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特開2024-135980設備更新計画作成支援システム、学習装置、推論装置、設備更新計画作成支援方法および設備更新計画作成支援プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135980
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】設備更新計画作成支援システム、学習装置、推論装置、設備更新計画作成支援方法および設備更新計画作成支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/08 20120101AFI20240927BHJP
   G06Q 10/20 20230101ALI20240927BHJP
【FI】
G06Q50/08
G06Q10/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046919
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 佑紀
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC07
5L049CC15
5L050CC07
(57)【要約】
【課題】設備に関するデータが十分に蓄積されていない場合であっても、適切な更新計画を作成することが可能な設備更新計画作成支援装置を得ること。
【解決手段】設備更新計画作成支援システム1は、建物に備わる設備の設備機器データの時系列データの実測値と、設備関連データとを蓄積したデータベース21と、設備関連データを取得する推論用データ取得部251と、設備関連データから設備機器データの時系列データを推論するための学習済モデルを用いて、推論用データ取得部が取得した設備関連データから設備機器データの予測値を出力する推論部252と、推論部が出力する予測値を用いて設備機器データを補完し、設備機器データの実測値と予測値とを含む補完後の時系列データを生成する補完部221と、更新計画に対する制約条件と、設備機器データの補完後の時系列データとに基づいて、更新計画を生成する更新計画作成部32と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の建物に備わる設備のランニングコストおよび故障確率を含む設備機器データの時系列データの実測値と、前記設備の種別および稼働状況を含む設備関連データとを蓄積したデータベースと、
推論対象の設備の前記設備関連データを取得する推論用データ取得部と、
前記設備関連データから前記設備機器データの時系列データを推論するための学習済モデルを用いて、前記推論用データ取得部が取得した前記設備関連データから前記設備機器データの予測値を出力する推論部と、
前記推論部が出力する前記予測値を用いて前記設備機器データを補完し、前記設備機器データの前記実測値と前記予測値とを含む補完後の時系列データを生成する補完部と、
更新計画に対する制約条件と、前記設備機器データの前記補完後の時系列データとに基づいて、前記設備の更新計画を生成する更新計画作成部と、
を備えることを特徴とする設備更新計画作成支援システム。
【請求項2】
前記補完部は、前記予測値を生成した日時を示す推論日時情報を記録することを特徴とする請求項1に記載の設備更新計画作成支援システム。
【請求項3】
前記設備の前記設備関連データと、前記設備機器データの実測値とを含む学習用データを取得する学習用データ取得部と、
前記学習用データを用いて、前記設備の前記設備関連データから前記設備機器データの時系列データを推論するための学習済モデルを生成するモデル生成部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の設備更新計画作成支援システム。
【請求項4】
前記更新計画作成部は、対象の前記建物に備わる前記設備を各期間において使用するか否かを示す変数の値を決定することによって前記更新計画を生成し、
前記変数の値を、前記設備の監視制御システムの制御命令列に変換して、前記制御命令列を前記監視制御システムに送信する制御部、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の設備更新計画作成支援システム。
【請求項5】
検索条件の入力を受け付け、前記データベースから前記検索条件に当てはまる前記設備を抽出し、前記検索条件を前記制約条件に変換する検索処理部、
をさらに備え、
前記更新計画作成部は、前記検索処理部が前記検索条件から変換した前記制約条件に基づいて、前記更新計画を生成することを特徴とする請求項1に記載の設備更新計画作成支援システム。
【請求項6】
前記検索処理部による検索結果と、前記検索結果に対応する前記検索条件を前記更新計画に反映するための操作を受け付ける操作オブジェクトとを表示画面に表示する表示部、
をさらに備え、
前記検索処理部は、前記操作オブジェクトに対する操作を受け付けると、前記検索条件を前記制約条件に変換することを特徴とする請求項5に記載の設備更新計画作成支援システム。
【請求項7】
前記データベースは、前記設備のメーカおよび前記設備のリリース年の少なくとも1つをさらに記憶することを特徴とする請求項5に記載の設備更新計画作成支援システム。
【請求項8】
前記設備関連データと、前記設備機器データと、前記更新計画とに基づいて、前記設備の稼働状況を評価する余剰設備算出部、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の設備更新計画作成支援システム。
【請求項9】
前記余剰設備算出部による評価結果を、前記設備が通常の使用状況の範囲内であるか、前記設備が通常よりも過剰使用の状態であるか、または、前記設備が設備余剰の状態であるかを示す情報を用いて表示画面に表示する表示部、
をさらに備えることを特徴とする請求項8に記載の設備更新計画作成支援システム。
【請求項10】
前記データベースは、前記設備が設置された環境を示す環境データをさらに記憶し、
前記環境データは前記設備が設置された場所の気温の時系列データを含み、
前記学習済モデルは、前記設備関連データから前記気温の時系列データをさらに推論し、
前記推論部は、前記学習済モデルを用いて、前記推論用データ取得部が取得した前記設備関連データから前記気温の予測値を出力することを特徴とする請求項1に記載の設備更新計画作成支援システム。
【請求項11】
複数の建物に備わる設備のランニングコストおよび故障確率を含む設備機器データの時系列データの実測値と、前記設備の種別および稼働状況を含む設備関連データとを含む学習用データを取得する学習用データ取得部と、
前記学習用データを用いて、前記設備の前記設備関連データから前記設備機器データの時系列データを推論するための学習済モデルを生成するモデル生成部と、
を備えることを特徴とする学習装置。
【請求項12】
複数の建物に備わる設備のランニングコストおよび故障確率を含む設備機器データの時系列データの実測値と、前記設備の種別および稼働状況を含む設備関連データとを蓄積したデータベースから、推論対象の設備の前記設備関連データを取得する推論用データ取得部と、
前記設備関連データから前記設備機器データの時系列データを推論するための学習済モデルを用いて、前記推論用データ取得部が取得した前記設備関連データから前記設備機器データの予測値を出力する推論部と、
を備えることを特徴とする推論装置。
【請求項13】
複数の建物に備わる設備のランニングコストおよび故障確率を含む設備機器データの時系列データの実測値と、前記設備の種別および稼働状況を含む設備関連データとを蓄積したデータベースから、推論対象の設備の前記設備関連データを取得するステップと、
前記設備関連データから前記設備機器データの時系列データを推論するための学習済モデルを用いて、前記推論対象の設備の前記設備関連データから前記設備機器データの予測値を出力するステップと、
前記予測値を用いて前記設備機器データを補完し、前記設備機器データの前記実測値と前記予測値とを含む補完後の時系列データを生成するステップと、
更新計画に対する制約条件と、前記設備機器データの前記補完後の時系列データとに基づいて、前記更新計画を生成するステップと、
を含むことを特徴とする設備更新計画作成支援方法。
【請求項14】
複数の建物に備わる設備のランニングコストおよび故障確率を含む設備機器データの時系列データの実測値と、前記設備の種別および稼働状況を含む設備関連データとを蓄積したデータベースから、推論対象の設備の前記設備関連データを取得するステップと、
前記設備関連データから前記設備機器データの時系列データを推論するための学習済モデルを用いて、前記推論対象の設備の前記設備関連データから前記設備機器データの予測値を出力するステップと、
前記予測値を用いて前記設備機器データを補完し、前記設備機器データの前記実測値と前記予測値とを含む補完後の時系列データを生成するステップと、
更新計画に対する制約条件と、前記設備機器データの前記補完後の時系列データとに基づいて、前記更新計画を生成する装置に、生成した前記補完後の時系列データを提供するステップと、
