(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136058
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】更生管引込用案内装置
(51)【国際特許分類】
F16L 55/18 20060101AFI20240927BHJP
F16L 1/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
F16L55/18 B
F16L1/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047015
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003340
【氏名又は名称】弁理士法人湧泉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高谷 明彦
(72)【発明者】
【氏名】阿部 竜幸
(57)【要約】
【課題】 マンホールを介して連なる更生対象の既設管と他の既設管がいかなる配置関係にあっても、使用可能な更生管引込用案内装置を提供する。
【解決手段】
更生管3の先端に接続されたワイヤ8を到達側マンホール2Bにおいて上方に牽引する際にワイヤ8を案内する案内装置7は、更生対象の既設管1の管頂部より上方に配置された支持フレーム10と、支持フレーム10において既設管1の反対側の端部寄りに支持された第1ガイドローラ35と、支持フレーム10において、既設管1側の端部寄りに支持された第2ガイドローラ45と、支持フレーム10の既設管1側の端部に支持され既設管1の管頂部に掛けられることにより、上方への垂直荷重を受け止める垂直荷重受部50とを備えている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
更生管を発進側マンホールから更生対象の既設管に引き込みその先端を到達側マンホールまで到達させるために、前記更生管の先端に接続された索条を前記到達側マンホールにおいて上方に牽引する際、前記索条を案内する案内装置において、
前記到達側マンホールの底部空間において前記更生対象の既設管の管頂部より上方に配置され、第1端部が前記更生対象の既設管の反対側の第1マンホール壁面に当たり第2端部が前記更生対象の既設管側の第2マンホール壁面に当たるようにして架け渡される支持フレームと、
前記支持フレームの前記第1端部寄りに支持され、前記更生対象の既設管の管頂部より低い位置に配置される第1ガイドローラと、
前記支持フレームに支持され、前記第1ガイドローラより前記第2端部寄りで前記第1ガイドローラより高い位置に配置される第2ガイドローラと、
前記支持フレームの前記第2端部に支持され、前記更生対象の既設管の管頂部に掛けられることにより、上方への垂直荷重を受け止める垂直荷重受部と、
を備え、
前記第1、第2ガイドローラの配置により、前記更生対象の既設管から導出される前記索条が前記第1ガイドローラと前記第2ガイドローラに順に架け渡されて上方に延びることが可能となることを特徴とする更生管引込用案内装置。
【請求項2】
前記第2ガイドローラが前記支持フレームの中央より前記垂直荷重受部の近傍に配置されることを特徴とする請求項1に記載の更生管引込用案内装置。
【請求項3】
前記第1ガイドローラを支持するローラ支持手段が、前記支持フレームから下方に延びる一対の第1部材と、前記一対の第1部材にそれぞれ高さ調節可能に支持された一対の第2部材を有し、前記一対の第2部材の下端部間に前記第1ガイドローラが回転可能に支持されることを特徴とする請求項1に記載の更生管引込用案内装置。
【請求項4】
前記支持フレームは、前記更生対象の既設管の管軸方向に延びるとともにほぼ水平面上に配置された一対のステーと、前記一対のステーの前記更生対象の既設管側の端部を連結する連結ロッドを有し、
前記垂直荷重受部は、前記連結ロッドから下方に延びる垂下部と、この垂下部の下端部から前記更生対象の既設管の管軸方向に延びて前記更生対象の既設管に挿入されてその管頂部に引掛けられる引掛部を有することを特徴とする請求項1に記載の更生管引込用案内装置。
【請求項5】
