(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135969
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】試料保持装置及び試料観察方法
(51)【国際特許分類】
H01J 37/20 20060101AFI20240927BHJP
H01J 37/28 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H01J37/20 F
H01J37/20 A
H01J37/20 E
H01J37/28 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046904
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000130259
【氏名又は名称】株式会社コベルコ科研
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(74)【代理人】
【識別番号】100139354
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 昌子
(74)【代理人】
【識別番号】100208708
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 健志
(74)【代理人】
【識別番号】100215371
【弁理士】
【氏名又は名称】古茂田 道夫
(74)【代理人】
【識別番号】100187997
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 厳輝
(72)【発明者】
【氏名】常石 英雅
(72)【発明者】
【氏名】小西 遼河
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA03
5C101FF01
5C101FF15
5C101FF16
5C101FF18
(57)【要約】
【課題】本発明は、試料に圧縮荷重又は引張荷重が付与でき、かつSEMのチャンバ内に配置できる試料保持装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の一態様である試料保持装置は、SEMのチャンバ内に配置され、試料を保持するための試料保持装置であって、上記試料を挟持する第1保持具及び第2保持具と、上記第1保持具の上記試料と反対側に配置され、又は上記試料に接するように配置されて上記試料を押圧する押圧部とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SEMのチャンバ内に配置され、試料を保持するための試料保持装置であって、
上記試料を挟持する第1保持具及び第2保持具と、
上記第1保持具の上記試料と反対側に配置され、又は上記試料に接するように配置されて上記試料を押圧する押圧部と
を備える試料保持装置。
【請求項2】
上記押圧部が上記試料を押圧する押圧方向の軸線上に配置され、上記試料に加えられている圧力を検出する検出部をさらに備える請求項1に記載の試料保持装置。
【請求項3】
上記押圧部が上記第1保持具の上記試料と反対側に配置され、上記検出部が上記第2保持具の上記試料と反対側に配置されている請求項2に記載の試料保持装置。
【請求項4】
上記押圧部が圧電アクチュエータ及びボルトの少なくとも一方を有する請求項1に記載の試料保持装置。
【請求項5】
上記押圧部が圧電アクチュエータを有し、
上記圧電アクチュエータが、上記試料に加える圧力をSEM観察中に変更可能に設けられている請求項4に記載の試料保持装置。
【請求項6】
上記試料が活性な物質を含む請求項1に記載の試料保持装置。
【請求項7】
上記試料を通電する通電部をさらに備える請求項1に記載の試料保持装置。
【請求項8】
上記試料を加熱する加熱部をさらに備える請求項1に記載の試料保持装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の試料保持装置を上記チャンバ内に配置する工程と、
上記試料保持装置の上記押圧部で上記試料に対して圧力を加える工程と、
圧力が加えられている上記試料を上記SEMで観察する工程と
を備える試料観察方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料保持装置及び試料観察方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物質の表面形状を観測するものとしてSEM(Scanning Electron Microscope:走査型電子顕微鏡)が広く用いられている。SEMは、変化のない試料表面の観察に加え、変化する試料の観察にも利用されることがある。SEMの試料表面観測系を利用して微小な試料の歪を測定するマイクロ材料試験装置が知られている(特開2003-207432号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記公報所載のマイクロ材料試験装置は、試料に微小な張力を付与する微動用アクチュエータと、試料に比較的大きな張力を付与する粗動用アクチュエータとを有する。このマイクロ材料試験装置を走査型プローブ顕微鏡に用いることにより、引張荷重が付与されている試料の歪の観測をすることができるとされている。しかしながら、上記公報には、試料に圧縮荷重を付与する具体的な構成が記載されていない。