をコンピュータに実行させることを特徴とする設備更新計画作成支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、建物に備わる設備の更新計画の作成を支援する設備更新計画作成支援システム、学習装置、推論装置、設備更新計画作成支援方法および設備更新計画作成支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化対策のために、脱炭素社会の実現を目指す取り組みが加速している。事務所ビルや商業施設などの建物において消費するエネルギーについても削減が求められており、日本では、削減目標が設定されている。建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物のことをZEB(Zero Energy Building)と呼ぶ。エネルギー問題の解決のためには、新築の建物だけでなく、既存の建物においてもZEB化を推進することが重要となる。既存の建物においてZEB化を行う際には、数年かけて行われることが一般的であり、建物に備わる設備を更新する際にかかる一時コストであるイニシャルコスト、設備を維持するためにかかるランニングコストなどを考慮して更新計画を作成し、更新計画に基づいた更新工事が行われる。しかしながら、適切な更新計画を作成することは難しい。
【0003】
例えば、特許文献1には、水処理プラントにおける設備の更新計画の作成を支援するシステムが開示されている。このシステムでは、ユーザが保有している設備の状態を示すデータの実測値や、設備が消費する電力量を示すデータの実測値をデータベースに蓄積し、データベースに蓄積したデータに対して最適化処理を行い、ライフサイクルコストが最小となる更新計画を導出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-168185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の技術では、データベースに蓄積された実測値から将来にかかるコストを関数で表し、関数に基づいて設備の更新計画を作成しているため、十分にデータが蓄積されていない場合には、適切な更新計画を作成することが困難であるという問題があった。
【0006】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、設備に関するデータが十分に蓄積されていない場合であっても、適切な更新計画を作成することが可能な設備更新計画作成支援システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る設備更新計画作成支援システムは、複数の建物に備わる設備のランニングコストおよび故障確率を含む設備機器データの時系列データの実測値と、設備の種別および稼働状況を含む設備関連データとを蓄積したデータベースと、推論対象の設備の設備関連データを取得する推論用データ取得部と、設備関連データから設備機器データの時系列データを推論するための学習済モデルを用いて、推論用データ取得部が取得した設備関連データから設備機器データの予測値を出力する推論部と、推論部が出力する予測値を用いて設備機器データを補完し、設備機器データの実測値と予測値とを含む補完後の時系列データを生成する補完部と、更新計画に対する制約条件と、設備機器データの補完後の時系列データとに基づいて、設備の更新計画を生成する更新計画作成部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、設備に関するデータが十分に蓄積されていない場合であっても、適切な更新計画を作成することが可能な設備更新計画作成支援システムを得ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1にかかる設備更新計画作成支援システムの構成を示す図
図2】実施の形態1にかかる設備更新計画作成支援システムの機能構成を示す図
図3図2に示すモデル生成部の行うモデル生成についての説明図
図4図2に示すクラウドサーバの処理についての説明図
図5】更新計画作成部が使用する設備機器データの一例を示す図
図6】クラウドサーバにおける動作例を説明するためのフローチャート
図7】ユーザ端末およびオンプレミスサーバにおける動作例を説明するためのフローチャート
図8】ユーザ端末が表示する予測値表示画面の一例を示す図
図9】ユーザ端末が表示する更新計画表示画面の一例を示す図
図10】実施の形態2にかかる設備更新計画作成支援システムの機能構成を示す図
図11】実施の形態3にかかる設備更新計画作成支援システムの機能構成を示す図
図12】実施の形態4にかかる設備更新計画作成支援システムの機能構成を示す図
図13】余剰設備算出部の処理についての説明図
図14】実施の形態5にかかる設備更新計画作成支援システムの機能構成を示す図
図15】設備更新計画作成支援システムを実現するコンピュータシステムの構成例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示の実施の形態に係る設備更新計画作成支援システム、学習装置、推論装置、設備更新計画作成支援方法および設備更新計画作成支援プログラムを図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1にかかる設備更新計画作成支援システム1の構成を示す図である。設備更新計画作成支援システム1は、ビルなどの建物に備わる設備を更新する時期、更新対象の設備、更新後に導入する設備などの情報を含む設備の更新計画の作成を支援する。更新計画を作成するにあたって、設備更新計画作成支援システム1は、建物に備わる設備に関する情報である設備機器データを収集する。このとき、設備更新計画作成支援システム1は、複数のユーザ企業から設備機器データを収集する。例えば、設備機器データはクラウドサーバ2上で収集される。また、設備更新計画作成支援システム1は、収集した設備機器データを、AI(Artificial Intelligence)を用いて補完する機能を有し、補完後の設備機器データに基づいて、設備の更新計画を作成する。
【0012】
設備更新計画作成支援システム1は、クラウドサーバ2と、各ユーザ企業が管理する建物内に設置されて運用されているサーバであるオンプレミスサーバ3-1,3-2,3-3と、ユーザ企業毎に導入されたビル監視制御システム4-1,4-2,4-3と、各ユーザ企業の入出力端末であるユーザ端末5-1,5-2,5-3とを用いて構成することができる。なお、ここでは同種であってユーザ企業が異なる構成要素のそれぞれに、共通する数字の後にハイフンとそれぞれ異なる数字とを付して、各構成要素を区別している。ハイフンの後の数字が同じ構成要素は、同じユーザ企業の所有する構成要素を示す。例えば、オンプレミスサーバ3-1と、ビル監視制御システム4-1と、ユーザ端末5-1とは、同じユーザ企業が所有する構成要素である。なお、ビル監視制御システム4-1は、設備の監視制御を行う監視制御システムの一例であり、ユーザ企業が所有するビルの監視制御を行うシステムである。ここでは、ユーザ企業の所有する建物の一例としてビルを挙げるが、建物はビルに限らず、ショッピングセンターなどの商業施設であってもよい。
【0013】
なお、以下の説明中において、オンプレミスサーバ3-1,3-2,3-3のそれぞれを区別する必要がない場合、単にオンプレミスサーバ3と称する。同様に、ビル監視制御システム4-1,4-2,4-3のそれぞれを区別する必要がない場合、単にビル監視制御システム4と称する。同様に、ユーザ端末5-1,5-2,5-3のそれぞれを区別する必要がない場合、ユーザ端末5-1,5-2,5-3に共通する機能について説明する場合、単にユーザ端末5と称する。
【0014】
また、ここでは設備更新計画作成支援システム1の利用者を「ユーザ企業」と称したが、設備更新計画作成支援システム1の利用者は企業以外の団体であってもよいし、個人であってもよい。また、以下の説明中において、ユーザ端末5を操作する人のことを「ユーザ」と称する場合もある。
【0015】
ユーザ端末5とオンプレミスサーバ3との間は、LAN(Local Area Network)で接続され、ビル監視制御システム4とオンプレミスサーバ3との間は、LANで接続され、オンプレミスサーバ3とクラウドサーバ2との間は、例えば、VPN(Virtual Private Network)で接続される。設備機器データは、ここでは、ビル監視制御システム4から取り出してクラウドサーバ2上で保持される。
【0016】
続いて、設備更新計画作成支援システム1の具体的な機能構成について説明する。以下では、簡単のため、複数のユーザ企業のうちの1つについて示す。
【0017】
図2は、実施の形態1にかかる設備更新計画作成支援システム1の機能構成を示す図である。クラウドサーバ2は、ユーザ企業の保有する建物に設置された設備の設備機器データ211および設備関連データ212を記憶するデータベース21と、データベース21にデータを記憶させたり、データベース21に記憶されたデータを取り出したり、データベース21のデータを処理したりするデータベース処理部22と、データベース21に記憶されたデータを用いて、学習済モデルを生成する機械学習装置23と、機械学習装置23が生成した学習済モデルを記憶する学習済モデル記憶部24と、学習済モデルを用いて推論を行う推論装置25とを有する。
【0018】
データベース21には、複数のユーザ企業のビル監視制御システム4から収集された設備に関するデータが記憶される。ここで、設備とは、建物に備わる設備であって、建物内でエネルギーを消費または産出する装置を指す。例えば、エネルギーを消費する設備としては、空調設備、エレベータ、照明設備などが挙げられる。また、エネルギーを産出する設備としては、発電設備が挙げられる。ここでは、設備に関するデータのうち、設備の更新計画を作成する際に使用されるデータを設備機器データ211と称し、設備機器データ211以外のデータを設備関連データ212と称する。設備機器データ211は、設備を導入する際にかかる一時費用であるイニシャルコスト、設備を維持するためにかかる費用であるランニングコスト、設備の故障確率などを示すデータである。なおここでは、設備の保全を行った場合、設備の更新を行ったものとして扱う。このため、設備が故障した際やメンテナンスが必要となった場合の保全費用は、イニシャルコストに含まれる。ランニングコストは、主に電気料金であり、設備機器データ211は、電気料金自体であってもよいし、電力量であってもよい。ランニングコストおよび故障確率は、時系列データである。設備関連データ212は、設備の種別を示す種別データ、設備の稼働状況を示す稼働状況データなどである。稼働状況データは、少なくとも、設備のON/OFF日時を示すデータを含む。また、稼働状況データは、設備の動作モード、設定値、実測値の時系列データを含んでいてもよい。例えば、設備が空調設備である場合、稼働状況データは、何時何分何秒に何度に設定して何度になったのかを表すデータを含むことができる。