前記支持フレームは、フレーム本体と、前記フレーム本体の前記更生対象の既設管と反対側に設けられたジャッキと、前記ジャッキの先端の支持金具に支持されて前記第1マンホール壁面に当たる壁面当接部材とを有し、前記第1ガイドローラは、前記支持金具に固定されたローラ支持手段により回転可能に支持されることを特徴とする請求項1に記載の更生管引込用案内装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、老朽化した既設管にライニング用の更生管を引き込む際に用いられる案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地中に埋設された下水管等の老朽化した既設管を更生するために、更生管を既設管内周にライニングすることは公知である。更生管は例えば熱可塑性樹脂からなり本来断面円形であるが扁平に潰された状態で既設管に引き込まれる。引き込まれた更生管は、内部に高温蒸気を供給されることにより元の円形断面に戻り、続いて圧縮空気を供給されることにより膨張して既設管の内壁面に密着される。
【0003】
上記更生管の既設管への引き込み工程を簡単に説明する。既設管の一端に連なる発進側マンホールの近傍の地上に、扁平に潰された更生管を巻いたドラムを設置し、既設管の他端に連なる到達側マンホールの近傍の地上に、ウインチを設置する。ウインチのワイヤを既設管に通し、その先端を発進側マンホールにおいて更生管の先端に連結し、このワイヤをウインチで巻き取ることにより、ドラムから引き出された更生管が発進側マンホールから既設管に引き込まれて到達側マンホールに達する。
【0004】
上記引き込み工程において、ウインチによる上方への牽引力は到達側マンホールに配置された引込用案内装置のガイドローラにより水平方向の牽引力に変換され、この水平方向の牽引力は発進側マンホールに配置された送込用案内装置のガイドローラにより下方への牽引力に変換される。引込用案内装置ではワイヤから水平荷重と上方への垂直荷重を受けるため、この荷重を受け止める構造が要求される。
【0005】
特許文献1に開示された引込用案内装置は、到達側マンホールにおいて、更生対象の既設管より上方に配置され、該既設管の管軸方向に対向するマンホール壁面間に架け渡された支持フレームを備えている。ワイヤが掛けられるガイドローラは、この支持フレームにおいて更生対象の既設管から遠い一方の端部寄りに設けられ、該既設管の管頂部より低い位置に配置されている。
【0006】
特許文献1の引込用案内装置では、支持フレームにおける更生対象の既設管側の端部がマンホール壁面に当たることにより、水平荷重を受け止める。また、支持フレームにおける更生対象の既設管から遠い方の端部には垂直荷重受部が設けられており、この垂直荷重受部が、更生対象の既設管と180°対向する対向既設管の管頂部に掛けられることにより、垂直荷重を受け止めるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の引込用案内装置は、垂直荷重受部を更生対象の既設管と180°対向する位置に配置された対向既設管に掛ける必要があるため、適用範囲が制限される。すなわち、マンホールを介して更生対象の既設管と連なる他の既設管が180°から外れて配置されている場合には、垂直荷重受部を掛けることができないため、適用できない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、更生管を発進側マンホールから更生対象の既設管に引き込みその先端を到達側マンホールまで到達させるために、前記更生管の先端に接続された索条を前記到達側マンホールにおいて上方に牽引する際、前記索条を案内する案内装置において、
前記到達側マンホールの底部空間において前記更生対象の既設管の管頂部より上方に配置され、第1端部が前記更生対象の既設管の反対側の第1マンホール壁面に当たり第2端部が前記更生対象の既設管側の第2マンホール壁面に当たるようにして架け渡される支持フレームと、
前記支持フレームの前記第1端部寄りに支持され、前記更生対象の既設管の管頂部より低い位置に配置される第1ガイドローラと、
前記支持フレームに支持され、前記第1ガイドローラより前記第2端部寄りで前記第1ガイドローラより高い位置に配置される第2ガイドローラと、
前記支持フレームの前記第2端部に支持され、前記更生対象の既設管の管頂部に掛けられることにより、上方への垂直荷重を受け止める垂直荷重受部と、
