(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136060
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】盛土の構築方法及び盛土構造
(51)【国際特許分類】
E02D 17/18 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
E02D17/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047019
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】倉上 由貴
(72)【発明者】
【氏名】中島 進
(72)【発明者】
【氏名】冨田 佳孝
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 翔太
【テーマコード(参考)】
2D044
【Fターム(参考)】
2D044CA10
(57)【要約】
【課題】流動化処理土を用いて、簡易かつ迅速な施工が可能であり、雨水等の滞水や乾燥等の外的要因に対する耐久性を有する盛土の構築方法を提供する。
【解決手段】盛土1の外縁となる位置に袋体を配置して、その内部に充填材を充填して袋体型枠2を形成する工程と、袋体型枠よりも盛土内部側に中詰め材を充填した袋詰め材3を配置する工程と、袋体型枠及び袋詰め材の上面側に跨って、それぞれに引っ掛かりが確保できる突出部を有する定着材5を設置する工程と、袋体型枠の形成、袋詰め材の配置及び定着材の設置を、上方に向けて所定の回数繰り返す工程と、盛土内部側の袋詰め材が配置された空間に流動化処理土4を打設する工程と、流動化処理土の上面を保護層6で覆う工程とを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動化処理土を用いた盛土の構築方法であって、
盛土の外縁となる位置に袋体を配置して、前記袋体の内部に充填材を充填して袋体型枠を形成する工程と、
前記袋体型枠の形成と順序を問わず、前記袋体型枠よりも盛土内部側に、流動化処理土の透過が可能な有孔袋体に中詰め材を充填した袋詰め材を配置する工程と、
前記袋体型枠及び前記袋詰め材の上面側に跨って、それぞれに引っ掛かりが確保できる突出部を有する定着材を設置する工程と、
前記袋体型枠の形成、前記袋詰め材の配置及び前記定着材の設置を、上方に向けて所定の回数繰り返す工程と、
前記盛土内部側の前記袋詰め材が配置された空間に流動化処理土を打設する工程と、
前記流動化処理土の上面を保護層で覆う工程とを備えたことを特徴とする盛土の構築方法。
【請求項2】
前記定着材は、棒状の軸材と、前記軸材の少なくとも両端において軸直交方向に突出する突出部とによって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の盛土の構築方法。
【請求項3】
前記中詰め材は、礫材であることを特徴とする請求項1又は2に記載の盛土の構築方法。
【請求項4】
前記袋詰め材は、盛土幅方向に間隔を置いて形成された前記袋体型枠の間に配置し、前記袋体型枠間に前記流動化処理土を打設することを特徴とする請求項1又は2に記載の盛土の構築方法。
【請求項5】
流動化処理土を用いた盛土構造であって、
盛土の外縁となる位置に設けられた袋体の内部に充填材が充填された袋体型枠と、
前記袋体型枠よりも盛土内部側に配置された有孔袋体に中詰め材が充填された袋詰め材と、
前記袋体型枠及び前記袋詰め材の上面側に跨って、それぞれに突出部を引っ掛かけた状態で設置された定着材と、
前記盛土内部側の前記袋詰め材が配置された空間に充填された流動化処理土と、
前記流動化処理土の上面を覆う保護層とを備えたことを特徴とする盛土構造。
【請求項6】
前記定着材は、棒状の軸材と、前記軸材の少なくとも両端において軸直交方向に突出する突出部とによって形成されていることを特徴とする請求項5に記載の盛土構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動化処理土を用いた盛土の構築方法及び盛土構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道用盛土の工事では、狭隘部などの施工空間が充分に確保できず作業効率が低くなる箇所での施工や、夜間などの限られた時間での施工が多く、施工の急速化・省力化に関する需要が高い。
