(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136002
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】篩分装置および供給方法
(51)【国際特許分類】
B07B 1/28 20060101AFI20240927BHJP
B07B 1/46 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B07B1/28 Z
B07B1/46 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046947
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 健
(72)【発明者】
【氏名】松永 直啓
【テーマコード(参考)】
4D021
【Fターム(参考)】
4D021AA02
4D021AB02
4D021CA07
4D021CB12
4D021DA01
4D021DA13
(57)【要約】
【課題】篩分装置に関し、篩網に供給される粉体量を一定の範囲に制御することが可能な技術の提供をする。
【解決手段】篩分装置は、造粒後の粉体を篩い分ける篩網が張設された篩枠と、篩枠の上部を覆う蓋体であって、上面に造粒後の粉体が投入される投入口が開口する蓋体と、篩枠内の、蓋体と篩網との間の空間に篩枠とともに振動可能に設けられ、底面部と底面部に連なる壁面部とを有する容器体と、一端が造粒後の粉体を貯留する貯留槽の排出口に接続され、貯留槽の排出口から投入口を通じて蓋体と篩網との間の空間に延伸し、他端に容器体の底面部の中央上方側に対向して開口する開口端を有する配管部と、を備え、容器体の底面部によって、貯留槽から篩網に排出される粉体の流量が制限される。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
造粒後の粉体を篩い分ける篩網が張設された篩枠と、
前記篩枠の上部を覆う蓋体であって、上面に前記造粒後の粉体が投入される投入口が開口する蓋体と、
前記篩枠内の、前記蓋体と前記篩網との間の空間に前記篩枠とともに振動可能に設けられ、底面部と前記底面部に連なる壁面部とを有する容器体と、
一端が前記造粒後の粉体を貯留する貯留槽の排出口に接続され、前記貯留槽の排出口から前記投入口を通じて前記蓋体と前記篩網との間の空間に延伸し、他端に前記容器体の底面部の中央上方側に対向して開口する開口端を有する配管部と、を備え、
前記容器体の底面部によって、前記貯留槽から前記篩網に排出される粉体の流量が制限される、
篩分装置。
【請求項2】
前記配管部の開口端は前記容器体の底面部から離間するとともに、前記配管部の開口端と前記底面部との間に形成される粉体群によって、前記貯留槽から前記篩網に排出される粉体の流量が制限される、請求項1に記載の篩分装置。
【請求項3】
前記容器体の壁面部には、前記配管部の開口端と前記底面部との間の離間距離に対応して形成された前記粉体群の安息角で規定される高さから所定範囲となる高さの間隙が前記底面部との間に設けられる、請求項1または2に記載の篩分装置。
【請求項4】
前記容器体の壁面部には、前記配管部の開口端と前記底面部との間に堆積する前記粉体群の斜面で規定される高さから所定範囲となる高さの間隙が前記底面部との間に設けられる、請求項1または2に記載の篩分装置。
【請求項5】
前記配管部の開口端と前記容器体の底面部との間の離間距離が20mmである場合には、前記容器体の壁面部に形成される間隙の高さは2mmから8mmである、請求項1または2に記載の篩分装置。
【請求項6】
前記配管部は、可撓性を有する弾性部材で構成される、請求項1または2に記載の篩分装置。
【請求項7】
前記容器体は、逆円錐台状である、請求項1または2に記載の篩分装置。
【請求項8】
前記容器体の壁面部には、対向する位置に造粒後の粉体に含まれる前記粉体の塊を排出する一対の排出穴が形成される、請求項1または2に記載の篩分装置。
【請求項9】
前記排出穴の径の大きさは、前記粉体の塊の最大径に対して5mmから10mmを加えた大きさである、請求項8に記載の篩分装置。
【請求項10】
前記容器体の壁面部に形成される間隙は、前記篩枠の振動によって篩網を通過しない粉体が排出される、不通過物の排出口側の壁面領域以外の壁面領域に形成される、請求項3に記載の篩分装置。
【請求項11】
前記容器体の壁面部に形成される間隙は、前記容器体の補強部材が接合された壁面領域をさらに除いて形成される、請求項10に記載の篩分装置。
【請求項12】
篩分装置への供給方法であって、
篩分装置は、
造粒後の粉体を篩い分ける篩網が張設された篩枠と、
前記篩枠の上部を覆う蓋体であって、上面に前記造粒後の粉体が投入される投入口が開口する蓋体と、
前記篩枠内の、前記蓋体と前記篩網との間の空間に前記篩枠とともに振動可能に設けられ、底面部と前記底面部に連なる壁面部とを有する容器体と、
一端が前記造粒後の粉体を貯留する貯留槽の排出口に接続され、前記貯留槽の排出口から前記投入口を通じて前記蓋体と前記篩網との間の空間に延伸し、他端に前記容器体の底面部の中央上方側に対向して開口する開口端を有する配管部と、を備え、
前記容器体の底面部によって、前記貯留槽から前記篩網に排出される粉体の流量が制限される、供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体の分級および選別に用いられる篩分装置および供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、篩網の振動により、篩網上に供給された粉体を当該篩網を通過する粉体と通過しない粉体とに篩い分けるように構成された篩分装置が知られている(特許文献1参照)。篩分装置により、造粒機等で造粒された粉体は、篩網を通過する粒径の粉体と篩網を通過しない粒径の粉体とに選別される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、造粒後の粉体を貯留する貯留槽を介して、造粒機等で造粒された粉体が篩分装置に供給される場合がある。このような場合では、例えば、貯留槽と篩分装置とを接続する配管経路に設けられたバタフライ弁等を通じて、篩分装置に供給される粉体量が一定範囲の量になるように調整される。