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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136003
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】目地装置
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/68 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
E04B1/68 100A
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046948
(22)【出願日】2023-03-23
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-07-24
(71)【出願人】
【識別番号】000110365
【氏名又は名称】ドーエイ外装有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080838
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 光康
(74)【代理人】
【識別番号】100194261
【弁理士】
【氏名又は名称】栢原 崇行
(72)【発明者】
【氏名】後藤 英夫
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DH31
2E001EA01
2E001FA03
2E001FA11
2E001FA18
2E001GA12
2E001LA18
2E001PA04
2E001PA08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】美観を損なうことなく揺れ動きを吸収することができる目地装置を提供する。
【解決手段】躯体の床面及び壁面間の目地部を塞ぐ目地装置であって、前記壁面用目地カバー装置は、一方の躯体及び前記他方の躯体にそれぞれ形成され、かつ、凹所に左右の傾斜面を有する1対の壁面用目地カバー配設部と、前記壁面用目地カバー配設部に設けられ、通常時、その表面が躯体の表面の壁面と略面一となる壁面用目地カバーと、前記壁面用目地カバーの略中央部を前記壁面間の目地部の略中央部に常時位置させることができる壁面用中央維持機構と、前記壁面用目地カバーを常時前記壁面用目地カバー配設部側へ付勢する付勢手段とで構成され、前記壁面用目地カバーは、その表面に壁面用化粧板が設けられており、前記壁面用中央維持機構は、地震によって前記壁面間の目地部が狭くなった場合に、前記壁面用目地カバーが前方側へ押し出されるように接続されることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の躯体と他方の躯体の床面間の目地部を塞ぐ床用目地カバー装置と、前記一方の躯体と前記他方の躯体の壁面間の目地部を塞ぐ壁面用目地カバー装置からなる目地装置であって、前記壁面用目地カバー装置は、前記両方の躯体にそれぞれ切欠状に形成され、かつ、左右の端部にスライド用の誘導面を有する壁面用目地カバー配設部と、前記壁面用目地カバー配設部に設けられ、通常時、その表面が前記一方の躯体の表面の壁面及び前記他方の躯体の表面の壁面と略面一となる壁面用目地カバーと、前記壁面用目地カバーの略中央部を前記壁面間の目地部の略中央部に常時位置させることができる壁面用中央維持機構と、前記壁面用目地カバーを常時前記壁面用目地カバー配設部側へ付勢する付勢手段とで構成され、前記壁面用目地カバーは、その表面に壁面用化粧板が設けられており、前記壁面用中央維持機構は、地震によって前記壁面間の目地部が狭くなった場合に、前記壁面用目地カバーが前方側へ押し出す目地装置。
【請求項2】
前記一方の躯体に一端部が取り付けられ、前記他方の躯体に他端部が取り付けられ、前記壁面用目地カバーを支持する伸縮アームと、前記壁面用目地カバーの下端部付近に設けられ、前記壁面用目地カバーの下端部と前記床用目地カバー装置との間の隙間を塞ぐカバー部材をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の目地装置。
【請求項3】
前記床用目地カバー装置は、前記一方の躯体及び前記他方の躯体にそれぞれ形成され、端部が乗り上げ傾斜面に形成された凹所状の1対の床用目地プレート支持部と、前記床用目地プレート支持部に両端部が支持された床用目地プレートと、前記床用目地プレートの略中央部を常時前記床面間の目地部の略中央部に位置させる床用中央維持機構とで構成され、前記床用中央維持機構は、地震によって目地部が狭くなった場合に、前記床用目地プレートが上方側へ摺動可能に接続しており、前記カバー部材は、前記床用目地プレートが上方へ摺動した際に、この床用目地プレートによって上方へ摺動できるように設けられている又は前記床用目地プレートによって変形し、通常時に復帰した場合には、通常時の形状に復帰可能な弾性を有する材質で形成されていることを特徴とする請求項2に記載の目地装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は目地部を介して設けられた左右の躯体の間の目地部を塞ぐ目地装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一方の躯体と他方の躯体間の床面部分の目地部と壁面部分の目地部を塞ぐ目地装置としては、「目地部を介して設けられた左右の建物の目地部側の一方の床躯体に後端部が取付具によって取付けられ、先端部が目地部側の他方の床躯体に反目地部側が傾斜面の目地プレートスライド支持凹部に支持され、目地部が狭くなると先端部が他方の床躯体上へ突出する床用目地プレートを備える床用目地装置と、この床用目地装置が設けられた部位の左右の建物の壁面間の目地部を覆う壁用目地装置とを備える目地装置において、前記壁用目地装置は前記左右の建物の壁面間の目地部を前記床用目地プレートと隙間を有するように覆うコ字状あるいはリップミゾ形鋼形状の目地カバーと、この目地カバーを前記目地部が広くなったり狭くなったりしても損傷することなく覆えるように、前記左右の建物の目地部側壁面に取付けられた目地カバー支持具と、前記目地カバーの下端部に上下方向にスライド移動可能に取付けられ、中央部より前記床用目地プレートの後端部側が該床用目地プレートと当接し、先端部側が床用目地プレートと当接しない切欠部が形成されたスライド目地カバーと、このスライド目地カバーの切欠部を覆い、前記床用目地プレートの先端部が上方へ回動する、押し圧により該床用目地プレートの回動方向にスライド移動するように、該スライド目地カバーに取付けられた遮蔽板とで構成されていることを特徴とする目地装置」が知られている(特許文献1)。
【0003】
しかしながら、このような目地装置では、壁面用目地装置が金属板で形成されているため、壁面が石やタイル等の化粧板で覆われている場合、壁面用目地装置の部分だけ壁面の質感が異なり、美観を損ねるものであった。
【0004】
また、壁面用目地装置が通路側(床用目地装置を設置している方向)へ突出しており、通行の障害となるとともに美観を損ねるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-207453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上のような従来の欠点に鑑み、美観を損なうことなく床面及び壁面の目地部が開口しないように塞ぐことができるとともに、地震時には目地プレートや躯体を破損することなく揺れ動きを吸収することができる目地装置を提供することを目的としている。
【0007】
本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴は次の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、より完全に明らかになるであろう。
