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特開2024-136031電波反射体、及び電波反射体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136031
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】電波反射体、及び電波反射体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01Q 15/14 20060101AFI20240927BHJP
   H01P 11/00 20060101ALI20240927BHJP
   C09D 5/24 20060101ALI20240927BHJP
   C09D 5/33 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H01Q15/14 A
H01Q15/14 Z
H01P11/00
C09D5/24
C09D5/33
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046984
(22)【出願日】2023-03-23
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度 国立研究開発法人情報通信研究機構、「革新的情報通信技術研究開発委託研究/Intelligent Reflecting Surfaceによるプロアクティブな無線空間制御と耐干渉型空間多重伝送技術の研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】393031586
【氏名又は名称】株式会社国際電気通信基礎技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100115749
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 英和
(74)【代理人】
【識別番号】100121223
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 悟道
(72)【発明者】
【氏名】清水 聡
(72)【発明者】
【氏名】矢野 一人
(72)【発明者】
【氏名】菅 宣理
(72)【発明者】
【氏名】坂野 寿和
【テーマコード(参考)】
4J038
5J020
【Fターム(参考)】
4J038DN001
4J038HA036
4J038HA066
4J038KA08
4J038KA12
4J038KA20
4J038NA19
4J038NA20
4J038PB09
4J038PB10
4J038PC10
5J020AA03
5J020BA03
5J020BD04
5J020CA01
5J020DA09
(57)【要約】
【課題】直進性の強い電波を所望の複数の方向に反射させることができる電波反射体を提供する。
【解決手段】電波反射体1は、形状を変更可能な基体10と、電波を反射する反射面20を形成するための導電性及び伸縮性を有する膜21とを備え、基体10における少なくとも反射面20に対応する部分は塑性変形可能である。このようにして、反射面20の形状を所望の形状に変更することによって、電波を所望の複数の方向に反射させることができるようになる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
形状を変更可能な基体を備え、
前記基体の表面に、電波を反射する反射面が設けられている、電波反射体。
【請求項2】
前記基体における少なくとも前記反射面に対応する部分は、塑性変形可能である、請求項1記載の電波反射体。
【請求項3】
前記基体における少なくとも前記反射面の形成される部分は導電性を有している、請求項1または請求項2記載の電波反射体。
【請求項4】
前記反射面を形成するための導電性を有する膜をさらに備えた、請求項1または請求項2記載の電波反射体。
【請求項5】
前記膜は、導電性を有する塗料の塗布膜である、請求項4記載の電波反射体。
【請求項6】
前記膜は、導電性を有する柔軟な面状部材である、請求項4記載の電波反射体。
【請求項7】
電波を反射させる反射面を有する電波反射体の製造方法であって、
基体の表面に設けられた反射面の形状を所望の形状に変更する工程を備え、
前記基体における少なくとも前記反射面の形成される部分は導電性を有している、電波反射体の製造方法。
【請求項8】
電波を反射させる反射面を有する電波反射体の製造方法であって、
基体の形状を所望の形状に変更する工程と、
