(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135993
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】防煙垂れ壁装置
(51)【国際特許分類】
A62C 2/06 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
A62C2/06 508
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046934
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】▲吉▼田 展行
(57)【要約】
【課題】非作動状態の防煙垂れ壁を設置するための設置スペースの省スペース化が図れ、装置の小型化を実現できる防煙垂れ壁装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る防煙垂れ壁装置は、天井19側に位置される非作動状態と天井側から垂れ下がる作動状態とに設定される防煙垂れ壁5を備えた防煙垂れ壁装置1であって、防煙垂れ壁5は、非作動状態においては、天井側において面5a,5bが横方向に延長するように折り畳まれた状態に維持され、かつ、作動状態においては、折り畳まれた状態から展開して面5a,5bが上下方向に延長する壁面を形成するように構成されたことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井側に位置される非作動状態と前記天井側から垂れ下がる作動状態とに設定される防煙垂れ壁を備えた防煙垂れ壁装置であって、
前記防煙垂れ壁は、非作動状態においては、前記天井側において面が横方向に延長するように折り畳まれた状態に維持され、かつ、作動状態においては、折り畳まれた状態から展開して面が上下方向に延長する壁面を形成するように構成されたことを特徴とする防煙垂れ壁装置。
【請求項2】
前記防煙垂れ壁は、第1の回動手段を介して一端側が前記天井側に回動可能に構成された第1の板状部材と、第2の回動手段を介して他端側が前記第1の板状部材の他端側に回動可能に設けられた第2の板状部材とを備え、
前記防煙垂れ壁は、
非作動状態においては、前記第2の板状部材が前記第2の回動手段を介して一端側に折り返されて前記第1の板状部材の下方に位置されて前記第1の板状部材の板面と前記第2の板状部材の板面とが互いに対向して横方向に延長する状態とされて、かつ、前記第1の板状部材の他端側が係止装置により係止されたとともに、前記第2の板状部材の一端側と前記第1の板状部材の一端側とが吸着手段を介して吸着された状態に維持され、
かつ、
前記係止装置による係止が解除されて、前記第1の板状部材が前記第1の回動手段を介して回動した場合に、前記第2の板状部材の一端側と前記第1の板状部材の一端側との吸着が解除されて、前記第2の板状部材が前記第2の回動手段を介して回動することにより、前記第1の板状部材の板面と前記第2の板状部材の板面とが連続して上下方向に延長する作動状態となるように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の防煙垂れ壁装置。
【請求項3】
前記防煙垂れ壁は、シート材により構成され、
非作動状態においては、前記シート材が重畳状態に折り畳まれて当該シート材のシート面が横方向に延長する状態となるように維持され、
作動状態においては、前記シート材が展開されて当該シート材のシート面が上下方向に延長する状態となるように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の防煙垂れ壁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災の発生の際に作動させて煙の流動を防止する防煙垂れ壁を備えた防煙垂れ壁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、壁面を構成する面が横方向に延長するように天井側に位置される非作動状態と壁面を構成する面が上下方向に延長するように天井側から垂れ下がる作動状態とに設定される防煙垂れ壁を備えた防煙垂れ壁装置が知られている。
