(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136012
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】プラグ
(51)【国際特許分類】
E02F 9/00 20060101AFI20240927BHJP
F16L 55/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
E02F9/00 B
E02F9/00 Z
F16L55/00 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046959
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋田 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】横井 香保里
(72)【発明者】
【氏名】畑 典仁
(72)【発明者】
【氏名】内山 貴智
【テーマコード(参考)】
2D015
【Fターム(参考)】
2D015BA04
(57)【要約】
【課題】作業機械から取り外された油圧機器の給排口を閉塞する際に、油圧機器の内部に錆が発生するのを防止可能なプラグを提供する。
【解決手段】プラグ(30)は、油圧機器に対する作動油の給排口を閉塞するものであって、給排口に着脱可能に取り付けられて、給排口を閉塞する閉塞部(31)と、閉塞部(31)によって給排口が閉塞された状態で、油圧機器の内部に拡散して防錆皮膜を形成する気化性防錆剤(33)とを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧機器に対する作動油の給排口を閉塞するプラグにおいて、
前記給排口に着脱可能に取り付けられて、前記給排口を閉塞する閉塞部と、
前記閉塞部によって前記給排口が閉塞された状態で、前記油圧機器の内部に拡散して防錆皮膜を形成する気化性防錆剤とを備えることを特徴とするプラグ。
【請求項2】
請求項1に記載のプラグにおいて、
前記気化性防錆剤を含んだ状態で所定の形状に成形された気化性防錆樹脂を備え、
前記閉塞部は、前記気化性防錆樹脂を交換可能に保持することを特徴とするプラグ。
【請求項3】
請求項2に記載のプラグにおいて、
前記閉塞部は、
筒体の外周面に形成された雄ネジと、
前記筒体の内側に前記気化性防錆樹脂を収容する収容室と、
前記筒体の先端開口の周方向に離間した位置から径方向内向きに突出する複数の爪とを備えることを特徴とするプラグ。
【請求項4】
請求項3に記載のプラグにおいて、
前記閉塞部には、前記筒体を径方向に貫通する第1貫通孔が形成され、
前記気化性防錆樹脂には、前記収容室の内部で前記第1貫通孔に連通する第2貫通孔が形成され、
連通する前記第1貫通孔及び前記第2貫通孔に挿抜されるピンを備えることを特徴とするプラグ。
【請求項5】
請求項2に記載のプラグにおいて、
前記閉塞部は、
筒体の外周面に形成された雄ネジと、
前記筒体の内側に前記気化性防錆樹脂の少なくとも一部を収容する収容室とを備え、
前記気化性防錆樹脂は、前記筒体の先端開口を通じて前記収容室に圧入可能な形状であることを特徴とするプラグ。
【請求項6】
請求項5に記載のプラグにおいて、
前記気化性防錆樹脂は、円筒形状の前記収容室に内接する多角形状であることを特徴とするプラグ。
【請求項7】
請求項2に記載のプラグにおいて、
前記気化性防錆樹脂は、水溶性または油溶性の被膜で覆われていることを特徴とするプラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧機器の給排口を閉塞するプラグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、油圧ショベルのフロント作業機を動作させる油圧シリンダは、油圧ショベルを輸送する際に取り外されて、作動油を抜いた状態で油圧ショベル本体とは別々に輸送されるのが一般的である。
【0003】
このような場合において、油圧シリンダに対して作動油を給排する給排口を通じて、異物が侵入するのを防止することを目的として、給排口をプラグで閉塞する場合がある(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、油圧シリンダから作動油を抜く際に空気が侵入すると、空気に含まれる水分で油圧シリンダの内部に錆が発生する可能性がある。
【0006】