ただし、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の目地装置は、一方の躯体と他方の躯体の床面間の目地部を塞ぐ床用目地カバー装置と、前記一方の躯体と前記他方の躯体の壁面間の目地部を塞ぐ壁面用目地カバー装置からなる目地装置であって、前記壁面用目地カバー装置は、前記両方の躯体にそれぞれ切欠状に形成され、かつ、左右の端部にスライド用の誘導面を有する壁面用目地カバー配設部と、前記壁面用目地カバー配設部に設けられ、通常時、その表面が前記一方の躯体の表面の壁面及び前記他方の躯体の表面の壁面と略面一となる壁面用目地カバーと、前記壁面用目地カバーの略中央部を前記壁面間の目地部の略中央部に常時位置させることができる壁面用中央維持機構と、前記壁面用目地カバーを常時前記壁面用目地カバー配設部側へ付勢する付勢手段とで構成され、前記壁面用目地カバーは、その表面に壁面用化粧板が設けられており、前記壁面用中央維持機構は、地震によって前記壁面間の目地部が狭くなった場合に、前記壁面用目地カバーが前方側へ押し出すことを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項2に記載の目地装置は、前記一方の躯体に一端部が取り付けられ、前記他方の躯体に他端部が取り付けられ、前記壁面用目地カバーを支持する伸縮アームと、前記壁面用目地カバーの下端部付近に設けられ、前記壁面用目地カバーの下端部と前記床用目地カバー装置との間の隙間を塞ぐカバー部材を更に備えることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の目地装置の前記床用目地カバー装置は、前記一方の躯体及び前記他方の躯体にそれぞれ形成され、端部が乗り上げ傾斜面に形成された凹所状の1対の床用目地プレート支持部と、前記床用目地プレート支持部に両端部が支持された床用目地プレートと、前記床用目地プレートの略中央部を常時前記床面間の目地部の略中央部に位置させる床用中央維持機構とで構成され、前記床用中央維持機構は、地震によって目地部が狭くなった場合に、前記床用目地プレートが上方側へ摺動可能に接続しており、前記カバー部材は、床用目地プレートが上方へ摺動した際に、この床用目地プレートによって上方へ摺動できるように取り付けられている又は床用目地プレートによって変形し、通常時に復帰した場合には、通常時の形状に復帰可能な弾性を有する材質で形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
(1)請求項1に記載の発明においては、壁面用目地カバーが左右の躯体の表面側の壁面と略面一となるように設けており、かつ、その表面を壁面用化粧板で覆っているため、左右の躯体の前記壁面の模様や質感等を再現することができる。
したがって、美観を向上させることができる。
(2)請求項2に記載の発明においても前記(1)と同様な効果を得られるとともに、伸縮アームで支持することにより壁面用目地カバーを浮かせた状態で設置することができる。
したがって、床用目地プレートの上面と壁面用目地カバーの下端部の間にスペースを設けることができ、様々なタイプの床用目地プレートを用いることができる。
(3)請求項3に記載の発明においても前記(1)~(2)と同様な効果を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1乃至図9は本発明の第1の実施形態を示す説明図である。
図10乃至図12は本発明の第2の実施形態を示す説明図である。
図1】第1の実施形態の目地装置の平面図。
図2図1の2-2線に沿う断面図。
図3図1の3-3線に沿う断面図。
図4】床用目地プレートの説明図。
図5】壁面用目地カバーの説明図。
図6】地震で目地部が狭くなった状態の平面視側からの動作説明図。
図7】地震で目地部が狭くなった状態の正面視側からの動作説明図。
図8】地震で目地部が広くなった状態の平面視側からの動作説明図。
図9】地震で目地部が広くなった状態の正面視側からの動作説明図。
図10】第2の実施形態の目地装置の平面図。
図11図10の11-11線に沿う断面図。
図12図10の12-12線に沿う断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に示す本発明を実施するための形態により、本発明を詳細に説明する。なお、本明細書では図1を基準として左右方向、前(図面下方)後(図面上方)方向という。また、図2を基準として上(図面上方)下(図面下方)方向という。
【0014】
また、本発明において躯体とは、建物、道路、スラブ、エレベーターシャフト等の目地プレートを設置可能な建造物をいい、出入口とはドアや扉の設けられた出入口だけではなく、人や車両等が通行できる通路も含むものである。
【0015】
図1乃至図9に示す本発明を実施するための第1の形態において、1は一方の躯体3と他方の躯体4間の目地部2を塞ぐ目地装置である。
【0016】
この目地装置1は、例えば図1乃至図3で示すように、一方の躯体3と他方の躯体4の床面間の目地部2aを塞ぐ床用目地カバー装置5と、前記一方の躯体3と前記他方の躯体4の壁面間の目地部2bを塞ぐ壁面用目地カバー装置6とで構成されている。
【0017】
この床用目地カバー装置5は、図1乃至図3で示すように、一方の躯体3及び他方の躯体4にそれぞれ形成され、端部が乗り上げ傾斜面7に形成された凹所状の1対の床用目地プレート支持部8と、前記床用目地プレート支持部8に両端部が支持された複数個の床用目地プレート9と、前記床用目地プレート9の略中央部を常時前記床面間の目地部2aの略中央部に位置させる床用中央維持機構10とで構成されている。
【0018】
床用目地プレート支持部8は、一方の躯体3と他方の躯体4の目地部側の床面に形成されており、目地部2aの反対側の端部には、地震で目地部2が狭くなった場合に床用目地プレート9が乗り上げて上方へせり上がる乗り上げ傾斜面7が形成されている。
【0019】
床用目地プレート9は、本実施形態においては図4に示すように、浅皿状に形成された床用目地プレート本体11と、前記床用目地プレート本体11に充填されたモルタルやコンクリート等の充填部材12と、充填部材12の上部を覆う化粧板13と、床用目地プレート本体11の左右方向の両端部側にヒンジ部材14を介して設けられたカバープレート15とで構成されている。
【0020】
この床用目地プレート9は、左右方向の端部が前記1対の床用目地プレート支持部8に支持されており、通常時において一方の躯体3や他方の躯体4の床面と略面一となるように設けられている。
【0021】
また、この床用目地プレート9の略中央部を常時目地部2aの略中央部に位置させるために床用中央維持機構10が設けられている。
【0022】
この床用中央維持機構10は、一端部が一方の躯体3に取り付けられ、他端部が他方の躯体4に取り付けられたパンタグラフ状のリンク部材16と、このリンク部材16の中央の枢支部に上下方向に摺動可能に設けられ、前記床用目地プレート9の中央部とを接続する接続部材17とで構成されている。
【0023】
このような接続部材17で床用目地プレート9と接続することにより、床用目地プレート9を上下方向に位置変位可能で、かつ、目地部2aの中央に常時位置させることができる。
【0024】
壁面用目地カバー装置6は、例えば図1で示すように、両方の躯体3、4にそれぞれ短面と長面を有する切欠状に形成され、左右の端部にスライド用の誘導面(例えば内端と外端を結ぶ線が直線、波線或いは段差線等の傾斜面となるスライド面)を有する壁面用目地カバー配設部19が設けられている。
【0025】
すなわち、本実施形態では、図1乃至図3に示すように、一方の躯体3及び前記他方の躯体4にそれぞれ形成され、かつ、凹所に左右の傾斜面18を有する1対の凹所状の壁面用目地カバー配設部19と、前記壁面用目地カバー配設部19に設けられ、通常時においてその表面が前記一方の躯体3の表側(前方側)の壁面3a及び前記他方の躯体4の表側(前方側)の壁面4aと略面一となる壁面用目地カバー20と、前記壁面用目地カバー20の略中央部を前記壁面間の目地部2bの略中央部に常時位置させる壁面用中央維持機構21と、前記壁面用目地カバー20を常時前記壁面用目地カバー20の背面側へ付勢する付勢手段22と、前記一方の躯体3に一端部が取り付けられ、前記他方の躯体4に他端部が取り付けられ、前記壁面用目地カバー20を支持する伸縮アーム23と、前記壁面用目地カバー20の下端部付近に設けられ、前記壁面用目地カバー20の下端部と前記床用目地カバー装置5の床用目地プレート9の上面との間の隙間を塞ぐカバー部材24とで構成されている。
【0026】
壁面用目地カバー配設部19は、一方の躯体3と他方の躯体4の目地部2b側の壁面3a、4aに凹所状に形成されており、目地部2bの反対側の端部(左右の端部)には、地震で目地部2が狭くなった場合に壁面用目地カバー20が前方(壁面用目地カバー20の表面側)へ押し出すような傾斜面18が形成されている。
【0027】
壁面用目地カバー20は、本実施形態においては図5に示すように、浅皿状に形成された壁面用目地カバー本体25と、前記壁面用目地カバー本体25に充填されたモルタルやコンクリート等の充填部材12と、壁面用目地カバー本体25の表面を覆う壁面用化粧板26とで構成されている。
【0028】
壁面用目地カバー本体25は、壁面用目地カバー配設部19及び傾斜面18に対応するような形状に形成されており、左右方向の両端部に傾斜部27が設けられている。これにより通常時において壁面用目地カバー20は、一方の躯体3や他方の躯体4の壁面と略面一となり、壁面用目地カバー本体25の表面を覆うように設けられた壁面用化粧板26によって左右の躯体3、4の壁面と同様の模様等を施すことができるため、美観を向上させることができる。
