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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136010
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   B62D 33/04 20060101AFI20240927BHJP
   B60J 7/08 20060101ALI20240927BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20240927BHJP
   B60H 1/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B62D33/04 Z
B60J7/08 P
B60R11/02 C
B60H1/00 102S
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046955
(22)【出願日】2023-03-23
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-04-16
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松下 真矢
(72)【発明者】
【氏名】下沢 智啓
(72)【発明者】
【氏名】水師 由佳
(72)【発明者】
【氏名】下中 淳史
(72)【発明者】
【氏名】後閑 雅登
【テーマコード(参考)】
3D020
3L211
【Fターム(参考)】
3D020BA20
3D020BB02
3D020BC04
3D020BD03
3D020BD07
3L211AA06
(57)【要約】
【課題】太陽光の照射により荷室内の室温は上昇し、特に天井付近は、温度がかなり上昇する可能性があり、各種センサは荷室の天井部分に設置されることが多いから、センサの動作範囲を超える恐れがある。また、荷積み又は荷下ろし時にパレット上の荷物が天井付近のセンサに衝突してセンサが故障する恐れもある。
【解決手段】本開示の一態様における車両は、計測用装置が移動する荷室内のレールと、前記レールの所定位置に設けられ、前記計測用装置を収容する収容装置と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測用装置が移動する荷室内のレールと、
前記レールの所定位置に設けられ、前記計測用装置を収容する収容装置と、
を有する車両。
【請求項2】
前記レールは、H鋼である、
請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記H鋼は、ウィングボディタイプの車両における荷室の梁部を構成する、
請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記レールは、荷室の天井に取り付けられている、
請求項1に記載の車両。
【請求項5】
前記収容装置は、前記荷室の室温に応じて空調する空調器を含む、
請求項1に記載の車両。
【請求項6】
前記空調器は、冷却が可能である、
請求項5に記載の車両。
【請求項7】
前記空調器は、加熱が可能である、
請求項6に記載の車両。
【請求項8】
前記収容装置は、前記計測用装置に電源を供給する電源装置を含む、
請求項1に記載の車両。
【請求項9】
前記収容装置は、前記計測用装置に対する通信装置を含む、
請求項1に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、荷室を備える車両に関する。
【背景技術】
【0002】
運送中の車両の荷室に搭載されている荷物の積載量及び/又は容積率を計測したり、荷物に貼付されたRFIDタグを読み取るために、各種センサを荷室内に設置することが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-78712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の荷室は閉鎖された空間であるから、車両の荷室の外壁が太陽光の照射に晒されることにより荷室内の室温は上昇し、特に天井付近では、室温がかなり上昇する可能性がある。荷室内に設置される各種センサからなる計測装置は上記の目的から荷室内の天井部分に設置されることも多いから、この室温の上昇により設置されたセンサ等の計測装置の適正な動作範囲を超える恐れがある。