【0019】
データベース処理部22は、データベース21に記憶された設備に関するデータを処理する。例えば、データベース処理部22は、ビル監視制御システム4から設備に関するデータを取得すると、取得したデータを設備機器データ211または設備関連データ212としてデータベース21に記憶することができる。或いは、データベース処理部22は、ビル監視制御システム4から取得したデータを、そのままではなく、加工した上で、データベース21に記憶してもよい。データベース処理部22がビル監視制御システム4からデータを取得するタイミングは、予め定められた周期とすることができ、例えば、1日に1度とすることができる。また、データベース処理部22は、機械学習装置23および推論装置25に、データベース21に格納されたデータを提供する機能を有する。また、データベース処理部22は、推論装置25が出力する設備機器データ211の予測値を用いて、データベース21に記憶された設備機器データ211を補完し、設備機器データ211の実測値と予測値とを含む補完後の時系列データを生成する補完部221を有する。補完部221は、設備機器データ211の補完後の時系列データをデータベース21に記憶する。
【0020】
機械学習装置23は、データベース21に記憶された設備機器データ211および設備関連データ212に基づいて、設備関連データ212から設備機器データ211の時系列データを推論するための学習済モデルを生成する。機械学習装置23は、生成した学習済モデルを学習済モデル記憶部24に記憶する。具体的には、機械学習装置23は、学習用データ取得部231と、モデル生成部232とを有する。
【0021】
学習用データ取得部231は、データベース処理部22を介して、データベース21に記憶されたデータを学習用データとして取得する。学習用データ取得部231は、データベース21に記憶された設備機器データ211の実測値、具体的には、ランニングコストおよび故障確率の実測値と、設備関連データ212、具体的には設備の種別および稼働状況を示すデータとを学習用データとして取得する。モデル生成部232は、学習用データを用いて、設備の設備関連データ212から設備機器データ211の時系列データを推論するための学習済モデルを生成する。モデル生成部232は、生成した学習済モデルを学習済モデル記憶部24に記憶させる。
【0022】
モデル生成部232は、学習アルゴリズムとして、例えば敵対的生成ネットワークと呼ばれるGAN(Generative Adversarial Networks)などを用いることができる。図3は、図2に示すモデル生成部232の行うモデル生成についての説明図である。GANを用いる場合、モデル生成部232は、学習用データである設備関連データ212から設備機器データ211の疑似データを生成する生成器232-1と、設備機器データ211の疑似データと実測データとを見分ける識別器232-2とを有する。モデル生成部232は、設備関連データ212を入力として、入力されたデータの特徴を学習していくことで新たな設備機器データ211を出力するように生成器232-1を学習させる。生成器232-1が出力する新たな設備機器データ211を疑似データとも呼ぶ。また、モデル生成部232は、識別器232-2に、生成器232-1が生成した設備機器データ211の疑似データと、学習用データに含まれる設備機器データ211の実測データとを入力し、実測データと疑似データとを見分けるように識別器232-2を学習させる。モデル生成部232は、生成器232-1と識別器232-2とを競わせることで、生成器232-1および識別器232-2の両方のネットワークの性能を高め、より実在するデータに似た疑似データの生成を可能にすることができる。
【0023】
なお、ここではモデル生成部232がGANを用いて学習済モデルを生成する例について説明したが、これに限られるものではない。学習アルゴリズムについては、教師あり学習、強化学習、教師なし学習、または半教師あり学習などを適用することも可能である。また、モデル生成部232が使用する学習アルゴリズムとしては、他の深層学習(Deep Learning)を用いることもできる。また、モデル生成部232は、他の公知の方法、例えば遺伝的プログラミング、機能論理プログラミング、サポートベクタマシンなどに従って機械学習を実行してもよい。
【0024】
図2の説明に戻る。推論装置25は、推論対象の設備の設備関連データ212を取得して推論用データとする推論用データ取得部251と、設備関連データ212から設備機器データ211の時系列データを推論するための学習済モデルを用いて、推論用データ取得部251が取得した設備関連データ212から現時点よりも将来の設備機器データ211の予測値を出力する推論部252とを有する。推論用データ取得部251は、データベース21から設備関連データ212を推論用データとして取得し、取得した推論用データを推論部252に出力する。推論部252は、学習済モデル記憶部24に記憶された学習済モデルに対して、推論用データ取得部251が出力する推論用データを入力し、学習済モデルから出力される設備機器データ211の予測値の時系列データをデータベース処理部22の補完部221に出力する。
【0025】
補完部221は、推論装置25が出力する設備機器データ211の予測値の時系列データを用いてデータベース21に記憶された設備機器データ211を補完し、設備機器データの実測値と予測値とを含む補完後の時系列データを生成する。
【0026】
図4は、図2に示すクラウドサーバ2の処理についての説明図である。学習時には、機械学習装置23は、学習用データとして、設備機器データ211の実測値の時系列データと、設備関連データ212とをデータベース21から取得し、モデル生成部232であるGANに入力して機械学習処理を行う。
【0027】
予測時には、推論装置25は、データベース21から設備関連データ212を推論用データとして取得し、取得した推論用データをモデル生成部232であるGANに入力する。GANからは、生成データとして、設備機器データ211の予測値の時系列データが出力される。生成データである設備機器データ211の予測値の時系列データを補完部221に出力すると、補完部221は、データベース21に記憶された設備機器データ211の実測値の時系列データと、推論装置25が出力する生成データである設備機器データ211の予測値の時系列データとを用いて、補完データを生成する。このとき、補完部221は、実測値と予測値との境目が分かるように、タイムスタンプを記憶する。図4の補完データの星印はタイムスタンプを示し、タイムスタンプ以前の時系列データは実測値であり、タイムスタンプよりも後の時系列データは予測値であることを示している。補完部221は、補完後の時系列データをデータベース21に記憶する。
【0028】
図2の説明に戻る。オンプレミスサーバ3は、ビル監視制御システム4、ユーザ端末5、およびクラウドサーバ2のそれぞれと通信するデータ通信部31と、設備の更新計画を作成する更新計画作成部32と、作成した更新計画を記憶する更新計画記憶部33とを有する。
【0029】
データ通信部31は、ビル監視制御システム4から設備に関するデータを受信すると、受信したデータをクラウドサーバ2に送信する。また、データ通信部31は、クラウドサーバ2からデータベース21に記憶されたデータを受信すると、受信したデータを更新計画作成部32などのオンプレミスサーバ3の各機能部に出力することができる。データ通信部31は、オンプレミスサーバ3で生成された表示画面を表示するための画面表示データをユーザ端末5に送信し、ユーザ端末5で行われた操作内容を示す操作信号を更新計画作成部32などのオンプレミスサーバ3の各機能部に出力することができる。
【0030】
更新計画作成部32は、データベース21に記憶されている設備機器データ211と、ユーザ端末5から入力される制約条件とに基づいて、最適化処理を行い、コストが最小であって制約条件を満たす設備の更新計画を作成する。
【0031】
図5は、更新計画作成部32が使用する設備機器データ211の一例を示す図である。ここでは、設備機器データ211に含まれるランニングコストの時系列データを示している。「項目番号」は、設備毎に割り当てられた番号であり、「タイムスタンプ」は、最後に推論装置25を用いた予測処理を行ったタイミングを示しており、各日付に対応するランニングコストが「円」単位で格納されている。なお、設備機器データ211の値は、補完処理後の値であって、実測値および予測値を含む。具体的には、ランニングコストの値は、「タイムスタンプ」に示す日付よりも前のデータは、実測値であり、「タイムスタンプ」以降の日付のデータは、予測値である。例えば、項目番号「000001」では、タイムスタンプが「2022/1/2」であるため、「2022/1/1」のデータは実測値であり、「2022/1/2」以降のデータは予測値である。同様に、項目番号「000003」では、タイムスタンプが「2022/1/5」であるため、「2022/1/1」~「2022/1/4」のデータは実測値であり、「2022/1/5」以降のデータは予測値である。図5に示すように、更新計画作成部32が更新計画を作成する際には、実測値が存在する部分については実測値を用い、実測値が存在しない部分については予測値を用いることとする。