即ち、非作動状態においては、天井側において面が横方向に延長する状態となるように維持され、火災の発生の際に、煙感知器から出力される解除信号に基づいて回動して、あるいは、手動操作で出力される解除信号に基づいて回動して、壁面が上下方向に延長するように垂れ下がる作動状態に設定される防煙垂れ壁を備えた防煙垂れ壁装置が知られている。
当該防煙垂れ壁装置としては、防煙垂れ壁の回動動作時の衝撃を吸収するためにショックアブソーバ(ダンパー)を備えた構成のものが知られている(特許文献1等参照)。
また、従来、例えば
図5に示すように、回動式の板状部材により構成された防煙垂れ壁2が、実線で示した非作動状態と一点鎖線で示した作動状態とに設定される防煙垂れ壁装置100も知られている。
図5に示した従来の防煙垂れ壁装置100は、一端21側を回動中心として回動可能なように天井19側に取付けられた板状部材により構成された防煙垂れ壁2と、天井19側において防煙垂れ壁2の他端22側を係止して当該防煙垂れ壁2の下側の板面2aが横方向に延長する状態となって例えば天井面20aを形成するように当該防煙垂れ壁2を維持する係止装置3と、煙感知器25からの解除信号に基づいて係止装置3が防煙垂れ壁2の他端22側の係止を解除した場合に、当該防煙垂れ壁2が一端21側から他端22側に向けて垂れ下がって板面(壁面を構成する面)2aが上下方向に延長する作動状態の防煙垂れ壁2に設定するための防煙垂れ壁設定手段4とを備えて構成される。
尚、
図5は断面図であるが、断面ハッチングは省略してある。
また、
図5に示した防煙垂れ壁装置100は、例えばユニット化されており、
図5の紙面と直交する方向に沿って、複数のユニット化された防煙垂れ壁装置100,100…が連続して並ぶように配置されて天井19側に設置されている。
防煙垂れ壁2は、不燃材により構成されたものである。
防煙垂れ壁2は、例えば、四角形の平板部を備えて構成され、当該四角形の平板部における四角形の一辺側が一端21側となり、当該四角形の一辺と対向する他辺側が他端22側となる。
防煙垂れ壁2は、一端21側を回動中心として回動可能なように一端21側がヒンジ23等の回転支持部材を介して天井19側に取付けられている。
防煙垂れ壁2は、非作動状態においては、係止装置3によって、天井19側において下側の板面2aが水平面に沿って延長する状態となって例えば天井面20aを形成するように設定されるとともに、火災発生時においては、ヒンジ23を回転中心として回動して、防煙垂れ壁設定手段4によって、
図5に一点鎖線で示したような板面2aが垂直面に沿って延長する作動状態の防煙垂れ壁2として機能するように設定される。
つまり、非作動状態においては、係止装置3によって、天井19側において防煙垂れ壁2の板面2aが横方向に延長する状態、即ち、天井19側において防煙垂れ壁2の下側の板面2aが水平面上又は略水平面上に位置されるように設定される。
例えば、天井面20aとなる防煙垂れ壁2の下側の板面2aと天井面20aとなる天井板20の下側の板面とが同一水平面上に位置されたり、あるいは、天井面20aとなる防煙垂れ壁2の下側の板面2aと天井面20aとなる天井板20の下側の板面とが互いに平行な水平面上に位置されて、防煙垂れ壁2が天井板として機能するように設定される。
係止装置3は、例えば、
図5の紙面と直交する方向の一方の端部側に位置される一方端部側の防煙垂れ壁装置100に設けられた自動閉鎖装置3Aと、当該一方端部側の防煙垂れ壁装置100以外のその他の各防煙垂れ壁装置100,100…にそれぞれ設けられたキャッチ3B,3B…とで構成される。
自動閉鎖装置3Aは、一方端部側の防煙垂れ壁装置100の防煙垂れ壁2の他端22側を係止して当該防煙垂れ壁2の下側の板面2aが横方向に延長する状態となるように当該防煙垂れ壁2を維持するとともに、当該係止状態を電気的に解除できるように構成された図外の係止手段を備え、火災時において、煙感知器25からの解除信号に基づいて自動閉鎖装置3A内の制御手段が当該係止手段による係止状態を解除するように構成されているものである。当該係止手段による係止状態が解除された場合、防煙垂れ壁2が一端21側を回転中心として下方に向けて回転して垂れ下がる。
各防煙垂れ壁装置100,100…のキャッチ3B,3B…は、隣の防煙垂れ壁装置100の防煙垂れ壁2の他端22側と図外の係止解除用のワイヤで繋がれている。
