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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135987
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】ギヤポンプ装置
(51)【国際特許分類】
   F04C 2/10 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
F04C2/10 341G
F04C2/10 341F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046928
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】羽柴 隆志
(72)【発明者】
【氏名】袴田 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】戸澤 数馬
(72)【発明者】
【氏名】釜田 聖
【テーマコード(参考)】
3H041
【Fターム(参考)】
3H041AA02
3H041BB04
3H041CC07
3H041CC13
3H041DD05
3H041DD08
3H041DD33
3H041DD34
(57)【要約】
【課題】一例として、インナロータ及びアウタロータが傾いてしまうことを抑制可能なギヤポンプ装置を得る。
【解決手段】実施形態に係るギヤポンプ装置は、一例として、インナロータ及びアウタロータを有するロータユニットと、ロータ室が設けられ、前記ロータ室を低圧領域と高圧領域とに区画する区画凸部を有するハウジングと、を備え、前記ロータユニットは、前記インナロータが第1の方向に回転することで流体を送り、歯は、側面と、周面と、前記歯の中央と前記第1の方向における前記歯の端との間で前記周面に沿って延びるとともに、前記側面から前記周面に向かって先細る、テーパ面と、前記歯の中央と第2の方向における前記歯の端との間で前記側面と前記周面との間に設けられた角部分と、を有し、前記周面と直交する方向における前記テーパ面の幅は、前記角部分の幅よりも大きい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸まわりに回転可能なインナロータ、前記インナロータを囲むアウタロータ、前記インナロータに設けられた複数の外歯、及び前記アウタロータに設けられるとともに前記複数の外歯と噛み合う複数の内歯、を有するロータユニットと、
前記ロータユニットを収容するロータ室、前記ロータ室に連通する吸入路、及び前記ロータ室に連通する吐出路、が設けられ、前記回転軸に沿う軸方向に前記ロータユニットから離間した壁、及び前記壁から前記ロータユニットへ向かって突出するとともに前記ロータ室を前記吸入路に連通する低圧領域と前記吐出路に連通する高圧領域とに区画する区画凸部、を有するハウジングと、
を具備し、
前記ロータユニットは、前記インナロータが前記回転軸まわりの第1の方向に回転することで、前記低圧領域から前記高圧領域へ流体を送るよう構成され、
前記複数の外歯及び前記複数の内歯のうち少なくとも一方のそれぞれの歯は、
前記軸方向に向く二つの側面と、
前記二つの側面の間に設けられた周面と、
前記二つの側面のそれぞれと前記周面との間に設けられ、前記回転軸まわりにおける前記歯の中央と前記第1の方向における前記歯の端との間で前記周面に沿って延びるとともに、前記二つの側面から前記周面に向かって先細る、二つのテーパ面と、
前記回転軸まわりにおける前記歯の中央と前記第1の方向の反対の第2の方向における前記歯の端との間で前記二つの側面と前記周面との間に設けられた二つの角部分と、
を有し、
前記周面と直交する方向における前記二つのテーパ面のそれぞれの幅は、前記周面と直交する方向における前記二つの角部分のそれぞれの幅よりも大きい、
ギヤポンプ装置。
【請求項2】
前記二つのテーパ面は、前記第1の方向と交差する方向に先細る、
請求項1のギヤポンプ装置。
【請求項3】
前記軸方向における前記二つのテーパ面のそれぞれの幅は、前記周面と直交する方向における前記二つのテーパ面のそれぞれの幅よりも小さい、
請求項1のギヤポンプ装置。
【請求項4】
前記インナロータに設けられた孔を貫通するシャフトと、
前記インナロータと前記シャフトとの間に介在するとともに、前記インナロータ及び前記シャフトのいずれよりもヤング率が小さい、弾性部材と、
をさらに具備する請求項1乃至請求項3のいずれか一つのギヤポンプ装置。
【請求項5】
前記インナロータに設けられた孔を貫通するシャフト、
をさらに具備し、
前記インナロータは、前記孔を形成するとともに前記回転軸に向く内面を有し、
前記内面は、前記軸方向における当該内面の両端が前記軸方向における当該内面の中央よりも前記回転軸から離間する円弧状の曲面である、
請求項1乃至請求項3のいずれか一つのギヤポンプ装置。
【請求項6】
回転軸まわりに回転可能なインナロータ、前記インナロータを囲むアウタロータ、前記インナロータに設けられた複数の外歯、及び前記アウタロータに設けられるとともに前記複数の外歯と噛み合う複数の内歯、を有するロータユニットと、
前記ロータユニットを収容するロータ室、前記ロータ室に連通する吸入路、及び前記ロータ室に連通する吐出路、が設けられ、前記回転軸に沿う軸方向に前記ロータユニットから離間した壁、及び前記壁から前記ロータユニットへ向かって突出するとともに前記ロータ室を前記吸入路に連通する低圧領域と前記吐出路に連通する高圧領域とに区画する区画凸部、を有するハウジングと、
前記インナロータに設けられた孔を貫通するシャフトと、
前記インナロータと前記シャフトとの間に介在するとともに、前記インナロータ及び前記シャフトのいずれよりもヤング率が小さい、弾性部材と、
を具備するギヤポンプ装置。
【請求項7】
回転軸まわりに回転可能なインナロータ、前記インナロータを囲むアウタロータ、前記インナロータに設けられた複数の外歯、及び前記アウタロータに設けられるとともに前記複数の外歯と噛み合う複数の内歯、を有するロータユニットと、
前記ロータユニットを収容するロータ室、前記ロータ室に連通する吸入路、及び前記ロータ室に連通する吐出路、が設けられ、前記回転軸に沿う軸方向に前記ロータユニットから離間した壁、及び前記壁から前記ロータユニットへ向かって突出するとともに前記ロータ室を前記吸入路に連通する低圧領域と前記吐出路に連通する高圧領域とに区画する区画凸部、を有するハウジングと、
前記インナロータに設けられた孔を貫通するシャフトと、
を具備し、
前記インナロータは、前記孔を形成するとともに前記回転軸に向く内面を有し、
前記内面は、前記軸方向における当該内面の両端が前記軸方向における当該内面の中央よりも前記回転軸から離間する円弧状の曲面である、
ギヤポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ギヤポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インナロータとアウタロータとを備えるギヤポンプ装置が知られる。ギヤポンプ装置は、インナロータ及びアウタロータを回転させることで、互いに噛み合うインナロータの外歯とアウタロータの内歯との間の流体を、低圧領域から高圧領域へ送る。
【0003】