本発明は、上記した実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、作業機械から取り外された油圧機器の給排口を閉塞する際に、油圧機器の内部に錆が発生するのを防止可能なプラグを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、油圧機器に対する作動油の給排口を閉塞するプラグにおいて、前記給排口に着脱可能に取り付けられて、前記給排口を閉塞する閉塞部と、前記閉塞部によって前記給排口が閉塞された状態で、前記油圧機器の内部に拡散して防錆皮膜を形成する気化性防錆剤とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、作業機械から取り外された油圧機器の給排口を閉塞する際に、油圧機器の内部に錆が発生するのを防止可能なプラグを得ることができる。なお、上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図4】変形例1に係るプラグ及び気化性防錆タブレットを示す図である。
【
図5】変形例2に係るプラグ及び気化性防錆タブレットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る油圧ショベル1(作業機械)の実施形態について、図面を用いて説明する。但し、作業機械の具体例は、油圧ショベル1に限定されず、ホイールローダ、ダンプトラック、クレーン車など、油圧機器を搭載するものであればよい。また、本明細書中の前後左右は、特に断らない限り、油圧ショベル1に搭乗して操作するオペレータの視点を基準としている。
【0011】
図1は、油圧ショベル1の側面図である。
図1に示すように、油圧ショベル1は、下部走行体2と、下部走行体2により支持された上部旋回体3とを備える。下部走行体2及び上部旋回体3は、車体の一例である。
【0012】
下部走行体2は、無限軌道帯である左右一対のクローラ4を備える。そして、走行モータ5の駆動により、左右一対のクローラ4が独立して回転する。その結果、油圧ショベル1が走行する。但し、下部走行体2は、クローラ4に代えて、装輪式であってもよい。
【0013】
上部旋回体3は、旋回モータ6によって旋回可能に下部走行体2に支持されている。すなわち、旋回モータ6が回転することによって、下部走行体2に対して上部旋回体3が旋回する。上部旋回体3は、ベースとなる旋回フレーム7と、旋回フレーム7の前方左側に配置されたキャブ(運転席)8と、旋回フレーム7の後部に配置されたカウンタウェイト9と、旋回フレーム7の前方中央に上下方向に回動可能に取り付けられたフロント作業機10(作業装置)とを主に備える。
【0014】
キャブ8は、左右方向(車体の幅方向)において、フロント作業機10に隣接して配置されている。より詳細には、キャブ8は、フロント作業機10の左方(左右方向の一方側)に配置されている。但し、キャブ8の配置は前述の例に限定されず、キャブ8は、左右方向におけるフロント作業機10の一方側に配置されていればよい。
【0015】
キャブ8には、油圧ショベル1を操作するオペレータが搭乗する空間が形成されている。そして、キャブ8の内部には、オペレータが着席するシートと、シートに着席したオペレータにより操作される操作装置が配置されている。操作装置は、油圧ショベル1を動作させるためのオペレータの操作を受け付ける。オペレータによって操作装置が操作されることによって、下部走行体2が走行し、上部旋回体3が旋回し、フロント作業機10が動作する。なお、操作装置の具体例としては、レバー、ステアリングホイール、ペダル、スイッチ等が挙げられる。
【0016】
フロント作業機10は、上部旋回体3に起伏可能に支持されたブーム11と、ブーム11の先端に回動(クラウド、ダンプ)可能に支持されたアーム12と、アーム12の先端に回動(クラウド、ダンプ)可能に支持されたバケット13(アタッチメント)と、ブーム11を駆動させるブームシリンダ14と、アーム12を駆動させるアームシリンダ15と、バケット13を駆動させるバケットシリンダ16とを含む。なお、アタッチメントの具体例はバケット13に限定されず、グラップル、カッタ、破砕機、ブレーカ等でもよい。カウンタウェイト9は、フロント作業機10との重量バランスを取るためのもので、上面視円弧形状を成す重量物である。
【0017】
走行モータ5及び旋回モータ6は、作動油が給排されることによって回転する油圧モータの一例である。また、ブームシリンダ14、アームシリンダ15、及びバケットシリンダ16は、作動油が給排されることによって伸縮する油圧シリンダの一例である。また、油圧モータ及び油圧シリンダは、油圧アクチュエータの一例である。さらに、油圧アクチュエータ、油圧アクチュエータに向けて作動油を圧送する油圧ポンプ、及び作動油を貯留する作動油タンクは、油圧機器の一例である。