キャッチ3Bは、その他の各防煙垂れ壁装置100,100…にそれぞれ設けられた防煙垂れ壁2の他端22側に設けられたキャッチ受3Cに係止して当該防煙垂れ壁2の下側の板面2aが横方向に延長する状態となるように当該防煙垂れ壁2を維持する。そして、火災時において、一端側の防煙垂れ壁装置100の自動閉鎖装置3Aによる係合状態が解除された防煙垂れ壁2が垂れ下がった場合に、当該防煙垂れ壁2の他端22側と当該一端側の防煙垂れ壁装置100の隣の防煙垂れ壁装置100のキャッチ3Bとに繋がれた図外の係止解除用のワイヤによって当該キャッチ3Bが
図5の左側に移動することで、キャッチ3Bとキャッチ受3Cとの係止状態が解除される。従って、一端側の防煙垂れ壁装置100の隣の防煙垂れ壁装置100の防煙垂れ壁2が垂れ下がる。以後、同様に、順次、隣の防煙垂れ壁装置100のキャッチ3Bとキャッチ受3Cの係止状態が解除されて防煙垂れ壁2が垂れ下がる動作が、連動して行われることで、各防煙垂れ壁装置100,100…の各防煙垂れ壁2,2…が、一端21側を回転中心として下方に向けて回転して垂れ下がって、作動状態に設定されることになる。
以上のように、火災時においては、一端側の防煙垂れ壁装置100の防煙垂れ壁2から順番に隣り合う各防煙垂れ壁装置100,100…の防煙垂れ壁2の係止状態が解除されていくことにより、各防煙垂れ壁装置100,100…の各防煙垂れ壁2,2…が、一端21側から他端22側に向けて垂れ下がった作動状態になる。
即ち、自動閉鎖装置3A、及び、キャッチ3Bは、共に、防煙垂れ壁2の他端22側を係止する手段であるが、自動閉鎖装置3Aは、例えば天井側の設けられた煙感知器25が煙を感知した場合に当該煙感知器25から出力される解除信号を受けて電気的に防煙垂れ壁2を開放する電気制御式の係止手段であり、キャッチ3Bは、隣の防煙垂れ壁2の動きに連動して機械的に防煙垂れ壁2を開放する機械式の係止手段である。
尚、当該自動閉鎖装置の「閉鎖」の意味は、防煙垂れ壁2の他端22側の係止を解除して防煙垂れ壁2を作動させることを意味しており、いわゆるシャッターの自動閉鎖装置に合わせた名称となっている。
つまり、「閉鎖」はシャッター等が閉鎖して火や煙を留める区画を作ると言う意味で防災装置が作動する動作を示す用語として用いられる。当該防煙垂れ壁2の場合、防煙垂れ壁2の下方が空間となるので、閉鎖されるわけではないが、シャッターと共通の用語を用いて自動閉鎖装置を呼ばれているものである。
防煙垂れ壁設定手段4は、一端21側を回動中心として下方に回動した当該防煙垂れ壁2を垂直状態に維持して防煙垂れ壁2Aとして機能するように設定するものである。
当該防煙垂れ壁設定手段4は、ショックアブソーバ(ガススプリング)101と、ばね102と、ねじ103と、を備え、火災発生の際に、防煙垂れ壁2の一端21側を回動中心として下方に回動して垂れ下がった当該防煙垂れ壁2の板面2aを垂直な状態に維持することにより、当該防煙垂れ壁2を作動状態に設定する手段である。
ショックアブソーバ101は、防煙垂れ壁2の回動動作時の衝撃を吸収するための手段であり、例えば、一端側としてのシリンダ基端側が、防煙垂れ壁装置100の装置基台110に設けられたブラケット111に回転可能に連結されるとともに、他端側としてのピストン先端側が、防煙垂れ壁2の他端22側に回転可能に連結されている。
ばね102は、一端側がブラケット111に回転可能に連結され、他端側がショックアブソーバ101のシリンダ側に連結された引張コイルバネである。
当該ばね102は、防煙垂れ壁2の回転降下時の初期時の急激な降下を防ぐとともに、防煙垂れ壁2が垂直になるようにショックアブソーバ102を所定位置に維持する手段である。
また、当該ばね102は、一端側の回転中心軸102cが、ヒンジ23の回転中心軸とずれるように設置されている。これにより、防煙垂れ壁2の板面2aが横方向に延長する状態から防煙垂れ壁2の他端22側が下方に回動する際(つまり、
図5の実線で示した非作動状態の防煙垂れ壁2が
図5の一点鎖線で示した作動状態の防煙垂れ壁2となるように回動する際)には、ばね102の引っ張り力によって、防煙垂れ壁2に力F1(
図5において時計回りの力F1)が付与され、また、防煙垂れ壁2が下方に回動した状態から防煙垂れ壁2の板面2aが横方向に延長する状態に回動する際(つまり、
図5の一点鎖線状態の防煙垂れ壁2が実線状態の防煙垂れ壁2となるように回動する際)には、ばね102の引っ張り力によって、防煙垂れ壁2に力F2(
図5においての反時計回りの力F2)が付与されるようになっている。