【0005】
また、トラックの荷物はフォークリフト等を用いて荷積み又は荷下ろしすることが多く、荷積み又は荷下ろし時にパレット上の荷物が計測装置に衝突する恐れもある。
【0006】
本開示は、以上の点を考慮してなされたものであり、本開示の目的は、荷室内の計測装置の故障を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様における車両は、計測用装置が移動する荷室内のレールと、前記レールの所定位置に設けられ、前記計測用装置を収容する収容装置と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、計測装置を収容装置に収容することが可能であるから、荷積み又は荷下ろし時に荷物が衝突することを防止することが可能である。また、収容装置に空調を行うことが可能であるから、車両の荷室内を計測する計測装置が適正温度範囲外となることを防止することが可能である。したがって、計測装置による荷室内の計測を安定して行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】計測用台車がH鋼を把持した状態を示す正面図
図2】計測用台車がH鋼を把持した状態を示す上面図
図3】計測用台車がC形鋼に把持した状態を示す上面図
図4A】計測用台車がC形鋼に把持した状態を示す側面図
図4B】計測用台車が2本のC形鋼に把持した状態を示す側面図
図5】センサを筐体に対して移動可能とした例を示す図
図6】収容装置を備えたトラックを示す概念図
図7A】収容装置の正面図
図7B】収容装置の正面図
図8】収容装置の断面図
図9】収容装置をH鋼の中央部に設けた場合の収容装置の断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0011】
<計測用装置>
荷室の広い範囲における全領域を計測するためには、高額な計測装置を複数(多数)取り付ける必要がある。
【0012】
これに対して、例えば、車両の荷室天井の梁部を構成しているH鋼(荷室における車両最前部から車両最後部に渡って設置されている)を計測用台車の移動用レールとして用い、計測用台車に荷室の計測装置を搭載してH鋼に沿って走行させるような構成とすれば、1台の計測装置で荷室内を全領域に渡ってくまなく計測することができる。計測用台車に計測装置を設置することで計測用装置が構成される。
【0013】
まず、このような計測装置を搭載した計測用台車について説明する。
【0014】
<例1>
図1は、計測用台車100がH鋼を把持した状態を示す正面図である。図2は、計測用台車100がH鋼112を把持した状態を示す上面図である。図2では、分かり易さのため、H鋼112を網掛けで表示し、H鋼112の下の計測用台車100の構成を表示している。
【0015】
<計測用台車の構造>
計測用台車100は、筐体101、駆動部102、支柱103、第1固定部104、水平部105、第2固定部107、ガイド部108、及びH鋼支持部109を有する。支柱103、第1固定部104、水平部105、第2固定部107、ガイド部108、及びH鋼支持部109は、把持部を構成する。把持部により、計測用台車100がH鋼112に把持される。筐体101の側面110には計測装置120(以下、「センサ」という。)が取付けられている(図2参照)。このセンサ120は、筐体101の底面111に取付けられてもよい。
【0016】
筐体101は、内部に、図示しないモータ等の駆動機構、バッテリ等からなる電源部、通信部、制御部等を有する。
【0017】
駆動機構は、駆動部102を駆動する。
【0018】
電源部は、駆動機構、通信部、制御部等に電源を供給する。電源部は、センサに対して無線又は有線により電源を供給してもよい。
【0019】