しかしながら、バタフライ弁等を通じて貯留槽から篩分装置に供給される粉体量を調整する場合には、開度が大きいときには過剰供給が発生し、開度が小さいときには閉塞が生じるという課題があった。造粒後の粉体を篩い分ける処理の効率からは、篩分装置の篩網に供給される粉体の過剰供給を制限できることが好ましい。本発明は、篩分装置に関し、篩網に供給される粉体量を一定の範囲に制御することが可能な技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意に検討を行い、次の構成を採用することで篩分装置が上記課題を解決することを見出した。すなわち、一実施形態に係る篩分装置は、蓋体と篩網との間の篩枠内の空間に、篩枠とともに振動可能に設けられ、底面部と前記底面部に連なる壁面部とを有する桶状に形成された容器体を配置する。また、一端が造粒後の粉体を貯留する貯留槽の排出口に接続され、蓋体と篩網との間の空間に延伸し、他端に容器体の底面部の中央上方側に対向して開口する開口端を有する配管部を設ける。そして容器体の底面によって、貯留槽から篩網に排出される粉体の流量を制限する。
【0006】
より詳細な構成は、以下の通りである。
[1]
造粒後の粉体を篩い分ける篩網が張設された篩枠と、
前記篩枠の上部を覆う蓋体であって、上面に前記造粒後の粉体が投入される投入口が開口する蓋体と、
前記篩枠内の、前記蓋体と前記篩網との間の空間に前記篩枠とともに振動可能に設けられ、底面部と前記底面部に連なる壁面部とを有する容器体と、
一端が前記造粒後の粉体を貯留する貯留槽の排出口に接続され、前記貯留槽の排出口から前記投入口を通じて前記蓋体と前記篩網との間の空間に延伸し、他端に前記容器体の底面部の中央上方側に対向して開口する開口端を有する配管部と、を備え、
前記容器体の底面部によって、前記貯留槽から前記篩網に排出される粉体の流量が制限される、
篩分装置。
[2]
前記配管部の開口端は前記容器体の底面部から離間するとともに、前記配管部の開口端と前記底面部との間に形成される粉体群によって、前記貯留槽から前記容器体に排出される粉体の流量が制限される、[1]に記載の篩分装置。
[3]
前記容器体の壁面部には、前記配管部の開口端と前記底面部との間の離間距離に対応して形成された前記粉体群の安息角で規定される高さから所定範囲となる高さの間隙が前記底面部との間に設けられる、[1]または[2]に記載の篩分装置。
[4]
前記容器体の壁面部には、前記配管部の開口端と前記底面部との間に堆積する前記粉体群の斜面で規定される高さから所定範囲となる高さの間隙が前記底面部との間に設けられる、[1]または[2]に記載の篩分装置。
[5]
前記配管部の開口端と前記容器体の底面部との間の離間距離が20mmである場合には、前記容器体の壁面部に形成される間隙の高さは2mmから8mmである、[1]または[2]に記載の篩分装置。
[6]
前記配管部は、可撓性を有する弾性部材で構成される、[1]または[2]に記載の篩分装置。
[7]
前記容器体は、逆円錐台状である、[1]または[2]に記載の篩分装置。
[8]
前記容器体の壁面部には、対向する位置に造粒後の粉体に含まれる前記粉体の塊を排出する一対の排出穴が形成される、[1]または[2]に記載の篩分装置。
[9]
前記排出穴の径の大きさは、前記粉体の塊の最大径に対して5mmから10mmを加えた大きさである、[8]に記載の篩分装置。
[10]
前記容器体の壁面部に形成される間隙は、前記篩枠の振動によって篩網を通過しない粉体が排出される不通過物の排出口側の壁面領域以外の壁面領域に形成される、[3]に記載の篩分装置。
[11]
前記容器体の壁面部に形成される間隙は、前記容器体の補強部材が接合された壁面領域をさらに除いて形成される、[10]に記載の篩分装置。
[12]
篩分装置への供給方法であって、
篩分装置は、
造粒後の粉体を篩い分ける篩網が張設された篩枠と、
前記篩枠の上部を覆う蓋体であって、上面に前記造粒後の粉体が投入される投入口が開口する蓋体と、
前記篩枠内の、前記蓋体と前記篩網との間の空間に前記篩枠とともに振動可能に設けられ、底面部と前記底面部に連なる壁面部とを有する容器体と、
一端が前記造粒後の粉体を貯留する貯留槽の排出口に接続され、前記貯留槽の排出口から前記投入口を通じて前記蓋体と前記篩網との間の空間に延伸し、他端に前記容器体の底面部の中央上方側に対向して開口する開口端を有する配管部と、を備え、
前記容器体の底面部によって、前記貯留槽から前記篩網に排出される粉体の流量が制限される、供給方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、篩分装置に関し、篩網に供給される粉体量を一定の範囲に制御するこ
とが可能な技術が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、比較例に係る篩分装置の概略構成を説明する斜視図である。
【
図2】
図2は、貯留槽から篩分装置に投入される粉体量の変動を説明する図である。
【
図3】
図3は、実施例1に係る篩分装置の定量供給を説明する図である。
【
図4】
図4は、実施例1における粉体の定量供給の評価結果を説明する図である。
【
図5】
図5は、実施例2に係る篩分装置1の構成を説明する図である。
【
図6】
図6は、実施例2に係る篩分装置の緩衝容器体の構成の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、実施例2に係る篩分装置の定量供給を説明する図である。
【
図8】
図8は、実施例2に係る篩分装置への粉体の供給量の推移を説明する図である。
【
図9】
図9は、実施例2における粉体の定量供給の評価結果を説明する図である。
【
図10】
図10は、実施例3に係る篩分装置の緩衝容器体の構成の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、実施例3における粉体の定量供給の評価結果を説明する図である。
【
図12】
図12は、実施形態に係る緩衝容器体の、間隙の隙間高さに関する粉体の定量供給の評価結果を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、発明を実施するための一の形態(以下、一実施形態、実施形態ともいう)に係る篩分装置を説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本篩分装置は実施形態の構成には限定されない。また、本実施形態に開示される構成部品の寸法、材質、形状、相対配置などは、特に記載がない限り発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0010】