前記反射面を形成するために、前記基体の表面に導電性を有する膜を設ける工程と、を含む電波反射体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波を反射する反射面が設けられている電波反射体等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ミリ波帯やテラヘルツ帯といった光に近い伝搬特性を持つ電波を用いた無線通信システムの研究が進んでいる。そのような直進性の強い電波を用いた無線通信では、送信側の装置と受信側の装置との間の見通し内伝搬路を確保することができない場合には、反射板を用いて電波を反射することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-203979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、反射板の形状が平面などのようにあらかじめ決まった形状である場合には、電波を所望の複数の方向に反射させることが困難であるという問題がある。例えば、第1の方向に電波を反射させた場合には、第1の方向とは別の第2の方向に電波を反射させることができなくなる。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、直進性の強い電波を所望の複数の方向に反射させることができる電波反射体、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様による電波反射体は、形状を変更可能な基体を備え、基体の表面に、電波を反射する反射面が設けられている、ものである。
このような構成により、基体の形状を変更することによって、基体の表面に設けられる反射面の形状を変更することができる。そのため、電波を所望の複数の方向に反射させることができるようになる。
【0007】
また、本発明の一態様による電波反射体では、基体における少なくとも反射面に対応する部分は、塑性変形可能であってもよい。
このような構成により、例えば、基体や反射面を手などで変形させることによって、電波を所望の複数の方向に反射させることができるようになる。
【0008】
また、本発明の一態様による電波反射体では、基体における少なくとも反射面の形成される部分は導電性を有していてもよい。
このような構成により、基体自体が電波を反射するようにすることができ、その基体の反射面の形状を変更することによって、電波を所望の複数の方向に反射させることができるようになる。
【0009】
また、本発明の一態様による電波反射体では、反射面を形成するための導電性を有する膜をさらに備えてもよい。
このような構成により、導電性を有する膜によって反射面を形成することができる。したがって、基体として、より幅の広いものを用いることができるようになる。
【0010】
また、本発明の一態様による電波反射体では、膜は、導電性を有する塗料の塗布膜であってもよい。
このような構成により、基体の表面に導電性を有する塗料を塗布することによって、反射面を形成することができる。例えば、塗布膜が伸縮性を有しており、また基体における反射面に対応する部分が塑性変形可能である場合には、反射面が所望の形状となるように簡単に変形させることができる。
【0011】
また、本発明の一態様による電波反射体では、膜は、導電性を有する柔軟な面状部材であってもよい。
このような構成により、例えば、伸縮性及び導電性を有するフィルムを基体の表面に貼着することによって、反射面を形成することができる。
【0012】
また、本発明の一態様による電波反射体の製造方法は、電波を反射させる反射面を有する電波反射体の製造方法であって、基体の表面に設けられた反射面の形状を所望の形状に変更する工程を備え、基体における少なくとも反射面の形成される部分は導電性を有している、ものである。
このような構成により、基体の形状を変更することによって、反射面の形状を変更することができ、電波を所望の複数の方向に反射させることができる電波反射体を製造することができる。
【0013】
また、本発明の一態様による電波反射体の製造方法は、電波を反射させる反射面を有する電波反射体の製造方法であって、基体の形状を所望の形状に変更する工程と、反射面を形成するために、基体の表面に導電性を有する膜を設ける工程と、を含むものである。
このような構成により、例えば、形状の変更された基体に、導電性を有する膜を設けることによって、電波を所望の複数の方向に反射させることができる電波反射体を製造することができる。
【0014】
また、本発明の一態様による電波反射体の製造方法では、膜を設ける工程において、形状の変更された基体の表面に、導電性を有する塗料を塗布してもよい。
【0015】
また、本発明の一態様による電波反射体の製造方法では、膜を設ける工程において、形状の変更された基体の表面に、導電性を有する柔軟な面状部材を取り付けてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様による電波反射体等によれば、基体の形状を変更することによって、基体の表面に設けられる反射面の形状を変更することができ、電波を所望の複数の方向に反射させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態による電波反射体の構成の一例を示す斜視図
図2】同実施の形態による電波反射体の構成の他の一例を示す斜視図
図3A】同実施の形態による図1の電波反射体の断面図
図3B】同実施の形態による図2の電波反射体の断面図
