(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135996
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】車両加飾部材
(51)【国際特許分類】
B60R 13/02 20060101AFI20240927BHJP
B60K 37/00 20240101ALI20240927BHJP
B60K 35/00 20240101ALI20240927BHJP
【FI】
B60R13/02 Z
B60K37/00 Z
B60K35/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046938
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100147913
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 義敬
(74)【代理人】
【識別番号】100165423
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 雅久
(74)【代理人】
【識別番号】100091605
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100197284
【弁理士】
【氏名又は名称】下茂 力
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 康一
(72)【発明者】
【氏名】塚本 日向子
【テーマコード(参考)】
3D023
3D344
【Fターム(参考)】
3D023BA01
3D023BC01
3D023BD29
3D023BE03
3D344AA21
3D344AA22
3D344AA24
3D344AB01
3D344AC02
3D344AC27
(57)【要約】
【課題】サイドミラー等の視認部に対する、ゴースト現象の影響を小さくできる車両加飾部材を提供する。
【解決手段】車両加飾部材11は、車両10の車室15に配置され、透明部材12および視認部13と、乗員14との間に位置する部材である。車両加飾部材11は、車室15に臨む加飾面111を具備する。加飾面111は、乗員14の側から、視認部13の側に向かって、反射が少なくなるように構成される。本実施形態によれば、加飾面111が透明部材12に映り込んだ際に、透明部材12を透過した視認部13の視認性を良好に確保できる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車室に配置され、透明部材および視認部と乗員との間に位置する車両加飾部材であり、
前記車室に臨む加飾面を具備し、
前記加飾面は、前記乗員の側から、前記視認部の側に向かって、反射が少なくなるように構成されることを特徴とする車両加飾部材。
【請求項2】
前記乗員、前記加飾面、前記透明部材および前記視認部は、前記車両の幅方向に沿って、この順番で配設され、
前記乗員は、前記透明部材を透視することにより前記視認部を視認することを特徴とする請求項1に記載の車両加飾部材。
【請求項3】
前記加飾面は、第1部分と、前記第1部分よりも反射が大きい第2部分を有するグラデーション加工が施されており、
前記加飾面は、前記乗員の側から、前記視認部の側に向かって、単位面積当たりにおいて前記第2部分が占める面積が小さくなることを特徴とする請求項1に記載の車両加飾部材。
【請求項4】
前記透明部材は、サイドガラスであり、
前記視認部は、サイドミラーであることを特徴とする請求項1に記載の車両加飾部材。
【請求項5】
前記乗員は、左方側および右方側の何れか一方側の座席に着座し、
前記透明部材は、左方側および右方側の何れか他方側に配置されたサイドガラスであり、
前記視認部は、左方側および右方側の何れか他方側に配置されたサイドミラーであることを特徴とする請求項1に記載の車両加飾部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車室に配置される車両加飾部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両においてゴースト現象が発生することが知られている。ゴースト現象とは、太陽光などの光源からの光が車室内装部品に反射し、この反射光がゴーストの様にガラスに映り込むことである。ゴースト現象が発生すると、ガラス越しの乗員の視界が阻害されることがある。
【0003】
このようなゴースト現象に対して、次のような対策が施されている。例えば、車室内装部品を反射光が目立たない色とする、車室内装部品の表面における反射率が小さくなるようにグロスを下げる、車室内装部品の表面の角度を調整する、車室内装部品の表面を多面化する等の対策が考えられる。
【0004】