(比較例)
先ず、
図1を用いて比較例に係る篩分装置を説明する。
図1は、比較例に係る篩分装置301の構成を説明する斜視図である。
図1に示されるように、篩分装置301は、円筒形状の上部篩枠2aおよび下部篩枠2bから構成される篩枠2を有し、上部篩枠2aと下部篩枠2bとは篩網を支持する支持枠2cを挟み一体的に結合されている。篩分装置301は、上部篩枠2aの上方側に上部篩枠2aの上部を覆う円錐台形状の蓋体3を有し、下部篩枠2bの下方側には、支持枠2cを挟んで一体的に結合される上部篩枠2aおよび下部篩枠2bを加振する加振部5を有している。篩分装置301の篩枠2は、スプリング7を介して架台6に弾性的に支持されるとともに、加振部5の振動により加振されるように構成されている。
【0011】
加振部5は、例えば、回転軸の上端および下端に偏心させて配置されたウェイトを有する振動モータを備え、偏心された両ウェイトの回転軸周りの回転により加振部5および加振部5に結合された篩枠2が加振される。加振部5は、例えば、偏心させて配置されたウェイト間の相対的な位相角の変更により加振の振動状態が変更可能であり、篩分装置301に投入された粉体の種別や性質、粉体粒の大きさに応じて適宜に設定される。
【0012】
蓋体3は、篩枠2の上部篩枠2aに対して着脱可能に設けられ、蓋体3の略中央部には投入口3aが開口する。上部篩枠2aの下方側には、粉体を篩い分ける篩網が張設された支持枠2cが配置され、篩網の網面が水平と略平行になるように設けられる。篩網の網目の大きさは、篩い分ける粉体の粒径に応じて適宜に設定される。上部篩枠2aの側面部に
は、篩網を通過しなかった粉体および異物を排出する排出部4aが設けられ、下部篩枠2bの側面部には、篩網を通過した粉体を回収する回収部4bが設けられる。
【0013】
このように、本実施形態に係る篩分装置301は、投入口3aから篩枠2の内部に投入された造粒後の粉体を、加振部5の振動により、支持枠2cに張設された篩網を通過する粉体と通過しない粉体とに篩い分ける(以下、分級ともいう)。造粒後の粉体において、篩網を通過しなかった大きい粒径の粉体および異物は上部篩枠2aの側面部に設けられた排出部4aから排出されるとともに、篩網を通過する所定の粒径以下の粉体は下部篩枠2bの側面部に設けられた回収部4bを通じて回収される。
【0014】
篩分装置301により篩い分けられた粉体を製品として製造する工程においては、例えば、造粒機等で造粒された粉体が、コンベア等の搬送機を介して篩分装置301の投入口3aの上方側に配置された貯留槽に搬入される。貯留槽に搬入された造粒後の粉体は、貯留槽と篩分装置301とを接続する配管経路を通じて投入口3aから篩枠2の内部に投入される。篩枠2の内部に投入される造粒後の粉体量は、例えば、配管経路に設けられたバタフライ弁、ボール弁等の調整弁を介して投入量が一定範囲の量となるように調整される。しかしながら、投入量が一定範囲の量になるように調整弁を設定しても、篩枠2の内部に投入される造粒後の粉体量に過剰供給が生じる場合があった。
【0015】
図2は、貯留槽から篩分装置301に投入される粉体量の変動を説明する図である。
図2においては、配管経路に設けられたバタフライ弁等によって投入量が調整された際の、篩枠2の内部に投入された粉体量の推移が例示される。
図2の縦軸は篩枠2の内部に投入された粉体の重量(kg)を表し、横軸は時間(min)を表す。一点鎖線で示されるZ1は、バタフライ弁等によって調整された投入量(例えば、平均値)を表す。
図2に例示の投入量Z1は、例えば、106kgの粉体を20分間で篩分可能に設定された、5.3kg/minである。黒丸で連接されたグラフG1、中抜き丸で連接されたグラフG2、黒三角で連接されたグラフG3のそれぞれは、実際に貯留槽から篩枠2の内部に投入される粉体量の推移を表す。
【0016】
図2において、楕円形の囲み枠Z2で示されるように、貯留槽から篩枠2の内部に投入される粉体量は、グラフG1からG3の何れにおいても、投入開始から略10分間で予め調整された投入量Z1を超えて過剰供給されていることが判る。すなわち、比較例の構成では、貯留槽から篩分装置301に投入される粉体量が十分には均一化できず、粉体が一定範囲を超えて過剰供給される場合が生じ得る。過剰供給が生じた場合には、篩分装置301の粉体を篩い分ける処理量を超える一部の粉体が上部篩枠2aの側面部に設けられた排出部4aを通じて外部に排出されることになる。本来は、篩網を通過して製品として回収される粉体が排出部4aを通じて不通過物として排出されるため、篩分装置301の粉体を篩い分ける篩分収率の劣化を招いていた。ここで、篩分収率は、例えば、篩分処理に係る造粒後の粉体量に対する、篩網を通過して回収された粉体量の比とする指標である。造粒後の粉体を分級、選別する篩分装置301では、貯留槽から篩分装置301に投入される投入量は一定範囲の量に制限されることが好ましい。
【0017】
(実施例1)
次に、実施例1に係る篩分装置1を説明する。
図3は、実施例1に係る篩分装置1の定量供給を説明する図である。
図3においては、一端が造粒後の粉体を貯留する貯留槽50の排出口51に接続され、他端が篩分装置1の篩網8に対向して開口する配管部30を通じて、当該粉体を供給する形態の篩分装置1の側方断面図が例示される。
【0018】
なお、実施例1に係る篩分装置1は、
図1を用いて説明した比較例に係る篩分装置301と同様の構造を有している。すなわち、実施例1においても、篩分装置1は、円筒形状
の上部篩枠2aおよび下部篩枠2bから構成される篩枠2を有し、上部篩枠2aと下部篩枠2bとは篩網を支持する支持枠2cを挟み一体的に結合される。篩分装置1は、上部篩枠2aの上方側に上部篩枠2aの上部を覆う円錐台形状の蓋体3を有し、下部篩枠2bの下方側には、支持枠2cを挟んで一体的に結合される上部篩枠2aおよび下部篩枠2bを加振する加振部5を有する。篩分装置1の篩枠2は、スプリング7を介して架台6に弾性的に支持されるとともに、加振部5の振動により加振されるように構成される。
【0019】
