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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136029
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】クロミック組成物
(51)【国際特許分類】
   C01G 23/053 20060101AFI20240927BHJP
   B01J 31/04 20060101ALI20240927BHJP
   B01J 35/39 20240101ALI20240927BHJP
   B01J 35/45 20240101ALI20240927BHJP
   A01P 1/00 20060101ALN20240927BHJP
   A01N 59/16 20060101ALN20240927BHJP
【FI】
C01G23/053
B01J31/04 M
B01J35/02 J
B01J35/02 H
A01P1/00
A01N59/16 A
A01N59/16 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046981
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 博輝
(72)【発明者】
【氏名】阪本 浩規
(72)【発明者】
【氏名】濱 久也
【テーマコード(参考)】
4G047
4G169
4H011
【Fターム(参考)】
4G047CA02
4G047CA10
4G047CB06
4G047CB09
4G047CC03
4G047CD04
4G169AA03
4G169BA04A
4G169BA04B
4G169BA14A
4G169BA14B
4G169BA21A
4G169BA21B
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BC32A
4G169BC32B
4G169BC50A
4G169BC50B
4G169BE08A
4G169BE08B
4G169CA11
4G169DA04
4G169EA08
4G169EA11
4G169EB19
4G169EC22X
4G169EE06
4G169FC08
4G169HA01
4G169HB01
4G169HC02
4G169HE07
4G169HF02
4H011AA02
4H011AA04
4H011BA06
4H011BB18
4H011DF04
(57)【要約】
【課題】本発明は、透明、且つ、高強度の紫外線照射等に依り、可逆的に塗膜の確認を行う事が可能な抗菌性組成物を提供する事を目的とする。
【解決手段】チタニアナノ粒子、及び銀ナノ構造体を含む組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタニアナノ粒子、及び銀ナノ構造体を含む組成物であって、
前記チタニアナノ粒子は、表面に存在する少なくとも一部のチタン原子にアシルオキシ基が結合しており、チタニアナノ粒子を示差熱熱重量同時測定装置に依って600℃まで昇温させた場合の200℃以上における質量減少が5質量%以上であり、
前記銀ナノ構造体は、アスペクト比が1~100である、組成物。
【請求項2】
前記アシルオキシ基は、-OCOR(式中、Rは、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、又は炭素数1~2のヒドロキシアルキル基を示す)で表される基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記アシルオキシ基は、炭素数1~4のモノカルボン酸、及び炭素数2~3のヒドロキシカルボン酸から成る群から選ばれる少なくとも1種の有機酸由来のアシルオキシ基である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記有機酸は、乳酸、及び酢酸から成る群から選ばれる少なくとも1種の有機酸である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記有機酸は、酢酸である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記チタニアナノ粒子の粒子径は、1nm~50nmである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記チタニアナノ粒子の比表面積は、150m2/g~500m2/gである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記チタニアナノ粒子は、アナターゼ型以外の結晶形を含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記銀ナノ構造体は、前記チタニアナノ粒子に対して、0.1質量%~25質量%の割合で含まれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記銀ナノ構造体の短軸長は、1nm~100nmである、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
請求項1~10の何れかに記載の組成物から成る、積層体。
【請求項12】
請求項1~10の何れかに記載の組成物から成る、塗膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロミック組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
新型コロナウイルス、多剤耐性菌等の微生物に因る感染症は、人間の生命を脅かすだけでなく、社会活動に大きく影響を与える事から、それらに対する対策が喫緊の課題と成っている。
【0003】
その様な中で、近年、対象物の表面に持続的な抗微生物性塗膜を形成する事に依り、対象物の表面中の微生物数の増加を抑える手法が取られている。抗微生物性塗膜を、例えば、ドアノブ、タッチパネル等の高頻度で接触する箇所だけでなく、壁紙、床、机等の家屋、オフィスのインテリア等にも導入が図られている。
【0004】
この様に、抗菌抗ウイルス加工に用いられる材料(抗菌抗ウイルス剤)は、銀、銅等に代表される無機系、第4級アンモニウム塩等に代表される有機系、そして、酸化チタン、酸化タングステン等に代表される光触媒系の材料が用いられる。これら抗菌抗ウイルス剤は、加工対象の意匠性を損なわない事が重要であり、透明性の高い抗菌抗ウイルス剤が開発されている。
【0005】
従来、しかし、これら透明性が高い抗菌抗ウイルス剤、は加工後に視認する事が難しく、一度塗布してしまうと、塗膜の残存を確認する事が困難である。
【0006】
従来、酸化チタン等の光触媒に金属成分を複合させる事に依り、紫外線、可視光等を照射する事で、可逆的に有色させるクロミック性化合物が知られている。特許文献1は、酸化チタンを塗布した基材に、銀イオンを吸着させ、紫外線を照射する事に依り、銀微粒子を酸化チタン上に形成し、1mW/cm2程度の紫外光で褐色に着色する技術を開示する。特許文献2は、酸化チタン、酸化ナトリウム、鉄等の金属化合物を混合し、焼成する事に依り、クロミック性を有する酸化チタン系化合物を開示し、2mW/cm2の紫外線を1時間照射する事に依り、着色する技術を開示する。
【0007】
従来、しかし、これらクロミック性化合物は、酸化チタンの白色粉末を用いており、焼結プロセスを経る為に透明性が低いという点、紫外線、可視光等の強度が弱くても、呈色してしまう事から、一般環境で塗膜として供する場合、意匠性を損なうという点の問題が有る。
【0008】
抗菌抗ウイルス剤は、透明、且つ、高強度の紫外線照射等に依り、可逆的に、塗膜の確認が出来る事(物質の色(光物性)が、外部からの刺激に依って、可逆的に変化するクロミック材料)が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4126691号
【特許文献2】特許第3213996号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、透明、且つ、高強度の紫外線照射等に依り、可逆的に塗膜の確認を行う事が可能な抗菌性組成物を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、次のチタニアナノ粒子、及び銀ナノ構造体を含む組成物を包含する。
【0012】
項1.
チタニアナノ粒子、及び銀ナノ構造体を含む組成物であって、
前記チタニアナノ粒子は、表面に存在する少なくとも一部のチタン原子にアシルオキシ基が結合しており、チタニアナノ粒子を示差熱熱重量同時測定装置に依って600℃まで昇温させた場合の200℃以上における質量減少が5質量%以上であり、
前記銀ナノ構造体は、アスペクト比が1~100である、組成物。
【0013】
項2.
前記アシルオキシ基は、-OCOR(式中、Rは、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、又は炭素数1~2のヒドロキシアルキル基を示す)で表される基である、前記項1に記載の組成物。
【0014】
項3.
前記アシルオキシ基は、炭素数1~4のモノカルボン酸、及び炭素数2~3のヒドロキシカルボン酸から成る群から選ばれる少なくとも1種の有機酸由来のアシルオキシ基である、前記項2に記載の組成物。
【0015】
項4.
前記有機酸は、乳酸、及び酢酸から成る群から選ばれる少なくとも1種の有機酸である、前記項3に記載の組成物。
【0016】
項5.
前記有機酸は、酢酸である、前記項4に記載の組成物。
【0017】
項6.
前記チタニアナノ粒子の粒子径は、1nm~50nmである、前記項1に記載の組成物。
【0018】
項7.
前記チタニアナノ粒子の比表面積は、150m2/g~500m2/gである、前記項1に記載の組成物。
【0019】
項8.
前記チタニアナノ粒子は、アナターゼ型以外の結晶形を含まない、前記項1に記載の組成物。
【0020】
項9.
前記銀ナノ構造体は、前記チタニアナノ粒子に対して、0.1質量%~25質量%の割合で含まれる、前記項1に記載の組成物。
【0021】
項10.
前記銀ナノ構造体の短軸長は、1nm~100nmである、前記項1に記載の組成物。
【0022】
項11.
前記項1~10の何れかに記載の組成物から成る、積層体。
【0023】
項12.
