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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135983
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/739 20060101AFI20240927BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20240927BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20240927BHJP
   H01L 29/861 20060101ALI20240927BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H01L29/78 655G
H01L29/78 657D
H01L29/78 652Q
H01L29/78 653A
H01L29/78 652J
H01L29/78 652M
H01L29/78 652D
H01L29/78 655B
H01L29/78 652T
H01L29/91 C
H01L29/91 F
H01L27/06 102A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046923
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】中村 和敏
(72)【発明者】
【氏名】村井 駿太
(72)【発明者】
【氏名】吉川 大輝
【テーマコード(参考)】
5F048
【Fターム(参考)】
5F048AC06
5F048AC10
5F048BA14
5F048BA15
5F048BB05
5F048BB19
5F048BC03
5F048BC07
5F048BC12
5F048BD07
5F048BF02
5F048BF07
5F048BG13
(57)【要約】
【課題】ダイオードをより高速に動作させることが可能な半導体装置を提供する。
【解決手段】実施形態に係る半導体装置は、第1電極と、第2電極と、第1領域と、第2領域と、を備える。第2電極は、第1電極から離れている。第1領域は、第1導電形の第1半導体領域と、第2導電形の第2半導体領域と、第1導電形の第3半導体領域と、ゲート電極と、第2導電形の第4半導体領域と、第1導電形の第5半導体領域と、第1導電形の第6半導体領域と、を含む。第5半導体領域は、第3半導体領域の一部と第4半導体領域との間に設けられている。第5半導体領域は、第2方向において、第2電極の一部と並んでいる。第5半導体領域は、第3半導体領域よりも高い第1導電形の不純物濃度を有する。第6半導体領域は、第3半導体領域と第2電極の一部との間に設けられている。第6半導体領域は、第3半導体領域よりも高い第1導電形の不純物濃度を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
前記第1電極から離れた第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間において、前記第1電極の一部の上に設けられた第1領域であって、
第1導電形の第1半導体領域と、
一部が前記第1半導体領域の上に設けられた第2導電形の第2半導体領域と、
前記第2半導体領域の前記一部の上に設けられた第1導電形の第3半導体領域と、
前記第1電極から前記第2電極に向かう第1方向に垂直な第2方向において、ゲート絶縁層を介して前記第3半導体領域と対面するゲート電極と、
前記第3半導体領域の上に設けられ、前記第2方向において前記第2電極の一部と並ぶ第2導電形の第4半導体領域と、
前記第1方向及び前記第2方向に垂直な第3方向において前記第3半導体領域の一部と前記第4半導体領域との間に設けられ、前記第2方向において前記第2電極の前記一部と並び、前記第3半導体領域よりも高い第1導電形の不純物濃度を有する第1導電形の第5半導体領域と、
前記第3半導体領域と前記第2電極の前記一部との間に設けられ、前記第3半導体領域よりも高い第1導電形の不純物濃度を有する第1導電形の第6半導体領域と、
を含む前記第1領域と、
前記第1電極と前記第2電極との間において、前記第1電極の別の一部の上に設けられた第2領域であって、
前記第2半導体領域よりも高い第2導電形の不純物濃度を有する第2導電形の第7半導体領域と、
前記第7半導体領域の上に設けられた前記第2半導体領域の別の一部と、
前記第2半導体領域の前記別の一部の上に設けられた第1導電形の第8半導体領域と、
を含む前記第2領域と、
を備えた半導体装置。
【請求項2】
前記第4半導体領域は、前記第3方向において、一対の前記第5半導体領域の間に設けられた、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第3半導体領域の前記一部と、前記第4半導体領域及び前記一対の第5半導体領域を含む群と、が前記第3方向において交互に設けられた、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1領域は、第1部分と、前記第1部分と前記第2領域との間に位置する第2部分と、を含み、
前記第3半導体領域、前記第4半導体領域、前記第5半導体領域、及び前記第6半導体領域のそれぞれは、前記第1部分及び前記第2部分のそれぞれに設けられ、
前記第1部分に設けられた前記第5半導体領域の前記第3方向における長さは、前記第2部分に設けられた前記第5半導体領域の前記第3方向における長さよりも長い、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第2部分において、前記第5半導体領域は前記第2方向に複数設けられ、
複数の前記第5半導体領域のそれぞれの前記第3方向における長さは、前記第2領域に向かうほど短い、請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第2部分の前記第2方向における長さは、前記第1電極と前記第2電極との間の前記第1方向における距離よりも長い、請求項4に記載の半導体装置。
【請求項7】
第1電極と、
