(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136001
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】非水系インクジェットインクおよび硬化物の形成方法
(51)【国際特許分類】
C09D 11/36 20140101AFI20240927BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C09D11/36
B41M5/00 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046946
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮野 雅士
(72)【発明者】
【氏名】森 恒
【テーマコード(参考)】
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2H186FB04
2H186FB15
2H186FB22
2H186FB36
2H186FB38
2H186FB44
2H186FB46
2H186FB48
2H186FB56
4J039AD21
4J039AE11
4J039BA20
4J039BA25
4J039BE12
4J039BE22
4J039BE27
4J039CA05
4J039EA18
4J039EA44
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】沈降した無機粒子の再分散性に優れた非水系インクジェットインクを提供すること。
【解決手段】無機粒子と、シリコーン樹脂粒子とを有する非水系インクジェットインク。前記シリコーン樹脂粒子の平均粒子径は、0.3μm以上10μm以下であり、前記シリコーン樹脂粒子の平均粒子径は、前記無機粒子のメディアン径よりも大きい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機粒子と、シリコーン樹脂粒子とを有し、
前記シリコーン樹脂粒子の平均粒子径は、0.3μm以上10μm以下であり、
前記シリコーン樹脂粒子の平均粒子径は、前記無機粒子のメディアン径よりも小さい、
非水系インクジェットインク。
【請求項2】
前記シリコーン樹脂粒子は、シルセスキオキサン構造を有するシリコーン樹脂を有する、
請求項1に記載の非水系インクジェットインク。
【請求項3】
前記シリコーン樹脂粒子の平均粒子径は、0.3μm以上5μm以下である、
請求項1に記載の非水系インクジェットインク。
【請求項4】
前記非水系インクジェットインクの25℃における粘度は、20mPa・s以上500mPa・s以下である、
請求項1に記載の非水系インクジェットインク。
【請求項5】
活性エネルギー線の照射により重合する重合性化合物を有する、
請求項1に記載の非水系インクジェットインク。
【請求項6】
前記重合性化合物は、芳香環を有する化合物を含む、
請求項5に記載の非水系インクジェットインク。
【請求項7】
体積抵抗率が1011Ω・m以上の硬化物を形成することが可能である、
請求項1に記載の非水系インクジェットインク。
【請求項8】
前記無機粒子のメディアン径は、0.5μm以上5μm以下である、
請求項1に記載の非水系インクジェットインク。
【請求項9】
前記無機粒子は、光輝顔料粒子、酸化亜鉛粒子、および蓄光顔料粒子からなる群から選択される粒子である、
請求項1に記載の非水系インクジェットインク。
【請求項10】
前記無機粒子は、蓄光顔料粒子である、
請求項1に記載の非水系インクジェットインク。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の非水系インクジェットインクを基材に付与する工程と、
前記付与された非水系インクジェットインクを成膜する工程と、
を有する、硬化物の形成方法。
【請求項12】
前記基材に付与する工程は、前記非水系インクジェットインクを循環させながら行う、
請求項11に記載の硬化物の形成方法。
【請求項13】
前記無機粒子のメディアン径をAμm、前記シリコーン樹脂粒子の平均粒子径をBμm、前記非水系インクジェットインクの流量をCmL/sとしたとき、下記一般式Xが、0.30以上95.0以下である、請求項11に記載の硬化物の形成方法。
X=(A/B)×C
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系インクジェットインクおよび硬化物の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
白色顔料としての酸化チタンや導電性粒子などの無機粒子を含有するインクジェットインクが知られている。無機粒子は貯蔵中や吐出前の待機中にインク中で沈降しやすいという問題がある。
【0003】
この問題を解決するため、特許文献1に記載のインクジェット用白色インク組成物では、酸化チタンとともに微粒子硫酸バリウムをインク中に配合し、微粒子硫酸バリウムによって酸化チタンの沈降を抑制している。
【0004】
また、特許文献2に記載のインクジェットインクでは、平均粒径が100nm未満であり沈降しにくい酸化チタンを用い、さらに中空とすることで沈降しにくくした平均粒径が100nm以上である中空粒子によって記録物の白色度を十分な程度に高めている。
【0005】
また、特許文献3に記載の異方導電接着インクジェットインクでは、アクリル系ポリマーと、粒子径0.001~0.5μmのシリカ粒子と、粒子径0.5~10μmのシリコーン樹脂粉末と、によって導電性粒子を含む各成分の沈降を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-256726号公報
【特許文献2】特開2021-155502号公報
【特許文献3】特開2001-135141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1~特許文献3に記載のように、インクジェットインク中の無機粒子の沈降を抑制する方法が種々検討されている。しかし、本発明者らの知見によると、これらの文献に記載の方法によっても、無機粒子の沈降を完全に抑制しきれるわけではない。そして、一度沈降してしまうと、無機粒子を再度分散させることは容易ではない。また、近年では粒子径が1μm以上などの大粒径の無機粒子をインクジェットインクに配合することも検討されているが、このような大粒径の無機粒子は沈降しやすく、なおかつ沈降した後の再分散が容易ではない。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、沈降した無機粒子の再分散性に優れた非水系インクジェットインク、および当該非水系インクジェットインクを用いた硬化物の形成方法を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明の一態様は、下記[1]~[10]の非水系インクジェットインクに関する。
[1]無機粒子と、シリコーン樹脂粒子とを有し、
前記シリコーン樹脂粒子の平均粒子径は、0.3μm以上10μm以下であり、
前記シリコーン樹脂粒子の平均粒子径は、前記無機粒子のメディアン径よりも小さい、
非水系インクジェットインク。
[2]前記シリコーン樹脂粒子は、シルセスキオキサン構造を有するシリコーン樹脂を有する、
[1]に記載の非水系インクジェットインク。
[3]前記シリコーン樹脂粒子の平均粒子径は、0.3μm以上5μm以下である、
[1]または[2]に記載の非水系インクジェットインク。
[4]前記非水系インクジェットインクの25℃における粘度は、20mPa・s以上500mPa・s以下である、
[1]~[3]のいずれかに記載の非水系インクジェットインク。
[5]活性エネルギー線の照射により重合する重合性化合物を有する、
[1]~[4]のいずれかに記載の非水系インクジェットインク。