前記項1~10の何れかに記載の組成物から成る、塗膜。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、透明、且つ、一般的な屋内環境に存在する太陽光の紫外線強度で変色せず、紫外線強度を超える強さで照射する事で、塗膜が呈色し、確認を行う事が出る。
【0025】
本発明は、その呈色が一定時間後に退色し、再び透明と成る事で意匠性を損なう事の無い組成物を提供する事が可能と成る。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0027】
本発明を表す実施の形態は、発明の趣旨がより良く理解出来る説明であり、特に指定のない限り、発明内容を限定するものではない。
【0028】
本明細書において、「含む」及び「含有」は、「含む(comprise)」、「実質的にのみから成る(consist essentially of)」、及び「のみから成る(consist of)」の何れも包含する概念である。
【0029】
本明細書において、数値範囲を「A~B」で示す場合、「A以上、B以下」を意味する。
【0030】
本明細書において、一般に、部、%等の表示を使用する。
【0031】
本明細書において、特に断りがない限り、質量部又は質量%(wt%)を表す。
【0032】
[1]チタニアナノ粒子、及び銀ナノ構造体を含む組成物
本発明のチタニアナノ粒子、及び銀ナノ構造体を含む組成物は、
前記チタニアナノ粒子は、表面に存在する少なくとも一部のチタン原子にアシルオキシ基が結合しており、チタニアナノ粒子を示差熱熱重量同時測定装置に依って600℃まで昇温させた場合の200℃以上における質量減少が5質量%以上であり、
前記銀ナノ構造体は、アスペクト比が1~100である。
【0033】
本発明の組成物では、アシルオキシ基は、好ましくは、-OCOR(式中、Rは、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、又は炭素数1~2のヒドロキシアルキル基を示す)で表される基である。
【0034】
本発明の組成物では、アシルオキシ基は、好ましくは、炭素数1~4のモノカルボン酸、及び炭素数2~3のヒドロキシカルボン酸から成る群から選ばれる少なくとも1種の有機酸由来のアシルオキシ基である。
【0035】
本発明の組成物では、有機酸は、好ましくは、乳酸、及び酢酸から成る群から選ばれる少なくとも1種の有機酸である。
【0036】
本発明の組成物では、有機酸は、好ましくは、酢酸である。
【0037】
本発明の組成物では、チタニアナノ粒子の粒子径は、好ましくは、1nm~50nmである。
【0038】
本発明の組成物では、チタニアナノ粒子の比表面積は、好ましくは、150m2/g~500m2/gである。
【0039】
本発明の組成物では、チタニアナノ粒子は、好ましくは、アナターゼ型以外の結晶形を含まない。
【0040】
本発明の組成物では、銀ナノ構造体は、チタニアナノ粒子に対して、好ましくは、0.1質量%~25質量%の割合で含まれる。
【0041】
本発明の組成物では、銀ナノ構造体の短軸長は、好ましくは、1nm~100nmである。
【0042】
本発明は、本発明の組成物から成る、積層体を包含する。
【0043】
本発明は、本発明の組成物から成る、塗膜を包含する。
【0044】
本発明の組成物は、透明、且つ、一般的な屋内環境に存在する太陽光の紫外線強度で変色せず、紫外線強度を超える強さで照射する事で、塗膜が呈色し、確認を行う事が出来る。
【0045】
本発明の組成物は、その呈色が一定時間後に退色し、再び透明と成る事で意匠性を損なう事の無い組成物を提供する事が可能と成る。
【0046】
[1-1]銀担持チタニアナノ粒子、及び光触媒
銀担持チタニアナノ粒子は、チタニアナノ粒子の表面に銀(銀ナノ構造体)が担持された銀担持チタニアナノ粒子である。
【0047】
チタニアナノ粒子は、表面に存在する少なくとも一部のチタン原子にアシルオキシ基が結合しており、チタニアナノ粒子を示差熱熱重量同時測定装置に依って、600℃まで昇温させた場合の200℃以上における質量減少は5質量%以上である。
【0048】
チタニアナノ粒子は、好ましくは、チタニアナノ粒子に対して、銀が表面に担持されている。
【0049】
銀担持チタニアナノ粒子は、チタニアナノ粒子の平均粒子径、及び比表面積を調整する事が可能である。
【0050】
銀担持チタニアナノ粒子は、銀の形態は銀ナノ構造体であり、銀ナノ構造体の平均粒子径、及び比表面積を調整する事が可能である。
【0051】
銀担持チタニアナノ粒子は、チタニアナノ粒子、及び銀が強固に密着しており、分散性に優れ凝集し難い為、別途、分散剤、安定剤等の添加剤を使用せずに、銀成分が安定して分散し、耐熱性、紫外線照射時の耐変色性、塗布性、及び透明性に優れる。
【0052】
銀担持チタニアナノ粒子、及び光触媒は、別途、分散剤、及び安定剤を使用せずに、十分な塗布性、及び透明性を有している事から、バインダ、分散剤等の添加剤に依り、可視光触媒活性、及び暗所抗菌抗ウイルス活性を損なう事が無い。
【0053】
銀担持チタニアナノ粒子、及び光触媒は、擦過等の物理的衝撃に対する耐性が高い事から、持続的に優れた可視光触媒活性を有する事が出来る。
【0054】
銀担持チタニアナノ粒子は、光触媒(特に、可視光応答型光触媒)、及び光触媒用塗料材料として有用である。
【0055】
銀担持チタニアナノ粒子は、明所では、光触媒活性に依り、抗微生物活性を有する事が出来る。
【0056】
銀担持チタニアナノ粒子は、暗所では、表面に存在する銀の作用に依り、抗微生物活性を有する事が出来る。
【0057】
[1-2]チタニアナノ粒子
水、無機酸、遊離した有機酸等は、一般に、200℃以下で、殆ど揮発する。
【0058】
本発明の金属担持チタニアナノ粒子を構成するチタニアナノ粒子は、表面に存在する少なくとも一部のチタン原子にアシルオキシ基が結合しており、200℃~600℃の範囲で、徐々に脱離する。例えば、アセトキシ基の場合、約260℃をピークとして、200~600℃の範囲で、徐々に脱離する。
【0059】
本発明の金属担持チタニアナノ粒子を構成するチタニアナノ粒子は、表面に存在する少なくとも一部のチタン原子にアシルオキシ基が結合しており、乾燥、又は焼成時に、チタニアナノ粒子同士の凝集を抑制出来る為、クラック、剥がれ等が起こり難く、塗布性、及び透明性に特に優れる。
【0060】
本発明の金属担持チタニアナノ粒子を構成するチタニアナノ粒子は、クラック、剥がれ等を抑制する事が出来、金属を強固に担持させ易い結果、可視光触媒活性にも優れる。
【0061】
チタニアナノ粒子は、一般に、表面にアシルオキシ基を有していると、可視光触媒活性は低下する。
【0062】
本発明の金属担持チタニアナノ粒子を構成するチタニアナノ粒子は、乾燥、又は焼成時に、チタニアナノ粒子同士の凝集を抑制出来る為、クラック、剥がれ等の抑制効果が特に優れている。
【0063】
本発明の金属担持チタニアナノ粒子を構成するチタニアナノ粒子は、金属を強固に担持させ易い為、アシルオキシ基を有しているにも拘らず、可視光触媒活性も向上させる事が出来る。
【0064】
チタニアナノ粒子は、好ましくは、表面に存在するチタン原子に、アシルオキシ基が大量に結合している。表面に存在する少なくとも一部のチタン原子にアシルオキシ基が存在している場合、200℃~600℃の範囲で、徐々に離脱する事から、示差熱熱重量同時測定装置(TG-DTA)に依って、昇温させた場合に200℃以上での質量減少が大きい。
【0065】
チタニアナノ粒子は、示差熱熱重量同時測定装置(TG-DTA)に依って、昇温させた場合に200℃以上での質量減少は、表面に存在するチタン原子にアセトキシ基が結合している数の指標を意味する。
【0066】
チタニアナノ粒子は、示差熱熱重量同時測定装置(TG-DTA)に依って、600℃まで昇温させた場合の200℃以上における質量減少は、5質量%以上であり、好ましくは、7質量%~20質量%である。
【0067】
示差熱熱重量同時測定装置(TG-DTA)の詳細な条件は、雰囲気:空気、昇温速度:3℃/分である。
【0068】
チタニアナノ粒子は、表面に存在する少なくとも一部のチタン原子にアシルオキシ基が結合しているものである。アシルオキシ基は、好ましくは、-OCOR(式中、Rは、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、又は炭素数1~2のヒドロキシアルキル基を示す)で表される基で、チタン原子と結合している。アシルオキシ基は、好ましくは、炭素数1~4のモノカルボン酸、炭素数2~3のヒドロキシカルボン酸等の有機酸由来のアシルオキシ基である。
【0069】
-OCORにおいて、Rのアルキル基は、好ましくは、メチル基、エチル基、n-プロピル基等である。-OCORは、好ましくは、モノカルボン酸は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸等である。