前記第1電極から離れた第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間において前記第1電極の一部の上に設けられ、第1部分及び第2部分を含む第1領域であって、
前記第1部分及び前記第2部分に設けられた第1導電形の第1半導体領域と、
一部が前記第1半導体領域の上に設けられた第2導電形の第2半導体領域と、
前記第1部分及び前記第2部分のそれぞれに設けられ、前記第2半導体領域の前記一部の上に位置する第1導電形の第3半導体領域と、
前記第1部分に設けられ、前記第1電極から前記第2電極に向かう第1方向に垂直な第2方向において、ゲート絶縁層を介して前記第3半導体領域と対面するゲート電極と、
前記第1部分及び前記第2部分のそれぞれに設けられ、前記第3半導体領域の上に位置し、前記第2方向において前記第2電極の一部と並ぶ第2導電形の第4半導体領域と、
前記第1部分に設けられ、前記第2方向において前記第2電極の前記一部と並び、前記第3半導体領域よりも高い第1導電形の不純物濃度を有する第1導電形の第5半導体領域と、
前記第1部分及び前記第2部分のそれぞれに設けられ、前記第3半導体領域と前記第2電極の前記一部との間に設けられ、前記第3半導体領域よりも高い第1導電形の不純物濃度を有する第1導電形の第6半導体領域と、
を含み、前記第1部分では前記第1方向及び前記第2方向に垂直な第3方向において前記第4半導体領域と前記第5半導体領域とが交互に設けられ、前記第2部分では前記第3方向において前記第3半導体領域の一部と前記第4半導体領域とが交互に設けられた前記第1領域と、
前記第1電極と前記第2電極との間において、前記第1電極の別の一部の上に設けられた第2領域であって、
前記第2半導体領域よりも高い第2導電形の不純物濃度を有する第2導電形の第7半導体領域と、
前記第7半導体領域の上に設けられた前記第2半導体領域の別の一部と、
前記第2半導体領域の前記別の一部の上に設けられた第1導電形の第8半導体領域と、
を含み、前記第2部分が前記第1部分と前記第2領域との間に位置する、前記第2領域と、
を備えた半導体装置。
【請求項8】
前記第2部分の前記第2方向における長さは、前記第1電極と前記第2電極との間の距離よりも長い、請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第2部分において、前記第6半導体領域は前記第3方向に複数設けられ、
複数の前記第6半導体領域は互いに離れている、請求項7に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第8半導体領域の第2導電形の不純物濃度は、前記第3半導体領域の第2導電形の不純物濃度よりも低い、請求項1~9のいずれか1つに記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換等に用いられる半導体装置として、Insulated Gate Bipolar Transistor(IGBT)に、ダイオードを内蔵させたReverse Conducting Insulated Gate Bipolar Transistor(RC-IGBT)がある。この半導体装置について、ダイオードをより高速に動作できる技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6384425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、ダイオードをより高速に動作させることが可能な半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る半導体装置は、第1電極と、第2電極と、第1領域と、第2領域と、を備える。前記第2電極は、前記第1電極から離れている。前記第1領域は、前記第1電極と前記第2電極との間において、前記第1電極の一部の上に設けられている。前記第1領域は、第1導電形の第1半導体領域と、第2導電形の第2半導体領域と、第1導電形の第3半導体領域と、ゲート電極と、第2導電形の第4半導体領域と、第1導電形の第5半導体領域と、第1導電形の第6半導体領域と、を含む。前記第2半導体領域の一部は、前記第1半導体領域の上に設けられている。前記第3半導体領域は、前記第2半導体領域の前記一部の上に設けられている。前記ゲート電極は、前記第1電極から前記第2電極に向かう第1方向に垂直な第2方向において、ゲート絶縁層を介して前記第3半導体領域と対面している。前記第4半導体領域は、前記第3半導体領域の上に設けられ、前記第2方向において前記第2電極の一部と並でいる。前記第5半導体領域は、前記第1方向及び前記第2方向に垂直な第3方向において、前記第3半導体領域の一部と前記第4半導体領域との間に設けられている。前記第5半導体領域は、前記第2方向において、前記第2電極の前記一部と並んでいる。前記第5半導体領域は、前記第3半導体領域よりも高い第1導電形の不純物濃度を有する。前記第6半導体領域は、前記第3半導体領域と前記第2電極の前記一部との間に設けられている。前記第6半導体領域は、前記第3半導体領域よりも高い第1導電形の不純物濃度を有する。前記第2領域は、前記第1電極と前記第2電極との間において、前記第1電極の別の一部の上に設けられている。前記第2領域は、第2導電形の第7半導体領域と、前記第2半導体領域の別の一部と、第1導電形の第8半導体領域と、を含む。前記第7半導体領域は、前記第2半導体領域よりも高い第2導電形の不純物濃度を有する。前記第2半導体領域の前記別の一部は、前記第7半導体領域の上に設けられている。前記第8半導体領域は、前記第2半導体領域の前記別の一部の上に設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1実施形態に係る半導体装置の平面図である。
図2図2は、図1の部分Aの拡大平面図である。
図3図3は、図2のB1-B2断面図である。
図4図4は、図2のC1-C2断面図である。
図5図5は、図2のD1-D2断面図である。
図6図6は、参考例に係る半導体装置の一部を示す平面図である。
図7図7は、半導体装置の特性を例示する模式図である。
図8図8は、第1実施形態の第1変形例に係る半導体装置の一部を示す平面図である。
図9図9は、図8の部分Aの拡大平面図である。