[6]前記重合性化合物は、芳香環を有する化合物を含む、
[5]に記載の非水系インクジェットインク。
[7]体積抵抗率が1011Ω・m以上の硬化物を形成することが可能である、
[1]~[6]のいずれかに記載の非水系インクジェットインク。
[8]前記無機粒子のメディアン径は、0.5μm以上5μm以下である、
[1]~[7]のいずれかに記載の非水系インクジェットインク。
[9]前記無機粒子は、光輝顔料粒子、酸化亜鉛粒子、および蓄光顔料粒子からなる群から選択される粒子である、
[1]~[8]のいずれかに記載の非水系インクジェットインク。
[10]前記無機粒子は、蓄光顔料粒子である、
[1]~[9]のいずれかに記載の非水系インクジェットインク。
【0010】
上記課題を解決するための本発明の他の態様は、下記[11]~[13]の硬化物の形成方法に関する。
[11][1]~[10]のいずれかに記載の非水系インクジェットインクを基材に付与する工程と、
前記付与された非水系インクジェットインクを成膜する工程と、
を有する、硬化物の形成方法。
[12]前記基材に付与する工程は、前記インクジェットインクを循環させながら行う、
[11]に記載の硬化物の形成方法。
[13]前記無機粒子のメディアン径をAμm、前記シリコーン樹脂粒子の平均粒子径をBμm、前記非水系インクジェットインクの流量をCmL/sとしたとき、下記一般式Xが、0.30以上95.0以下である、[11]または[12]に記載の硬化物の形成方法。
X=(A/B)×C
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、沈降した無機粒子の再分散性に優れた非水系インクジェットインク、および当該非水系インクジェットインクを用いた硬化物の形成方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.非水系インクジェットインク
本発明の一実施形態は、無機粒子と、シリコーン樹脂粒子とを有する非水系インクジェットインク(以下、単に「インク」ともいう。)に関する。以下、各成分について説明する。
【0013】
1-1.無機粒子
無機粒子の種類は特に限定されない。無機粒子は、インクにより形成される硬化物に色調や導電性や絶縁性や放熱性や負の熱膨張係数などの特徴を付与する顔料粒子であってもよいし、顔料とは別に添加されて硬化物の物性を調整する粒子であってもよい。
【0014】
無機粒子は、炭素以外の原子を主成分として含む粒子であればよい。主成分として含むとは、無機粒子の全質量に対して50質量%以上が炭素以外の原子であることを意味する。
【0015】
無機粒子の例には、
シリカ粒子、
酸化チタン粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、酸化亜鉛粒子および酸化鉄粒子などの金属酸化物粒子
水酸化マグネシウム粒子、水酸化アルミニウム粒子、および水酸化カルシウム粒子などの金属水酸化物粒子
窒化珪素粒子、窒化チタン粒子、および窒化アルミニウム粒子などの窒化物粒子
銀粒子などの光輝顔料粒子(あるいは導電性粒子)、
ガラスビーズ、およびガラスフレークなどのガラス粒子、
ケイ酸マグネシウム粒子などのケイ酸塩粒子、
カオリン粒子、焼成カオリン粒子、クレー、タルク、ゼオライトなどのセラミック粒子、ならびに、
所定の波長の光を吸収して光エネルギーを蓄積し、蓄積された光のエネルギーを吸収した光とは異なる波長の光として長時間放出することができる蓄光顔料粒子
などが含まれる。
【0016】
蓄光顔料の例には、金属化合物である母結晶が賦活処理されたものが含まれる。
【0017】
上記母結晶の例には、硫化亜鉛、硫化カルシウム、硫化ゲルマニウム、硫化ストロンチウム、硫化イットリウムなどの硫化物、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、アルミナ、酸化セリウムなどの金属酸化物、アルミン酸カルシウム、アルミン酸ストロンチウム、アルミン酸バリウムなどのアルミン酸塩、などが含まれる。これらのうちアルミン酸ストロンチウム(SrAl2O4:Eu,Dy)が好ましい。
【0018】
上記母結晶を賦活処理する賦活剤の例には、ユウロピウム、テルビウム、イットリウム、ジルコニウム、ジスプロシウム、およびバリウムなどが含まれる。これらのうち、ユウロピウム、ジスプロシウムが好ましい。
【0019】
蓄光顔料の励起スペクトルのピーク波長は、300nm以上400nm以下であることが好ましい。蓄光顔料の励起スペクトルのピーク波長が上記範囲にあると、太陽光により、蓄光顔料を十分に励起させることができ、硬化物を屋外での使用に適応させやすい。
【0020】
蓄光顔料の発光スペクトルのピーク波長は、例えば、400nm以上700nm以下とすることができ、硬化物の視認性をより高める観点からは450nm以上600nm以下であることが好ましい。
【0021】
これらの無機粒子のうち、光輝顔料粒子、酸化亜鉛粒子、蓄光顔料粒子が好ましく、シリコーン樹脂粒子をインク中に拡散しやすくする観点からは、酸化亜鉛粒子、および蓄光顔料粒子がより好ましく、蓄光顔料粒子がさらに好ましい。
【0022】
無機粒子は、中空粒子であってもよいし、中実粒子であってもよい。
【0023】
無機粒子の形状は特に限定されず、球形であってもよいし、平板状やウイスカー状などの非球形であってもよい。これらのうち、シリコーン樹脂粒子による沈降後の再分散性の向上効果を高めやすいことから、球形が好ましい。たとえば、無機粒子は、長径と短径との比率であるアスペクト比が1.0以上1.5以下であることが好ましく、1.0以上1.2以下であることがより好ましい。
【0024】
無機粒子の長径および短径はそれぞれ、透過型電子顕微鏡(TEM)や走査型電子顕微鏡(SEM)などで撮像した画像中に写されたインク中の無機粒子のうち、任意に選択した1000個の無機粒子の、画像中の長径の平均、および画像中の短径の平均、とすることができる。
【0025】
インク中の無機粒子のメディアン径は特に限定されず、0.2μm以上20μm以下とすることができ、0.3μm以上10μm以下であることが好ましく、0.5μm以上5μm以下であることがより好ましく、0.5μm以上3μm以下であることがさらに好ましい。メディアン径がより大きいほど、インク中で無機粒子が沈降しやすく、シリコーン樹脂粒子による沈降後の再分散性の向上効果が顕著にみられる。メディアン径がより小さいほど、沈降後に再分散しやすく、またインクジェットヘッドからの吐出性が良好となる。
【0026】
無機粒子のメディアン径は、体積基準の粒度分布における累積値が50%となる粒径(d50)を用いることができる。
【0027】
無機粒子の比重は、2以上6以下とすることができ、2.5以上5以下とすることが好ましく、3以上4.5以下とすることがより好ましい。比重がより大きいほど、インク中で無機粒子が沈降しやすく、シリコーン樹脂粒子による沈降後の再分散性の向上効果が顕著にみられる。
【0028】
無機粒子は、分散剤により分散されていてもよい。無機粒子は、1種類のみの分散剤により分散されていてもよいし、2種類以上の分散剤により分散されていてもよい。
【0029】
分散剤の例には、ヒドロキシ基を有するカルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、及びステアリルアミンアセテート等が挙げられる。顔料分散剤の市販品の例には、Solsperseシリーズ(Avecia社製、「Solsperse」は同社の登録商標)や、PBシリーズ(味の素ファインテクノ社製)、EFKAシリーズ(BASF社製、「EFKA」は同社の登録商標)などが含まれる。
【0030】
分散剤の含有量は、無機粒子の全質量に対して、0.01質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
【0031】