【0003】
一般的な盛土の構築では、盛土材料の締固め作業を伴うことになるが、狭隘箇所では、小型施工機械や人力作業による施工となるため、特に省力化が求められている。また、近年では集中豪雨による鉄道土構造物の被害が増加しており、重機等の搬入が困難な箇所での早期復旧に対する需要も増えている。
【0004】
ところで流動化処理土は、施工時(打設時)は高い流動性及び充填性を有しており、その後、固化する特性があることから、土構造物特有の盛土材料の締固め作業が不要となり、従来の土質材料を使用した場合と比べて、急速化・省力化が図れるようになる。例えば特許文献1には、複数の箱体又は袋体に充填物を充填した堰堤内に、流動化処理土を打設する盛土の施工方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、流動化処理土は、雨水等の滞水、または外気による乾燥といった外的要因によって劣化する特性がある。例えば鉄道用盛土として長期的に列車荷重を支持する性能を確保するためには、これらの外的要因から防護し、耐久性を向上させる手段が必要である。また、短時間で施工を行うためには、流動化処理土を一度にできるだけ高く打設できるのが望ましい。
【0007】
そこで、本発明は、流動化処理土を用いて、簡易かつ迅速な施工が可能であり、雨水等の滞水や乾燥等の外的要因に対する耐久性を有する盛土の構築方法及び盛土構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の盛土の構築方法は、流動化処理土を用いた盛土の構築方法であって、盛土の外縁となる位置に袋体を配置して、前記袋体の内部に充填材を充填して袋体型枠を形成する工程と、前記袋体型枠の形成と順序を問わず、前記袋体型枠よりも盛土内部側に、流動化処理土の透過が可能な有孔袋体に中詰め材を充填した袋詰め材を配置する工程と、前記袋体型枠及び前記袋詰め材の上面側に跨って、それぞれに引っ掛かりが確保できる突出部を有する定着材を設置する工程と、前記袋体型枠の形成、前記袋詰め材の配置及び前記定着材の設置を、上方に向けて所定の回数繰り返す工程と、前記盛土内部側の前記袋詰め材が配置された空間に流動化処理土を打設する工程と、前記流動化処理土の上面を保護層で覆う工程とを備えたことを特徴とする。
【0009】
ここで、前記定着材は、棒状の軸材と、前記軸材の少なくとも両端において軸直交方向に突出する突出部とによって形成されている構成とすることができる。また、前記中詰め材は、礫材であることが好ましい。さらに、前記袋詰め材は、盛土幅方向に間隔を置いて形成された前記袋体型枠の間に配置し、前記袋体型枠間に前記流動化処理土を打設する構成とすることができる。
【0010】
また、盛土構造の発明は、流動化処理土を用いた盛土構造であって、盛土の外縁となる位置に設けられた袋体の内部に充填材が充填された袋体型枠と、前記袋体型枠よりも盛土内部側に配置された有孔袋体に中詰め材が充填された袋詰め材と、前記袋体型枠及び前記袋詰め材の上面側に跨って、それぞれに突出部を引っ掛かけた状態で設置された定着材と、前記盛土内部側の前記袋詰め材が配置された空間に充填された流動化処理土と、前記流動化処理土の上面を覆う保護層とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
このように構成された本発明の盛土の構築方法では、まず、盛土の外縁となる位置に袋体型枠を形成し、それよりも盛土内部側に配置された袋詰め材との間を、突出部が引っ掛かりとなる定着材によって繋ぐ。
【0012】
このため、袋体型枠の盛土内部側に打設される流動化処理土の液圧に対して、袋体型枠の自重だけでなく、定着材を介して得られる袋詰め材による反力によっても抵抗させることができる。
【0013】
この結果、一度に高い位置まで流動化処理土を打設することができるようになって、簡易かつ迅速な盛土の構築が可能になる。また、袋体型枠及び保護層によって流動化処理土の表面が覆われることで、雨水等の滞水や乾燥等の外的要因に対する耐久性を向上させることができる。