【0018】
図2は、ブームシリンダ14の概略断面図である。
図2に示すように、ブームシリンダ14は、シリンダチューブ21と、ピストン22と、シリンダロッド23と、キャップ24とを主に備える。
【0019】
シリンダチューブ21は、軸方向の一端が開放された円筒形状の外形を呈する。ピストン22は、シリンダチューブ21の内部を軸方向に移動可能に構成されている。また、ピストン22は、シリンダチューブ21の内部空間を、閉塞端側のボトム室25と、開放端側のロッド室26とに隔てる。シリンダロッド23は、基端がピストン22に接続され、開放端を通じてシリンダチューブ21の外部にまで突出している。キャップ24は、シリンダロッド23を突出させた状態で、シリンダチューブ21の開放端を閉塞する。
【0020】
ボトム室25及びロッド室26の間は、ピストン22によって液密に隔てられている。また、ロッド室26は、キャップ24によって気密に保たれている。さらに、シリンダチューブ21には、ボトム室25及びロッド室26に連通する開口25a、26aが設けられている。そして、開口25a、26aには、配管27、28が接続されている。配管27、28は、例えば、鋼管、ホース、またはこれらを組み合わせて構成される。
【0021】
配管27は、一端27aが開口25aに接続され、他端27bが油圧回路に接続される。そして、配管27は、油圧回路(油圧ポンプ)から圧送された作動油をボトム室25に供給し、ボトム室25から排出された作動油を油圧回路(作動油タンク)に排出する。配管28は、一端28aが開口26aに接続され、他端28bが油圧回路に接続される。そして、配管28は、油圧回路(油圧ポンプ)から圧送された作動油をロッド室26に供給し、ロッド室26から排出された作動油を油圧回路(作動油タンク)に排出する。
【0022】
例えば、油圧ショベル1からブームシリンダ14を取り外す場合、配管27、28の他端27b、28bを油圧回路から切り離して、シリンダチューブ21内の作動油を他端27b、28bを通じて排出する。この場合、配管27、28の他端27b、28bは、ブームシリンダ14に対して作動油を給排する給排口の一例である。
【0023】
ここで、配管27、28の他端27b、28bを油圧回路から切り離すと、他端27b、28b(すなわち、給排口)を通じて、シリンダチューブ21及び配管27、28の内部に空気や異物が侵入する可能性がある。そこで、ブームシリンダ14を取り外した後に、配管27、28の他端27b、28bをプラグ30で閉塞する。
【0024】
なお、給排口とは、油圧機器に作動油を供給するだけの給油口、油圧機器から作動油を排出するだけの排油口、または油圧機器に対して作動油の供給及び排出の両方を行う給排油口のいずれかを指す。
【0025】
また、給排口は、配管27、28の他端27b、28bに限定されない。他の例として、油圧ショベル1からブームシリンダ14を取り外す場合、シリンダチューブ21から配管27、28を切り離して、シリンダチューブ21内の作動油を開口25a、26aを通じて排出してもよい。この場合、シリンダチューブ21の開口25a、26aは、ブームシリンダ14に対して作動油を給排する給排口の他の例である。
【0026】
プラグ30は、例えば、ボルト状(ネジ状)の外形を呈する。そして、プラグ30は、配管27、28の他端27b、28bの内周面に設けられた雌ネジに螺合されることによって、配管27、28の他端27b、28bを閉塞する。他端27b、28bの内周面に設けられた雌ネジは、油圧回路側の配管に設けられた雄ネジに螺合されるためのものである。すなわち、プラグ30には、油圧回路側の配管に設けられた雄ネジと同径且つ同ピッチの雄ネジ34が形成されている。
【0027】
図3は、プラグ30の断面図である。
図3に示すように、プラグ30は、軸部31(閉塞部)と、頭部32と、気化性防錆タブレット33(気化性防錆樹脂)とを主に備える。
【0028】
軸部31は、軸方向の両端が開放された筒体である。軸部31の外周面には、雄ネジ34が形成されている。また、軸部31の内側には、気化性防錆タブレット33を収容する収容室35が形成されている。さらに、軸部31の一端(基端)は、頭部32によって閉塞されている。一方、軸部31の他端(先端)は、開放されている。そして、軸部31の先端開口には、複数の爪36が形成されている。
【0029】