無機粒子の含有量は、当該無機粒子の用途に応じて設定すればよい。たとえば、無機粒子の含有量は、インクの全質量に対して1質量%以上40質量%以下とすることができ、2質量%以上35質量%以下とすることが好ましく、3質量%以上30質量%以下とすることがより好ましい。無機粒子の含有量がより少ないほど、沈降した無機粒子の再分散性が高まる。
【0032】
1-2.シリコーン樹脂粒子
シリコーン樹脂粒子は、その平均粒子径が無機粒子のメディアン径よりも小さい粒子である。このようなシリコーン樹脂粒子は、無機粒子の間に入り込んで無機粒子の流動性を高める。そして、これにより沈降した無機粒子を再分散させやすくすると考えられる。
【0033】
沈降した無機粒子が再分散できないと、吐出されるインクジェットインク中の無機粒子の濃度が変動しやすかったり、インクジェットインクの粘度が変動して吐出が不安定になったりする。また、吐出前のインクジェットインクをインク流路やインクジェットヘッド中で循環させるときにも、インクジェットインクの循環が安定しにくかったりする。本実施形態では、シリコーン樹脂粒子により沈降した無機粒子を再分散させやすくして、これらの問題を生じにくくする。
【0034】
また、無機粒子は硬度が高いことが多く、インクジェットヘッドのノズル面を傷つけやすいが、無機粒子の間に入り込んだシリコーン樹脂粒子が無機粒子の流動性を高めることで、無機粒子をノズル面に貼り付きにくくして、無機粒子によるノズル面の傷つけも抑制することができると考えられる。
【0035】
シリコーン樹脂粒子の平均粒子径は0.2μm以上7μm以下であることが好ましく、0.3μm以上5μm以下であることがより好ましく、0.5μm以上3μm以下であることがさらに好ましい。シリコーン樹脂粒子の平均粒子径がより小さいほど、上述した作用により沈降した無機粒子の再分散性、ノズル面の傷つけにくいさ、循環安定性および保存安定性が高まる。シリコーン樹脂粒子の平均粒子径をある程度大きくすると、シリコーン樹脂粒子が付着した無機粒子の比表面積を小さくして、無機粒子によるノズル面の傷つけを生じにくくすることができる。
【0036】
シリコーン樹脂粒子の平均粒子径として、メーカー公表値を使用することができる。また、ストークス沈降法を利用した粒度分布分析装置(LUM Japan株式会社製、LUMiSizer)を用いて体積平均径として測定することもできる。
【0037】
また、上記観点から、シリコーン樹脂粒子の平均粒子径に対する無機粒子のメディアン径の比率(無機粒子のメディアン径/シリコーン樹脂粒子の平均粒子径)は、1.2以上15以下であることが好ましく、1.3以上10以下であることがより好ましく、1.5以上6以下であることがさらに好ましい。
【0038】
シリコーン樹脂粒子を構成するシリコーン樹脂は、シルセスキオキサン構造((RSiO1.5)n、Rは任意の有機基。)を有すればよい。シルセスキオキサン構造におけるRの種類は限定されず、アルキル基やハロゲン置換されたアルキル基などであればよく、メチル基であることが好ましい。
【0039】
シリコーン樹脂粒子は、シルセスキオキサン構造を有するシリコーン樹脂のみからなる粒子であってもよいし、シルセスキオキサン構造を有するシリコーン樹脂と他の樹脂とによりブレンド構造やコアシェル構造を形成した粒子であってもよい。上記他の樹脂としては、ビニル樹脂などを使用することができ、アクリル樹脂が好ましい。コアシェル構造を有するときは、シェルにシリコーン樹脂を含むことが好ましい。沈降した無機粒子の再分散性および循環安定性を高める観点からは、シリコーン樹脂粒子は、シリコーン樹脂のみからなる粒子であることが好ましい。
【0040】
シリコーン樹脂粒子の具体例には、MOMENTIVE社製のTOSPEARL2000B、TOSPEARL145、TOSPEARL130、XC-99-A8808などが含まれる。
【0041】
シリコーン樹脂粒子の形状は、球形であることが好ましい。たとえば、シリコーン樹脂粒子は、長径と短径との比率であるアスペクト比が1.0以上1.5以下であることが好ましく、1.0以上1.2以下であることがより好ましい。シリコーン樹脂粒子の長径および短径は、上述した無機粒子の長径および短径と同様に測定することができる。
【0042】
シリコーン樹脂粒子の含有量は、インクの全質量に対して0.01質量%以上5質量%以下とすることができ、0.1質量%以上3質量%以下とすることが好ましく、0.3質量%以上2質量%以下とすることがより好ましい。シリコーン樹脂粒子の含有量が0.01質量%以上であると、沈降した無機粒子の再分散性が高まる。シリコーン樹脂粒子の含有量が5質量%以下であると、無機粒子間に入り込まなかったシリコーン樹脂粒子による循環安定性の低下が抑制される。
【0043】
また、無機粒子の含有量に対するシリコーン樹脂粒子の含有量の比率(シリコーン樹脂粒子の含有量(質量基準)/無機粒子の含有量(質量基準))は、0.0004以上0.3以下であることが好ましく、0.004以上0.2以下であることがより好ましく、0.01以上0.1以下であることがさらに好ましい。
【0044】
1-3.液体成分
本実施形態に関するインクは、非水系インクである。具体的には、本実施形態に関するインクは、重合性インク、溶剤系インク、およびオイルインクなどであればよい。非水系インクは、インクの全質量に対する水の含有量が0質量%以上50質量%未満であることが好ましく、0質量%以上30質量%未満であることがより好ましく、0質量%以上10質量%未満であることがさらに好ましく、0質量%以上5質量%未満であることがさらに好ましく、実質的に含まないことが特に好ましい。なお、実質的に含まないとは、インクの全質量に対する水の含有量が0質量%以上1質量%未満であることを意味する。
【0045】
非水系インクは、液体成分中の水の量が少ない(あるいは水を含まない)。言い換えると、非水系インクは、極性を有する水分子の量が少ない。そのため、非水系インクでは、極性成分が少ないためシリコーン樹脂粒子が濡れやすくなって無機粒子の間に入り込みやすく、これにより沈降した無機粒子の再分散性の向上、ノズル面の耐擦性の向上、ならびに循環安定性および保存安定性の向上などの上述した効果が効果的に奏されると考えられる。
【0046】
重合性インクは、インクの全質量に対する活性エネルギー線の照射により重合する重合性化合物の含有量が50質量%以上であるインクとすることができる。溶剤系インクは、インクの全質量に対する有機溶剤の含有量が50質量%以上であるインクとすることができる。重合性インクは、インクの全質量に対する重合性化合物の含有量が50質量%以上であるインクとすることができる。なお、重合性インクは、重合性化合物の重合および架橋を開始させるための光重合開始剤を含んでもよい。オイルインクは、インクの全質量に対するオイルの含有量が50質量%以上であるインクとすることができる。
【0047】
1-3-1.重合性化合物および光重合開始剤
1-3-1-1.重合性化合物
重合性化合物は、ラジカル重合性化合物でもよく、カチオン重合性化合物でもよい。また、重合性化合物は、ラジカル重合性化合物とカチオン重合性化合物との組み合わせて用いても良い。
【0048】
ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物(モノマー、オリゴマー、ポリマーあるいはこれらの混合物)である。
【0049】
ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物の例には、不飽和カルボン酸とその塩、不飽和カルボン酸エステル化合物、不飽和カルボン酸ウレタン化合物、不飽和カルボン酸アミド化合物およびその無水物、アクリロニトリル、スチレン、不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、および不飽和ウレタンなどが含まれる。不飽和カルボン酸の例には、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸などが含まれる。
【0050】
