(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136013
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】圃場管理装置、圃場管理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A01G 7/00 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
A01G7/00 603
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046960
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】初谷 恵美子
(72)【発明者】
【氏名】王 俊善
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 平理
(57)【要約】
【解決手段】圃場管理装置は、圃場内の第1地点に設けられた第1センサで測定された前記第1地点の第1測定値、及び前記圃場内の第2地点に設けられた第2センサで測定された前記第2地点の第2測定値を取得する取得部と、前記第1測定値及び前記第2測定値に基づいて、第3センサを搭載する移動式ロボットを前記第1地点と前記第2地点との間の第3地点まで移動させて、前記移動式ロボットに前記第3センサで前記第3地点の第3測定値を測定させるか否かを判断する判断部と、前記判断部が前記第3地点の第3測定値を測定すると判断した場合、前記移動式ロボットに対して前記第3地点の測定を指示する指示部とを備えてよい。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場内の第1地点に設けられた第1センサで測定された前記第1地点の第1測定値、及び前記圃場内の第2地点に設けられた第2センサで測定された前記第2地点の第2測定値を取得する取得部と、
前記第1測定値及び前記第2測定値に基づいて、第3センサを搭載する移動式ロボットを前記第1地点と前記第2地点との間の第3地点まで移動させて、前記移動式ロボットに前記第3センサで前記第3地点の第3測定値を測定させるか否かを判断する判断部と、
前記判断部が前記第3地点の第3測定値を測定すると判断した場合、前記移動式ロボットに対して前記第3地点の測定を指示する指示部と
を備える圃場管理装置。
【請求項2】
前記判断部は、前記第1測定値と前記第2測定値との差が閾値以上の場合、前記移動式ロボットに前記第3センサで前記第3地点の前記第3測定値を測定させると判断する、請求項1に記載の圃場管理装置。
【請求項3】
前記第1測定値と前記第2測定値との差が閾値より小さい場合、前記第1測定値と前記第2測定値との内挿補間により前記第3地点の前記第3測定値を推定する推定部をさらに備える、請求項1に記載の圃場管理装置。
【請求項4】
前記判断部は、前記第1測定値または前記第2測定値の同一時間帯での測定値間の差が閾値以上の場合、前記移動式ロボットに前記第3センサで前記第3地点の前記第3測定値を測定させると判断する、請求項1に記載の圃場管理装置。
【請求項5】
前記第1測定値または前記第2測定値の同一時間帯での測定値間の差が閾値より小さい場合、前記第1測定値と前記第2測定値との内挿補間により前記第3地点の前記第3測定値を推定する推定部をさらに備える、請求項1に記載の圃場管理装置。
【請求項6】
前記推定部は、前記第1センサ及び前記第2センサのそれぞれで測定された前記第1地点及び前記第2地点の温度、湿度、及び光量を説明変数として、前記第3センサで測定された前記第3地点の温度、湿度、及び光量を目的変数とする学習済み予測モデルを用いて、前記内挿補間を実行する、請求項3または5に記載の圃場管理装置。
【請求項7】
前記指示部は、前記第1測定値と前記第2測定値との差が大きいほど、前記第3センサで前記第3地点の前記第3測定値を測定する頻度が多くなるように、前記移動式ロボットに対して前記第3地点の測定を指示する、請求項2に記載の圃場管理装置。
【請求項8】
前記判断部は、前記第1測定値と前記第2測定値との差が閾値以上の場合、前記移動式ロボットに前記第3センサで複数の前記第3地点のそれぞれの前記第3測定値を測定させると判断する、請求項1に記載の圃場管理装置。
【請求項9】
前記指示部は、前記第1測定値と前記第2測定値との差が大きいほど、前記移動式ロボットに対して測定を指示する前記第3地点の数が多くなるように、前記移動式ロボットに対して前記第3地点の測定を指示する、請求項8に記載の圃場管理装置。
【請求項10】
前記指示部は、前記第1測定値及び前記第2測定値に基づいて、前記第3地点の位置を決定する、請求項1に記載の圃場管理装置。
【請求項11】
前記第1測定値、前記第2測定値、及び前記第3測定値に基づいて前記圃場の測定値分布を生成する生成部をさらに備える、請求項1に記載の圃場管理装置。
【請求項12】
前記測定値分布は、植物の根部分の温度、湿度、電気伝導度、水素イオン指数、前記植物の茎・葉・実部分の表面温度、周囲温度、湿度、光量、及び二酸化炭素濃度の少なくとも1つの分布を含む、請求項11に記載の圃場管理装置。
【請求項13】
前記指示部は、前記測定値分布と、前記植物の障害の発生状況または前記植物の収穫結果との関係を示す予測モデルに基づいて、前記植物が予め定められた生育状態になるように前記圃場内の土壌の含水量、電気伝導度、水素イオン指数、前記圃場内の温度、湿度、光量、及び二酸化炭素濃度の少なくとも1つの調整を前記圃場内の環境制御設備に指示する、請求項12に記載の圃場管理装置。
【請求項14】
前記指示部は、前記圃場内に存在する光学センサによる検出結果により得られる前記植物の3次元位置情報に基づいて前記植物の生育状態を特定する、請求項13に記載の圃場管理装置。
【請求項15】
前記光学センサは、前記移動式ロボットに搭載される、請求項14に記載の圃場管理装置。
【請求項16】
圃場内の第1地点に設けられた第1センサで測定された前記第1地点の第1測定値、及び前記圃場内の第2地点に設けられた第2センサで測定された前記第2地点の第2測定値を取得する段階と、
前記第1測定値及び前記第2測定値に基づいて、第3センサを搭載する移動式ロボットを前記第1地点と前記第2地点との間の第3地点まで移動させて、前記移動式ロボットに前記第3センサで前記第3地点の第3測定値を測定させるか否かを判断する段階と、
前記判断する段階で前記第3地点の第3測定値を測定すると判断した場合、前記移動式ロボットに対して前記第3地点の測定を指示する段階と