図10図10は、図9のB1-B2断面図である。
図11図11は、図9のC1-C2断面図である。
図12図12は、第1実施形態の第2変形例に係る半導体装置の一部を示す平面図である。
図13図13は、第2実施形態に係る半導体装置の一部を示す平面図である。
図14図14は、図13のA1-A2断面図である。
図15図15は、図13のB1-B2断面図である。
図16図16は、第2実施形態の第1変形例に係る半導体装置の一部を示す断面図である。
図17図17は、第2実施形態の第2変形例に係る半導体装置の一部を示す断面図である。
図18図18は、図17のA1-A2断面図である。
図19図19は、図17のB1-B2断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
本願明細書と各図において、既に説明したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
以下の説明において、n、n、n及びp、pの表記は、各導電形における不純物濃度の相対的な高低を表す。すなわち、nはnよりもn形の不純物濃度が相対的に高く、nはnよりもn形の不純物濃度が相対的に低いことを示す。また、pはpよりもp形の不純物濃度が相対的に高く、pはpよりもp形の不純物濃度が相対的に低いことを示す。
以下で説明する各実施形態について、各半導体領域のp形とn形を反転させて各実施形態を実施してもよい。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る半導体装置の平面図である。図2は、図1の部分Aの拡大平面図である。図3は、図2のB1-B2断面図である。図4は、図2のC1-C2断面図である。図5は、図2のD1-D2断面図である。なお、図2では、絶縁層25及びエミッタ電極32が透過して示されている。
第1実施形態に係る半導体装置は、RC-IGBTである。図1図5に示すように、第1実施形態に係る半導体装置100は、p形(第1導電形)コレクタ領域1(第1半導体領域)、n形(第2導電形)ベース領域2(第2半導体領域)、p形ベース領域3(第3半導体領域)、n形エミッタ領域4(第4半導体領域)、p形コンタクト領域5(第5半導体領域)、p形コンタクト領域6(第6半導体領域)、n形カソード領域7(第7半導体領域)、p形アノード領域8(第8半導体領域)、p形アノード領域9、n形バッファ領域10、n形バリア領域11、n形バリア領域12、ゲート電極20、導電部21、絶縁層25、コレクタ電極31(第1電極)、エミッタ電極32(第2電極)、及びゲートパッド33を備える。
【0009】
実施形態の説明では、XYZ直交座標系を用いる。コレクタ電極31からエミッタ電極32に向かう方向をZ方向(第1方向)とする。Z方向に対して垂直であり、相互に直交する二方向をX方向(第2方向)及びY方向(第3方向)とする。また、説明のために、コレクタ電極31からエミッタ電極32に向かう方向を「上」と言い、その反対方向を「下」と言う。これらの方向は、コレクタ電極31とエミッタ電極32の相対的な位置関係に基づき、重力の方向とは無関係である。
【0010】
図1に示すように、半導体装置100の上面には、エミッタ電極32及びゲートパッド33が設けられている。エミッタ電極32及びゲートパッド33は、互いに離れている。例えば、Y方向において、複数のエミッタ電極32が設けられている。各エミッタ電極32の周りには、ゲート配線33aが設けられている。ゲート配線33aの一部は、エミッタ電極32同士の間をY方向に延びている。ゲート配線33aは、ゲートパッド33と電気的に接続されている。
【0011】
図1及び図2に示すように、半導体装置100は、IGBT領域R1(第1領域)及びダイオード領域R2(第2領域)を有する。図1に示す例では、IGBT領域R1及びダイオード領域R2のそれぞれは、X方向及びY方向において複数設けられている。X方向において、IGBT領域R1とダイオード領域R2が交互に設けられている。
【0012】
図3図5に示すように、半導体装置100の下面には、コレクタ電極31が設けられている。コレクタ電極31とエミッタ電極32は互いに離れており、複数のIGBT領域R1及び複数のダイオード領域R2はコレクタ電極31とエミッタ電極32との間に位置する。
【0013】
図2図5に示すように、各IGBT領域R1には、p形コレクタ領域1、n形ベース領域2の一部、p形ベース領域3、n形エミッタ領域4、p形コンタクト領域5、p形コンタクト領域6、n形バッファ領域10の一部、n形バリア領域11、及びゲート電極20が設けられている。
【0014】
p形コレクタ領域1は、コレクタ電極31の一部の上に設けられ、コレクタ電極31と電気的に接続されている。n形ベース領域2の一部は、p形コレクタ領域1の上に設けられている。p形ベース領域3は、n形ベース領域2の当該一部の上に設けられ、p形コレクタ領域1の上に位置する。ゲート電極20は、X方向において、ゲート絶縁層20aを介してp形ベース領域3と対面する。
【0015】
図3に示すように、n形エミッタ領域4は、p形ベース領域3の上に設けられている。エミッタ電極32は、コレクタ電極31に向けて突出したコンタクト部32aを有する。n形エミッタ領域4は、X方向において、コンタクト部32aと並んでいる。
【0016】
図4に示すように、p形コンタクト領域5は、p形ベース領域3の上に設けられ、X方向においてコンタクト部32aと並んでいる。図2に示すように、p形コンタクト領域5は、Y方向において、p形ベース領域3の一部とn形エミッタ領域4との間に位置する。p形コンタクト領域5のp形不純物濃度は、p形ベース領域3のp形不純物濃度よりも高い。
【0017】
図3図5に示すように、p形コンタクト領域6は、Z方向においてp形ベース領域3とコンタクト部32aとの間に設けられている。p形コンタクト領域6は、n形エミッタ領域4及びp形コンタクト領域5よりも下方に位置する。p形コンタクト領域6のp形不純物濃度は、p形ベース領域3のp形不純物濃度よりも高い。p形ベース領域3、n形エミッタ領域4、p形コンタクト領域5、及びp形コンタクト領域6は、エミッタ電極32と電気的に接続されている。
【0018】
ゲート電極20のY方向における端部は、ゲート配線33aと電気的に接続されている。ゲート電極20とエミッタ電極32との間には絶縁層25が設けられ、ゲート電極20とエミッタ電極32は互いに電気的に分離されている。