【0005】
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、試料に圧縮荷重又は引張荷重が付与でき、かつSEMのチャンバ内に配置できる試料保持装置、及び圧縮荷重又は引張荷重が付与されている試料を観察できる試料観察方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本発明の一態様である試料保持装置は、SEMのチャンバ内に配置され、試料を保持するための試料保持装置であって、上記試料を挟持する第1保持具及び第2保持具と、上記第1保持具の上記試料と反対側に配置され、又は上記試料に接するように配置されて上記試料を押圧する押圧部とを備える。
【0007】
上記課題を解決するためになされた本発明の別の一態様である試料観察方法は、上記試料保持装置を上記チャンバ内に配置する工程と、上記試料保持装置の上記押圧部で上記試料に対して圧力を加える工程と、圧力が加えられている上記試料を上記SEMで観察する工程とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様である試料保持装置は、試料に圧縮荷重又は引張荷重が付与でき、かつSEMのチャンバ内に配置できる。本発明の別の一態様である試料観察方法は、圧縮荷重又は引張荷重が付与されている試料を観察できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態の試料保持装置を示す模式的平面図である。
【
図2】
図2は、本発明の試料保持装置が配置される試料格納容器を示す模式的平面図である。
【
図3】
図3は、
図2の試料格納容器のA-A線における切断面と、この試料格納容器が有する蓋部のA-A線における切断面とを示す模式的断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の別の一実施形態の試料保持装置を示す模式的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一態様である試料保持装置は、SEMのチャンバ内に配置され、試料を保持するための試料保持装置であって、上記試料を挟持する第1保持具及び第2保持具と、上記第1保持具の上記試料と反対側に配置され、又は上記試料に接するように配置されて上記試料を押圧する押圧部とを備える。
【0011】
当該試料保持装置は、試料を挟持する第1保持具及び第2保持具と押圧部とを備える。当該試料保持装置の一態様では、上記押圧部は上記第1保持具の上記試料と反対側に配置されている。このため、上記押圧部が上記第1保持具を介して上記試料に圧縮荷重を加えることができる。当該試料保持装置の他の一態様では、上記押圧部は上記試料に接するように配置される。この押圧部が上記試料を押圧することで、上記試料の上記押圧部と接している部分と反対側の部分に引張荷重を付与できる。
【0012】
当該試料保持装置が、上記押圧部が上記試料を押圧する押圧方向の軸線上に配置され、上記試料に加えられている圧力を検出する検出部をさらに備えるとよい。このようにすることで、上記試料に加えられている圧力を確認しながら上記試料の観察をすることができる。
【0013】
上記押圧部が、上記第1保持具の上記試料と反対側に配置され、上記検出部が上記第2保持具の上記試料と反対側に配置されているとよい。このようにすることで、上記試料に加えられている圧縮荷重を容易に測定できる。
【0014】
上記押圧部が圧電アクチュエータ及びボルトの少なくとも一方を有するとよい。このようにすることで、上記試料に加える圧力を容易に変更することができる。
【0015】
上記押圧部が、圧電アクチュエータを有し、上記圧電アクチュエータが、上記試料に加える圧力をSEM観察中に変更可能に設けられているとよい。このようにすることで、変更される圧力によって上記試料が変化する様子を観察することができる。
【0016】
上記試料が活性な物質を含むとよい。すなわち、当該試料保持装置は、特に活性な物質の観察に適している。
【0017】
当該試料保持装置が、上記試料を通電する通電部をさらに備えるとよい。通電部を備えることで、圧力が加えられ、かつ通電状態の試料の観察ができる。
【0018】
上記試料を加熱する加熱部をさらに備えるとよい。加熱部を備えることで、圧力が加えられ、かつ加熱状態の試料の観察ができる。
【0019】
本発明の別の一態様である試料観察方法は、上記試料保持装置を上記チャンバ内に配置する工程と、上記試料保持装置の上記押圧部で上記試料に対して圧力を加える工程と、圧力が付与されている上記試料を上記SEMで観察する工程とを備える。
【0020】
