(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136030
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】ケーブル、ケーブル装置、及びアンテナ装置
(51)【国際特許分類】
H01B 7/06 20060101AFI20240927BHJP
H01P 3/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H01B7/06
H01P3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046983
(22)【出願日】2023-03-23
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、支出負担行為担当官、総務省大臣官房会計課企画官、研究テーマ「車載ハーネスの軽量化を実現する有線/無線連携通信技術の研究開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】393031586
【氏名又は名称】株式会社国際電気通信基礎技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100115749
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 英和
(74)【代理人】
【識別番号】100121223
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 悟道
(72)【発明者】
【氏名】清水 聡
【テーマコード(参考)】
5G311
5J014
【Fターム(参考)】
5G311BA01
5G311BA02
5G311BA04
5G311BB01
5G311BC01
5J014AA01
(57)【要約】
【課題】導電性のケーブルの長手方向の長さを変更することができなかった。
【解決手段】ケーブル装置1は、高周波信号が流れるケーブル10であって、導電性及び長手方向の伸縮性を有する導電性ケーブル11、及び導電性ケーブル11の両端に接続された第1及び第2の端子12a,12bを有するケーブル10と、ケーブル10を支持する支持部20とを備える。また、支持部20は、支持しているケーブル10の長さを2以上の長さに変更可能である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波信号が流れるケーブルであって、
導電性及び長手方向の伸縮性を有する導電性ケーブルを備えたケーブル。
【請求項2】
前記導電性ケーブルは、導電性及び伸縮性を有する樹脂によって構成されている、請求項1記載のケーブル。
【請求項3】
前記導電性ケーブルは、
長手方向の伸縮性を有する絶縁性の線状部材と、
前記線状部材の外周を被覆する導電性及び伸縮性を有する樹脂層と、を備える、請求項1記載のケーブル。
【請求項4】
前記導電性ケーブルに接続された第1及び第2の端子をさらに備えた、請求項1記載のケーブル。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか記載のケーブルと、
前記ケーブルを支持する支持部と、を備え、
前記支持部は、2以上の長さの前記ケーブルを支持可能である、ケーブル装置。
【請求項6】
請求項5記載のケーブル装置である1以上のアンテナエレメントを有するアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮性及び導電性を有するケーブル等に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性を有するケーブルを用いて、通信などに用いられる高周波信号を伝送することがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
導電性のケーブルに高周波信号を流す場合に、そのケーブルの長さと、高周波信号の周波数とが所定の関係になると、高周波信号がケーブルから漏洩しやすくなる。例えば、ケーブルの長さが高周波信号の半波長の整数倍に近くなった場合に、そのような漏洩が起きやすくなる。
【0004】
一方、高周波信号の電波を送受信するためのアンテナとしてケーブルを用いることも考えられるが、長さの固定されているケーブルでは、送受信できる電波の波長も固定されることになり、他の波長の電波を送受信することができない。