【0019】
図3図5に示すように、p形ベース領域3、n形エミッタ領域4、p形コンタクト領域5、p形コンタクト領域6、ゲート電極20、及びコンタクト部32aのそれぞれは、X方向において複数設けられている。複数のp形ベース領域3、複数のp形コンタクト領域6、複数のゲート電極20、及び複数のコンタクト部32aのそれぞれは、ストライプ状に設けられており、Y方向に延びている。n形エミッタ領域4及びp形コンタクト領域5のそれぞれは、さらに、Y方向において複数設けられている。
【0020】
具体的な一例として、図2に示すように、1つのp形ベース領域3の上において、1つのn形エミッタ領域4は、一対のp形コンタクト領域5の間に位置する。p形ベース領域3の一部と、1つのn形エミッタ領域4及び一対のp形コンタクト領域5を含む群Gと、がY方向において交互に設けられている。
【0021】
各ダイオード領域R2には、n形カソード領域7、n形ベース領域2の別の一部、p形アノード領域8、p形アノード領域9、n形バッファ領域10の別の一部、n形バリア領域12、及び導電部21が設けられている。n形カソード領域7は、コレクタ電極31の別の一部の上に設けられ、コレクタ電極31と電気的に接続されている。n形ベース領域2の別の一部は、n形カソード領域7の上に設けられている。p形アノード領域8は、n形ベース領域2の当該別の一部の上に設けられ、n形カソード領域7の上に位置する。
【0022】
導電部21は、X方向において、絶縁層21aを介してp形アノード領域8と対面する。p形アノード領域9は、p形アノード領域8の上に設けられている。p形アノード領域9のp形不純物濃度は、p形アノード領域8のp形不純物濃度よりも高い。p形アノード領域8、p形アノード領域9、及び導電部21は、エミッタ電極32と電気的に接続されている。
【0023】
図3図5に示すように、エミッタ電極32は、コレクタ電極31に向けて突出したコンタクト部32bを含んでも良い。p形アノード領域8の一部は、X方向においてコンタクト部32bと並ぶ。p形アノード領域9は、Z方向において、p形アノード領域8とエミッタ電極32との間に設けられている。
【0024】
p形アノード領域8、p形アノード領域9、導電部21、及びコンタクト部32bのそれぞれは、X方向において複数設けられている。複数のp形アノード領域8、複数のp形アノード領域9、複数の導電部21、及び複数のコンタクト部32bのそれぞれは、ストライプ状に設けられており、Y方向に延びている。
【0025】
半導体装置100の動作について説明する。
エミッタ電極32に対してコレクタ電極31に正の電圧が印加された状態で、ゲート電極20に閾値以上の電圧が印加される。これにより、p形ベース領域3にチャネル(反転層)が形成される。電子が、チャネルを通ってn形エミッタ領域4からn形ベース領域2に流れ、正孔が、p形コレクタ領域1からn形ベース領域2へ流れる。n形ベース領域2に蓄積されるキャリア密度が増大し、電導度変調が生じる。これにより、n形ベース領域2の電気抵抗が大きく低下し、IGBT領域R1がオン状態となる。その後、ゲート電極20に印加される電圧が閾値よりも低くなると、p形ベース領域3におけるチャネルが消滅し、IGBT領域R1がオフ状態に切り替わる。
【0026】
IGBT領域R1がオフ状態に切り替わった後、n形ベース領域2に蓄積されていた電子は、p形コレクタ領域1を通ってコレクタ電極31へ排出される。正孔は、p形ベース領域3を通ってエミッタ電極32へ排出される。
【0027】
例えば、複数の半導体装置100によって、ブリッジ回路が構成される。1つの半導体装置100がオン状態からオフ状態に切り替わると、ブリッジ回路のインダクタンス成分により、別の半導体装置100のエミッタ電極32に誘導起電力が加わる。これにより、当該別の半導体装置100において、ダイオード領域R2が動作する。p形アノード領域8からn形ベース領域2へ正孔が流れ、n形カソード領域7からn形ベース領域2へ電子が流れる。ダイオード領域R2は、フリーホイールダイオード(FWD)として機能する。
【0028】
図3図5に示すように、p形コレクタ領域1とn形ベース領域2との間、及びn形カソード領域7とn形ベース領域2との間に、n形バッファ領域10が設けられても良い。n形バッファ領域10のn形不純物濃度は、n形カソード領域7のn形不純物濃度よりも低く、n形ベース領域2のn形不純物濃度よりも高い。n形バッファ領域10を設けることで、n形ベース領域2における空乏層の広がりを、n形バッファ領域10でより確実に抑えることができる。
【0029】
形ベース領域2とp形ベース領域3との間に、n形バリア領域11が設けられても良い。n形バリア領域11が設けられることで、IGBT領域R1がオン状態のとき、n形ベース領域2に蓄積された正孔の排出を抑えることができ、n形ベース領域2におけるキャリア密度を高めることができる。これにより、IGBT領域R1がオン状態のときの電気抵抗をより小さくできる。n形バリア領域11に加えて、n形ベース領域2とp形アノード領域8との間に、n形バリア領域12が設けられても良い。n形バリア領域11及びn形バリア領域12のそれぞれのn形不純物濃度は、n形ベース領域2のn形不純物濃度よりも高い。
【0030】
IGBT領域R1において、複数のゲート電極20の一部が、導電部21に置き換えられても良い。一部のゲート電極20を導電部21に置き換えることで、IGBT領域R1がオン状態のときに、n形ベース領域2におけるキャリア密度を高め、半導体装置100の電気抵抗をより低減できる。
【0031】
半導体装置100の各構成要素の材料の一例を説明する。
p形コレクタ領域1、n形ベース領域2、p形ベース領域3、n形エミッタ領域4、p形コンタクト領域5、p形コンタクト領域6、n形カソード領域7、p形アノード領域8、p形アノード領域9、n形バッファ領域10、n形バリア領域11、及びn形バリア領域12は、半導体材料として、シリコン、炭化シリコン、窒化ガリウム、またはガリウムヒ素を含む。半導体材料としてシリコンが用いられる場合、n形不純物として、ヒ素、リン、またはアンチモンを用いることができる。p形不純物として、ボロンを用いることができる。
【0032】