【0029】
この壁面用目地カバー20の背面側には、壁面用中央維持機構21が上下方向に複数個設けられており、この壁面用中央維持機構21は、床用中央維持機構10と同様の構成となっている。すなわち壁面用中央維持機構21は、一端部が一方の躯体3に取り付けられ、他端部が他方の躯体4に取り付けられたパンタグラフ状のリンク部材16と、このリンク部材16の中央の枢支部に前後方向に摺動可能に設けられ、前記床用目地プレート9の中央部とを接続する接続部材17とで構成されている。すなわち、地震時に壁面用目地カバー20が前方へ押し出されることが可能なように接続部材17で接続されている。
【0030】
付勢手段22は、壁面用目地カバー20を常時後方(背面側)に付勢しており、本実施形態では一端部が一方の躯体3及び他方の躯体4に固定され、他端部が接続部材17に接続された付勢スプリング22を用いている。この付勢スプリング22によって壁面用目地カバー20が後方側へ付勢され、前方側へ倒れることを防止している。
【0031】
壁面用目地カバー20は、本実施形態においては、その底部が伸縮アーム23によって支持されており、壁面用目地カバー20の下端部は、床用目地プレート9よりも上方に位置する状態となっている。壁面用目地カバー20は、床用目地プレート9が地震でせり上がった場合に壁面用目地カバー20の下端部と干渉しない程度上方に位置するように設けられている。
【0032】
伸縮アーム23は、壁面用目地カバー20の底部と当接し、かつ、壁面用目地カバー20の表面よりも前方に突出しないように設けられており、壁面用目地カバー20の底部を支持している。
【0033】
この伸縮アーム23は、一端部が一方の躯体3に前後方向に回動可能に設けられた一方のアーム部材28と、一端部が他方の躯体に前後方向に回動可能に設けられ、前記一方のアーム部材28の他端部に他端部側が入り込み、左右方向に摺動可能な他方のアーム部材29とで構成されている。なお、壁面用目地カバー20が地震により前方側へ突出した際にその底部を支持できるように、壁面用目地カバー20の底部付近の背面中央部には、背面側へ突出する被支持部30が形成されている。この被支持部30は、本実施形態においては、バー状に形成されているが、パイプ状の部材やアングル状の金具等を固定してもよく、壁面用目地カバー20が前方へ位置変位した場合であっても壁面用目地カバー20を支持できる形状であればどのような形状であってもよい。
【0034】
ところで、本実施形態では壁面用目地カバー20の底部付近を被支持部30を介して伸縮アーム23で支持しているが、壁面用目地カバー20が軽量で壁面用中央維持機構21のみで壁面用目地カバーを支持できる場合には、伸縮アーム23を用いなくてもよいし、伸縮アーム23を壁面用目地カバー20の底部に当接するように設置し、壁面用目地カバー20の底部背面に被支持部30を形成して伸縮アーム23で支持してもよい。
【0035】
なお、伸縮アーム23は本実施形態に記載の構成の他、その他公知のアーム状の支持機構を用いることができる。
【0036】
カバー部材24は、本実施形態では、地震時に上方へせり上がった前記床用目地プレート20によって変形し、通常時に復帰した場合には、通常時の形状に復帰可能な弾性を有するゴム、樹脂等の材質で形成されており、壁面用目地カバー20の底部と床用目地プレート9の上面の間の隙間を塞ぐように設けられている。具体的には、カバー部材24は、上端部が壁面用目地カバー20の下端部付近に固定されており、下端部側は自由端となるように取り付けられている。
【0037】
なお、カバー部材24としては、地震時に床用目地プレート9が上方へせり上がった場合に、床用目地プレート9に押し上げられて上方へ摺動するように設けられた金属板等を用いてもよい。
【0038】
地震で目地部2が狭くなるように左右の躯体3、4が揺れ動くと、図6及び7に示すように、床用目地プレート9が乗り上げ傾斜面7に沿って上方に乗り上げるとともに、壁面用目地カバー20が傾斜面にそって前方(壁面用目地カバー20の表面側)へ位置変位して揺れ動きを吸収する。
【0039】
地震による揺れ動きが終了すると、床用目地プレート9は自重により下方へ位置変位して通常状態に復帰するとともに、壁面用目地カバー20は付勢手段22の付勢力により後方(壁面用目地カバー20の背面側)へ位置変位し、通常状態に復帰する。
【0040】
地震で目地部2が広くなるように左右の躯体3、4が揺れ動くと、図8及び図9に示すように床用目地プレート9は床用目地プレート支持部8上を摺動するとともに、壁面用目地カバー20は壁面用目地カバー配設部19の表面を摺動して揺れ動きを吸収する。
【0041】
[発明を実施するための異なる形態]
次に、図10乃至図12に示す本発明を実施するための異なる形態につき説明する。なお、これらの本発明を実施するための異なる形態の説明に当って、前記本発明を実施するための第1の形態と同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0042】
図10乃至図12に示す本発明を実施するための第2の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、床用目地プレート支持部8を形成せず、一方の躯体3と他方の躯体4の床面で平板状の床用目地プレート9Aを支持する床用目地カバー装置5Aにするとともに、伸縮アーム23を用いず、この床用目地プレート9Aの上面と壁面用目地カバー20の下端部が略同じ高さとなるように設けた点で、このような目地装置1Aにしても前記本発明を実施するための第1の形態と同様な作用効果が得られる。
【0043】
本実施形態では、床用目地プレート9Aの上面に壁面用目地カバー20の下端部が略当接しているためカバー部材も用いていない。
【0044】
この壁面用目地カバー20の下端部には、地震時に床用目地プレート9Aの上面との摺動をスムーズにするような滑動部材(図示せず)を設けることが望ましい。
【0045】
ところで、本実施形態においても伸縮アーム23を用いて壁面用目地カバー20を支持しているが、通常時において床用目地プレート9Aの上面に壁面用目地カバー20が乗るように床用目地プレート9Aを配置し、伸縮アーム23ではなく床用目地プレート9Aで壁面用目地カバー20を支持してもよい。この場合には、地震時に目地部2が狭くなった場合に目地プレート9Aが摺動できるスペースを左右の躯体3、4の壁面に形成するとよい。
【0046】
なお、本発明の実施の形態においては、リンク部材を用いた壁面用中央維持機構及び床用中央維持機構を用いたが、ラックピニオンを利用した中央維持機構等、公知の中央維持機構を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は目地装置を製造する産業で利用される。
【符号の説明】
【0048】
1、1A:目地装置、 2:目地部、
3:一方の躯体、 4:他方の躯体、
5、5A:床用目地カバー装置、 6:壁面用目地カバー装置、
7:乗り上げ傾斜面、 8:床用目地プレート支持部、
9、9A:床用目地プレート、 10:床用中央維持機構、
11:床用目地プレート本体、 12:充填部材、
13:化粧板、 14:ヒンジ部材、
15:カバープレート、 16:リンク部材、
17:接続部材、 18:傾斜面、
19:壁面用目地カバー配設部、 20:壁面用目地カバー、
21:壁面用中央維持機構、 22:付勢手段、
23:伸縮アーム、 24:カバー部材、
25:壁面用目地カバー本体、 26:壁面用化粧板、
27:傾斜部、 28:一方のアーム部材、
29:他方のアーム部材、 30:被支持部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2024-02-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の躯体と他方の躯体の床面間の目地部を塞ぐ床用目地カバー装置と、前記一方の躯体と前記他方の躯体の壁面間の目地部を塞ぐ壁面用目地カバー装置からなる目地装置であって、前記壁面用目地カバー装置は、前記両方の躯体にそれぞれ切欠状に形成され、かつ、左右の端部にスライド用の誘導面を有する壁面用目地カバー配設部と、前記壁面用目地カバー配設部に設けられ、通常時、その表面が前記一方の躯体の表面の壁面及び前記他方の躯体の表面の壁面と略面一となる壁面用目地カバーと、前記壁面用目地カバーの略中央部を前記壁面間の目地部の略中央部に常時位置させることができる壁面用中央維持機構と、前記壁面用目地カバーを常時前記壁面用目地カバー配設部側へ付勢する付勢手段と、前記一方の躯体に一端部が取り付けられ、前記他方の躯体に他端部が取り付けられ、前記壁面用目地カバーを支持する伸縮アームとで構成され、前記壁面用目地カバーは、その表面に壁面用化粧板が設けられており、前記壁面用中央維持機構は、地震によって前記壁面間の目地部が狭くなった場合に、前記壁面用目地カバーが前方側へ押し出す目地装置。