車両の内装部品に関する発明が、以下の特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した背景技術に係る発明では、ゴースト現象の対策として改善の余地があった。
【0007】
具体的には、車室内装部品の表面における色、形状等を変更する対策では、車室内装部品のデザイン自由度が低下し、意匠的観点における車両の訴求性が損なわれる課題があった。更に、かかる対策は、コストの上昇、重量の増加を伴う課題もあった。
【0008】
また、乗員がサイドミラーを確認する際には、サイドガラスを透過してサイドミラーを視認する。よって、サイドガラスにゴースト現象が発生した場合、ゴースト現象によりサイドミラーの視認性が低下し、車両走行時の安全性に影響を及ぼすことが考えられる。
【0009】
本発明は、このような問題点を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、サイドミラー等の視認部に対するゴースト現象の影響を小さくできる車両加飾部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の車両加飾部材は、車両の車室に配置され、透明部材および視認部と乗員との間に位置する車両加飾部材であり、前記車室に臨む加飾面を具備し、前記加飾面は、前記乗員の側から、前記視認部の側に向かって、反射が少なくなるように構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の車両加飾部材によれば、車両加飾部材が透明部材に映り込んだ際に、透明部材を透過した視認部の視認性を良好に確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両加飾部材を備えた車両を示す上面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る車両加飾部材およびその周辺部を示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る車両加飾部材を後方から見た図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る車両加飾部材を備えた車両の一部を示す上面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る車両加飾部材が前側右方サイドガラスに映り込む状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る車両加飾部材11および車両10を図面に基づき詳細に説明する。以下の説明に於いては前後上下左右の各方向を用いるが、左右とは車両10を後方から見た場合の左右である。更に、以下の説明では、同一の部材には原則的に同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。
【0014】
図1は、車両加飾部材11を備えた車両10を示す上面図である。
【0015】
車両10は、例えば乗用車であり、車体16を有する。車体16には車室15が形成され、車室15の内部には複数の座席17が配設される。ここでは、前側左方座席171が、運転者である乗員14が着座する運転者席である。前側左方座席171の前方側には、操舵手段としてのステアリングホイール、加速手段としてのアクセルペダル、制動手段としてのブレーキペダル等が配設される。即ち、車両10は、車体16の左方側にステアリングハンドル等が配設された左ハンドル車である。
【0016】
透明部材12としてのサイドガラス121は、車体16の側面に配設される。具体的には、サイドガラス121は、車体16の左方側面の前方部分および後方部分、車体16の右方側面の前方部分および後方部分に配設される。
【0017】
視認部13は、乗員14が車両10の後方側を視認するための機器である。視認部13は、例えば、サイドミラー131である。サイドミラー131は、右側サイドミラー132と、左側サイドミラー133と、を有する。
【0018】
右側サイドミラー132は、右側前方ドアの前端近傍に取り付けられる。乗員14は、右側サイドミラー132を介して、車体16の右側後方を視認できる。その際、乗員14は、前側右方サイドガラス122を透過して、右側サイドミラー132を視認する。
【0019】
左側サイドミラー133は、左側前方ドアの前端近傍に取り付けられる。乗員14は、左側サイドミラー133を介して、車体16の左側後方を視認できる。その際、乗員14は、前側左方サイドガラス123を透過して、左側サイドミラー133を視認する。
【0020】
車両加飾部材11は、車両10の車室15に配置され、前側右方サイドガラス122、および右側サイドミラー132と、乗員14との間に位置する部材である。車両加飾部材11は、ダッシュボード18の後方を向く面の、右方側に配設される。また、車両加飾部材11は、車室15に臨む加飾面111を具備する。加飾面111の構成は、