通信部は、車両の運転台周辺の装置及び/又は運送会社事務所の装置等の外部装置と通信する。通信部は、筐体101の側面110及び/又は底面111に設置されたセンサ120と通信を行ってもよい。通信部は、センサ120から受信したデータを外部装置に送信してもよいし、外部装置からのデータをセンサ120に送信してもよい。通信部は、計測用台車100の位置情報を送信してもよい。通信部は、センサ120から受信したデータをメモリに保存してもよいし、保存されたデータを外部装置に送信してもよい。センサ120と筐体101内の通信部の間の通信及び筐体101内の通信部と外部装置の間の通信は、いずれも有線通信でも無線通信でもよい。無線通信は、例えばBluetooth、無線LAN(Local Area Network)、NFC(Near Field Communication)、携帯電話網等を用いることができる。制御部は、駆動機構、電源部、通信部等を制御し、計測用台車100を制御する。
【0020】
制御部は、通信手段により筐体101に設置されたセンサ120を制御してもよい。センサ120が外部装置に通信を行ってもよい。
【0021】
駆動部102は、例えば表面がゴム製のタイヤで構成されており、計測用台車100がH鋼112に把持された際に、H鋼112の下面(外側)と接触して駆動部102が回転駆動されることにより、計測用台車100をH鋼112に沿って移動させる。また、駆動部102は、計測用台車100がH鋼112に把持された際にH鋼112の下面(外側)と所定の圧接力をもって接触するように図示しないバネ等の付勢機構により、H鋼112の下面(外側)に向かう方向に付勢されている。
【0022】
支柱103は、筐体101の上面に対して垂直方向に長さ方向を有する。支柱103は、第1固定部104が垂直方向(図1における上下方向)に移動可能な状態で取付けられており、垂直方向の位置が調整された後、支柱103に対して固定される。支柱103の水平方向(図1における左右方向)の間隔Dは、H鋼112の水平方向の幅よりも大きい。なお、支柱103の位置を筐体101に対して水平方向に移動可能な構造とすることで、間隔Dを変更可能としてもよい。
【0023】
第1固定部104は、支柱103に対して垂直方向に移動可能となるように固定されるとともに、水平部105を水平方向に移動可能となるように保持する。
【0024】
水平部105は、第1固定部104に対して左右方向の位置が調整された後、第1固定部104に固定される。第2固定部107は、水平部105に対して水平方向に移動可能に固定される。水平部105には、同一の中心軸106を有するベアリングからなるH鋼支持部109が取り付けられている。H鋼支持部109が取り付けられる代わりに、水平部105の一部の太さが変更されていてもよい。
【0025】
第2固定部107は、水平部105に対して固定される。第2固定部107の筐体101側にはベアリングからなるガイド部108が取り付けられている。
【0026】
ガイド部108は、計測用台車100がH鋼112に把持される際にH鋼112の側面に接触するように位置を調整される。これにより、計測用台車100の横方向へのズレが防止され、計測用台車100のH鋼の長さ方向に対する移動をガイドする。
【0027】
H鋼支持部109は回転可能なベアリングで構成されており、計測用台車100がH鋼112に把持される際にH鋼112の上面(内側)に接触することで、筐体101をH鋼112の下面側で把持する。H鋼支持部109は、中心軸106に対して回転可能であるが、固定された構造であってもよい。
【0028】
計測用台車100は、H鋼112に着脱自在に把持することとしたが、着脱自在でなくてもよい。
【0029】
筐体101の側面110及び/又は底面111に、各種センサ120が設置される。センサ120は、カメラ、深度センサ等であってもよい。センサ120が荷室の状況を計測することで、荷室の容積率等が算出される。荷室の壁までの距離を計測するなど、センサ120の計測により計測用台車100の位置情報が算出されてもよい。
【0030】
<計測用台車の移動>
計測用台車100がH鋼112を把持している状態で、筐体101内に配置されている図示しない駆動機構(例えば、モータ)がゴム製のタイヤである駆動部102を回転駆動することにより、計測用台車100はH鋼112に沿って、例えば荷室の車両最前部から車両最後部まで範囲を移動することが可能である。計測用台車100の位置は、センサ120による計測から求められてもよいし、駆動部であるステップモータ又はロータリーエンコーダ等のセンサを備えるモータの回転数から算出されてもよいし、センサ120による計測から求められた位置と回転数による移動距離からの算出された位置の両方から求められてもよい。センサ120による位置の計測は、荷室の壁からの距離を計測してもよいし、H鋼112の下面に設けられた目印を読み取ることにより算出されてもよい。