当該試料観察方法は、上記試料保持装置を用いているため、圧縮荷重又は引張荷重が付与されている試料を観察することができる。
【0021】
[発明を実施するための形態の詳細]
以下、本発明について、図面を参照しつつ詳説する。
【0022】
<第一実施形態>
図1に本発明の一実施形態である試料保持装置1を示す。
【0023】
〔試料保持装置〕
当該試料保持装置1は、SEMのチャンバ(不図示)内に配置され、試料Sを保持する。当該試料保持装置1は、試料Sを挟持する第1保持具2a及び第2保持具2bと、上記第1保持具2aの上記試料Sと反対側に配置され上記試料Sを押圧する押圧部とを備える。当該試料保持装置1は、試料Sに圧縮荷重を付与できる。
【0024】
当該試料保持装置1は、試料Sに加えられている圧力を検出する検出部をさらに備える。上記検出部の配置としては、上記押圧部が上記試料を押圧する押圧方向の軸線上に配置されることが好ましく、例えば、試料Sを挟んで押圧部と対向する側に配置することができる。上記検出部は、その検出器(センサ)の中心が上記軸線上に位置するように配置されることがより好ましい。本実施形態では、上記押圧部は圧電アクチュエータ3であり、上記検出部はロードセル4である。
【0025】
試料Sとしては、圧力が加えられない状態から圧力(圧縮荷重)を加えられることにより状態が変化するものであれば特に限定されるものではないが、活性な物質を含むことが好ましい。活性な物質としては、特に限定されるものではなく、ナトリウム、ガリウム、リチウム、アルミニウム等が挙げられる。
【0026】
第1保持具2a及び第2保持具2b(以下、単に「保持具2」ともいう)は、試料Sを挟持する。保持具2は、例えば、樹脂、ステンレス、アルミニウム等によって形成されている。第1保持具2a及び第2保持具2bは、例えば絶縁性のネジ等で締結され、試料Sが落下しない程度の軽い押圧力を付与することで試料Sを挟持している。本実施形態では、圧電アクチュエータ3は第1保持具2aの試料Sと反対側に配置され、ロードセル4は第2保持具2bの試料Sと反対側に配置されている。
【0027】
圧電アクチュエータ3は、通電されることにより試料Sを加圧する。具体的には、通電された圧電アクチュエータ3は、第1保持具2aを加圧し、加圧された第1保持具2aが試料Sを加圧する。当該試料保持装置1は、圧電アクチュエータ3に通電をするための配線(不図示)が接続され、電気出力を制御可能な加圧調整装置と電気的に接続されている。この加圧調整装置は、SEMのチャンバ外に配置される。上記加圧調整装置の電気出力を変更することで、試料Sに加える圧力をSEM観察中に変更可能とすることができる。
【0028】
ロードセル4は、上記チャンバ外に配置されている荷重表示装置(不図示)と電気的に接続されている。上記荷重表示装置は、ロードセル4が検出する圧縮荷重を表示する。当該試料保持装置1、上記加圧調整装置及び上記荷重表示装置は、SEM観察ユニットを構成する。
【0029】
圧電アクチュエータ3は、作業者が上記加圧調整装置の電気出力を制御することで、試料Sに加える圧力を任意に変更することができる。当該試料保持装置1を含む上記SEM観察ユニットは、加える圧力を変化させることで試料Sの状態が変化していく様子を実時間(同時進行)で観察するIn-situ SEM(その場観察SEM)に適している。
【0030】
〔試料格納容器〕
試料格納容器10は、
図2及び
図3に示すように、当該試料保持装置1を格納する格納部11を有する。試料格納容器10は、当該試料保持装置1を格納部11に格納して、上記チャンバ内に配置される。このため、当該試料保持装置1を上記チャンバ内に容易に配置することができる。
図2の試料格納容器10は、当該試料保持装置1を載置するための台座16が設けられている。
【0031】
試料格納容器10は、格納部11の開口を封止可能な蓋部12をさらに有する。蓋部12は、試料格納容器10の開口部13に嵌合される。開口部13には、格納部11を気密に保持するためのシールリング14が配置されている。蓋部12で格納部11内を密閉することで、試料Sを大気に暴露させることなく上記チャンバ内に配置することができる。具体的には、グローブボックス等の中で試料保持装置1を格納して格納部11を蓋部12で密閉し、この蓋部12を予備排気した上記SEMの予備排気室で取り外すことで試料Sを大気に暴露させないで上記チャンバ内に配置することができる。
【0032】
試料格納容器10は、圧電アクチュエータ3及びロードセル4の配線に導電するためのコネクタ部15を有する。
【0033】
試料格納容器10の寸法としては、特に限定されるものではなく、例えば、平面視における最大外寸(全幅又は全長)を120mm以下、蓋部12を含めた平面視方向の最大外寸(高さ)を100mm以下、格納部11の内径を80mm以下、格納部11の開口からの深さを50mm以下などとすることが好ましい。当該試料保持装置1の大きさとしては、格納部11内に格納できる大きさであれば特に限定されるものではないが、全長又は全幅を50mm以下、高さ(厚み)を35mm以下などとすることが好ましい。
【0034】
〔試料観察方法〕