図3等を参照して後述する。
【0021】
本実施形態では、乗員14、加飾面111、前側右方サイドガラス122および右側サイドミラー132は、車両10の幅方向に沿って、この順番で、左方側から配設される。よって、乗員14は、右側サイドミラー132を視認する際には、前側右方サイドガラス122を透視する。その際、前側右方サイドガラス122に加飾面111が映り込むが、本実施形態では、加飾面111の反射を所定の形態にすることで、ゴースト現象を抑制する。係る事項は、
図5等を参照して後述する。
【0022】
図2は、車両加飾部材11およびその周辺部を示す斜視図である。ダッシュボード18の後面中央部には、例えばナビゲーションウィンドウとして機能するセンターディスプレイ20が配置される。ダッシュボード18の後面右端部には、空調風が吹き出される空調風吹出口21が配置される。ダッシュボード18の下方にはグローブボックス19が配置される。
【0023】
車両加飾部材11は、ダッシュボード18の後面部の下方部分において、左右方向に沿って長手方向を有する樹脂成形品である。車両加飾部材11は、例えば、加飾面111を構成する板状部材を、インサート形成することで製造される。車両加飾部材11は、その形状および位置の関係上、乗員14が右側サイドミラー132を視認する際に、前側右方サイドガラス122に写像を形成する。本実施形態では、車両加飾部材11の加飾面111は、乗員14が右側サイドミラー132を視認する際に、視界に与える悪影響を低減する形態とされる。係る事項は、
図3を参照して後述する。
【0024】
【0025】
前述した様に、車両加飾部材11は、後方を向く主面である加飾面111を有する。
【0026】
加飾面111は、前述した乗員14が存在する側である左方側から、前述した右側サイドミラー132が存在する側である右方側に向かって、反射が少なくなるように構成される。
【0027】
一形態として、加飾面111は、右方側に向かって反射が段階的に小さくなるグラデーション加工が施されている。具体的には、加飾面111は、第1部分112と、第2部分113と、を有するグラデーション加工が施されている。第1部分112とは、反射が小さい色から成る部分であり、例えば、黒色から成る部分である。第2部分113とは、第1部分112よりも反射が大きい色からなる部分であり、例えば、金色やオレンジ色等から成る部分である。加飾面111は、前述した乗員14の側である左方側から、前述した右側サイドミラー132の側である右方側に向かって、単位面積当たりにおいて第2部分113が占める面積が小さくなる。よって、加飾面111の左方部分は、第2部分113が密に配置されることで、反射が大きくなり高級感を演出できる。一方、加飾面111の右方部分は、第2部分113が疎に配置されることにより、反射が小さくなる。このようにすることで、後述するように、加飾面111の右方部分が、前側右方サイドガラス122に映り込むことがあっても、加飾面111の右方部分の反射が小さいことにより、ゴースト現象が発生することを抑制できる。
【0028】
ここで、加飾面111の形態として、色彩によるグラデーションを採用できる。この場合は、加飾面111の左方部分を、反射の大きい色、例えば白色系の色とする。一方、加飾面111の右方部分を、左方部分よりも反射の小さい色、例えば黒色系の色とする。係る構成であっても、上記した実施形態と同等の効果を奏することができる。
【0029】
更に、加飾面111の形態として、表面形状によるグラデーションを採用できる。具体的には、車両加飾部材11の左方部分を、反射が大きくなる表面形状、例えば突出量が大きい凹凸形状とする。一方、加飾面111の右方部分を、反射の小さい形状、例えば左方部分よりも突出量が小さい凹凸形状とする。係る構成であっても、上記した実施形態と同等の効果を奏することができる。
【0030】
図4は、車両加飾部材11を備えた車両10の一部を示す上面図であり、乗員14が右側サイドミラー132を視認する際における状況を示す。
【0031】
運転者である乗員14が、車両10の右側後方を確認する際には、前側右方サイドガラス122を透過して、右側サイドミラー132を視認する。この際の乗員14の視線を点線で示す。一方、車室15の内部には太陽光が照射されることから、前側右方サイドガラス122の内面には、加飾面111が映し出されて写像が形成される。よって、前側右方サイドガラス122において、加飾面111による写像と、乗員14の視線とが重畳する。本実施形態では、前述した様に、加飾面111の右方部分の反射を小さくすることで、係る場合であっても、乗員14による右側サイドミラー132の視認性を良好に確保する。
【0032】
図5は、乗員14の視界において、車両加飾部材11が、前側右方サイドガラス122に映り込む状況を示す図である。
【0033】