【0070】
-OCORにおいて、Rのヒドロキシアルキル基は、好ましくは、ヒドロキシメチル基、1-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシエチル基等である。-OCORは、好ましくは、ヒドロキシカルボン酸は、グリコール酸、乳酸等が挙げられる。
【0071】
-OCORにおいて、揮発性、有害性、及び分解性の観点から、Rは、好ましくは、水素原子、又はメチル基、ヒドロキシメチル基、1-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシエチル基等である。
【0072】
-OCORにおいて、水溶性、及び臭気の観点から、Rは、好ましくは、メチル基、1-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシエチル基などである。
【0073】
-OCORは、揮発性、有害性及び分解性の観点から、好ましくは、モノカルボン酸として、ギ酸、酢酸等である。
【0074】
-OCORは、揮発性、有害性及び分解性の観点から、好ましくは、ヒドロキシカルボン酸として、グリコール酸、乳酸等である。
【0075】
-OCORは、水溶性及び臭気の観点から、特に好ましくは、酢酸、グリコール酸、乳酸等である。
【0076】
有機酸は、前記有機酸から成る群から選ばれる少なくとも1種の化合物を用いて良く、これらの有機酸を1種単独で用いても良く、或は目的に応じて2種以上を混合(ブレンド)して用いても良い。
【0077】
チタニアナノ粒子の平均粒子径は、好ましくは、1nm~50nmであり、より好ましくは、1nm~5nmであり、更に好ましくは、2nm~4nmである。チタニアナノ粒子の平均粒子径を、この範囲に調整する事に依り、チタニアナノ粒子に、金属(銀、及び銅)を適度、且つより強固に担持させる事が出来る。チタニアナノ粒子は、可視光触媒活性がより高く、且つ透明性のより高い膜を形成すする事が出来る。
【0078】
チタニアナノ粒子の平均粒子径が小さい場合、一般に、加熱時の収縮が大きい為、クラック、基板からの剥離が起こり易い。
【0079】
本発明の金属担持チタニアナノ粒子は、平均粒子径が小さいチタニアナノ粒子を使用した場合でも、塗布性に優れる材料である。
【0080】
チタニアナノ粒子の平均粒子径は、電子顕微鏡(TEM)観察に依り、測定する。
【0081】
チタニアナノ粒子の比表面積は、好ましくは、150m2/g~500m2/gであり、より好ましくは、200m2/g~400m2/gである。チタニアナノ粒子の比表面積を、この範囲に調整する事に依り、チタニアナノ粒子に、金属(銀及び銅)を、適度、且つより強固に担持させる事が出来る。チタニアナノ粒子は、可視光触媒活性が高い。
【0082】
チタニアナノ粒子の比表面積は、BET法に依り、測定する。
【0083】
チタニアナノ粒子は、N、Cl、及びS元素の濃度を、何れも、好ましくは、0~5,000ppm、より好ましくは、0~1,000ppmとする事が出来る。チタニアナノ粒子のN、Cl、及びS元素の濃度を、この範囲に調整する事に依り、基材の腐食等を抑える事が出来る。チタニアナノ粒子のN、Cl、及びS元素の濃度は、TiCl4、TiOSO4等の酸性チタニア前駆体由来の不純物が存在しないか、又はごく少量である事を意味している。
【0084】
チタニアナノ粒子のN、Cl、及びS元素の濃度は、WDX(蛍光X線)に依り、測定する。
【0085】
チタニアナノ粒子の結晶形は、好ましくは、アナターゼ型が好ましく、チタニアナノ粒子は、好ましくは、アナターゼ型以外の結晶形を含まない。チタニアナノ粒子は、アナターゼ型を採用する事に依り、チタニアナノ粒子は、可視光触媒活性が向上する。チタニアナノ粒子は、好ましくは、アナターゼ型以外の結晶形を含まず、アナターゼ型100%である。
【0086】
[1-3]銀ナノ構造体
銀ナノ構造体の形態は、特に制限されず、銀の安定性、明所、及び暗所(特に、暗所)における抗菌活性、及び抗ウイルス活性等の観点から、好ましくは、銀ナノ粒子、銀ナノロッド、銀ナノワイヤ等を用いる。
【0087】
酸化チタンに、金属イオン、又は金属ナノ粒子を添加すると、一般に、酸化チタンの比表面積、金属イオン濃度等に関わらず、金属イオンが経時で還元され、金属ナノ粒子が生成され、金属ナノ粒子同士が経時で熱凝集し、金属の沈殿が見られる事が多い。
【0088】
本発明の金属担持チタニアナノ粒子を構成するチタニアナノ粒子は、表面に存在する少なくとも一部のチタン原子にアシルオキシ基が結合しており、金属イオン、及び金属ナノ粒子がチタニアナノ粒子上で安定化され、経時の還元や熱凝集、紫外線照射時の凝集による変色が抑制される。
【0089】
銀ナノ構造体の平均短軸長は、好ましくは、500nm以下であり、より好ましくは、0.01nm~200nmであり、更に好ましくは、0.1nm~100nmであり、特に好ましくは、1nm~100nmである。担持される銀ナノ構造体の平均粒子径を、この範囲に調整する事に依り、分散安定性の高い分散液を得られ、可視光触媒活性をより向上させ、透明性をより向上させた膜を形成する事が出来る。
【0090】
銀ナノ構造体の平均短軸長は、電子顕微鏡観察に依り、測定する。
【0091】
チタニアナノ粒子の表面に対する銀の担持量は、抗微生物活性(抗菌活性、及び抗ウイルス活性)、チタニアナノ粒子の安定性等の観点から、好ましくは、チタニアナノ粒子中の酸化チタンに対して、50質量%未満とし、より好ましくは、0.01質量%~40質量%とし、更に好ましくは、0.1質量%~25質量%とする。チタニアナノ粒子の表面に対する銀の担持量を、この範囲に調整する事に依り、チタニアナノ粒子を含む塗膜の強度、及び透明性が維持する事が出来る。
【0092】
銀ナノ構造体のアスペクト比(銀ナノ構造体の長軸長さ/銀ナノ構造体の短軸長)は、好ましくは、500以下であり、より好ましくは、1~200であり、更に好ましくは、1~100であり、特に好ましくは、1.1~100である。銀ナノ構造体のアスペクト比を、この範囲に調整する事に依り、チタニアナノ粒子は、強い紫外線を照射する事に因る変色の視認性、照射停止後の再透明化を誘起させる事が出来る。
【0093】
銀ナノ構造体の平均短軸長、及び平均長軸長は、電子顕微鏡観察に依り、測定する。
【0094】
[2]銀ナノ構造体担持チタニアナノ粒子、及び光触媒の製造方法
本発明では、銀ナノ構造体をチタニアナノ粒子に担持させる方法は、好ましくは、金属ナノ構造体、及び/又は、銀錯体と、チタニアナノ粒子とを混合後、光照射に依り、担持する光析出法を用いる。銀ナノ構造体をチタニアナノ粒子に担持させる方法は、好ましくは、任意の方法で合成された銀ナノ構造体を、チタニアナノ粒子と接触させて、混合、又は静置して、担持する方法を用いる。
【0095】
本発明では、銀ナノ構造体をチタニアナノ粒子に担持させる方法は、何れの方法も採用する事が出来る。
【0096】
金属担持チタニアナノ粒子及び光触媒は、好ましくは、
(A)チタンを含む物質、有機酸、及び水を混合して分散液を得る工程、
(B)前記工程(A)で得られた分散液を、80℃より高い温度で、1時間以上加熱する工程、
工程(C):
(C1)前記工程(B)で得られた分散液と、銀ナノ構造体、及び/又は銀化合物とを混合して得られた分散液に対して、化学的に還元処理を行う工程、
(C2)前記工程(B)で得られた分散液と、銀ナノ構造体、及び/又は銀化合物とを混合して得られた分散液に対して、紫外線を照射する工程、
(C3)前記工程(B)で得られた分散液と、銀ナノ構造体とを混合する工程、又は
(C4)前記工程(B)で得られた分散液に、銀ナノ構造体、及び/又は銀化合物を添加して、静置する工程
を備える方法により製造する。
【0097】
工程(C)の内、工程(C1)、(C2)は、外部からエネルギーを加える事で、担持効率を向上させる事が出来る。
【0098】
工程(C)の内、工程(C3)は、チタニアナノ粒子分散液の高粘度化を防げる事が出来、均一な粒子を得る事が出来る。
【0099】
工程(C)の工程(C1)、(C2)、(C3)、(C4)は、何れも、冷却する事で、銀ナノ構造体のアスペクト比の制御性を、更に向上させる事が可能である。
【0100】
[2-1]工程(A)
工程(A)では、チタンを含む物質、有機酸、及び水を混合して分散液を得る。
【0101】
使用するチタンを含む物質は、好ましくは、加熱に依り酸化チタンと成る物質である。チタンを含む物質は、好ましくは、酸化チタン、及び/又は酸化チタン前駆体でありより好ましくは、酸化チタン;水酸化チタン;チタンアルコキシド;三塩化チタン、四塩化チタン等のハロゲン化チタン(特に、塩基で中和したもの);金属チタン等を用いる。
【0102】