【0014】
また、盛土構造の発明では、盛土の外縁となる位置に設けられた袋体型枠と、それよりも盛土内部側に配置された袋詰め材との間が、突出部が引っ掛かりとなる定着材によって連結された状態になる。
【0015】
このように盛土の外縁に配置された袋体型枠が、中詰め材及びその周囲の流動化処理土により定着材を介して支持される構造になれば、地震時に袋体型枠に作用する慣性力に抵抗する反力機構を備えた盛土構造にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施の形態の盛土構造の構成を模式的に示した説明図である。
【
図2】袋体型枠と袋詰め材と定着材との配置関係を説明する図であって、(a)は定着材の両端にのみ突出部がある構成の説明図、(b)は定着材の両端及び中間に突出部がある構成の説明図である。
【
図3】定着材の突出部を例示した図であって、(a)は十字形の突出部の説明図、(b)はX字形の突出部の説明図、(c)は長方形の突出部の説明図である。
【
図4】本実施の形態の盛土の構築方法の袋体型枠及び袋詰め材の配置工程を模式的に示した説明図である。
【
図5】1段目の定着材を架け渡す工程を示した説明図である。
【
図6】2段目の袋体型枠及び袋詰め材の配置並びに定着材を架け渡す工程を示した説明図である。
【
図7】所定の段数の袋体型枠、袋詰め材及び定着材を配置した状態を示した説明図である。
【
図8】流動化処理土が打設された状態を示した説明図である。
【
図9】盛土の最上面を保護層で覆った状態を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施の形態の盛土構造の構成を模式的に示した説明図である。
【0018】
図1の盛土1は、例えば列車などを走行させる軌道の路床となる鉄道用盛土の横断面を示している。この盛土1の用途は、鉄道用盛土に限定されるものではなく、自動車を走行させる道路用盛土などであってもよいが、繰り返しの載荷にも耐えうる構造に構築される。
【0019】
本実施の形態の盛土1は、外縁となる位置に設けられる袋体型枠2と、袋体型枠2よりも盛土内部側に配置される袋詰め材3と、袋体型枠2及び袋詰め材3の上面側に跨って配置される定着材5と、盛土内部側に充填される流動化処理土4と、流動化処理土4の最上面を覆う保護層6とを備えている。
【0020】
盛土1の外縁に配置される袋体型枠2は、袋体の内部に充填材が充填されることによって、例えば直方体に形成される。袋体型枠2の袋体は、耐候性及び強度に優れた例えば合成繊維等を材料として製作され、コンクリートや流動化処理土等の充填材を充填するための注入口を有している。
【0021】
充填材を充填する前の袋体は、例えば折り畳んで、人力で運搬や設置が可能な重量や大きさであることが好ましい。要するに、盛土1の外縁となる位置に空の袋体を設置した後に、注入口から充填材を充填するのであれば、重量の大きな袋体型枠2を移動させる必要がなく、迅速かつ容易に、所定の位置に袋体型枠2を設けることができる。
【0022】
袋体型枠2は、保護層6を除いた盛土1の高さになるまで積み上げられる。例えば、高さ50cm程度の袋体型枠2を2段から10段程度積み上げて、高さが1mから5m程度の盛土1を構築することができる。
【0023】
袋体型枠2の長手方向(
図1の紙面直交方向)の寸法は、特に制限されるものではないが、盛土1の長手方向に沿って配置される長尺形状とすると、例えば数mから50m程度の長さにすることができる。
【0024】
袋詰め材3は、有孔袋体に中詰め材が充填されることによって形成される。有孔袋体は、中詰め材の流出を防ぎながらも流動化処理土の透過が可能なネット等でできた袋である。有孔袋体は、網目状の袋体であってもよいし、シートに多数の孔が穿孔された袋体であってもよい。
【0025】
袋詰め材3の中詰め材には、例えば栗石や巨礫等の礫材が使用できる。例えば粒径50mm程度以上の粗礫を中詰め材として使用することができる。有孔袋体に粗礫を充填した場合、流動化処理土のような流動性の高い材料は、有孔袋体の孔を透過して内部に入り込んだ後に、粗礫間の空隙にも充填されることになる。
【0026】