【0032】
図2の説明に戻る。更新計画作成部32は、設備機器データ211に含まれるイニシャルコストの数値データと、ランニングコストおよび故障確率の時系列データとを用いて、設備の更新計画を作成する。また、更新計画作成部32は、省エネ目標値、予算、工事期間、法規制といった制約条件を満たすように、設備の更新計画を作成する。ここで更新計画作成部32が使用するアルゴリズムは特に限定されない。例えば、更新計画作成部32は、線形計画法を用いて、設備の更新計画を作成することができる。線形計画法を用いる場合、更新計画作成部32は、「イニシャルコストと、故障確率に基づいて導出されるランニングコスト期待値との和」を目的関数とし、「省エネ目標値、予算、工事期間、および法規制」を制約条件とし、「各年度の各設備を更新するか否かを表す1/0変数」を変数として、問題を定式化し、目的関数が最小となる変数の組み合わせを求めることによって、設備の更新計画を求めることができる。この場合、最適化処理の出力は、「各年度の各設備を更新するか否かを表す1/0変数」の列となる。また、更新計画作成部32は、線形計画法以外にも、最急降下法、動的計画法などのアルゴリズムを用いて、設備の更新計画を作成することができる。なお、変数は、データベース21に記憶された全ての設備について、年度毎に設けられ、例えば、変数の値が「1」である場合、対象の設備をその年度において使用することを示し、変数の値が「0」である場合、対象の設備をその年度において使用しないことを示す。この場合、変数の値が「1」から「0」に変化すると、使用中である対象の設備を対象の年度に更新することを示し、変数の値が「0」から「1」に変化すると、対象の設備が設備の更新により新たに採用されることを示す。なお、上述の通り、ここでは設備の保全についても設備の更新として扱われるため、変数の値が「1」から「0」に変化した場合、対象の設備を対象の年度に更新して、他の設備に置き換えること、或いは、保全作業を行って他の設備として取り扱うことを示す。更新計画作成部32は、更新される設備については、どの設備がどの設備に置き換えられるのかを示す情報を保持する。更新計画作成部32は、作成した更新計画を、更新計画記憶部33に記憶する。
【0033】
ユーザ端末5は、表示画面を出力する表示部51と、ユーザ端末5のユーザからの入力を受け付ける入力部52とを有する。表示部51は、オンプレミスサーバ3から受信する画面表示データに基づいて、表示画面を出力することができる。また、入力部52は、ユーザ端末5のユーザからの操作入力を受け付けて、操作内容を示す操作信号を生成し、生成した操作信号をオンプレミスサーバ3に出力することができる。
【0034】
なお、ここでは、ユーザ端末5は、オンプレミスサーバ3が生成した画面表示データに基づいて、表示画面を出力することとしたが、ユーザ端末5上で動作するアプリケーションによって生成される画面表示データに基づいて表示画面を出力してもよい。或いは、ユーザ端末5は、クラウドサーバ2上で生成される画面表示データに基づいて表示画面を出力する構成であってもよい。
【0035】
表示部51は、例えば、設備機器データ211の予測値を表示したり、オンプレミスサーバ3で作成された更新計画を表示したりすることができる。また、表示部51は、更新計画を作成する際に使用する制約条件の入力を受け付ける画面を表示することもできる。
【0036】
ここで、設備更新計画作成支援システム1の動作について説明する。図6は、クラウドサーバ2における動作例を説明するためのフローチャートである。データベース処理部22は、1日1回のデータ抽出タイミングであるか否かを判断する(ステップS101)。データベース処理部22は、例えば、前回のデータ抽出処理を開始してからの経過時間が24時間を超えたか否かを判断することで、1日1回のデータ抽出タイミングであるか否かを判断してもよいし、予めデータ抽出処理を行う時刻を決めておき、現在時刻が予め定められた時刻であるか否かを判断することで、1日1回のデータ抽出タイミングであるか否かを判断してもよい。
【0037】
データ抽出タイミングである場合(ステップS101:Yes)、データベース処理部22は、ビル監視制御システム4からデータを抽出する(ステップS102)。データベース処理部22は、ビル監視制御システム4から抽出したデータを、データベース21に格納する(ステップS103)。このとき、データベース処理部22は、抽出したデータをそのままデータベース21に格納してもよいし、抽出したデータを加工した上でデータベース21に格納してもよい。データ抽出タイミングでない場合(ステップS101:No)、データベース処理部22は、ステップS102およびステップS103の処理を省略する。
【0038】
続いてデータベース処理部22は、1ヶ月に1回の学習タイミングであるか否かを判断する(ステップS104)。データベース処理部22は、例えば、毎月1日など学習処理を行う日付を予め定めておき、現在の日付が予め定めた日付に合致するか否かを判断することで、学習タイミングであるか否かを判断することができる。なお、ここでは1ヶ月に1回としたため、毎月学習処理を行う日付を予め定めておくこととしたが、例えば、30日毎に学習処理を行うこととしてもよい。この場合、前回学習処理を行ってからの経過日数をカウントすることで、学習タイミングであるか否かを判断することができる。
【0039】
学習タイミングである場合(ステップS104:Yes)、データベース処理部22は、機械学習装置23に学習処理の実行を指示し、機械学習装置23の学習用データ取得部231は、データベース21から学習用データを取得する(ステップS105)。学習用データ取得部231は、取得した学習用データをモデル生成部232に出力する。モデル生成部232は、学習処理を実行して学習済モデルを生成する(ステップS106)。モデル生成部232は、生成した学習済モデルを学習済モデル記憶部24に記憶させる(ステップS107)。学習タイミングでない場合(ステップS104:No)、ステップS105からステップS107の処理は省略される。
【0040】
データベース処理部22は、1日1回の予測タイミングであるか否かを判断する(ステップS108)。データベース処理部22は、例えば、前回の予測処理を開始してからの経過時間が24時間を超えたか否かを判断することで、1日1回の予測タイミングであるか否かを判断してもよいし、予め予測処理を行う時刻を決めておき、現在時刻が予め定められた時刻であるか否かを判断することで、1日1回の予測タイミングであるか否かを判断してもよい。
【0041】
予測タイミングでない場合(ステップS108:No)、ユーザ端末5は、図6に示す処理を終了する。予測タイミングである場合(ステップS108:Yes)、データベース処理部22は、推論装置25に予測処理の実行を指示し、推論装置25の推論用データ取得部251は、データベース21から推論用データを取得する(ステップS109)。推論用データ取得部251は、取得した推論用データを推論部252に出力する。
【0042】
推論部252は、学習済モデルに推論用データを入力したデータ予測を行い、学習済モデルからの出力を予測データとしてデータベース処理部22に出力する(ステップS110)。
【0043】
データベース処理部22の補完部221は、推論部252が出力する予測データをデータベース21に格納する(ステップS111)。補完部221は、さらに、タイムスタンプをデータベース21に格納する(ステップS112)。
【0044】
なお、データ抽出タイミングや予測タイミングは、設備毎に定められてもよいし、全ての設備についてまとめて定められてもよい。
【0045】
図7は、ユーザ端末5およびオンプレミスサーバ3における動作例を説明するためのフローチャートである。ユーザ端末5は、入力部52を用いたユーザの入力が有るか否かを判断する(ステップS201)。ユーザの入力がない場合(ステップS201:No)、ユーザ端末5は、ステップS201の処理を繰り返す。ユーザの入力が有る場合(ステップS201:Yes)、ユーザ端末5は、操作信号に基づいて、ユーザが予測値表示のための入力を行ったか否かを判断する(ステップS202)。予測値表示である場合(ステップS202:Yes)、ユーザ端末5は、表示部51を用いて予測値の表示を行い(ステップS203)、図7に示す処理を終了する。
【0046】
図8は、ユーザ端末5が表示する予測値表示画面の一例を示す図である。表示部51が表示する表示画面について例示する。例えば、表示部51は、データベース21に記憶された設備機器データ211の予測値および実測値を表示画面に表示することができる。図8に示す例では、実測値が存在する期間については、実測値と予測値とを重畳して表示し、実測値が存在しない期間については予測値のみを表示している。なお、ここでは、設備機器データ211のランニングコストを電力量(kWh)で示している。実測値が存在する期間において予測値も重畳して表示することで、ユーザは予測値の精度を確認することができる。
【0047】
図7の説明に戻る。予測値表示でない場合(ステップS202:No)、ユーザ端末5は、操作信号に基づいて、ユーザが最適化処理を行うための操作を行ったか否かを判断する(ステップS204)。最適化処理でない場合(ステップS204:No)、ユーザ端末5は、図7に示す処理を終了する。最適化処理である場合(ステップS204:Yes)、ユーザ端末5は、ユーザによって入力された制約条件を読み取り(ステップS205)、制約条件をオンプレミスサーバ3に送信して最適化処理の実行を指示する。
【0048】