ねじ103は、例えば、ヒンジ23の上方側に位置において、下方に回動した状態の防煙垂れ壁2の一端側に先端103tが接触して、下方に回動した状態の防煙垂れ壁2に力F2(
図5においての反時計回りの力F2)を付与するものである。
また、
図5に示す防煙垂れ壁装置100によれば、煙感知器25が煙を感知して、防煙垂れ壁2が一端21側のヒンジ50を回動中心として下方に回動した際には、ばね102の引っ張り力によって、防煙垂れ壁2に力F1が付与されるとともに、ねじ103の先端103tが防煙垂れ壁2の一端21側に接触して防煙垂れ壁2に力F2が付与されることによって、板面2aが垂直状態に維持された防煙垂れ壁2Aが形成される。
即ち、
図5に示した防煙垂れ壁装置100は、上述した防煙垂れ壁設定手段4を備えていることにより、火災の際に係止装置3が解除された場合に、防煙垂れ壁2が一端21側のヒンジ23を回動中心として下方に回動し、防煙垂れ壁2が一端21側から他端22側に向けて垂れ下がって当該防煙垂れ壁2の板面2aが垂直状態に維持される防煙垂れ壁2が形成されるように構成されているものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の特許文献1に開示された防煙垂れ壁装置や
図5に示した防煙垂れ壁装置100においては、天井側に位置される非作動状態と天井側から垂れ下がる作動状態とに設定される防煙垂れ壁は、同じ大きさであるため、天井側において、非作動状態の防煙垂れ壁を設置するための設置スペースが必要になる。即ち、天井側において、作動状態の防煙垂れ壁と同じ大きさ以上の設置スペースが必要となるため、装置が大型化してしまうという課題があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解消すべく、非作動状態の防煙垂れ壁を設置するための設置スペースの省スペース化が図れ、装置の小型化を実現できる防煙垂れ壁装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る防煙垂れ壁装置は、天井側に位置される非作動状態と天井側から垂れ下がる作動状態とに設定される防煙垂れ壁を備えた防煙垂れ壁装置であって、防煙垂れ壁は、非作動状態においては、天井側において面が横方向に延長するように折り畳まれた状態に維持され、かつ、作動状態においては、折り畳まれた状態から展開して面が上下方向に延長する壁面を形成するように構成されたことを特徴とする。
また、防煙垂れ壁は、第1の回動手段を介して一端側が天井側に回動可能に構成された第1の板状部材と、第2の回動手段を介して他端側が第1の板状部材の他端側に回動可能に設けられた第2の板状部材とを備え、防煙垂れ壁は、非作動状態においては、第2の板状部材が第2の回動手段を介して一端側に折り返されて第1の板状部材の下方に位置されて第1の板状部材の板面と第2の板状部材の板面とが互いに対向して横方向に延長する状態とされて、かつ、第1の板状部材の他端側が係止装置により係止されたとともに、第2の板状部材の一端側と第1の板状部材の一端側とが吸着手段を介して吸着された状態に維持され、かつ、係止装置による係止が解除されて、第1の板状部材が第1の回動手段を介して回動した場合に、第2の板状部材の一端側と第1の板状部材の一端側との吸着が解除されて、第2の板状部材が第2の回動手段を介して回動することにより、第1の板状部材の板面と第2の板状部材の板面とが連続して上下方向に延長する作動状態となるように構成されたことを特徴とする。
また、防煙垂れ壁は、シート材により構成され、非作動状態においては、シート材が重畳状態に折り畳まれてシート材のシート面が横方向に延長する状態となるように維持され、作動状態においては、シート材が展開されてシート材のシート面が上下方向に延長する状態となるように構成されたことを特徴とする。
本発明に係る防煙垂れ壁装置によれば、非作動状態の防煙垂れ壁を設置するための設置スペースの省スペース化が図れ、装置の小型化を実現できる防煙垂れ壁装置を提供できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】防煙垂れ壁装置を示す断面図(実施形態1)。
【
図2】防煙垂れ壁装置の動作説明図(実施形態1)。
【
図3】防煙垂れ壁装置を示す正面図(実施形態2)。
【
図4】防煙垂れ壁装置の動作説明図(実施形態2)。