前述した乗員14が右側サイドミラー132を視認する際には、右側サイドミラー132に配置された反射面134を見る。また、乗員14は車内に着座する一方、反射面134は車外に配置されている。よって、乗員14は、前側右方サイドガラス122を透過して反射面134を視認する。
【0034】
前述した様に、前側右方サイドガラス122の内面には、加飾面111の写像22が形成される。また、写像22の下方部分は反射面134と重畳する。ここで、写像22の下方部分は、
図3に示した加飾面111の右方部分が作り出すものである。前述した様に、加飾面111の右方部分は、反射が少なくなるように構成される。
【0035】
よって、反射面134と重畳する部分の写像22は、反射が少ない。このことから、写像22の存在が、乗員14による反射面134の視認性を阻害することはない。従って、乗員14は、反射面134を介して、車両10の後方右側を良好に視認し、安全に車両10を運転することができる。
【0036】
以下に、前述した本実施形態から把握できる技術的思想を、その効果と共に記載する。
【0037】
本発明の車両加飾部材は、車両の車室に配置され、透明部材および視認部と乗員との間に位置する車両加飾部材であり、前記車室に臨む加飾面を具備し、前記加飾面は、前記乗員の側から、前記視認部の側に向かって、反射が少なくなるように構成されることを特徴とする。本発明の車両加飾部材によれば、車両加飾部材が透明部材に映り込んだ際に、透明部材を透過した視認部の視認性を良好に確保できる。更に、加飾面のデザイン性の自由度を確保できる。更には、加飾面にグロスを採用した場合であっても、視認部の側に向かってグロスを少なくすることで対処できる。また、加飾面の表面構成を変更するのみで対処することから、部品の分割や形状変更の必要が無く、コスト上昇を伴わず、重量増加も無い。
【0038】
また、本発明の車両加飾部材では、前記乗員、前記加飾面、前記透明部材および前記視認部は、前記車両の幅方向に沿って、この順番で配設され、前記乗員は、前記透明部材を透視することにより前記視認部を視認することを特徴とする。本発明の車両加飾部材によれば、視認部を明瞭に視認できる。具体的には、乗員が視認部を視認する際、透明部材を透視することにより視認部を視認する。よって、乗員は、加飾面が映り込む部分の透明部材を透過して、視認部を視認することもある。その際、視認部に接近する部分の加飾面の反射が小さいことから、加飾面の映り込みが乗員の視認性を低下させることがない。
【0039】
また、本発明の車両加飾部材では、前記加飾面は、第1部分と、前記第1部分よりも反射が大きい第2部分を有するグラデーション加工が施されており、前記加飾面は、前記乗員の側から、前記視認部の側に向かって、単位面積当たりにおいて前記第2部分が占める面積が小さくなることを特徴とする。本発明の車両加飾部材によれば、第2部分の透明部材への映り込みが少なくなることで、視認部の視認性を一定以上に確保できる。
【0040】
また、本発明の車両加飾部材では、前記透明部材は、サイドガラスであり、前記視認部は、サイドミラーであることを特徴とする。本発明の車両加飾部材によれば、室内に加飾面が存在する場合であっても、サイドガラスを透視してサイドミラーを明瞭に視認できる。
【0041】
また、本発明の車両加飾部材では、前記乗員は、左方側および右方側の何れか一方側の座席に着座し、前記透明部材は、左方側および右方側の何れか他方側に配置されたサイドガラスであり、前記視認部は、左方側および右方側の何れか他方側に配置されたサイドミラーであることを特徴とする。本発明の車両加飾部材によれば、室内に加飾面が存在する場合であっても、乗員は、左右方向において反対側に存在するサイドミラーを、サイドガラスを透視して明瞭に視認できる。
【0042】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更が可能である。また、前述した各形態は相互に組み合わせることが可能である。
【0043】
図1を参照して、前述本実施形態では、左方側から、運転者である乗員14、加飾面111、前側右方サイドガラス122および右側サイドミラー132が配設されたが、この順番を逆にすることができる。具体的には、右方側から、運転者である乗員14、加飾面111、前側左方サイドガラス123および左側サイドミラー133が配置されても良い。即ち、本実施形態の構成を右ハンドル車に適用できる。
【符号の説明】
【0044】
10 車両
11 車両加飾部材
111 加飾面
112 第1部分
113 第2部分
12 透明部材
121 サイドガラス
122 前側右方サイドガラス
123 前側左方サイドガラス
13 視認部
131 サイドミラー
132 右側サイドミラー
133 左側サイドミラー
134 反射面
14 乗員
15 車室
16 車体
17 座席
171 前側左方座席
18 ダッシュボード
19 グローブボックス
20 センターディスプレイ
21 空調風吹出口
22 写像