を備え、
前記第1、第2ガイドローラの配置により、前記更生対象の既設管から導出される前記索条が前記第1ガイドローラと前記第2ガイドローラに順に架け渡されて上方に延びることが可能となることを特徴とする。
【0010】
上述の構成によれば、更生対象の既設管に垂直荷重受部を掛けるため、マンホールを介して更生対象の既設管と連なる他の既設管は、更生管の引込案内に寄与しない。そのため、当該他の既設管が更生対象の既設管と180°対向する場合は勿論のこと、180°から外れた位置にある場合、180°対向しているにも拘わらずその管口が垂直荷重を受け止めるのに適さない高さ、形状又は状態である場合等でも、引込用案内装置を用いることができる。
【0011】
好ましくは、前記第2ガイドローラが前記支持フレームの中央より前記垂直荷重受部の近傍に配置される。
この構成によれば、第2ガイドローラに加わる上方への荷重に起因して支持フレームに付与される回転モーメントを小さくすることができ、支持フレームの架け渡し状態を安定して維持することができる。
【0012】
好ましくは、前記第1ガイドローラを支持するローラ支持手段が、前記支持フレームから下方に延びる一対の第1部材と、前記一対の第1部材にそれぞれ高さ調節可能に支持された一対の第2部材を有し、前記一対の第2部材の下端部間に前記第1ガイドローラが回転可能に支持される。
この構成によれば、第1ガイドローラの高さを更生対象の既設管のサイズに合わせて調節することができる。
【0013】
好ましくは、前記支持フレームは、前記更生対象の既設管の管軸方向に延びるとともにほぼ水平面上に配置された一対のステーと、前記一対のステーの前記更生対象の既設管側の端部を連結する連結ロッドを有し、前記垂直荷重受部は、前記連結ロッドから下方に延びる垂下部と、この垂下部の下端部から前記更生対象の既設管の管軸方向に延びて前記更生対象の既設管に挿入されてその管頂部に引掛けられる引掛部を有する。
この構成によれば、垂直荷重受部の引掛部を更生対象の既設管の管頂部に確実に引掛けることができる。
【0014】
好ましくは、前記支持フレームは、フレーム本体と、前記フレーム本体の前記更生対象の既設管と反対側に設けられたジャッキと、前記ジャッキの先端の支持金具に支持されて前記第1マンホール壁面に当たる壁面当接部材とを有し、前記第1ガイドローラは、前記支持金具に固定されたローラ支持手段により回転可能に支持される。
この構成によれば、第1ガイドローラを更生対象の既設管の管口から最大限に遠ざけることができ、到達側マンホール内での更生管の引き代を十分に確保することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の引込案内装置によれば、マンホールを介して連なる更生対象の既設管と他の既設管がいかなる配置関係にあっても、引込用案内装置を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】既設管への更生管の引き込み工程を示す概略縦断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る更生管引込用案内装置の側面図である。
【
図4】上記更生管引込用案内装置の一部構成を
図3においてA方向から見た図である。
【
図6】上記更生管引込用案内装置の支持フレームのフレーム本体を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、地中に埋設され老朽化した下水管等の既設管1が更生対象となる。既設管1は2つのマンホール2A,2B間にわたって延びている。既設管1は、その内側に更生管3をライニングすることにより、更生される。
【0018】
本実施形態の更生管3は、熱可塑性樹脂からなり円形断面の形状記憶機能を有している。更生管3は
図2に示すように予め扁平に潰されており、この扁平状態で既設管1に引き込まれる。引き込み工程が終了した後、更生管3は、その両端が既設管1の管口からマンホール2A,2Bに所定長さ突出した状態で、内部に高温蒸気を供給されて元の円形断面に戻り、続いて内部に圧縮空気を供給されて膨張し既設管1の内壁面に密着する。最後に更生管3の突出部分を切断してライニングによる既設管1の更生工程が完了する。
【0019】
更生管3の既設管1への引き込み工程について