蓋体3は、篩枠2の上部篩枠2aに対して着脱可能に設けられ、蓋体3の略中央部には投入口3aが開口する。上部篩枠2aの下方側には、粉体を篩い分ける篩網が張設された支持枠2cが配置され、篩網の網面が水平と略平行になるように設けられる。篩網の網目の大きさは、篩い分ける粉体の粒径に応じて適宜に設定される。上部篩枠2aの側面部には、篩網を通過しなかった粉体および異物を排出する排出部4aが設けられ、下部篩枠2bの側面部には、篩網を通過した粉体を回収する回収部4bが設けられる。
【0020】
図3に示されるように、実施例1に係る篩分装置1においては、配管部30を通じて貯留槽50に貯留された造粒後の粉体が投入される。配管部30は排出口51と接続される接続部31と、接続部31と供給配管33とを繋ぐ接続継手32とを備え構成される。接続継手32は、略逆錐台状の管状部材であり、貯留槽50の排出口51の管径と供給配管33の管径とを整合させるために下方側に向かって管径が減少する構造を有する。供給配管33は、貯留槽50から排出された造粒後の粉体を篩分装置1の支持枠2cに張設された篩網8上に供給するための管状の部材である。供給配管33は蓋体3の略中央部に設けられた投入口3aを通じて上部篩枠2aの内部の空間に延伸する。供給配管33の開口端34は、上部篩枠2aの内部の空間において、支持枠2cに張設された篩網8の略中央の上方側に篩網8に対向して開口する。
【0021】
実施例1の形態では、篩分装置1は、篩網8に対向して開口する開口端34から供給される粉体の流量を、粉面シール法を用いて一定範囲の量に制限する。ここで、粉面シール法とは、開口端34と篩網8との間に形成される円錐台状の粉体群90によって開口端34をシールし、供給配管33を通じて篩網8上に供給される粉体の流量を一定範囲の量に制限する方法である。つまり、供給配管33を通じて篩網8上に投入された粉体は、篩網8の面上に、開口端34に対向する位置を中心として円形状に拡散しながら上方側に積み上がり、開口端34と篩網8との間の離間距離に応じて円錐台状の粉体群90を形成することになる。そして、篩網8上に形成された円錐台状の粉体群90は、供給配管33の開口端34をシール(塞ぐ)するため、供給配管33を通じて篩網8上に供給される粉体の流量が制限されることになる。実施例1の形態では、供給配管33の開口端34と篩網8との間に形成される粉体群90による粉面シール法を採用することで、貯留槽50から投入される造粒後の粉体量を一定範囲の量に制限することが可能になる。実施例1に係る篩分装置1においては、貯留槽50と篩分装置1とが接続される配管経路上の、粉体の供給量の多寡を調整するバタフライ弁等の調整弁が設けられることもない。
【0022】
図4は、実施例1における粉体の定量供給の評価結果を説明する図である。
図4のテーブルTb1に示されるように、篩網8と開口端34との離間距離を5mm、10mm、15mm、20mmの4段階に離間させて、粉面シール法による定量供給を総合的に評価した。なお、定量供給の評価においては、予め取得された調整弁による篩分収率と、各離間距離に対する篩分収率とを相対的に比較した。比較対象となる篩分収率は、例えば、調整弁の流量が、106kgの粉体を20分間で篩分可能に設定された際の流量(5.3kg/min)である。各離間距離においては、106kgといった処理単位の粉体を貯留槽50に貯留させ、篩分収率と、貯留された粉体の篩分装置1への供給が完了するまでの時間を測定した。
【0023】
テーブルTb1に示されるように、離間距離が5mmの場合では、粉体の篩分装置1への供給が完了するまでの時間は30分であり、篩分収率は10ptの改善効果が得られた。同様にして、離間距離が10mm、15mm、20mmのそれぞれにおける粉体の供給が完了するまでの時間は22分、17分、12分であり、篩分収率は7pt、5pt、1ptの改善効果が得られた。各離間距離に対する粉体の供給が完了するまで時間の観点からは、篩網8と開口端34との離間距離は10mm以上が好ましいことが判る。また、各離間距離に対する篩分収率の観点からは、篩網8と開口端34との離間距離は15mm以下が好ましいことが判る。篩分収率および粉体供給に係る時間を加味した総合評価としては、篩網8と開口端34との離間距離は10mmから15mmが好適であることが判明した。
【0024】
実施例1の形態では、篩網8と開口端34との離間距離を10mmから15mm程度に調整することで、粉体の篩網8への定量供給が良好となることが確認された。しかしながら、篩網8の面上に粉体を供給する実施例1の形態では、改善の余地が残されていることも確認された。すなわち、粉体群90が形成された状態で、供給配管33を通じて連続的に造粒後の粉体を供給した場合には、開口端34と対向する領域の篩網8に対して網目が閉塞するという現象が確認された。この現象は、開口端34と対向する篩網8の領域においては、供給配管33から供給される粉体の流入圧力が相対的に高いことに起因するものと推測される。供給された粉体を篩い分ける篩網8の網目が閉塞した場合には、篩網8の篩い分けに係る有効面積が減少することになり、篩分収率が低下する虞があった。
【0025】
(実施例2)
次に、実施例2に係る篩分装置1を説明する。
図5は、実施例2に係る篩分装置1の構成を説明する側方断面図である。
図5に示されるように、実施例2に係る篩分装置1は、蓋体3と篩網8との間の上部篩枠2a内の空間に緩衝容器体10を備える点で、実施例1に係る篩分装置1と相違する。
【0026】
本発明者らは鋭意に検討を行い、
図5に示される構成を採用することで篩分装置1が実施例1における課題を解決できることを見出した。すなわち、実施例2に係る篩分装置1は、蓋体3と篩網8との間の上部篩枠2a内の空間に、供給配管33を通じて供給される造粒後の粉体を、粉面シール法による流量制限を可能とする桶状の緩衝容器体10を配置する。緩衝容器体10は、加振部5の振動により篩枠2とともに振動可能に構成される。緩衝容器体10は、供給配管33の開口端34との間の離間距離に応じて形成される粉体群90(
図7参照)による粉面シールが可能な、下方側をほぼ閉塞する底面部11を備える。そして、緩衝容器体の底面部に連なる壁面部12には、振動時において、供給配管33の開口端34との間の離間距離に応じて形成された粉体群90を篩網8の網面上に供給させる間隙を設ける。
【0027】