を備える圃場管理方法。
【請求項17】
圃場内の第1地点に設けられた第1センサで測定された前記第1地点の第1測定値、及び前記圃場内の第2地点に設けられた第2センサで測定された前記第2地点の第2測定値を取得する取得部と、
前記第1測定値及び前記第2測定値に基づいて、第3センサを搭載する移動式ロボットを前記第1地点と前記第2地点との間の第3地点まで移動させて、前記移動式ロボットに前記第3センサで前記第3地点の第3測定値を測定させるか否かを判断する判断部と、
前記判断部が前記第3地点の第3測定値を測定すると判断した場合、前記移動式ロボットに対して前記第3地点の測定を指示する指示部と
としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場管理装置、圃場管理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、葉の表面の照度(または日照度合)または裏面の温湿度(温度または湿度のうち一方または双方)、葉色、葉から排出される二酸化炭素の濃度等を検出する葉面環境センサが開示されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開2022-100732号公報
【発明の概要】
【0003】
本発明の一態様に係る圃場管理装置は、圃場内の第1地点に設けられた第1センサで測定された前記第1地点の第1測定値、及び前記圃場内の第2地点に設けられた第2センサで測定された前記第2地点の第2測定値を取得する取得部を備えてよい。前記圃場管理装置は、前記第1測定値及び前記第2測定値に基づいて、第3センサを搭載する移動式ロボットを前記第1地点と前記第2地点との間の第3地点まで移動させて、前記移動式ロボットに前記第3センサで前記第3地点の第3測定値を測定させるか否かを判断する判断部を備えてよい。前記圃場管理装置は、前記判断部が前記第3地点の第3測定値を測定すると判断した場合、前記移動式ロボットに対して前記第3地点の測定を指示する指示部を備えてよい。
【0004】
前記圃場管理装置において、前記判断部は、前記第1測定値と前記第2測定値との差が閾値以上の場合、前記移動式ロボットに前記第3センサで前記第3地点の前記第3測定値を測定させると判断してよい。
【0005】
いずれかの前記圃場管理装置は、前記第1測定値と前記第2測定値との差が閾値より小さい場合、前記第1測定値と前記第2測定値との内挿補間により前記第3地点の前記第3測定値を推定する推定部をさらに備えてよい。
【0006】
いずれかの前記圃場管理装置において、前記判断部は、前記第1測定値または前記第2測定値の同一時間帯での測定値間の差が閾値以上の場合、前記移動式ロボットに前記第3センサで前記第3地点の前記第3測定値を測定させると判断してよい。
【0007】
いずれかの前記圃場管理装置は、前記第1測定値または前記第2測定値の同一時間帯での測定値間の差が閾値より小さい場合、前記第1測定値と前記第2測定値との内挿補間により前記第3地点の前記第3測定値を推定する推定部をさらに備えてよい。
【0008】
いずれかの前記圃場管理装置において、前記推定部は、前記第1センサ及び前記第2センサのそれぞれで測定された前記第1地点及び前記第2地点の温度、湿度、及び光量を説明変数として、前記第3センサで測定された前記第3地点の温度、湿度、及び光量を目的変数とする学習済み予測モデルを用いて、前記内挿補間を実行してよい。
【0009】
いずれかの前記圃場管理装置において、前記指示部は、前記第1測定値と前記第2測定値との差が大きいほど、前記第3センサで前記第3地点の前記第3測定値を測定する頻度が多くなるように、前記移動式ロボットに対して前記第3地点の測定を指示してよい。
【0010】
いずれかの前記圃場管理装置において、前記判断部は、前記第1測定値と前記第2測定値との差が閾値以上の場合、前記移動式ロボットに前記第3センサで複数の前記第3地点のそれぞれの前記第3測定値を測定させると判断してよい。
【0011】
前記指示部は、前記第1測定値と前記第2測定値との差が大きいほど、前記移動式ロボットに対して測定を指示する前記第3地点の数が多くなるように、前記移動式ロボットに対して前記第3地点の測定を指示してよい。
【0012】
いずれかの前記圃場管理装置において、前記指示部は、前記第1測定値及び前記第2測定値に基づいて、前記第3地点の位置を決定してよい。
【0013】
いずれかの前記圃場管理装置は、前記第1測定値、前記第2測定値、及び前記第3測定値に基づいて前記圃場の測定値分布を生成する生成部をさらに備えてよい。
【0014】
いずれかの前記圃場管理装置において、前記測定値分布は、植物の根部分の温度、湿度、電気伝導度、水素イオン指数、前記植物の茎・葉・実部分の表面温度、周囲温度、湿度、光量、及び二酸化炭素濃度の少なくとも1つの分布を含んでよい。
【0015】
いずれかの前記圃場管理装置において、前記指示部は、前記測定値分布と、前記植物の障害の発生状況または前記植物の収穫結果との関係を示す予測モデルに基づいて、前記植物が予め定められた生育状態になるように前記圃場内の土壌の含水量、電気伝導度、水素イオン指数、前記圃場内の温度、湿度、光量、及び二酸化炭素濃度の少なくとも1つの調整を前記圃場内の環境制御設備に指示してよい。
【0016】
いずれかの前記圃場管理装置において、前記指示部は、前記圃場内に存在する光学センサによる検出結果により得られる前記植物の3次元位置情報に基づいて前記植物の生育状態を特定してよい。
【0017】
いずれかの前記圃場管理装置において、前記光学センサは、前記移動式ロボットに搭載されてよい。
【0018】
本発明の一態様に係る圃場管理方法は、圃場内の第1地点に設けられた第1センサで測定された前記第1地点の第1測定値、及び前記圃場内の第2地点に設けられた第2センサで測定された前記第2地点の第2測定値を取得する段階を備えてよい。前記圃場管理方法は、前記第1測定値及び前記第2測定値に基づいて、第3センサを搭載する移動式ロボットを前記第1地点と前記第2地点との間の第3地点まで移動させて、前記移動式ロボットに前記第3センサで前記第3地点の第3測定値を測定させるか否かを判断する段階を備えてよい。前記圃場管理方法は、前記判断する段階で前記第3地点の第3測定値を測定すると判断した場合、前記移動式ロボットに対して前記第3地点の測定を指示する段階を備えてよい。
【0019】