ゲート電極20及び導電部21は、ポリシリコンなどの導電材料を含む。ゲート絶縁層20a、絶縁層21a、及び絶縁層25は、酸化シリコン、窒化シリコン、又は酸窒化シリコンなどの絶縁材料を含む。コレクタ電極31、エミッタ電極32、ゲートパッド33、及びゲート配線33aは、アルミニウムなどの金属を含む。コンタクト部32a及び32bは、各半導体領域及び絶縁層25と接触する部分にバリアメタル層を含んでいても良い。バリアメタル層は、チタン、窒化チタンなどを含む。
【0033】
図6は、参考例に係る半導体装置の一部を示す平面図である。
図6に示した参考例に係る半導体装置100rでは、IGBT領域R1において、n形エミッタ領域4とp形コンタクト領域5aがY方向に沿って交互に設けられている。換言すると、Y方向において、n形エミッタ領域4同士の間の領域の全てに、p形コンタクト領域5aが設けられている。
【0034】
第1実施形態の利点を説明する。
半導体装置100rは、p形コレクタ領域1、n形ベース領域2、p形ベース領域3、及びn形エミッタ領域4からなる寄生サイリスタを含む。IGBT領域R1がオフ状態に切り替わった際、p形ベース領域3には、正孔が流れる。正孔の流れによってp形ベース領域3の電位が上昇すると、寄生サイリスタが動作しうる。寄生サイリスタが動作すると、半導体装置100rに大電流が流れ、半導体装置100rが破壊される。
【0035】
半導体装置100rでは、寄生サイリスタの動作を抑制するために、n形エミッタ領域4同士の間にp形コンタクト領域5aが設けられている。p形コンタクト領域5aのp形不純物濃度は、p形ベース領域3のp形不純物濃度よりも高い。p形ベース領域3に正孔が流れた際、正孔が、p形コンタクト領域5aを通してエミッタ電極32へ排出され易くなる。これにより、寄生サイリスタの動作を抑制できる。換言すると、半導体装置100rのラッチアップ耐量を向上できる。
【0036】
一方、IGBT領域R1は、n形ベース領域2とp形ベース領域3からなる寄生ダイオード及びp形ベース領域3とn形カソード領域7からなる寄生ダイオードも含む。ダイオード領域R2がオン状態のとき、IGBT領域R1の寄生ダイオードの動作により、エミッタ電極32からn形ベース領域2へ正孔が流れうる。特に、IGBT領域R1にp形コンタクト領域5aが設けられる場合、p形コンタクト領域5aとエミッタ電極32との間の電気抵抗が低いため、より多くの正孔がn形ベース領域2へ流れる。これにより、n形ベース領域2に蓄積されるキャリアが増加する。ダイオード領域R2がオフ状態に切り替わったとき、n形ベース領域2に蓄積されたキャリアの排出に、より長い時間を要する。この結果、ダイオード領域R2のオン状態からオフ状態への切り替わりが遅くなる。例えば、ダイオード領域R2の高速動作が損なわれる。
【0037】
この課題について、実施形態に係る半導体装置100では、p形コンタクト領域5が、p形ベース領域3の一部とn形エミッタ領域4との間に設けられている。すなわち、半導体装置100と半導体装置100rを比較した場合、p形コンタクト領域5のY方向における長さは、p形コンタクト領域5aのY方向における長さよりも短い。単位面積あたりのp形コンタクト領域5の面積は、単位面積あたりのp形コンタクト領域5aの面積よりも小さい。半導体装置100では、p形コンタクト領域5aの一部が省略され、代わりにp形ベース領域3の一部が設けられている。
【0038】
形コンタクト領域5aに代えてp形コンタクト領域5が設けられることで、ダイオード領域R2がオン状態のときに、p形コンタクト領域5を通して正孔がn形ベース領域2へ流れることを抑制できる。ダイオード領域R2の動作をより高速化でき、ダイオード領域R2の動作によるスイッチング損失を低減できる。また、p形コンタクト領域5は、p形ベース領域3の一部とn形エミッタ領域4との間に設けられ、n形エミッタ領域4と隣接している。このため、IGBT領域R1がオフ状態に切り替わったとき、n形エミッタ領域4近傍を流れる正孔がp形コンタクト領域5へ流れ易い。n形エミッタ領域4近傍の領域における電位の上昇を抑制でき、半導体装置100のラッチアップを抑制できる。
【0039】
また、半導体装置100では、p形コンタクト領域6がさらに設けられている。p形コンタクト領域6は、n形エミッタ領域4よりも下方に位置する。このため、p形ベース領域3へ流れた正孔は、n形エミッタ領域4近傍を通過する前に、p形コンタクト領域6を通してコンタクト部32aへ排出される。n形エミッタ領域4近傍を通過する正孔の量を低減でき、n形エミッタ領域4近傍の領域の電位の上昇を抑えることができる。この結果、半導体装置100のラッチアップをさらに抑制できる。
【0040】
図7は、半導体装置の特性を例示する模式図である。
図7において、横軸は時間を表す。縦軸は電圧又は電流の大きさを示す。エミッタ電極32に対してコレクタ電極31に印加される電圧が、「+」で表されている。また、エミッタ電極32からコレクタ電極31へ流れる電流が、「+」で表されている。
【0041】
ダイオード領域R2がオン状態のとき、エミッタ電極32からコレクタ電極31へ電流Ifが流れる。ダイオード領域R2がオン状態からオフ状態に切り替わり、コレクタ電極31の電圧Vrが上昇すると、n形ベース領域2に蓄積されていたキャリアが排出される。このため、ダイオード領域R2に負の電流Ifが流れる。このとき、電流Ifが小さい(ゼロに近い)ほど、ダイオード領域R2がより高速に動作できる。
【0042】
図7において、破線は、参考例に係る半導体装置100rの特性を示す。実線は、実施形態に係る半導体装置100の特性を示す。図7に示すように、実施形態に係る半導体装置100では、参考例に係る半導体装置100rと比べて、ダイオード領域R2がオフ状態に切り替わったときの電流Ifがより小さい。すなわち、半導体装置100のダイオード領域R2は、半導体装置100rのダイオード領域R2に比べて、より高速に動作可能である。
【0043】
実施形態によれば、半導体装置100のラッチアップ耐量の低下を抑えつつ、ダイオード領域R2をより高速に動作させることができる。
【0044】
(第1変形例)
図8は、第1実施形態の第1変形例に係る半導体装置の一部を示す平面図である。
