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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135995
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】電子線照射装置
(51)【国際特許分類】
   G21K 5/10 20060101AFI20240927BHJP
   G21K 5/00 20060101ALI20240927BHJP
   B05C 9/12 20060101ALI20240927BHJP
   B29C 35/08 20060101ALI20240927BHJP
   G21K 5/04 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G21K5/10 S
G21K5/00 A
B05C9/12
B29C35/08
G21K5/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046937
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000110343
【氏名又は名称】トリニティ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】小塚 裕
(72)【発明者】
【氏名】鍋島 淳男
(72)【発明者】
【氏名】田村 諭
(72)【発明者】
【氏名】藤原 茂樹
【テーマコード(参考)】
4F042
4F203
【Fターム(参考)】
4F042AB00
4F042BA08
4F042BA10
4F042DB52
4F042DF16
4F042DF28
4F042DF29
4F203AA36
4F203AB03
4F203AR07
4F203DA12
4F203DB01
4F203DC09
4F203DJ11
4F203DM12
4F203DN01
(57)【要約】
【課題】照射室の搬入経路及び搬出経路の閉鎖を行わず照射室内の窒素濃度を維持しつつX線の漏洩を抑制可能な電子線照射装置を提供すること。
【解決手段】本開示に係る電子線照射装置は、ワークに電子線を照射する中空状の略直方体の照射室と、照射室の内部上方に配置された窒素を供給する窒素供給部と、照射室の底面の一方側に連結され、ワークを照射室に搬入するための搬入経路と、照射室の底面の他方側に連結され、ワークを照射室から搬出するための搬出経路と、を備え、照射室の底面より下側に設けられた搬入経路および搬出経路はそれぞれ、照射室に向かって延在する第1の経路と、第1の経路の端部から上方に向かって延在する第2の経路と、第2の経路の端部から照射室の側面に沿って平行に延在する第3の経路と、第3の経路の端部から上方に向かって延在する第4の経路とを少なくとも備え、第4の経路と、照射室の底面とが連結されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子線をワークに照射して当該ワークを硬化するための電子線照射装置であって、
前記電子線照射装置は、
前記ワークに前記電子線を照射する中空状の略直方体の照射室と、
前記照射室の内部上方に配置された窒素を供給する窒素供給部と、
前記照射室の底面の一方側に連結され、前記ワークを前記照射室に搬入するための搬入経路と、
前記照射室の底面の他方側に連結され、前記ワークを前記照射室から搬出するための搬出経路と、を備え、
前記照射室の底面より下側に設けられた前記搬入経路および前記搬出経路はそれぞれ、
前記照射室に向かって延在する第1の経路と、
前記第1の経路の端部から上方に向かって延在する第2の経路と、
前記第2の経路の端部から前記照射室の側面に沿って平行に延在する第3の経路と、
前記第3の経路の端部から上方に向かって延在する第4の経路と、を少なくとも備え、
前記第4の経路と、前記照射室の底面とが連結されている、