【0031】
また、計測用台車100をH鋼112に沿って移動させる機構として、H鋼112にラックギアが設置されてもよい。この場合は駆動部102をゴム製のタイヤではなくピニオンギアで構成し、ピニオンギアをH鋼112に設置されたラックギアに嵌合させて、ステップモータで駆動することにより、計測用台車100を移動させてもよい。ステップモータの回転をカウントすることにより、計測用台車100の位置が把握されてもよい。車両の振動又は傾きにより計測用台車100が意図しない方向へ移動してしまうという確率を減らすため、駆動部102に回転軸を静止させるブレーキを搭載してもよい。この場合、駆動部102をゴム製のタイヤによる摩擦伝動からピニオンギアとラックギアを用いた歯車伝導とすることで、滑りを無くし、より強固な制動力を得ることができる。
【0032】
<センサの動作>
計測用台車100の筐体101の側面110、底面、及び/又は内部にセンサ120を設置することで計測用装置が構成される。計測用装置のセンサ120により、荷室内の計測を行う。計測用台車100はH鋼112に沿って荷室の車両最前部から車両最後部まで範囲を移動することが可能であることから、筐体101に設置された1つのセンサ120により荷室内の全ての領域の計測を行うことができる。計測は、荷物までの距離であってもよい。例えば、計測された荷物までの距離と、計測した計測用台車100の位置に基づいて、荷室の積載率が把握される。
【0033】
センサ120によって計測された距離と位置は、NFC(Near Field Communication)、Bluetooth等の無線通信または有線通信により、筐体101内の通信部に送信されてもよい。送信された距離と位置は、筐体101に搭載されているメモリに蓄積された後に、運転席付近の装置及び/又は運送会社の事務所に設置された装置等の外部装置に送信されてもよい。筐体101内のメモリは、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive),USB(Universal Serial Bus)メモリ、SDカード等でよい。筐体101内の通信部から外部装置への送信は、無線LAN、携帯電話網等の無線通信を用いることができる。筐体101からメモリを取り外して、外部装置が該メモリから読み出してもよい。
【0034】
荷室の積載率は、筐体101内の制御部により演算されてもよいし、外部装置で演算されてもよい。
【0035】
例1の計測用台車は、ウィングボディタイプのトラックの梁部を構成するH鋼112に取り付けて使用することができるので、トラックの荷室に対する追加工事や取り付け工事が不要である。
【0036】
また、計測用台車100に設置されたカメラ(センサ120)が取得した画像を運転席付近の装置に送信することにより、運転者が荷室内の荷物の状態を監視することもできる。
【0037】
<例2>
H鋼とは別に、荷室に別途レールを取り付けて、あるいは、H鋼が存在しない場合には、新たなレールを取り付けて、これらの取り付けられたレールに計測用台車100を取り付けて使用してもよい。設置するレールはCチャンネル(C形鋼)を用いることができる。荷室の上部に、例えば楕円形のレールを配置することにより、ウィングドアに近い部分の荷物についても、より正確な距離を測定することができ、積載率をより詳細に計算することが可能である。また、荷室の上部に取り付けるレールをつづら折り形状に配置することにより、荷室の全領域の計測をより精度良く行うことも可能となる。なお、荷室に取り付けるレールは、C形鋼でなくてもよく、計測用台車100を取付け可能であって車両に荷室内を移動させることができるものであればどのような形状のものであってもよい。
【0038】
図3は、本実施の形態の計測用台車300がC形鋼301に把持した状態を示す上面図である。図4Aは、本実施の形態の計測用台車300がC形鋼301に把持した状態を示す側面図である。図4Bは、本実施の形態の計測用台車300が2本のC形鋼301に把持した状態を示す側面図である。図5は、センサ502を筐体501に対して更に移動可能とした例を示す。
【0039】
図3は、分かり易さのためC形鋼301を網掛けで表示し、C形鋼301に隠れている計測用台車300の構成を表示している。図3図4Aに記載されるように、本例では、車両の荷室の天井に、荷室の車両最前部から車両最後部にわたって平行に設置されている2本のC形鋼301の間に計測用台車300が把持されている。図4B図5に記載されるように、2本の溝形鋼301、401の間に計測用台車300が把持されてもよい。溝形鋼の代わりにC形鋼が用いられてもよい。