本発明の一態様に係るプログラムは、圃場内の第1地点に設けられた第1センサで測定された前記第1地点の第1測定値、及び前記圃場内の第2地点に設けられた第2センサで測定された前記第2地点の第2測定値を取得する取得部としてコンピュータを機能させてよい。前記プログラムは、前記第1測定値及び前記第2測定値に基づいて、第3センサを搭載する移動式ロボットを前記第1地点と前記第2地点との間の第3地点まで移動させて、前記移動式ロボットに前記第3センサで前記第3地点の第3測定値を測定させるか否かを判断する判断部としてコンピュータを機能させてよい。前記プログラムは、前記判断部が前記第3地点の第3測定値を測定すると判断した場合、前記移動式ロボットに対して前記第3地点の測定を指示する指示部としてコンピュータを機能させてよい。
【0020】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】移動式ロボットが植物を栽培する圃場を移動する様子を示す図である。
【
図2】本実施形態に係る圃場管理システムの全体構成の一例を示す図である。
【
図4】圃場管理装置の機能ブロックの一例を示す図である。
【
図5】地点間の測定値を推定することで取得するか移動式ロボットを利用して測定することで取得するかを判断する手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0023】
図1は、移動式ロボット10が、野菜または果実などの植物50を栽培する圃場を移動する様子を示す。移動式ロボット10は、地上を移動する車両である。移動式ロボット10は、空中を移動する無人航空機などの飛行体、水上を移動する船舶でもよい。移動式ロボット10は、植物50を栽培する栽培棚60の間を移動してよい。
【0024】
本実施形態では、圃場は、LEDまたは白熱灯などの人工光を光源として利用して植物50を栽培する人工光型植物工場である。しかし、圃場は、太陽光を光源として利用して植物50を栽培する太陽光型植物工場でもよい。
【0025】
移動式ロボット10は、アーム12と、アーム12の先端に設けられたセンサユニット20とを備える。アーム12は、移動式ロボット10の本体に回動自在に設けられた多関節アームユニットでよい。センサユニット20は、植物50の周囲の環境状態、及び植物50の生育状態を計測する各種センサを含む。センサユニット20は、植物50の茎・葉・実部分の温度、湿度、光量、及び二酸化炭素濃度をそれぞれ測定する各種センサを含む。センサユニット20は、植物50の生育状態を計測するための光学センサを含んでよい。光学センサは、カメラまたはレーザスキャナでよい。カメラは、2眼式3DカメラまたはToF(Time of Flight)カメラでよい。光学センサによる検出結果を利用して、植物50の3次元位置情報が生成されてよい。
【0026】
栽培棚60にも、植物50の根部分(培地部分)の温度、湿度(含水量)、電気伝導度(EC)、及び水素イオン指数(pH)を測定する各種センサ、及び植物50の茎・葉・実部分の表面温度、周囲温度、湿度、光量、及び二酸化炭素濃度をそれぞれ測定する各種センサが設置されている。
【0027】
個々の植物50の周囲の環境状態、及び植物50の生育状態を精度よく把握するためには、個々の植物50に各種センサを設けることが好ましい。しかしながら、個々の植物50に各種センサを設けると、コストが嵩む。また、大量のセンサからデータが送信されると、通信がひっ迫し、データを処理する装置の負担も増大する可能性がある。
【0028】
そこで、本実施形態に係る圃場管理システムでは、圃場内に設けられるセンサの数を抑制しつつ、個々の植物50の周囲の環境状態、及び植物50の生育状態の把握の精度の低下を抑制する。
【0029】
図2は、本実施形態に係る圃場管理システムの全体構成の一例を示す。圃場管理システムは、圃場管理装置100、移動式ロボット10、複数のセンサユニット30、センサ管理装置300、養液供給設備400、光源設備410、空調設備420、送風設備430、及び二酸化炭素供給設備440を備える。養液供給設備400、光源設備410、空調設備420、送風設備430、及び二酸化炭素供給設備440は、環境制御設備の一例である。複数の移動式ロボット10のそれぞれが、圃場内の異なるまたは同一のエリアを移動してもよい。
【0030】
図3は、センサユニット30の設置個所の一例を示す。センサユニット30は、栽培棚60が有する全ての植物50の定植ポット62のうちのいくつかの定植ポット62の周囲に設けられる。センサユニット30は、複数個の定植ポット62ごとに等間隔に設けられてよい。すなわち、センサユニット30は、栽培棚60の全ての定植ポット62のそれぞれには設けられない。センサユニット30の一部は、植物50の茎または葉などに設けられてもよい。センサユニット30の一部は、培地内に設けられてもよい。
【0031】
センサユニット30は、植物50の根部分(培地部分)の温度、湿度(含水量)、電気伝導度、及び水素イオン指数を測定する各種センサ、及び植物50の茎・葉・実部分の温度、湿度、光量、及び二酸化炭素濃度をそれぞれ測定する各種センサを含む。センサユニット30は、予め定められた時間間隔で、定期的に測定を実行してよい。
【0032】
圃場管理装置100は、植物工場内の各種装置を管理する。圃場管理装置100は、移動式ロボット10、センサ管理装置300、養液供給設備400、光源設備410、空調設備420、送風設備430、及び二酸化炭素供給設備440とネットワーク80を介して接続され、互いに通信する。圃場管理装置100は、複数のセンサユニット30とネットワーク80を介して接続され、互いに通信してもよい。
【0033】
圃場管理装置100、及びセンサ管理装置300は、中央処理装置(CPU)及びメモリを有するコンピュータでよい。養液供給設備400、光源設備410、空調設備420、送風設備430、及び二酸化炭素供給設備440は、中央処理装置(CPU)及びメモリを有するコンピュータを備えてよい。
【0034】
コンピュータは、パーソナルコンピュータ、タブレット型コンピュータ、スマートフォン、ワークステーション、サーバコンピュータ、または汎用コンピュータ等のコンピュータであってよく、複数のコンピュータが接続されたコンピュータシステムであってもよい。このようなコンピュータシステムもまた広義のコンピュータである。コンピュータは、植物工場の環境制御用に設計された専用コンピュータであってもよく、専用回路によって実現された専用ハードウェアであってもよい。コンピュータは、仮想コンピュータ環境によって実装されてもよい。コンピュータを用いる場合、圃場管理装置100、センサ管理装置300、養液供給設備400、光源設備410、空調設備420、送風設備430、及び二酸化炭素供給設備440は、コンピュータによりプログラムを実行することによって実現される。