【0005】
本発明は、上記課題の少なくとも1つを解決するためになされたものであり、長手方向の長さを変更することができるケーブル等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様によるケーブルは、高周波信号が流れるケーブルであって、導電性及び長手方向の伸縮性を有する導電性ケーブルを備えたものである。
このような構成により、ケーブルを長手方向に延ばすことによって、長手方向の長さを変更することができ、例えば、ケーブルの長さが高周波信号の半波長の整数倍付近とならないようにすることによって、ケーブルから高周波信号が漏洩することを防止することができる。また、例えば、ケーブルの長さが高周波信号の半波長の整数倍に近くなるようにすることによって、高周波信号の電波を送受信するためのアンテナとしてケーブルを用いることができる。
【0007】
また、本発明の一態様によるケーブルでは、導電性ケーブルは、導電性及び伸縮性を有する樹脂によって構成されていてもよい。
【0008】
また、本発明の一態様によるケーブルでは、導電性ケーブルは、長手方向の伸縮性を有する絶縁性の線状部材と、線状部材の外周を被覆する導電性及び伸縮性を有する樹脂層と、を備えてもよい。
【0009】
また、本発明の一態様によるケーブルでは、導電性ケーブルに接続された第1及び第2の端子をさらに備えてもよい。
このような構成により、第1及び第2の端子を介して、ケーブルを電子機器や他の配線等と接続することができる。
【0010】
また、本発明の一態様によるケーブル装置は、ケーブルと、ケーブルを支持する支持部と、を備え、支持部は、2以上の長さのケーブルを支持可能である。
このような構成により、支持部を用いることによって、例えば、ケーブルを所望の長さで支持することができるようになる。
【0011】
また、本発明の一態様によるアンテナ装置は、ケーブル装置である1以上のアンテナエレメントを有するものである。
このような構成により、ケーブル装置におけるケーブルの長さを変更することによって、例えば、所望の周波数の電波を送受信することができるようになる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によるケーブル等によれば、ケーブルの長手方向の長さを変更することができる。そのため、例えば、ケーブルの長さが高周波信号の半波長の整数倍付近とならないようにすることによって、ケーブルから高周波信号が漏洩することを防止することができる。また、例えば、ケーブルの長さが高周波信号の半波長の整数倍に近くなるようにすることによって、高周波信号の電波を送受信するためのアンテナエレメントとしてケーブルを用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】同実施の形態によるケーブル装置の一例を示す図
【
図3】同実施の形態によるケーブル装置の一例を示す図
【
図4】同実施の形態によるケーブル装置の一例を示す図
【
図5】同実施の形態によるアンテナ装置であるケーブル装置の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明によるケーブル、ケーブル装置、及びアンテナ装置について、実施の形態を用いて説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素は同一または相当するものであり、再度の説明を省略することがある。本実施の形態によるケーブルは、高周波信号を流すためのケーブルであって、長手方向の伸縮性を有する導電性のケーブルである。
【0015】
図1は、本実施の形態によるケーブル10を示す図である。
図1(a)において、ケーブル10は、導電性ケーブル11と、第1及び第2の端子12a,12bとを備える。なお、第1及び第2の端子12a,12bを区別しない場合には、単に端子12と呼ぶこともある。
【0016】
導電性ケーブル11は、高周波信号が流れるものであり、導電性及び長手方向の伸縮性を有している。高周波信号の周波数は特に限定されないが、例えば、10kHz以上の周波数であってもよく、10MHz以上の周波数であってもよい。導電性ケーブル11は伸縮性を有しているため、
図1(a)、
図1(b)で示されるように、長手方向の長さを変化させることができる。
【0017】