オンプレミスサーバ3は、ユーザ端末5からの指示と受信した制約条件とに基づいて、最適化処理を実行する(ステップS206)。具体的には、オンプレミスサーバ3の更新計画作成部32は、ユーザ端末5から最適化処理の実行の指示を受け付けると、データベース21から最適化処理に用いる設備機器データ211を取得し、取得した設備機器データ211と、ユーザ端末5から受信した制約条件とに基づいて、最適化処理を行って設備の更新計画を作成する。
【0049】
更新計画作成部32は、作成した更新計画を更新計画記憶部33に保存する(ステップS207)。更新計画作成部32は、生成した更新計画に基づいて、更新計画の表示画面を表示するための画面表示データを生成してユーザ端末5に送信する。ユーザ端末5は、オンプレミスサーバ3から受信した画面表示データを用いて、生成された更新計画を表示する(ステップS208)。
【0050】
図9は、ユーザ端末5が表示する更新計画表示画面の一例を示す図である。更新計画の表示画面には、年度毎に、更新対象の設備と、更新後の設備と、更新にかかる費用とが含まれている。最適化処理の出力と、データベース21に記憶されたデータとから図9に示すような情報が抽出され、画面表示データが生成される。
【0051】
以上説明したように、実施の形態1にかかる設備更新計画作成支援システム1は、複数の建物に備わる設備のランニングコストおよび故障確率を含む設備機器データ211の時系列データの実測値と、設備の種別および稼働状況を含む設備関連データ212とを蓄積したデータベース21と、推論対象の設備の設備関連データ212を取得する推論用データ取得部251と、設備関連データ212から設備機器データ211の時系列データを推論するための学習済モデルを用いて、推論用データ取得部251が取得した設備関連データ212から設備機器データ211の予測値を出力する推論部252と、推論部252が出力する予測値を用いて設備機器データ211を補完し、設備機器データ211の実測値と予測値とを含む補完後の時系列データを生成する補完部221と、更新計画に対する制約条件と、設備機器データ211の補完後の時系列データとに基づいて、設備の更新計画を生成する更新計画作成部32と、を備える。このような構成を有することにより、設備に関するデータが十分に蓄積されていない場合であっても、補完後の時系列データを用いて更新計画が作成されるため、適切な更新計画を作成することが可能になる。
【0052】
また、補完部221は、予測値を生成した日時を示す推論日時情報であるタイムスタンプを記録する。これにより、設備機器データ211の実測値と予測値とを区別することが可能になる。また、補完後の時系列データを表示画面に表示する表示部51、をさらに備え、表示部51は、タイムスタンプに基づいて、時系列データに含まれる実測値と予測値とを異なる表現で区別可能に表示することもできる。なお、表示部51は、例えば、文字の種類、太さ、色などを変えることで、実測値と予測値とを区別可能に表示してもよいし、各データの背景の模様や色を変えることで、実測値と予測値とを区別可能に表示してもよい。
【0053】
また、設備更新計画作成支援システム1は、設備の設備関連データ212と、設備機器データ211の実測値とを含む学習用データを取得する学習用データ取得部231と、学習用データを用いて、設備の設備関連データ212から設備機器データ211の時系列データを推論するための学習済モデルを生成するモデル生成部232と、をさらに備えることができる。
【0054】
また、実施の形態1によれば、建物に備わる設備の更新計画の作成を支援する設備更新計画作成支援方法を提供することもできる。設備更新計画作成支援方法は、複数の建物に備わる設備のランニングコストおよび故障確率を含む設備機器データ211の時系列データの実測値と、設備の種別および稼働状況を含む設備関連データ212とを蓄積したデータベース21から、推論対象の設備の設備関連データ212を取得するステップと、設備関連データ212から設備機器データ211の時系列データを推論するための学習済モデルを用いて、推論対象の設備の設備関連データ212から設備機器データ211の予測値を出力するステップと、予測値を用いて設備機器データ211を補完し、設備機器データ211の実測値と予測値とを含む補完後の時系列データを生成するステップと、更新計画に対する制約条件と、設備機器データ211の補完後の時系列データとに基づいて、更新計画を生成するステップと、を含む。
【0055】
また、実施の形態1によれば、建物に備わる設備の更新計画の作成を支援する設備更新計画作成支援プログラムを提供することもできる。設備更新計画作成支援プログラムは、複数の建物に備わる設備のランニングコストおよび故障確率を含む設備機器データ211の時系列データの実測値と、設備の種別および稼働状況を含む設備関連データ212とを蓄積したデータベース21から、推論対象の設備の設備関連データ212を取得するステップと、設備関連データ212から設備機器データ211の時系列データを推論するための学習済モデルを用いて、推論対象の設備の設備関連データ212から設備機器データ211の予測値を出力するステップと、予測値を用いて設備機器データ211を補完し、設備機器データ211の実測値と予測値とを含む補完後の時系列データを生成するステップと、更新計画に対する制約条件と、設備機器データ211の補完後の時系列データとに基づいて、更新計画を生成する装置に、生成した補完後の時系列データを提供するステップと、をコンピュータに実行させる。
【0056】
実施の形態2.
図10は、実施の形態2にかかる設備更新計画作成支援システム1Aの機能構成を示す図である。なお、設備更新計画作成支援システム1Aについても設備更新計画作成支援システム1と同様に、実際には図1に示すように、複数のユーザ企業の複数のオンプレミスサーバ3、ビル監視制御システム4およびユーザ端末5が共通のクラウドサーバ2に接続されているが、簡単のため、図10では1つのユーザ企業についてのみ示す。
【0057】
設備更新計画作成支援システム1Aは、クラウドサーバ2と、オンプレミスサーバ3Aと、ビル監視制御システム4と、ユーザ端末5とを有する。なお、設備更新計画作成支援システム1と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略し、以下、設備更新計画作成支援システム1と異なる部分について主に説明する。
【0058】
オンプレミスサーバ3Aは、データ通信部31と、更新計画作成部32Aと、更新計画記憶部33と、制御部34とを有する。
【0059】
更新計画作成部32Aは、データベース21に記憶されている設備機器データ211と、ユーザ端末5から入力される制約条件とに基づいて、最適化処理を行い、コストが最小であって制約条件を満たす設備の更新計画を作成する。
【0060】
更新計画作成部32Aは、設備機器データ211に含まれるイニシャルコストの数値データと、ランニングコストおよび故障確率の時系列データとを用いて、設備の更新計画を作成する。また、更新計画作成部32Aは、省エネ目標値、予算、工事期間、法規制といった制約条件を満たすように、設備の更新計画を作成する。ここで更新計画作成部32Aが使用するアルゴリズムは特に限定されない。例えば、更新計画作成部32Aは、線形計画法を用いて、設備の更新計画を作成することができる。線形計画法を用いる場合、更新計画作成部32Aは、「イニシャルコストと、故障確率に基づいて導出されるランニングコスト期待値との和」を目的関数とし、「省エネ目標値、予算、工事期間、および法規制」を制約条件とし、「各年度の各設備の制御項目のON/OFFを表す1/0変数」を変数として、問題を定式化し、目的関数が最小となる変数の組み合わせを求めることによって、設備の更新計画を求めることができる。この場合、最適化処理の出力は、「各年度の各設備の制御項目のON/OFFを表す1/0変数」の列となる。ここで、「各年度の各設備の制御項目のON/OFFを表す1/0変数」の値は、「各年度の各設備を使用するか否かを表す1/0変数」ともいうことができる。つまり、各年度の各設備を使用する場合には、制御項目がONであり、各年度の各設備を使用しない場合には、制御項目がOFFとなる。また、更新計画作成部32Aは、線形計画法以外にも、最急降下法、動的計画法などのアルゴリズムを用いて、設備の更新計画を作成することができる。更新計画作成部32Aは、作成した更新計画を、更新計画記憶部33に記憶する。「各年度の各設備の制御項目のON/OFFを表す1/0変数」を出力することで、最適化処理の出力は、設備の更新計画を含んだ設備運用計画となる。
【0061】
制御部34は、更新計画作成部32Aが作成した設備運用計画に基づいて、ビル監視制御システム4の制御を行う。具体的には、最適化処理の出力である「各年度の各設備の制御項目のON/OFFを表す1/0変数」をビル監視制御システム4の制御命令列に変換して、変換後の制御命令列をデータ通信部31を介してビル監視制御システム4に送信する。これにより、ビル監視制御システム4は、設備の更新計画に従って、各設備を監視対象に追加したり監視対象から除外したりすることが可能になる。
【0062】
以上説明したように、実施の形態2にかかる設備更新計画作成支援システム1Aによれば、実施の形態1と同様の効果を奏することができる。また、実施の形態2にかかる設備更新計画作成支援システム1Aの更新計画作成部32Aは、対象の建物に備わる設備を各期間において使用するか否かを示す変数の値を決定することによって更新計画を生成し、変数の値を、ビル監視制御システム4の制御命令列に変換して、制御命令列をビル監視制御システム4に送信する制御部34をさらに備える。これにより、設備の更新によりビル監視制御システム4の制御項目が変わることになるが、ユーザが手入力によって各制御項目の設定を変更しなくても、自動的に制御項目のON/OFFを変更することが可能になる。
【0063】
実施の形態3.