【0035】
圃場管理装置100は、移動式ロボット10、センサ管理装置300、養液供給設備400、光源設備410、空調設備420、送風設備430、及び二酸化炭素供給設備440を制御することで、植物50の生育状態に応じて植物工場内の環境を制御する。
【0036】
センサ管理装置300は、複数のセンサユニット30のそれぞれから各種測定値を収集し、圃場管理装置100に提供する。圃場管理装置100が、センサ管理装置300を備えてもよい。
【0037】
養液供給設備400は、栽培棚60にポンプを介して、カリウムまたはカルシウムなどの各肥料成分を含む養液を供給する。養液供給設備400は、圃場管理装置100からの指示に応じて養液の肥料濃度及び量を調整してよい。
【0038】
光源設備410は、栽培棚60に設けられたLEDまたは白熱灯などの人工光を照射する光源を備え、光源から植物50に人工光を照射する。光源設備410は、圃場管理装置100からの指示に応じて、光源の光量及び照射期間を制御してよい。圃場が太陽光型植物工場である場合、圃場管理システムは、光源設備410の代わり、植物50に照射される太陽光の日射量を調整すべく窓に設置されたカーテンの開閉などを制御する日射量制御設備を備えてよい。
【0039】
空調設備420は、植物工場の室内空間の空気を調温及び調湿し、調温及び調湿された空気を室内空間内に循環させる。空調設備420は、圃場管理装置100からの指示に応じて、室内空間の温度及び湿度を制御してよい。
【0040】
送風設備430は、植物工場の室内空間に風を供給するサーキュレータまたは扇風機を含む。送風設備430は、圃場管理装置100からの指示に応じて、室内空間に供給する風の量及び向きを制御してよい。
【0041】
二酸化炭素供給設備440は、二酸化炭素タンクから植物工場の室内に二酸化炭素を供給する。二酸化炭素供給設備440は、圃場管理装置100からの指示に応じて、室内空間に供給する二酸化炭素の量を制御してよい。
【0042】
図4は、圃場管理装置100の機能ブロックの一例である。圃場管理装置100は、取得部102、判断部104、指示部106、推定部110、生成部120、及び記憶部130を備える。圃場管理装置100が備えるCPUが、取得部102、判断部104、指示部106、推定部110、及び生成部120として機能してよい。
【0043】
取得部102は、圃場(植物工場)内に設けられたそれぞれのセンサユニット30で測定されたそれぞれの測定値を取得する。取得部102は、圃場内に設けられたそれぞれのセンサユニット30で測定されたそれぞれの測定値を予め定められた間隔で定期的に取得してよい。取得部102は、それぞれの測定値を記憶部130に蓄積させる。取得部102は、例えば、圃場内の地点P1に設けられたセンサユニット30(P1)で測定された地点P1の測定値M1、及び圃場内の地点P2に設けられたセンサユニット30(P2)で測定された地点P2の測定値M2を取得する。
【0044】
地点P1及び地点P2は、
図3に示すように、複数の定植ポット62を挟んで離間した位置にある。すなわち、センサユニット30間には、センサユニット30で計測対象とならない植物50が少なくとも1つ存在する。
【0045】
判断部104は、測定値M1及び測定値M2に基づいて、センサユニット20を搭載する移動式ロボット10を地点P1と地点P2との間の地点P3まで移動させて、移動式ロボット10にセンサユニット20で地点P3の測定値M3を測定させるか否かを判断する。
【0046】
測定値M1と測定値M2との差が閾値より小さい場合、推定部110が、測定値M1と測定値M2との内挿補間により地点P3の測定値M3を推定する。測定値M1と測定値M2との差が閾値より小さい場合、推定部110が、測定値M1と測定値M2との内挿補間により地点P3を含む複数の地点の測定値を推定してよい。一方、測定値M1と測定値M2との差が閾値以上の場合、推定部110が測定値M1と測定値M2との間の地点P3の測定値M3を精度よく推定できない可能性があるので、判断部104は、移動式ロボット10にセンサユニット20で地点P3の測定値M3を測定させると判断してよい。
【0047】
指示部106は、測定値M1と測定値M2との差が閾値以上の場合、地点P1と地点P2との間の複数の地点の測定を移動式ロボット10に対して指示してよい。指示部106は、測定値M1と測定値M2との差が大きいほど、センサユニット20で地点P3の測定値M3を測定する頻度が多くなるように、移動式ロボット10に対して地点P3の測定を指示してよい。指示部106は、測定値M1と測定値M2との差が第1閾値から第2閾値の範囲の場合、単位期間(例えば、一日、一時間など)あたり第1頻度で、移動式ロボット10に対して地点P3の測定を指示し、測定値M1と測定値M2との差が第2閾値以上の場合、単位期間(例えば、一日、一時間など)あたり第1頻度より多い第2頻度で、移動式ロボット10に対して地点P3の測定を指示してよい。指示部06は、測定値M1と測定値M2との差が大きいほど、地点P1と地点P2との間のセンサユニット20で測定する地点の数が増加するように、地点P1と地点P2との間の複数の地点の測定を移動式ロボット10に対して指示してよい。
【0048】
指示部106は、移動式ロボット10に対して地点P3の測定をネットワーク80を介して指示する。指示部106は、地点P1と地点P2との中間地点を地点P3として、移動式ロボット10に対して測定を指示してよい。
【0049】
指示部106は、測定値M1及び測定値M2に基づいて、地点M3の位置を決定してよい。指示部106は、測定値M1及び測定値M2のいずれか一方が予め定められた測定値範囲外の場合、異常値と判断し、地点P1と地点P2との中間地点より異常値と判断された地点により近い地点を地点P3と判断してよい。指示部106は、測定値M1及び測定値M2のいずれか一方が同一時間帯での前回までの測定値の平均値より予め定められた割合以上異なる場合、当該測定値を異常値と判断し、地点P1と地点P2との中間地点より異常値と判断された地点により近い地点を地点P3と判断してよい。指示部106は、地点P1及び地点P2以外の他の地点のセンサユニット30で同一時間帯に測定された測定値の平均値と、測定値M1と測定値M2とを比較して、地点P1と地点P2との中間地点よりその平均値との差が大きいほうの地点P1または地点P2により近い地点を地点P3としてよい。指示部106は、地点P1と地点P2との中間地点より異常値と判断された地点P1または地点P2により近い地点が測定地点として多くなるように、複数の地点P3を決定して、それぞれの地点P3の測定を移動式ロボット10に指示してよい。
