして、異常判定部29は、電圧波形及び電流波形に基づいて太陽電池パネル2を含む測定対象のインピーダンスを測定する。異常判定部29は、
図7に示すように、測定したインピーダンスをプロットする。そして、異常判定部29は、プロットしたインピーダンスが、
図7に示す正常範囲AR外であるか否かを判定する。異常判定部29は、インピーダンスZ1のように正常範囲内である場合には、異常が生じたと判定しない。異常判定部29は、インピーダンスZ2のように正常範囲外である場合には、異常が生じたと判定する。
【0074】
第2実施形態の電力制御装置は、探索制御中に測定した測定対象のインピーダンスに基づいて異常を判定することができる。第2実施形態の電力制御装置は、インピーダンスを利用した異常の判定を、簡易な構成で実現することができる。
【0075】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。また、上述した実施形態や後述する実施形態の様々な特徴は、矛盾しない組み合わせであればどのように組み合わされてもよい。
【0076】
上記第1実施形態では、変化前の目標電流(目標値)に基づいて異常を判定する構成であったが、変化後の目標電流(目標値)に基づいて異常を判定する構成であってもよい。
【0077】
上記各実施形態では、一対の導電路11A,11B側(入力側)が一方側であるが、一対の導電路12A,12B側(出力側)が一方側であってもよい。
【0078】
上記各実施形態では、調整対象が「一方側の電流」であるが、「一方側の電圧」であってもよい。
【0079】
上記各実施形態では、調整対象を所定幅で段階的に増加させる構成であるが、調整対象を所定幅で段階的に減少させる構成であってもよい。また、第1探索制御では調整対象を所定幅で段階的に増加させ、第2探索制御では調整対象を所定幅で段階的に減少させてもよい。また、第1探索制御では調整対象を所定幅で段階的に減少させ、第2探索制御では調整対象を所定幅で段階的に増加させてもよい。
【0080】
上記各実施形態では、電力変換部30は、一対の導電路11A,11B間に印加された電圧を昇圧して一対の導電路12A,12B間に相対的に高い電圧を印加し得る回路であるが、電力変換部30は、一対の導電路11A,11B間に印加された電圧を降圧して一対の導電路12A,12B間に相対的に低い電圧を印加し得る回路であってもよい。この場合でも、制御部28は、電力変換部30に対してMPPT制御を行うことができる。
【0081】
上記各実施形態では、制御部28が一定時間毎に定期的に探索制御を行うが、探索制御の開始タイミングは一定時間毎のタイミングに限定されず、他の所定条件が成立したタイミングであってもよい。例えば、追従制御中に電力変換部30の入力側又は出力側の電流、電圧、電力のいずれかの指標が一定値以上変化したタイミングであったり、上記指標が単位時間当たりに所定値以上変化するような急変動タイミングであったりしてもよい。
【0082】
上記各実施形態では、電力変換部30がチョッパ回路によって構成されるが、フォワード方式の絶縁型DCDCコンバータやフライバック方式の絶縁型DCDCコンバータなど、降圧動作や昇圧動作を行い得る他のDCDCコンバータに変更されてもよい。
【0083】
上記各実施形態では、太陽電池パネル2A,2B,2Cの各々とMPPT回路22A,22B,22Cの各々との間に回路や電気部品が存在しないが、リレー、ヒューズ、フィルタなどの電気部品や回路が設けられていてもよい。電力変換部30に入力される入力電力は、太陽電池パネル2から直接供給されてもよく、何らかの中間回路を経由して供給されてもよい。
【0084】
上記各実施形態では、バッテリ6として、リチウムイオンバッテリからなる駆動用のバッテリ(主機バッテリ)が例示されたが、これに限定されず、バッテリ6は、補機用のバッテリであってもよく、鉛バッテリであってもよい。
【0085】
上記各実施形態では、3つの太陽電池パネルが用いられ、3つのMPPT回路が設けられる例が示されたが、太陽電池パネルは、1つ若しくは2つであってもよく、4つ以上であってもよい。いずれの場合でも、MPPT回路は、太陽電池パネルに対応して設けられていればよい。
【0086】
なお、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、今回開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示された範囲内又は特許請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0087】
1…車両
1A…車載システム
2,2A,2B,2C…太陽電池パネル
6…バッテリ
8…状態監視装置
10…電力制御装置
11A,11B,11B,12A,12B,13,13A,13B,14A,14B,15A,15B,16A,16B,51,52,61,62…導電路
22A,22B,22C…MPPT回路
24…コンデンサ
26…絶縁型コンバータ
28…制御部
29…異常判定部
30…電力変換部
31…第1素子
32…第2素子
34…インダクタ
38…駆動回路
41,42…検出部
AR…正常範囲
I1,I2,I3,I4…電流値
ID1…電流値
P1…第1最大電力
TGB…変化前の目標電流
TJ0…タイミング
TJ1…第1の判定タイミング
TJ2…第2の判定タイミング
W0,W1…電流波形
Z1,Z2…インピーダンス