このような緩衝容器体10を備えることにより、実施例2に係る篩分装置1は、供給配管33を通じて貯留槽50から排出された造粒後の粉体の流量を、緩衝容器体10の底面部11と開口端34との間の離間距離に応じて形成される粉体群90によって一定範囲の量に制限できる。したがって、緩衝容器体10の底面部11によって粉体の流量は制限されるといえる。そして、実施例2に係る篩分装置1は、緩衝容器体10の底面部11と壁面部12との間に設けられた間隙を通じて、供給配管33の開口端34と底面部11との間に形成された粉体群90を振動とともに、篩網8の網面上に放出できる。実施例2の篩分装置1では、粉面シール法による粉体の流量制限が緩衝容器体10の底面部11を対象として適用されるため、篩網8における網目が閉塞することもない。
【0028】
図6は、実施例2に係る篩分装置1の緩衝容器体10の構成の一例を示す図である。
図6(a)には、緩衝容器体10を上面視した上面図、
図6(b)、(c)には、緩衝容器
体10を側面視した側面図が例示されている。なお、
図6(b)は、
図6(a)においてA方向から側面視した側面図であり、同様にして、
図6(c)はB方向から側面視した側面図である。
【0029】
図6(a)から(c)に示されるように、緩衝容器体10は桶状の構造体である。緩衝容器体10は、上方側が開口し、下方側をほぼ閉塞する底面部11と、底面部11に連なって湾曲する壁面部12とを有する逆円錐台状に構成されている。ただし、緩衝容器体10は桶状または逆円錐台状のものに限定される訳ではない。例えば、緩衝容器体10は、筒状、直方体、台状、その他の多面体であってもよい。要するに、緩衝容器体10は底面部11と、底面部11に連なって湾曲する壁面部12とを有し、上方側が開口するものであればよい。緩衝容器体10の壁面部12には、支持部材14が等間隔に複数に設けられ、蓋体3の内面側にボルト等を介して取付可能な取付穴14aが設けられている。既に説明したように、緩衝容器体10は、蓋体3と篩網8との間の上部篩枠2a内の空間に、篩枠2とともに振動可能なように構成される。このため、支持部材14は加振時における緩衝容器体10の補強部材を兼ねており、支持部材14は、緩衝容器体10の開口する上方側から壁面部12に沿って底面部11に延伸し、壁面部12および底面部11の外面に溶接可能に構成される。
【0030】
なお、
図6では、支持部材14が等間隔に4箇所に設けられた形態を例示するが、支持部材14の数量は篩分装置1の大きさ、篩分対象の粉体の種別、粒径の大きさ、処理量等に応じて適宜に設けられる。また、支持部材14は必ずしも等間隔に設けられなくともよい。また、
図6では、緩衝容器体10は蓋体3の内面に取付可能な形態を例示するが、緩衝容器体10は上部篩枠2aの内面に取付可能な形態であってもよく、上部篩枠2aを構成する構造体として蓋体3と篩網8との間に設けられてもよい。緩衝容器体10の壁面部12と底面部11とが連接する部位には、間隙13が壁面部12の周方向に沿って複数に設けられる。なお、壁面部12と底面部11との間に設けられる間隙13の、底面部11から上側方向への高さ(以下、「隙間高さ」ともいう)H1については、
図12を用いて後述する。
【0031】
緩衝容器体10に設けられる間隙13は、
図6(a)、(b)に示されるように、壁面部12から底面部11に延伸する支持部材14が位置する壁面領域を除いて形成されている。既に説明したように、支持部材14は加振時における緩衝容器体10の補強部材を兼ねるため、当該領域を間隙13が設けられる領域から除くことで緩衝容器体10の強度が確保される。
【0032】
また、
図6(a)、(c)に示されるように、緩衝容器体10に設けられる間隙13は、緩衝容器体10が形成する逆円錐台の形状の中心軸(底面部11の上面の中心)から見た壁面部12の周方向のうち、所定方向の壁面領域を除いて形成されている。ここで、所定方向とは、上部篩枠2aの側面部において、篩網8を通過しなかった粉体および異物を排出する排出部4aが設けられる方向である。この所定方向に該当する壁面部12の部分は、
図6(a)および
図6(c)において、閉塞箇所P1によって例示されている。排出部4aが設けられる上部篩枠2aの内壁面には、排出部4aに連通する排出口が開口する。間隙13が形成される領域から所定方向の領域を除くことで、緩衝容器体10は、振動時に底面部11から放出される粉体が上部篩枠2aの内壁面に開口する排出口を通じて排出部4aから排出されることを防止できる。したがって、排出部4aに連通する排出口は、篩網を通過しなかった粉体および異物を排出するので、不通過物の排出口ということができる。
【0033】
図7は、実施例2に係る篩分装置1による定量供給の状態を説明する図である。
図7においては、蓋体3と篩網8との間の上部篩枠2a内の空間に設けられた緩衝容器体10を
介し、篩網8に粉体を供給する形態の篩分装置1の側方断面図が例示される。緩衝容器体10は、
図6等に示されるように、支持部材14に設けられた取付穴14aを介して蓋体3に取付けられ、蓋体3と篩網8との間の上部篩枠2a内の空間に、篩枠2とともに振動可能に配置される。緩衝容器体10の底面部11は、水平に対して平行であり、底面部11と壁面部12との間に設けられた間隙13を通じて、下方側に張設された篩網8の網面上に粉体を放出するように配置される。なお、配管部30は、
図3を用いて説明したように、接続部31を介して貯留槽50の排出口51に接続されている。貯留槽50に搬送された造粒後の粉体は、接続部31と供給配管33とを繋ぐ接続継手32(
図3等参照)を介して供給配管33の管内に流入される。供給配管33の開口端34は、底面部11の中央上方側に対向して開口することになる。
【0034】
緩衝容器体10の底面部11は、略中央の上方側に対向して開口する供給配管33の開口端34と底面部11上面との間の離間距離R1に応じて形成される粉体群90によって、供給配管33を通じて流入される粉体の流量を一定範囲の量に制限する。なお、実施例2の形態において、底面部11と開口端34との間に形成された粉体群90によって粉体の流量を制限する粉面シール法が適用される供給配管33は、シリコン材等の可撓性を有するフレキシブルな弾性部材で構成されることが望ましい。供給配管33にシリコン材等の可撓性を有するフレキシブルな弾性部材を採用することで、加振時における緩衝容器体10の振動が吸収されるため、配管部30を介して接続された貯留槽50への振動の伝達が緩衝できる。
【0035】