図8に示した第1変形例に係る半導体装置110では、IGBT領域R1が、第1部分R1a及び第2部分R1bを含む。第2部分R1bは、第1部分R1aと、ダイオード領域R2と、の間に設けられている。図8に示すように、IGBT領域R1とダイオード領域R2がX方向において交互に設けられる場合、1つのIGBT領域R1が一対のダイオード領域R2の間に位置する。当該1つのIGBT領域R1において、1つの第1部分R1aは、一対の第2部分R1bの間に位置する。
【0045】
p形ベース領域3、n形エミッタ領域4、p形コンタクト領域5、p形コンタクト領域6、及びゲート電極20のそれぞれは、第1部分R1a及び第2部分R1bのそれぞれに設けられている。第1部分R1aにおいて、複数のゲート電極20の一部が、導電部21に置き換えられても良い。第2部分R1bにおいて、複数のゲート電極20の一部又は全部が、導電部21に置き換えられても良い。
【0046】
図9は、図8の部分Aの拡大平面図である。図10は、図9のB1-B2断面図である。図11は、図9のC1-C2断面図である。
図9に示すように、第1部分R1aと第2部分R1bでは、p形コンタクト領域5のY方向における長さが異なる。第1部分R1aに設けられたp形コンタクト領域5のY方向における長さL1は、第2部分R1bに設けられたp形コンタクト領域5のY方向における長さL2よりも長い。このため、X-Y面において、第1部分R1aにおける単位面積あたりのp形コンタクト領域5の面積は、第2部分R1bにおける単位面積あたりのp形コンタクト領域5aの面積よりも大きい。
【0047】
図示した例では、第1部分R1aにおいて、Y方向で隣り合うn形エミッタ領域4同士の間の領域の全てに、p形コンタクト領域5が設けられている。第2部分R1bでは、Y方向で隣り合うn形エミッタ領域4同士の間の領域に、一対のp形コンタクト領域5と、p形ベース領域3の一部と、が設けられている。
【0048】
図10に示すように、第1部分R1aに設けられたp形コンタクト領域5の一部は、X方向において、第2部分R1bに設けられたp形コンタクト領域5と並ぶ。図11に示すように、第1部分R1aに設けられたp形コンタクト領域5の別の一部は、X方向において、第2部分R1bに設けられたp形ベース領域3と並ぶ。p形コンタクト領域5のサイズを除き、半導体装置110におけるIGBT領域R1及びダイオード領域R2の構造は、半導体装置100におけるIGBT領域R1及びダイオード領域R2の構造と同様である。
【0049】
第1変形例の利点を説明する。
上述の通り、ダイオード領域R2がオン状態となったとき、IGBT領域R1の寄生ダイオードからn形ベース領域2へ正孔が流れる。このとき、IGBT領域R1のうち、ダイオード領域R2により近い部分で、より多くの正孔がn形ベース領域2へ流れる。すなわち、第2部分R1bの寄生ダイオードを流れる正孔の量は、第1部分R1aの寄生ダイオードを流れる正孔の量よりも多い。このため、第2部分R1bにおいてp形コンタクト領域5を短くすることで、寄生ダイオードによってn形ベース領域2へ流れる正孔の量を効果的に低減できる。また、第1部分R1aとn形カソード領域7との間のX-Y面に沿った距離は、第2部分R1bとn形カソード領域7との間のX-Y面に沿った距離よりも長い。第1部分R1aでは、第2部分R1bに比べて、n形バッファ領域10とp形コレクタ領域1との電位が順方向にバイアスされ易い。このため、第1部分R1aでは、p形コレクタ領域1から注入される正孔の量が、第2部分R1bよりも多い傾向にある。第1部分R1aにおいてp形コンタクト領域5を長くすることで、第1部分R1aに設けられたp形ベース領域3の電位が、より上昇し難くなる。ラッチアップ耐量を高めることができる。
【0050】
第1変形例に係る半導体装置110によれば、半導体装置100と比べて、ダイオード領域R2の動作速度の低下を抑えつつ、ラッチアップ耐量を向上できる。
【0051】
半導体装置110において、第2部分R1bのX方向における長さL3(図8に示す)は、コレクタ電極31とエミッタ電極32との間のZ方向における距離D1(図10に示す)よりも長いことが好ましい。長さL3は、換言すると、第1部分R1aとダイオード領域R2との間のX方向における距離である。長さL3を距離D1よりも長くすることで、第1部分R1aのp形コンタクト領域5とダイオード領域R2のn形カソード領域7との間の距離を長くできる。第1部分R1aの寄生ダイオードを流れる正孔の量をさらに低減できる。一方、長さL3が過度に長い場合、第1部分R1aのサイズが小さくなり、ラッチアップ耐量の向上の効果が小さくなる。ラッチアップ耐量の向上の効果を大きくしつつ、寄生ダイオードによる正孔の流入を効果的に低減するために、長さL3は、距離D1よりも長く、距離D1の二倍よりも短いことが好ましい。
【0052】
なお、長さL3を測定する際、第1部分R1aと第2部分R1bとの境界は、p形コンタクト領域5の長さの違いから判別できる。また、第2部分R1bとダイオード領域R2との境界のX方向における位置には、p形コレクタ領域1とn形カソード領域7との境界のX方向における位置を用いることができる。
【0053】
(第2変形例)
図12は、第1実施形態の第2変形例に係る半導体装置の一部を示す平面図である。
図12に示した第2変形例に係る半導体装置120では、第2部分R1bに設けられた各p形コンタクト領域5のY方向における長さが、ダイオード領域R2に近づくほど、より短くなっている。第2変形例によれば、寄生ダイオードがより動作し易い領域ほど、p形コンタクト領域5がより短い。このため、寄生ダイオードによってn形ベース領域2へ流れる正孔の量を効果的に低減できる。また、寄生ダイオードがより動作し難い領域ほど、p形コンタクト領域5がより長い。p形ベース領域3の電位が、より上昇し難くなり、半導体装置120のラッチアップを抑制できる。
【0054】
第2変形例に係る半導体装置120によれば、半導体装置110と比べて、ダイオード領域R2の動作速度をより高め、ラッチアップ耐量をさらに向上できる。
【0055】
(第2実施形態)
図13は、第2実施形態に係る半導体装置の一部を示す平面図である。図14は、図13のA1-A2断面図である。図15は、図13のB1-B2断面図である。