インナロータの外歯及びアウタロータの内歯に、回転方向に向かって厚みが薄くなるテーパ面が設けられる。テーパ面は、楔効果により油膜圧力を発生させ、歯の摩耗を抑制する(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-217290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の構成では、油膜圧力が回転方向の広範囲で発生する。このため、油膜圧力が分散して弱まってしまう。油膜圧力が不十分である場合、インナロータ及びアウタロータが傾いてしまう虞がある。
【0006】
そこで、本発明は上記に鑑みてなされたものであり、インナロータ及びアウタロータが傾いてしまうことを抑制可能なギヤポンプ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係るギヤポンプ装置は、一例として、回転軸まわりに回転可能なインナロータ、前記インナロータを囲むアウタロータ、前記インナロータに設けられた複数の外歯、及び前記アウタロータに設けられるとともに前記複数の外歯と噛み合う複数の内歯、を有するロータユニットと、前記ロータユニットを収容するロータ室、前記ロータ室に連通する吸入路、及び前記ロータ室に連通する吐出路、が設けられ、前記回転軸に沿う軸方向に前記ロータユニットから離間した壁、及び前記壁から前記ロータユニットへ向かって突出するとともに前記ロータ室を前記吸入路に連通する低圧領域と前記吐出路に連通する高圧領域とに区画する区画凸部、を有するハウジングと、を備え、前記ロータユニットは、前記インナロータが前記回転軸まわりの第1の方向に回転することで、前記低圧領域から前記高圧領域へ流体を送るよう構成され、前記複数の外歯及び前記複数の内歯のうち少なくとも一方のそれぞれの歯は、前記軸方向に向く二つの側面と、前記二つの側面の間に設けられた周面と、前記二つの側面のそれぞれと前記周面との間に設けられ、前記回転軸まわりにおける前記歯の中央と前記第1の方向における前記歯の端との間で前記周面に沿って延びるとともに、前記二つの側面から前記周面に向かって先細る、二つのテーパ面と、前記回転軸まわりにおける前記歯の中央と前記第1の方向の反対の第2の方向における前記歯の端との間で前記二つの側面と前記周面との間に設けられた二つの角部分と、を有し、前記周面と直交する方向における前記二つのテーパ面のそれぞれの幅は、前記周面と直交する方向における前記二つの角部分のそれぞれの幅よりも大きい。よって、一例としては、テーパ面とハウジングとの間の隙間は、側面とハウジングとの間の隙間に向かって先細る。インナロータ及びアウタロータが第1の方向に回転すると、テーパ面とハウジングとの間の隙間に流体(ブレーキフルード)が流入する。ブレーキフルードは、テーパ面とハウジングとの間の先細る隙間に流入することで、楔効果により油膜圧力を発生させる。油膜圧力は、歯をハウジングから離間させることで、歯とハウジングとの接触による機械的損失の発生を抑制できる。周面に沿って延びるテーパ面は、周面の近傍において油膜圧力を局所的に強く発生させ、効果的に歯をハウジングから離間させることができる。また、ブレーキフルードは、角部分とハウジングとの間の隙間から流出するとき、逆楔効果により油膜圧力を低下させる。しかし、角部分とハウジングとの間の隙間は、側面とハウジングとの間の隙間に向かって先細らないか、テーパ面とハウジングとの間の隙間よりも小さく先細る。このため、角部分は、逆楔効果による油膜圧力の低下を抑制できる。以上より、ギヤポンプ装置は、インナロータ及びアウタロータの傾きを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1の実施形態のギヤポンプ装置を示す断面図である。
図2図2は、第1の実施形態のギヤポンプ装置を図1のF2-F2線に沿って概略的に示す断面図である。
図3図3は、第1の実施形態のギヤポンプ装置の一部を図2のF3-F3線に沿って概略的に示す断面図である。
図4図4は、第1の実施形態のギヤポンプ装置の一部を概略的に示す正面図である。
図5図5は、第1の実施形態のギヤポンプ装置の一部を図4のF5-F5線に沿って概略的に示す断面図である。
図6図6は、1の実施形態のシャフトが傾いたギヤポンプ装置を概略的に示す断面図である。
図7図7は、第2の実施形態に係るギヤポンプ装置を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
以下に、第1の実施形態について、図1乃至図6を参照して説明する。なお、本明細書において、実施形態に係る構成要素及び当該要素の説明が、複数の表現で記載されることがある。構成要素及びその説明は、一例であり、本明細書の表現によって限定されない。構成要素は、本明細書におけるものとは異なる名称でも特定され得る。また、構成要素は、本明細書の表現とは異なる表現によっても説明され得る。
【0010】
図1は、第1の実施形態のギヤポンプ装置10を示す断面図である。図2は、第1の実施形態のギヤポンプ装置10を図1のF2-F2線に沿って概略的に示す断面図である。なお、図2は、見やすさのためハッチングを省略している。
【0011】
本実施形態のギヤポンプ装置10は、内接型ギヤポンプ(トロコイドポンプ)である。ギヤポンプ装置10は、図2に示すシャフト11、ロータユニット12、キー13、ハウジング14、弾性部材15、二つの外周シール16、及び二つのプッシャ17と、図1に示す複数の側方シール18とを有する。
【0012】
図1に示すように、シャフト11は、おおよそ第1の中心軸Ax1に沿って延びる略円柱状に形成される。第1の中心軸Ax1は、回転軸の一例である。第1の中心軸Ax1は、シャフト11の中心軸と略一致する。なお、第1の中心軸Ax1は、この例に限られない。
【0013】
シャフト11は、主に金属によって作られる。なお、シャフト11は、他の材料によって作られても良い。シャフト11は、モータのような動力源により、第1の中心軸Ax1まわりの第1の方向D1に回転させられる。
【0014】
本明細書において、便宜上、軸方向、径方向、及び周方向が定義される。軸方向は、第1の中心軸Ax1に沿う方向である。径方向は、第1の中心軸Ax1と直交する方向である。周方向は、第1の中心軸Ax1まわりの方向である。第1の方向D1は、周方向に含まれる。
【0015】
図2に示すように、ロータユニット12は、インナロータ21と、アウタロータ22とを有する。インナロータ21は、インナギヤとも称され得る。アウタロータ22は、アウタギヤとも称され得る。インナロータ21及びアウタロータ22は、主に金属によって作られる。なお、インナロータ21及びアウタロータ22は、他の材料によって作られても良い。
【0016】
図3は、第1の実施形態のギヤポンプ装置10の一部を図2のF3-F3線に沿って概略的に示す断面図である。図3に示すように、インナロータ21は、略円盤状に形成される。第1の中心軸Ax1は、例えば、インナロータ21の中心軸である。インナロータ21は、二つの側面21aと、外周面21bとを有する。
【0017】
二つの側面21aは、軸方向におけるインナロータ21の両端に設けられる。側面21aは、略平坦に形成され、軸方向に向く。外周面21bは、周方向に延びる略円筒状の曲面であり、径方向の外側に向く。
【0018】