図4】同実施の形態による電波反射体の構成の他の一例を示す斜視図
図5】同実施の形態による電波反射体の製造方法の一例を示すフローチャート
図6】同実施の形態による電波反射体の製造方法の他の一例を示すフローチャート
図7】従来の反射体と本実施の形態による電波反射体とを比較するための図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明による電波反射体、及びその製造方法について、実施の形態を用いて説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素及びステップは同一または相当するものであり、再度の説明を省略することがある。本実施の形態による電波反射体は、少なくとも一部の形状を変更することができる基体の表面に、電波を反射する反射面が設けられているものである。
【0019】
図1図2は、本実施の形態による電波反射体1の構成を示す斜視図であり、図3A図3Bは、それぞれ図1図2で示される電波反射体1の断面図である。
【0020】
本実施の形態による電波反射体1は、図1で示されるように、形状を変更可能な基体10を有しており、基体10の表面に、電波を反射する反射面20が設けられている。電波反射体1は、一例として、図1で示されるように、基体10の表面が反射面20となっていてもよい。また、電波反射体1は、一例として、図2で示されるように、反射面20を形成するための導電性を有する膜21をさらに有していてもよい。この場合には、膜21は、基体10の表面に設けられていてもよい。
【0021】
電波反射体1によって反射される電波は、一例として、直進性の高い周波数帯の電波であってもよい。直進性の高い周波数帯は特に限定されないが、例えば、10GHz以上の周波数帯であってもよく、30GHz以上の周波数帯であってもよい。また、直進性の高い周波数帯は、例えば、ミリ波帯、サブミリ波帯、テラヘルツ帯などの可視光より波長の長い周波数帯であってもよい。このような直進性の高い電波を用いて見通し外の伝搬路を介した無線通信を行う場合には、電波を反射させる必要があり、本実施の形態による電波反射体1は、そのために用いられるものである。
【0022】
基体10の形状を変更可能であるとは、基体10の少なくとも一部の形状を変更可能であることであってもよい。その形状を変更可能な部分は、例えば、基体10の反射面20に対応する部分を含んでいてもよい。基体10における少なくとも反射面20に対応する部分は、例えば、塑性変形可能であってもよく、切削などによって形状を変更できるものであってもよい。基体10における反射面20に対応する部分とは、例えば、基体10の反射面20に対応する面を含む部分であってもよい。基体10の反射面20に対応する面は、例えば、電波反射体1が導電性の膜21を有しない場合には、基体10に設けられた反射面20であってもよく、電波反射体1が導電性の膜21を有する場合には、反射面20を形成するための膜21の取り付けられる基体10の面であってもよい。基体10の反射面20に対応する部分は、例えば、基体10において、反射面20に対応する面から所定の厚さの部分であってもよい。
【0023】
基体10において塑性変形可能な部分は、例えば、粘土などの塑性変形可能な材料によって構成されていることが好適である。粘土は、例えば、油粘土などのように硬化しにくい粘土であってもよく、紙粘土などのように乾燥などによって硬化する粘土であってもよい。基体10の大まかな形状については、例えば、3Dプリンタや、組み立てブロック玩具などを用いて構成し、その表面に塑性変形可能な材料を貼り付けることによって、反射面20の形成される表面が塑性変形可能な基体10が構成されてもよい。なお、基体10の全体が塑性変形可能であってもよいことは言うまでもない。この場合には、基体10の全体が粘土などによって構成されてもよい。
【0024】
少なくとも反射面20に対応する部分が塑性変形可能でない材料によって構成された基体10は、上記したように、例えば、切削などによって反射面20に対応する面の形状を変更できるものであってもよい。このような塑性変形可能でない材料は特に限定されないが、例えば、樹脂や木などであってもよい。この場合には、例えば、ナイフなどによって基体10が削られることによって、反射面20に対応する面の形状が変更されてもよい。
【0025】
反射面20を形成するための膜21は、例えば、導電性を有する塗料の塗布膜であってもよく、導電性を有する柔軟な面状部材であってもよく、その他の導電性を有する膜であってもよい。導電性を有する塗料の塗布膜は、例えば、伸縮性を有するものであってもよく、または、そうでなくてもよい。伸縮性を有する塗料は特に限定されないが、例えば、次の文献に記載されたペーストであってもよく、プラスコート株式会社(京都府久世郡)の耐ストレッチ導電性ペーストなどであってもよい。
文献:特開2017-073364号公報
文献:特開2022-118755号公報
【0026】