【0050】
判断部104は、測定値M1または測定値M2の同一時間帯での測定値間の差が閾値以上の場合、移動式ロボット10にセンサユニット20で地点P3の測定値M3を測定させると判断してよい。測定値M1または測定値M2の同一時間帯での測定値間の差が閾値より小さい場合、推定部110が、測定値M1と測定値M2との内挿補間により地点P3の測定値M3を推定してよい。
【0051】
推定部110は、センサユニット30(P1)及びセンサユニット30(P2)のそれぞれで測定された地点P1及び地点P2の温度、湿度、及び光量を説明変数として、センサユニット20で測定された地点P3の温度、湿度、及び光量を目的変数とする学習済み予測モデルを用いて、内挿補間を実行してよい。
【0052】
生成部120は、センサユニット30(P1)及びセンサユニット30(P2)のそれぞれで測定された地点P1及び地点P2の温度、湿度、及び光量を説明変数として、センサユニット20で測定された地点P3の温度、湿度、及び光量を目的変数として、教師あり学習のアルゴリズムに従って機械学習を行うことにより、地点P1及び地点P2の温度、湿度、及び光量から地点P3の温度、湿度、及び光量を予測する学習済み予測モデルを生成し、学習済みモデルを記憶部130に格納してよい。アルゴリズムは、ニューラルネットワーク、サポートベクターマシン、重回帰分析、決定木などの任意の方式のアルゴリズムでよい。
【0053】
生成部120は、測定値M1、測定値M2、及び測定値M3に基づいて植物工場の室内空間の測定値分布を生成する。生成部120は、センサユニット20及びセンサユニット30で測定された各地点の測定値、及び推定部110で推定された各地点の測定値に基づいて、植物工場の室内空間の測定値分布を生成する。測定値分布は、植物50の根部分の温度、湿度(含水量)、電気伝導度、水素イオン指数、植物50の茎・葉・実部分の表面温度、周囲温度、湿度、光量、及び二酸化炭素濃度の少なくとも1つの分布を含んでよい。測定値分布は、植物50の根部分の温度、湿度(含水量)、電気伝導度、及び水素イオン指数の少なくとも1つの分布と、植物50の茎・葉・実部分の表面温度、周囲温度、湿度、光量、及び二酸化炭素濃度の少なくとも1つの分布を含んでよい。測定値分布は、植物50の根部分の温度、湿度、電気伝導度、及び水素イオン指数のそれぞれの分布、並びに植物50の茎・葉・実部分の表面温度、周囲温度、湿度、光量、及び二酸化炭素濃度のそれぞれの分布を含んでよい。
【0054】
指示部106は、植物工場の室内空間の測定値分布と、植物50の障害の発生状況または植物50の収穫結果との関係を示す予測モデルに基づいて、植物50が予め定められた生育状態になるように圃場内の土壌の含水量、電気伝導度、水素イオン指数、圃場内の温度、湿度、光量、及び二酸化炭素濃度の少なくとも1つの調整を圃場内の養液供給設備400、光源設備410、空調設備420、送風設備430、及び二酸化炭素供給設備440の少なくとも1つに指示する。指示部106は、植物50の根部分の測定値分布、及び植物50の茎・葉・実部分の測定値分布と、植物50の障害の発生状況または植物50の収穫結果との関係を示す予測モデルに基づいて、植物50が予め定められた生育状態になるように圃場内の土壌の含水量、電気伝導度、水素イオン指数、圃場内の温度、湿度、光量、及び二酸化炭素濃度の少なくとも1つの調整を圃場内の養液供給設備400、光源設備410、空調設備420、送風設備430、及び二酸化炭素供給設備440の少なくとも1つに指示してよい。指示部106は、圃場内に存在するカメラまたはレーザスキャナなどの光学センサによる検出結果により得られる植物50の3次元位置情報に基づいて植物50の生育状態を特定してよい。移動式ロボット10が備えるセンサユニット20が、3次元位置情報を生成するためのカメラまたはレーザスキャナなどの光学センサを有してもよい。
【0055】
生成部120は、それぞれの測定値分布を示す栽培条件データを説明変数として、植物50の障害の発生状況または植物50の収穫結果を示す栽培結果データを目的変数として、教師あり学習のアルゴリズムに従って機械学習を行うことにより、それぞれの測定値分布から植物50の障害の発生状況または植物50の収穫結果を予測する学習済み予測モデルを生成し、学習済みモデルを記憶部130に格納してよい。アルゴリズムは、ニューラルネットワーク、サポートベクターマシン、重回帰分析、決定木などの任意の方式のアルゴリズムでよい。
【0056】
栽培結果データは、植物50の栽培における障害及び植物50の収穫結果の少なくとも1つを含んでよい。植物50の栽培における障害は、尻腐果、裂果等の生理障害、病気による障害、及び害虫による障害の少なくとも1つを含んでよい。植物50の障害を示すデータは、発生の有無、障害の種類、発生頻度(例えば、栽培単位における障害が発生した株の割合)、及び範囲の少なくとも1つを含んでよい。植物50の収穫結果は、収穫した植物の重量、個数、及び品質(糖度、水分量等)の少なくとも1つを含んでよい。
【0057】
生成部120は、前処理部122、クラス推定部124、モデル生成部126、及びモデル更新部128を有してよい。
【0058】
前処理部122は、記憶部130に記憶された複数の栽培条件データ及び複数の栽培結果データの少なくとも1つのデータに前処理を行い、前処理したデータをクラス推定部124に供給する。前処理部122は、学習のための前処理を行ってよい。
【0059】
クラス推定部124は、複数の栽培条件データを複数のクラスに分類する。クラス推定部124は、分類した複数の栽培条件データを、モデル生成部126、推定部110、及びモデル更新部128に供給してよい。
【0060】
モデル生成部126は、栽培条件データ及び栽培結果データを用いて、栽培条件データから栽培結果データを予測する学習済みモデルを生成して、記憶部130に格納する。モデル更新部128は、栽培条件データ及び栽培結果データを用いて、学習済みモデルを更新する。
【0061】
前処理部122は、栽培条件データ及び栽培結果データをセンサユニット20及びセンサユニット30からの測定値の取得時間に応じて対応付けてよい。前処理部122は、一例として、測定値の取得時間に応じて、同じ取得日毎に、または異なる取得日もしくは同じ取得日の同じ時間間隔毎に、栽培条件データ及び栽培結果データを対応付けてよい。
【0062】