図2は、袋体型枠2と袋詰め材3と定着材5との配置関係を模式的に説明する図である。定着材5は、棒状の軸材51と、軸材51の少なくとも両端において軸直交方向に突出する突出部52とを備えている。
【0027】
定着材5の軸材51は、異形鉄筋や丸鋼などの剛性のある軸力材によって形成されている。突出部52は、袋体型枠2及び袋詰め材3に対してそれぞれ引っ掛けた状態にできればよいので、例えば下方にのみ突出される形状であってもよい。
図2(a)は、定着材5の両端に上下両方に突出させた突出部52がある構成を側方から見た説明図である。突出部52が、上下両方に突出していれば、下段の袋体型枠2及び袋詰め材3に引っ掛けられるだけでなく、上段の袋体型枠2及び袋詰め材3(
図1参照)にも引っ掛けることができるようになる。
【0028】
一方、
図2(b)は、定着材5の両端及び中間に突出部52がある構成の説明図である。袋体型枠2の盛土内部側に複数の袋詰め材3が配置される場合は、それぞれの袋詰め材3との引っ掛かりを確保するために、軸材51の中間の位置にも突出部52を設けることができる。
【0029】
図3は、定着材5の突出部52を例示した図である。突出部52は、軸材51の軸直交方向の上方又は下方の少なくとも一方に突出していればよいうえに、形状についても様々なものが適用できる。
【0030】
図3(a)は、十字形の突出部52Aの説明図である。この突出部52Aは、真上と真下に棒状に突起が延伸されているとともに、左右にも突起が延伸されている。左右の突起は、
図3(a)では袋詰め材3への引っ掛かりになっていないように見えるが、自在に変形可能な袋詰め材3を積み上げた際には、引っ掛かりとして機能することになる。
【0031】
図3(b)は、X字形の突出部52Bの説明図である。この突出部52Bは、
図3(a)の突出部52Aを軸材51まわりに45°回転させた配置であって、上下に配置される袋詰め材3との引っ掛かりがより確実に得られることになる。
【0032】
図3(c)は、正方形(長方形)の突出部52Cの説明図である。突出部52Cは、板材などの面材であってもよく、その形状も、縦長の長方形、楕円形、円形など任意に選択することができる。
【0033】
袋詰め材3が配置された空間に充填される流動化処理土4は、建設発生土などに水やセメント等の固化材を混ぜ合わせた一般的なものを用いることができる。流動化処理土を用いた盛土1に保護層6を設ける場合は、流動化処理土の一軸圧縮強度を600kPa程度以上とすれば、列車荷重の繰返し作用に耐えうる盛土構造にすることができる。例えば、本実施の形態の盛土1では、28日強度で1200kPaとなる配合の流動化処理土4を用いる。
【0034】
流動化処理土4の上面を覆う保護層6は、流動化処理土4の劣化を抑えることができるものであれば特に制限されるものではない。鉄道用盛土の場合は、路床の上面に路盤として敷き均される粒度調整砕石を保護層6とすることもできる。
【0035】
また、保護層6を、透水性が異なる二種類の層を重ねて形成することもできる。例えば、流動化処理土4の直上の下層を透水性が高い例えば粗い礫層とし、上層を粒子の細かい砂層とする。このように上層の透水性を低くすることで、上層や、上層と下層との境界での排水を促進させ、下層を介して流動化処理土4に雨水が浸漬されるのを抑えることができる。保護層6全体の厚さは、例えば30cm程度とする。
【0036】
保護層6を設けることで、流動化処理土4の過剰な乾燥を防いだり、列車等の荷重の分散効果を持たせたりすることもできる。保護層6は、少なくとも流動化処理土4の最上面を覆う範囲に設けられ、
図1に示すように袋体型枠2の最上面を覆ってもよい。
【0037】
次に、本実施の形態の盛土の構築方法の工程を、
図4-
図9を参照しながら説明する。
まず、最初の工程では、
図4に示したように、1段目の袋体型枠2の形成と、1段目の袋詰め材3の配置とを行う。袋体型枠2の形成と袋詰め材3の配置は、どちらを先に行ってもよいし、並行して行ってもよい。
【0038】
1段目の袋体型枠2の形成について説明すると、まず盛土1の外縁となる位置に空の袋体を配置する。例えば盛土1の両側縁となる位置に、折り畳まれた状態の袋体を人力で運んで設置する。そして、袋体の注入口から、流動化処理土やモルタルなどの充填材を内部に充填し、直方体状に膨張させる。
【0039】