導電性ケーブル11は、材料自体が伸縮性を有する線状の部材であることが好適である。従来、伸縮性を有する導電性の伸縮ケーブルとして、カールコードや、コイル状の導体を押し倒して平坦に形成したもの、導体を平坦な蛇行形状に形成したものなどが用いられている(例えば、特許文献1参照)。そのような伸縮ケーブルでは、ケーブルを構成する線状の部材自体は、伸縮性を有しておらず、伸縮性のない線状の部材をコイル形状や、蛇行形状にすることによって、伸縮性を有するようにしている。一方、本実施の形態による導電性ケーブル11は、素材自体が伸縮性を有している点で、そのような従来の伸縮ケーブルと異なっている。なお、コイル状の伸縮ケーブルでは、高周波信号が流れにくく、さらに径が太くなるという問題があるが、本実施の形態の導電性ケーブル11は、コイル状ではなく線状であるため、そのような問題は生じない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2022-152407号公報
【特許文献2】特開2014-229543号公報
【特許文献3】特開2017-073364号公報
【特許文献4】特開2022-118755号公報
【0019】
導電性ケーブル11の構成は特に限定されないが、導電性ケーブル11は、例えば、
図1(c)の断面図で示されるように、導電性及び伸縮性を有する樹脂31によって構成されてもよい。また、導電性ケーブル11は、例えば、
図1(d)の断面図で示されるように、長手方向の伸縮性を有する絶縁性の線状部材32と、その線状部材32の外周を被覆する導電性及び伸縮性を有する樹脂層33とを備えてもよい。なお、
図1(c)、
図1(d)は、導電性ケーブル11の長手方向に垂直な面における断面図である。
【0020】
導電性及び伸縮性を有する樹脂31及び樹脂層33は特に限定されないが、例えば、金属やカーボンなどの導電性の粒子を含む、伸縮性を有する樹脂であってもよい。より具体的には、上記特許文献2~4に記載されている導電性樹脂や導電性ペーストなどが導電性及び伸縮性を有する樹脂31及び樹脂層33として用いられてもよい。伸縮性を有する線状部材32の材料は特に限定されないが、例えば、ゴムや、伸縮性を有する樹脂などであってもよい。導電性ケーブル11の断面は、通常、
図1(c)、
図1(d)で示されるように円形状であるが、それ以外の形状(例えば、三角形状、矩形状などの多角形状など)であってもよい。また、樹脂層33は、
図1(d)で示されるように、線状部材32の外周面の全周を被覆していることが好適であるが、そうではなく、線状部材32の外周面の周方向の一部のみを被覆するものであってもよい。
【0021】
第1の端子12a、及び第2の端子12bは、導電性ケーブル11に接続された端子である。例えば、第1の端子12a、及び第2の端子12bは、それぞれ導電性ケーブル11の両端に接続されてもよく、または、他の箇所に接続されてもよい。端子12は、例えば、導電性ケーブル11に接続される接続部と、その接続部に接続された端子部とを有していてもよい。接続部は、一例として、圧着によって導電性ケーブル11に接続されてもよく、その他の方法によって導電性ケーブル11に接続されてもよい。また、端子部は、
図1(a)などで示されるように、丸孔を有する丸形であってもよく、Y形などの他の形状であってもよい。
【0022】
本実施の形態では、導電性ケーブル11が裸線である場合について主に説明するが、ケーブル10は、導電性ケーブル11の外周を被覆する絶縁被覆をさらに備えていてもよい。この場合には、絶縁被覆も長手方向の伸縮性を有していることが好適である。その絶縁被覆の材料は特に限定されないが、例えば、ゴムや、伸縮性を有する樹脂などであってもよい。
【0023】
本実施の形態の伸縮性を有するケーブル10は、例えば、高周波信号を伝送するための配線として用いられてもよく、または、電波を送受信するためのアンテナエレメントとして用いられてもよい。
【0024】
また、ケーブル10は、例えば、支持部20によって支持されてもよい。支持部20は、2以上の長さのケーブル10を支持可能である。すなわち、支持部20は、2以上の伸縮の程度のケーブル10を支持可能である。
図2(a)は、支持部20の一例を示す図である。