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施形態1
図1及び
図2に基づいて実施形態1に係る防煙垂れ壁装置1について説明する。尚、
図1及び
図2は断面図であるが、断面ハッチングは省略してある。
図1に示すように、実施形態1に係る防煙垂れ壁装置1は、天井19側に位置される非作動状態と天井19側から垂れ下がる作動状態とに設定される防煙垂れ壁5を備え、当該防煙垂れ壁5は、非作動状態においては、天井側において面5a,5bが横方向に延長するように折り畳まれた状態に維持され、かつ、作動状態においては、折り畳まれた状態から展開して面5a,5bが上下方向に延長する壁面を形成するように構成されている。
実施形態1に係る防煙垂れ壁装置1は、
図5で説明した従来の防煙垂れ壁装置100と同様に、例えばユニット化されており、
図1の紙面と直交する方向に沿って、複数のユニット化された防煙垂れ壁装置1,1…が連続して並ぶように配置されて天井19側に設置されている。
尚、
図1において、
図5で説明した従来の防煙垂れ壁装置100の構成部分と同一部分又は相当部分については、同一符号を付して、その説明を省略する。
【0009】
防煙垂れ壁5は、第1の回動手段50を介して一端側が天井19側に回動可能に構成された第1の板状部材5Aと、第2の回動手段51を介して他端側が第1の板状部材5Aの他端側に回動可能に設けられた第2の板状部材5Bとを備えて構成される。
第1の板状部材5A及び第2の板状部材5Bは、例えば、鋼板などの金属により構成される。
尚、一端側、及び、他端側は、
図1に示した方向と定義して説明するものとする。
【0010】
即ち、防煙垂れ壁5は、第1の板状部材5Aの他端側と第2の板状部材5Bの他端側とが第2の回動手段51を介して連結されており、非作動状態においては、第2の板状部材5Bが第2の回動手段51を介して一端側に折り返されて第1の板状部材5Aの下方に位置されて第1の板状部材5Aの板面と第2の板状部材5Bの板面とが互いに対向して横方向に延長する状態とされて、かつ、第1の板状部材5Aの他端側が係止装置3により係止されたとともに、第2の板状部材5Bの一端側と第1の板状部材5Aの一端側とが吸着手段としての磁石52を介して吸着された状態に維持されている。
例えば、当該防煙垂れ壁5は、非作動状態においては、第1の板状部材5Aの面5aとなる板面と第2の板状部材5Bの面5bとなる板面とが水平面に沿って延長して上下で互いに平行に対向するように、第2の板状部材5Bが第2の回動手段51を介して一端側に折り返されて(折り畳まれて)、第2の板状部材5Bが第1の板状部材5Aの下に折り重なる状態に維持されている。
そして、火災時において、係止装置3による係止が解除されて、防煙垂れ壁5が第1の回動手段50を介して回動した場合に、吸着解除手段53により、第2の板状部材5Bの一端側と第1の板状部材5Aの一端側との吸着が解除されて、第2の板状部材5Bが第2の回動手段51を介して回動することにより、第1の板状部材5Aの面5aを構成する板面と第2の板状部材5Bの面5bを構成する板面とが連続して上下方向に延長した壁面を形成する作動状態となるように構成される。
例えば、当該防煙垂れ壁5は、作動状態においては、第1の板状部材5Aの壁面を構成する面5aとなる板面と第2の板状部材5Bの壁面を構成する面5bとなる板面とが連続して垂直面に沿って延長した状態となるように構成される。
【0011】
第1の板状部材5A及び第2の板状部材5Bの具体的な構成を説明する。
尚、ここでは、便宜上、
図1(a)に示した防煙垂れ壁5の非作動状態での第1の板状部材5A及び第2の板状部材5Bの形状について説明するものとする。
図1(a)に示すように、第1の板状部材5Aは、例えば矩形状の板面(面5a)が水平面に沿って延長するように位置された基板55と、基板55の一端側に設けられた吸着部56と、基板55の他端側に設けられた第1係合部57とを備える。
図1(c)に示すように、吸着部56は、基板55の一端より下方に延長する立下がり片56aと、立下がり片56aの下端より他端側に延長する磁石取付部56bと、磁石取付部56bの他端より上方に延長する立上がり片56cと、磁石取付部56bの下面に取付けられた磁石52とを備えて構成される。