なかでも、ラジカル重合性化合物は、不飽和カルボン酸エステル化合物であることが好ましく、(メタ)アクリレートであることがより好ましい。(メタ)アクリレートは、後述するモノマーだけでなく、オリゴマー、モノマーとオリゴマーの混合物、変性物、重合性官能基を有するオリゴマーなどであってよい。
【0051】
単官能の(メタ)アクリレートの例には、イソアミル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソミルスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル-ジグリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、m-フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンフォルマル(メタ)アクリレート、エトキシ化フェノキシ(メタ)アクリレート、アルコキシ化フェノール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-o-フェニルフェノールプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチル-フタル酸およびt-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートなどが含まれる。
【0052】
多官能の(メタ)アクリレートの例には、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレートおよびトリプロピレングリコールジアクリレートを含む2官能の(メタ)アクリレート、ならびに、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレートおよびペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレートを含む3官能以上の(メタ)アクリレートなどが含まれる。
【0053】
(メタ)アクリレートは、変性物であってもよい。変性物である(メタ)アクリレートの例には、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、およびエチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレートなどを含むエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート 、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどを含むカプロラクトン変性(メタ)アクリレート、ならびにカプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどを含むカプロラクタム変性(メタ)アクリレートなどが含まれる。
【0054】
(メタ)アクリレートは、重合性オリゴマーであってもよい。重合性オリゴマーである(メタ)アクリレートの例には、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、芳香族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、および直鎖(メタ)アクリルオリゴマーなどが含まれる。
【0055】
カチオン重合性化合物の例には、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、およびオキセタン化合物などが含まれる。
【0056】
上記エポキシ化合物の例には、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3′,4′-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンモノエポキサイド、ε-カプロラクトン変性3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3′,4′-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、1-メチル-4-(2-メチルオキシラニル)-7-オキサビシクロ[4,1,0]ヘプタン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサノン-メタ-ジオキサンおよびビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテルなどの脂環式エポキシ樹脂、1,4-ブタンジオールのジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、およびグリセリンなどの脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドなど)を付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテルなどを含む脂肪族エポキシ化合物、ならびに、ビスフェノールAまたはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAまたはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル、およびノボラック型エポキシ樹脂などを含む芳香族エポキシ化合物などが含まれる。
【0057】
上記ビニルエーテル化合物の例には、エチルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル-o-プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、およびオクタデシルビニルエーテルなどを含むモノビニルエーテル化合物、ならびにエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、およびトリメチロールプロパントリビニルエーテルなどを含むジまたはトリビニルエーテル化合物などが含まれる。
【0058】
上記オキセタン化合物の例には、3-ヒドロキシメチル-3-メチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-エチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-プロピルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-ノルマルブチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-フェニルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-ベンジルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-メチルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-エチルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-プロピルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-フェニルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-メチルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-エチルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-プロピルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-フェニルオキセタン、3-ヒドロキシブチル-3-メチルオキセタン、1,4ビス{[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタンおよびジ[1-エチル(3-オキセタニル)]メチルエーテルなどが含まれる。