【0040】
<計測用台車の構造>
計測用台車300は、筐体302、駆動部303、支柱304、C形鋼支持部305、固定部306、腕部307、ガイド部308を有する。計測用台車300の側面にセンサ309を設置する。センサ309は、筐体302の底面に設置されてもよい。支柱304、C形鋼支持部305、固定部306、腕部307、及びガイド部308は、把持部を構成する。把持部により筐体302がC形鋼301を把持する。
【0041】
筐体302は、内部に、図示しないモータ等からなる駆動機構、バッテリ等からなる電源部、通信部、制御部等を有する。
【0042】
駆動機構は、駆動部303を駆動する。
【0043】
電源部は、駆動機構、通信部、制御部等に電源を供給する。
【0044】
通信部は、トラックの運転台周辺の装置、運送会社事務所の装置等の外部装置と通信する。通信部は、計測用台車300の側面及び/又は底面に設置されたセンサと通信を行ってもよい。通信部は、センサから受信したデータを外部装置に送信してもよいし、外部装置からのデータをセンサに送信してもよい。通信部は、計測用台車300の位置情報を送信してもよい。通信部は、センサから受信したデータをメモリに保存し、保存されたデータを外部装置に送信してもよい。通信は有線通信でも無線通信でもよい。無線通信は、例えばBluetooth、無線LAN、NFC、携帯電話等を用いることができる。
【0045】
制御部は、駆動手段、電源部、通信部等を制御し、計測用台車300を制御する。制御部は、通信手段により計測用台車300に設置されたセンサ309を制御してもよい。
【0046】
駆動部303は、図4A図4B図5に示すようにC形鋼301の内面と接触して、計測用台車300をC形鋼301に沿って移動させる。駆動部303は、例えばピニオンギアで構成されている。駆動部303が接触するC形鋼301の内面には、図示しないラックギアが設置されている。ラックギアは、C形鋼301に貼付されてもよい。車両の振動又は傾きにより計測用台車300が意図しない方向へ移動してしまうという確率を減らすため、駆動部303に回転軸を静止させるブレーキを搭載してもよい。ピニオンギアとラックギアを用いた歯車伝導であるから、モータ回転軸を静止させることで、計測用台車300は強固な制動力を得る。なお、駆動部303を表面がゴム製のタイヤとし、C形鋼301にラックギアを設けない構成としてもよい。
【0047】
支柱304は、筐体302の側面に対して垂直方向に長さ方向を有する。支柱304は、C形鋼支持部305が回転可能に固定される。支柱304は伸縮自在であってもよい。
【0048】
C形鋼支持部305は回転可能なベアリングで構成されており、支柱304に対して回転可能に固定される。C形鋼支持部305は、C形鋼301の内面に接触することで、筐体302を2本のC形鋼301の間で把持する。C形鋼支持部305は、外部方向(図4A図4B図5における下方向)に付勢されていてもよい。
【0049】
固定部306は、筐体302の側面に固定され、腕部307が回動可能且つ固定可能に取り付けられている。
【0050】
腕部307には、ガイド部308が回転可能に取り付けられている。また、腕部307は、固定部306に対して回動可能且つ固定可能とされており、筐体302の長手方向からこれと直角方向に向かう方向に図示しない付勢機構により付勢されている。腕部307が筐体302の長手方向からこれと直角方向に向かう方向に付勢されていることで、一対のガイド部308が図4A図4B図5に示すようにC形鋼301の内面の側面に所定の圧接力を持って当接することが可能となる。
【0051】
ガイド部308は、C形鋼301の内面の側面に接触し、計測用台車300のC形鋼301の長さ方向に対する移動をガイドする。
【0052】
計測用台車300の側面に設置されるセンサ309は、カメラ、深度センサ等であってよい。センサ309が荷室の状況を計測することで、荷室の容積率が算出される。荷室の壁までの距離を計測するなど、センサの計測により計測用台車300の位置情報が算出されてもよい。このセンサ309は、計測用台車300の底面に取付けられてもよい。
【0053】
<計測用台車の移動>