電子線照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は電子線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子線をワークに照射して当該ワークを硬化するための電子線照射装置が知られている。特許文献1には、搬送される被照射物(ワーク)を、90~180度の角度で搬送の向きを変えてワークに電子線を照射する照射室内に導く搬送ロールと、照射室内において搬送されるワークに電離放射線を照射する電離放射線発生装置と、照射後のワークを70度以上の角度で搬送の向きを変える搬送ロールとを有する電離放射線照射装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-37138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ワークに電子線を照射する際に、照射室の内部から酸素を除去するために窒素が充填される。また、ワークに電子線が照射されるとX線が発生する。照射室からの窒素とX線の漏洩を防ぐために照射室は遮蔽する必要がある。発明者らは、照射室へワークを搬入する搬入経路の搬入口と、搬出経路の搬出口とにシャッター等を設けず遮蔽しない場合は窒素とX線が照射室から漏洩するおそれがあり、シャッター等を設け照射室を遮蔽した場合はシャッター開閉に時間を要するためサイクルタイムが増加するという問題を見出した。
【0005】
本開示は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、電子線の照射室に連結された搬入経路および搬出経路の閉鎖を行うことなく照射室内部の窒素濃度を維持しつつX線の漏洩を抑制可能な電子線照射装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る電子線照射装置は、電子線をワークに照射して当該ワークを硬化するための電子線照射装置であって、前記電子線照射装置は、前記ワークに前記電子線を照射する中空状の略直方体の照射室と、前記照射室の内部上方に配置された窒素を供給する窒素供給部と、前記照射室の底面の一方側に連結され、前記ワークを前記照射室に搬入するための搬入経路と、前記照射室の底面の他方側に連結され、前記ワークを前記照射室から搬出するための搬出経路と、を備え、前記照射室の底面より下側に設けられた前記搬入経路および前記搬出経路はそれぞれ、前記照射室に向かって延在する第1の経路と、前記第1の経路の端部から上方に向かって延在する第2の経路と、前記第2の経路の端部から前記照射室の側面に沿って平行に延在する第3の経路と、前記第3の経路の端部から上方に向かって延在する第4の経路と、を少なくとも備え、前記第4の経路と、前記照射室の底面とが連結されている。
【0007】
本開示に係る電子線照射装置では、窒素供給部と、照射室の底面より下側に設けられた搬入経路および搬出経路がそれぞれ、照射室に向かって延在する第1の経路と、第1の経路の端部から上方に向かって延在する第2の経路と、第2の経路の端部から照射室の側面に沿って平行に延在する第3の経路と、第3の経路の端部から上方に向かって延在する第4の経路と、を少なくとも備え、第4の経路と、照射室の底面とが連結されている。照射室に窒素を層流状に連続供給することによって照射室内の窒素濃度を維持しつつ、ワークの搬送方向が複数回変更されることにより、照射室内で発生したX線が複数回反射されて減衰するため、X線の漏洩も抑制することができる。よって、電子線の照射室に連結された搬入経路および搬出経路の閉鎖を行うことなく照射室内部の窒素濃度を維持しつつX線の漏洩を抑制可能な電子線照射装置を提供できる。
【発明の効果】
【0008】
本開示により、電子線の照射室に連結された搬入経路および搬出経路の閉鎖を行うことなく照射室内部の窒素濃度を維持しつつX線の漏洩を抑制可能な電子線照射装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態に係る電子線照射装置を示す斜視図である。
図2】実施の形態に係る電子線照射装置を示す正面図および平面断面図である。
図3】実施例および比較例に係る電子線照射装置内の窒素濃度を示す模式図およびグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、図に示した右手系xyz座標は、構成要素の位置関係を説明するための便宜的なものである。特に言及のない限り、z軸プラス向きが鉛直上向きである。また、xy平面が水平面である。
【0011】
<実施の形態>
図1は、実施の形態に係る電子線照射装置1を示す斜視図である。図1に示すように、本実施の形態に係る電子線照射装置1は、電子線をワークに照射して当該ワークを硬化するための装置である。ワークは例えば、電子線によって硬化する塗料によって被覆された塗装物や、電子線によって硬化する塗装フィルム等である。
【0012】
図1に示すように、電子線照射装置1は、照射室10、窒素供給部11、搬入経路20、搬出経路30を備える。照射室10は、ワークに電子線を照射する空間であり、中空状の略直方体状である。照射室10、搬入経路20及び搬出経路30の各内表面は、X線を吸収可能な鉛等の材料で被覆されている。
【0013】