図2(a)で示される支持部20は、図中の両矢印の方向である長手方向に伸縮可能な伸縮機構21と、伸縮機構21の両端に設けられた、ケーブル10を保持するための保持部22a,22bとを有していてもよい。なお、保持部22a,22bを区別しない場合には、単に保持部22と呼ぶこともある。後述する保持部22c~22fについても同様であるとする。伸縮機構21は、一例として、テレスコピックパイプであってもよい。テレスコピックパイプである伸縮機構21は、例えば、内径の異なる複数のパイプ状部材が互いに接続され、伸縮可能となっているものであってもよい。そして、パイプ状部材の挿入の程度が変更されることによって、伸縮機構21の長手方向の長さが変更されてもよい。伸縮機構21の長さは、例えば、最短の長さから最長の長さまでの範囲内の任意の長さにおいて固定できてもよく、その範囲内のあらかじめ決められた複数の長さにおいて固定できてもよい。伸縮機構21に取り付けられた保持部22a,22bは、一例として、同じ方向に突出するように設けられたねじ軸であってもよい。
【0025】
図2(b)は、ケーブル10と、そのケーブル10を支持している、
図2(a)で示される支持部20とを有するケーブル装置1の一例を示す図である。
図2(b)で示されるように、保持部22のねじ軸が、ケーブル10の端子12の丸孔に通されることによって、各端子12が保持部22で保持されてもよい。すなわち、支持部20は、ケーブル10を端子12の位置で支持してもよい。また、一例として、各端子12がボルト23によって保持部22に固定されてもよい。なお、保持部22で保持されている端子12には、他の配線が接続されてもよい。より具体的には、他の配線の端子と、ケーブル10の端子12とが、保持部22において、一緒にボルト23で固定されてもよい。
図2(b)で示されるケーブル装置1では、支持部20の伸縮機構21を長手方向に伸縮させることによって、支持しているケーブル10の長手方向の長さ(伸縮の程度)を変更することができる。
【0026】
なお、ケーブル10が配線として用いられる場合であって、支持部20が導電性を有している場合には、両者は絶縁されていることが好適である。また、ケーブル10がアンテナエレメントとして用いられる場合には、支持部20は、絶縁性の材料によって構成されることが好適である。後述するケーブル装置1についても同様である。
【0027】
図3(a)は、支持部20の他の一例を示す図である。
図3(a)で示される支持部20は、一方向に延びる棒状部材24と、その棒状部材24に設けられた複数の保持部22c~22fとを有していてもよい。棒状部材24に設けられた保持部22の個数は、3個以上であれば、その個数を問わない。棒状部材24は、一例として、四角柱形状の棒状部材であってもよい。複数の保持部22は、一例として、棒状部材24の長手方向に延びる1つの側面に、同じ方向に突出するように設けられたねじ軸であってもよい。複数の保持部22は、2個の保持部22の間の長さが異なるように配置されていることが好適である。
図3(a)では、例えば、保持部22cと保持部22dとの距離、保持部22cと保持部22eとの距離、保持部22cと保持部22fとの距離がそれぞれ異なるように保持部22c~22fが配置されている。
【0028】
図3(b)は、ケーブル10と、そのケーブル10を支持している、
図3(a)で示される支持部20とを有するケーブル装置1の一例を示す図である。
図3(b)においても、
図2(b)と同様に、保持部22のねじ軸が、ケーブル10の端子12の丸孔に通されることによって、各端子12が保持部22で保持されてもよい。
図3(b)で示されるケーブル装置1では、例えば、端子12bが保持部22dや保持部22fで保持されるようにすることによって、支持するケーブル10の長手方向の長さを変更することができる。
【0029】
図4(a)、及び
図4(b)はそれぞれ、支持部20の他の一例を示す平面図、及び背面図である。
図4(a)、
図4(b)で示される支持部20は、一方向に延びる板状部材25を有していてもよい。板状部材25は、一例として、直方体形状であってもよい。その板状部材25の長手方向に延びる1つの側面には、溝部26が設けられている。溝部26は、板状部材25の長手方向に延びており、溝部26の設けられている面と直交する面に、複数の開口部27a~27dが設けられている。開口部27a~27dを区別しない場合には、開口部27と呼ぶこともある。板状部材25に設けられた開口部27の個数は、3個以上であれば、その個数を問わない。複数の開口部27は、2個の開口部27の間の溝部26の長さが異なるように配置されていることが好適である。
図4(a)では、例えば、開口部27aと開口部27bとの距離、開口部27aと開口部27cとの距離、開口部27aと開口部27dとの距離がそれぞれ異なるように開口部27a~27dが配置されている。
【0030】
図4(c)は、ケーブル10と、そのケーブル10を支持している、
図4(a)、
図4(b)で示される支持部20とを有するケーブル装置1の一例を示す図である。