前処理部122は、時系列の測定値などのデータの欠損補間を行ってよい。前処理部122は、データが存在しない期間について、線形補間またはスプライン補完等の補完アルゴリズムを用いてデータを補完してよい。前処理部122は、データのうち、複数のデータの平均値との差が、ユーザにより予め定められた閾値を超える場合に、当該データを外れ値として削除または時間軸で前後のデータと同じ値に変更してよい。前処理部122は、データの予め定められた桁以下の切り捨て等により丸め処理を行ってよい。前処理部122は、栽培条件データ及び栽培結果データを離散化し、各栽培期間(播種、育苗、定植、緑化)における栽培エリアと対応付けてよい。
【0063】
前処理部122は、栽培条件データ及び栽培結果データの特徴量を抽出する前処理を行ってよい。前処理部122は、栽培条件データ及び栽培結果データの少なくとも一方のデータについて、積算値、微分値、平均値、分散値、及び日中成分と夜間成分を分離したデータの少なくとも1つを特徴量として抽出してよい。前処理部122は、予め定められた期間毎のデータの積算値を特徴量として算出してよい。前処理部122は、一例として、3時間毎に、障害の発生数、温度、または湿度等の積算値を特徴量として抽出してよい。このように、積算値を算出することで、遅れて現れる影響を知ることができる。前処理部122は、複数のデータ取得時間におけるデータの微分値を算出して、微分値を特徴量として抽出してよい。前処理部122は、時間軸で推移するデータを、日中成分と夜間成分の合成波とみなして、日中成分と夜間成分との一方を補完(例えばスプライン補完)または周波数分解手法(例えばフーリエ変換等)により分離してよい。そして、前処理部122は、分離した日中成分及び夜間成分の一方とセンサデータの間の差分を、日中成分及び夜間成分の他方として分離してよい。
【0064】
前処理部122は、栽培期間または時間帯(昼と夜)等の区間で前処理したデータを区切り、区間毎の前処理したデータ(平均値、分散値等)を説明変数としてデータセットを作成してよい。前処理部122は、前処理したデータセットをクラス推定部124に供給する。
【0065】
クラス推定部124は、前処理された複数の栽培条件データを複数のクラスに分類(クラスタリング)する。クラス推定部124は、植物50の複数の識別子を、栽培条件データのセットが類似する複数のクラス(グループ)に分類してよい。クラス推定部124は、データについて時系列及び特徴量等の類似度の少なくとも1つに基づき、データを分類してよい。クラス推定部124は、一例として、異なる取得日の同じ時間帯におけるデータ同士を同じクラスに分類してよい。また、クラス推定部124は、ベクトル化したデータの類似度が閾値より高い(例えば、距離が閾値より小さい)データ同士を同じクラスに分類してよい。クラス推定部124は、一例として、抽出した特徴量同士の差が閾値以下である対応するデータセット同士を同じクラスに分類してよい。
【0066】
クラス推定部124は、k-means法、または確率的潜在意味解析(pLSA: Probabilistic Latent Semantic Analysis)等を用いて分類を行ってよい。
【0067】
クラス推定部124は、分類の結果を目的変数、前処理したデータセットを説明変数としてクラス推定モデルを作成してよい。クラス推定モデルは、ベイジアンネットワーク等の機械学習を用いて作成されてもよい。クラス推定部124は、後の予測結果の出力動作において、クラス推定モデルを用いて、栽培条件データのクラスを推定してよい。また、クラス推定部124は、学習済みモデルの生成に用いたクラスの情報を、後の予測結果の出力動作に用いてもよい。
【0068】
クラス推定部124は、クラスタリング後に、モデル生成用のデータとして、栽培条件データの一部及び対応する栽培結果データの一部をモデル生成部126に供給してよい。クラス推定部124は、クラスタリング後に、信頼度算出用のデータとして、栽培条件データの他の一部及び対応する栽培結果データの他の一部を、推定部110に供給してよい。クラス推定部124は、クロスバリデーション等を用いて、信頼度を算出するためにモデル生成用のデータと信頼度算出用のデータとを分けてよい。クラス推定部124は、モデル生成用のデータと信頼度算出用のデータとを、ランダムに分けてよい。また、クラス推定部124は、モデル生成用のデータと信頼度算出用のデータとを、データ取得期間(例えば、昼と夜、日、月)で分けてもよい。
【0069】
モデル生成部126は、分類の結果(分類されたデータ)を用いて機械学習を行うことによって学習済みモデルを生成する。モデル生成部126は、取得部102が取得した各種の測定値を示す栽培条件データ各種の測定値から特定された複数の栽培結果データとのうちの一部を、モデル生成用のデータとしてクラス推定部124から受信して、当該モデル生成用のデータを用いて、学習済みモデルを生成してよい。モデル生成部126は、複数のクラスに分類された複数の栽培条件データと複数の栽培結果データとを用いて、ベイジアンネットワークモデル構造のモデルを生成してよい。また、モデル生成部126は、ニューラルネットワーク等の他の機械学習モデルを生成してもよい。
【0070】
また、記憶部130に既に学習済みモデルが格納されている場合には、モデル更新部128は、分類の結果(分類されたデータ)を用いて学習済みモデルを更新する。モデル更新部128は、モデル生成部126と同様に機械学習を行い、ベイジアンネットワークモデル構造の学習済みモデルを更新してよい。モデル更新部128は、実行された植物50の栽培条件での栽培結果と、学習済みモデルで当該栽培条件から予測した栽培結果とを比較して、当該学習済みモデルを更新してよい。
【0071】
推定部110は、学習済みモデルを用いて、植物50の栽培における障害及び栽培結果の少なくとも一方を予測する。推定部110は、クラス推定部124から、分類の結果(分類されたデータ)を含む信頼度算出用のデータを受け取り、学習済みモデルを用いて当該データから植物50の栽培における障害及び栽培結果の少なくとも一方を予測してよい。推定部110は、学習済みモデルを用いて、1つの識別子に対応する栽培条件から、最も確率が高いまたは確率が閾値を超える1つの障害または栽培結果を予測してよい。
【0072】
推定部110は、予測した障害または栽培結果、及び予測に用いた信頼度算出用のデータを用いて、複数のクラスの各々における信頼度を算出してよい。推定部110は、予測に用いられた栽培条件が属すると推定されたクラスについて、当該栽培条件の実際の障害または栽培結果と予測された障害または栽培結果とを比較して信頼度(正解率)を算出してよい。推定部110は、識別子毎に信頼度を算出し、クラス毎に複数の信頼度から1つの最終的な信頼度を算出してよい。推定部110は、1つのクラスについて、複数の識別子について算出した複数の信頼度の平均値または合計値を当該クラスの最終的な信頼度として算出してよい。推定部110は、再現率、適合率、及びF値の少なくとも1つを用いて信頼度を算出してよい。