チタンを含む物質は、得られるチタニアの分散性、塗布性、及び可視光触媒性の観点から、好ましくは、チタンアルコキシド、水酸化チタン、ハロゲン化チタン(特に、塩基で中和したもの)である。チタンを含む物質は、純度、分散性、塗布性、透明性、及び可視光触媒性の観点から、より好ましくは、チタンアルコキシドである。
【0103】
チタンアルコキシドは、好ましくは、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラn-ブトキシド、チタンテトラn-プロポキシド、チタンテトラエトキシド等である。チタンアルコキシドは、コスト、副生成物の水溶性、塗布性及び可視光触媒性の観点から、より好ましくは、チタンテトライソプロポキシドである。
【0104】
チタンを含む物質は、前記チタンを含む物質から成る群から選ばれる少なくとも1種の化合物を用いて良く、これらのチタンを含む物質を1種単独で用いても良く、或は目的に応じて2種以上を混合(ブレンド)して用いても良い。
【0105】
チタンアルコキシドと有機酸との組合せに因っては、得られるチタニアを触媒として水に溶け難いエステル化合物が遊離する事がある。チタニア自身に問題はない。例えば、チタンテトラn-ブトキシドと酢酸の組合せにおいて、混合し加熱した段階で酢酸ブチルが生じ遊離するが、均一な分散液を得る観点から、好ましくは、水溶性に優れる有機酸アルコキシドが得られる有機酸とチタンアルコキシドとの組合せを採用する。
【0106】
ハロゲン化チタン(四塩化チタン、三塩化チタン等)は、不純物(ハロゲン)、量産時の反応器の腐食、結晶性制御、塗布性、透明性及び可視光触媒性の観点から、好ましくは、塩基で中和し、沈殿物の洗浄を行ってから用いる。ハロゲン化チタンは、得られるチタニアの分散性の観点から、好ましくは、乾燥を行わずに用いる。
【0107】
チタンを含む物質として、酸化チタン、金属チタン等の固体を用いる場合、平均粒子径は、好ましくは、100nm以下であり、より好ましくは、50nm以下せある。チタンを含む物質の平均粒子径の下限値は、特に設定されず、好ましくは、1nm程度である。
【0108】
粒径が大きい場合は、好ましくは、遊星ボールミル、ペイントシェーカー等を用いて乾式、又は湿式で、粉砕して用いる。
【0109】
酸化チタン、金属チタン等の固体の平均粒子径は、電子顕微鏡(TEM)観察に依り、測定する。
【0110】
工程(A)で生成する分散液中のチタンを含む物質の濃度は、生産性、反応液の粘度、塗布性、透明性及び可視光触媒性の観点から、好ましくは、0.01mol/L~5mol/Lであり、より好ましくは、0.05mol/L~3mol/Lである。
【0111】
反応に使用する酸は、有機酸であり、揮発性のある酸が好ましい事から、好ましくは、化学式CnH2n+1COOH(n=0~3)で示されるモノカルボン酸(炭素数1~4のモノカルボン酸)、炭素数2~3のヒドロキシカルボン酸等を用いる。
【0112】
モノカルボン酸は、揮発性、有害性及び分解性の観点から、好ましくは、n=0のギ酸、及びn=1の酢酸である。
【0113】
ヒドロキシカルボン酸は、好ましくは、グリコール酸、乳酸等であり、水溶性、及び臭気の観点から、より好ましくは、酢酸、グリコール酸、乳酸等である。
【0114】
有機酸は、前記有機酸から成る群から選ばれる少なくとも1種の化合物を用いて良く、これらの有機酸を1種単独で用いても良く、或は目的に応じて2種以上を混合(ブレンド)して用いても良い。
【0115】
有機酸の使用量は、分散性、塗布性、透明性、可視光触媒性及びコストの観点から、チタンを含む物質中のチタン1モルに対して、好ましくは、アシルオキシ基のモル数が1.5モル以上、特に好ましくは、2モル以上と成る様に調整する。有機酸の使用量は、有機酸を多く用いる程経時安定性、塗布性、透明性等を向上させる事が出来る。有機酸の使用量の上限値は、特に制限されず、チタンを含む物質中のチタン1モルに対して、好ましくは、アシルオキシ基のモル数が10モル以下と成る様に調整する。
【0116】
工程(A)で得られる分散液中の有機酸の濃度は、分散性、塗布性、透明性、可視光触媒性及びコストの観点から、好ましくは、0.02mol/L~10mol/Lであり、より好ましくは、0.1mol/L~7mol/Lである。
【0117】
反応溶媒は、好ましくは、水等の水性溶媒を主成分(好ましくは、50質量%以上)として用いる。反応溶媒は、反応時にアルコール、又はエステルを含んでいても良い。
【0118】
反応溶媒は、チタンテトライソプロポキシドを原料として用いた場合、有機酸との反応に依り、イソプロピルアルコールが生じる。加熱に依り、有機酸のイソプロピルエステルが生じる事が有る。工程(A)に依り得られる分散液中には、アルコール、又はエステルを投入しても良いし、系中で発生していても良い。アルコール、又はエステルは、100℃以下の開放系における加熱に依り除去しても良いし、減圧に依り除去しても良いし、反応液中に残留していても良い。
【0119】
分散液中にアルコールが含まれる場合、得られるチタニアナノ粒子、及び金属担持チタニアナノ粒子の平均粒子径が小さくなる傾向に有り、平均粒子径を制御する為に、意図的にアルコールを添加しても良い。
【0120】
一般に、チタニアナノ粒子の水熱合成反応に用いる事が多い硝酸、塩酸、硫酸等の無機酸(特に、無機強酸)は、得られるチタニアナノ粒子の結晶形がアナターゼ型の他にブルッカイト型も混在するだけでなく、得られる分散液の貯蔵安定性、装置の腐食、不純物、排水等の観点から、原則用いない事が好ましい。
【0121】
無機酸は、原料の分散性、透明性、均一性等を高め、取扱いを容易にする場合、効果を損なわない範囲で、例えば、0.01mol/L以下の範囲で補助的に使用する事も出来る。工程(A)で得られる分散液中のN、Cl及びS元素の濃度は、何れも0.01mol/L以下と成る。
【0122】
工程(A)で得られる分散液のpHは、装置の腐食や取扱いの安全性、分散性等の観点から、好ましくは、2以上、6未満であり、より好ましくは、2.1~5である。
【0123】
工程(A)において、分散液の作製方法は、特に制限されず、チタンを含む物質、有機酸及び水(溶媒)を同時に混合しても良いし、逐次混合しても良い。量産スケールにおいては、凝集して大きな塊を形成し難く、攪拌を継続し易い観点から、好ましくは、有機酸、及び水(溶媒)を混合した後に、攪拌しながらチタンを含む物質を投入する。ラボスケールにおいては、好ましくは、チタンを含む物質、及び有機酸を混合した後に、攪拌しながら水を投入する。
【0124】
[2-2]工程(B)
工程(B)では、工程(A)で得られた分散液を、80℃より高い温度で、1時間以上加熱する。
【0125】
工程(B)は、好ましくは、常圧下に行い、或は、密閉容器内で加圧下に行う。工程(B)は、チタニアナノ粒子、及び金属ナノ粒子担持チタニアナノ粒子の平均粒子径を小さくする観点から、好ましくは、常圧下に行う。工程(B)は、好ましくは、0.09MPa~0.11MPaの条件で行う。工程(B)は、加圧下に行う場合、可視光触媒活性が高く、且つ透明性の高い膜が形成しやすい観点から、好ましくは、0.2MPa以下(0.11MPa~0.2MPa)において、短時間(5分~30分程度)の反応を行う。
【0126】
工程(B)は、加熱の際には、チタンを含む物質と有機酸と水とを十分に反応させる観点から、好ましくは、撹拌する。工程(B)の攪拌の方法は、特に制限されず、常法に従う。工程(B)の攪拌時間は、チタンを含む物質と有機酸と水とを十分に反応させる観点から、好ましくは、1時間以上であり、より好ましくは、1.5時間以上である。工程(B)の攪拌時間の上限値は、特に制限されず、好ましくは、240時間である。
【0127】
工程(B)の加熱温度は、好ましくは、80℃より高い温度、より好ましくは、82℃以上である。工程(B)の加熱温度は、80℃以下では、クラックが発生し易く、塗布性に劣り、直ぐに脱落する事から、塗膜を形成する事が困難と成る傾向が有る。工程(B)の加熱温度の上限値は、特に制限されず、好ましくは、常圧で反応する場合、120℃である。
【0128】
工程(B)で得られる分散液のpHは、装置の腐食や取扱いの安全性、分散性等の観点から、好ましくは、2以上、6未満であり、より好ましくは、2.1~5である。
【0129】
[2-3]工程(C1)
工程(C1)では、工程(B)で得られた分散液と、銀ナノ構造体、及び/又は銀化合物とを混合して得た分散液に対して、化学的に還元処理を行う。
【0130】
銀として銀ナノ構造体を使用する場合、銀ナノ構造体は、公知、又は市販品を使用する事が出来る。銀ナノ構造体を合成する場合、例えば、銀ナノ粒子,日本接着学会誌,2008年,44巻,11号,414-419に記載の方法に基づいて合成する事が出来る。
【0131】
銀ナノ構造体の平均短軸径は、特に制限されず、抗菌抗ウイルス活性、及びナノ粒子の分散安定性の観点から、好ましくは、0.01nm~500nmであり、より好ましくは、0.1nm~100nmである。
【0132】