図1を参照しながら簡単に説明する。発進側のマンホール2Aの近傍の地上には扁平断面形状の更生管3を巻回したドラム4が設置され、マンホール2Aの底部空間にはガイドローラを含む送込案内装置5(詳しくは図示しない)が設置されている。到達側のマンホール2Bの近傍の地上にはウインチ6が配置され、マンホール2Bの底部空間には後述するように2個のガイドローラを含む引込用案内装置7が配置されている。
【0020】
ウインチ6のワイヤ8(索条)を、到達側マンホール2Bにおいて引込用案内装置7に掛け渡して既設管1に通し、その先端を発進側マンホール2Aにおいて接続金具9を介して更生管3の先端に連結する。更生管3が送込案内装置5に掛けられた状態で、ウインチ6によりワイヤ8を巻き取ると、更生管3が既設管1に引き込まれる。
【0021】
<引込用案内装置の概略構成>
以下、引込用案内装置7の構成について、
図3~
図6を参照しながら説明する。引込用案内装置7は、既設管1の管軸方向に対向するマンホール壁面2x、2y間に架け渡されてほぼ水平に配置された支持フレーム10と、支持フレーム10の高さを調節するための高さ調節機構20と、この支持フレーム10において既設管1の反対側の端部(第1端部)寄りに設けられた第1ワイヤ掛部30(第1索条掛部)と、支持フレーム10において既設管1側の端部(第2端部)寄りに設けられた第2ワイヤ掛部40(第2索条掛部)と、支持フレーム10の上記第2端部に設けられた垂直荷重受部50と、を主たる構成として備えている。
【0022】
<支持フレームの構成>
支持フレーム10は、
図6に示す断面矩形の中空鋼材からなるフレーム本体11を有している。フレーム本体11は、同一水平面上において互いに平行をなして既設管1の管軸方向に延びる2本のステー11aと、これらステー11aの既設管1側の端部間にステー11と直交して掛け渡された連結ロッド11bとを有して、平面形状がコ字形をなしている。
【0023】
支持フレーム10はさらに、フレーム本体11の2本のステー11aの既設管1側の端部にそれぞれ着脱可能に装着された壁面当接部材12を備えている。この壁面当接部材12は、ステー11aに挿入される挿入ロッド12aと、この挿入ロッド12aの先端に固定された当て部12bとを有している。挿入ロッド12aは断面矩形の中空の鋼材からなり、その上壁には長手方向に等間隔をおいて複数の係合穴12xが形成されており、ステー11aの基端近傍の上壁を貫通するピン13をこれら係合穴12xに選択的に挿入することにより、ステー11からの突出量が調節される。
【0024】
支持フレーム10はさらに、2本のステー11のそれぞれに着脱可能に装着された2つのジャッキ15と壁面当接部材16を備えている。ジャッキ15は、ステー11に挿入された受け部材15aと.受け部材15aに挿入されたネジ棒15bと、ネジ棒15bに螺合されたハンドル付のナット15cと、ネジ棒15bの先端に固定された断面コ字形の支持金具15dとを有している。2つの支持金具15dに、壁面当接部材16が掛け渡されるようにして支持されている。
【0025】
<高さ調節機構の構成>
高さ調節機構20は、フレーム本体11の2本のステー11aにそれぞれ着脱可能に設けられている。高さ調節機構20は、到達側マンホール2Bの底面からの支持フレーム10の高さを調節するものであり、ブラケット21と、ネジロッド22と、接地盤23とを有している。ブラケット21は、その上端部のコ字形の取付部21aをステー11aに嵌めてビス止めすることによりステー11aに固定される。ネジロッド22は、ブラケット21の下端部の水平板部21bに螺合されるようになっており、ネジロッド62aを回すことにより、支持フレーム10の高さが調節される。
【0026】
<第1ワイヤ掛部の構成>
第1ワイヤ掛部30は、2つのジャッキ15の支持金具15dからそれぞれ下方に垂直に延びる一対のローラ支持部材31(ローラ支持手段)と、第1ガイドローラ35とを有している。各ローラ支持部材31は、断面矩形の中空の鋼材からなり上端が支持金具15dの下辺部に溶接等で固定された垂直の第1部材31aと、細長い鋼板からなり上部が第1部材31aに連結された第2部材31bとを有している。第1部材31aの壁には上下方向に等間隔に多数の係合穴(図示しない)が形成されており、第2部材31bには上下に2つの貫通穴(図示しない)が形成されている。2本のピン31cを2つの貫通穴にそれぞれ挿通し、選択された係合穴に係合させることにより、第2部材31bは第1部材31aに高さ調節可能に連結されている。
