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  • 特開-防災システム、及び火災感知器 図1
  • 特開-防災システム、及び火災感知器 図2
  • 特開-防災システム、及び火災感知器 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136052
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】防災システム、及び火災感知器
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/00 20060101AFI20240927BHJP
   G08B 17/06 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G08B17/00 C
G08B17/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047007
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大上 佳一郎
(72)【発明者】
【氏名】田之畑 直希
【テーマコード(参考)】
5C085
5G405
【Fターム(参考)】
5C085AA01
5C085AA03
5C085AC18
5C085CA09
5C085CA15
5C085FA17
5G405AA01
5G405AA06
5G405AB01
5G405AB02
5G405AD07
5G405AD09
5G405CA15
5G405CA21
5G405CA55
(57)【要約】
【課題】複数の火災感知器の中から終端感知器に設定された火災感知器を探す手間を軽減する。
【解決手段】防災システム1は、回線NW(n)(n=1~4)が接続された中継器20(1)と中継器20(1)に接続された火災受信機30と、回線NW(n)に接続された火災感知器10(n、m)(m=1~M:Mは2以上の整数)とを備える。火災感知器10(n、m)のうち、終端感知器に設定された火災感知器10(n、M)は、火災受信機30から終端感知器を確認する確認信号を受信すると、終端感知器であることを報知する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回線を介して火災受信機に接続された複数の火災感知器を備え、
前記複数の火災感知器のうち、前記回線の終端において前記回線の断線を監視するための処理を行う終端感知器に設定された火災感知器は、前記火災受信機から前記終端感知器を確認する信号を受信すると、前記終端感知器であることを報知する報知部を有する
防災システム。
【請求項2】
前記火災感知器は、当該火災感知器が作動すると点灯する作動灯を有し、
前記報知部は、前記信号を受信すると、前記作動灯を点滅させることにより前記報知を行う
請求項1に記載の防災システム。
【請求項3】
前記火災受信機には、複数の回線を介して前記終端感知器に設定された2以上の火災感知器が接続されており、
前記2以上の火災感知器の前記報知部は、前記信号を受信すると、前記複数の回線のうち当該火災感知器が接続されている回線によって前記作動灯を異なる点滅パターンで点滅させることにより前記報知を行う
請求項2に記載の防災システム。
【請求項4】
回線を介して火災受信機に接続され、前記回線の終端において前記回線の断線を監視するための処理を行う終端感知器に設定可能な火災感知器であって、前記火災受信機から前記終端感知器を確認する信号を受信すると、前記終端感知器であることを報知する報知部を有する火災感知器。
【請求項5】
当該火災感知器が作動すると点灯する作動灯を有し、
前記報知部は、前記信号を受信すると、前記作動灯を点滅させる請求項4に記載の火災感知器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、防災システム、及び火災感知器、に関する。
【背景技術】
【0002】
ビル、店舗、又は学校等の施設(以下、監視領域)内の各所に火災感知器を配置し、監視領域に配置された複数の火災感知器を中継器を介して火災受信機に接続することにより、監視領域における火災の発生を感知する防災システムを構築することが一般に行われている。この種の防災システムでは、複数の火災感知器は、例えば階毎或いは部屋毎等の設置場所毎にグループ分けされ、グループ毎に1つの回線を介して中継器に接続されることが多い。特許文献1には、各回線の終端に終端感知器を設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-65708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