導電性の塗料は、例えば、金属やカーボンなどの導電性の粒子を含む塗料であってもよい。なお、導電性を有する塗料を樹脂の基体10に塗布した膜21によって電波を適切に反射できることは、発明者が行った実験により確認されている。また、導電性を有する柔軟な面状部材は特に限定されないが、例えば、次の文献に記載された伸縮性及び導電性を有するシートであってもよく、プラスコート株式会社(京都府久世郡)の耐ストレッチ導電性フィルムであってもよく、導電性を有する布であってもよく、アルミホイルなどの金属の薄膜などであってもよい。この面状部材は、例えば、伸縮性を有してもよく、または、そうでなくてもよい。
文献:特開2014-229543号公報
【0027】
上記したように、電波反射体1は、膜21が存在するかどうか、及び基体10の反射面20に対応する部分が塑性変形できるかどうかに応じて、4種類に分類することができる。以下、その4種類の電波反射体1についてそれぞれ説明する。
【0028】
(1)膜21を有しておらず、基体10が塑性変形可能な電波反射体1について
この場合には、図1で示されるように、基体10の表面が反射面20となる。そのため、基体10における少なくとも反射面20の形成される部分は導電性を有していることが好適である。基体10における反射面20の形成される部分は、例えば、基体10における反射面20から所定の厚さの部分であってもよい。基体10における導電性を有している部分を構成する塑性変形可能な材料(例えば、粘土など)は、例えば、金属やカーボンなどの導電性の粒子を含んでいてもよい。この場合には、導電性を有している塑性変形可能な反射面20が変形されることによって、反射面20の形状を変更することができる。なお、基体10の全体が導電性を有していてもよいことは言うまでもない。
【0029】
(2)膜21を有しておらず、基体10が塑性変形しない電波反射体1について
この場合にも、図1で示されるように、基体10の表面が反射面20となる。そのため、基体10における少なくとも反射面20の形成される部分は導電性を有していることが好適である。基体10における導電性を有している部分を構成する塑性変形しない材料(例えば、樹脂など)は、例えば、金属やカーボンなどの導電性の粒子を含んでいてもよい。この場合には、導電性を有している塑性変形しない反射面20が削られることなどによって、反射面20の形状を変更することができる。なお、削った部分を元に戻すことはできないため、例えば、削り過ぎた場合には、反射面20の形状を変更前の形状(例えば、平面形状)などに戻した後に、再度、反射面20の形状を変更してもよい。この場合には、その切削などの対象となる基体10の部分も導電性を有していることが好適である。なお、基体10の全体が導電性を有していてもよいことは言うまでもない。
【0030】
(3)膜21を有しており、基体10が塑性変形可能な電波反射体1について
この場合には、図2で示されるように、基体10に設けられた、導電性を有している膜21によって反射面20が形成されることになる。この膜21は、例えば、導電性を有する塗料の塗布膜であってもよく、導電性を有する柔軟な面状部材であってもよい。なお、基体10の導電性は問わない。導電性を有している膜21は、例えば、伸縮性を有していてもよく、または、そうでなくてもよい。膜21が伸縮性を有している場合には、反射面20も塑性変形可能になる。反射面20が塑性変形可能であるとは、一例として、伸縮性を有している膜21が塑性変形可能な基体10の表面に設けられていることによって、結果として、その膜21によって形成される反射面20も塑性変形可能となっていてもよい。伸縮性を有していない膜21によって形成されている反射面20の形状が変更された場合や、伸縮性を有している膜21によって形成されている反射面20の形状が、その伸縮可能な範囲を超えて変更された場合には、反射面20のうち、導電性を有している膜21が存在しなくなった領域に、再度、導電性を有している膜21を形成するようにしてもよい。そのため、例えば、その領域に導電性を有する塗料を塗ったり、その領域に導電性を有するシートなどを貼り付けたりしてもよい。
【0031】
また、図4(a)で示されるように、針金などの形状を変更できる骨格を有する基体10に、図4(b)で示されるように、導電性を有する柔軟な面状部材である膜21が取り付けられることによって、電波反射体1が構成されてもよい。針金などのように形状を変更できる骨格を有する基体10も、塑性変形可能な基体10であると考えられる。膜21は、例えば、シートや布などであってもよい。膜21がシートである場合には、例えば、そのシートが基体10に貼り付けられることによって取り付けられてもよい。また、膜21が布である場合には、例えば、その布が基体10に縫い付けられることによって取り付けられてもよい。なお、基体10のうち、膜21の取り付けられる面の骨格は、所望の膜21の形状を形成することができる程度に細かい骨格となっていることが好適である。
【0032】
(4)膜21を有しており、基体10が塑性変形しない電波反射体1について