【請求項2】
前記壁面用目地カバーの下端部付近に設けられ、前記壁面用目地カバーの下端部と前記床用目地カバー装置との間の隙間を塞ぐカバー部材をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の目地装置。
【請求項3】
前記床用目地カバー装置は、前記一方の躯体及び前記他方の躯体にそれぞれ形成され、端部が乗り上げ傾斜面に形成された凹所状の1対の床用目地プレート支持部と、前記床用目地プレート支持部に両端部が支持された床用目地プレートと、前記床用目地プレートの略中央部を常時前記床面間の目地部の略中央部に位置させる床用中央維持機構とで構成され、前記床用中央維持機構は、地震によって目地部が狭くなった場合に、前記床用目地プレートが上方側へ摺動可能に接続しており、前記カバー部材は、前記床用目地プレートが上方へ摺動した際に、この床用目地プレートによって上方へ摺動できるように設けられている又は前記床用目地プレートによって変形し、通常時に復帰した場合には、通常時の形状に復帰可能な弾性を有する材質で形成されていることを特徴とする請求項2に記載の目地装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は目地部を介して設けられた左右の躯体の間の目地部を塞ぐ目地装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一方の躯体と他方の躯体間の床面部分の目地部と壁面部分の目地部を塞ぐ目地装置としては、「目地部を介して設けられた左右の建物の目地部側の一方の床躯体に後端部が取付具によって取付けられ、先端部が目地部側の他方の床躯体に反目地部側が傾斜面の目地プレートスライド支持凹部に支持され、目地部が狭くなると先端部が他方の床躯体上へ突出する床用目地プレートを備える床用目地装置と、この床用目地装置が設けられた部位の左右の建物の壁面間の目地部を覆う壁用目地装置とを備える目地装置において、前記壁用目地装置は前記左右の建物の壁面間の目地部を前記床用目地プレートと隙間を有するように覆うコ字状あるいはリップミゾ形鋼形状の目地カバーと、この目地カバーを前記目地部が広くなったり狭くなったりしても損傷することなく覆えるように、前記左右の建物の目地部側壁面に取付けられた目地カバー支持具と、前記目地カバーの下端部に上下方向にスライド移動可能に取付けられ、中央部より前記床用目地プレートの後端部側が該床用目地プレートと当接し、先端部側が床用目地プレートと当接しない切欠部が形成されたスライド目地カバーと、このスライド目地カバーの切欠部を覆い、前記床用目地プレートの先端部が上方へ回動する、押し圧により該床用目地プレートの回動方向にスライド移動するように、該スライド目地カバーに取付けられた遮蔽板とで構成されていることを特徴とする目地装置」が知られている(特許文献1)。
【0003】
しかしながら、このような目地装置では、壁面用目地装置が金属板で形成されているため、壁面が石やタイル等の化粧板で覆われている場合、壁面用目地装置の部分だけ壁面の質感が異なり、美観を損ねるものであった。
【0004】
また、壁面用目地装置が通路側(床用目地装置を設置している方向)へ突出しており、通行の障害となるとともに美観を損ねるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-207453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上のような従来の欠点に鑑み、美観を損なうことなく床面及び壁面の目地部が開口しないように塞ぐことができるとともに、地震時には目地プレートや躯体を破損することなく揺れ動きを吸収することができる目地装置を提供することを目的としている。
【0007】
本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴は次の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、より完全に明らかになるであろう。
ただし、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の目地装置は、一方の躯体と他方の躯体の床面間の目地部を塞ぐ床用目地カバー装置と、前記一方の躯体と前記他方の躯体の壁面間の目地部を塞ぐ壁面用目地カバー装置からなる目地装置であって、前記壁面用目地カバー装置は、前記両方の躯体にそれぞれ切欠状に形成され、かつ、左右の端部にスライド用の誘導面を有する壁面用目地カバー配設部と、前記壁面用目地カバー配設部に設けられ、通常時、その表面が前記一方の躯体の表面の壁面及び前記他方の躯体の表面の壁面と略面一となる壁面用目地カバーと、前記壁面用目地カバーの略中央部を前記壁面間の目地部の略中央部に常時位置させることができる壁面用中央維持機構と、前記壁面用目地カバーを常時前記壁面用目地カバー配設部側へ付勢する付勢手段と、前記一方の躯体に一端部が取り付けられ、前記他方の躯体に他端部が取り付けられ、前記壁面用目地カバーを支持する伸縮アームとで構成され、前記壁面用目地カバーは、その表面に壁面用化粧板が設けられており、前記壁面用中央維持機構は、地震によって前記壁面間の目地部が狭くなった場合に、前記壁面用目地カバーが前方側へ押し出すことを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項2に記載の目地装置は、前記壁面用目地カバーの下端部付近に設けられ、前記壁面用目地カバーの下端部と前記床用目地カバー装置との間の隙間を塞ぐカバー部材を更に備えることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の目地装置の前記床用目地カバー装置は、前記一方の躯体及び前記他方の躯体にそれぞれ形成され、端部が乗り上げ傾斜面に形成された凹所状の1対の床用目地プレート支持部と、前記床用目地プレート支持部に両端部が支持された床用目地プレートと、前記床用目地プレートの略中央部を常時前記床面間の目地部の略中央部に位置させる床用中央維持機構とで構成され、前記床用中央維持機構は、地震によって目地部が狭くなった場合に、前記床用目地プレートが上方側へ摺動可能に接続しており、前記カバー部材は、床用目地プレートが上方へ摺動した際に、この床用目地プレートによって上方へ摺動できるように取り付けられている又は床用目地プレートによって変形し、通常時に復帰した場合には、通常時の形状に復帰可能な弾性を有する材質で形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
(1)請求項1に記載の発明においては、壁面用目地カバーが左右の躯体の表面側の壁面と略面一となるように設けており、かつ、その表面を壁面用化粧板で覆っているため、左右の躯体の前記壁面の模様や質感等を再現することができる。
したがって、美観を向上させることができる。
(2)伸縮アームで支持することにより壁面用目地カバーを浮かせた状態で設置することができる。
したがって、床用目地プレートの上面と壁面用目地カバーの下端部の間にスペースを設けることができ、様々なタイプの床用目地プレートを用いることができる。
(3)請求項2及び請求項3に記載の発明においても前記(1)~(2)と同様な効果を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1乃至図9は本発明の第1の実施形態を示す説明図である。
図10乃至図12は本発明の第2の実施形態を示す説明図である。
図1】第1の実施形態の目地装置の平面図。
図2図1の2-2線に沿う断面図。
図3図1の3-3線に沿う断面図。
図4】床用目地プレートの説明図。
図5】壁面用目地カバーの説明図。
図6】地震で目地部が狭くなった状態の平面視側からの動作説明図。
図7】地震で目地部が狭くなった状態の正面視側からの動作説明図。
図8】地震で目地部が広くなった状態の平面視側からの動作説明図。
図9】地震で目地部が広くなった状態の正面視側からの動作説明図。
図10】第2の実施形態の目地装置の平面図。
図11図10の11-11線に沿う断面図。
図12図10の12-12線に沿う断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に示す本発明を実施するための形態により、本発明を詳細に説明する。なお、本明細書では図1を基準として左右方向、前(図面下方)後(図面上方)方向という。また、図2を基準として上(図面上方)下(図面下方)方向という。
【0014】
また、本発明において躯体とは、建物、道路、スラブ、エレベーターシャフト等の目地プレートを設置可能な建造物をいい、出入口とはドアや扉の設けられた出入口だけではなく、人や車両等が通行できる通路も含むものである。
【0015】