【0059】
重合性化合物は、分子内に芳香環を有する化合物を含むことが好ましい。分子内に芳香環を有する重合性化合物は、極性が低い芳香環を有するためシリコーン樹脂粒子を濡れやすくして無機粒子の間に入り込みやすくし、上述したシリコーン樹脂粒子による効果をより効果的に奏させることができる。
【0060】
芳香環を有する重合性化合物の含有量は、インクの全質量に対して20質量%以上80質量%以下であることが好ましく、30質量%以上70質量%以下であることがより好ましい。
【0061】
芳香環を有する重合性化合物の例には、フェノール4EO変性アクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、m-フェノキシベンジルアクリレート、EO変性o-フェニルフェノールアクリレート、ビスフェノールフルオレンジアクリレート(A-BPEF)、ビスフェノールA型10EO変性ジアクリレート、ビスフェノールA型ジアクリレート、ビスフェノールA型PO変性ジアクリレート、ビスフェノールA型EO変性ジアクリレート、ベンジルアクリレート、クミルフェノキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシ-o-フェニルフェノールプロピルアクリレートなどが含まれる。
【0062】
重合性化合物の含有量は、重合性インクの全質量に対して50質量%以上97質量%以下であることが好ましく、60質量%以上95質量%以下であることがより好ましい。
【0063】
1-3-1-2.光重合開始剤
光重合開始剤は、重合性インクがラジカル重合性化合物を含むときはラジカル開始剤とすることができ、重合性インクがカチオン重合性化合物を含むときはカチオン開始剤(光酸発生剤)とすることができる。なお、電子線の照射により重合を開始させるときには、重合性インクは光重合開始剤を含まなくてもよい。
【0064】
ラジカル重合開始剤の例には、水素引き抜き型の光重合開始剤、および分子内開裂型の光重合開始剤などが含まれる。水素引き抜き型の光重合開始剤には、分子内水素引き抜き型の光重合開始剤、および分子間水素引き抜き型の光重合開始剤などが含まれる。
【0065】
分子内水素引き抜き型の光重合開始剤は、活性エネルギー線の照射により励起され、分子内で水素引き抜き反応を生成してラジカルを発生させる光重合開始剤である。分子内水素引き抜き型の光重合開始剤の例には、フェニルグリオキシル酸メチルなどのベンゾイルギ酸メチル系光重合開始剤、オキシフェニル酢酸-2-[2-オキソ-2-フェニルアセトキシ-エトキシ]エチルエステルとオキシフェニル酢酸2-[2-ヒドロキシ-エトキシ]エチルエステルとの混合物などのオキシフェニル系光重合開始剤、などが含まれる。これらのうち、重合中の重合性化合物の分子鎖からの水素の引き抜きを生じにくいことから、ベンゾイルギ酸メチル系光重合開始剤などのグリオキシル酸構造を有する化合物であることが好ましい。
【0066】
分子内水素引き抜き型の光重合開始剤の市販品の例には、Omnirad MBF、Omnirad 754(いずれもIGM Resins社製、「Omnirad」は同社の登録商標)などが含まれる。
【0067】
分子間水素引き抜き型の光重合開始剤は、紫外線などの活性エネルギー線の照射により励起され、他の分子から水素を引き抜いてラジカルを発生させる光重合開始剤である。分子間水素引き抜き型の光重合開始剤の例には、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、および3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノンなどを含むベンゾフェノン系の開始剤、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系などが含まれる。
【0068】
分子間水素引き抜き型の光重合開始剤の市販品の例には、Omnirad 500(IGM Resins社製)、Speedcure ITX(Sartomer社製、「Speedcure」はアルケマ フランス社の登録商標)などが含まれる。
【0069】
分子内開裂型の光重合開始剤の例には、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン、2-メチル-2-モルホリノ(4-メチルチオフェニル)プロパン-1-オン、および2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノンなどのアセトフェノン系の開始剤;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、およびベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾイン系の開始剤;2,4,6-トリメチルベンゾインジフェニルフォスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイン)フェニルフォスフィンオキシドなどのアシルフォスフィンオキシド系の開始剤などが含まれる。
【0070】
分子内開裂型の光重合開始剤の市販品の例には、Omnirad 127、Omnirad 184、Omnirad 651、Omnirad 2959、Omnirad 819、およびEsacure One(いずれもIGM Resins社製)、などが含まれる。
【0071】
光重合開始剤の含有量は、重合性の全質量に対して3質量%以上20質量%以下であることが好ましく、3質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、3質量%以上10質量%以下であることがさらに好ましく、5質量%以上10質量%以下であることが特に好ましい。上記含有量を3質量%以上とすることで、重合性インクの硬化性および密着性をより高めることができる。
【0072】
1-3-2.有機溶剤
有機溶剤の例には、脂肪族アルコール、芳香族アルコール、ジオール、トリオール、グリコールエーテル、ポリ(グリコール)エーテル、ラクタム、ホルムアミド、アセトアミド、長鎖アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ジプロピレングリコール、グリコールブチルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アミド、アミン、エーテル、カルボン酸、エステル、オルガノスルフィド、オルガノスルホキシド、スルホン、アルコール誘導体、カルビトール、ブチルカルビトール、セロソルブ、エーテル誘導体、アミノアルコールおよびケトンなどが含まれる。
【0073】
これらのうち、無機粒子の分散性を高める観点から、グリコールエーテルおよび脂肪酸エステルが好ましい。
【0074】
グリコールエーテルの例には、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、その他のポリエチレングリコール、その他のポリプロピレングリコ-ルなどが含まれる。
【0075】
脂肪酸エステルの例には、オレイン酸メチル、カプリル酸メチル、カプリン酸メチル、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、パルミチン酸メチル、ステアリン酸メチル、オレイン酸メチル、牛脂脂肪酸メチル、米糠脂肪酸メチル、菜種脂肪酸メチル、大豆脂肪酸メチル、パルミチン酸n-ブチル、ステアリン酸n-ブチル、菜種脂肪酸n-ブチル、大豆脂肪酸n-ブチル、米糠脂肪酸i-ブチル、菜種脂肪酸i-ブチル、パルミチン酸オクチル、オレイン酸オクチル、菜種脂肪酸オクチル、植物脂肪酸オクチル、ミリスチン酸イソプロピル、およびパルミチン酸イソプロピル等が含まれる。