図11は、実施の形態3にかかる設備更新計画作成支援システム1Bの機能構成を示す図である。なお、設備更新計画作成支援システム1Bについても設備更新計画作成支援システム1,1Aと同様に、実際には図1に示すように、複数のユーザ企業の複数のオンプレミスサーバ3、ビル監視制御システム4およびユーザ端末5が共通のクラウドサーバ2に接続されているが、簡単のため、図11では1つのユーザ企業についてのみ示す。
【0064】
設備更新計画作成支援システム1Bは、クラウドサーバ2と、オンプレミスサーバ3Bと、ビル監視制御システム4と、ユーザ端末5とを有する。なお、設備更新計画作成支援システム1と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略し、以下、設備更新計画作成支援システム1と異なる部分について主に説明する。
【0065】
オンプレミスサーバ3Bは、データ通信部31と、更新計画作成部32Bと、更新計画記憶部33と、検索処理部35と、情報登録部36とを有する。
【0066】
検索処理部35は、ユーザ端末5に設備の検索画面を提供し、検索画面に入力された検索クエリに基づいて、データベース21に記憶された設備の検索を行う。検索クエリは、例えば、イニシャルコスト、ランニングコスト、故障確率、メーカ名、リリース年、製品仕様、使用推奨環境、交換時期などである。このため、本実施の形態ではデータベース21に、設備のメーカ、リリース年のデータを記憶している。検索処理部35は、検索クエリに合致した設備の情報を含む表示画面をユーザ端末5に提供することができる。また、検索処理部35は、検索クエリの情報を、更新計画作成部32Bが認識可能な制約条件のデータ形式に変換して、更新計画作成部32Bに出力することができる。
【0067】
情報登録部36は、データベース21へ設備のメーカ、リリース年などの情報を登録するための登録画面をユーザ端末5に提供し、ユーザ端末5からの入力情報をデータベース処理部22に送信することで、データベース21に設備の情報を登録する。情報登録部36は、例えば、システム稼働時と、設備の変更時にユーザの入力に基づいて設備の情報を登録する。
【0068】
更新計画作成部32Bは、検索処理部35が出力する制約条件に基づいて、更新計画を作成することができる。更新計画作成部32Bの機能は、検索処理部35が出力する制約条件を用いることができる以外は、更新計画作成部32と同様である。
【0069】
オンプレミスサーバ3Bは、ユーザ端末5を用いたユーザ操作を受け付けた場合に限って、検索クエリを更新計画に反映する、つまり検索クエリから変換して生成された制約条件を用いた更新計画を作成してもよい。例えば、検索処理部35は、検索結果と、検索結果に対応する検索クエリを更新計画に反映するための操作を受け付ける操作オブジェクトとを表示画面に表示させるための画面表示データを生成する。表示部51がこの画面表示データに基づいて表示画面を表示し、表示された操作オブジェクトに対する操作を受け付けると、検索処理部35が検索クエリを制約条件に変換し、更新計画作成部32Bがこの制約条件に基づいて更新計画を作成するようにしてもよい。
【0070】
以上説明したように、実施の形態3にかかる設備更新計画作成支援システム1Bは、検索条件である検索クエリの入力を受け付け、データベース21から検索クエリに当てはまる設備を抽出し、検索クエリを制約条件に変換する検索処理部35をさらに備え、更新計画作成部32Bは、検索処理部35が検索クエリから変換した制約条件に基づいて、更新計画を生成する。
【0071】
また、設備更新計画作成支援システム1Bは、検索処理部35による検索結果と、検索結果に対応する検索条件を更新計画に反映するための操作を受け付ける操作オブジェクトとを表示画面に表示する表示部51をさらに備え、検索処理部35は、操作オブジェクトに対する操作を受け付けると、検索条件を制約条件に変換することもできる。
【0072】
また、設備更新計画作成支援システム1Bにおいてデータベース21は、設備のメーカおよび設備のリリース年の少なくとも1つをさらに記憶する。設備のメーカ、リリース年といった情報は、情報登録部36によって、ユーザ操作に応じて登録することができる。
【0073】
実施の形態4.
図12は、実施の形態4にかかる設備更新計画作成支援システム1Cの機能構成を示す図である。なお、設備更新計画作成支援システム1Cについても設備更新計画作成支援システム1,1A,1Bと同様に、実際には図1に示すように、複数のユーザ企業の複数のオンプレミスサーバ3、ビル監視制御システム4およびユーザ端末5が共通のクラウドサーバ2に接続されているが、簡単のため、図12では1つのユーザ企業についてのみ示す。
【0074】
設備更新計画作成支援システム1Cは、クラウドサーバ2と、オンプレミスサーバ3Cと、ビル監視制御システム4と、ユーザ端末5とを有する。なお、設備更新計画作成支援システム1と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略し、以下、設備更新計画作成支援システム1と異なる部分について主に説明する。
【0075】
データベース21には、設備の稼働状況を示す稼働データと、消費電力量とが記憶されていることとする。オンプレミスサーバ3Cは、データ通信部31と、更新計画作成部32と、更新計画記憶部33と、余剰設備算出部37とを有する。
【0076】
余剰設備算出部37は、データベース21に記憶されている設備関連データ212および設備機器データ211と、更新計画記憶部33に記憶された更新計画とに基づいて、統計的手法により、設備の稼働状況の評価を行い、「過剰使用」「設備余剰」「通常使用」といった判定結果を出力する。具体的には、余剰設備算出部37は、稼働データおよび消費電力量のデータと、更新計画とに基づいて、設備の稼働状況の評価を行うことができる。判定結果の出力にあたって、余剰設備算出部37は、設備毎に、「過剰使用」「設備余剰」「通常使用」といった判定結果を示した表示画面を、データ通信部31を介してユーザ端末5に出力することができる。
【0077】
なお、余剰設備算出部37が稼働状況の評価にあたって使用するデータは、更新計画については、ユーザ企業自身のものとし、稼働データおよび消費電力量については、ユーザ企業自身の保有する設備に関するデータに加えて、ユーザ企業自身の保有する設備と同じ設備であって他のユーザ企業の保有するものに関するデータを使用することができる。
【0078】
余剰設備算出部37が稼働状況の評価を行う手法については様々な手法が考えられるが、一例として、以下の手法が考えられる。余剰設備算出部37は、まず、他のユーザ企業の保有する設備の稼働データおよび消費電力量を図13に示すように正規分布に変換する。図13は、余剰設備算出部37の処理についての説明図である。図13の横軸は、稼働データ、消費電力量といった観測データを示し、縦軸は確率密度を示している。続いて余剰設備算出部37は、ユーザ企業自身の保有する設備の稼働データおよび消費電力量を更新計画に合わせて補正する。続いて余剰設備算出部37は、ユーザ企業自身の保有する設備のデータと、正規分布に変換したデータの標準偏差σとに基づいて、稼働状況を評価する。具体的には、ユーザ企業自身の保有する設備のデータが、「平均+2σ」よりも大きければ、設備の「過剰使用」であると判定し、ユーザ企業自身の保有する設備のデータが、「平均-2σ」よりも小さければ、「設備余剰」と判定し、「平均±2σ」の間の範囲であれば「通常使用」と判定する。なお、図13に示すように、「平均±2σ」の間の範囲に全体の約95%のデータが含まれる。表示部51は、余剰設備算出部37による評価結果を示す表示画面を表示することができる。例えば、表示画面には、「過剰使用」「設備余剰」「通常使用」といった分類を示す情報を表示することができる。
【0079】
以上説明したように、実施の形態4にかかる設備更新計画作成支援システム1Cは、設備関連データ212と、設備機器データ211と、更新計画とに基づいて、設備の稼働状況を評価する余剰設備算出部37をさらに備える。また、表示部51は、余剰設備算出部37による評価結果を、設備が通常の使用状況の範囲内であるか、設備が通常よりも過剰使用の状態であるか、または、設備が設備余剰の状態であるかを示す情報を用いて表示画面に表示することができる。
【0080】
実施の形態5.