第2実施形態に係る半導体装置は、RC-IGBTである。図13に示すように、第2実施形態に係る半導体装置200は、第1実施形態に係る半導体装置110又は120と同様に、第1部分R1a及び第2部分R1bを含む。半導体装置200は、第2部分R1bにp形コンタクト領域5が設けられていない点で第1実施形態に係る半導体装置と異なる。
【0056】
図13図15に示すように、第1部分R1aでは、Y方向で隣り合うn形エミッタ領域4同士の間の領域の全てに、p形コンタクト領域5が設けられている。Y方向において、n形エミッタ領域4とp形コンタクト領域5が交互に設けられている。第2部分R1bでは、Y方向で隣り合うn形エミッタ領域4同士の間の領域の全てに、p形ベース領域3が設けられている。Y方向において、p形ベース領域3の一部とn形エミッタ領域4が交互に設けられている。
【0057】
第2実施形態に係る半導体装置200では、正孔が注入され易い第2部分R1bにp形コンタクト領域5が設けられていない。このため、第1実施形態に係る半導体装置100に比べて、ダイオード領域R2の動作速度をさらに高めることができる。
【0058】
図13に示すように、第2部分R1bに設けられたn形エミッタ領域4のY方向における長さが、第1部分R1aに設けられたn形エミッタ領域4のY方向における長さよりも長くても良い。第2部分R1bには、p形コンタクト領域5が設けられていない。このため、第2部分R1bでは、第1部分R1aに比べて、不純物を活性化させるための熱処理を行った際、n形エミッタ領域4のn形不純物が、よりY方向へ拡散し易い。この結果、Y方向において、第2部分R1bのn形エミッタ領域4が、第1部分R1aのn形エミッタ領域4よりも長くなる。こうすることで、n形エミッタ領域4を通した電子電流の引き抜きが促され、p形ベース領域3からn形ベース領域2への正孔の注入を抑制できる。
【0059】
また、半導体装置200においても、第2部分R1bのX方向における長さは、コレクタ電極31とエミッタ電極32との間のZ方向における距離よりも長く、当該距離の二倍よりも短いことが好ましい。これにより、ラッチアップ耐量の向上の効果を大きくしつつ、寄生ダイオードによる正孔の流入を効果的に低減できる。
【0060】
(第1変形例)
図16は、第2実施形態の第1変形例に係る半導体装置の一部を示す断面図である。
図16は、第1部分R1aのn形エミッタ領域4、第2部分R1bのn形エミッタ領域4、及びダイオード領域R2を通るX-Z断面図に相当する。図16に示した第1変形例に係る半導体装置210では、ダイオード領域R2に、n形バリア領域12が設けられていない。
【0061】
例えば、p形アノード領域8のZ方向における長さが、p形ベース領域3のZ方向における長さよりも長い。p形アノード領域8のp形不純物濃度と、p形ベース領域3のp形不純物濃度と、が互いに異なっていても良い。好ましくは、p形アノード領域8のp形不純物濃度は、p形ベース領域3のp形不純物濃度よりも低い。これにより、p形アノード領域8からn形ベース領域2へ流れる正孔の量を低減できる。
【0062】
n形バリア領域の有無、p形半導体領域のZ方向における長さなど、IGBT領域R1の表面構造とダイオード領域R2の表面構造をそれぞれ最適化することで、半導体装置210の特性をより高めることができる。
【0063】
(第2変形例)
図17は、第2実施形態の第2変形例に係る半導体装置の一部を示す断面図である。図18は、図17のA1-A2断面図である。図19は、図17のB1-B2断面図である。
図17図19に示した第2変形例に係る半導体装置220は、第2部分R1bの構造について、半導体装置200と差異を有する。半導体装置220では、第2部分R1bにおいて、p形コンタクト領域6及びコンタクト部32aのそれぞれが、Y方向において複数設けられている。複数のp形コンタクト領域6は、Y方向において互いに離れている。複数のコンタクト部32aは、Y方向において互いに離れている。p形コンタクト領域6同士の間及びコンタクト部32a同士の間には、p形ベース領域3の一部が設けられている。
【0064】
形コンタクト領域6及びコンタクト部32aは、n形エミッタ領域4に近接する領域にのみ設けられている。例えば、図18に示すように、コンタクト部32aは、X方向において隣り合う一対のn形エミッタ領域4同士の間に位置する。p形コンタクト領域6は、Z方向において、p形ベース領域3とコンタクト部32aとの間に位置する。
【0065】
IGBT領域R1の寄生ダイオードが動作したとき、p形コンタクト領域5だけでなく、p形コンタクト領域6からも正孔が流れうる。半導体装置220では、X-Y面において、第2部分R1bにおける単位面積あたりのp形コンタクト領域6の面積が、第1部分R1aにおける単位面積あたりのp形コンタクト領域6の面積よりも小さい。このため、ダイオード領域R2がオン状態のとき、p形コンタクト領域6を通してn形ベース領域2へ流れる正孔の量を低減できる。これにより、ダイオード領域R2の動作をより高速化でき、ダイオード領域R2の動作によるスイッチング損失を低減できる。また、p形コンタクト領域6及びコンタクト部32aは、n形エミッタ領域4に近接する領域に設けられている。このため、n形エミッタ領域4近傍の領域における電位の上昇を効果的に抑制できる。
【0066】
第2変形例に係る半導体装置220よれば、半導体装置200に比べて、ラッチアップ耐量の低下を抑制しつつ、ダイオード領域R2の動作をさらに高速化できる。
【0067】
本発明の実施形態は、以下の構成を含む。
(構成1)
第1電極と、
前記第1電極から離れた第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間において、前記第1電極の一部の上に設けられた第1領域であって、
第1導電形の第1半導体領域と、
一部が前記第1半導体領域の上に設けられた第2導電形の第2半導体領域と、
前記第2半導体領域の前記一部の上に設けられた第1導電形の第3半導体領域と、
前記第1電極から前記第2電極に向かう第1方向に垂直な第2方向において、ゲート絶縁層を介して前記第3半導体領域と対面するゲート電極と、
前記第3半導体領域の上に設けられ、前記第2方向において前記第2電極の一部と並ぶ第2導電形の第4半導体領域と、
前記第1方向及び前記第2方向に垂直な第3方向において前記第3半導体領域の一部と前記第4半導体領域との間に設けられ、前記第2方向において前記第2電極の前記一部と並び、前記第3半導体領域よりも高い第1導電形の不純物濃度を有する第1導電形の第5半導体領域と、