銀化合物として銀塩を使用する場合、工程(A)、及び(B)で得られるチタニアナノ粒子を含む分散液(ゾル)が酸性である為、好ましくは、工程(C1)を経た分散液が塩基性と成る事を避ける。銀塩は、好ましくは、水溶液が酸性、又は中性の銀塩である。銀塩は、好ましくは、塩化銀(I)、硝酸銀(I)、有機酸銀(乳酸銀(I)、酢酸銀(I)、クエン酸銀(I)、ミリスチン酸銀(I)等)、硫化銀(I)、酸化銀(I)、リン酸銀(I)、炭酸銀(I)、臭化銀(I)、ヨウ化銀(I)等を用いる。銀塩を、還元に依り、銀ナノ構造体と成る銀ナノ構造体前駆体として使用する事も可能である。
【0133】
銀ナノ構造体、及び銀塩は、前記銀ナノ構造体、及び銀塩から成る群から選ばれる少なくとも1種の化合物を用いて良く、これらの銀ナノ構造体、及び銀塩を1種単独で用いても良く、或は目的に応じて2種以上を混合(ブレンド)して用いても良い。
【0134】
工程(C1)では、銀ナノ構造体、及び/又は銀化合物の使用量は、分散性、透明性、抗微生物活性(抗菌活性、及び抗ウイルス活性)、チタニアナノ粒子の安定性等の観点から、銀ナノ構造体、及び/又は銀化合物中の銀元素の質量に換算して、好ましくは、工程(B)で得られた分散液に含まれるチタニアナノ粒子中の酸化チタンに対して、50質量%以下であり、より好ましくは、0.01質量%~40質量%であり、更に好ましくは、0.1質量%~25質量%である。銀ナノ構造体、及び/又は銀化合物の使用量を、この範囲に調整する事に依り、塗布性、及び透明性を維持し易く、暗所での抗菌活性、及び抗ウイルス活性、並びに光触媒活性を、特に向上させる事が出来る。
【0135】
工程(C1)では、化学的な還元処理のプロセスは、特に限定されず、好ましくは、水素化ホウ素ナトリウム等の還元剤の使用する方法、ポリオール還元法、エタノール還元法等を用いる。還元剤を使用する場合、分散安定性、アスペクト比の制御性、低強度紫外線照射時の耐変色性、高強度紫外線照射時の視認性、及び紫外線停止環境での再透明化の観点から、好ましくは、0℃以上20℃未満(室温)で行う。
【0136】
工程(C1)は、空気雰囲気下に行っても良いし、嫌気下で行っても良い。工程(C1)の嫌気下は、好ましくは、窒素雰囲気下、アルゴン雰囲気下等の不活性ガス雰囲気下等である。
【0137】
工程(C1)では、化学的な還元処理の際には、工程(B)で得られた分散液と、銀ナノ構造体、及び/又は銀化合物を十分に反応させる観点から、好ましくは、撹拌する。攪拌の方法は、特に制限されず、常法に従う事が出来る。
【0138】
得られる分散液のpHは、添加する金属種や金属種の添加量に因って異なり、塗布性の観点から、好ましくは、1~5であり、より好ましくは、2~4である。
【0139】
この後、常法に依り、銀ナノ構造体担持チタニアナノ粒子を沈殿、及び遠心分離する事等に依り、銀ナノ構造体担持チタニアナノ粒子を回収する事が出来る。大量のアシルオキシ基が表面に存在するチタン原子に結合し、銀が表面に担持されたチタニアナノ粒子を得る事が出来る。
【0140】
[2-4]工程(C2)
工程(C2)では、工程(B)で得られた分散液と、銀ナノ構造体、及び/又は銀化合物とを混合して得た分散液に対して、紫外線照射を行う。
【0141】
銀として銀ナノ構造体を使用する場合、銀ナノ構造体は、公知、又は市販品を使用する事が出来る。銀ナノ構造体を合成する場合、例えば、銀ナノ粒子,日本接着学会誌,2008年,44巻,11号,414-419に記載の方法に基づいて合成する事が出来る。
【0142】
銀ナノ構造体の平均粒子径は、特に制限されず、抗菌抗ウイルス活性、及びナノ粒子の分散安定性の観点から、好ましくは、0.01nm~500nmであり、より好ましくは、0.1nm~100nmである。
【0143】
銀化合物として銀塩を使用する場合、工程(A)、及び(B)で得られるチタニアナノ粒子を含む分散液(ゾル)が酸性である為、好ましくは、工程(C2)を経た分散液が塩基性と成る事を避ける。銀塩は、好ましくは、水溶液が酸性、又は中性の銀塩である。銀塩は、好ましくは、塩化銀(I)、硝酸銀(I)、有機酸銀(乳酸銀(I)、酢酸銀(I)、クエン酸銀(I)、ミリスチン酸銀(I)等)、硫化銀(I)、酸化銀(I)、リン酸銀(I)、炭酸銀(I)、臭化銀(I)、ヨウ化銀(I)等を用いる。銀塩を、還元に依り、銀ナノ構造体と成る銀ナノ構造体前駆体として使用する事も可能である。
【0144】
銀ナノ構造体、及び銀塩は、前記銀ナノ構造体、及び銀塩から成る群から選ばれる少なくとも1種の化合物を用いて良く、これらの銀ナノ構造体、及び銀塩を1種単独で用いても良く、或は目的に応じて2種以上を混合(ブレンド)して用いても良い。
【0145】
工程(C2)では、銀ナノ構造体、及び/又は銀化合物の使用量は、分散性、透明性、抗微生物活性(抗菌活性、及び抗ウイルス活性)、チタニアナノ粒子の安定性等の観点から、銀ナノ構造体、及び/又は銀化合物中の銀元素の質量に換算して、好ましくは、工程(B)で得られた分散液に含まれるチタニアナノ粒子中の酸化チタンに対して、50質量%以下であり、より好ましくは、0.01質量%~40質量%であり、更に好ましくは、0.1質量%~25質量%である。銀ナノ構造体、及び/又は銀化合物の使用量を、この範囲に調整する事に依り、塗布性、及び透明性を維持し易く、暗所での抗菌活性、及び抗ウイルス活性、並びに光触媒活性を特に向上させる事が出来る。
【0146】
工程(C2)では、紫外光照射は、銀のチタニアナノ粒子への担持させ易さ、可視光触媒活性、反応速度、生産性、アスペクト比の制御性、低強度紫外線照射時の耐変色性、高強度紫外線照射時の視認性、及び紫外線停止環境での再透明化等の観点から、好ましくは、室温(20℃)未満で行い、より好ましくは、15℃以下で行う。紫外光照射の温度の下限値は、特に制限されず、常圧で反応する場合、好ましくは、0℃である。
【0147】
工程(C2)では、紫外光照射の際には、工程(B)で得られた分散液と、銀ナノ構造体、及び/又は銀化合物とを十分に反応させる観点から、好ましくは、撹拌する。攪拌の方法は、特に制限されず、常法に従う事が出来る。
【0148】
工程(C2)は、空気雰囲気下に行っても良いし、嫌気下で行っても良い。工程(C2)の嫌気下は、好ましくは、窒素雰囲気下、アルゴン雰囲気下等の不活性ガス雰囲気下等である。
【0149】
得られる分散液のpHは、添加する金属種や金属種の添加量に因って異なり、塗布性の観点から、好ましくは、1~5あり、より好ましくは、2~4である。
【0150】
この後、常法に依り、銀ナノ構造体担持チタニアナノ粒子を沈殿、及び遠心分離する事等に依り、銀ナノ構造体担持チタニアナノ粒子を回収する事が出来る。大量のアシルオキシ基が表面に存在するチタン原子に結合し、銀が表面に担持されたチタニアナノ粒子を得る事が出来る。
【0151】
[2-5]工程(C3)、及び(C4)
工程(C2)の代わりに、工程(C3)として、工程(B)で得られた分散液と、銀ナノ構造体、及び/又は銀化合物を混合する工程を採用する事が出来る。
【0152】
工程(C2)の代わりに、工程(C4)として、工程(B)で得られた分散液に、銀ナノ構造体、及び/又は銀化合物を添加して静置する工程を採用する事が出来る。
【0153】
使用する銀ナノ構造体、銀化合物は、工程(C1)と同様である。
【0154】
銀ナノ構造体、銀化合物の使用量は、工程(C1)と同様である。
【0155】
工程(C3)では、工程(B)で得られた分散液と、銀ナノ構造体、及び/又は銀化合物を混合する方法は、特に制限されず、常法に従う。工程(C3)は、工程(B)で得られた分散液に、銀ナノ構造体、及び/又は銀化合物を添加し、攪拌する。攪拌の方法は、特に制限されず、常法に従う。
【0156】
工程(C3)では、紫外光照射は、銀のチタニアナノ粒子への担持させ易さ、可視光触媒活性、反応速度、生産性、アスペクト比の制御性、低強度紫外線照射時の耐変色性、高強度紫外線照射時の視認性、及び紫外線停止環境での再透明化等の観点から、好ましくは、室温(20℃)未満で行い、より好ましくは、15℃以下で行う。紫外光照射の温度の下限値は、特に制限されず、常圧で反応する場合、好ましくは、0℃である。
【0157】
工程(C3)、及び(C4)は、空気雰囲気下に行っても良いし、嫌気下で行っても良い。工程(C3)、及び(C4)の嫌気下は、好ましくは、窒素雰囲気下、アルゴン雰囲気下等の不活性ガス雰囲気下等である。
【0158】
得られる分散液のpHは、添加する金属種や金属種の添加量に因って異なり、塗布性の観点から、好ましくは、1~5であり、より好ましくは、2~4である。
【0159】
この後、常法に依り、銀ナノ構造体担持チタニアナノ粒子を沈殿、及び遠心分離する事等により、銀ナノ構造体担持チタニアナノ粒子を回収する事が出来る。大量のアシルオキシ基が表面に存在するチタン原子に結合し、銀が表面に担持されたチタニアナノ粒子を得る事が出来る。
【0160】