計測用台車300がC形鋼301に把持された状態で、駆動機構が駆動部303を駆動することにより、計測用台車300が、例えば荷室の車両最前部から車両最後部まで範囲をC形鋼301に沿って移動することが可能である。本実施の形態では、駆動部303がピニオンギアで構成され、C形鋼301にラックギアが設けられている。
【0054】
筐体302内の駆動機構であるモータをステップモータ又はロータリーエンコーダ等のセンサを備えるモータとすることにより、計測用台車300の位置を把握することができる。ステップモータはステッピングモーターとも呼ばれる。計測用台車300の位置は、センサによる計測から求められてもよいし、ステップモータ又はロータリーエンコーダ等のセンサを備えるモータの回転数から算出されてもよいし、センサの計測による位置と回転数により算出された位置の両方から求められてもよい。位置を算出するためのセンサの計測は、荷室の壁からの距離を計測してもよい。C形鋼の下面に設けられた目印を読み取ることにより算出されてもよい。
【0055】
駆動部303は、ピニオンギアでなく、例1の形態と同様の表面がゴム製のタイヤであってもよいし、他の手段であってもよい。
【0056】
設置されるC形鋼は、直線状だけでなく、例えば略楕円形とすることもできる。C形鋼を楕円形に設置することで、荷室の中央部分以外にも計測用台車300を移動させることができるので、幅広い範囲に計測用台車300を移動させることができる。
【0057】
計測用台車300に設置されたカメラで取得した画像を運転席付近の端末に表示させることで、運転者が荷室内の荷物の状態を監視することもできる。
【0058】
図5に示すように、2本の溝形鋼301、401を荷室の側面上部の隅に設置して、筐体501を溝形鋼301に沿って移動可能とし、更に筐体501に対してセンサ502を移動可能(すなわち、溝形鋼の長手方向に対して直交する方向に移動可能)とすることで、センサ502を荷室内の任意の箇所に移動させることができる。筐体501に対してセンサ502を移動可能とする構成は、周知の構成を用いてよい。
【0059】
溝形鋼301以外のレールが用いられてもよい。
【0060】
<実施の形態>
例1又は例2に開示したように、センサが設置された計測用台車が天井のレールに沿って移動する場合、センサは天井付近に存在する。太陽光の照射により、荷室の天井付近の室温は極めて高くなるから、センサの適正動作温度の範囲外となる可能性がある。あるいは、寒冷地では天井付近の室温が極めて低くなり、センサの適正動作温度の範囲外となる可能性がある。そうなると、センサによる計測が正しく行えなくなり、また、場合によってはセンサが故障してしまうこともありうる。
【0061】
また、荷積み又は荷下ろし時にパレット上の荷物が天井付近のセンサに衝突してセンサが故障する恐れもある。
【0062】
したがって、このような状態を発生させないためには、センサを収容する収容装置をレール上に設けることが必要である。収容装置は、センサの温度が動作範囲外とならないようにセンサを冷却又は加熱することができる。
【0063】
センサを冷却あるいは加熱する場合、計測用台車100(300)又はセンサに空調装置を取り付けると、移動する計測用台車100(300)又はセンサの重量が増加するが、収容装置がセンサを冷却又は加熱すれば、計測用台車100(300)及びセンサの重量は増加しないから、計測用装置の移動に必要なエネルギーが増加しない。
【0064】
<収容装置の構成>
図6に、本実施の形態の収容装置を備えた車両(以下、「トラック」と記す)600の概念図を示す。図7A図7Bは、図6のA方向から見た収容装置の正面図である。図8は、図7Aの断面BをC方向から見た収容装置の断面図である。
【0065】
図6のトラック600は、キャブ601及び荷室602を有する。荷室602の天井部分にはH鋼(レール)603が設置されている。計測用装置604は、H鋼603に着脱自在に把持されてH鋼603に沿って移動可能である。収容装置605は、計測用装置604とは別体であり、計測用装置604が移動するH鋼603上の任意の場所に固定される形で設けられる。計測用装置604は、H鋼603に着脱自在でなくてもよい。
【0066】
図6~8は、収容装置605をH鋼603の荷室内の前方側端部(運転席側)に設けた例を記載しているが、H鋼603の端部以外に設けることもできる。収容装置605をH鋼603の端部以外に設ける場合は、後述する空調器801及び送風機802を、収容装置605の下面に設ければよい。図9は、収容装置605をH鋼603の端部以外に設けた場合の収容装置の断面図を示す。収容装置605は複数設けられてもよい。