当該試料観察方法は、当該試料保持装置1を上記チャンバ内に配置する工程と、試料保持装置1の押圧部で試料Sに対して圧力を加える工程と、圧力が加えられている試料Sを上記SEMで観察する工程とを備える。
【0035】
本実施形態では、上記押圧部として圧電アクチュエータ3と、この圧電アクチュエータ3が試料Sに加える圧力を変更する上記加圧調整装置とを用いているため、上記チャンバ内に配置する工程の後に、圧力を加える工程を行う。また、圧力を加える工程は、SEMで観察する工程と同時又はSEMで観察する工程の開始後に行うことができる。
【0036】
本実施形態の試料観察方法は、上記チャンバ内に配置する工程の前に当該試料保持装置1を試料格納容器10に格納する工程と、試料格納容器10から蓋部12を離脱する工程とを有する。
【0037】
(格納工程)
格納工程では、当該試料保持装置1を試料格納容器10の格納部11に格納する。具体的には、保持具2に準備した試料Sを挟持させ、試料Sと当該試料保持装置1とを試料格納容器10の格納部11に配置し、圧電アクチュエータ3及びロードセル4の配線と、この配線に導電する試料格納容器10のコネクタ部15からの配線とを接続する。
【0038】
この格納工程は、試料格納容器10が蓋部12を有するため、上記配線接続の後に、格納部11を蓋部12で密閉する手順を有する。この密閉手順を有することで、試料Sを大気非暴露にできる。大気非暴露で試料Sを格納するための密閉手順は、グローブボックス等の中で試料保持装置1を格納して上記配線の接続が完了した試料格納容器10の格納部11を蓋部12で密閉する。上記グローブボックス等の中は、酸素濃度、露点などが調整されている。
【0039】
(離脱工程)
離脱工程では、蓋部12を試料格納容器10から離脱する。具体的には、試料格納容器10を上記SEMの予備排気室に配置し、予備排気が完了した後に蓋部12が取り外されて試料格納容器10を上記チャンバ内に移送する。蓋部12の取り外し方法は、例えば、上記予備排気室の上部に設けられ、先端に雄螺子加工がなされているロッドを蓋部12に設けられている雌螺子加工がされた穴部分に螺合し、上記ロッドを引き上げる等によって行われる。蓋部12が取り外された試料格納容器10は、他のロッド(移動用ロッド)によって、上記予備排気室から上記チャンバ内に移動させられる。
【0040】
(配置工程)
配置工程では、当該試料保持装置1を上記チャンバ内に配置する。すなわち、当該試料保持装置1を格納した試料格納容器10を上記チャンバ内に配置する。
【0041】
(加圧工程)
加圧工程では、試料保持装置1の圧電アクチュエータ3で試料Sに対して圧力を加える。この加圧工程は、後述の観察工程と平行して行うことができる。上記SEM観察ユニットは、当該試料保持装置1の圧電アクチュエータ3が試料Sに加える圧力を変更するための上記加圧調整装置と、ロードセル4が検出する荷重を表示する上記荷重表示装置とを有するため、作業者は試料Sに加える圧力を確認しつつ変更することができる。
【0042】
(観察工程)
観察工程では、圧力が加えられている試料Sを上記SEMで観察する。この観察工程は、当該試料保持装置1を用いているため、加えられる圧力が変更されることで状態が変化する試料Sのその場観察をすることができる。
【0043】
<利点>
当該試料保持装置1は、試料Sを挟持する第1保持具2a及び第2保持具2bと、第1保持具2aの試料Sと反対側に配置されて試料Sを押圧する押圧部とを備えるため、上記押圧部が第1保持具2aを押圧することで試料Sに圧縮荷重を付与することができる。当該試料保持装置1は、上記押圧部として圧電アクチュエータ3を用いているため、SEM観察中に試料Sに加える圧力を任意に変更することができる。このため、加える圧力を変更することで試料Sの状態が変化していく様子を観察することができる。
【0044】
試料格納容器10は、蓋部12をさらに有するため、試料Sを大気非暴露で上記チャンバ内に配置することができる。
【0045】
当該試料観察方法は、当該試料保持装置1を用いているため、上記SEMによるその場観察をすることができる。
【0046】
<第二実施形態>
図4に本発明の一実施形態である試料保持装置21を示す。なお、上述の実施形態と同一の構成(部材)については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0047】
当該試料保持装置21は、SEMのチャンバ内に配置され、試料Sを挟持する第1保持具22a及び第2保持具22bと、試料Sに接するように配置されて試料Sを押圧する押圧部とを備える。当該試料保持装置21は、試料Sに少なくとも部分的に引張荷重を付与する。本実施形態の上記押圧部は、圧電アクチュエータ23である。
【0048】
当該試料保持装置21は、圧電アクチュエータ23に通電をするための配線(不図示)が接続され、電気出力を制御可能な加圧調整装置(不図示)と電気的に接続されている。この加圧調整装置は、上記チャンバ外に配置される。
【0049】
圧電アクチュエータ23は、試料Sに接するように配置される。具体的には、第1保持具22a及び第2保持具22bの間で、かつ圧電アクチュエータ23の一部と試料Sの一部とが接するように配置される。