図1乃至図9に示す本発明を実施するための第1の形態において、1は一方の躯体3と他方の躯体4間の目地部2を塞ぐ目地装置である。
【0016】
この目地装置1は、例えば図1乃至図3で示すように、一方の躯体3と他方の躯体4の床面間の目地部2aを塞ぐ床用目地カバー装置5と、前記一方の躯体3と前記他方の躯体4の壁面間の目地部2bを塞ぐ壁面用目地カバー装置6とで構成されている。
【0017】
この床用目地カバー装置5は、図1乃至図3で示すように、一方の躯体3及び他方の躯体4にそれぞれ形成され、端部が乗り上げ傾斜面7に形成された凹所状の1対の床用目地プレート支持部8と、前記床用目地プレート支持部8に両端部が支持された複数個の床用目地プレート9と、前記床用目地プレート9の略中央部を常時前記床面間の目地部2aの略中央部に位置させる床用中央維持機構10とで構成されている。
【0018】
床用目地プレート支持部8は、一方の躯体3と他方の躯体4の目地部側の床面に形成されており、目地部2aの反対側の端部には、地震で目地部2が狭くなった場合に床用目地プレート9が乗り上げて上方へせり上がる乗り上げ傾斜面7が形成されている。
【0019】
床用目地プレート9は、本実施形態においては図4に示すように、浅皿状に形成された床用目地プレート本体11と、前記床用目地プレート本体11に充填されたモルタルやコンクリート等の充填部材12と、充填部材12の上部を覆う化粧板13と、床用目地プレート本体11の左右方向の両端部側にヒンジ部材14を介して設けられたカバープレート15とで構成されている。
【0020】
この床用目地プレート9は、左右方向の端部が前記1対の床用目地プレート支持部8に支持されており、通常時において一方の躯体3や他方の躯体4の床面と略面一となるように設けられている。
【0021】
また、この床用目地プレート9の略中央部を常時目地部2aの略中央部に位置させるために床用中央維持機構10が設けられている。
【0022】
この床用中央維持機構10は、一端部が一方の躯体3に取り付けられ、他端部が他方の躯体4に取り付けられたパンタグラフ状のリンク部材16と、このリンク部材16の中央の枢支部に上下方向に摺動可能に設けられ、前記床用目地プレート9の中央部とを接続する接続部材17とで構成されている。
【0023】
このような接続部材17で床用目地プレート9と接続することにより、床用目地プレート9を上下方向に位置変位可能で、かつ、目地部2aの中央に常時位置させることができる。
【0024】
壁面用目地カバー装置6は、例えば図1で示すように、両方の躯体3、4にそれぞれ短面と長面を有する切欠状に形成され、左右の端部にスライド用の誘導面(例えば内端と外端を結ぶ線が直線、波線或いは段差線等の傾斜面となるスライド面)を有する壁面用目地カバー配設部19が設けられている。
【0025】
すなわち、本実施形態では、図1乃至図3に示すように、一方の躯体3及び前記他方の躯体4にそれぞれ形成され、かつ、凹所に左右の傾斜面18を有する1対の凹所状の壁面用目地カバー配設部19と、前記壁面用目地カバー配設部19に設けられ、通常時においてその表面が前記一方の躯体3の表側(前方側)の壁面3a及び前記他方の躯体4の表側(前方側)の壁面4aと略面一となる壁面用目地カバー20と、前記壁面用目地カバー20の略中央部を前記壁面間の目地部2bの略中央部に常時位置させる壁面用中央維持機構21と、前記壁面用目地カバー20を常時前記壁面用目地カバー20の背面側へ付勢する付勢手段22と、前記一方の躯体3に一端部が取り付けられ、前記他方の躯体4に他端部が取り付けられ、前記壁面用目地カバー20を支持する伸縮アーム23と、前記壁面用目地カバー20の下端部付近に設けられ、前記壁面用目地カバー20の下端部と前記床用目地カバー装置5の床用目地プレート9の上面との間の隙間を塞ぐカバー部材24とで構成されている。
【0026】
壁面用目地カバー配設部19は、一方の躯体3と他方の躯体4の目地部2b側の壁面3a、4aに凹所状に形成されており、目地部2bの反対側の端部(左右の端部)には、地震で目地部2が狭くなった場合に壁面用目地カバー20が前方(壁面用目地カバー20の表面側)へ押し出すような傾斜面18が形成されている。
【0027】
壁面用目地カバー20は、本実施形態においては図5に示すように、浅皿状に形成された壁面用目地カバー本体25と、前記壁面用目地カバー本体25に充填されたモルタルやコンクリート等の充填部材12と、壁面用目地カバー本体25の表面を覆う壁面用化粧板26とで構成されている。
【0028】
壁面用目地カバー本体25は、壁面用目地カバー配設部19及び傾斜面18に対応するような形状に形成されており、左右方向の両端部に傾斜部27が設けられている。これにより通常時において壁面用目地カバー20は、一方の躯体3や他方の躯体4の壁面と略面一となり、壁面用目地カバー本体25の表面を覆うように設けられた壁面用化粧板26によって左右の躯体3、4の壁面と同様の模様等を施すことができるため、美観を向上させることができる。
【0029】
この壁面用目地カバー20の背面側には、壁面用中央維持機構21が上下方向に複数個設けられており、この壁面用中央維持機構21は、床用中央維持機構10と同様の構成となっている。すなわち壁面用中央維持機構21は、一端部が一方の躯体3に取り付けられ、他端部が他方の躯体4に取り付けられたパンタグラフ状のリンク部材16と、このリンク部材16の中央の枢支部に前後方向に摺動可能に設けられ、前記床用目地プレート9の中央部とを接続する接続部材17とで構成されている。すなわち、地震時に壁面用目地カバー20が前方へ押し出されることが可能なように接続部材17で接続されている。
【0030】
付勢手段22は、壁面用目地カバー20を常時後方(背面側)に付勢しており、本実施形態では一端部が一方の躯体3及び他方の躯体4に固定され、他端部が接続部材17に接続された付勢スプリング22を用いている。この付勢スプリング22によって壁面用目地カバー20が後方側へ付勢され、前方側へ倒れることを防止している。
【0031】
壁面用目地カバー20は、本実施形態においては、その底部が伸縮アーム23によって支持されており、壁面用目地カバー20の下端部は、床用目地プレート9よりも上方に位置する状態となっている。壁面用目地カバー20は、床用目地プレート9が地震でせり上がった場合に壁面用目地カバー20の下端部と干渉しない程度上方に位置するように設けられている。
【0032】
伸縮アーム23は、壁面用目地カバー20の底部と当接し、かつ、壁面用目地カバー20の表面よりも前方に突出しないように設けられており、壁面用目地カバー20の底部を支持している。
【0033】
この伸縮アーム23は、一端部が一方の躯体3に前後方向に回動可能に設けられた一方のアーム部材28と、一端部が他方の躯体に前後方向に回動可能に設けられ、前記一方のアーム部材28の他端部に他端部側が入り込み、左右方向に摺動可能な他方のアーム部材29とで構成されている。なお、壁面用目地カバー20が地震により前方側へ突出した際にその底部を支持できるように、壁面用目地カバー20の底部付近の背面中央部には、背面側へ突出する被支持部30が形成されている。この被支持部30は、本実施形態においては、バー状に形成されているが、パイプ状の部材やアングル状の金具等を固定してもよく、壁面用目地カバー20が前方へ位置変位した場合であっても壁面用目地カバー20を支持できる形状であればどのような形状であってもよい。
【0034】
ところで、本実施形態では壁面用目地カバー20の底部付近を被支持部30を介して伸縮アーム23で支持しているが、壁面用目地カバー20が軽量で壁面用中央維持機構21のみで壁面用目地カバーを支持できる場合には、伸縮アーム23を用いなくてもよいし、伸縮アーム23を壁面用目地カバー20の底部に当接するように設置し、壁面用目地カバー20の底部背面に被支持部30を形成して伸縮アーム23で支持してもよい。
【0035】
なお、伸縮アーム23は本実施形態に記載の構成の他、その他公知のアーム状の支持機構を用いることができる。
【0036】
カバー部材24は、本実施形態では、地震時に上方へせり上がった前記床用目地プレート20によって変形し、通常時に復帰した場合には、通常時の形状に復帰可能な弾性を有するゴム、樹脂等の材質で形成されており、壁面用目地カバー20の底部と床用目地プレート9の上面の間の隙間を塞ぐように設けられている。具体的には、カバー部材24は、上端部が壁面用目地カバー20の下端部付近に固定されており、下端部側は自由端となるように取り付けられている。
【0037】
なお、カバー部材24としては、地震時に床用目地プレート9が上方へせり上がった場合に、床用目地プレート9に押し上げられて上方へ摺動するように設けられた金属板等を用いてもよい。
【0038】
地震で目地部2が狭くなるように左右の躯体3、4が揺れ動くと、図6及び7に示すように、床用目地プレート9が乗り上げ傾斜面7に沿って上方に乗り上げるとともに、壁面用目地カバー20が傾斜面にそって前方(壁面用目地カバー20の表面側)へ位置変位して揺れ動きを吸収する。