図2(a)に示すように、第1係合部57は、基板55の他端より下方に延長する立下がり片57aと、立下がり片57aの下端より一端側に向けて水平面に沿って延長する折り返し板部57bと、折り返し板部57bの一端より上方及び他端側に延長するように湾曲する湾曲係合部57cとを備えて構成される。
【0012】
第2の板状部材5Bは、矩形状の板面(面5b)が水平面に沿って延長するように位置された基板60と、基板60の一端側に設けられた被吸着部61及び吸着解除部材62と、基板60の他端側に設けられた第2係合部63とを備える。
被吸着部61は、第1の板状部材5Aの磁石取付部56bに設けられた磁石52と対向する基板60の一端側の板面部により構成される。
吸着解除部材62は、基板60の一端より上方に延長する立上がり片により構成される。吸着解除部材62を構成する当該立上がり片は、天井19側に設けられた吸着解除面64よりも一端側に位置するように設けられる。
当該吸着解除部材62と吸着解除面64とにより吸着解除手段53が構成される。
図2(a)に示すように、第2係合部63は、基板60の他端より上方に延長する立上がり片63aと、立上がり片63aの上端より他端側に向けて水平面に沿って延長する板面部63bと、板面部63bの他端より下方及び一端側に延長するように湾曲する湾曲係合部63cと、湾曲係合部63cの延長端より上方に延長する係止片63dとを備えて構成される。
【0013】
図1(a)に示すように、第1の回動手段50は、例えば、ヒンジであり、当該ヒンジの一方の羽根50aが天井19側に固定され、当該ヒンジの他方の羽根50bが第1の板状部材5Aの基板55の他端側に固定されていることで、当該第1の板状部材5Aは、面5aとなる板面が、例えば、水平面に沿って延長する状態と垂直面に沿って延長する状態とに、90°回転可能に構成されている。
【0014】
第2の回動手段51は、例えば、互いに係合する上述した第1の板状部材5Aの他端側に形成された第1係合部57と第2の板状部材5Bの他端側に形成された第2係合部63とで構成される。
【0015】
実施形態1に係る防煙垂れ壁装置1の動作について説明する。
図1(a)に示すように、防煙垂れ壁5は、非作動状態においては、係止装置3によって第1の板状部材5Aの基板55の板面(面5a)が水平面に沿って延長する状態となるように維持されて、かつ、第2の板状部材5Bの被吸着部61が第1の板状部材5Aの吸着部56の磁石52に吸着された状態となっていることにより、第1の板状部材5Aと第2の板状部材5Bとが第2の回動手段51の部分で折り返されて折り重なるように折り畳まれている。即ち、防煙垂れ壁5は、非作動状態においては、上側に位置される第1の板状部材5Aの基板55の板面(面5a)と下側に位置される第2の板状部材5Bの基板60の板面(面5b)とが水平面に沿って平行に対向する状態に維持されている。
そして、火災の発生の際に、煙感知器25から出力される解除信号aに基づいて、又は、手動操作に基づいて出力される解除信号に基づいて、係止装置3による係止が解除された場合には、防煙垂れ壁5は、第1の回動手段50を介して下方に回動する。
この回動時において、第2の板状部材5Bの一端側に設けられた吸着解除部材62が天井19側の吸着解除面64に接触して当該吸着解除面64からの反力を受けることによって、第2の板状部材5Bの被吸着部61と第1の板状部材5Aの磁石52との吸着状態が解除されて、
図2(b)に示すように、湾曲係合部57cと湾曲係合部63cとが係合しあいながら、第2の板状部材5Bが第2の回動手段51を介して回動する。
つまり、防煙垂れ壁5が
図2(a)に示す非作動状態から、
図2(b)に示すように、第1の回動手段50を介して下方に回動するとともに、第2の板状部材5Bが第2の回動手段51を介して回動する。そして、
図2(c)に示すように、第2係合部63の係止片63dの内面63uと第1係合部57の湾曲係合部57cの先端縁面57tとが係止状態となることにより、第1の板状部材5Aの基板55の板面(面5a)と第2の板状部材5Bの基板60の板面(面5b)とが、
図1(b)に示すように、上下方向に延長する状態、即ち、防煙垂れ壁5が作動状態に設定されることになる。
【0016】
防煙垂れ壁5は、作動状態において、例えば、天井面20aから下方に50cm以上突出させる。
実施形態1に係る防煙垂れ壁装置1によれば、例えば、作動状態で防煙垂れ壁5が天井面20aから下方に50cm~60cmm程度突出させる構成とした場合において、非作動状態においては、防煙垂れ壁5の一端と他端との間の長さ寸法を、作動状態での上下長さ寸法50cm~60cmmの1/2程度に抑えることができる。