複数の爪36は、軸部31の先端開口の周方向に離間した位置に設けられている。また、複数の爪36は、各々が軸部31の径方向内向きに突出している。そのため、複数の爪36の先端同士を結んだ仮想円の直径D1は、気化性防錆タブレット33の直径D2より小さくなっている。これにより、複数の爪36は、収容室35に収容された気化性防錆タブレット33の脱落を防止する。
【0030】
また、複数の爪36の外面(収容室35と対面する内面と反対側の面)は、爪36が先細り形状になるように傾斜するガイド面37となっている。このガイド面37に気化性防錆タブレット33を押し当てることによって、爪36が弾性変形して気化性防錆タブレット33が収容室35に挿入可能になる。一方、収容室35内の気化性防錆タブレット33を取り出す際には、例えば、気化性防錆タブレット33を細かく砕けばよい。すなわち、軸部31は、気化性防錆タブレット33を交換可能に保持している。
【0031】
頭部32は、軸部31の基端に取り付けられている。また、頭部32は、プラグ30を給排口に着脱するための治具を受け入れ可能な形状となっている。一例として、頭部32は、六角レンチを係止するために六角形の外形を呈していてもよい。他の例として、頭部32の軸部31と反対側の面には、治具の先端を受け入れ可能な形状(例えば、六角形状、“+”形状、“-”形状)の凹部が形成されていてもよい。
【0032】
気化性防錆タブレット33は、所定の形状(例えば、円盤形状、円柱形状)に成形された樹脂の塊(個体)である。気化性防錆タブレット33は、気化性防錆剤と、気化性防錆剤を含んだ状態で所定の形状に成形可能な樹脂基材とで構成される。気化性防錆剤は、防錆作用を有すると共に、常温で徐々に気化する化合物または混合物である。気化性防錆剤の組成は既に周知なので、詳細な説明は省略する。
【0033】
軸部31の先端を給排口に当接させた状態で、治具で頭部32を正回転させると、軸部31の雄ネジ34が給排口の雌ネジに螺合される。これにより、軸部31が給排口の内部に進入して、プラグ30によって給排口が閉塞される。また、給排口を閉塞したプラグ30の頭部32を治具で逆回転させると、プラグ30が給排口から取り外される。すなわち、プラグ30は、給排口に着脱可能に構成されている。
【0034】
さらに、プラグ30(より詳細には、軸部31)で給排口が閉塞された状態で、収容室35は、軸部31の先端開口を通じて配管27、28の内部に開放される。そのため、収容室35に収容された気化性防錆タブレット33から気化した気化性防錆剤は、シリンダチューブ21及び配管27、28の内部に拡散して、内壁面に防錆皮膜を形成する。
【0035】
また、
図3(B)に示すように、軸部31には、第1貫通孔31x、31yが形成されていてもよい。第1貫通孔31x、31yは、軸部31を径方向に貫通する。また、第1貫通孔31x、31yは、一直線上に並んでいる。一方、気化性防錆タブレット33には、第2貫通孔33xが形成されていてもよい。そして、収容室35に収容された気化性防錆タブレット33の第2貫通孔33xは、第1貫通孔31x、31yに連通する。さらに、プラグ30は、連通した第1貫通孔31x、31y及び第2貫通孔33xに挿抜されるピン38を備えていてもよい。
【0036】
上記の実施形態によれば、例えば以下の作用効果を奏する。
【0037】
上記の実施形態によれば、給排口を閉塞するプラグ30から気化した気化性防錆剤が、シリンダチューブ21及び配管27、28の内部に拡散して、内壁面に防錆皮膜を形成する。これにより、ブームシリンダ14から作動油を抜く際に侵入した空気に含まれる水分で、ブームシリンダ14の内部に錆が発生するのを防止できる。
【0038】
また、上記の実施形態に係るプラグ30によれば、気化性防錆タブレット33を交換可能に保持するので、気化性防錆剤が気化しきった気化性防錆タブレット33を交換すれば、プラグ30を繰り返し使用することができる。なお、気化性防錆タブレット33を交換可能に保持する具体的な構成は、複数の爪36及びピン38の例に限定されない。
【0039】
[変形例]
図4及び
図5を参照して、変形例1、2に係るプラグ30A及び気化性防錆タブレット33A、33Bを説明する。
図4は、変形例1に係るプラグ30A及び気化性防錆タブレット33Aを示す図である。
図5は、変形例2に係るプラグ30A及び気化性防錆タブレット33Bを示す図である。なお、上記の実施形態との共通点の詳細な説明は省略し、相違点を中心に説明する。
【0040】
図4及び