この場合にも、図2で示されるように、基体10に設けられた、導電性を有している膜21によって反射面20が形成されることになる。この膜21は、例えば、導電性を有する塗料の塗布膜であってもよく、導電性を有する柔軟な面状部材であってもよい。なお、基体10の導電性は問わない。導電性を有している膜21は、例えば、伸縮性を有していてもよく、または、そうでなくてもよい。この場合には、通常、基体10の反射面20に対応する面を切削等することによって、反射面20の形状が変更されることになる。したがって、例えば、膜21が塗布膜である場合には、反射面20の形状の変更に応じて、変更された領域の膜21が存在しなくなる。そのため、反射面20の形状の変更後に再度、その領域に導電性の塗料が塗布されてもよい。また、例えば、膜21が導電性を有する柔軟な面状部材である場合には、反射面20の形状が変更される前に、基体10から面状部材が取り外され、その後に、面状部材の取り付けられていた基体10の表面の形状が切削等によって変更されてもよい。そして、基体10の表面の形状の変更後に、再度、導電性を有する柔軟な面状部材である膜21が、基体10の反射面20に対応する面に取り付けられてもよい。
【0033】
次に、電波反射体1の製造方法について、フローチャートを参照して説明する。まず、導電性の膜21を有しない電波反射体1の製造方法について、図5のフローチャートを用いて説明する。すなわち、図5のフローチャートでは、上記(1)(2)の電波反射体1の製造方法が示されることになる。
【0034】
(ステップS101)電波反射体1を製造する者は、基体10の表面に設けられた反射面20の形状を所望の形状に変更する。上記(1)の電波反射体1では、例えば、塑性変形可能な反射面20に対応する部分を変形させてもよい。また、上記(2)の電波反射体1では、例えば、反射面20を切削等することによって反射面20の形状を変更してもよい。
【0035】
(ステップS102)反射面20の形状が変更された電波反射体1を用いて、電波の送受信を行う。この電波の送受信は、電波を反射させたい環境において、電波反射体1を用いて電波を反射させることによって、所望の位置において電波を受信できるかどうかを確認するために行われる。
【0036】
(ステップS103)所望の位置において電波を受信できた場合には、電波反射体1を製造する工程は終了となる。一方、所望の位置において電波を受信できなかった場合には、ステップS104に進む。
【0037】
(ステップS104)電波反射体1を製造する者は、基体10の反射面20の形状を、所望の位置において電波を受信することができるように変更する。この反射面20の形状の変更も、ステップS101と同様にして行われてもよい。そして、ステップS102に戻る。
【0038】
次に、導電性の膜21を有する電波反射体1の製造方法について、図6のフローチャートを用いて説明する。すなわち、図6のフローチャートでは、上記(3)(4)の電波反射体1の製造方法が示されることになる。
【0039】
(ステップS201)電波反射体1を製造する者は、基体10の形状を所望の形状に変更する。基体10において形状の変更対象となるのは、反射面20に対応する面、すなわち膜21の取り付けられる面である。上記(3)の電波反射体1では、例えば、塑性変形可能な基体10の表面を変形させてもよい。また、上記(4)の電波反射体1では、例えば、基体10の表面を切削等することによって、その表面の形状を変更してもよい。
【0040】
(ステップS202)電波反射体1を製造する者は、基体10の反射面20に対応する表面に導電性の膜21を設けることによって、反射面20を形成する。例えば、基体10の反射面20に対応する表面に、導電性の塗料を塗布することによって反射面20を形成してもよく、基体10の反射面20に対応する表面に、導電性を有する柔軟な面状部材を取り付けることによって反射面20を形成してもよい。
【0041】
(ステップS203)膜21の設けられた電波反射体1を用いて、電波の送受信を行う。この電波の送受信は、電波を反射させたい環境において、電波反射体1を用いて電波を反射させることによって、所望の位置において電波を受信できるかどうかを確認するために行われる。
【0042】
(ステップS204)所望の位置において電波を受信できた場合には、電波反射体1を製造する工程は終了となる。一方、所望の位置において電波を受信できなかった場合には、ステップS205に進む。
【0043】
(ステップS205)電波反射体1を製造する者は、基体10の反射面20の形状を、所望の位置において電波を受信することができるように変更する。上記(3)の電波反射体1では、例えば、塑性変形可能な反射面20の形状を変更してもよい。また、上記(4)の電波反射体1では、例えば、膜21の設けられた面を切削等することによって形状を変更し、その後に、膜21が存在しなくなった領域に、再度、導電性を有している膜21を形成してもよく、面状部材である膜21を基体10から取り外した後に、膜21の取り付けられていた基体10の表面の形状を切削等によって変更し、その変更後に再度、面状部材である膜21を、形状が変更された基体10の表面に取り付けてもよい。そして、ステップS203に戻る。
【0044】