【0050】
第1保持具22a及び第2保持具22bと試料Sとは、接着など公知の方法で、互いに離間しないように固着されている。
【0051】
圧電アクチュエータ23に通電すると、試料Sと接している部分が押圧される。これにより、試料Sの圧電アクチュエータ23と接している部分と反対側の部分が加圧方向に歪を生じる。すなわち、試料Sの圧電アクチュエータ23と接している部分と反対側の部分が押し出されて撓む。この反対側部分には、引張荷重が付与されている。この反対側部分をSEM観察することで、引張荷重が付与されている試料Sの観察をすることができる。
【0052】
<利点>
当該試料保持装置21は、試料Sを挟持する第1保持具22a及び第2保持具22bと、試料Sに接するように配置されて試料Sを押圧する圧電アクチュエータ23とを備えるため、試料Sに部分的に引張荷重を付与することができる。また、当該試料保持装置21は、圧電アクチュエータ23が試料Sに接している、すなわち、試料Sから離間させることなく圧電アクチュエータ23を配置している。このため、当該試料保持装置21は、小型化が図りやすく、上記チャンバ内及び当該試料格納容器の格納部内に容易に配置できる大きさとすることができる。
【0053】
[その他の実施形態]
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0054】
上記押圧部は、圧電アクチュエータに代えてボルトとしてもよい。上記押圧部としてボルトを用いた場合、当該試料観察方法は、上記チャンバ内に配置する工程の前に圧力を加える工程が行われ、その場観察は行われない。
【0055】
上記押圧部は、圧電アクチュエータとボルトとを有してもよい。このようにすることで、例えば、ボルトによって試料に予め一定の押圧力を付与し、この試料を圧電アクチュエータがさらに押圧することができる。このため、一定の押圧力が付与された状態からさらに押圧されていく試料の変化を観察することができる。
【0056】
当該試料保持装置は、試料を通電するための通電部をさらに備えてもよい。上記通電部の構成としては、試料に通電可能な正極及び負極を有するものであれば特に限定されるものではない。上記通電部の配置としては、特に限定されるものではないが、例えば、第1保持具と押圧部との間に正極(又は負極)を配置し、第2保持具と検出部との間に負極(又は正極)を配置してもよい。あるいは、第1保持具と試料との間に正極を配置し、上記試料と第2保持具との間に負極を配置してもよい。もしくは、押圧部、第1保持具、試料、第2保持具及び検出部をこの順に配置し、これらの並び方向に直交する方向で試料を挟むように正極及び負極を配置してもよい。また、第1保持具及び第2保持具が通電部を含んでいてもよい。当該試料保持装置が上記通電部を有する場合には、上記SEM観察ユニットが、上記チャンバ外に配置され、上記通電部への電気出力が変更可能な通電制御装置を有するとよい。
【0057】
当該試料保持装置は、試料を加熱するための加熱部をさらに備えてもよい。加熱部の配置としては、特に限定されるものではなく、例えば、第2保持具の試料と反対側に配置されてもよい。また、第1保持具及び第2保持具の少なくとも一方が加熱部を含んでいてもよい。当該試料保持装置が上記加熱部を有する場合には、上記SEM観察ユニットが、上記チャンバ外に配置され、上記加熱部への電気出力が変更可能な加熱制御装置を有するとよい。
【0058】
当該試料保持装置は、上記通電部と上記加熱部との両方を備えてもよい。上記通電部と上記加熱部との配置としては、特に限定されるものではなく、例えば、押圧部、通電部(正極又は負極)、第1保持具、試料、第2保持具、通電部(負極又は正極)、加熱部及び検出部をこの順に配置してもよい。
【0059】
当該試料観察方法において、当該試料保持装置1を試料格納容器10に格納しない場合は、上記格納する工程及び上記離脱する工程は行われない。
【0060】
第一実施形態として説明した試料保持装置におけるロードセル等の検出部は、必須の構成ではない。
【0061】
第二実施形態として説明した試料保持装置は、試料を挟んで圧電アクチュエータと対向する側にロードセル等の検出部を配置してもよい。
【0062】
当該試料格納容器は、試料が大気に暴露してもよいものであれば、蓋部を有しなくてもよい。蓋部を有しない場合は、当該試料観察方法における上記格納する工程の蓋部を密閉する手順及び離脱する工程は行われない。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上説明したように、本発明の試料保持装置は、圧縮荷重及び引張荷重が付与されている試料のSEM観察に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0064】
1,21 試料保持装置
2 保持具
2a,22a 第1保持具
2b,22b 第2保持具
3,23 圧電アクチュエータ
4 ロードセル
10 試料格納容器
11 格納部
12 蓋部
13 開口部
14 シールリング
15 コネクタ部
16 台座