図2に示すように、インナロータ21に、挿通孔23とキー溝24とが設けられる。挿通孔23は、孔の一例である。挿通孔23は、第1の中心軸Ax1に沿って延び、インナロータ21を軸方向に貫通する。シャフト11は、挿通孔23を通って軸方向に延びている。言い換えると、シャフト11は、挿通孔23を貫通する。キー溝24は、挿通孔23から径方向の外側に窪んでいる。
【0019】
インナロータ21の外周面21bに、複数の外歯25が設けられる。外歯25は、外周面21bから径方向の外側に突出し、周方向に並べられる。外周面21bは、外歯25の歯底を形成する。
【0020】
アウタロータ22は、第2の中心軸Ax2まわりに延びる略円環状に形成される。すなわち、第2の中心軸Ax2は、アウタロータ22の中心軸である。第2の中心軸Ax2は、第1の中心軸Ax1と略平行に延び、第1の中心軸Ax1から径方向に僅かに離間している。このため、軸方向は、第2の中心軸Ax2に沿って延びる方向でもある。径方向は、第2の中心軸Ax2と直交する方向とおおよそ等しい。周方向は、第2の中心軸Ax2まわりに回転する方向におおよそ等しい。
【0021】
アウタロータ22は、インナロータ21を囲む。言い換えると、インナロータ21は、アウタロータ22の内側に位置する。アウタロータ22は、図3に示す二つの側面22aと、図2に示す内周面22b及び外周面22cとを有する。
【0022】
図3に示すように、二つの側面22aは、軸方向におけるアウタロータ22の両端に設けられる。側面22aは、略平坦に形成され、軸方向に向く。アウタロータ22の側面22aは、インナロータ21の側面21aと略同一平面上に位置する。
【0023】
図2に示すように、内周面22bは、第2の中心軸Ax2まわりに延びた略円筒状の曲面であり、略径方向の内側に向く。内周面22bは、間隔を介してインナロータ21の外周面21bに向く。外周面22cは、内周面22bの反対側に位置し、第2の中心軸Ax2まわりに延びた略円筒状の曲面である。外周面22cは、略径方向の外側に向く。
【0024】
アウタロータ22の内周面22bに、複数の内歯27が設けられる。内歯27は、内周面22bから突出し、周方向に並べられる。このため、内周面22bは、内歯27の歯底を形成する。複数の内歯27は、複数の外歯25と噛み合う。
【0025】
複数の外歯25と複数の内歯27との間に、複数の空隙29が形成(規定、区画)される。外歯25が設けられたインナロータ21は、内歯27が設けられたアウタロータ22から偏心している。このため、複数の空隙29の大きさは、互いに異なる。
【0026】
キー13は、シャフト11に取り付けられ、シャフト11から径方向の外側に突出している。キー13は、キー溝24に嵌る。これにより、キー13は、シャフト11の回転をインナロータ21に伝達することができる。すなわち、インナロータ21は、シャフト11と一体的に第1の中心軸Ax1まわりに回転可能である。
【0027】
図1に示すように、ハウジング14は、シリンダ31と、プラグ32と、ケーシング33と、二つのリングシール34とを有する。シリンダ31、プラグ32、及びケーシング33は、軸方向に並べられる。ケーシング33は、シリンダ31とプラグ32との間に位置する。
【0028】
ケーシング33は、第2の中心軸Ax2まわりに延びる略円環状に形成される。ケーシング33は、内周面33aを有する。内周面33aは、第2の中心軸Ax2まわりに延びた略円筒状の曲面であり、略径方向の内側に向く。
【0029】
ハウジング14に、ロータ室35と、吸入路36と、吐出路37とが設けられる。ロータ室35は、ハウジング14の内部に設けられる。ロータ室35は、シリンダ31と、プラグ32と、ケーシング33の内周面33aと、によって形成(規定、区画)される。シャフト11の一部とロータユニット12とは、ロータ室35に収容される。
【0030】
吸入路36及び吐出路37は、シリンダ31に設けられ、ロータ室35に連通する。吐出路37は、吸入路36から略径方向に離間している。径方向において、吸入路36と吐出路37との間に、第1の中心軸Ax1、第2の中心軸Ax2、及びシャフト11が位置する。なお、吸入路36及び吐出路37の位置は、この例に限られない。
【0031】
図2に示すように、ロータユニット12は、内周面33aの内側に配置される。このため、ケーシング33の内周面33aは、アウタロータ22の外周面22cに面する。内周面33aの直径は、外周面22cの直径よりも大きい。
【0032】
ケーシング33に、二つの窪み38と二つの窪み39とが設けられる。窪み38,39は、周方向に互いに離間した位置でケーシング33の内周面33aから窪んでおり、ロータ室35に連通する。窪み38,39は、ロータ室35に収容されたアウタロータ22の外周面22cに向かって開口している。
【0033】
図1に示すように、二つのリングシール34のうち一方は、シリンダ31とロータユニット12との間に位置する。二つのリングシール34のうち他方は、プラグ32とロータユニット12との間に位置する。このため、ロータユニット12は、二つのリングシール34の間に位置する。二つのリングシール34は、第1の中心軸Ax1と略直交する仮想平面を対称面とする鏡面対称に形成される。
【0034】
図3に示すように、リングシール34は、主に金属によって作られる。なお、リングシール34は、合成樹脂のような他の材料によって作られても良い。リングシール34は、壁41と、外周凸部42と、区画凸部43とを有する。
【0035】
壁41は、第1の中心軸Ax1と略直交する円盤状に形成される。壁41は、ロータユニット12から軸方向に離間している。壁41は、側面41aを有する。側面41aは、略平坦に形成され、軸方向に向く。側面41aは、間隔を介して、インナロータ21の側面21a及びアウタロータ22の側面22aに向く。
【0036】
壁41に、挿通孔45が設けられる。挿通孔45は、第1の中心軸Ax1に沿って軸方向に壁41を貫通し、側面41aに開口する。シャフト11は、挿通孔45を通って延びている。
【0037】
外周凸部42は、壁41の側面41aの外側の縁から、ケーシング33に向かって突出する。外周凸部42は、第2の中心軸Ax2まわりに延びる略円環状に形成される。リングシール34の外周凸部42は、ケーシング33に当接する。
【0038】
区画凸部43は、壁41の側面41aから、ロータユニット12に向かって突出している。図2に示すように、区画凸部43は、シャフト11及び挿通孔45を囲むように略C字状に延びている。区画凸部43の両端は、外周凸部42に接続されている。
【0039】
図3に示すように、区画凸部43の軸方向における端面43aは、ロータユニット12に面している。端面43aは、ロータユニット12に当接し、又はロータユニット12から僅かに離間している。図2に示すように、区画凸部43は、壁41とロータユニット12との間で、ロータ室35を低圧領域35Lと高圧領域35Hとに区画する。
【0040】
図1に示すように、低圧領域35Lは、吸入路36に連通する。高圧領域35Hは、吐出路37に連通する。本実施形態において、シャフト11と挿通孔23,45とは、低圧領域35Lに設けられる。なお、シャフト11と挿通孔23,45は、高圧領域35Hに設けられても良い。
【0041】
低圧領域35Lと高圧領域35Hとは、区画凸部43とロータユニット12との間の隙間を通じて連通しても良い。しかし、区画凸部43とロータユニット12との間の隙間は、低圧領域35Lと高圧領域35Hとの圧力差が直ちに解消されてしまうことを抑制可能なように狭く設定される。