図14は、実施の形態5にかかる設備更新計画作成支援システム1Dの機能構成を示す図である。なお、設備更新計画作成支援システム1Dについても設備更新計画作成支援システム1,1A,1B,1Cと同様に、実際には図1に示すように、複数のユーザ企業の複数のオンプレミスサーバ3、ビル監視制御システム4およびユーザ端末5が共通のクラウドサーバ2に接続されているが、簡単のため、図14では1つのユーザ企業についてのみ示す。
【0081】
設備更新計画作成支援システム1Dは、クラウドサーバ2Dと、オンプレミスサーバ3と、ビル監視制御システム4と、ユーザ端末5とを有する。なお、設備更新計画作成支援システム1と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略し、以下、設備更新計画作成支援システム1と異なる部分について主に説明する。
【0082】
クラウドサーバ2Dは、データベース21Dと、データベース処理部22Dと、機械学習装置23Dと、学習済モデル記憶部24と、推論装置25Dとを有する。データベース21Dは、設備機器データ211および設備関連データ212に加えて、環境データ213を記憶する。環境データ213は、設備の設置された環境を示すデータであり、例えば、気温、湿度、日照時間、気象の時系列データや、設備が設置された階数などを示すデータを含む。ここでは、データベース処理部22Dがビル監視制御システム4から環境データを取得することとするが、気温などの一般的なデータについては、データベース処理部22Dが設備の設置された場所に基づいて、気象情報を提供するサーバなどから取得してもよい。
【0083】
補完部221Dは、設備機器データ211に加えて、環境データ213についても機械学習装置23Dに学習処理の実行を指示し、推論装置25Dを用いて環境データ213の予測値を生成し、生成した予測値を用いて、環境データ213の補完処理を行う。
【0084】
機械学習装置23Dは、機械学習装置23の機能に加えて、設備関連データ212から環境データ213に含まれる時系列データ、例えば気温の時系列データを推論するための学習済モデルを生成する機能を有する。学習用データ取得部231Dは、設備機器データ211、設備関連データ212および環境データ213を学習用データとして取得する。モデル生成部232Dは、モデル生成部232の機能に加えて、設備関連データ212から環境データ213を推論するための学習済モデルを生成する機能を有する。なお、モデル生成部232Dが設備関連データ212から環境データ213を推論するための学習済モデルを生成する手順については、モデル生成部232が設備関連データ212から設備機器データ211を推論するための学習済モデルを生成する手順において、「設備機器データ211」を「環境データ213」に置き換えればよいため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0085】
推論装置25Dは、推論装置25の機能に加えて、設備関連データ212から環境データ213の予測値を推論して出力する機能を有する。補完部221Dは、推論装置25Dが出力した予測値を用いて、データベース21に記憶された設備機器データ211と、環境データ213とを補完する。このため、ユーザ端末5が予測値の表示を行う際には、ランニングコスト、故障確率といった設備機器データ211の予測値に加えて、環境データ213の予測値を表示することができる。
【0086】
以上説明したように、実施の形態5にかかる設備更新計画作成支援システム1Dによれば、データベース21Dは、設備が設置された環境を示す環境データ213をさらに記憶し、環境データ213は設備が設置された場所の気温の時系列データを含み、学習済モデルは、設備関連データ212から気温の時系列データをさらに推論し、推論部252Dは、学習済モデルを用いて、推論用データ取得部251Dが取得した設備関連データ212から現時点よりも将来の気温の予測値を出力する。
【0087】
ここで、上記の実施の形態1~5で説明した設備更新計画作成支援システム1,1A,1B,1C,1Dのハードウェア構成について説明する。設備更新計画作成支援システム1,1A,1B,1C,1Dのクラウドサーバ2,2D、オンプレミスサーバ3,3A,3B,3C、ビル監視制御システム4、ユーザ端末5は、例えば、コンピュータシステムにより実現される。クラウドサーバ2,2D、オンプレミスサーバ3,3A,3B,3C、ビル監視制御システム4、ユーザ端末5のそれぞれは、1つのコンピュータシステムにより実現されてもよいし、複数のコンピュータシステムにより実現されてもよい。また、図示した構成は一例であり、同様の機能を実現可能であればよい。例えば、クラウドサーバ2,2Dは、必ずしもクラウドシステムにより実現されなくてもよく、複数のユーザ企業からアクセス可能なサーバであればよい。また、設備更新計画作成支援システム1,1A,1B,1C,1Dにおける各機能を搭載する装置は、一例であり、設備更新計画作成支援システム1,1A,1B,1C,1Dにおいて異なる装置に搭載された複数の構成要素が1つのコンピュータシステムで実現されてもよいし、設備更新計画作成支援システム1,1A,1B,1C,1Dにおいて同一の装置に搭載された複数の構成要素が異なる複数のコンピュータシステムが実現されてもよい。例えば、図2などでは、更新計画作成部32と更新計画記憶部33とは同一のオンプレミスサーバ3に搭載されているが、更新計画作成部32と更新計画記憶部33とは異なるコンピュータシステムによって実現されてもよい。例えば、更新計画作成部32の機能がクラウドサーバ2,2D上で実現されてもよい。クラウドシステムでは、コンピュータシステムのハードウェアと、機能ごとのサーバ等の装置との切り分けを任意に設定できる。例えば、1台のコンピュータシステムが複数の装置としての機能を有していてもよいし、複数台のコンピュータシステムで1つの装置としての機能を有していてもよい。
【0088】
設備更新計画作成支援システム1,1A,1B,1C,1Dを実現するコンピュータシステムの構成例を説明する。図15は、設備更新計画作成支援システム1,1A,1B,1C,1Dを実現するコンピュータシステムの構成例を示す図である。図15に示すように、このコンピュータシステムは、制御部101と入力部102と記憶部103と表示部104と通信部105と出力部106とを備え、これらはシステムバス107を介して接続されている。
【0089】
図15において、制御部101は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等である。制御部101は、本実施の形態の設備更新計画作成支援システム1,1A,1B,1C,1Dが実施する各処理が記述された設備更新計画作成支援プログラムを実行する。入力部102は、たとえばキーボード、マウス等で構成され、コンピュータシステムのユーザが、各種情報の入力を行うために使用する。記憶部103は、RAM(Random Access Memory),ROM(Read Only Memory)等の各種メモリおよびハードディスク等のストレージデバイスを含み、上記制御部101が実行すべきプログラム、処理の過程で得られた必要なデータ等を記憶する。また、記憶部103は、プログラムの一時的な記憶領域としても使用される。表示部104は、LCD(Liquid Crystal Display:液晶表示パネル)等で構成され、コンピュータシステムのユーザに対して各種画面を表示する。通信部105は、通信処理を実施する通信回路等である。通信部105は、複数の通信方式にそれぞれ対応する複数の通信回路で構成されていてもよい。出力部106は、プリンタ、外部記憶装置等の外部の装置へデータを出力する出力インタフェイスである。
【0090】
なお、図15は、一例であり、コンピュータシステムの構成は図15の例に限定されない。例えば、コンピュータシステムは出力部106を備えていなくてもよい。また、設備更新計画作成支援システム1,1A,1B,1C,1Dを実現する全てのコンピュータシステムが図15に示したコンピュータシステムでなくてもよい。例えば、一部のコンピュータシステムは図15に示した表示部104、出力部106および入力部102のうち少なくとも1つを備えていなくてもよい。
【0091】
ここで、設備更新計画作成支援システム1,1A,1B,1C,1Dの処理が記述された設備更新計画作成支援プログラムが実行可能な状態になるまでのコンピュータシステムの動作例について説明する。上述した構成をとるコンピュータシステムには、たとえば、図示しないCD(Compact Disc)-ROMドライブまたはDVD(Digital Versatile Disc)-ROMドライブにセットされたCD-ROMまたはDVD-ROMから、設備更新計画作成支援プログラムが記憶部103にインストールされる。そして、設備更新計画作成支援プログラムの実行時に、記憶部103から読み出された設備更新計画作成支援プログラムが記憶部103の主記憶装置となる領域に格納される。この状態で、制御部101は、記憶部103に格納された設備更新計画作成支援プログラムに従って、本実施の形態の設備更新計画作成支援システム1,1A,1B,1C,1Dとしての処理を実行する。
【0092】
なお、上記の説明においては、CD-ROMまたはDVD-ROMを記録媒体として、設備更新計画作成支援システム1,1A,1B,1C,1Dにおける処理を記述したプログラムを提供しているが、これに限らず、コンピュータシステムの構成、提供するプログラムの容量等に応じて、たとえば、通信部105を経由してインターネット等の伝送媒体により提供されたプログラムを用いることとしてもよい。
【0093】