【0076】
有機溶剤の含有量は、溶剤系インクの全質量に対して50質量%以上97質量%以下であることが好ましく、60質量%以上95質量%以下であることがより好ましい。
【0077】
1-3-3.オイル
オイルの例には、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン、イソオクタン、およびイソデカンなどを含む脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン、シクロオクタン、およびシクロデカンなどを含む脂環式炭化水素類、ならびに、オクタノール、デカノール、およびオクタデセノールなどを含む高級アルコールなどが含まれる。
【0078】
オイルインクは、溶媒として高級脂肪酸エステルおよびシリコーンオイルなどをさらに含んでもよく、さらに植物油を含有してもよい。上記植物油の例には、大豆油、綿実油、菜種油、ゴマ油、およびコーン油などを含む半乾性油類、オリーブ油、落花生油、および椿油などを含む不乾性油類、ならびに、亜麻仁油、およびサフラワー油などを含む乾性油類が含まれる。
【0079】
オイルの含有量は、オイルインクの全質量に対して50質量%以上97質量%以下であることが好ましく、60質量%以上95質量%以下であることがより好ましい。
【0080】
1-4.その他の成分
インクは、有機顔料、染料、界面活性剤、蛍光増白剤、ゲル化剤、および重合禁止剤などのその他の成分をさらに含有してもよい。
【0081】
有機顔料の例には、画像形成用のインクに用いられる、赤色顔料、黄色顔料、青色顔料、白色顔料などが含まれる。これらの顔料は、公知のものを用いることができる。染料の例には、画像形成用のインクに用いられる、赤色染料、黄色染料、青色染料などが含まれる。これらの染料は、公知のものを用いることができる。
【0082】
界面活性剤の例には、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、および脂肪酸塩類などのアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類およびポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類などのノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、および第四級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤、ならびにシリコーン系やフッ素系の界面活性剤などが含まれる。
【0083】
界面活性剤の含有量は特に限定されないが、たとえばインクの全質量に対して0.001質量%以上1.0質量%未満とすることができる。
【0084】
ゲル化剤は、インクを常温(25℃)ではゲル状態とし、加熱時(たとえば80℃)にはゾル状態とする化合物である。たとえば、ゲル化剤は、インクのゲル化温度より高い温度でインクに含有される液体成分(重合性化合物および有機溶剤など)に溶解し、インクのゲル化温度以下の温度で結晶化する化合物であることが好ましい。ゲル化温度とは、加熱によりゾル化または液体化したインクを冷却したときに、インクがゾルからゲルに相転移し、インクの粘度が急変する温度を意味する。具体的には、ゾル化または液体化したインクを、レオメータ(たとえばAnton Paar社製、MCR300)で粘度を測定しながら冷却していったときに、粘度が急激に上昇した温度を、そのインクのゲル化温度とすることができる。
【0085】
ゲル化剤の例には、ケトンワックス、エステルワックス、石油系ワックス、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス、硬化ヒマシ油、変性ワックス、高級脂肪酸、高級アルコール、ヒドロキシステアリン酸、N-置換脂肪酸アミドおよび特殊脂肪酸アミドを含む脂肪酸アミド、高級アミン、ショ糖脂肪酸のエステル、合成ワックス、ジベンジリデンソルビトール、ダイマー酸ならびにダイマージオールが含まれる。
【0086】
ゲル化剤の含有量は、インクの全質量に対して1.0質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、2.0質量%以上7.5質量%以下であることがより好ましく、2.0質量%以上3.5質量%以下であることがさらに好ましい。
【0087】
重合禁止剤の例には、N-オキシル系重合禁止剤、フェノール系重合禁止剤、キノン系重合禁止剤、アミン系重合禁止剤、ジチオカルバミン酸銅系重合禁止剤などが含まれる。重合禁止剤は、インク中に1種のみ含まれてもよいし、2種以上が組み合わされて含まれてもよい。
【0088】
N-オキシル系重合禁止剤の例には、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル(TEMPO)、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-N-オキシル、4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-N-オキシル、4-メトキシ-2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-N-オキシル、4-アセトキシ-2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-N-オキシルなどが含まれる。N-オキシル系重合禁止剤の市販品の例には、Irgastab UV10(BASF社製(「Irgastab」は同社の登録商標))が含まれる。
【0089】
フェノール系重合禁止剤の例には、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,4-ジ-tert-ブチルフェノール、2-tert-ブチル4,6-ジメチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(ブチル化ヒドロキシトルエン:BHT)、4-メトキシフェノール、2-メトキシ-4-メチルフェノールなどが含まれる。
【0090】
キノン系重合禁止剤の例には、ハイドロキノン、メトキシヒドロキノン、ベンゾキノン、1,4-ナフトキノン、p-tert-ブチルカテコールなどが含まれる。
【0091】
アミン系重合禁止剤の例には、アルキル化ジフェニルアミン、N,N′-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、フェノチアジンなどが含まれる。
【0092】
ジチオカルバミン酸銅系重合禁止剤の例には、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジエチルジチオカルバミン酸銅、ジブチルジチオカルバミン酸銅などが含まれる。
【0093】
重合禁止剤の含有量は特に限定されないが、たとえばインクの全質量に対して0.01質量%以上0.5質量%以下とすることができる。
【0094】
1-5.インクの物性
インクの粘度は特に限定されないが、25℃における粘度が5mPa・s以上1000mPa・s以下とすることが好ましく、20mPa・s以上500mPa・s以下であることがより好ましい。インクの保管や待機は25℃程度で行われることが多い。そして、25℃における粘度が低いほど、シリコーン樹脂粒子が流動しやすく、沈降した無機顔料を再分散させやすい。一方で、25℃における粘度を適度に高めることで、無機顔料の沈降を抑制することができる。
【0095】
組成物の25℃における粘度は、レオメータにより、せん断速度1000/secの条件で求めた値とすることができる。レオメータは、Anton Paar社製 ストレス制御型レオメータ PhysicaMCRシリーズを用いることができる。コーンプレートの直径は75mm、コーン角は1.0°とすることができる。
【0096】