【0042】
図2に示すように、インナロータ21の複数の外歯25と、アウタロータ22の複数の内歯27とは、低圧領域35Lと高圧領域35Hとに亘って並べられる。このため、外歯25及び内歯27は、インナロータ21及びアウタロータ22の回転に伴って、低圧領域35Lと高圧領域35Hとの間を循環する。
【0043】
シャフト11がインナロータ21を第1の方向D1に回転させると、外歯25と内歯27との噛み合いにより、アウタロータ22も第2の中心軸Ax2まわりに、おおよそ第1の方向D1に回転する。これにより、外歯25と内歯27との間の空隙29は、拡大及び縮小しながらおおよそ周方向に移動する。これにより、空隙29は、低圧領域35Lから高圧領域35Hへ移動する。
【0044】
吸入路36から低圧領域35Lに、ブレーキフルードのような流体が供給される。ブレーキフルードは、低圧領域35Lにおいて空隙29に流入する。回転するインナロータ21及びアウタロータ22は、空隙29の流体を低圧領域35Lから高圧領域35Hへ送る。高圧領域35Hへ送られたブレーキフルードは、空隙29から吐出路37へ吐出される。このように、ロータユニット12は、インナロータ21が第1の方向D1に回転することで、低圧領域35Lから高圧領域35Hへブレーキフルードを送る。
【0045】
ロータ室35は、第1の境界領域35B1と、第2の境界領域35B2とをさらに有する。第1の境界領域35B1及び第2の境界領域35B2は、低圧領域35Lと高圧領域35Hとの間に位置する。第1の境界領域35B1と第2の境界領域35B2とは、周方向に互いに離間している。
【0046】
第1の境界領域35B1は、第1の方向D1に低圧領域35Lから高圧領域35Hへ移動する空隙29であって、二つのリングシール34の区画凸部43の間に位置する空隙29、を含む。区画凸部43の端面43aは、第1の境界領域35B1に面する。第1の境界領域35B1において、空隙29の体積は最大となる。
【0047】
第2の境界領域35B2は、第1の方向D1に高圧領域35Hから低圧領域35Lへ移動する空隙29であって、二つのリングシール34の区画凸部43の間に位置する空隙29、を含む。区画凸部43の端面43aは、第2の境界領域35B2に面する。第2の境界領域35B2において、空隙29の体積は最小となる。
【0048】
弾性部材15は、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)のような合成樹脂によって作られる。なお、弾性部材15は、他の材料によって作られても良い。弾性部材15のヤング率は、インナロータ21及びシャフト11のいずれのヤング率よりも小さい。
【0049】
弾性部材15は、例えば、第1の中心軸Ax1に沿って延びる略円筒状に形成される。弾性部材15は、挿通孔23に収容され、インナロータ21とシャフト11との間に介在する。弾性部材15には、例えば、キー13を避けるためのスリットが設けられる。
【0050】
図3に示すように、軸方向において、弾性部材15は、インナロータ21よりも短い。このため、弾性部材15は、軸方向における挿通孔23の両端から離間している。なお、弾性部材15は、インナロータ21より長くても良い。
【0051】
弾性部材15は、例えば、インナロータ21に設けられた溝21cに部分的に嵌め込まれる。これにより、インナロータ21は、弾性部材15を軸方向に保持し、弾性部材15がインナロータ21に対して軸方向に移動することを制限する。なお、弾性部材15が部分的に収容される溝が、シャフト11に設けられても良い。
【0052】
図2に示すように、二つの窪み38のそれぞれに、二つの外周シール16のうち一方が収容されている。二つの窪み38及び二つの外周シール16のそれぞれは、周方向において、低圧領域35Lと高圧領域35Hとの間に位置する。
【0053】
二つの外周シール16のそれぞれは、シール部材51と、弾性体52とを有する。シール部材51は、チップシールとも称され得る。弾性体52は、チップボールとも称され得る。
【0054】
シール部材51は、例えば、合成樹脂によって作られる。なお、シール部材51の材料は、この例に限られない。シール部材51は、略三角形の断面を有するブロック状に形成される。
【0055】
弾性体52は、合成ゴムのようなエラストマによって作られる。なお、弾性体52は、この例に限られず、コイルバネのような他の弾性体であっても良い。本実施形態の弾性体52は、略球状又は略楕円体状に形成される。なお、弾性体52の形状は、この例に限られず、例えば略円柱状に形成されても良い。
【0056】
シール部材51は、アウタロータ22と弾性体52との間に介在する。弾性体52は、ケーシング33とシール部材51との間で圧縮され、弾性変形からの復元力によりシール部材51をアウタロータ22の外周面22cに向かって押している。
【0057】
シール部材51は、外周面22cに当接することで、アウタロータ22の外周面22cとケーシング33の内周面33aとの間において、低圧領域35Lと高圧領域35Hとの間を封止する。なお、シール部材51と外周面22cとが、例えばブレーキフルードを介して僅かに離間していて良い。
【0058】
二つの窪み38は、第2の中心軸Ax2まわりに180°より小さい角度で互いに離間している。このため、二つの外周シール16は、アウタロータ22をおおよそ図2の接触点Pに向かって押す。
【0059】
接触点Pにおいて、アウタロータ22の外周面22cは、ケーシング33の内周面33aに接触する。接触点Pの位置は、例えば、低圧領域35Lと高圧領域35Hとの間の圧力差(吐出圧力)や、二つの外周シール16がアウタロータ22を押す力によって決まる。
【0060】
二つの窪み39のそれぞれに、二つのプッシャ17のうち一方が収容されている。二つの窪み39及び二つのプッシャ17のそれぞれは、高圧領域35Hに位置する。なお、窪み39及びプッシャ17は、低圧領域35Lに位置しても良い。二つのプッシャ17のそれぞれは、当接部材55と、弾性体56とを有する。
【0061】
当接部材55は、例えば、合成樹脂によって作られる。弾性体56は、合成ゴムのようなエラストマによって作られる。当接部材55は、アウタロータ22と弾性体56との間に介在する。弾性体56は、ケーシング33と当接部材55との間で圧縮され、弾性変形からの復元力により当接部材55をアウタロータ22の外周面22cに向かって押しつける。
【0062】
二つの窪み39のそれぞれは、周方向において、窪み38と接触点Pとの間に位置する。例えば、二つの窪み39のそれぞれは、第2の中心軸Ax2まわりに接触点Pから90°離間した位置に配置される。このため、二つの窪み39は、第2の中心軸Ax2まわりに互いに180°離間している。なお、二つの窪み39の位置は、この例に限られない。
【0063】
二つのプッシャ17は、当該二つのプッシャ17の間にアウタロータ22を保持する。これにより、二つのプッシャ17は、第2の中心軸Ax2と接触点Pとを結ぶ仮想線まわりにおけるアウタロータ22の回転振れを抑制できる。
【0064】
図1に示すように、一つの側方シール18は、リングシール34とシリンダ31との間に介在し、低圧領域35Lと高圧領域35Hとの間を封止する。他方の側方シール18は、リングシール34とプラグ32との間に介在する。
【0065】