図4(c)で示されるケーブル装置1では、各端子12の接続部の直径が、溝部26の各開口部27の直径よりも大きいものとする。その結果、各端子12が、開口部27a,27cの位置で保持されることになる。そのため、
図4で示される支持部20では、開口部27が、端子12を保持する保持部であると考えてもよい。
図4(c)で示されるケーブル装置1では、例えば、端子12bが開口部27bや開口部27dで保持されるようにすることによって、支持するケーブル10の長手方向の長さを変更することができる。なお、
図4(c)で示されるようにケーブル10を溝部26に挿入した後に、板状部材25の溝部26が設けられている面に、他の板状部材が着脱可能に固定されることによって、ケーブル10が溝部26から外れないようにしてもよい。この場合には、支持部20は、板状部材25と、板状部材25に対して着脱可能に固定される他の板状部材とを有していてもよい。
【0031】
なお、本実施の形態では、
図2~
図4で示される3個の支持部20の例について説明したが、結果として、2以上の長さ(伸縮の程度)のケーブル10を支持することができるのであれば、支持部20の構成はこれらに限定されないことは言うまでもない。
【0032】
次に、本実施の形態によるケーブル装置1の使用方法について、簡単に説明する。まず、ケーブル装置1を配線として用いる場合について説明する。この場合には、ケーブル10を流れる高周波信号の波長をλとすると、例えば、ケーブル10の長さが概ねλ/2の整数倍付近にならないように、ケーブル10の長さを調整してもよい。この場合には、ケーブル装置1は、波長がλである干渉波の影響も受けにくくなる。概ねλ/2の整数倍付近とは、一例として、λ/2に近い値の整数倍を基準として、λ/2の数パーセント程度の誤差を許容した範囲内であってもよい。λ/2に近い値とは、一例として、λ/2を基準として、λ/2の数パーセント程度の誤差を許容した範囲内の値であってもよい。そのため、ケーブル10の長さが概ねλ/2の整数倍付近にならないように、例えば、
図2で示される支持部20では、伸縮機構21の長手方向の長さを調整してもよく、
図3、
図4で示される支持部20では、端子12bが保持される保持部22や開口部27を選択してもよい。なお、ケーブル10を流れる高周波信号の波長λは、特に明記しない場合には、空中の波長ではなく、そのケーブル10中の波長であるとする。通常、ケーブル10中の波長は、空中の波長に短縮率(例えば、0.95などの1より小さい値)を乗算した値となる。短縮率は、通常、ケーブル10の材料に応じて決まる値である。
【0033】
なお、端子12に、ケーブル10と同じ電気的特性を有する他のケーブルが接続された場合には、他のケーブルを含めたケーブルの長さを考慮する必要がある。この場合には、例えば、他のケーブルと接続されたケーブル10に所望の高周波信号を流した際に、共鳴が起こっているかどうかを確認し、共鳴が起こっているときには、ケーブル10の長さを変更するようにしてもよい。この場合には、例えば、試行錯誤によって、共鳴が起こらないように、ケーブル10の長さを変更してもよい。共鳴が起こっているかどうかは、例えば、ケーブル10から放射される電波を測定することによって確認してもよい。この電波の測定は、例えば、スペクトラムアナライザなどを用いて行ってもよい。
【0034】
次に、ケーブル装置1をアンテナエレメントとして用いる場合について説明する。ここで、まず、ケーブル装置1をダイポールアンテナのアンテナエレメントとして用いる場合について説明する。この場合には、空中の高周波信号の波長をλとすると、例えば、
図2(b)で示される2個のケーブル装置1において、それぞれケーブル10の長さがλ/4に短縮率(例えば、0.95など)を乗算した長さとなるように調整する。そして、2個のケーブル装置1を連続するように一直線上に並べて、中心側の2個の端子12を給電点とすることによって、波長λの電波を送受信することができるようになる。この場合には、この2個のケーブル装置1が、それぞれアンテナエレメントとして用いられることになる。すなわち、2個のケーブル装置1である2個のアンテナエレメントを有するアンテナ装置が構成されたことになる。従来、伸縮性を有しない棒状のアンテナエレメントを切断することによって、送受信される電波の空中の波長が短くなるように調整することは行われていたが、電波の空中の波長が長くなるように調整することはできなかった。一方、本実施の形態によるアンテナ装置では、ケーブル10の長さを伸ばすことによって、送受信される電波の空中の波長が長くなるように調整することも可能である。