一対のローラ支持部材31の第2部材31bの下端部間に、溝付の第1ガイドローラ35が回転可能に支持されている。第1ガイドローラ35は、既設管1からその管軸方向に最大限に離れて配置され、既設管1の頂部より低い位置にある。本実施形態では、第1ガイドローラ35は、既設管1の管軸のほぼ延長線上に位置している。
【0027】
<第2ワイヤ掛部の構成>
第2ワイヤ掛部40は、フレーム本体11の2本のステー11aからそれぞれ上方に垂直に延びる一対のローラ支持部材41と、第2ガイドローラ45とを有している。各ローラ支持部材41は、断面矩形の中空の鋼材からなり垂直をなしてその下端部がステー11aの側面に溶接等で固定された第1部材41aと、細長い鋼板からなり上部が第1部材41aに溶接等により固定された第2部材41bとを有している。一対のローラ支持部材41の第2部材41bの上端部間に、溝付きの第2ガイドローラ45が回転可能に支持されている。第2ガイドローラ45は、支持フレーム10および第1ガイドローラ35より上方に位置している。
【0028】
<垂直荷重受部50の構成>
垂直荷重受部50は、フレーム本体11の連結ロッド11bの中央にビスで取り付けられた断面矩形をなす筒型の取付部51と、この取付部51の下面に上端が溶接されて下方に垂直に延びる垂下部52と、この垂下部52の下端に溶接されて第2ガイドローラ45の反対側に水平に突出する引掛部53とを有して略L字形をなしている。垂下部52と引掛部53も断面矩形をなす中空の鋼材からなる。
【0029】
引掛部53には例えば鋼製の保護部材55が着脱可能に装着されている。保護部材55は、円弧形状の当接部55aと、この当接部55aの中央部下面に形成された収容部55bを有している。この収容部55bに垂直荷重受部50の引掛部53が挿入されるようになっている。当接部55aの円弧の外径は、既設管1の内径より小さい。
【0030】
<引込用案内装置の設置工程>
引込用案内装置7を到達側マンホール2Bの底部空間に設置する工程について説明する。
図3~
図5に示すように、支持フレーム10に高さ調節機構20、第1ワイヤ掛部30、第2ワイヤ掛部40、垂直荷重受部50を装着した状態で、高さ調節機構20により、支持フレーム10を既設管1より高い位置に位置決めする。この位置決めにより、垂直荷重受部50の引掛部53が保護部材55を介して既設管1の管頂部に掛けられる。第1ガイドローラ35は、既設管1の菅頂部より低い位置にある。ガイドローラ35は、ローラ支持部材31の第2部材31bの高さを調節することにより、既設管1と更生管3が擦れないように、既設管1のサイズに合わせて適宜高さを調節することができる。
【0031】
壁面調節部材50の突出量を調節して支持フレーム10の水平方向の位置決めを行う。次に、ジャッキ15を伸ばすことにより、壁面当接部材12が既設管1の管軸方向に対向するマンホール2Bの壁面のうち、既設管1側のマンホール壁面2x(第2マンホール壁面)を押圧し、壁面当接部材16が既設管1の反対側のマンホール壁面2y(第1マンホール壁面)を押圧し、支持フレーム10を固定する。好ましくは、支持フレーム10に設置した傾斜計を見ながら、支持フレーム10の更生対象の既設管1側の端部が僅かに(1~5°)高くなるように傾斜させる。
【0032】
<更生管の引込工程>
次に、更生管3の引込工程を説明する。
図1、
図3に示すようにウインチ6のワイヤ8を、引き込み用案内装置7のガイドローラ45,35に順に架け渡して既設管1に通し、その先端を発進側マンホール2Aにおいてドラム4から引き出された更生管3の先端に接続金具9を介して接続する。なお、接続金具9は、更生管3の先端部が既設管1に擦れないように、接続部を覆うカバーを備えている。
【0033】
次に、ウインチ6を駆動してワイヤ8を牽引することにより、更生管3を既設管1に引き込む。この際、ガイドローラ35,45を介して支持フレーム10には水平荷重と垂直荷重が加わる。水平荷重は壁面当接部材12がマンホール壁面2xに当たることにより受け止めることができる。上方への垂直荷重は垂直荷重受部50の引掛部53が既設管1の菅頂部に掛かることにより受け止めることができる。引掛部53は、円弧形状の保護部材55を介して既設管1の菅頂部に引っ掛かるので既設管1の損傷を回避できる。