即ち、実施形態1に係る防煙垂れ壁装置1によれば、作動状態において壁面を構成する面5a,5bを備えた2つの板状部材である第1の板状部材5Aと第2の板状部材5Bとが、非作動状態において第2の回動手段51を介して折り重なるように折り畳まれた状態に維持される構成としたので、非作動状態の防煙垂れ壁5を設置するための設置スペースの省スペース化が図れ、装置の小型化を実現できる防煙垂れ壁装置1を提供できるようになった。
【0017】
また、実施形態1に係る防煙垂れ壁装置1によれば、防煙垂れ壁5の作動状態において、
図2(c)に示すように、第2係合部63の係止片63dの内面63uと第1係合部57の湾曲係合部57cの先端縁面57tとが密着した係止状態に維持されるため、火災時において、第2の板状部材5Bと第1の板状部材5Aとの間を介した煙漏れ防止効果の高い装置を提供できるようになる。
【0018】
尚、実施形態1に係る防煙垂れ壁装置1において、第2の回動手段51は、第1の板状部材5Aの他端側と第2の板状部材5Bの他端側とを連結して第1の板状部材5Aと第2の板状部材5Bとを互いに回動可能とする構成であれば、どのような手段でも良く、例えば、ヒンジにより構成されていてもよい。
【0019】
また、実施形態1に係る防煙垂れ壁装置1においては、防煙垂れ壁5の回転降下時の衝撃を緩和するための衝撃緩和手段を備えない構成としても構わないが、当該衝撃緩和手段を備えた構成とする場合は、例えば、
図5の従来装置で説明した防煙垂れ壁設定手段4を衝撃緩和手段として備えた構成としたり、あるいは、衝撃緩和手段としてのショックアブソーバ(ガススプリング)を備えた構成としたり、あるいは、第1の回動手段50としてのヒンジにダンパー性能を設けた衝撃緩和手段を備えた構成とすればよい。
【0020】
実施形態2
図3,
図4に示すように、実施形態2に係る防煙垂れ壁装置1は、防煙垂れ壁7が、シート材70により構成され、非作動状態においては、シート材70が幾重にも折り重なった重畳状態に折り畳まれてシート材70のシート面が横方向に延長する状態となるように維持され、作動状態においては、シート材70が展開されてシート材70のシート面が垂直面に沿って上下方向に延長する状態となるように構成されている。
【0021】
実施形態2に係る防煙垂れ壁装置1は、例えば、
図3に示すように、上述したシート材70により構成された防煙垂れ壁7と、防煙垂れ壁7を重畳状態と展開状態とに変更可能に支持する支持部材71と、左右の支持部材71,71を上下方向にガイドする左右のガイドレール80,80とを備えて構成される。
【0022】
シート材70としては、不燃性及び可撓性を有したシート材を用いる。
【0023】
ガイドレール80は、作動状態の防煙垂れ壁7の左右の側縁に設けられた支持部材71と対向する左右の壁面に、それぞれ設けられる。
【0024】
支持部材71は、複数の金属板72,72…が、回転支持部73,73…を介して、回動可能なように連結されている。
回転支持部73は、上下方向において互いに隣り合うように配置される一方の金属板72の下端部に設けられた管部と他方の金属板72の上端部に設けられた管部とこれら管部の中空部を貫通するように設けられた軸部とを備えたヒンジと同様な構成であり、軸部を回転中心として一方の金属板72及び他方の金属板72が回転可能に構成されている。
即ち、支持部材71は、複数の金属板72,72…が各回転支持部73,73…を境界にして折り重なるように折り畳まれた重畳状態と、複数の金属板72,72…の板面が垂直面に沿って上下方向に連続して延長する展開状態とに設定可能に構成される。
【0025】
当該支持部材71は、上述したように、少なくとも、左側の壁面に設けられた左側のガイドレール80に対応してシート材70のシート面の左端側に取付けられた左側の支持部材71と、右側の壁面に設けられた右側のガイドレール80に対応してシート材70のシート面の右端側に取付けられた右側の支持部材71とを備える。
また、例えば左右のガイドレール80,80間に亘って設けられるシート材70の左右間寸法に応じて、シート材70のシート面の左右間において、中間側の支持部材71が1つ以上取付けられている。
尚、
図3においては、中間側の支持部材71を1つだけ備えた構成のものを例示している。
【0026】