【0039】
地震による揺れ動きが終了すると、床用目地プレート9は自重により下方へ位置変位して通常状態に復帰するとともに、壁面用目地カバー20は付勢手段22の付勢力により後方(壁面用目地カバー20の背面側)へ位置変位し、通常状態に復帰する。
【0040】
地震で目地部2が広くなるように左右の躯体3、4が揺れ動くと、図8及び図9に示すように床用目地プレート9は床用目地プレート支持部8上を摺動するとともに、壁面用目地カバー20は壁面用目地カバー配設部19の表面を摺動して揺れ動きを吸収する。
【0041】
[発明を実施するための異なる形態]
次に、図10乃至図12に示す本発明を実施するための異なる形態につき説明する。なお、これらの本発明を実施するための異なる形態の説明に当って、前記本発明を実施するための第1の形態と同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0042】
図10乃至図12に示す本発明を実施するための第2の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、床用目地プレート支持部8を形成せず、一方の躯体3と他方の躯体4の床面で平板状の床用目地プレート9Aを支持する床用目地カバー装置5Aにするとともに、伸縮アーム23を用いず、この床用目地プレート9Aの上面と壁面用目地カバー20の下端部が略同じ高さとなるように設けた点で、このような目地装置1Aにしても前記本発明を実施するための第1の形態と同様な作用効果が得られる。
【0043】
本実施形態では、床用目地プレート9Aの上面に壁面用目地カバー20の下端部が略当接しているためカバー部材も用いていない。
【0044】
この壁面用目地カバー20の下端部には、地震時に床用目地プレート9Aの上面との摺動をスムーズにするような滑動部材(図示せず)を設けることが望ましい。
【0045】
ところで、本実施形態においても伸縮アーム23を用いて壁面用目地カバー20を支持しているが、通常時において床用目地プレート9Aの上面に壁面用目地カバー20が乗るように床用目地プレート9Aを配置し、伸縮アーム23ではなく床用目地プレート9Aで壁面用目地カバー20を支持してもよい。この場合には、地震時に目地部2が狭くなった場合に目地プレート9Aが摺動できるスペースを左右の躯体3、4の壁面に形成するとよい。
【0046】
なお、本発明の実施の形態においては、リンク部材を用いた壁面用中央維持機構及び床用中央維持機構を用いたが、ラックピニオンを利用した中央維持機構等、公知の中央維持機構を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は目地装置を製造する産業で利用される。
【符号の説明】
【0048】
1、1A:目地装置、 2:目地部、
3:一方の躯体、 4:他方の躯体、
5、5A:床用目地カバー装置、 6:壁面用目地カバー装置、
7:乗り上げ傾斜面、 8:床用目地プレート支持部、
9、9A:床用目地プレート、 10:床用中央維持機構、
11:床用目地プレート本体、 12:充填部材、
13:化粧板、 14:ヒンジ部材、
15:カバープレート、 16:リンク部材、
17:接続部材、 18:傾斜面、
19:壁面用目地カバー配設部、 20:壁面用目地カバー、
21:壁面用中央維持機構、 22:付勢手段、
23:伸縮アーム、 24:カバー部材、
25:壁面用目地カバー本体、 26:壁面用化粧板、
27:傾斜部、 28:一方のアーム部材、
29:他方のアーム部材、 30:被支持部。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の躯体と他方の躯体の床面間の目地部を塞ぐ床用目地カバー装置と、前記一方の躯体と前記他方の躯体の壁面間の目地部を塞ぐ壁面用目地カバー装置からなる目地装置であって、前記壁面用目地カバー装置は、前記両方の躯体にそれぞれ切欠状に形成され、かつ、左右の端部にスライド用の誘導面を有する壁面用目地カバー配設部と、前記壁面用目地カバー配設部に設けられ、通常時、その表面が前記一方の躯体の表面の壁面及び前記他方の躯体の表面の壁面と略面一となる壁面用目地カバーと、前記壁面用目地カバーの略中央部を前記壁面間の目地部の略中央部に常時位置させることができる壁面用中央維持機構と、前記壁面用目地カバーを常時前記壁面用目地カバー配設部側へ付勢する付勢手段と、前記一方の躯体に一端部が取り付けられ、前記他方の躯体に他端部が取り付けられ、前記壁面用目地カバーを支持する伸縮アームと、前記壁面用目地カバーの背面に背面側へ突出するように設けられ、前記伸縮アームに支持される被支持部とで構成され、前記壁面用目地カバーは、その表面に壁面用化粧板が設けられており、前記被支持部は、前記壁面用目地カバーが前方へ位置変位した場合であっても前記伸縮アームによって壁面用目地カバーを支持できる形状に形成されており、前記壁面用中央維持機構は、地震によって前記壁面間の目地部が狭くなった場合に、前記壁面用目地カバーが前方側へ押し出す目地装置。
【請求項2】
前記壁面用目地カバーの下端部付近に設けられ、前記壁面用目地カバーの下端部と前記床用目地カバー装置との間の隙間を塞ぐカバー部材をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の目地装置。
【請求項3】
前記床用目地カバー装置は、前記一方の躯体及び前記他方の躯体にそれぞれ形成され、端部が乗り上げ傾斜面に形成された凹所状の1対の床用目地プレート支持部と、前記床用目地プレート支持部に両端部が支持された床用目地プレートと、前記床用目地プレートの略中央部を常時前記床面間の目地部の略中央部に位置させる床用中央維持機構とで構成され、前記床用中央維持機構は、地震によって目地部が狭くなった場合に、前記床用目地プレートが上方側へ摺動可能に接続しており、前記カバー部材は、前記床用目地プレートが上方へ摺動した際に、この床用目地プレートによって上方へ摺動できるように設けられている又は前記床用目地プレートによって変形し、通常時に復帰した場合には、通常時の形状に復帰可能な弾性を有する材質で形成されていることを特徴とする請求項2に記載の目地装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は目地部を介して設けられた左右の躯体の間の目地部を塞ぐ目地装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一方の躯体と他方の躯体間の床面部分の目地部と壁面部分の目地部を塞ぐ目地装置としては、「目地部を介して設けられた左右の建物の目地部側の一方の床躯体に後端部が取付具によって取付けられ、先端部が目地部側の他方の床躯体に反目地部側が傾斜面の目地プレートスライド支持凹部に支持され、目地部が狭くなると先端部が他方の床躯体上へ突出する床用目地プレートを備える床用目地装置と、この床用目地装置が設けられた部位の左右の建物の壁面間の目地部を覆う壁用目地装置とを備える目地装置において、前記壁用目地装置は前記左右の建物の壁面間の目地部を前記床用目地プレートと隙間を有するように覆うコ字状あるいはリップミゾ形鋼形状の目地カバーと、この目地カバーを前記目地部が広くなったり狭くなったりしても損傷することなく覆えるように、前記左右の建物の目地部側壁面に取付けられた目地カバー支持具と、前記目地カバーの下端部に上下方向にスライド移動可能に取付けられ、中央部より前記床用目地プレートの後端部側が該床用目地プレートと当接し、先端部側が床用目地プレートと当接しない切欠部が形成されたスライド目地カバーと、このスライド目地カバーの切欠部を覆い、前記床用目地プレートの先端部が上方へ回動する、押し圧により該床用目地プレートの回動方向にスライド移動するように、該スライド目地カバーに取付けられた遮蔽板とで構成されていることを特徴とする目地装置」が知られている(特許文献1)。
【0003】
しかしながら、このような目地装置では、壁面用目地装置が金属板で形成されているため、壁面が石やタイル等の化粧板で覆われている場合、壁面用目地装置の部分だけ壁面の質感が異なり、美観を損ねるものであった。
【0004】
また、壁面用目地装置が通路側(床用目地装置を設置している方向)へ突出しており、通行の障害となるとともに美観を損ねるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-207453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上のような従来の欠点に鑑み、美観を損なうことなく床面及び壁面の目地部が開口しないように塞ぐことができるとともに、地震時には目地プレートや躯体を破損することなく揺れ動きを吸収することができる目地装置を提供することを目的としている。
【0007】