防災システムでは、その構築後に火災感知器の増設等により終端感知器の変更が行われることがある。具体的には、新たに追加する火災感知器が回線の終端に設置される場合、当該火災感知器が終端感知器となるように設定変更される。設定に応じて火災感知器に加えて終端感知器としても機能する火災感知器については、終端感知器として機能しているか否かを火災感知器の外観から把握することはできない場合が多い。このように、機器の外観から終端感知器を特定できない場合、火災感知器の増設等を行う現場担当者は、回線の配線に関する見取り図等を参考にしつつ、監視領域にて終端感知器と想定される火災感知器を取り外して終端感知器を探す必要があり、終端感知器の探索に多大な手間がかかっていた。
【0005】
本開示は、複数の火災感知器の中から終端感知器に設定された火災感知器を探す手間を軽減する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本開示の第1の態様に係る防災システムは、複数の火災感知器を備える。これら複数の火災感知器は、回線を介して火災受信機に接続される。これら複数の火災感知器のうち、前記回線の終端において前記回線の断線を監視するための処理を行う終端感知器に設定された火災感知器は、前記火災受信機から前記終端感知器を確認する信号を受信すると、前記終端感知器であることを報知する報知部を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、複数の火災感知器の中から終端感知器に設定された火災感知器を探す手間を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施形態による防災システム1の構成例を示す図である。
図2】防災システム1に含まれる火災感知器10の構成例を示す図である。
図3】防災システム1に含まれる各機器の動作を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<A.実施形態>
以下に述べる実施形態には技術的に好ましい種々の限定が付されている。しかし、本開示の実施形態は、以下に述べる形態に限られるものではない。
<A-1.構成>
図1は、本開示の一実施形態による防災システム1の構成例を示す図である。防災システム1は、例えばビル、店舗、公共施設等の監視領域における火災の発生に応じて警報を出力する火災受信機30を含む。
【0010】
図1に示されるように、火災受信機30には、中継器20(1)、中継器20(2)、及び中継器20(3)が接続される。中継器20(1)には、回線NW(1)、回線NW(2)、回線NW(3)及び回線NW(4)が接続される。以下では、中継器20(1)、中継器20(2)、及び中継器20(3)の各々を区別する必要がない場合には、中継器20(1)、中継器20(2)、及び中継器20(3)は中継器20と称される。同様に、回線NW(n)(n=1~4)の各々を区別する必要がない場合には、回線NW(n)(n=1~4)は回線NWと表記される。本実施形態では、火災受信機30に3台の中継器20が接続されるが、火災受信機30に接続される中継器20は1台、2台、又は4台以上であってもよい。図1では詳細な図示を省略したが、中継器20(2)にも複数の回線NWが接続され、中継器20(3)にも複数の回線NWが接続される。なお、中継器20に接続される回線NWの数は1~3であってもよいし、5以上であってもよい。
【0011】
回線NWには、最多でMX個の火災感知器10が接続される。MXは2以上の任意の整数であり、本実施形態では、MX=60である。図1に示されるように、回線NW(n)には、中継器20(1)に近い方から火災感知器10(n、1)、火災感知器10(n,2)…火災感知器10(n、M)がこの順に接続される。Mは2以上且つMX以下の整数であり、本実施形態では、M=50である。つまり、中継器20には、複数の回線NWを介して複数の火災感知器10が接続され、各回線NWに対して火災感知器10の追加が可能となっている。以下では、回線NWの2つの端部のうち、中継器20(1)に遠い方の端部は回線NWの終端と称される。火災感知器10(n、M)は回線NW(n)の終端に設置される。以下では、火災感知器10(n、m)の各々を区別する必要がない場合には、火災感知器10(n、m)は、火災感知器10と表記される。なお、mは1以上且つM以下の整数である。
【0012】
火災感知器10は、煙式又は熱式により、火災を感知する。火災感知器10は、火災を感知すると、火災信号を中継器20を介して火災受信機30へ送信する。中継器20は、火災受信機30と火災感知器10との間の信号を中継する。火災受信機30は、火災信号を受信すると、警報を出力する。
【0013】
本実施形態では、回線NW(n)の断線を検知するために、回線NW(n)の終端には終端感知器が配置される。終端感知器は中継器20と協働して回線NW(n)の断線を監視するための処理を行う。より詳細に説明すると、中継器20は、所定の時間間隔で終端感知器へ宛てて断線監視信号を送信する。所定の時間間隔で終端感知器へ宛てて断線監視信号を送信する機能は断線監視機能と称される。中継器20は、断線監視信号に対する応答信号を終端感知器から受信した場合、正常と判定する。これに対して、応答信号を受信しない場合、中継器20は、断線障害と判定し、火災受信機30に断線障害を通知する。