前記第3半導体領域と前記第2電極の前記一部との間に設けられ、前記第3半導体領域よりも高い第1導電形の不純物濃度を有する第1導電形の第6半導体領域と、
を含む前記第1領域と、
前記第1電極と前記第2電極との間において、前記第1電極の別の一部の上に設けられた第2領域であって、
前記第2半導体領域よりも高い第2導電形の不純物濃度を有する第2導電形の第7半導体領域と、
前記第7半導体領域の上に設けられた前記第2半導体領域の別の一部と、
前記第2半導体領域の前記別の一部の上に設けられた第1導電形の第8半導体領域と、
を含む前記第2領域と、
を備えた半導体装置。
(構成2)
前記第4半導体領域は、前記第3方向において、一対の前記第5半導体領域の間に設けられた、構成1に記載の半導体装置。
(構成3)
前記第3半導体領域の前記一部と、前記第4半導体領域及び前記一対の第5半導体領域を含む群と、が前記第3方向において交互に設けられた、構成2に記載の半導体装置。
(構成4)
前記第1領域は、第1部分と、前記第1部分と前記第2領域との間に位置する第2部分と、を含み、
前記第3半導体領域、前記第4半導体領域、前記第5半導体領域、及び前記第6半導体領域のそれぞれは、前記第1部分及び前記第2部分のそれぞれに設けられ、
前記第1部分に設けられた前記第5半導体領域の前記第3方向における長さは、前記第2部分に設けられた前記第5半導体領域の前記第3方向における長さよりも長い、構成1~3のいずれか1つに記載の半導体装置。
(構成5)
前記第2部分において、前記第5半導体領域は前記第2方向に複数設けられ、
複数の前記第5半導体領域のそれぞれの前記第3方向における長さは、前記第2領域に向かうほど短い、構成4に記載の半導体装置。
(構成6)
前記第2部分の前記第2方向における長さは、前記第1電極と前記第2電極との間の前記第1方向における距離よりも長い、構成4又は5に記載の半導体装置。
(構成7)
第1電極と、
前記第1電極から離れた第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間において前記第1電極の一部の上に設けられ、第1部分及び第2部分を含む第1領域であって、
前記第1部分及び前記第2部分に設けられた第1導電形の第1半導体領域と、
一部が前記第1半導体領域の上に設けられた第2導電形の第2半導体領域と、
前記第1部分及び前記第2部分のそれぞれに設けられ、前記第2半導体領域の前記一部の上に位置する第1導電形の第3半導体領域と、
前記第1部分に設けられ、前記第1電極から前記第2電極に向かう第1方向に垂直な第2方向において、ゲート絶縁層を介して前記第3半導体領域と対面するゲート電極と、
前記第1部分及び前記第2部分のそれぞれに設けられ、前記第3半導体領域の上に位置し、前記第2方向において前記第2電極の一部と並ぶ第2導電形の第4半導体領域と、
前記第1部分に設けられ、前記第2方向において前記第2電極の前記一部と並び、前記第3半導体領域よりも高い第1導電形の不純物濃度を有する第1導電形の第5半導体領域と、
前記第1部分及び前記第2部分のそれぞれに設けられ、前記第3半導体領域と前記第2電極の前記一部との間に設けられ、前記第3半導体領域よりも高い第1導電形の不純物濃度を有する第1導電形の第6半導体領域と、
を含み、前記第1部分では前記第1方向及び前記第2方向に垂直な第3方向において前記第4半導体領域と前記第5半導体領域とが交互に設けられ、前記第2部分では前記第3方向において前記第3半導体領域の一部と前記第4半導体領域とが交互に設けられた前記第1領域と、
前記第1電極と前記第2電極との間において、前記第1電極の別の一部の上に設けられた第2領域であって、
前記第2半導体領域よりも高い第2導電形の不純物濃度を有する第2導電形の第7半導体領域と、
前記第7半導体領域の上に設けられた前記第2半導体領域の別の一部と、
前記第2半導体領域の前記別の一部の上に設けられた第1導電形の第8半導体領域と、
を含み、前記第2部分が前記第1部分と前記第2領域との間に位置する、前記第2領域と、
を備えた半導体装置。
(構成8)
前記第2部分の前記第2方向における長さは、前記第1電極と前記第2電極との間の距離よりも長い、構成7に記載の半導体装置。
(構成9)
前記第2部分において、前記第6半導体領域は前記第3方向に複数設けられ、
複数の前記第6半導体領域は互いに離れている、構成7又は8に記載の半導体装置。
(構成10)
前記第8半導体領域の第2導電形の不純物濃度は、前記第3半導体領域の第2導電形の不純物濃度よりも低い、構成1~9のいずれか1つに記載の半導体装置。
【0068】
以上で説明した各実施形態における、各半導体領域の間の不純物濃度の相対的な高低については、例えば、SCM(走査型静電容量顕微鏡)を用いて確認することが可能である。なお、各半導体領域におけるキャリア濃度は、各半導体領域において活性化している不純物濃度と等しいものとみなすことができる。従って、各半導体領域の間のキャリア濃度の相対的な高低についても、SCMを用いて確認することができる。また、各半導体領域における不純物濃度については、例えば、SIMS(二次イオン質量分析法)により測定することが可能である。
【0069】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0070】
1:p形コレクタ領域、 2:n形ベース領域、 3:p形ベース領域、 4:n形エミッタ領域、 5:p形コンタクト領域、 5a:p形コンタクト領域、 6:p形コンタクト領域、 7:n形カソード領域、 8:p形アノード領域、 9:p形アノード領域、 10:n形バッファ領域、 11,12:n形バリア領域、 20:ゲート電極、 20a:ゲート絶縁層、 21:導電部、 21a:絶縁層、 25:絶縁層、 31:コレクタ電極、 32:エミッタ電極、 32a,32b:コンタクト部、 33:ゲートパッド、 33a:ゲート配線、 100~120,100r,200~220:半導体装置、 R1:IGBT領域、 R1a:第1部分、 R1b:第2部分、 R2:ダイオード領域
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