本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴は次の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、より完全に明らかになるであろう。
ただし、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の目地装置は、一方の躯体と他方の躯体の床面間の目地部を塞ぐ床用目地カバー装置と、前記一方の躯体と前記他方の躯体の壁面間の目地部を塞ぐ壁面用目地カバー装置からなる目地装置であって、前記壁面用目地カバー装置は、前記両方の躯体にそれぞれ切欠状に形成され、かつ、左右の端部にスライド用の誘導面を有する壁面用目地カバー配設部と、前記壁面用目地カバー配設部に設けられ、通常時、その表面が前記一方の躯体の表面の壁面及び前記他方の躯体の表面の壁面と略面一となる壁面用目地カバーと、前記壁面用目地カバーの略中央部を前記壁面間の目地部の略中央部に常時位置させることができる壁面用中央維持機構と、前記壁面用目地カバーを常時前記壁面用目地カバー配設部側へ付勢する付勢手段と、前記一方の躯体に一端部が取り付けられ、前記他方の躯体に他端部が取り付けられ、前記壁面用目地カバーを支持する伸縮アームと、前記壁面用目地カバーの背面に背面側へ突出するように設けられ、前記伸縮アームに支持される被支持部とで構成され、前記壁面用目地カバーは、その表面に壁面用化粧板が設けられており、前記被支持部は、前記壁面用目地カバーが前方へ位置変位した場合であっても前記伸縮アームによって壁面用目地カバーを支持できる形状に形成されており、前記壁面用中央維持機構は、地震によって前記壁面間の目地部が狭くなった場合に、前記壁面用目地カバーが前方側へ押し出すことを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項2に記載の目地装置は、前記壁面用目地カバーの下端部付近に設けられ、前記壁面用目地カバーの下端部と前記床用目地カバー装置との間の隙間を塞ぐカバー部材を更に備えることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の目地装置の前記床用目地カバー装置は、前記一方の躯体及び前記他方の躯体にそれぞれ形成され、端部が乗り上げ傾斜面に形成された凹所状の1対の床用目地プレート支持部と、前記床用目地プレート支持部に両端部が支持された床用目地プレートと、前記床用目地プレートの略中央部を常時前記床面間の目地部の略中央部に位置させる床用中央維持機構とで構成され、前記床用中央維持機構は、地震によって目地部が狭くなった場合に、前記床用目地プレートが上方側へ摺動可能に接続しており、前記カバー部材は、床用目地プレートが上方へ摺動した際に、この床用目地プレートによって上方へ摺動できるように取り付けられている又は床用目地プレートによって変形し、通常時に復帰した場合には、通常時の形状に復帰可能な弾性を有する材質で形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
(1)請求項1に記載の発明においては、壁面用目地カバーが左右の躯体の表面側の壁面と略面一となるように設けており、かつ、その表面を壁面用化粧板で覆っているため、左右の躯体の前記壁面の模様や質感等を再現することができる。
したがって、美観を向上させることができる。
(2)伸縮アームで支持することにより壁面用目地カバーを浮かせた状態で設置することができる。
したがって、床用目地プレートの上面と壁面用目地カバーの下端部の間にスペースを設けることができ、様々なタイプの床用目地プレートを用いることができる。
(3)請求項2及び請求項3に記載の発明においても前記(1)~(2)と同様な効果を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1乃至図9は本発明の第1の実施形態を示す説明図である。
図10乃至図12は本発明の第2の実施形態を示す説明図である。
図1】第1の実施形態の目地装置の平面図。
図2図1の2-2線に沿う断面図。
図3図1の3-3線に沿う断面図。
図4】床用目地プレートの説明図。
図5】壁面用目地カバーの説明図。
図6】地震で目地部が狭くなった状態の平面視側からの動作説明図。
図7】地震で目地部が狭くなった状態の正面視側からの動作説明図。
図8】地震で目地部が広くなった状態の平面視側からの動作説明図。
図9】地震で目地部が広くなった状態の正面視側からの動作説明図。
図10】第2の実施形態の目地装置の平面図。
図11図10の11-11線に沿う断面図。
図12図10の12-12線に沿う断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に示す本発明を実施するための形態により、本発明を詳細に説明する。なお、本明細書では図1を基準として左右方向、前(図面下方)後(図面上方)方向という。また、図2を基準として上(図面上方)下(図面下方)方向という。
【0014】
また、本発明において躯体とは、建物、道路、スラブ、エレベーターシャフト等の目地プレートを設置可能な建造物をいい、出入口とはドアや扉の設けられた出入口だけではなく、人や車両等が通行できる通路も含むものである。
【0015】
図1乃至図9に示す本発明を実施するための第1の形態において、1は一方の躯体3と他方の躯体4間の目地部2を塞ぐ目地装置である。
【0016】
この目地装置1は、例えば図1乃至図3で示すように、一方の躯体3と他方の躯体4の床面間の目地部2aを塞ぐ床用目地カバー装置5と、前記一方の躯体3と前記他方の躯体4の壁面間の目地部2bを塞ぐ壁面用目地カバー装置6とで構成されている。
【0017】
この床用目地カバー装置5は、図1乃至図3で示すように、一方の躯体3及び他方の躯体4にそれぞれ形成され、端部が乗り上げ傾斜面7に形成された凹所状の1対の床用目地プレート支持部8と、前記床用目地プレート支持部8に両端部が支持された複数個の床用目地プレート9と、前記床用目地プレート9の略中央部を常時前記床面間の目地部2aの略中央部に位置させる床用中央維持機構10とで構成されている。
【0018】
床用目地プレート支持部8は、一方の躯体3と他方の躯体4の目地部側の床面に形成されており、目地部2aの反対側の端部には、地震で目地部2が狭くなった場合に床用目地プレート9が乗り上げて上方へせり上がる乗り上げ傾斜面7が形成されている。
【0019】
床用目地プレート9は、本実施形態においては図4に示すように、浅皿状に形成された床用目地プレート本体11と、前記床用目地プレート本体11に充填されたモルタルやコンクリート等の充填部材12と、充填部材12の上部を覆う化粧板13と、床用目地プレート本体11の左右方向の両端部側にヒンジ部材14を介して設けられたカバープレート15とで構成されている。
【0020】
この床用目地プレート9は、左右方向の端部が前記1対の床用目地プレート支持部8に支持されており、通常時において一方の躯体3や他方の躯体4の床面と略面一となるように設けられている。
【0021】
また、この床用目地プレート9の略中央部を常時目地部2aの略中央部に位置させるために床用中央維持機構10が設けられている。
【0022】
この床用中央維持機構10は、一端部が一方の躯体3に取り付けられ、他端部が他方の躯体4に取り付けられたパンタグラフ状のリンク部材16と、このリンク部材16の中央の枢支部に上下方向に摺動可能に設けられ、前記床用目地プレート9の中央部とを接続する接続部材17とで構成されている。
【0023】
このような接続部材17で床用目地プレート9と接続することにより、床用目地プレート9を上下方向に位置変位可能で、かつ、目地部2aの中央に常時位置させることができる。
【0024】
壁面用目地カバー装置6は、例えば図1で示すように、両方の躯体3、4にそれぞれ短面と長面を有する切欠状に形成され、左右の端部にスライド用の誘導面(例えば内端と外端を結ぶ線が直線、波線或いは段差線等の傾斜面となるスライド面)を有する壁面用目地カバー配設部19が設けられている。
【0025】
すなわち、本実施形態では、図1乃至図3に示すように、一方の躯体3及び前記他方の躯体4にそれぞれ形成され、かつ、凹所に左右の傾斜面18を有する1対の凹所状の壁面用目地カバー配設部19と、前記壁面用目地カバー配設部19に設けられ、通常時においてその表面が前記一方の躯体3の表側(前方側)の壁面3a及び前記他方の躯体4の表側(前方側)の壁面4aと略面一となる壁面用目地カバー20と、前記壁面用目地カバー20の略中央部を前記壁面間の目地部2bの略中央部に常時位置させる壁面用中央維持機構21と、前記壁面用目地カバー20を常時前記壁面用目地カバー20の背面側へ付勢する付勢手段22と、前記一方の躯体3に一端部が取り付けられ、前記他方の躯体4に他端部が取り付けられ、前記壁面用目地カバー20を支持する伸縮アーム23と、前記壁面用目地カバー20の下端部付近に設けられ、前記壁面用目地カバー20の下端部と前記床用目地カバー装置5の床用目地プレート9の上面との間の隙間を塞ぐカバー部材24とで構成されている。