【0035】
また、アンテナ装置は、例えば、
図5(a)で示される支持部20を用いて構成されてもよい。
図5(a)で示される支持部20は、
図4(a)で示される支持部20と同様に、溝部26が設けられた板状部材25を有していてもよい。
図5(a)の支持部20では、溝部26にケーブル10が配置されることによって、異なる波長に対応した折り返しダイポールアンテナが構成されるように、溝部26が形成されているものとする。また、開口部27e,27fは、折り返しダイポールアンテナの給電点の位置に設けられていてもよい。そして、例えば、
図5(b)で示されるように溝部26に挿入されたケーブル10を有するケーブル装置1によって、空中の波長が2×L1/短縮率である電波を送受信するための折り返しダイポールアンテナが構成されることになる。また、例えば、
図5(c)で示されるように溝部26に挿入されたケーブル10を有するケーブル装置1によって、空中の波長が2×L2/短縮率である電波を送受信するための折り返しダイポールアンテナが構成されることになる。この場合には、
図5(b)、
図5(c)で示されるケーブル装置1であるアンテナエレメントを有するアンテナ装置が構成されることになる。ケーブル装置1がアンテナエレメントとして用いられる場合には、上記したように、支持部20は、絶縁性の材料によって構成されることが好適である。
【0036】
このように、アンテナ装置は、ケーブル装置1である1以上のアンテナエレメントを有するものであってもよい。ケーブル装置1である1以上のアンテナエレメントを有するアンテナ装置は、上記したように、ダイポールアンテナや、折り返しダイポールアンテナなどであってもよく、八木アンテナなどのその他のアンテナ装置であってもよい。八木アンテナのリフレクタ、ラジエータ、ディレクタがケーブル装置1であるアンテナエレメントによって構成されている場合には、例えば、送受信する電波の空中の波長の変更に応じて、各アンテナエレメントの長さと共に、リフレクタ、ラジエータ、ディレクタの間隔も変更してもよい。
【0037】
以上のように、本実施の形態によるケーブル10によれば、ケーブル10が伸縮性を有しているため、その伸縮の程度を変更することによってケーブル10の長さを変更することができる。したがって、例えば、ケーブル10を配線に用いる場合には、高周波信号が漏洩しにくくなるケーブル10の長さにすることができる。また、例えば、ケーブル10をアンテナエレメントとして用いる場合には、送受信する電波の波長に応じたケーブル10の長さにすることもできる。したがって、より広い周波数帯に対応することができるアンテナ装置を構成することができる。また、本実施の形態によるケーブル装置1によれば、ケーブル10が2以上の長さとなるように、ケーブル10を支持部20によって支持することができる。したがって、支持部20によって支持されているケーブル10を、例えば、配線やアンテナエレメントとして用いることができる。
【0038】
なお、本実施の形態では、ケーブル10が支持部20によって支持される場合について主に説明したが、そうでなくてもよい。ケーブル10は、例えば、ケーブル10を用いた配線の行われる箇所に設けられた保持部や、電子機器の端子等に直接、取り付けられてもよい。
【0039】
また、本実施の形態では、ケーブル10が2個の端子12を有する場合について主に説明したが、そうでなくてもよい。例えば、ケーブル10は、端子12を有していなくてもよい。この場合には、例えば、導電性ケーブル11自体が、ねじ軸である保持部にボルトで固定されたり、保持部などに結び付けられたり、接続対象にはんだ付けされたりすることによって、ケーブル10が他のケーブルや他の機器等に接続されてもよい。導電性ケーブル11が直接、保持部などで保持される場合には、一例として、導電性ケーブル11の両端部が保持されてもよい。
【0040】
また、以上の実施の形態は、本発明を具体的に実施するための例示であって、本発明の技術的範囲を制限するものではない。本発明の技術的範囲は、実施の形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲の文言上の範囲及び均等の意味の範囲内での変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0041】
1 ケーブル装置
10 ケーブル
11 導電性ケーブル
12 端子
12a 第1の端子
12b 第2の端子
20 支持部