なお、図6のフローチャートでは、基体10の形状を変更した後に、基体10の表面に膜21を設ける場合(ステップS201,S202)について示しているが、例えば、膜21が伸縮性を有しており、また基体10における反射面20に対応する部分が塑性変形可能である場合には、その順序は逆であってもよい。
【0045】
また、図5のフローチャートにおけるステップS102、及び図6のフローチャートにおけるステップS203において、所望の位置において電波を受信できるかどうかは、例えば、スペクトラムアナライザや、電波を受信する受信機などを用いて確認してもよい。例えば、所望の位置において受信された電波の受信電力が閾値を超えている場合に、所望の位置で電波を受信できていると判断され、所望の位置において受信された電波の受信電力が閾値未満である場合に、所望の位置で電波を受信できていないと判断されてもよい。受信された電波の受信電力が閾値と等しい場合には、例えば、どちらに判断されてもよい。
【0046】
また、図5図6のフローチャートにおいて、基体10が、紙粘土のような時間の経過に応じて硬化する塑性変形可能な材料を用いて構成されている場合には、その材料が硬化するまでに、電波反射体1の製造が完了することが好適である。
【0047】
次に、図7を参照して、従来の反射体33,34と、本実施の形態による電波反射体1とを比較する。図7では、送信装置31から送信された直進性の高い電波を、電波を透過しない遮蔽物32の反対側で受信するために従来の反射体33,34や、本実施の形態による電波反射体1を用いるものとする。
【0048】
図7(a)、図7(b)は、それぞれ従来の反射体33,34を用いて送信装置31からの電波を反射させた状況を示す模式図である。図7(a)で示されるように、反射面が平面である反射体33を用いた場合には、例えば、領域41において送信装置31からの電波を受信できない。また、図7(b)で示されるように、反射面が曲面である反射体34を用いた場合には、例えば、領域42において送信装置31からの電波を受信できない。
【0049】
一方、電波反射体1の反射面20を適切な形状とすることによって、領域41,42の両方の方向に電波を反射することができ、図7(c)で示されるように、遮蔽物32の右側において、送信装置31からの電波を受信できない領域が存在しないようにすることができる。また、電波反射体1の反射面20の形状を現場において変更することができるため、例えば、スペクトラムアナライザなどを用いて所望の位置で電波を受信できるかどうかを確認し、受信できていない場合に、適宜、反射面20の形状を現場で変更することもできる。
【0050】
以上のように、本実施の形態による電波反射体1によれば、基体10の形状を変更することによって、反射面20の形状を変更することができる。そのため、電波反射体1によって、電波を所望の複数の方向に反射させることができるようになる。本実施の形態による電波反射体1を用いることによって、例えば、電波を反射させたい環境のレイアウト等に応じて、臨機応変に反射方向を変更することができるようになる。また、基体10の少なくとも反射面20に対応する部分が塑性変形可能であることによって、反射面20の形状を容易に変更することができるようになる。また、基体10の少なくとも反射面20の形成される部分が導電性を有していることによって、膜21を用いなくても、電波を反射させることができるようになる。また、基体10の反射面20に対応する面に、導電性を有する膜21が取り付けられることによって、基体10が導電性を有していなくても、導電性を有する膜21によって電波を反射させることができるようになる。したがって、例えば、絶縁性の基体10を用いることもできるようになる。また、その膜21が伸縮性や柔軟性を有しており、かつ、基体10において膜21の設けられた面が塑性変形可能である場合には、基体10において膜21の設けられた面と膜21とを一緒に塑性変形させることができる。そのため、反射面20の形状を変更した後に、再度、導電性を有する塗料を塗布するなどの工程が不要になり、反射面20の形状を変更する際の作業性が向上することになる。
【0051】
なお、本実施の形態では、電波反射体1の反射面20の形状を、電波を反射する現場において変更する場合について主に説明したが、そうでなくてもよい。例えば、事前にシミュレーションなどによって電波反射体1の反射面20の形状を決定しておき、その決定した形状となるように電波反射体1の反射面20の形状を変更していてもよい。この場合であっても、例えば、現場において所望の反射を実現できていない場合には、適宜、反射面20の形状が変更されてもよい。
【0052】
また、以上の実施の形態は、本発明を具体的に実施するための例示であって、本発明の技術的範囲を制限するものではない。本発明の技術的範囲は、実施の形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲の文言上の範囲及び均等の意味の範囲内での変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0053】
1 電波反射体
10 基体
20 反射面
21 膜
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7