【0026】
壁面用目地カバー配設部19は、一方の躯体3と他方の躯体4の目地部2b側の壁面3a、4aに凹所状に形成されており、目地部2bの反対側の端部(左右の端部)には、地震で目地部2が狭くなった場合に壁面用目地カバー20が前方(壁面用目地カバー20の表面側)へ押し出すような傾斜面18が形成されている。
【0027】
壁面用目地カバー20は、本実施形態においては図5に示すように、浅皿状に形成された壁面用目地カバー本体25と、前記壁面用目地カバー本体25に充填されたモルタルやコンクリート等の充填部材12と、壁面用目地カバー本体25の表面を覆う壁面用化粧板26とで構成されている。
【0028】
壁面用目地カバー本体25は、壁面用目地カバー配設部19及び傾斜面18に対応するような形状に形成されており、左右方向の両端部に傾斜部27が設けられている。これにより通常時において壁面用目地カバー20は、一方の躯体3や他方の躯体4の壁面と略面一となり、壁面用目地カバー本体25の表面を覆うように設けられた壁面用化粧板26によって左右の躯体3、4の壁面と同様の模様等を施すことができるため、美観を向上させることができる。
【0029】
この壁面用目地カバー20の背面側には、壁面用中央維持機構21が上下方向に複数個設けられており、この壁面用中央維持機構21は、床用中央維持機構10と同様の構成となっている。すなわち壁面用中央維持機構21は、一端部が一方の躯体3に取り付けられ、他端部が他方の躯体4に取り付けられたパンタグラフ状のリンク部材16と、このリンク部材16の中央の枢支部に前後方向に摺動可能に設けられ、前記床用目地プレート9の中央部とを接続する接続部材17とで構成されている。すなわち、地震時に壁面用目地カバー20が前方へ押し出されることが可能なように接続部材17で接続されている。
【0030】
付勢手段22は、壁面用目地カバー20を常時後方(背面側)に付勢しており、本実施形態では一端部が一方の躯体3及び他方の躯体4に固定され、他端部が接続部材17に接続された付勢スプリング22を用いている。この付勢スプリング22によって壁面用目地カバー20が後方側へ付勢され、前方側へ倒れることを防止している。
【0031】
壁面用目地カバー20は、本実施形態においては、その底部が伸縮アーム23によって支持されており、壁面用目地カバー20の下端部は、床用目地プレート9よりも上方に位置する状態となっている。壁面用目地カバー20は、床用目地プレート9が地震でせり上がった場合に壁面用目地カバー20の下端部と干渉しない程度上方に位置するように設けられている。
【0032】
伸縮アーム23は、壁面用目地カバー20の底部と当接し、かつ、壁面用目地カバー20の表面よりも前方に突出しないように設けられており、壁面用目地カバー20の底部を支持している。
【0033】
この伸縮アーム23は、一端部が一方の躯体3に前後方向に回動可能に設けられた一方のアーム部材28と、一端部が他方の躯体に前後方向に回動可能に設けられ、前記一方のアーム部材28の他端部に他端部側が入り込み、左右方向に摺動可能な他方のアーム部材29とで構成されている。なお、壁面用目地カバー20が地震により前方側へ突出した際にその底部を支持できるように、壁面用目地カバー20の底部付近の背面中央部には、背面側へ突出する被支持部30が形成されている。この被支持部30は、本実施形態においては、バー状に形成されているが、パイプ状の部材やアングル状の金具等を固定してもよく、壁面用目地カバー20が前方へ位置変位した場合であっても壁面用目地カバー20を支持できる形状であればどのような形状であってもよい。
【0034】
ところで、本実施形態では壁面用目地カバー20の底部付近を被支持部30を介して伸縮アーム23で支持しているが、壁面用目地カバー20が軽量で壁面用中央維持機構21のみで壁面用目地カバーを支持できる場合には、伸縮アーム23を用いなくてもよいし、伸縮アーム23を壁面用目地カバー20の底部に当接するように設置し、壁面用目地カバー20の底部背面に被支持部30を形成して伸縮アーム23で支持してもよい。
【0035】
なお、伸縮アーム23は本実施形態に記載の構成の他、その他公知のアーム状の支持機構を用いることができる。
【0036】
カバー部材24は、本実施形態では、地震時に上方へせり上がった前記床用目地プレート20によって変形し、通常時に復帰した場合には、通常時の形状に復帰可能な弾性を有するゴム、樹脂等の材質で形成されており、壁面用目地カバー20の底部と床用目地プレート9の上面の間の隙間を塞ぐように設けられている。具体的には、カバー部材24は、上端部が壁面用目地カバー20の下端部付近に固定されており、下端部側は自由端となるように取り付けられている。
【0037】
なお、カバー部材24としては、地震時に床用目地プレート9が上方へせり上がった場合に、床用目地プレート9に押し上げられて上方へ摺動するように設けられた金属板等を用いてもよい。
【0038】
地震で目地部2が狭くなるように左右の躯体3、4が揺れ動くと、図6及び7に示すように、床用目地プレート9が乗り上げ傾斜面7に沿って上方に乗り上げるとともに、壁面用目地カバー20が傾斜面にそって前方(壁面用目地カバー20の表面側)へ位置変位して揺れ動きを吸収する。
【0039】
地震による揺れ動きが終了すると、床用目地プレート9は自重により下方へ位置変位して通常状態に復帰するとともに、壁面用目地カバー20は付勢手段22の付勢力により後方(壁面用目地カバー20の背面側)へ位置変位し、通常状態に復帰する。
【0040】
地震で目地部2が広くなるように左右の躯体3、4が揺れ動くと、図8及び図9に示すように床用目地プレート9は床用目地プレート支持部8上を摺動するとともに、壁面用目地カバー20は壁面用目地カバー配設部19の表面を摺動して揺れ動きを吸収する。
【0041】
[発明を実施するための異なる形態]
次に、図10乃至図12に示す本発明を実施するための異なる形態につき説明する。なお、これらの本発明を実施するための異なる形態の説明に当って、前記本発明を実施するための第1の形態と同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0042】
図10乃至図12に示す本発明を実施するための第2の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、床用目地プレート支持部8を形成せず、一方の躯体3と他方の躯体4の床面で平板状の床用目地プレート9Aを支持する床用目地カバー装置5Aにするとともに、伸縮アーム23を用いず、この床用目地プレート9Aの上面と壁面用目地カバー20の下端部が略同じ高さとなるように設けた点で、このような目地装置1Aにしても前記本発明を実施するための第1の形態と同様な作用効果が得られる。
【0043】
本実施形態では、床用目地プレート9Aの上面に壁面用目地カバー20の下端部が略当接しているためカバー部材も用いていない。
【0044】
この壁面用目地カバー20の下端部には、地震時に床用目地プレート9Aの上面との摺動をスムーズにするような滑動部材(図示せず)を設けることが望ましい。
【0045】
ところで、本実施形態においても伸縮アーム23を用いて壁面用目地カバー20を支持しているが、通常時において床用目地プレート9Aの上面に壁面用目地カバー20が乗るように床用目地プレート9Aを配置し、伸縮アーム23ではなく床用目地プレート9Aで壁面用目地カバー20を支持してもよい。この場合には、地震時に目地部2が狭くなった場合に目地プレート9Aが摺動できるスペースを左右の躯体3、4の壁面に形成するとよい。
【0046】
なお、本発明の実施の形態においては、リンク部材を用いた壁面用中央維持機構及び床用中央維持機構を用いたが、ラックピニオンを利用した中央維持機構等、公知の中央維持機構を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は目地装置を製造する産業で利用される。
【符号の説明】
【0048】
1、1A:目地装置、 2:目地部、
3:一方の躯体、 4:他方の躯体、
5、5A:床用目地カバー装置、 6:壁面用目地カバー装置、
7:乗り上げ傾斜面、 8:床用目地プレート支持部、
9、9A:床用目地プレート、 10:床用中央維持機構、
11:床用目地プレート本体、 12:充填部材、
13:化粧板、 14:ヒンジ部材、
15:カバープレート、 16:リンク部材、
17:接続部材、 18:傾斜面、
19:壁面用目地カバー配設部、 20:壁面用目地カバー、
21:壁面用中央維持機構、 22:付勢手段、
23:伸縮アーム、 24:カバー部材、
25:壁面用目地カバー本体、 26:壁面用化粧板、
27:傾斜部、 28:一方のアーム部材、
29:他方のアーム部材、 30:被支持部。