図2に示したデータ通信部31は、図15に示した通信部105により実現され、図2に示したデータベース21、学習済モデル記憶部24および更新計画記憶部33は、図15に示した記憶部103の一部であり、図2に示したデータベース処理部22は、図15に示した通信部105および制御部101により実現され、図2に示した機械学習装置23、推論装置25および更新計画作成部32は、図15に示した制御部101により実現され、図2に示した入力部52は、図15に示した入力部102により実現され、図2に示す表示部51は、図15に示す表示部104により実現される。
【0094】
また、図10に示す更新計画作成部32Aおよび制御部34、図11に示す更新計画作成部32B、検索処理部35および情報登録部36、図12に示す余剰設備算出部37、図14に示す機械学習装置23Dおよび推論装置25Dについても、図15に示した制御部101により実現される。また、図14に示すデータベース21Dは図15に示した記憶部103の一部であり、図14に示すデータベース処理部22Dは図15に示した通信部105および制御部101により実現される。その他、図10~12,14に示す各機能部について、図2と同一の符号が付されている機能部については、図2の機能部と同様である。
【0095】
以上の実施の形態に示した構成は、本開示の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本開示の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【0096】
例えば、実施の形態3~5に示すオンプレミスサーバ3,3B,3Cが、実施の形態2で説明したビル監視制御システム4を制御する制御部34を有していてもよいし、実施の形態3に示す検索処理部35および情報登録部36の機能を、実施の形態4に示すオンプレミスサーバ3Cや実施の形態5に示すオンプレミスサーバ3が有していてもよい。
【0097】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0098】
(付記1)
複数の建物に備わる設備のランニングコストおよび故障確率を含む設備機器データの時系列データの実測値と、前記設備の種別および稼働状況を含む設備関連データとを蓄積したデータベースと、
推論対象の設備の前記設備関連データを取得する推論用データ取得部と、
前記設備関連データから前記設備機器データの時系列データを推論するための学習済モデルを用いて、前記推論用データ取得部が取得した前記設備関連データから前記設備機器データの予測値を出力する推論部と、
前記推論部が出力する前記予測値を用いて前記設備機器データを補完し、前記設備機器データの前記実測値と前記予測値とを含む補完後の時系列データを生成する補完部と、
更新計画に対する制約条件と、前記設備機器データの前記補完後の時系列データとに基づいて、前記設備の更新計画を生成する更新計画作成部と、
を備えることを特徴とする設備更新計画作成支援システム。
(付記2)
前記補完部は、前記予測値を生成した日時を示す推論日時情報を記録することを特徴とする付記1に記載の設備更新計画作成支援システム。
(付記3)
前記設備の前記設備関連データと、前記設備機器データの実測値とを含む学習用データを取得する学習用データ取得部と、
前記学習用データを用いて、前記設備の前記設備関連データから前記設備機器データの時系列データを推論するための学習済モデルを生成するモデル生成部と、
をさらに備えることを特徴とする付記1または2に記載の設備更新計画作成支援システム。
(付記4)
前記更新計画作成部は、対象の前記建物に備わる前記設備を各期間において使用するか否かを示す変数の値を決定することによって前記更新計画を生成し、
前記変数の値を、前記設備の監視制御システムの制御命令列に変換して、前記制御命令列を前記監視制御システムに送信する制御部、
をさらに備えることを特徴とする付記1から3のいずれか1つに記載の設備更新計画作成支援システム。
(付記5)
検索条件の入力を受け付け、前記データベースから前記検索条件に当てはまる前記設備を抽出し、前記検索条件を前記制約条件に変換する検索処理部、
をさらに備え、
前記更新計画作成部は、前記検索処理部が前記検索条件から変換した前記制約条件に基づいて、前記更新計画を生成することを特徴とする付記1から4のいずれか1つに記載の設備更新計画作成支援システム。
(付記6)
前記検索処理部による検索結果と、前記検索結果に対応する前記検索条件を前記更新計画に反映するための操作を受け付ける操作オブジェクトとを表示画面に表示する表示部、
をさらに備え、
前記検索処理部は、前記操作オブジェクトに対する操作を受け付けると、前記検索条件を前記制約条件に変換することを特徴とする付記5に記載の設備更新計画作成支援システム。
(付記7)
前記データベースは、前記設備のメーカおよび前記設備のリリース年の少なくとも1つをさらに記憶することを特徴とする付記5または6に記載の設備更新計画作成支援システム。
(付記8)
前記設備関連データと、前記設備機器データと、前記更新計画とに基づいて、前記設備の稼働状況を評価する余剰設備算出部、
をさらに備えることを特徴とする付記1から7のいずれか1つに記載の設備更新計画作成支援システム。
(付記9)
前記余剰設備算出部による評価結果を、前記設備が通常の使用状況の範囲内であるか、前記設備が通常よりも過剰使用の状態であるか、または、前記設備が設備余剰の状態であるかを示す情報を用いて表示画面に表示する表示部、
をさらに備えることを特徴とする付記8に記載の設備更新計画作成支援システム。
(付記10)
前記データベースは、前記設備が設置された環境を示す環境データをさらに記憶し、
前記環境データは前記設備が設置された場所の気温の時系列データを含み、
前記学習済モデルは、前記設備関連データから前記気温の時系列データをさらに推論し、
前記推論部は、前記学習済モデルを用いて、前記推論用データ取得部が取得した前記設備関連データから前記気温の予測値を出力することを特徴とする付記1から9のいずれか1つに記載の設備更新計画作成支援システム。
(付記11)
複数の建物に備わる設備のランニングコストおよび故障確率を含む設備機器データの時系列データの実測値と、前記設備の種別および稼働状況を含む設備関連データとを含む学習用データを取得する学習用データ取得部と、
前記学習用データを用いて、前記設備の前記設備関連データから前記設備機器データの時系列データを推論するための学習済モデルを生成するモデル生成部と、
を備えることを特徴とする学習装置。
(付記12)
複数の建物に備わる設備のランニングコストおよび故障確率を含む設備機器データの時系列データの実測値と、前記設備の種別および稼働状況を含む設備関連データとを蓄積したデータベースから、推論対象の設備の前記設備関連データを取得する推論用データ取得部と、
前記設備関連データから前記設備機器データの時系列データを推論するための学習済モデルを用いて、前記推論用データ取得部が取得した前記設備関連データから前記設備機器データの予測値を出力する推論部と、
を備えることを特徴とする推論装置。
(付記13)
複数の建物に備わる設備のランニングコストおよび故障確率を含む設備機器データの時系列データの実測値と、前記設備の種別および稼働状況を含む設備関連データとを蓄積したデータベースから、推論対象の設備の前記設備関連データを取得するステップと、
前記設備関連データから前記設備機器データの時系列データを推論するための学習済モデルを用いて、前記推論対象の設備の前記設備関連データから前記設備機器データの予測値を出力するステップと、
前記予測値を用いて前記設備機器データを補完し、前記設備機器データの前記実測値と前記予測値とを含む補完後の時系列データを生成するステップと、
更新計画に対する制約条件と、前記設備機器データの前記補完後の時系列データとに基づいて、前記更新計画を生成するステップと、
を含むことを特徴とする設備更新計画作成支援方法。
(付記14)
複数の建物に備わる設備のランニングコストおよび故障確率を含む設備機器データの時系列データの実測値と、前記設備の種別および稼働状況を含む設備関連データとを蓄積したデータベースから、推論対象の設備の前記設備関連データを取得するステップと、
前記設備関連データから前記設備機器データの時系列データを推論するための学習済モデルを用いて、前記推論対象の設備の前記設備関連データから前記設備機器データの予測値を出力するステップと、
前記予測値を用いて前記設備機器データを補完し、前記設備機器データの前記実測値と前記予測値とを含む補完後の時系列データを生成するステップと、
更新計画に対する制約条件と、前記設備機器データの前記補完後の時系列データとに基づいて、前記更新計画を生成する装置に、生成した前記補完後の時系列データを提供するステップと、
をコンピュータに実行させることを特徴とする設備更新計画作成支援プログラム。
【符号の説明】
【0099】
1,1A,1B,1C,1D 設備更新計画作成支援システム、2,2D クラウドサーバ、3,3-1,3-2,3-3,3A,3B,3C オンプレミスサーバ、4,4-1,4-2,4-3 ビル監視制御システム、5,5-1,5-2,5-3 ユーザ端末、21,21D データベース、22,22D データベース処理部、23,23D 機械学習装置、24 学習済モデル記憶部、25,25D 推論装置、31 データ通信部、32,32A,32B 更新計画作成部、33 更新計画記憶部、34,101 制御部、35 検索処理部、36 情報登録部、37 余剰設備算出部、51,104 表示部、52,102 入力部、103 記憶部、105 通信部、106 出力部、107 システムバス、211 設備機器データ、212 設備関連データ、213 環境データ、221,221D 補完部、231,231D 学習用データ取得部、232,232D モデル生成部、232-1 生成器、232-2 識別器、251,251D 推論用データ取得部、252,252D 推論部。
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図13
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