図4は、第1の実施形態のギヤポンプ装置10の一部を概略的に示す正面図である。図5は、第1の実施形態のギヤポンプ装置10の一部を図4のF5-F5線に沿って概略的に示す断面図である。
【0066】
図4に示すように、以下の説明において、複数の外歯25及び複数の内歯27のそれぞれを歯60と称する。図5に示すように、歯60は、二つの側面61と、周面62と、二つのテーパ面63とを有する。さらに、歯60は、二つの角部分64をさらに有する。図4は、歯60の一方の角部分64を示す。
【0067】
図5に示すように、二つの側面61は、軸方向における歯60の両端に設けられる。側面61は、略平坦に形成され、軸方向に向く。インナロータ21において、歯60(外歯25)の側面61は、インナロータ21の側面21aと略同一平面を形成する。アウタロータ22において、歯60(内歯27)の側面61は、アウタロータ22の側面22aと略同一平面を形成する。なお、側面61と、側面21a若しくは側面22aとが、軸方向において互いに異なる位置に配置されても良い。
【0068】
周面62は、二つの側面61の間に設けられ、軸方向に延びている。インナロータ21において、インナロータ21の外周面21bと、複数の歯60(外歯25)の周面62とは、インナロータ21の外周を形成する。アウタロータ22において、アウタロータ22の内周面22bと、複数の歯60(内歯27)の周面62とは、アウタロータ22の内周を形成する。外歯25の周面62と内歯27の周面62とは、互いに向かい合う。
【0069】
テーパ面63と角部分64とのそれぞれは、側面61と周面62との角部分である。すなわち、二つのテーパ面63と二つの角部分64とは、二つの側面61と周面62との間に設けられる。テーパ面63と角部分64とは、略周方向に隣り合っている。
【0070】
図4に示すように、テーパ面63は、周方向における歯60の中央60aと、第1の方向D1における歯60の端60bとの間に位置する。角部分64は、歯60の中央60aと、第2の方向D2における歯60の端60cとの間に位置する。第2の方向D2は、第1の方向D1の反対方向である。
【0071】
歯60の中央60aは、歯60の先端に位置する。外歯25(歯60)の端60b,60cは、例えば、インナロータ21の外周面21bに位置する。内歯27(歯60)の端60b,60cは、例えば、アウタロータ22の内周面22bに位置する。
【0072】
本実施形態において、テーパ面63は、歯60の中央60aと端60bとの間の略全域に亘って設けられる。また、角部分64は、中央60aと端60cとの間の略全域に亘って設けられる。しかし、テーパ面63は、中央60aと端60bとの間の一部に設けられても良い。同じく、角部分64は、中央60aと端60cとの間の一部に設けられても良い。
【0073】
図5に示すように、二つのテーパ面63は、二つの側面61から周面62に向かって先細る。言い換えると、テーパ面63と周面62との間の境界における二つのテーパ面63の間の距離は、テーパ面63と側面61との間の境界における二つのテーパ面63の間の距離よりも短い。
【0074】
二つのテーパ面63のそれぞれは、側面61から周面62に向かって直線状に延びている。しかし、二つのテーパ面63のうち少なくとも一方は、側面61から周面62に向かって円弧状又は曲線状に延びていても良い。
【0075】
軸方向における二つのテーパ面63のそれぞれの幅W1は、周面62と直交する方向における二つのテーパ面63のそれぞれの幅W2よりも小さい。なお、幅W1は、幅W2以上であっても良い。
【0076】
図4に示すように、テーパ面63は、周面62に沿って延びている。このため、周面62と直交する方向におけるテーパ面63の幅W2は略一定である。また、周面62とテーパ面63との間の境界が、側面61とテーパ面63との間の境界に略平行に延びている。
【0077】
二つのテーパ面63は、第1の方向D1と交差する方向に先細る。例えば、図4に示すように、側面61とテーパ面63との間の角度が最も大きくなる方向に延びる複数の仮想線Lが描かれる。図4のような軸方向に見た投影面において、複数の仮想線Lのそれぞれは、第1の方向D1と交差する方向に延びている。
【0078】
図4は、例として、四つの仮想線Lを示す。しかし、周面62に沿う全ての位置における仮想線Lが、第1の方向D1と交差する方向に延びている。なお、少なくとも一つの仮想線Lが第1の方向D1と交差する方向に延びるように、二つのテーパ面63が先細っても良い。
【0079】
角部分65では、例えば、側面61と周面62とが略直角に交差する。なお、角部分65は、例えば、面取りされていても良い。いずれの場合においても、周面62と直交する方向における二つのテーパ面63のそれぞれの幅W2は、周面62と直交する方向における二つの角部分64のそれぞれの幅よりも大きい。
【0080】
例えば、テーパ面63は、側面61と周面62との角部分をラップ加工(面取り)することで形成される。なお、テーパ面63は、他の方法で形成されても良い。例えば、角部分64は、加工されていない側面61と周面62との角部分であっても良いし、小さく面取りすることで形成されても良い。
【0081】
図5に示すように、インナロータ21において、周面62の近傍における側面61の一部と、テーパ面63と、歯60の近傍における側面21aの一部とは、コーティング71により形成される。コーティング71は、インナロータ21に塗布されている。
【0082】
アウタロータ22において、周面62の近傍における側面61の一部と、テーパ面63と、歯60の近傍における側面22aの一部とは、コーティング72により形成される。コーティング72は、アウタロータ22に塗布されている。
【0083】
区画凸部43の端面43aは、コーティング73によって形成される。コーティング73は、区画凸部43に塗布されている。コーティング71,72,73は、例えば、固体潤滑剤を含む合成樹脂によって作られる。なお、コーティング71,72,73は、他の材料によって作られても良く、省略されても良い。
【0084】
一般的に、インナロータ21又はアウタロータ22が傾くと、歯60がリングシール34に当接する可能性がある。歯60は、例えば、リングシール34の区画凸部43に高い面圧で当接すると、インナロータ21又はアウタロータ22の回転に対する機械的損失を生じる。
【0085】
本実施形態におけるテーパ面63とリングシール34との間の隙間は、側面61とリングシール34との間の隙間に向かって先細る。言い換えると、テーパ面63とリングシール34との間の距離は、側面61とリングシール34との間の隙間に向かって減少する。
【0086】
インナロータ21が第1の中心軸Ax1まわりに回転すると、空隙29のブレーキフルードが、テーパ面63とリングシール34との間の隙間に引きずり込まれる。これにより、ブレーキフルードは、楔効果により油膜圧力を発生させる。
【0087】
油膜圧力は、テーパ面63とリングシール34とを、互いに離間するように押す。油膜圧力は、二つのテーパ面63のそれぞれを押すことで、歯60がリングシール34に高い面圧で当接することを抑制する。
【0088】
本実施形態では、幅W2が略一定であるテーパ面63が、周面62に沿って延びている。このため、油膜圧力は、周面62の近傍において局所的に強く発生する。言い換えると、テーパ面63は、周面62から遠い位置には設けられないため、油膜圧力が広範囲に分散することを抑制できる。各テーパ面63のそれぞれで局所的に強く発生した油膜圧力は、例えばシャフト11が傾いたりリングシール34が撓んだりしたとしても、歯60をリングシール34から離間した状態に保つことができる。すなわち、本実施形態のテーパ面63は、十分な油膜圧力を発生させることができる。