粉面シールによって流量が制限された状態では、底面部11と開口端34との間に形成された粉体群90は略円錐台状の形状を有する。緩衝容器体10の振動に伴い、略円錐台状の粉体群90を構成する造粒後の粉体は、底面部11と壁面部12との間に設けられた間隙13を通じて下方側に張設された篩網8の網面上に放出される。
【0036】
図8は、実施例2に係る篩分装置1への粉体の供給量の推移を説明する図である。
図8の縦軸は篩枠2の内部に投入された粉体の重量(kg)を表し、横軸は時間(min)を表す。一点鎖線で示されるZ1は、所定の処理単位(例えば、106kg)の粉体を20分間で篩分可能とする供給量の目安(5.3kg/min)を表す。黒丸で連接されたグラフG4、中抜き丸で連接されたグラフG5のそれぞれは、緩衝容器体10を通じて、貯留槽50から上部篩枠2aに流入される粉体量の推移を表す。なお、各グラフは、造粒後の粉体が供給される配管部30の開口端34と緩衝容器体10の底面部11上面との間の離間距離は5mmとし、底面部11と壁面部12との間に設けられる間隙13の隙間高さH1を5mmとして測定された。
【0037】
図8に示されるように、貯留槽50から上部篩枠2aに流入される粉体量は、変動があるものの、5分から20分の期間において供給量の目安であるZ1近傍で一定範囲の量が供給されていることが判る。例えば、比較例に係る
図2の楕円形の囲み枠Z2で示されるように、粉体の過剰供給が生じることはない。上部篩枠2a内の空間に篩枠2とともに振動可能に設けられた緩衝容器体10を備え、供給配管33の開口端34と底面部11との間に形成される粉体群90による粉面シールを採用する実施例2の形態では、安定した粉体供給が可能であることが確認された。
【0038】
図9は、実施例2における粉体の定量供給の評価結果を説明する図である。
図9のテーブルTb2に示されるように、緩衝容器体10の底面部11と開口端34との間の離間距離R1を5mm、11mm、14mm、20mmの4段階に離間させて、粉面シール法による定量供給を総合的に評価した。なお、緩衝容器体10の底面部11と壁面部12との間に設けられる間隙13の隙間高さH1は、5mm、8mmの2通りで評価する。定量供給の評価においては、予め取得された調整弁による篩分収率と、各離間距離に対する篩分
収率とを相対的に比較した。比較対象となる篩分収率は、実施例1と同様である。各離間距離においては、所定の処理単位の粉体を貯留槽50に貯留させ、篩分収率と、貯留された粉体の篩分装置1への供給が完了するまでの時間を測定した。
【0039】
テーブルTb2に示されるように、離間距離R1が5mm、間隙13の隙間高さH1が5mmの場合では、粉体の篩分装置1への供給が完了するまでの時間は28分であり、篩分収率は9ptの改善効果が得られた。また、間隙13の隙間高さH1が8mmの場合では、粉体の篩分装置1への供給が完了するまでの時間は25分であり、篩分収率は8ptの改善効果が得られた。
【0040】
同様にして、離間距離が11mm、14mm、20mmのそれぞれについて、間隙13の隙間高さH1が5mmの場合では、粉体供給完了に要する時間は20分、19分、13分であり、篩分収率は7pt、6pt、1ptの改善効果が得られた。また、間隙13の隙間高さH1が8mmの場合では、粉体供給完了に要する時間は18分、17分、11分であり、篩分収率は6pt、5pt、0ptの改善効果が得られた。
【0041】
篩分収率の観点からは、離間距離R1は、5mmから14mm程度が好ましいことが判る。また、底面部11と壁面部12との間に設けられる間隙13の隙間高さH1は、5mm程度から8mm程度が好ましいことが判る。篩分収率および粉体供給完了に要する時間を加味した総合評価としては、篩網8と開口端34との離間距離は11mmから14mmが好適であることが判明した。
【0042】
実施例2の形態では、緩衝容器体10の底面部11と開口端34との間の離間距離R1を10mmから15mm程度、間隙13の隙間高さH1を5mm程度から8mm程度に調整することで、粉体の篩網8への定量供給が良好となることが確認された。しかしながら、実施例2の形態においても改善の余地が残されていることが判明した。実施例2の篩分装置1の評価試験において、供給配管33を通じて流入される造粒後の粉体中に粒径が20mm程度の塊が含まれることが確認された。造粒後の粉体中に含まれる粒径20mm程度の塊は、連続する篩分処理中に、底面部11と開口端34との間に挟まり、供給配管33を閉塞させる虞があった。
【0043】
造粒後の粉体中に含まれる粉体の塊は、造粒機によって造粒された粉体の、貯留槽50に貯留される迄の処理過程において偶発的に発生し、混入されるものと推定される。このような処理過程として、例えば、造粒後の粉体を冷却する冷却過程、造粒後の粉体を搬送する搬送過程、搬送された造粒後の粉体を貯留槽50に輸送する輸送過程、貯留槽50における貯留過程等が考えられる。粉体の塊は、上記処理過程の何れの過程で生じ得るか、あるいは、これらの処理過程の組合せで生じ得るものなのかが不明のため、篩分装置1に至る処理過程で除外することは困難であった。
【0044】
(実施例3)
実施例3に係る篩分装置1は、実施例2の形態で確認された課題を解決するため、次の構成を採用した。すなわち、実施例3係る篩分装置1では、粉面シール法によって粉体の流量を制限する際の、緩衝容器体10の底面部11と、供給配管33の開口端34との間の離間距離R1を20mmに設定する。そして、緩衝容器体10の壁面部12には、粉体の塊を排出するための排出穴を備えるように構成した。このような構成により、粉面シール法による流量を制限する際の、粒径20mm程度の粉体の塊を起因とする、緩衝容器体10の底面部11と供給配管33の開口端34との間の目詰まり、供給配管33の閉塞が防止できる。また、供給配管33を通じて流入された造粒後の粉体の塊が緩衝容器体10の外部に排出可能になる。実施例3係る篩分装置1においては、造粒後の粉体中に混入された粉体の塊を排出しながら、粉体の篩網8への定量供給が可能になる。
【0045】
図10は、実施例3に係る篩分装置1の緩衝容器体10の構成の一例を示す図である。
図10(a)には、緩衝容器体10を上面視した上面図、
図10(b)、(c)には、緩衝容器体10を側面視した側面図が例示されている。なお、
図10(b)は、
図10(a)においてC方向から側面視した側面図であり、同様にして、