電子線照射による硬化反応では、表層部の特性が重要である。照射室10内部に酸素が残存した場合、硬化反応が阻害され、表層部の特性に影響が生じるおそれがある。したがって、ワークへの電子線照射の照射雰囲気は、例えば窒素雰囲気である。すなわち、ワークへの電子線照射の際に、照射室10内には窒素が充填されている。
【0014】
図1に示すように、窒素供給部11は照射室10の内部上方に配置されている。窒素供給部11は、照射室10内に窒素を充填可能な経路を備える。不図示の窒素ガスが窒素供給部11から照射室10内へと層流状に連続的に供給され、照射室10内に充填される。
【0015】
続いて図1と併せて図2も参照し、搬入経路20及び搬出経路30について説明する。図2は、実施の形態に係る電子線照射装置を示す正面図(図2a)および平面断面図(図2b)である。図1及び図2に示すように、搬入経路20及び搬出経路30は、照射室10の底面10aより下側(z軸負側)に設けられている。
【0016】
図1に示すように、搬入経路20は、ワークを照射室10に搬入するための経路である。搬入経路20は、照射室10の底面10aの一方側(x軸負側)に連結されてもよい。図2に示すように、搬出経路30は、ワークを照射室10から搬出するための経路である。搬出経路30は、照射室10の底面10aの他方側(x軸正側)に連結されてもよい。
【0017】
搬入経路20と搬出経路30とは同様の構成であってもよいし、正面視および平面視で左右対称の構成(図2参照)を備えてもよい。図1及び図2に示すように、搬入経路20は少なくとも第1の経路21、第2の経路22、第3の経路23、第4の経路24を備える。搬出経路30は少なくとも第1の経路31、第2の経路32、第3の経路33、第4の経路34を備える。第1の経路21,31、第2の経路22,32、第3の経路23,33、第4の経路24,34、はそれぞれ、例えば略角筒状である。各経路は、所望のワークが通過可能な程度の断面積を有する。また、各経路は、ワークを搬送可能なコンベア機構や昇降機構等を備える。
【0018】
図1及び図2に示すように、搬入経路20は、z軸負側から順に、第1の経路21、第2の経路22、第3の経路23、第4の経路24が配置されている。第1の経路21は照射室10に向かってx軸方向に沿って延在する経路である。第1の経路21はx軸負側のyz平面が開口した搬入口21aを備える。第2の経路22は、第1の経路21の端部(x軸正側)から上方(z軸正方向)に向かって延在する経路である。第3の経路23は、第2の経路22の端部(z軸正側かつx軸負側のyz平面)から照射室10の側面10bに沿って(y軸に沿って)平行に延在する経路である。第4の経路24は、第3の経路23の端部(x軸正側かつz軸正側のxy平面)から上方(z軸正方向)に向かって延在する経路である。第4の経路24のz軸正側のxy平面と、照射室10の底面10a(xy平面)とが連結されている。
【0019】
図2(a)に示すように、搬出経路30は、z軸負側から順に、第1の経路31、第2の経路32、第3の経路33、第4の経路34が配置されている。図2(b)は、図2(a)のIIB-IIB線に沿う平面断面図である。図2(a)及び図2(b)に示すように、第1の経路31は照射室10に向かってx軸方向に沿って延在する経路である。第1の経路31はx軸正側のyz平面が開口した搬出口31aを備える。第2の経路32は、第1の経路31の端部(x軸負側)から上方(z軸正方向)に向かって延在する経路である。第3の経路33は、第2の経路32の端部(z軸正側かつx軸正側のyz平面)から照射室10の側面10cに沿って(y軸に沿って)平行に延在する経路である。第4の経路34は、第3の経路33の端部(x軸負側かつz軸正側のxy平面)から上方(z軸正方向)に向かって延在する経路である。第4の経路34のz軸正側のxy平面と、照射室10の底面10a(xy平面)とが連結されている。
【0020】
換言すると、搬入経路20及び搬出経路30は、ワークの搬送方向が90°変更される屈折部を4つ以上有する形状の経路構造であればよい。
【0021】
図1及び図2の黒矢印は、ワークが電子線照射装置1の外部から照射室10に搬入および搬出される経路を示している。まず、ワークが電子線照射装置1の照射室10へと搬入される際の搬送方向について説明する。第1の経路21の搬入口21aから搬入され、第1の経路21をx軸正方向に搬送されたワークは、第2の経路22に入る際に搬送方向が90°変更され、z軸正方向に搬送される。続いて、第3の経路23に入る際に搬送方向が90°変更され、第3の経路23の幅(x軸方向の幅)をx軸負方向に搬送された後、さらに搬送方向が90°変更され、第3の経路23内を照射室10の側面10bに沿ってy軸負方向に搬送される。続いて、第4の経路24に入る際に搬送方向が90°変更され、第3の経路23内及び第4の経路24内をx軸正方向に搬送された後、さらに搬送方向が90°変更され、z軸正方向に搬送され、照射室10へと搬送される。