【0089】
また、上述のように、二つのテーパ面63は、第1の方向D1と交差する方向に先細る。すなわち、テーパ面63は、完全には第1の方向D1に向かって先細っていない。図4の矢印BFに例示されるように、テーパ面63に沿って流れるブレーキフルードは、完全に第2の方向D2には流れず、第2の方向と交差し且つ周面62に沿う方向に流れることができる。すなわち、第2の方向D2におけるブレーキフルードの流れの勢いが弱まる。
【0090】
側面61とリングシール34との間の隙間は狭い。このため、第2の方向D2におけるブレーキフルードの流れの勢いが弱い場合、ブレーキフルードは側面61とリングシール34との間の隙間に流入しにくい。テーパ面63は、ブレーキフルードの流れを逸らし、ブレーキフルードが側面61とリングシール34との間の隙間に流入することを抑制できる。
【0091】
一方で、側面61とリングシール34との間の隙間に、ブレーキフルードが存在する。さらに、角部分64とリングシール34との間の隙間にも、ブレーキフルードが存在する。ブレーキフルードは、角部分64とリングシール34との間の隙間から、空隙29へ流出することがある。
【0092】
本実施形態では、角部分64とリングシール34との間の隙間は、側面61とリングシール34との間の隙間に向かって先細らないか、テーパ面63とリングシール34との間の隙間よりも小さく先細る。このため、角部分64とリングシール34との間の隙間から流出するブレーキフルードの量は、テーパ面63とリングシール34との間の隙間に流入するブレーキフルードの量より少なくなる。
【0093】
一般的に、徐々に拡大する空間を流体が流れるとき、逆楔効果により負圧が発生することがある。角部分64とリングシール34との間の隙間から流出するブレーキフルードの量が少ないため、角部分64は、逆楔効果により発生する負圧を小さくでき、テーパ面63とリングシール34との間の隙間で発生する油膜圧力が損なわれることを抑制できる。以上より、十分な油膜圧力が、歯60とリングシール34との衝突を抑制する。
【0094】
図6は、第1の実施形態のシャフト11が傾いたギヤポンプ装置10を概略的に示す断面図である。例えば、ブレーキフルードの圧力により、インナロータ21がシャフト11に、径方向に押し付けられる。図6に示すように、シャフト11は、インナロータ21から受ける荷重により撓み、インナロータ21の第1の中心軸Ax1に対して傾くことがある。また、例えば、組み立てにおける誤差により、シャフト11が第1の中心軸Ax1に対して傾くことがある。
【0095】
一般的に、傾いたシャフト11は、インナロータ21に当接すると、インナロータ21をハウジング14に対して傾けてしまう。例えば、軸方向における挿通孔23の端においてシャフト11がインナロータ21に当接すると、モーメントが大きくなり、インナロータ21が傾いてしまう。インナロータ21が傾くと、当該インナロータ21に接触するアウタロータ22も傾いてしまう。
【0096】
本実施形態では、インナロータ21とシャフト11との間で、弾性部材15が弾性変形する。このため、弾性部材15は、インナロータ21とシャフト11とが一体的に傾くことを抑制できる。
【0097】
シャフト11から弾性部材15を介してインナロータ21に荷重が作用するとき、弾性部材15は、インナロータ21のモーメントを小さくする。モーメントが小さいため、インナロータ21は、油膜圧力によりリングシール34から十分に離間させられる。
【0098】
キー13は、例えば、クラウニング加工されている。このため、軸方向におけるキー13の端は、インナロータ21に当接し難い。従って、キー13は、シャフト11が傾いたとしても、インナロータ21を傾けてしまうことを抑制できる。
【0099】
インナロータ21及びアウタロータ22が一時的に傾くことで、歯60がリングシール34に当接しても良い。この場合、歯60の側面61及びテーパ面63が、例えば区画凸部43の端面43aに当接する。
【0100】
外歯25(歯60)の側面61の一部及びテーパ面63は、低摩擦のコーティング71によって形成される。また、内歯27(歯60)の側面61の一部及びテーパ面63は、低摩擦のコーティング72によって形成される。さらに、区画凸部43の端面43aは、低摩擦のコーティング73によって形成される。
【0101】
歯60が区画凸部43の端面43aに接触したとしても、歯60と区画凸部43との間で生じる摩擦力は小さくなる。このため、インナロータ21又はアウタロータ22の回転に対する機械的損失は小さい。
【0102】
以上説明された第1の実施形態に係るギヤポンプ装置10において、歯60は、二つのテーパ面63と、二つの角部分64とを有する。二つのテーパ面63は、二つの側面61のそれぞれと周面62との間に設けられ、歯60の中央60aと第1の方向D1の端60bとの間で周面62に沿って延びるとともに、二つの側面61から周面62に向かって先細る。二つの角部分64は、歯60の中央60aと第2の方向D2の端60cとの間で二つの側面61と周面62との間に設けられる。テーパ面63の幅W2は、角部分64の幅よりも大きい。すなわち、テーパ面63とハウジング14との間の隙間は、側面61とハウジング14との間の隙間に向かって先細る。インナロータ21及びアウタロータ22が第1の方向D1に回転すると、テーパ面63とハウジング14との間の隙間に流体(ブレーキフルード)が流入する。ブレーキフルードは、テーパ面63とハウジング14との間の先細る隙間に流入することで、楔効果により油膜圧力を発生させる。油膜圧力は、歯60をハウジング14から離間させることで、歯60とハウジング14との接触による機械的損失の発生を抑制できる。周面62に沿って延びるテーパ面63は、周面62の近傍において油膜圧力を局所的に強く発生させ、効果的に歯60をハウジング14から離間させることができる。また、ブレーキフルードは、角部分64とハウジング14との間の隙間から流出するとき、逆楔効果により油膜圧力を低下させる。しかし、角部分64とハウジング14との間の隙間は、側面61とハウジング14との間の隙間に向かって先細らないか、テーパ面63とハウジング14との間の隙間よりも小さく先細る。このため、角部分64は、逆楔効果による油膜圧力の低下を抑制できる。以上より、ギヤポンプ装置10は、インナロータ21及びアウタロータ22の傾きを抑制でき、ひいては歯60の接触による機械的損失を抑制できる。
【0103】
二つのテーパ面63は、第1の方向D1と交差する方向に先細る。これにより、二つのテーパ面63は、インナロータ21及びアウタロータ22が第1の方向D1に回転するとき、ブレーキフルードがテーパ面63とハウジング14との間の隙間から側面61とハウジング14との間の隙間に流入することを抑制できる。従って、ギヤポンプ装置10は、外歯25と内歯27との間の空隙29から側面61とハウジング14との間の隙間へブレーキフルードが漏れ出ることを抑制できる。
【0104】