図10(c)はD方向から側面視した側面図である。なお、実施例3における緩衝容器体10の構造は、実施例2における緩衝容器体10と同様の構造を有し、壁面部12に粉体の塊を排出する排出穴15が設けられる点で相違する。
【0046】
図10(a)から(c)に示されるように、排出穴15は、緩衝容器体10を構成する壁面部12の対向する一対の位置に設けられる。排出穴15が設けられる位置は、壁面部12から底面部11に延伸する支持部材14が位置する領域以外であることが好ましい。支持部材14は加振時における緩衝容器体10の補強部材を兼ねるため、当該領域を排出穴15が設けられる領域から除くことで緩衝容器体10の強度が確保できる。また、排出穴15が設けられる位置は、上部篩枠2aの側面部において、篩網を通過しなかった粉体および異物を排出する排出部4aが設けられる所定方向の領域以外であることが好ましい。なお、
図6(a)、(c)と同様に、
図10(a)、(b)においても、所定方向の領域として、閉塞箇所P1が例示されている。緩衝容器体10は、振動時に排出穴15を通じて排出される塊以外の粉体が上部篩枠2aの内壁面に開口する排出口を通じて排出部4aから排出されることを防止できる。
【0047】
なお、
図10においては、間隙13が形成された壁面部12の対向する一対の位置(2箇所)に排出穴15が設けられた形態例である。緩衝容器体10の壁面部12に設けられる排出穴15の数量は、排出穴15を介して粉体の塊を外部に排出する処理効率の観点から、緩衝容器体10の壁面部12に設けられる排出穴15の数量は複数であることが好ましい。排出穴15の数量は、篩分装置1の大きさ、篩分対象の粉体の種別、粒径の大きさ、処理量等に応じて2以上の数量に適宜に設けられる。
【0048】
図11は、実施例3における粉体の定量供給の評価結果を説明する図である。実施例3の形態においては、粒径20mm程度の粉体の塊を排出可能にするため、緩衝容器体10の底面部11と供給配管33の開口端34との間の離間距離R1を20mmに設定し、総合評価を行った。
【0049】
図11のテーブルTb3a、Tb3bに示されるように、緩衝容器体10の底面部11と壁面部12との間に設けられる間隙13の隙間高さH1は、5mm(Tb3a)、8mm(Tb3b)の2通りで評価する。また、緩衝容器体10の壁面部12に設けられる排出穴15は、互いに対向する一対(2箇所)の排出穴とし、穴径は20mm、25mm、30mm、35mmの4通りで評価する。定量供給の評価においては、実施例2と同様であり、比較対象の篩分収率に対する改善効果、貯留槽50に貯留された粉体の篩分装置1への供給が完了するまでの測定時間とした。また、総合評価においては、上記定量供給の評価に加え、粉体の塊の排出個数を加味するものとする。
【0050】
テーブルTb3aに示されるように、間隙13の隙間高さH1が5mm、排出穴15の穴径が20mm×2箇所の場合では、排出された粉体の塊は10個中の7個、粉体の供給完了に要する時間は25分、篩分収率は8ptの改善効果が得られた。同様にして、排出穴15の穴径が25mm×2箇所の場合では、排出された粉体の塊は10個中の10個、粉体の供給完了に要する時間は20分、篩分収率は7ptの改善効果が得られた。排出穴15の穴径が30mm×2箇所の場合では、排出された粉体の塊は10個中の10個、粉体の供給完了に要する時間は17分、篩分収率は5ptの改善効果が得られた。排出穴15の穴径が35mm×2箇所の場合では、排出された粉体の塊は10個中の10個、粉体
の供給完了に要する時間は13分、篩分収率は1ptの改善効果が得られた。
【0051】
また、テーブルTb3aに示されるように、間隙13の隙間高さH1が8mm、排出穴15の穴径が20mm×2箇所の場合では、排出された粉体の塊は10個中の9個、粉体の供給完了に要する時間は19分、篩分収率は7ptの改善効果が得られた。同様にして、排出穴15の穴径が25mm×2箇所の場合では、排出された粉体の塊は10個中の10個、粉体の供給完了に要する時間は18分、篩分収率は6ptの改善効果が得られた。排出穴15の穴径が30mm×2箇所の場合では、排出された粉体の塊は10個中の10個、粉体の供給完了に要する時間は15分、篩分収率は3ptの改善効果が得られた。排出穴15の穴径が35mm×2箇所の場合では、排出された粉体の塊は10個中の10個、粉体の供給完了に要する時間は11分、篩分収率は0ptの改善効果が得られた。
【0052】
篩分収率の観点からは、隙間高さH1が5mm、8mm、排出穴15の穴径は20mm、25mmの何れについても6pt以上の良好な改善効果が得られた。粉体の供給完了に要する時間の観点からは、隙間高さH1が5mmであり排出穴15の穴径が25mm、30mmの組合せ、隙間高さH1が8mmであり排出穴15の穴径が35mm以外の組合せが良好であることが判明した。また、排出穴15の穴径が20mmの場合には、隙間高さH1が5mmおよび8mmの何れにおいても、粉体の塊が十分に排出されないことが判明した。
【0053】
既に説明したように、粉体の塊が排出穴15を介して排出されない場合では、篩分装置1の連続使用において、底面部11と開口端34との間に目詰まりが生じ、供給配管33を閉塞させる虞がある。したがって、実施例3の形態では、総合評価として、隙間高さH1を5mmとし、排出穴15の穴径を25mm×2箇所とする構成が最適であり、7ptの篩分収率の改善効果を得られることが確認された。次善の構成としては、隙間高さH1を8mmとし、排出穴15の穴径を25mm×2箇所とする構成であり、6ptの篩分収率の改善効果が期待される。篩分収率の改善効果は次善の構成には及ばないものの、隙間高さH1が5mm、8mmのそれぞれについて、排出穴15の穴径を30mm×2箇所とする構成においても、一定程度の評価が得られている。
【0054】
総合評価の結果、造粒後の粉体に含まれる最大径が20mm程度の粉体の塊を全て排出させ、篩分収率の改善効果が期待できる排出穴15の穴径として、25mmから30mm程度の大きさが好適であるといえる。言い換えれば、排出穴15の穴径は、造粒後の粉体に含まれる粉体の塊の最大径に対して、約5mmから10mm程度の大きさを加えた穴径が好適であることが確認された。なお、