【0067】
計測用装置604は、計測用台車100に計測装置(センサ)が設置されて構成されている。計測装置は、RFIDリーダ、カメラ、深度センサ等のセンサを備えている。計測用装置604は、H鋼603に沿って、収容装置605の内部及び外部に移動することができる。
【0068】
収容装置605は、図7Aおよび図8に示すように保温部701、固定部703、空調器801、及び送風機802で構成される。また、保温部701は断熱層702を有している。したがって、収容装置605内の空気を空調(冷却又は加温)することができる。
【0069】
保温部701は、H鋼603の周囲を囲む構成であり、H鋼603と保温部701で生成される空間に計測用装置604が収容可能とされている。この空間内に空調器801によって生成された空気は保持される。
【0070】
固定部703は、H鋼603に固定されており、保温部701をH鋼603に固定する。
【0071】
図7Bに示すように、収容装置605の内側にH鋼603がむき出しにならないように、H鋼603に追加保温部704を設けて、高温(低温)になりやすいH鋼603から計測用装置604への熱伝導を抑えることにより、冷却(加熱)効果を上げることができる。追加保温部704は、断熱層を有してもよい。
【0072】
空調器801は、例えば、ペルチェ素子を用いることができる。ペルチェ素子に加える電圧により、冷却又は加熱をすることができる。空調器801で温度を調節された空気が送風機802によって収容装置605の内部(すなわち、保温部701で形成された空間)に送り込まれることで、収容装置605の内部の空気が冷却(加熱)される。空調器801は、ペルチェ素子の代わりに他の素子でもよいし、ヒートポンプ等の他の冷却(加熱)手段が用いられてもよい。ヒートポンプも冷却又は加熱を行うことができる。空調器801及び送風機802は、収容装置605の下面に設けることもできる。空調器801及び送風機802を収容装置605の下面に設けると、天井から遠い空気を取り込んで空調するので、天井付近の空気を空調する場合に比べて少ない消費電力で空調することができる。
【0073】
収容装置605の電源として、独自のバッテリを用いることも、トラック600の電源を用いることもできる。また、荷台の外壁に太陽電池を設置してこれを電源として用いることもできる。太陽電池は、トラック600の荷台の上面や側面に配置することができる。太陽電池による電力は、直接収容装置605に提供されてもよいし、バッテリに充電されてもよい。収容装置605で冷却を行う場合、荷室602の室温は、太陽光により上昇するから、太陽電池を収容装置605の電源とすれば、荷室602の室温が上昇する時に太陽電池の発電も活発となり、この電力を用いて効率よく収容装置605の空調器801を動作させることができる。
【0074】
<動作>
計測用装置604は、計測を行っていない時は、収容装置605内に移動させておき、収容装置605の内部に保持された状態、すなわち、ホームポジションで待機している状態とする(図8参照。)。計測用装置604が荷室602内の計測を行う場合は、計測用装置604を駆動してH鋼603に沿って収容装置605の外部に移動させ、荷室602内の計測を行う。荷室602内の計測が終了すると、計測用装置604は収容装置605の内部に戻り、再びここに保持される。計測用装置604が、計測を行う場合以外は、収容装置605の内部に存在するので、計測用装置の温度が必要以上の上昇することを防止することができる。また計測用装置604が計測を行わない待機時には計測用装置604の温度、すなわちセンサの温度を動作温度内に維持することができる。
【0075】
また、荷積み又は荷下ろし時の荷物による衝突から計測用装置604を保護することができるから、収容装置605により、物理的な衝突から計測用装置を保護することができる。
【0076】
収容装置605の内部と外部を計測用装置604が移動することによる温度差に起因する結露を防止するため、収容装置605の内部に除湿剤の設置又は除湿装置を設けてもよい。計測用装置604を、低速で収容装置605に出入りするように移動を制御することにより、計測用装置604の温度変化を緩やかにして結露の発生を低減するようにしてもよい。