【0073】
図5は、地点間の測定値を推定することで取得するか移動式ロボット10を利用して測定することで取得するかを判断する手順の一例を示すフローチャートである。
【0074】
取得部102は、栽培棚60のそれぞれの地点に設置されたセンサユニット30から各種センサで検出された測定値を取得する(S100)。判断部104は、対象の測定値間の差を取得する(S102)。判断部104が差を導出する測定値のペア、すなわち地点のペアを示す情報は、予め記憶部130に記憶されていてよい。地点のペアは、隣同士のセンサユニット30のペアでよい。地点のペアは、栽培棚60の長手方向に沿って隣同士のセンサユニット30のペアでよい。地点のペアは、センサユニット30で測定対象となっていない少なくとも1つの植物50が間に存在する地点のペアの中で最も近い距離にある地点のペアでよい。
【0075】
対象の測定値のペアの差が閾値以上である場合(S104の「Y」)、指示部106は、対象の測定値のペアに基づいて、少なくとも1つの追加測定地点を特定する(S106)。指示部106は、対象の測定値のペアの地点間の中間点を追加測定地点として特定してよい。指示部106は、対象の測定値のペアのそれぞれの値に基づいて、追加測定地点を特定してよい。指示部106は、対象の測定値のペアのうち、過去の同一の時間帯での同一地点の平均測定値との差が大きいほうの測定値の地点により近い地点を追加測定地点として特定してよい。指示部106は、対象の測定値のペアの地点間で等間隔に定めた複数の追加測定地点を特定してよい。
【0076】
指示部106は、特定された追加測定地点の測定を移動式ロボット10に指示する(S106)。記憶部130には、栽培棚60のそれぞれの定植ポット62と、それぞれの定植ポット62を一意に特定するための番号とが関連付けて記憶されてよい。移動式ロボット10は、番号に対応する定植ポット62の位置を示すマップ情報をメモリに保持してよい。指示部106は、追加測定地点に対応する番号を示す測定指示命令を移動式ロボット10に出力することで、移動式ロボット10に追加測定地点の測定を指示してよい。
【0077】
指示を受けて、移動式ロボット10が追加測定地点まで移動して、センサユニット20により対象の植物50の根部分の温度、湿度、電気伝導度、及び水素イオン指数、並びに植物50の茎・葉・実部分の温度、湿度、光量、及び二酸化炭素濃度を測定してよい。移動式ロボット10は、アーム12に設けられたカメラで植物50の位置を特定しつつ、アーム12を制御することで、センサユニット20が有する各種センサでそれぞれの測定を行ってよい。取得部102は、センサユニット20から各種センサの追加測定地点での測定値を取得する(S110)。
【0078】
対象の測定値のペアの差が閾値より小さい場合(S104の「N」)、推定部110が、対象の測定値のペアに基づいて、内挿補間により測定値間の追加測定地点の測定値を推定する(S112)。
【0079】
判断部104は、同一時間帯に測定された全ての測定値のペアについて追加測定値の測定または推定を行ったかを判断して(S114)、全ての測定値のペアについての判断が行われてなければ、判断部104は、ステップS102以降の処理を繰り返す。
【0080】
以上、本実施形態に係る圃場管理装置100によれば、測定値間の差が大きい場合には、測定地点間の他の測定地点まで移動式ロボット10が移動して実際にセンサユニット20でその地点の測定を行う。一方、測定値間の差が小さい場合には、移動式ロボット10による測定の代わりに、内挿補間により測定地点間の他の測定地点の測定値を推定する。よって、圃場内に設けられるセンサユニットの数を抑制しつつ、個々の植物50の周囲の環境状態、及び植物50の生育状態の把握の精度の低下を抑制できる。
【0081】
図6は、本実施形態の態様を全体的または部分的に具現化し得るコンピュータ1200の一例を示す。コンピュータ1200にインストールされたプログラムは、コンピュータ1200に、本発明の実施形態に係る装置に関連付けられるオペレーションまたは当該装置の1または複数の「部」として機能させることができる。または、当該プログラムは、コンピュータ1200に当該オペレーションまたは当該1または複数の「部」を実行させることができる。当該プログラムは、コンピュータ1200に、本発明の実施形態に係るプロセスまたは当該プロセスの段階を実行させることができる。そのようなプログラムは、コンピュータ1200に、本明細書に記載のフローチャート及びブロック図のブロックのうちのいくつかまたは全てに関連付けられた特定のオペレーションを実行させるべく、CPU1212によって実行されてよい。
【0082】
本実施形態によるコンピュータ1200は、CPU1212、及びRAM1214を含み、それらはホストコントローラ1210によって相互に接続されている。コンピュータ1200はまた、通信インタフェース1222、入力/出力ユニットを含み、それらは入力/出力コントローラ1220を介してホストコントローラ1210に接続されている。コンピュータ1200はまた、ROM1230を含む。CPU1212は、ROM1230及びRAM1214内に格納されたプログラムに従い動作し、それにより各ユニットを制御する。
【0083】
通信インタフェース1222は、ネットワークを介して他の電子デバイスと通信する。ハードディスクドライブが、コンピュータ1200内のCPU1212によって使用されるプログラム及びデータを格納してよい。ROM1230はその中に、アクティブ化時にコンピュータ1200によって実行されるブートプログラム等、及び/またはコンピュータ1200のハードウェアに依存するプログラムを格納する。プログラムが、CR-ROM、USBメモリまたはICカードのようなコンピュータ可読記憶媒体またはネットワークを介して提供される。プログラムは、コンピュータ可読記憶媒体の例でもあるRAM1214、またはROM1230にインストールされ、CPU1212によって実行される。これらのプログラム内に記述される情報処理は、コンピュータ1200に読み取られ、プログラムと、上記様々なタイプのハードウェアリソースとの間の連携をもたらす。装置または方法が、コンピュータ1200の使用に従い情報のオペレーションまたは処理を実現することによって構成されてよい。