図5に示すように、変形例1、2に係るプラグ30Aは、雄ネジ34及び収容室35を有する軸部31と、頭部32とで構成される点で、上記の実施形態と共通する。また、変形例1、2に係るプラグ30Aは、爪36が省略されている点で、上記の実施形態と相違する。さらに、変形例1、2に係るプラグ30Aは、軸部31の内周面(すなわち、収容室35を画定する面)が円筒形状である。換言すれば、軸部31の軸方向に直交する収容室35の断面(以下、「横断面」と表記する。)は、真円形状である。
【0041】
また、
図4及び
図5に示すように、変形例1、2に係る気化性防錆タブレット33A、33Bは、収容室35に圧入可能な形状である。より詳細には、変形例1に係る気化性防錆タブレット33Aの横断面は、収容室35の直径より僅かに大きい真円形状である。また、変形例2に係る気化性防錆タブレット33Bは、収容室35に内接する多角形状である。なお、
図5では、多角形状の一例として星型を図示したが、三角形、四角形、その他の多角形などでもよい。
【0042】
また、変形例1、2に係る気化性防錆タブレット33A、33Bの軸方向の長さL1は、軸部31(収容室35)の軸方向の長さL2より長くなっている。すなわち、変形例1、2に係る気化性防錆タブレット33A、33Bは、軸部31の先端開口から突出している。換言すれば、変形例1、2に係る収容室35は、気化性防錆タブレット33A、33Bの一部のみを収容する。さらに、変形例1に係る気化性防錆タブレット33Aには、軸方向に貫通する貫通孔39が形成されている。
【0043】
気化性防錆タブレット33A、33Bを保持する具体的な方法は、爪36及びピン38に限定されず、変形例1、2のように圧入でもよい。そして、このような方法で気化性防錆タブレット33A、33Bを保持することによって、気化性防錆タブレット33A、33Bの大きさを、気化性防錆タブレット33と比較して大きくできる。これにより、気化性防錆タブレット33A、33Bの表面積が増えるので、シリンダチューブ21及び配管27、28の内部に気化性防錆剤を素早く拡散させることができる。
【0044】
また、変形例1のように、気化性防錆タブレット33Aに貫通孔39を形成することによって、表面積をさらに増加させることができる。さらに、変形例2のように、気化性防錆タブレット33Bを収容室35に内接させることによって、軸部31と気化性防錆タブレット33Bとの間にも隙間ができるので、表面積をさらに増加させることができる。但し、気化性防錆タブレット33A、33Bの表面積を増加させる方法は、貫通孔39や多角形状に限定されず、軸方向または周方向に延びる溝、表面に設けられた凹部などでもい。
【0045】
[その他の変形例]
気化性防錆タブレット33、33A、33Bは、水溶性または油溶性の被膜で覆われていてもよい。これにより、プラグ30、30Aを給排口に装着する前に、気化性防錆剤が気化するのを抑制できる。また、プラグ30、30Aを給排口に装着した後に、シリンダチューブ21及び配管27、28内の水分や油分に反応して被膜が除去されるので、シリンダチューブ21及び配管27、28内に気化性防錆剤を拡散させることができる。
【0046】
また、基材樹脂と気化性防錆剤とを混ぜて、気化性防錆タブレット33、33A、33Bを構成することに限定されない。他の例として、気化性防錆剤を含むシートをプラグ30、30Aに貼付してもよい。さらに他の例として、気化性防錆剤をプラグ30、30Aの表面に直接塗布してもよい。
【0047】
さらに、プラグ30、30Aは、ブームシリンダ14の給排口を閉塞することに限定されず、前述した油圧モータ、油圧シリンダ、油圧アクチュエータ、または油圧機器の給排口を閉塞するのに用いることも可能である。
【0048】
上述した実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 油圧ショベル
2 下部走行体
3 上部旋回体
4 クローラ
5 走行モータ(油圧機器)
6 旋回モータ(油圧機器)
7 旋回フレーム
8 キャブ
9 カウンタウェイト
10 フロント作業機
11 ブーム
12 アーム
13 バケット
14 ブームシリンダ(油圧機器)
15 アームシリンダ(油圧機器)
16 バケットシリンダ(油圧機器)
21 シリンダチューブ
22 ピストン
23 シリンダロッド
24 キャップ
25 ボトム室
25a,26a 開口(給排口)
26 ロッド室
27,28 配管
27a,28a 一端
27b,28b 他端(給排口)
30,30A プラグ
31 軸部(閉塞部)
31x,31y 第1貫通孔
32 頭部
33,33A,33B 気化性防錆タブレット(気化性防錆樹脂)
33x 第2貫通孔
34 雄ネジ
35 収容室
36 爪
37 ガイド面
38 ピン
39 貫通孔