【0022】
続いて、ワークが照射室10から電子線照射装置1の外部へと搬出される際の搬送方向について説明する。照射室10において電子線照射を終えたワークは、第4の経路34内をz軸負方向に搬送される。続いて搬送方向が90°変更され、第3の経路33の幅(x軸方向の幅)をx軸負方向に搬送された後、さらに搬送方向が90度変更され、第3の経路33内を照射室10の側面10cに沿ってy軸正方向に搬送され、さらに搬送方向が90度変更され、第3の経路33内をx軸正方向に搬送される。続いて、第2の経路32に入る際に搬送方向が90°変更され、z軸負方向に搬送される。続いて、第1の経路31に入る際に搬送方向が90°変更され、x軸正方向に搬送され、ワークは電子線照射装置1から搬出される。
【0023】
なお、本実施の形態では、搬入経路および搬出経路は照射室の底面のx軸正側および負側に配置されているが、照射室の底面より下側に設けられていればよいため、これに限定されるものではない。例えば、照射室の底面より下側であり、かつ、搬入経路が照射室の底面に連結されている部分と搬出経路が照射室の底面に連結されている部分とが重ならないように配置すればよい。より具体的には、例えば照射室の底面の一方側(x軸負側)に搬入経路および搬出経路の両方を設けてもよい。
【0024】
なお、本実施の形態では第2の経路22,32は照射室10の底面10aの真下に配置されているが、これに限定されない。例えば、第2の経路22,32は照射室よりx軸負側または正側に配置されてもよい。換言すると、第3の経路23,33の第4の経路24,34と連結される部分と、第4の経路24,34を照射室10の真下(z軸負側)に配置すればよく、第1の経路21,31、第2の経路22,32、第3の経路23,33の端部までは、照射室10の底面10aよりz軸負側または正側の任意の位置に配置できる。
【0025】
発明者らは、照射室へワークを搬入する搬入経路の搬入口と、搬出経路の搬出口とにシャッター等を設けず遮蔽しない場合は窒素とX線が照射室から漏洩するおそれがあり、シャッター等を設け照射室を遮蔽した場合はシャッター開閉に時間を要するためサイクルタイムが増加するという問題を見出した。
【0026】
これに対し、本開示に係る電子線照射装置では、窒素供給部と、照射室の底面より下側に設けられた搬入経路および搬出経路がそれぞれ、照射室に向かって延在する第1の経路と、第1の経路の端部から上方に向かって延在する第2の経路と、第2の経路の端部から照射室の側面に沿って平行に延在する第3の経路と、第3の経路の端部から上方に向かって延在する第4の経路と、を少なくとも備え、第4の経路と、照射室の底面とが連結されている。照射室に窒素を層流状に連続供給することによって照射室内の窒素濃度を維持できる。換言すると、照射室に窒素を層流状に連続供給することによって搬入経路の搬入口および搬出経路の搬出口からの酸素の流入を抑制し、照射室内の酸素を所望の濃度以下とすることができる。さらに、ワークの搬送方向が複数回変更されることにより、照射室内で発生したX線が複数回反射されて減衰するため、X線の漏洩も抑制することができる。よって、電子線の照射室に連結された搬入経路および搬出経路の閉鎖を行うことなく照射室内部の窒素濃度を維持しつつX線の漏洩を抑制できる。
【0027】
さらに、本開示に係る電子線照射装置では、照射室と、搬入経路および搬出経路との連結部分を閉鎖するためのシャッター等が不要である。すなわちシャッターの開閉に要する時間が不要であるため、電子線照射装置に連続的にワークを搬送する際のサイクルタイムを大幅に減少できる。
【実施例0028】
以下、実施例に基づき本開示を具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例のみに限定されるものではない。実施例および比較例では、ワークに電子線を照射する際の照射室内の窒素濃度のシミュレーションを行った。実施例では、上述の実施の形態に係る図1に示す電子線照射装置を用いた。すなわち、照射室に窒素を層流状に連続供給し、照射室の底面より下側にワークの搬送方向が変更される屈折部を4つ以上有する形状の搬入経路を有する電子線照射装置を用いた。実施例と比較例1及び2との異なる点は、搬入経路および搬出経路の配置と形状である。比較例1及び比較例2として、搬入経路が直線形状である電子線照射装置を用いた。詳細は図3を用いて後述する。