【0014】
火災感知器10(n,m)には、回線NW(n)において一意のアドレスが割り当てられる。本実施形態では、火災感知器10(n,k)(kは1以上且つM-1以下の整数)には、kという数値のアドレスが割り当てられ、火災感知器10(n,M)にはMXという数値のアドレスが割り当てられている。MXというアドレスを割り当てられた火災感知器10(n,M)は回線NW(n)の終端に設置されており、この火災感知器10(n,M)が終端感知器として機能する。つまり、本実施形態における火災感知器10は、回線NWにおいて設置可能な火災感知器10の最大数MXに応じたアドレスを割り当てられることにより、終端感知器に設定される。このため、終端感知器として機能している火災感知器10とそれ以外の火災感知器10とを、外観に基づいて区別することはできない。
【0015】
このように、終端感知器とそれ以外の火災感知器10とを、外観に基づいて区別することはできない場合、火災感知器10の追加等を行う現場担当者は配線に関する見取り図を参考に監視領域にて、終端感知器と想定される火災感知器10を取り外して、火災受信機30に表示される異常に基づいて回線NWの終端感知器を特定しており、終端感知器の探索に多大な手間がかかっていた。
【0016】
本実施形態では、各中継器20の回線NW毎に終端感知器が設定され、火災受信機30において予めデータベース化されている。そして、探索対象の回線NWが火災受信機30に対する現場担当者の操作により選択されると、火災受信機30は、当該回線が接続された中継器20を介して終端感知器へ宛てて確認信号を送信する。この確認信号を受信した終端感知器が終端感知器であることを示す報知を行うことにより、ユーザは終端感知器を容易に見つけることができる。
【0017】
図2は、火災感知器10の構成例を示す図である。図2に示されるように、火災感知器10は、火災感知部110、通信部120、制御部130、記憶部140、及び作動灯150を有する。火災感知部110、通信部120、制御部130、記憶部140、及び作動灯150の各々と制御部130とは、データ授受を仲介するバスにより相互に接続されている。
【0018】
火災感知部110は、煙式又は熱式により、火災を感知する。通信部120は、通信回路であり、回線NWに接続されている。より具体的には、火災感知器10(n,m)の通信部120は回線NW(n)に接続されている。通信部120は、制御部130による制御の下、中継器20と通信する。作動灯150は、例えば赤色LEDである。作動灯150は、火災を感知した時又は火災試験の時等、火災感知器10の作動時に点灯する。点灯するとは、発光し続けることをいう。
【0019】
制御部130は、例えばCPU等のコンピュータである。記憶部140は、例えばRAM等の揮発性メモリと、フラッシュROM等の不揮発性メモリとを含む。不揮発性メモリには、制御部130を火災感知器10の制御中枢として機能させる制御プログラムが予め記憶されている。記憶部140の揮発性メモリは、制御プログラムを実行する際のワークエリアとして制御部130によって利用される。
【0020】
制御部130は、火災感知器10の電源(図2では図示略)の投入を契機として制御プログラムを不揮発性メモリから揮発性メモリへ読み出し、当該制御プログラムの実行を開始する。制御プログラムに従って作動している制御部130は、応答部130a、及び報知部130bとして機能する。つまり、図2に示される応答部130a及び報知部130bは、CPU等のコンピュータをプログラム等のソフトウェアに従って作動させることにより実現されるソフトウェアモジュールである。
【0021】
応答部130aは、火災感知部110が火災を感知したとき、中継器20からの信号を受信したときに適宜、中継器20に対し、火災信号や応答信号を中継器20に送信する。応答部130aは、また、火災感知器10が終端感知器に設定された場合には、中継器20から断線監視信号を受信すると、応答信号を中継器20に送信する。
【0022】
報知部130bは、火災感知器10が作動したとき、作動灯150を点灯させる。また、報知部130bは、火災感知器10が終端感知器に設定された場合には、火災受信機30から中継器20を介して確認信号を受信すると、作動灯150を点滅させる。点滅とは、発光状態と消灯状態とを交互に繰り返すことをいう。防災システム1に対して火災感知器10の追加等を行う現場担当者は、作動灯150の点滅を視認することにより、終端感知器として設定された火災感知器10を把握できる。確認信号の受信時に作動灯150を点滅させるのは、火災感知器10の作動と区別できるようにするためである。
以上が火災感知器10の構成である。
【0023】
<A-2:動作>
本実施形態における終端感知器の探索手順は次の通りである。