左側の支持部材71、右側の支持部材71は、例えば、最上端の回転支持部73の軸部がガイドレール80に固定されている。
さらに、
図4に示すように、左側の支持部材71、右側の支持部材71は、上から奇数番目(3番目、5番目(最下端の回転支持部))の回転支持部73の軸部の一端側がガイドレール80内を移動可能なようにガイドレール80内に配置されている。
また、中間側の支持部材71の最上端の回転支持部73の軸部が天井19側の固定部に固定されている。
【0027】
以上のように構成された実施形態2に係る防煙垂れ壁装置1の動作を
図4に基づいて説明する。
尚、
図4の動作説明図は、
図3のA-A断面に相当する位置においての動作状態を図示している。
実施形態2に係る防煙垂れ壁装置1は、非作動状態においては、
図4(a)に示すように、左側の支持部材71、右側の支持部材71、中間側の支持部材71が、天井19側において重畳状態に折り畳まれるのに追随してシート材70も重畳状態に折り畳まれて当該シート材70のシート面が横方向に延長する状態となるように図外の係止装置により維持されている。当該係止装置は、例えば、
図5図,
図1で説明したような、自動閉鎖装置3Aとキャッチ3B,3B…とで構成された係止装置3、あるいは、当該係止装置3に類似する構成の係止装置を用いれば良い。
そして、火災の発生の際に、煙感知器から出力される解除信号に基づいて、又は、手動操作に基づいて出力される解除信号に基づいて、係止装置による係止が解除された場合に、
図4(b)に示すように、左側の支持部材71、及び、右側の支持部材71のガイドレール80内に位置された下側の各回転支持部73,73…の軸部がガイドレール80内を下方に移動し、最終的に、
図4(c)に示すように、左側の支持部材71、右側の支持部材71、中間側の支持部材71の複数の金属板72,72…の板面が上下方向に連続して延長する展開状態に変化するのに追随して、シート材70のシート面が水平面に沿って上下方向に延長する作動状態に設定される。
【0028】
実施形態2に係る防煙垂れ壁装置1によれば、不燃性及び可撓性を有したシート材70により構成され、非作動状態においては、シート材70が重畳状態に折り畳まれてシート材70のシート面が横方向に延長する状態となるように維持され、作動状態においては、シート材70が展開されてシート材70のシート面が水平面に沿って上下方向に延長する状態となるように構成された防煙垂れ壁7を備えたので、非作動状態においては、防煙垂れ壁7の一端と他端との間の長さ寸法を、大幅に抑えることができる。
従って、実施形態2に係る防煙垂れ壁装置1によれば、非作動状態の防煙垂れ壁7を設置するための設置スペースの省スペース化が図れ、装置の小型化を実現できる防煙垂れ壁装置1を提供できるようになる。
【0029】
また、
図3,
図4に示すように、防煙垂れ壁7の下側の板面を覆う下側化粧板74や防煙垂れ壁7の下端を覆う下端化粧板75を設けるようにすれば、意匠性を向上させることができるとともに、これら化粧板の重みによって正しく作動状態に設定されやすくなるので好ましい。
尚、これら下側化粧板74や下端化粧板75を備えない構成であってもよい。
【0030】
また、実施形態2に係る防煙垂れ壁装置1は、作動状態において、左右のガイドレール80,80間に亘って連続して延長する複数の金属板の板面が上下方向に隣り合うように配置されて、上下で隣り合う金属板が、ヒンジなどの回転支持部を介して、回動可能なように連結された構成の防煙垂れ壁を備えた防煙垂れ壁装置であってもよい。
【0031】
つまり、左右のガイドレール80,80間に亘って連続して延長する金属板が、上下方向に並ぶように複数設けられて構成され、非作動状態においては、複数の金属板が重畳状態に折り畳まれて各金属板の板面が横方向に延長する状態となるように維持され、作動状態においては、複数の金属板が展開されて複数の金属板の板面が水平面に沿って上下方向に延長する状態となるように構成された防煙垂れ壁を備えた防煙垂れ壁装置であってもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 防煙垂れ壁装置
3 係止装置
5a,5b 面(板面,壁面)
5,7 防煙垂れ壁
5A 第1の板状部材
5B 第2の板状部材
19 天井
50 第1の回動手段
51 第2の回動手段
52 磁石(吸着手段)
70 シート材(防護垂れ壁)