テーパ面63の幅W1は、テーパ面63の幅W2よりも小さい。これにより、テーパ面63は、ブレーキフルードに油膜圧力をより効果的に発生させることができる。さらに、テーパ面63は、軸方向における周面62の長さを低減させてしまうことを抑制でき、ひいては外歯25の周面62と内歯27の周面62との接触面積を大きく保つことができる。従って、ギヤポンプ装置10は、外歯25の周面62と内歯27の周面62との間にブレーキフルードが漏れ出る隙間が生じてしまうことを抑制できる。
【0105】
弾性部材15は、インナロータ21とシャフト11との間に介在するとともに、インナロータ21及びシャフト11のいずれよりもヤング率が小さい。これにより、弾性部材15は、シャフト11がインナロータ21の第1の中心軸Ax1に対して傾いたときに、シャフト11とインナロータ21との間で弾性変形する。従って、ギヤポンプ装置10は、シャフト11がインナロータ21を傾けてしまうことを抑制でき、ひいては傾いたインナロータ21の歯60とハウジング14との接触による機械的損失の発生を抑制できる。さらに、ギヤポンプ装置10は、インナロータ21がアウタロータ22を傾けてしまうことを抑制でき、ひいては傾いたアウタロータ22の歯60とハウジング14との接触による機械的損失の発生を抑制できる。
【0106】
(第2の実施形態)
以下に、第2の実施形態について、図7を参照して説明する。なお、以下の実施形態の説明において、既に説明された構成要素と同様の機能を持つ構成要素は、当該既述の構成要素と同じ符号が付され、さらに説明が省略される場合がある。また、同じ符号が付された複数の構成要素は、全ての機能及び性質が共通するとは限らず、各実施形態に応じた異なる機能及び性質を有していても良い。
【0107】
図7は、第2の実施形態に係るギヤポンプ装置10を概略的に示す断面図である。図7に示すように、第2の実施形態のインナロータ21に、挿通孔23の代わりに、挿通孔201が設けられる。挿通孔201は、以下に説明される点を除き、挿通孔23に実質的に等しい。
【0108】
インナロータ21は、挿通孔201を形成(規定、区画)する内面205をさらに有する。内面205は、径方向の内側に向く。言い換えると、内面205は、第1の中心軸Ax1に向くとともに、挿通孔201を貫通するシャフト11に向く。
【0109】
内面205は、軸方向における当該内面205の両端205a,205bが、軸方向における当該内面205の中央205cよりも第1の中心軸Ax1から離間する円弧状の曲面である。言い換えると、中央205cは、両端205a,205bよりも第1の中心軸Ax1に近い。なお、内面205のうち中央205cと異なる部分が、第1の中心軸Ax1に最も近くても良い。また、内面205は、楕円の円弧状の曲面であっても良い。
【0110】
シャフト11は、インナロータ21に対して、例えば、1°より小さい角度の範囲内で傾く。このため、シャフト11は、円弧状の曲面である内面205の端205a,205bには当接し難い。
【0111】
内面205は、端205a,205bよりも中央205cに近い位置で、シャフト11に当接しやすい。このため、内面205がシャフト11に当接したとしても、モーメントが小さくなる。モーメントが小さいため、インナロータ21は、油膜圧力によりリングシール34から十分に離間させられる。
【0112】
以上説明された第2の実施形態のギヤポンプ装置10において、内面205は、軸方向における両端205a,205bが中央205cよりも第1の中心軸Ax1から離間する円弧状の曲面である。これにより、内面205は、シャフト11がインナロータ21に対して傾いたときに、軸方向における当該内面205の中央205c近傍でシャフト11に接触する。このとき、シャフト11がインナロータ21を回転させるモーメントは、内面205が軸方向に延びる円筒状に形成される場合に比べて小さい。従って、ギヤポンプ装置10は、シャフト11がインナロータ21を傾けてしまうことを抑制でき、ひいては傾いたインナロータ21の歯60とハウジング14との接触による機械的損失の発生を抑制できる。さらに、ギヤポンプ装置10は、インナロータ21がアウタロータ22を傾けてしまうことを抑制でき、ひいては傾いたアウタロータ22の歯60とハウジング14との接触による機械的損失の発生を抑制できる。
【0113】
以上の実施形態において、複数の外歯25及び複数の内歯27のそれぞれが二つのテーパ面63を有する。しかし、外歯25及び内歯27のうち一方のみが二つのテーパ面63を有しても良い。
【0114】
以上説明された少なくとも一つの実施形態に係るギヤポンプ装置は、一例として、回転軸まわりに回転可能なインナロータ、前記インナロータを囲むアウタロータ、前記インナロータに設けられた複数の外歯、及び前記アウタロータに設けられるとともに前記複数の外歯と噛み合う複数の内歯、を有するロータユニットと、前記ロータユニットを収容するロータ室、前記ロータ室に連通する吸入路、及び前記ロータ室に連通する吐出路、が設けられ、前記回転軸に沿う軸方向に前記ロータユニットから離間した壁、及び前記壁から前記ロータユニットへ向かって突出するとともに前記ロータ室を前記吸入路に連通する低圧領域と前記吐出路に連通する高圧領域とに区画する区画凸部、を有するハウジングと、を備え、前記ロータユニットは、前記インナロータが前記回転軸まわりの第1の方向に回転することで、前記低圧領域から前記高圧領域へ流体を送るよう構成され、前記複数の外歯及び前記複数の内歯のうち少なくとも一方のそれぞれの歯は、前記軸方向に向く二つの側面と、前記二つの側面の間に設けられた周面と、前記二つの側面のそれぞれと前記周面との間に設けられ、前記回転軸まわりにおける前記歯の中央と前記第1の方向における前記歯の端との間で前記周面に沿って延びるとともに、前記二つの側面から前記周面に向かって先細る、二つのテーパ面と、前記回転軸まわりにおける前記歯の中央と前記第1の方向の反対の第2の方向における前記歯の端との間で前記二つの側面と前記周面との間に設けられた二つの角部分と、を有し、前記周面と直交する方向における前記二つのテーパ面のそれぞれの幅は、前記周面と直交する方向における前記二つの角部分のそれぞれの幅よりも大きい。よって、一例としては、テーパ面とハウジングとの間の隙間は、側面とハウジングとの間の隙間に向かって先細る。インナロータ及びアウタロータが第1の方向に回転すると、テーパ面とハウジングとの間の隙間に流体(ブレーキフルード)が流入する。ブレーキフルードは、テーパ面とハウジングとの間の先細る隙間に流入することで、楔効果により油膜圧力を発生させる。油膜圧力は、歯をハウジングから離間させることで、歯とハウジングとの接触による機械的損失の発生を抑制できる。周面に沿って延びるテーパ面は、周面の近傍において油膜圧力を局所的に強く発生させ、効果的に歯をハウジングから離間させることができる。また、ブレーキフルードは、角部分とハウジングとの間の隙間から流出するとき、逆楔効果により油膜圧力を低下させる。しかし、角部分とハウジングとの間の隙間は、側面とハウジングとの間の隙間に向かって先細らないか、テーパ面とハウジングとの間の隙間よりも小さく先細る。このため、角部分は、逆楔効果による油膜圧力の低下を抑制できる。以上より、ギヤポンプ装置は、インナロータ及びアウタロータの傾きを抑制でき、ひいては歯の接触による機械的損失を抑制できる。
【0115】
上記ギヤポンプ装置では、一例として、前記二つのテーパ面は、前記第1の方向と交差する方向に先細る。よって、一例としては、二つのテーパ面は、インナロータ及びアウタロータが第1の方向に回転するとき、ブレーキフルードがテーパ面とハウジングとの間の隙間から側面とハウジングとの間の隙間に流入することを抑制できる。従って、ギヤポンプ装置は、外歯と内歯との間の空間から側面とハウジングとの間の隙間へブレーキフルードが漏れることを抑制できる。