現場作業者は、まず火災受信機30を操作して、探索対象の終端感知器が接続されている回線NW(以下、対象回線)、当該対象回線が敷設されている領域、または、当該対象回線に接続されている中継器20(以下、対象中継器)等を選択し、「終端感知器を探す」の「実行」スイッチを押下する。このスイッチが押されると、図3に示されるように、火災受信機30は、終端感知器の確認信号M1を対象中継器へ送信する。例えば、対象中継器として、図1に示される中継器20(1)が選択され、対象回線として回線NW(1)が選択されたとする。確認信号M1には、当該確認信号M1の宛先を示す情報として、対象中継器を示す情報(本動作例では、中継器20(1)のアドレス)、対象回線(本動作例では、回線NW(1))を示す情報、及び宛先の火災感知器10のアドレス(即ち、MX)が含まれる。
【0024】
対象中継器以外の中継器20、即ち中継器20(2)及び中継器20(3)の各々は、確認信号M1を受信しても、当該確認信号M1にて指定されている中継器20が自器ではないため、受信した確認信号M1を破棄する。一方、対象中継器である中継器20(1)は、確認信号M1を受信すると、図3に示されるように、確認信号M1を対象回線である回線NW(1)へ送信する。回線NW(1)には火災感知器10(1、1)~火災感知器10(1,M)が接続されている。回線NW(1)に接続されたM個の火災感知器10のうち火災感知器10(1、k)(k=1~M-1)の各々は、確認信号M1において設定された宛先のアドレス(即ち、MX)と自器に割り当てられたアドレス(即ち、k)とが一致しないため、確認信号M1を無視する。このため、火災感知器10(1、k)(k=1~M-1)の各々の作動灯150が点滅することはない。
【0025】
これに対して、確認信号M1において設定された宛先のアドレスと一致するアドレスを割り当てられた火災感知器10(1,M)は終端感知器に設定されているため、火災感知器10(1,M)の報知部130bは、確認信号M1の受信を契機として作動灯150を点滅させる。火災感知器10(1,M)の作動灯150の点滅を見ることにより、現場作業者は、対象回線における終端感知器を把握できる。現場作業者は、終端感知器を見つけた後、火災受信機30の「終了」ボタンを押す。これにより、火災受信機30から対象中継器を介して対象回線の終端感知器に停止信号が送信される。終端感知器に設定された火災感知器10(1,M)の報知部130bは、停止信号を受信すると、作動灯150の点滅を停止させる。
【0026】
以上説明したように、本実施形態によれば、現場作業者は、配線に関する見取り図を参考に監視領域の火災感知器10を取り外すことなく、終端感知器の作動灯150の点滅を通じて終端感知器を特定することができる。従って、複数の火災感知器10の中から終端感知器に設定された火災感知器10を探す手間が軽減される。
【0027】
<B.変形例>
上記実施形態は、以下のように変形されてもよい。
(1)火災感知器10は、スピーカを備えてもよい。火災感知器10がスピーカを備える場合、終端感知器として設定された火災感知器10は、確認信号の受信に応じて、作動灯150の点滅に加えて、又は作動灯150の点滅に代えて、当該スピーカから終端感知器であることを示す音を出力してもよい。要するに、終端感知器として設定された火災感知器10は、終端感知器であることを光の点滅により報知してもよいし、音の出力により報知してもよい。
【0028】
(2)作業者は、対象回線を選択せずに対象中継器だけを選択してもよく、この場合、対象中継器に接続された複数の回線に確認信号が送信され、複数の回線にそれぞれ接続された各終端感知器の作動灯150が点滅してもよい。このとき、複数の終端感知器の作動灯150の点滅パターンは、接続されている回線によって異なってもよい。例えば回線NW(1)~NW(4)の各々に接続された4つの終端感知器は、それぞれ、所定周期で1回~4回の短い点滅を行ってもよい。これにより、作動灯150が点滅している火災感知器10がどの回線に接続されている終端感知器であるかを現場作業者は把握できる。
【0029】
(3)上記実施形態の防災システム1は、複数の中継器20を含んでいたが、防災システム1に含まれる中継器20は1つでもよく、また、中継器20が省略され、各回線が火災受信機30に接続されてもよい。つまり、中継器は本開示の防災システム1の必須構成要素ではなく、省略可能な構成要素である。
【0030】
(4)本開示における火災感知器は、消防検定の規格を満たさない火災検知器を含む概念であってもよい。
【符号の説明】
【0031】
1…防災システム、10,10(1、1)~10(4、M)…火災感知器、110…火災感知部、120…通信部、130…制御部、130a…応答部、130b…報知部、140…記憶部、150…作動灯、20,20(1),20(2),20(3)…中継器、30…火災受信機、NW,NW(1),NW(2),NW(3),NW(4)…回線。
図1
図2
図3