図11の結果から、排出穴15の穴径の範囲は、好適な範囲である、「塊の最大径に対して約5mmから10mm程度」から多少拡張されてもよい。すなわち、排出穴15の穴径が、粉体に含まれる塊の最大径である20mm程度であった場合も、テーブルTb3aの例では、10個中7個が排出され、テーブルTb3bの例では、10個中9個が排出される。したがって、粉体に含まれる塊に起因する弊害が大きくない場合には、排出穴15の穴径の範囲は、造粒後の粉体に含まれる塊の最大径乃至最大径に10mm程度の大きさを加えた穴径であってもよい。すなわち、排出穴15の穴径の範囲は、造粒後の粉体に含まれる塊の最大径以上の範囲で適宜調整され得る。
【0055】
(間隙の隙間高さH1について)
次に、緩衝容器体10の壁面部12と底面部11との間に設けられる間隙13の隙間高さH1について説明する。既に説明したように、粉面シール法によって粉体の流量が制限される状態では、緩衝容器体10の底面部11と供給配管33の開口端34との間に粉体群90が形成される。粉体群90は、開口端34に対向する底面部11の略中央位置を中心として円形状に拡散しながら上方側に積み上がり、開口端34と底面部11との間に円錐台状に形成される。円錐台状の粉体群90の斜面は、底面部11と開口端34との間の
離間距離R1に応じた安息角(水平面となる底面部11上面と斜面のなす角)を有することになる。したがって、篩分装置1においては、緩衝容器体10の底面部11と壁面部12との間に設けられる間隙13の隙間高さH1を、粉体群90の安息角で規定される高さによって適宜に調整することで、間隙13から篩網8に放出される粉体の供給量が制御可能になる。
【0056】
言い換えれば、粉面シール法により開口端34と底面部11との間に形成される粉体群90の円錐台状の山の斜面は、緩衝容器体10の壁面部12と粉体群90の山の斜面とが交差する高さ位置を規定するともいえる。本実施例では、
図12で述べるように、間隙13の隙間高さH1を、粉体群90の山の斜面と壁面部12とが交差する高さ位置から、3mm程度に増加・減少させた所定範囲となる高さに設定することで、間隙13から篩網8に放出される粉体の供給量が制御可能になる。
【0057】
図12は、間隙13の隙間高さH1に関する粉体の定量供給の評価結果を説明する図である。実施例2、3の形態で説明したように、底面部11と開口端34との間の離間距離R1を一定距離(20mm)に設定し、粉面シール法による粉体群90を底面部11と開口端34との間に形成した。そして、
図12のテーブルTb4に示されるように、底面部11と壁面部12との間に設けられる間隙13の隙間高さH1を、粉体群90の安息角をなす、粉体群90の斜面との間で3通りに調整する((a)から(c))。間隙13の隙間高さH1に関する粉体の定量供給を、実施例2、3の形態と同様にして、粉体の供給完了に要する時間、篩分収率の改善効果によって評価した。なお、安息角とは、開口端34から供給される粉体群90が底面部11上に山を形成するときの山の斜面が底面部11(または水平面)に対してなす角をいう。
【0058】
テーブルTb4の(a)では、模式図の丸囲みZ3に示されるように、底面部11と壁面部12との間に設けられる間隙13の隙間高さH1は、底面部11と開口端34との間に形成される粉体群90が有する安息角をなす斜面と重なるように5mmに調整されている。この状態では、破線で示される安息角による粉体群90の斜面が、間隙13の上端と交差する。
【0059】
テーブルTb4の(b)では、模式図の丸囲みZ4に示されるように、底面部11と壁面部12との間に設けられる間隙13の隙間高さH1は、底面部11と開口端34との間に形成される粉体群90が有する安息角より高くなるように約8mmに調整されている。この状態では、破線で示される安息角による粉体群90の斜面が、間隙13の上端より下方側で壁面部12と交差することになる。すなわち、間隙13の隙間高さH1は、粉体群90が形成する斜面から、壁面部12の位置で3mm程度高くなっている。
【0060】
テーブルTb4の(c)では、模式図の丸囲みZ5に示されるように、底面部11と壁面部12との間に設けられる間隙13の隙間高さH1は、底面部11と開口端34との間に形成される粉体群90が有する安息角より低くなるように約2mmに調整されている。この状態では、破線で示される安息角による粉体群90の稜線が、間隙13の上端より上方側で壁面部12と交差することになる。すなわち、間隙13の隙間高さH1は、粉体群90が形成する斜面から、壁面部12の位置で3mm程度低くなっている。
【0061】
粉体の供給完了に要する時間の観点からは、隙間高さH1が底面部11と開口端34との間に形成された粉体群90の有する安息角と重なるテーブルTb4の(a)の形態が、相対的に評価が高かった。次善は、隙間高さH1が底面部11と開口端34との間に形成される粉体群90の有する安息角より高くなるテーブルTb4の(b)の形態である。
【0062】
篩分収率の観点からは、隙間高さH1が底面部11と開口端34との間に形成された粉
体群90の有する安息角より低くなるテーブルTb4の(c)の形態が、相対的に評価が高かった。次善は、隙間高さH1が底面部11と開口端34との間に形成される粉体群90の有する安息角と重なるテーブルTb4の(a)の形態である。
【0063】
総合評価として、粉体の供給完了に要する時間への評価が相対的に高く、篩分収率への相対的な評価が次善となった、テーブルTb4の(a)に示す形態が最適であることが確認された。すなわち、緩衝容器体10の壁面部12と底面部11との間に設けられる間隙13の隙間高さH1は、間隙13の上端と、粉面シール法によって粉体の流量が制限される状態で形成される粉体群90の有する安息角とが重なる高さ位置であることが確認できた。次善の構成としては、テーブルTb4の(b)に示す形態が採用可能であることが確認できた。この形態では、篩分収率の相対的な評価としては低いものの、粉体の供給完了に要する時間の短縮が見込まれるからである。なお、テーブルTb4(a)から(c)に示される間隙13の形態は、実施例2に示される篩分装置1にも採用が可能である。
【符号の説明】
【0064】
1・・篩分装置、2・・篩枠、2a・・上部篩枠、2b・・下部篩枠、2c・・支持枠、3・・蓋体、3a・・投入口、4a・・排出部、4b・・回収部、5・・加振部、6・・架台、7・・スプリング、8・・篩網、10・・緩衝容器体、11・・底面部、12・・壁面部、13・・間隙、14・・支持部材、14a・・取付穴、15・・排出穴、30・・配管部、31・・接続部、32・・接続継手、33・・供給配管、34・・開口端、50・・貯留槽、51・・排出口、90・・粉体群