[3]金属ナノ粒子担持チタニアナノ粒子分散液
本発明の金属担持チタニアナノ粒子分散液(特に、光触媒分散液、更に、可視光応答型光触媒分散液)は、工程(A)と、工程(B)と、工程(C1)、工程(C2)、工程(C3)、又は工程(C4)とを経た反応液を用い、必要に応じて、超音波分散等の分散工程を加える事に依り、更に均一な分散液と成る。
【0161】
従来の可視光応答型光触媒の分散液は、分散剤を使用しなければ、均一な分散液を得ることが出来なかった。
【0162】
本発明の金属担持チタニアナノ粒子分散液は、分散剤を加えても良い。
【0163】
本発明の金属担持チタニアナノ粒子分散液は、分散剤を加えなくても、通常の可視光応答型光触媒に比べて、遥かに分散性の良い分散液と成る。
【0164】
本発明の金属担持チタニアナノ粒子分散液は、分散性が良い結果、コーティングの耐クラック性に優れる。本発明の金属担持チタニアナノ粒子分散液は、分散剤を加えなくてもよい結果、緻密なチタニアのコーティングも可能に成り、塗布性、及び透明性にも優れる上に、可視光触媒活性にも優れる。
【0165】
金属担持チタニアナノ粒子分散液では、金属担持チタニアナノ粒子分散液の総量を100質量%として、主要な溶媒である水の含有量を、コーティングの容易さ、コーティングの膜性等の観点から、好ましくは、50質量%以上とし、より好ましくは、60質量%以上とする。
【0166】
本発明の金属担持チタニアナノ粒子を、反応液から取り出し、溶媒を変更する事も可能である。遠心分離、ろ過膜等に依り、反応液から水分を除去し、有機溶媒に置換しても良い。金属担持チタニアナノ粒子は、分散性、透明性等の観点から、乾燥させない事が好ましい。
【0167】
分散液に使用する有機溶媒は、好ましくは、アルコール等を用いる。アルコールは、好ましくは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等の炭素数1~6の脂肪族アルコール、α-テルピネオール等の非脂肪族アルコール;ブチルカルビトール(ジエチレングリコールモノブチルエーテル)、ヘキシレングリコール(2-メチル-2,4-ペンタンジオール)、エチレングリコール-2-エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコール系溶媒;1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等のジオール等である。
【0168】
分散液に使用する有機溶媒は、OH基を有さなくても、好ましくは、チタニア、及び他の溶媒(水、アルコール等)との親和性が有る有機溶媒を用いる。有機溶媒は、好ましくは、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジアセテート、テトラエチレングリコールジアセテート等を用いる。有機溶媒は、沸点等の観点から、より好ましくは、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等を用いる。
【0169】
金属担持チタニアナノ粒子分散液は、用途に応じて、好ましくは、粘度を調整し、塗料とする。塗料の塗工に、スピンコート、ディップコート、スプレー等に用いる場合、好ましくは、低粘度に調整する。塗料の塗工に、刷毛塗り、スキージ法等に用いる場合、好ましくは、それより粘度を高く調整する。塗料の塗工に、スクリーン印刷に用いる場合、好ましくは、更に粘度を高く調整し、流動性を抑制する。
【0170】
得られる塗膜は、緻密なコーティングを可能とする。
【0171】
塗膜を備える塗装製品は、特に制限されず、例えば、建材、建物外装、建物内装、窓枠、窓ガラス、各種レンズ、構造部材、住宅等建築設備、調理器具、繊維製品、家具、ディスプレイ、ディスプレイ保護フィルム、水回り部材、車両用照明灯のカバー及び窓ガラス、機械装置、又は物品の外装、防塵カバー及び塗装、表示機器、そのカバー、交通標識、各種表示装置、広告塔等の表示物、道路用及び鉄道用等の遮音壁、橋梁、ガードレールの外装及び塗装、トンネル内装及び塗装、碍子、太陽電池カバー、太陽熱温水器集熱カバー等外部で用いられる電子、電気機器の外装部、特に透明部材、ビニールハウス、温室等の外装等である。
【実施例0172】
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。
【0173】
本発明は、以下の具体的な実施例に限定されない。
【0174】
[実施例1]25wt%銀ナノ構造体(アスペクト比1.1)vsTiO 2
チタンテトライソプロポキシド142.1g(0.5mol)に、酢酸30g(0.5mol)を加え、60分撹拌し、水を538g加えた。この分散液は、チタンテトライソプロポキシドの濃度は0.625mol/L、酢酸の濃度は0.625mol/L、pHは2.2であった。この分散液は、半透明の沈殿が大量に発生したが、60分間撹拌した後に加熱を行った処、70℃で、沈殿が全て溶解した。この分散液において、無機酸の濃度、N、Cl、及びS元素の濃度は、何れも0mol/Lであった。
【0175】
その後、常圧(0.10MPa)で、85℃で、3時間撹拌した処、有機分散剤を使う事無く、半透明の均一なチタニア分散液が得られた。この分散液に、超音波分散を加えた処、粘度が低減され、透明性が増した。この分散液は、水の含有量が67質量%であり、pHは2.3であった。
【0176】
この分散液を乾燥し、チタニアナノ粒子を得た。このチタニアナノ粒子について、BET比表面積を測定した処、250m2/gであった。また、TEM観察を行った処、平均粒子径は約3nmであった。また得られたチタニアナノ粒子について、X線回折で結晶性を解析した処、アナターゼ型100%であり、他の結晶形は存在しなかった。
【0177】
この分散液を、水分計を用いて200℃で保持し質量減少が無くなるまで乾燥したチタニアナノ粒子のTG-DTAを、空気雰囲気下3℃/分の昇温条件で600℃まで昇温させて測定した処、200℃以上での質量減少は10質量%であった。この200℃以上での質量減少は、有機酸である酢酸が脱離する事に因る質量減少に相当する。遊離した酢酸は、200℃以下で殆ど揮発する事から、200℃以上における質量減少が10質量%である事が、チタニアナノ粒子表面にアシルオキシ基である大量のアセチル基が-OCOCH3の形でチタン原子と結合している事を示唆している。
【0178】
空気雰囲気下において、この分散液15g(5.2質量%)に、分散液中に含まれるチタニアナノ粒子(酸化チタン)に対して、金属重量ベースで銀が25質量%と成る様に、硝酸銀(I)を添加し、よく攪拌した後、紫外線ランプを15℃下、2時間照射する事で、類白色の分散液を得た。
【0179】
更に1週間程度放置しても、溶液の色に変化は無く、銀成分が安定して溶液中に存在している事が確認出来た。この時、溶液のpH=1.9であった。また、溶液中の銀の形態は、銀ナノ粒子(平均粒子径20nm、アスペクト比1.1)であった。
【0180】
この分散液を、厚さ0.7mmのガラスに、全固形分量が6mg/cm2と成る様に、塗布した基板を80℃で乾燥し、分光測色計(コニカミノルタCM-36sG)に依り測定した処、塗膜のヘイズは0.7であった。この事から、実施例1は透明性に優れる事が理解出来る。
【0181】
この時、ガラス基板上に形成された塗膜には、亀裂は確認出来なかった。この事から、実施例1は耐クラック性に優れる事が理解出来る。
【0182】
また、得られたガラス基板サンプル面を指で強くこすっても滑落が見られなかった。この事から、実施例1はチタニアナノ粒子とガラス表面の密着度が高い事が理解出来る。
【0183】
得られたガラス基板を、紫外線照射装置(Analytik Jena US UVP XX-15BLB)を用いて、1mW/cm2のUV-Aで照射した処、外観に変色は見られなかった。この事から、弱い強度の紫外線に対して、変色耐性が高い事が理解出来る。
【0184】
次に、得られたガラス基板を、紫外線照射装置(ウシオ電機卓上型紫外線照射装置UVC-1212)を用いて、500mW/cm2のUV-Cで、30分照射した処、ΔE*abは10.8と成り、目視でも変色が確認された。次に、紫外線の入らない室温環境で静置した後、ΔE*abは1.8と成り、人が目視で確認出来る目安である2を下回った。この事から、酸化チタンに対し、銀量が25wt%の時、高強度の紫外線照射に依る着色と、室温環境での静置に依る再透明化が起きる事が確認された。
【0185】
この分散液を、JISZ2801を参考にした方法(暗所、35℃、1時間)で、大腸菌(K-12)に対する抗菌試験を行った処、抗菌活性値は2.0以上であった。
【0186】
[実施例2]5wt%銀ナノ構造体(アスペクト比1.1)vsTiO 2