【0077】
収容装置605の動作方法としては、荷室602内に温度センサを設け、荷室602内の室温に応じて収容装置605を動作させてもよい。例えば、収容装置605で冷却を行う場合、室温が第1の閾値以上の場合には空調器801及び送風機802を動作させて冷却を行い、第1の閾値未満で第2の閾値以上の場合には、送風機802だけを動作させて送風を行い、第2の閾値未満の場合には、全体を停止させてもよい。第2の閾値を設けず、室温が第1の閾値以上の場合には、送風機802だけ、又は空調器801と送風機802を動作させて送風を行ってもよい。収容装置605で加温を行う場合、第3の閾値未満の場合には空調器801及び送風機802を動作させて加温を行い、第3の閾値以上で第4の温度未満の場合には送風機802だけを動作させて送風を行い、第4の温度以上の場合には、全体を停止させてもよい。第4の閾値を設けず、室温が第3の閾値未満の場合には、送風機802だけ、又は空調器801と送風機802を動作させて送風を行ってもよい。
【0078】
収容装置605内に電源装置を設けておき、計測用装置604が収容装置605内に存在する時に、計測用装置604に電源を供給してもよい。計測用装置604内に備えるバッテリに充電を行ってもよい。収容装置605から計測用装置604への電源供給は、接触による供給でも非接触による供給でもよい。
【0079】
収容装置605に通信装置を設け、計測用装置604が収容装置605内に存在する時に、計測用装置604が計測データの送信を行ってもよい。送信は無線送信でもよく、NFC、Bluetooth等を用いることができる。収容装置605に受信装置を配置することにより、送信電力を小さくすることができる。
【0080】
例1に記載したH鋼をレールとする計測用装置の収容装置について説明したが、例2に記載したC形鋼又は溝形鋼をレールとする計測用装置の収容装置についても適用することができる。
【0081】
なお、本開示は、上記実施の形態の説明に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。
【0082】
(1)本開示の一態様における車両は、計測用装置が移動する荷室内のレールと、前記レールの所定位置に設けられ、前記計測用装置を収容する収容装置と、を有する。
【0083】
(2)本開示の一態様における車両は、(1)の車両において、前記レールは、H鋼である。
【0084】
(3)本開示の一態様における車両は、(1)の車両において、前記H鋼は、ウィングボディタイプのトラックの梁部を構成する。
【0085】
(4)本開示の一態様における車両は、(1)の車両において、前記レールは、荷室の天井に取り付けられている。
【0086】
(5)本開示の一態様における車両は、(1)の車両において、前記収容装置は、前記荷室の室温に応じて空調する空調器を含む。
【0087】
(6)本開示の一態様における車両は、(5)の車両において、前記空調器は、冷却が可能である。
【0088】
(7)本開示の一態様における車両は、(6)の車両において、前記空調器は、加熱が可能である。
【0089】
(8)本開示の一態様における車両は、(1)の車両において、前記収容装置は、前記計測用装置に電源を供給する電源装置を含む。
【0090】
(9)本開示の一態様における車両は、(1)の車両において、前記収容装置は、前記計測用装置に対する通信装置を含む。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本開示の車両は、荷室内の計測を必要とする車両に有用である。
【符号の説明】
【0092】
100、300 計測用台車
101、302、501 筐体
102、303 駆動部
103、304 支柱
104 第1固定部
105 水平部
106 軸
107 第2固定部
108、308 ガイド部
109 H鋼支持部
110 側面
111 底面
112、603 H鋼
301、401 C形鋼
305 C形鋼支持部
306 固定部
307 腕部
309、502 センサ
600 トラック
601 キャブ
602 荷室
604 計測用装置
605 収容装置
701 保温部
702 断熱層
703 固定部
704 追加保温部
801 空調器
802 送風機
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9