【0084】
例えば、通信がコンピュータ1200及び外部デバイス間で実行される場合、CPU1212は、RAM1214にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理に基づいて、通信インタフェース1222に対し、通信処理を命令してよい。通信インタフェース1222は、CPU1212の制御の下、RAM1214、またはUSBメモリのような記憶媒体内に提供される送信バッファ領域に格納された送信データを読み取り、読み取られた送信データをネットワークに送信し、またはネットワークから受信した受信データを記憶媒体上に提供される受信バッファ領域等に書き込む。
【0085】
また、CPU1212は、USBメモリ等のような外部記憶媒体に格納されたファイルまたはデータベースの全部または必要な部分がRAM1214に読み取られるようにし、RAM1214上のデータに対し様々なタイプの処理を実行してよい。CPU1212は次に、処理されたデータを外部記憶媒体にライトバックしてよい。
【0086】
様々なタイプのプログラム、データ、テーブル、及びデータベースのような様々なタイプの情報が記憶媒体に格納され、情報処理を受けてよい。CPU1212は、RAM1214から読み取られたデータに対し、本開示の随所に記載され、プログラムの命令シーケンスによって指定される様々なタイプのオペレーション、情報処理、条件判断、条件分岐、無条件分岐、情報の検索/置換等を含む、様々なタイプの処理を実行してよく、結果をRAM1214に対しライトバックする。また、CPU1212は、記憶媒体内のファイル、データベース等における情報を検索してよい。例えば、各々が第2の属性の属性値に関連付けられた第1の属性の属性値を有する複数のエントリが記憶媒体内に格納される場合、CPU1212は、第1の属性の属性値が指定される、条件に一致するエントリを当該複数のエントリの中から検索し、当該エントリ内に格納された第2の属性の属性値を読み取り、それにより予め定められた条件を満たす第1の属性に関連付けられた第2の属性の属性値を取得してよい。
【0087】
上で説明したプログラムまたはソフトウェアモジュールは、コンピュータ1200上またはコンピュータ1200近傍のコンピュータ可読記憶媒体に格納されてよい。また、専用通信ネットワークまたはインターネットに接続されたサーバシステム内に提供されるハードディスクまたはRAMのような記憶媒体が、コンピュータ可読記憶媒体として使用可能であり、それによりプログラムを、ネットワークを介してコンピュータ1200に提供する。
【0088】
コンピュータ可読媒体は、適切なデバイスによって実行される命令を格納可能な任意の有形なデバイスを含んでよい。その結果、そこに格納される命令を有するコンピュータ可読媒体は、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく実行され得る命令を含む、製品を備えることになる。コンピュータ可読媒体の例としては、電子記憶媒体、磁気記憶媒体、光記憶媒体、電磁記憶媒体、半導体記憶媒体等が含まれてよい。コンピュータ可読媒体のより具体的な例としては、フロッピー(登録商標)ディスク、ディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EEPROM(登録商標))、静的ランダムアクセスメモリ(SRAM)、コンパクトディスクリードオンリメモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、ブルーレイ(RTM)ディスク、メモリスティック、集積回路カード等が含まれてよい。
【0089】
コンピュータ可読命令は、1または複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで記述されたソースコードまたはオブジェクトコードのいずれかを含んでよい。ソースコードまたはオブジェクトコードは、従来の手続型プログラミング言語を含む。従来の手続型プログラミング言語は、アセンブラ命令、命令セットアーキテクチャ(ISA)命令、マシン命令、マシン依存命令、マイクロコード、ファームウェア命令、状態設定データ、またはSmalltalk(登録商標)、JAVA(登録商標)、C++等のようなオブジェクト指向プログラミング言語、及び「C」プログラミング言語または同様のプログラミング言語でよい。コンピュータ可読命令は、汎用コンピュータ、特殊目的のコンピュータ、若しくは他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサまたはプログラマブル回路に対し、ローカルにまたはローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネット等のようなワイドエリアネットワーク(WAN)を介して提供されてよい。プロセッサまたはプログラマブル回路は、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく、コンピュータ可読命令を実行してよい。プロセッサの例としては、コンピュータプロセッサ、処理ユニット、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ等を含む。
【0090】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0091】
特許請求の範囲、明細書、及び図面中において示した装置、システム、プログラム、及び方法における動作、手順、ステップ、及び段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、及び図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0092】
10 移動式ロボット
12 アーム
20、30 センサユニット
30 センサユニット
50 植物
60 栽培棚
62 定植ポット
80 ネットワーク
100 圃場管理装置
102 取得部
104 判断部
106 指示部
110 推定部
120 生成部
122 前処理部
124 クラス推定部
126 モデル生成部
128 モデル更新部
130 記憶部
300 センサ管理装置
400 養液供給設備
410 光源設備
420 空調設備
430 送風設備
440 二酸化炭素供給設備
1200 コンピュータ
1210 ホストコントローラ
1212 CPU
1214 RAM
1220 入力/出力コントローラ
1222 通信インタフェース
1230 ROM