チタンテトライソプロポキシド142.1g(0.5mol)に、酢酸30g(0.5mol)を加え、60分撹拌し、水を538g加えた。この分散液は、チタンテトライソプロポキシドの濃度は0.625mol/L、酢酸の濃度は0.625mol/L、pHは2.2であった。この分散液は、半透明の沈殿が大量に発生したが、60分間撹拌した後に加熱を行った処、70℃で、沈殿が全て溶解した。この分散液において、無機酸の濃度、N、Cl、及びS元素の濃度は、何れも0mol/Lであった。
【0187】
その後、常圧(0.10MPa)で、85℃で、3時間撹拌した処、有機分散剤を使う事無く、半透明の均一なチタニア分散液が得られた。この分散液に、超音波分散を加えた処、粘度が低減され、透明性が増した。この分散液は、水の含有量が67質量%であり、pHは2.3であった。
【0188】
この分散液を乾燥し、チタニアナノ粒子を得た。このチタニアナノ粒子について、BET比表面積を測定した処、250m2/gであった。また、TEM観察を行った処、平均粒子径は約3nmであった。また得られたチタニアナノ粒子について、X線回折で結晶性を解析した処、アナターゼ型100%であり、他の結晶形は存在しなかった。
【0189】
この分散液を、水分計を用いて200℃で保持し質量減少が無くなるまで乾燥したチタニアナノ粒子のTG-DTAを、空気雰囲気下3℃/分の昇温条件で600℃まで昇温させて測定した処、200℃以上での質量減少は10質量%であった。この200℃以上での質量減少は、有機酸である酢酸が脱離する事に因る質量減少に相当する。遊離した酢酸は、200℃以下で殆ど揮発する事から、200℃以上における質量減少が10質量%である事が、チタニアナノ粒子表面にアシルオキシ基である大量のアセチル基が-OCOCH3の形でチタン原子と結合している事を示唆している。
【0190】
空気雰囲気下において、この分散液15g(5.2質量%)に、分散液中に含まれるチタニアナノ粒子(酸化チタン)に対して、金属重量ベースで銀が5質量%と成る様に、硝酸銀(I)を添加し、よく攪拌した後、紫外線ランプを15℃下、2時間照射する事で、類白色の分散液を得た。
【0191】
更に1週間程度放置しても、溶液の色に変化は無く、銀成分が安定して溶液中に存在している事が確認出来た。この時、溶液のpH=2.1であった。また、溶液中の銀の形態は、銀ナノ粒子(平均粒子径20nm、アスペクト比1.1)であった。
【0192】
この分散液を、厚さ0.7mmのガラスに、全固形分量が6mg/cm2と成る様に、塗布した基板を80℃で乾燥し、分光測色計(コニカミノルタCM-36sG)に依り測定した処、塗膜のヘイズは0.3であった。この事から、実施例2は透明性に優れる事が理解出来る。
【0193】
この時、ガラス基板上に形成された塗膜には、亀裂は確認出来なかった。この事から、実施例2は耐クラック性に優れる事が理解出来る。
【0194】
また、得られたガラス基板サンプル面を指で強くこすっても滑落が見られなかった。この事から、実施例2はチタニアナノ粒子とガラス表面の密着度が高い事が理解出来る。
【0195】
得られたガラス基板を、紫外線照射装置(Analytik Jena US UVP XX-15BLB)を用いて、1mW/cm2のUV-Aで照射した処、外観に変色は見られなかった。この事から、弱い強度の紫外線に対して変色耐性が高い事が理解出来る。
【0196】
次に、得られたガラス基板を、紫外線照射装置(ウシオ電機卓上型紫外線照射装置UVC-1212)を用いて、500mW/cm2のUV-Cで、30分照射した処、ΔE*abは2.5と成り、目視でも変色が確認された。次に、紫外線の入らない室温環境で静置した後、ΔE*abは1.4と成り、人が目視で確認出来る目安である2を下回った。この事から、酸化チタンに対し、銀量が5wt%の時、高強度の紫外線照射に依る着色と、室温環境での静置に依る再透明化が起きる事が確認された。
【0197】
この分散液を、JISZ2801を参考にした方法(暗所、35℃、1時間)で、大腸菌(K-12)に対する抗菌試験を行った処、抗菌活性値は2.0以上であった。
【0198】
[実施例3]0.1wt%銀ナノ構造体(アスペクト比1.1)vsTiO 2
チタンテトライソプロポキシド142.1g(0.5mol)に、酢酸30g(0.5mol)を加え、60分撹拌し、水を538g加えた。この分散液は、チタンテトライソプロポキシドの濃度は0.625mol/L、酢酸の濃度は0.625mol/L、pHは2.2であった。この分散液は、半透明の沈殿が大量に発生したが、60分間撹拌した後に加熱を行った処、70℃で、沈殿が全て溶解した。この分散液において、無機酸の濃度、N、Cl、及びS元素の濃度は、何れも0mol/Lであった。
【0199】
その後、常圧(0.10MPa)で、85℃で、3時間撹拌した処、有機分散剤を使う事無く、半透明の均一なチタニア分散液が得られた。この分散液に、超音波分散を加えた処、粘度が低減され、透明性が増した。この分散液は、水の含有量が67質量%であり、pHは2.3であった。
【0200】
この分散液を乾燥し、チタニアナノ粒子を得た。このチタニアナノ粒子について、BET比表面積を測定した処、250m2/gであった。また、TEM観察を行った処、平均粒子径は約3nmであった。また得られたチタニアナノ粒子について、X線回折で結晶性を解析した処、アナターゼ型100%であり、他の結晶形は存在しなかった。
【0201】
この分散液を、水分計を用いて200℃で保持し質量減少が無くなるまで乾燥したチタニアナノ粒子のTG-DTAを、空気雰囲気下3℃/分の昇温条件で600℃まで昇温させて測定した処、200℃以上での質量減少は10質量%であった。この200℃以上での質量減少は、有機酸である酢酸が脱離する事に因る質量減少に相当する。遊離した酢酸は、200℃以下で殆ど揮発する事から、200℃以上における質量減少が10質量%である事が、チタニアナノ粒子表面にアシルオキシ基である大量のアセチル基が-OCOCH3の形でチタン原子と結合している事を示唆している。
【0202】
空気雰囲気下において、この分散液15g(5.2質量%)に、分散液中に含まれるチタニアナノ粒子(酸化チタン)に対して、金属重量ベースで銀が0.1質量%と成る様に、硝酸銀(I)を添加し、よく攪拌した後、紫外線ランプを15℃下、2時間照射する事で、類白色の分散液を得た。
【0203】
更に1週間程度放置しても溶液の色に変化は無く、銀成分が安定して溶液中に存在している事が確認出来た。この時、溶液のpH=2.2であった。また、溶液中の銀の形態は、銀ナノ粒子(平均粒子径20nm、アスペクト比1.1)であった。
【0204】
この分散液を、厚さ0.7mmのガラスに、全固形分量が6mg/cm2と成る様に、塗布した基板を80℃で乾燥し、分光測色計(コニカミノルタCM-36sG)に依り測定した処、塗膜のヘイズは0.2であった。この事から、実施例3は透明性に優れる事が理解出来る。
【0205】
この時、ガラス基板上に形成された塗膜には、亀裂は確認出来なかった。この事から、実施例3は耐クラック性に優れることが理解出来る。
【0206】
また、得られたガラス基板サンプル面を指で強くこすっても滑落が見られなかった。この事から、実施例3はチタニアナノ粒子とガラス表面の密着度が高い事が理解出来る。
【0207】
得られたガラス基板を、紫外線照射装置(Analytik Jena US UVP XX-15BLB)を用いて、1mW/cm2のUV-Aで照射した処、外観に変色は見られなかった。この事から、弱い強度の紫外線に対して変色耐性が高い事が理解出来る。
【0208】
次に、得られたガラス基板を、紫外線照射装置(ウシオ電機卓上型紫外線照射装置UVC-1212)を用いて、500mW/cm2のUV-Cで、30分照射した処、ΔE*abは2.1と成り、目視でも変色が確認された。次に、紫外線の入らない室温環境で静置した後、ΔE*abは0.6と成り、人が目視で確認出来る目安である2を下回った。この事から、酸化チタンに対し、銀量が0.1wt%の時、高強度の紫外線照射に依る着色と、室温環境での静置に依る再透明化が起きる事が確認された。
【0209】
この分散液を、JISZ2801を参考にした方法(暗所、35℃、1時間)で、大腸菌(K-12)に対する抗菌試験を行った処、抗菌活性値は2.0以上であった。
【0210】
[実施例4]5wt%銀ナノワイヤ(アスペクト比100)vsTiO 2
チタンテトライソプロポキシド142.1g(0.5mol)に、酢酸30g(0.5mol)を加え、60分撹拌し、水を538g加えた。この分散液は、チタンテトライソプロポキシドの濃度は0.625mol/L、酢酸の濃度は0.625mol/L、pHは2.2であった。この分散液は、半透明の沈殿が大量に発生したが、60分間撹拌した後に加熱を行った処、70℃で、沈殿が全て溶解した。この分散液において、無機酸の濃度、N、Cl、及びS元素の濃度は、何れも0mol/Lであった。
【0211】