【0116】
上記ギヤポンプ装置では、一例として、前記軸方向における前記二つのテーパ面のそれぞれの幅は、前記周面と直交する方向における前記二つのテーパ面のそれぞれの幅よりも小さい。よって、一例としては、二つテーパ面は、ブレーキフルードに油膜圧力をより効果的に発生させることができる。さらに、二つのテーパ面は、軸方向における周面の長さを低減させてしまうことを抑制でき、ひいては外歯の周面と内歯の周面との接触面積を大きく保つことができる。従って、ギヤポンプ装置は、外歯の周面と内歯の周面との間にブレーキフルードが漏れ出る隙間が生じてしまうことを抑制できる。
【0117】
上記ギヤポンプ装置は、一例として、前記インナロータに設けられた孔を貫通するシャフトと、前記インナロータと前記シャフトとの間に介在するとともに、前記インナロータ及び前記シャフトのいずれよりもヤング率が小さい、弾性部材と、をさらに備える。よって、一例としては、弾性部材は、シャフトがインナロータの回転軸に対して傾いたときに、シャフトとインナロータとの間で弾性変形する。従って、ギヤポンプ装置は、シャフトがインナロータを傾けてしまうことを抑制でき、ひいては傾いたインナロータの歯とハウジングとの接触による機械的損失の発生を抑制できる。さらに、ギヤポンプ装置は、インナロータがアウタロータを傾けてしまうことを抑制でき、ひいては傾いたアウタロータの歯とハウジングとの接触による機械的損失の発生を抑制できる。
【0118】
上記ギヤポンプ装置は、一例として、前記インナロータに設けられた孔を貫通するシャフト、をさらに備え、前記インナロータは、前記孔を形成するとともに前記回転軸に向く内面を有し、前記内面は、前記軸方向における当該内面の両端が前記軸方向における当該内面の中央よりも前記回転軸から離間する円弧状の曲面である。よって、一例としては、内面は、シャフトがインナロータに対して傾いたときに、軸方向における当該内面の中央近傍でシャフトに接触する。このとき、シャフトがインナロータを回転させるモーメントは、内面が軸方向に延びる円筒状に形成される場合に比べて小さい。従って、ギヤポンプ装置は、シャフトがインナロータを傾けてしまうことを抑制でき、ひいては傾いたインナロータの歯とハウジングとの接触による機械的損失の発生を抑制できる。さらに、ギヤポンプ装置は、インナロータがアウタロータを傾けてしまうことを抑制でき、ひいては傾いたアウタロータの歯とハウジングとの接触による機械的損失の発生を抑制できる。
【0119】
以上説明された少なくとも一つの実施形態に係るギヤポンプ装置は、一例として、回転軸まわりに回転可能なインナロータ、前記インナロータを囲むアウタロータ、前記インナロータに設けられた複数の外歯、及び前記アウタロータに設けられるとともに前記複数の外歯と噛み合う複数の内歯、を有するロータユニットと、前記ロータユニットを収容するロータ室、前記ロータ室に連通する吸入路、及び前記ロータ室に連通する吐出路、が設けられ、前記回転軸に沿う軸方向に前記ロータユニットから離間した壁、及び前記壁から前記ロータユニットへ向かって突出するとともに前記ロータ室を前記吸入路に連通する低圧領域と前記吐出路に連通する高圧領域とに区画する区画凸部、を有するハウジングと、前記インナロータに設けられた孔を貫通するシャフトと、前記インナロータと前記シャフトとの間に介在するとともに、前記インナロータ及び前記シャフトのいずれよりもヤング率が小さい、弾性部材と、を備える。よって、一例としては、弾性部材は、シャフトがインナロータの回転軸に対して傾いたときに、シャフトとインナロータとの間で弾性変形する。従って、ギヤポンプ装置は、シャフトがインナロータを傾けてしまうことを抑制でき、ひいては傾いたインナロータの外歯とハウジングとの接触による機械的損失の発生を抑制できる。さらに、ギヤポンプ装置は、インナロータがアウタロータを傾けてしまうことを抑制でき、ひいては傾いたアウタロータの内歯とハウジングとの接触による機械的損失の発生を抑制できる。
【0120】
以上説明された少なくとも一つの実施形態に係るギヤポンプ装置は、一例として、回転軸まわりに回転可能なインナロータ、前記インナロータを囲むアウタロータ、前記インナロータに設けられた複数の外歯、及び前記アウタロータに設けられるとともに前記複数の外歯と噛み合う複数の内歯、を有するロータユニットと、前記ロータユニットを収容するロータ室、前記ロータ室に連通する吸入路、及び前記ロータ室に連通する吐出路、が設けられ、前記回転軸に沿う軸方向に前記ロータユニットから離間した壁、及び前記壁から前記ロータユニットへ向かって突出するとともに前記ロータ室を前記吸入路に連通する低圧領域と前記吐出路に連通する高圧領域とに区画する区画凸部、を有するハウジングと、前記インナロータに設けられた孔を貫通するシャフトと、を備え、前記インナロータは、前記孔を形成するとともに前記回転軸に向く内面を有し、前記内面は、前記軸方向における当該内面の両端が前記軸方向における当該内面の中央よりも前記回転軸から離間する円弧状の曲面である。よって、一例としては、内面は、シャフトがインナロータに対して傾いたときに、軸方向における当該内面の中央近傍でシャフトに接触する。このとき、シャフトがインナロータを回転させるモーメントは、内面が軸方向に延びる円筒状に形成される場合に比べて小さい。従って、ギヤポンプ装置は、シャフトがインナロータを傾けてしまうことを抑制でき、ひいては傾いたインナロータの外歯とハウジングとの接触による機械的損失の発生を抑制できる。さらに、ギヤポンプ装置は、インナロータがアウタロータを傾けてしまうことを抑制でき、ひいては傾いたアウタロータの内歯とハウジングとの接触による機械的損失の発生を抑制できる。
【0121】
以上の説明において、「抑制する」は、例えば、事象、作用、若しくは影響の発生を防ぐこと、又は事象、作用、若しくは影響の度合いを低減させること、として定義される。また、以上の説明において、「制限する」は、例えば、移動若しくは回転を防ぐこと、又は移動若しくは回転を所定の範囲内で許容するとともに当該所定の範囲を超えた移動若しくは回転を防ぐこと、として定義される。
【0122】
以上、本発明の実施形態を例示したが、上記実施形態および変形例はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態や変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各実施形態や各変形例の構成や形状は、部分的に入れ替えて実施することも可能である。
【符号の説明】
【0123】
10…ギヤポンプ装置、11…シャフト、12…ロータユニット、15…弾性部材、21…インナロータ、22…アウタロータ、23,201…挿通孔(孔)、25…外歯、27…内歯、35…ロータ室、35L…低圧領域、35H…高圧領域、36…吸入路、37…吐出路、41…壁、43…区画凸部、60…歯、60a…中央、60b,60c…端、61…側面、62…周面、63…テーパ面、64…角部分、205…内面、205a,205b…端、205c…中央、Ax1…第1の中心軸(回転軸)、D1…第1の方向、D2…第2の方向、W2…幅。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7