【0034】
上記第2ローラ45に付与される垂直荷重により、支持フレーム10には既設管1の菅頂部と垂直荷重受部50の引掛部53の当接点を中心とする回転モーメント(
図3において反時計回りの回転モーメント)が生じるが、第2ガイドローラ45が垂直荷重受部50に近いのでこの回転モーメントは比較的小さく、壁面当接部材16と壁面2yとの摩擦抵抗により対抗できる。本実施形態では支持フレーム10を僅かに傾斜させることにより、水平荷重受部40の壁面からの外れをより一層確実に防止することができる。
【0035】
支持フレーム10が既設管1の菅頂部より高い位置に配置されていることにより、既設管1が到達側マンホール2Bまで引き込まれた時に、接続金具9および更生管3の先端部との干渉を回避することができる。
また、第1ガイドローラ35が支持フレーム10から垂下するローラ支持部材31の下端部に支持されていて、既設管の管頂部より低い位置にあるので、既設管1内のワイヤ8を効率良く牽引することができるとともに、更生管3の引込工程の最終段階で、更生管3の先端、接続金具9およびワイヤ8が、既設管1の菅頂部や支持フレーム10と干渉するのを確実に回避することができる。
【0036】
第1ガイドローラ35は、既設管1の管口から最大限に離れているので、更生管3の引込工程の最終段階で、更生管3の先端を既設管1の管口から十分な引き代をもって引き出すことができる。
【0037】
上述したように、垂直荷重受部50が更生対象の既設管1に掛けられて垂直荷重を受け止めるので、更生対象の既設管1と到達マンホール2Bを介して連なる他の既設管1Aは、引込用案内装置7の作用に全く寄与せず無関係である。そのため、この既設管1Aは図示のように更生対象の既設管1に対して180°対向した位置に配管されていてもよいし、180°から外れて例えば100°の角度をなして配管されていてもよい。このように、本発明の引込用案内装置7は、既設管1,1Aがいかなる相対的な角度関係にあっても使用することができる。
また、他の既設管1Aが更生対象の既設管1に対して180°対向していても、既設管1,1Aの管頂部の高さの差が約15cm以上ある場合、既設管1Aの管口部が腐食している場合、既設管1Aの管口部がラッパ状になっている場合には、既設管1Aで垂直荷重を受け止める従来の引込用案内装置を使用することはできないが、本発明の引込用案内装置7を使用することができる。
【0038】
接続金具9が第1ガイドローラ35に接近し、更生管3の先端が所定長さだけ既設管1から引き出された時に、更生管3の引込工程が終了する。この後で、更生管3の先端を切断して接続金具9から切り離す。ガイドローラ35、45をローラ支持部材31、41から取り外してから、ワイヤ8を、接続金具9を着けたまま引き上げる。最後に、引込用案内装置7を分解して、マンホール2Bから撤収する。
【0039】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨に反しない限りにおいて種々の改変をなすことができる。第1ガイドローラ35はフレーム本体10の端部に設けてもよい。この場合、ジャッキ14を短くしてフレーム本体10を長くし、可能な限り更生対象の既設管1から遠ざけるのが好ましい。
更生管に接続される索条として、ワイヤの他にロープ等を用いてもよい。更生される既設管は下水管に限らず、上水管等であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、地中に埋設された下水管等の更生に適用できる。
【符号の説明】
【0041】
1 更生対象の既設管
2A 発進側マンホール
2B 到達側マンホール
2x 第2マンホール壁面
2y 第1マンホール壁面
3 更生管
6 ウインチ
7 更生管引込用案内装置
8 ワイヤ(索条)
10 支持フレーム
11 フレーム本体
11a ステー
11b 連結ロッド
15 ジャッキ
15d 支持金具
16 壁面当接部材
30 第1ワイヤ掛部(第1索条掛部)
31 ローラ支持部材(ローラ支持手段)
31a 第1部材
31b 第2部材
35 第1ガイドローラ
40 第2ワイヤ掛部(第2索条掛部)
45 第2ガイドローラ
50 垂直荷重受部
52 垂下部
53 引掛部