その後、常圧(0.10MPa)で、85℃で、3時間撹拌した処、有機分散剤を使う事無く、半透明の均一なチタニア分散液が得られた。この分散液に、超音波分散を加えた処、粘度が低減され、透明性が増した。この分散液は、水の含有量が67質量%であり、pHは2.3であった。
【0212】
この分散液を乾燥し、チタニアナノ粒子を得た。このチタニアナノ粒子について、BET比表面積を測定した処、250m2/gであった。また、TEM観察を行った処、平均粒子径は約3nmであった。また得られたチタニアナノ粒子について、X線回折で結晶性を解析したところ、アナターゼ型100%であり、他の結晶形は存在しなかった。
【0213】
この分散液を、水分計を用いて200℃で保持し質量減少が無くなるまで乾燥したチタニアナノ粒子のTG-DTAを、空気雰囲気下3℃/分の昇温条件で600℃まで昇温させて測定した処、200℃以上での質量減少は10質量%であった。この200℃以上での質量減少は、有機酸である酢酸が脱離する事に因る質量減少に相当する。遊離した酢酸は、200℃以下で殆ど揮発する事から、200℃以上における質量減少が10質量%である事が、チタニアナノ粒子表面にアシルオキシ基である大量のアセチル基が-OCOCH3の形でチタン原子と結合している事を示唆している。
【0214】
空気雰囲気下において、この分散液15g(5.2質量%)に、分散液中に含まれるチタニアナノ粒子(酸化チタン)に対して、金属重量ベースで銀が5質量%と成る様に、既報を参考に合成されたアスペクト比100の銀ナノロッドを添加し、よく攪拌した後、紫外線ランプを15℃下、2時間照射する事で、類白色の分散液を得た。
【0215】
更に1週間程度放置しても溶液の色に変化は無く、銀成分が安定して溶液中に存在している事が確認出来た。この時、溶液のpH=2.3であった。また、溶液中の銀の形態は、銀ナノワイヤ(平均短軸長50nm、アスペクト比100)であった。
【0216】
この分散液を、厚さ0.7mmのガラスに、全固形分量が6mg/cm2と成る様に、塗布した基板を80℃で乾燥し、分光測色計(コニカミノルタCM-36sG)に依り測定した処、塗膜のヘイズは0.1であった。この事から、実施例4は透明性に優れる事が理解出来る。
【0217】
この時、ガラス基板上に形成された塗膜には、亀裂は確認出来なかった。この事から、実施例4は耐クラック性に優れることが理解出来る。
【0218】
また、得られたガラス基板サンプル面を指で強くこすっても滑落が見られなかった。この事から、実施例4はチタニアナノ粒子とガラス表面の密着度が高い事が理解出来る。
【0219】
得られたガラス基板を、紫外線照射装置(Analytik Jena US UVP XX-15BLB)を用いて、1mW/cm2のUV-Aで照射した処、外観に変色は見られなかった。この事から、弱い強度の紫外線に対して変色耐性が高い事が理解出来る。
【0220】
次に、得られたガラス基板を、紫外線照射装置(ウシオ電機卓上型紫外線照射装置UVC-1212)を用いて、500mW/cm2のUV-Cで、30分照射した処、ΔE*abは2.4と成り、目視でも変色が確認された。次に、紫外線の入らない室温環境で静置した後、ΔE*abは0.6と成り、人が目視で確認できる目安である2を下回った。この事から、酸化チタンに対し、アスペクト比100の銀ナノワイヤが担持されている時、高強度の紫外線照射に依る着色と、室温環境での静置に依る再透明化が起きる事が確認された。
【0221】
この分散液を、JISZ2801を参考にした方法(暗所、35℃、1時間)で、大腸菌(K-12)に対する抗菌試験を行った処、抗菌活性値は2.0以上であった。
【0222】
[比較例1]5wt%銀ナノワイヤ(アスペクト比1,000)vsTiO 2
チタンテトライソプロポキシド142.1g(0.5mol)に、酢酸30g(0.5mol)を加え、60分撹拌し、水を538g加えた。この分散液は、チタンテトライソプロポキシドの濃度は0.625mol/L、酢酸の濃度は0.625mol/L、pHは2.2であった。この分散液は、半透明の沈殿が大量に発生したが、60分間撹拌した後に加熱を行った処、70℃で、沈殿が全て溶解した。この分散液において、無機酸の濃度、N、Cl、及びS元素の濃度は、何れも0mol/Lであった。
【0223】
その後、常圧(0.10MPa)で、85℃で、3時間撹拌した処、有機分散剤を使う事無く、半透明の均一なチタニア分散液が得られた。この分散液に、超音波分散を加えた処、粘度が低減され、透明性が増した。この分散液は、水の含有量が67質量%であり、pHは2.3であった。
【0224】
この分散液を乾燥し、チタニアナノ粒子を得た。このチタニアナノ粒子について、BET比表面積を測定した処、250m2/gであった。また、TEM観察を行った処、平均粒子径は約3nmであった。また得られたチタニアナノ粒子について、X線回折で結晶性を解析した処、アナターゼ型100%であり、他の結晶形は存在しなかった。
【0225】
この分散液を、水分計を用いて200℃で保持し質量減少が無くなるまで乾燥したチタニアナノ粒子のTG-DTAを、空気雰囲気下3℃/分の昇温条件で600℃まで昇温させて測定した処、200℃以上での質量減少は10質量%であった。この200℃以上での質量減少は、有機酸である酢酸が脱離する事に因る質量減少に相当する。遊離した酢酸は、200℃以下で殆ど揮発する事から、200℃以上における質量減少が10質量%である事が、チタニアナノ粒子表面にアシルオキシ基である大量のアセチル基が-OCOCH3の形でチタン原子と結合している事を示唆している。
【0226】
空気雰囲気下において、この分散液15g(5.2質量%)に、分散液中に含まれるチタニアナノ粒子(酸化チタン)に対して、金属重量ベースで銀が5質量%と成る様に、既報を参考に合成されたアスペクト比1,000の銀ナノロッドを添加し、よく攪拌した後、紫外線ランプを15℃下、2時間照射する事で、類白色の分散液を得た。
【0227】
更に1週間程度放置しても溶液の色に変化は無く、銀成分が安定して溶液中に存在している事が確認できた。この時、溶液のpH=2.3であった。また、溶液中の銀の形態は、銀ナノワイヤ(平均短軸長50nm、アスペクト比1,000)であった。
【0228】
この分散液を、厚さ0.7mmのガラスに、全固形分量が6mg/cm2と成る様に、塗布した基板を80℃で乾燥し、分光測色計(コニカミノルタCM-36sG)に依り測定した処、塗膜のヘイズは0.2であった。この事から、比較例3は透明性に優れることが理解出来る。
【0229】
この時、ガラス基板上に形成された塗膜には亀裂は確認出来なかった。この事から、比較例3は耐クラック性に優れる事が理解出来る。
【0230】
また、得られたガラス基板サンプル面を指で強くこすっても滑落が見られなかった。この事から、比較例3はチタニアナノ粒子とガラス表面の密着度が高い事が理解出来る。
【0231】
得られたガラス基板を、紫外線照射装置(Analytik Jena US UVP XX-15BLB)を用いて、1mW/cm2のUV-Aで照射した処、外観に変色は見られなかった。この事から、弱い強度の紫外線に対して変色耐性が高い事が理解できる。
【0232】
次に、得られたガラス基板を、紫外線照射装置(ウシオ電機卓上型紫外線照射装置UVC-1212)を用いて、500mW/cm2のUV-Cで、30分照射した処、ΔE*abは0.0と成り、目視では変色の確認ができなかった。この事から、酸化チタンに対し、アスペクト比1,000の銀ナノワイヤが担持されている時、高強度の紫外線照射による着色が起きない事が確認された。
【0233】
[比較例2]従来技術(表面にアシル基は存在しないチタニアナノ粒子)
チタニアナノ粒子ST-01(石原産業(株)製、比表面積300m2/g、比表面積から計算した平均粒子径5nm、表面にアシル基は存在しない)10gに、酢酸30gと水160gを加えた分散液に対して、金属重量ベースで銀が5質量%と成る様に、硝酸銀(I)を添加し、よく攪拌した後、紫外線ランプを15℃下、2時間照射する事で類白色の分散液を得た。
【0234】
この溶液を1週間程度放置した処、沈殿が見られた。この事から、溶液が不安定である事が理解された。この時、溶液のpH=2.3であった。
【0235】
次に、この懸濁液を、厚さ0.7mmのガラスに塗布(スピンコート)した基板を80℃で乾燥し、分光測色計(コニカミノルタCM-36sG)に依り測定した処、塗膜のヘイズは92.5であった。
【0236】
また、得られたガラス基板サンプル面を、指で軽くこするとチタニアナノ粒子が滑落した。この事から、比較例4は、実施例1に比べて、チタニアナノ粒子ST-01とガラス表面の密着度が低い事が理解できる。
【0237】
[産業上の利用可能性]
本発明は、透明、且つ、一般的な屋内環境に存在する太陽光の紫外線強度で変色せず、紫外線強度を超える強さで照射する事で、塗膜が呈色し、確認を行う事が出来、その呈色が一定時間後に退色し、再び透明と成る事で意匠性を損なう事の無い組成物を提供する事が可能と成る。