インクは、体積抵抗率が1011Ω・m以上の硬化膜を形成できるものであることが好ましい。硬化膜の表面抵抗率は、ハイレスタUX(日東精工アナリテック社製、MCP-HT800)を用いて測定することができる。
【0097】
1-6.インクの調製方法
インクは、上述した各成分を混合して、調製することができる。このとき、無機粒子以外の成分を先に混合し、得られた混合物に対して無機粒子を後から添加してもよい。
【0098】
また、無機粒子を分散剤により分散させるときは、無機粒子と分散剤と液体成分とを含む分散液をあらかじめ調製しておき、これに残りの成分を添加して混合してもよい。このとき、分散剤などの溶解性を高めるため、無機粒子および分散剤などを加熱しながら混合して分散液を調製することが好ましい。
【0099】
また、無機粒子を分散剤により分散させるときに、シリコーン樹脂粒子をあらかじめ添加して分散してもよい。シリコーン樹脂粒子をインクに濡らす観点と、無機粒子の間に入り込ませる観点から、あらかじめ分散時に添加しておくことが好ましい。
【0100】
2.硬化物の形成方法
上述したインクは、インクジェット法により基材に付与し、成膜させて、硬化物を形成するために用いることができる。
【0101】
基材への付与は、インクジェットヘッドからインクを吐出して基材に着弾させて行えばよい。
【0102】
インクジェットヘッドからの吐出方式は、オンデマンド方式とコンティニュアス方式のいずれでもよい。オンデマンド方式のインクジェットヘッドは、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型およびシェアードウォール型などの電気-機械変換方式、ならびにサーマルインクジェット型およびバブルジェット(「バブルジェット」はキヤノン社の登録商標)型などの電気-熱変換方式などのいずれでもよい。
【0103】
これらのインクジェットヘッド、あるいはインクジェットヘッドを有する画像形成装置は、インクジェットヘッドの内部または外部で、インクを循環させる構成を有していてもよい。インクを循環させながら吐出するとき、インクの循環流路中で無機粒子の沈降が生じると、インクの吐出性が低下することがある。これに対し、本実施形態では沈降した無機粒子の再分散性が良好であるため、インクを循環させるときにも良好な吐出性を保つことができる。
【0104】
なお、インクジェットヘッド、または画像形成装置中でのインクの流通は、無機粒子のメディアン径をAμm、シリコーン樹脂粒子の平均粒子径をBμm、インクの流量をCmL/sとしたときに、下記一般式Xが、0.30以上95.0以下となることが好ましい。
X=(A/B)×C
【0105】
無機粒子のメディアン径およびシリコーン樹脂粒子の平均粒子径に加えて、インクの送液流量も最適化することで、沈降した無機粒子の再分散性を高めることができる。上記観点から、Xは0.30以上95.0以下であることがより好ましく、1.0以上60以下であることがさらに好ましく、1.4以上40以下であることが特に好ましく、1.5以上40以下であることが特に好ましい。上記Xを満たすと、インクの流通安定性を高めることができる。流通安定性の向上効果は、重合性インクにおいて特に顕著である。
【0106】
基材の種類は、特に限定されないが、例えば、紙、樹脂フィルム、ABS樹脂板、アクリル樹脂板、アルミニウム板、ガラス板、ポリカーボネート板、布などとすることができる。なお、基材の形状は特に限定されず、板状やフィルム状、シート状のほか、様々な三次元形状であってもよい。また、基材の内部に形成した空間に、各種方法により組成物を付与してもよい。
【0107】
インクの成膜は、インクの種類に応じた方法で行えばよい。たとえば、インクが重合性インクであるときは、活性エネルギー線の照射により重合性化合物を重合および架橋させて、硬化物を成膜することができる。あるいは、インクが溶剤系インクであるときは、加熱により有機溶剤を蒸発させて、インク中の固体成分による硬化物を成膜させることができる。
【0108】
活性エネルギー線の例には、電子線、紫外線、α線、γ線、およびエックス線などが含まれる。これらのうち、紫外線および電子線が好ましい。上記紫外線は、360nm以上410nm以下にピーク波長を有する光であることが好ましい。また、上記紫外線は、LED光源から照射されることが好ましい。LEDは従来の光源(例えばメタルハライドランプなど)と比較して、輻射熱が少ないことから、LEDを用いると、活性エネルギー線の照射時にインクが溶けにくくなり、光沢ムラなどを生じにくくなる。
【0109】
活性エネルギー線として紫外線を用いるとき、1回の照射あたりの光量は、500mJ/cm2以上4000mJ/cm2以下であることが好ましい。500mJ/cm2以上であると、重合性化合物の硬化性を向上させることができる。4000mJ/cm2以下であると、硬化物の変色を抑制することができる。
【0110】
厚みが大きい硬化物を形成するときは、インクの付与および成膜を繰り返して行ってもよい。
【0111】
このようにして硬化物を作製した後、ニス剤、ラミネートフィルム、およびインクなどにより硬化物を被覆する保護膜を形成したり、所望の形状に後加工したりしてもよい。
【実施例0112】
以下、実施例を参照して本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲は実施例の記載に限定されない。
【0113】
[実験1]
1.材料の用意
以下の材料を用いて、インクジェットインクを調製した。
【0114】
1-1.有機溶剤
有機溶剤1: ポリプロピレングリコール
有機溶剤2: ミリスチン酸メチル
【0115】
1-2.重合性化合物
モノマー1: ジプロピレングリコールジアクリレート
モノマー2: イソボルニルアクリレート
モノマー3: フェノール4EO変性アクリレート
モノマー4: 2-フェノキシエチルアクリレート
モノマー5: ビスフェノールA型10EO変性ジアクリレート
モノマー6: ベンジルアクリレート
【0116】
1-3.光重合開始剤
開始剤1: IGM RESINS BV社製、Omnirad MBF
開始剤2: IGM RESINS BV社製、Omnirad 754
開始剤3: IGM RESINS BV社製、Omnirad 819
【0117】
1-4.無機粒子
無機粒子1:硫酸バリウム(堺化学工業株式会社製、H-LFM)
無機粒子2:酸化鉄でコートしたガラスフレーク(GlassFlake社製、Moonshine Bronze Ultra Shimmer、「Moonshine」は同社の登録商標)
無機粒子3:蓄光顔料(根本特殊化学株式会社製、ルミノーバ G-300F(「ルミノーバ」は同社の登録商標)
無機粒子4:酸化亜鉛(堺化学工業株式会社製、Candy Zinc 1000(「Candy Zinz」は同社の登録商標)
無機粒子5:蓄光顔料(根本特殊化学株式会社製、ルミノーバ G-300FF(「ルミノーバ」は同社の登録商標)
無機粒子6:導電性粒子(石原産業株式会社社製、ET-500W)
【0118】
1-5.シリコーン樹脂粒子
シリコーン1: シルセスキオキサン結合を有するシリコーン樹脂の粒子(日硝産業株式会社製、トスパール 145(「トスパール」は同社の登録商標)、平均粒子径:4.5μm)
シリコーン2: シルセスキオキサン結合を有するシリコーン樹脂の粒子(日硝産業株式会社製、トスパール 130、平均粒子径:2.0μm)
シリコーン3: シルセスキオキサン結合を有するシリコーン樹脂の粒子(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、XC-99-A8808、平均粒子径:0.7μm)
シリコーン4: シルセスキオキサン結合を有するシリコーン樹脂の粒子(日硝産業株式会社製、トスパール 2000B、平均粒子径:6.0μm)
【0119】
1-6.その他の粒子
ガラスビーズ(ユニチカ株式会社製、UBS-K0005MF、平均粒子径:2.8μm)
【0120】