【0029】
図3は、実施例および比較例に係る電子線照射装置内の窒素濃度を示す模式図およびグラフである。図3(a)が実施例の正面模式図、図3(b)が比較例1の正面模式図、図3(c)が比較例2の正面模式図、図3(d)が図3(a)、図3(b)及び図3(c)の窒素濃度のシミュレーション結果を示すグラフである。
【0030】
図3(a)に示すように、実施例に係る電子線照射装置が備える照射室10は、照射室10に窒素を層流状に連続供給可能な窒素供給部11を備え、照射室10の底面より下側にワークの搬送方向が90°変更される屈折部を4つ以上有する形状の搬入経路20を有している。実施例に係る電子線照射装置では、図3(a)及び図3(d)に示すように、照射室10内の窒素濃度が電子線照射に必要な濃度以上に維持されているという結果を得られた。すなわち、搬入経路20の搬入口21aからの酸素の流入を抑制することができた。
【0031】
図3(b)に示すように、比較例1に係る搬入経路120は直線状であり、照射室110の底面側の側面に連結されている。搬入口121aの底面が載置される載置面Bから搬入口121aの天井面121bまでの高さをH1とする。載置面Bから照射室110の底面110aまでの高さをH2とする。比較例1では、搬入経路120を正面視で右上がりの傾斜を有するように配置し、H1>H2となるように配置した。すなわち、搬入口121aの天井面121bが照射室110の底面110aより上方側となるように搬入経路120を配置した。
【0032】
比較例1に係る電子線照射装置では、図3(b)に示すように、搬入経路120の搬入口121aから流入する酸素が多く、照射室10内の窒素濃度が電子線照射に必要な濃度未満であった。図3(d)に示すように、照射室110内の窒素濃度は、搬入経路120が照射室110の側面に連結されている比較例1では、搬入経路が照射室の底面より下側に連結されている実施例に係る電子線照射装置の照射室10内の窒素濃度に比べて低いという結果であった。
【0033】
図3(c)に示すように、比較例2に係る搬入経路220は比較例1と同様の直線状であり、照射室210の底面側の側面に連結されている。搬入口221aの底面が載置される載置面Bから搬入口221aの天井面221bまでの高さをH1とする。比較例1の高さH1と比較例2の高さH1は同じ高さである。載置面Bから照射室210の底面210aまでの高さをH3とする。比較例2では、搬入経路220を正面視で右上がりの傾斜を有するように配置し、H1=H3となるように配置した。すなわち、搬入口221aの天井面221bと照射室210の底面210aとが同じ高さになるように搬入経路120を配置した。
【0034】
比較例2に係る電子線照射装置では、図3(c)に示すように、搬入経路220の搬入口221aから酸素が流入し、照射室10内の窒素濃度が電子線照射に必要な濃度未満であった。比較例2では、搬入口221aの天井面221bと照射室210の底面210aとが同じ高さとなるように配置されている。換言すると、載置面Bから照射室210の底面210aまでの高さH3は、比較例1の載置面Bから照射室110の底面110aまでの高さH2より大きい(図3(b)参照)。当該構成により、図3(d)に示すように、照射室210内の窒素濃度は比較例1に比べて高い結果が得られた。しかし、図3(d)に示すように、照射室210内の窒素濃度は、搬入経路220が照射室210の側面に連結されている比較例2では、搬入経路が照射室の底面より下側に連結されている実施例に係る電子線照射装置の照射室10内の窒素濃度に比べて低いという結果であった。
【0035】
以上の結果より、本実施例に係る電子線照射装置は、照射室に窒素を層流状に連続供給し、照射室の底面より下側にワークの搬送方向が変更される屈折部を4つ以上有する形状の搬入経路を有することによって照射室内の窒素濃度を維持できることがわかった。よって、本実施例に係る電子線照射装置は、電子線の照射室に連結された搬入経路および搬出経路の閉鎖を行うことなく照射室内部の窒素濃度を維持することができる。
【0036】
なお、本開示は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 電子線照射装置、10、110、210 照射室、10a 底面、10b,10c 側面、11 窒素供給部、12 フィルタ、20、120、220 搬入経路、21,31 第1の経路、21a,121a,221a 搬入口、22,32 第2の経路、23,33 第3の経路、24,34 第4の経路、30 搬出経路、31a 搬出口、121b,221b 天井面、B 載置面、H1,H2,H3 高さ
図1
図2
図3