1-7.その他の成分
重合禁止剤: BASF社製、Irgastab UV-10
【0121】
2.インクジェットインクの調製-1(溶剤系インク)
2-1.分散液の調製
20質量部の無機粒子1と、80質量部の有機溶剤2と、を平均粒径が0.3mmのジルコニアビーズ50質量部と共にポリプロピレン製容器に入れ、ペイントシェイカーを用いて、30分間分散処理を行い、ジルコニアビーズを取り除いて分散液1Aを調製した。
【0122】
無機粒子を無機粒子2~無機粒子5に変更した以外は分散液1Aの調製と同様にして、それぞれ、分散液1B~分散液1Eを調整した。
【0123】
その後、ストークス沈降法を利用した粒度分布分析装置(LUM Japan株式会社製、LUMiSizer)により、分散液中の無機粒子のメディアン径を測定した。
【0124】
有機溶剤、分散液、およびシリコーン樹脂を表1に記載の割合で混合し、30μmのポリプロピレンプリーツフィルター(株式会社ロキテクノ製)で濾過して、インク1~インク6を得た。なお、表1中の「無機粒子」および「シリコーン樹脂粒子」の欄の括弧中に記載した数値は、それぞれの粒子の分散液中のメディアン径および平均粒子径である。
【0125】
【0126】
3.インクジェットインクの調製-2(重合性インク)
3-1.分散液の調製
20質量部の無機粒子1と、80質量部のモノマー1と、を平均粒径が0.3mmのジルコニアビーズ50質量部と共にポリプロピレン製容器に入れ、ペイントシェイカーを用いて、30分間分散処理を行い、ジルコニアビーズを取り除いて分散液2Aを調製した。
【0127】
無機粒子を無機粒子2~無機粒子5に変更した以外は分散液2Aの調製と同様にして、それぞれ、分散液2B~分散液2Dおよび分散液2Fを調整した。
【0128】
無機粒子を無機粒子3に変更し、分散時間を4時間に変更した以外は分散液2Aの調整と同様にして分散液2Eを調整した。
【0129】
無機粒子を無機粒子5に変更し、分散時間を4時間に変更した以外は分散液2Aの調整と同様にして分散液2Gを調整した。
【0130】
50質量部の無機粒子5と、50質量部のモノマー1と、を平均粒径が0.3mmのジルコニアビーズ50質量部と共にポリプロピレン製容器に入れ、ペイントシェイカーを用いて、30分間分散処理を行い、ジルコニアビーズを取り除いて分散液2Hを調製した。
【0131】
50質量部の無機粒子5と、50質量部のモノマー1と、2質量部のシリコーン3と、を平均粒径が0.3mmのジルコニアビーズ50質量部と共にポリプロピレン製容器に入れ、ペイントシェイカーを用いて、30分間分散処理を行い、ジルコニアビーズを取り除いて分散液2Iを調製した。
【0132】
20質量部の無機粒子6と、80質量部のモノマー1と、を平均粒径が0.3mmのジルコニアビーズ50質量部と共にポリプロピレン製容器に入れ、ペイントシェイカーを用いて、30分間分散処理を行い、ジルコニアビーズを取り除いて分散液2Jを調製した。
【0133】
その後、ストークス沈降法を利用した粒度分布分析装置(LUM Japan株式会社製、LUMiSizer)により、分散液中の無機粒子のメディアン径を測定した。
【0134】
モノマー、光重合開始剤、分散液、シリコーン樹脂、および重合禁止剤を表2~表5に記載の割合で混合し、30μmのポリプロピレンプリーツフィルター(株式会社ロキテクノ製)で濾過して、インク7~インク35を得た。表2~表5中の「無機粒子」および「シリコーン樹脂粒子」の欄の括弧中に記載した数値は、それぞれの粒子の分散液中のメディアン径および平均粒子径である。
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
【0139】
4.評価
上記調製したインク1~インク35について、下記の評価を行った。
【0140】
4-1.25℃における粘度
レオメータ(Anton Paar社製 ストレス制御型レオメータ PhysicaMCR、コーンプレートの直径は75mm、コーン角は1.0°)を使用し、せん断速度を1000/secとして、25℃に加熱したそれぞれのインクの粘度を測定した。
【0141】
測定された粘度をもとに、下記基準でそれぞれのインクの粘度を評価した。
〇 インクの粘度は20mPa・s以上500mPa・s以下である
△ インクの粘度は500mPa・sより大きい
【0142】
4-2.沈降復帰性
20mLのガラス製のサンプル管に10gの試料を加え、25℃にて3日間静置させて、サンプル管の底に固形分を堆積させた。堆積物を手で上下に激しく手振りすることで、堆積物がほぐれる手振り回数を測定した。
◎ 1~10回で堆積物がサンプル管の底からほとんど剥がれる。
〇 11~30回で堆積物がサンプル管の底からほとんど剥がれる。
△ 31~60回で堆積物がサンプル管の底からほとんど剥がれる。
× 60回までに堆積物サンプル管の底から剥がれない。
【0143】
4-3.ノズル面の耐擦性
各インクを付着させたメンテナンス布(ザヴィーナCK:KBセーレン社製)をコニカミノルタ社製KM1024iLHEのノズル面に押し当てて、100回摺擦した後、ノズル面の表面を観察した。
〇 傷がほぼ見られない
△ やや傷がみられる
× 大きな傷がみられる
【0144】
4-4.循環安定性
内径4mmの透明チューブにインクを1.0mL/sで1時間循環し、その後、30分間送液を停止した後、再度インクを同流速で30分間循環し、チューブ内に発生する堆積物の様子や循環の様子を観察した。
◎ 送液停止前後で送液の様子に変化なくスムーズに循環できた。
〇 問題なく循環できたが、実験後に内部を確認すると少量の堆積物が見られた。
△ 問題なく循環できるものの、実験後に内部確認するとやや多めの堆積物が見られた。
× 堆積物が発生しチューブ内に詰まりが発生し循環できなくなった。
【0145】
4-5.保存安定性
各インクを70℃で1週間高温静置させた後、循環安定性の評価を実施した。
〇 高温静置前のインクと同等程度の循環安定性でほぼ変化がなかった。
△ 高温静置前のインクと比較してやや循環安定性が劣化した。
【0146】
それぞれのインクの評価結果を表6~表10に示す。なお、表6~表10には、それぞれのインクの粒径比(無機粒子のメディアン径/シリコーン樹脂粒子の平均粒子径)、インクの流量、およびパラメータX(X=(A/B)×C)も示す。
【0147】
【0148】
【0149】
【0150】
【0151】
【0152】
表1~表10から明らかなように、非水系インクジェットインクが無機粒子と、シリコーン樹脂粒子とを有し、シリコーン樹脂粒子の平均粒子径は、0.3μm以上10μm以下であり、シリコーン樹脂粒子の平均粒子径が、無機粒子のメディアン径よりも大きいと、沈降した無機粒子の再分散性が良好であった。
【0153】
[実験2]
実験1で調整したインク9、10、11および13を使用し、流速を変更して1時間循環し、その後、30分間送液を停止した後、再度インクを同流速で30分間循環し、チューブ内に発生する堆積物の様子や循環の様子を観察し、循環安定性を評価した。
◎ 送液停止前後で送液の様子に変化なくスムーズに循環できた。
〇 問題なく循環できたが、実験後に内部を確認すると少量の堆積物が見られた。
△ 堆積物が発生しチューブ内に詰まりが発生しやすかった。
× 堆積物が発生しチューブ内に詰まりが発生し循環できなくなった。
【0154】
評価結果を表11に示す。なお、表11には、それぞれのインクの粒径比(無機粒子のメディアン径/シリコーン樹脂粒子の平均粒子径)、インクの流量、およびパラメータX(X=(A/B)×C)も示す。
【0155】
【0156】
表11から明らかなように、無機粒子とシリコーン樹脂粒子との粒径比に応じてインクの流量を設定することで、循環安定性を高めることができた。
本発明によれば、無機粒子を含む非水系インクジェットインクの使用をより容易にすることができる。そのため、本発明は、非水系インクジェットインクを適用できる用途をさらに広げ、当分野のさらなる発展に寄与すると期待される。