一方、盛土幅方向に間隔を置いて形成される袋体型枠2の間(盛土内部側)には、1段目の袋詰め材3を配置する。袋詰め材3は、人力で運搬できる程度の重量となるように予め作製しておくことができる。これによって、盛土構築箇所での作業時間を短縮することができる。
【0040】
1段目の袋体型枠2及び袋詰め材3の配置後に、それらの上面側に跨るように定着材5を設置する。定着材5は、盛土1の延伸方向に間隔を置いて設置する。定着材5は、軸材51の部分が袋体型枠2及び袋詰め材3の上に載せられるので、置くだけで安定して設置することができる。
【0041】
定着材5の軸材51の少なくとも両端には、それぞれ突出部52が形成されているので、一方の突出部52は袋体型枠2の外側面に接触させ、他方の突出部52は袋詰め材3の端などに接触させる(
図2(a)参照)。
【0042】
続いて
図6に示すように、2段目の袋体型枠2の形成、袋詰め材3の配置及び定着材5の設置を行う。2段目の袋体型枠2についても、1段目と同様に、折り畳まれた状態の袋体を人力で運んで1段目の袋体型枠2の上に設置し、その袋体の内部に充填材を充填することで直方体状に膨張させる。
【0043】
また、袋体型枠2よりも盛土内部側に配置する2段目の袋詰め材3は、1段目の定着材5の上に置かれる。これにより、上下の袋詰め材3で挟まれた1段目の定着材5は、固定された状態になる。ここで、1段目の定着材5の突出部52の上方に突出した箇所は、2段目の袋体型枠2及び袋詰め材3にそれぞれ接触することになる。
【0044】
そして、2段目の袋体型枠2及び袋詰め材3の配置後に、それらの上面側に跨るように2段目の定着材5を設置する。2段目の定着材5についても、両端の突出部52を、2段目の袋体型枠2の外側面及び袋詰め材3の端に接触させる。
【0045】
図7は、この例において所定の回数となる6段目まで袋体型枠2の形成、袋詰め材3の配置及び定着材5の設置を繰り返した後に、7段目の袋体型枠2の形成を行った状態を示している。最上段については、流動化処理土4の最上面の平坦性を確保するために、袋詰め材3の配置と定着材5の設置は行わない。
【0046】
そして続く工程では、盛土内部側の袋詰め材3が積み上げられた空間に、流動化処理土4を打設する。
図8は、流動化処理土4が打設された状態を示した説明図である。すなわち本実施の形態の盛土の構築方法では、流動化処理土4を袋体型枠2の1段ごとに打設するのではなく、複数段に積み上げられた袋体型枠2の内側に、一度に流動化処理土4を打設することができる。
【0047】
流動化処理土4は、固化する前は流動体であり、それによる液圧が側圧として袋体型枠2の内側から作用することになる。この側圧は、袋体型枠2を積み上げた高さが高いほど下方において大きくなるが、各段に設置された定着材5によって、その側圧に抵抗させることができる。
【0048】
すなわち、流動化処理土4の打設時の側圧に対しては、袋体型枠2の自重でも抵抗させることができるが、突出部52が袋詰め材3に引っ掛けられた定着材5が設置されていることで、袋体型枠2の外側への移動に対する抵抗力として寄与させることができる。
【0049】
盛土幅方向に間隔を置いて形成された複数段の袋体型枠2の間に打設された流動化処理土4は、積み上げられた袋詰め材3間に充填されるとともに、有孔袋体の孔から袋詰め材3の内部にも浸透し、中詰め材の空隙にも充填されることになる。
【0050】
続く工程では、流動化処理土4の最上面を保護層6で覆う。
図9は、盛土1の最上面を保護層6で覆った状態を示した説明図である。保護層6は、流動化処理土4の最上面だけでなく、袋体型枠2の最上面も覆うように設けられる。
【0051】
次に、本実施の形態の盛土の構築方法、及びそれによって構築される盛土構造の作用について説明する。
【0052】
このように構成された本実施の形態の盛土の構築方法では、まず、盛土1の外縁となる位置に袋体型枠2を形成し、それよりも盛土内部側に配置された袋詰め材3との間を、突出部52が引っ掛かりとなる定着材5によって繋ぐ。
【0053】
このため、袋体型枠2の盛土内部側に打設される流動化処理土4の液圧に対して、袋体型枠2の自重だけでなく、定着材5を介して得られる袋詰め材3による反力によっても抵抗させることができる。
【0054】
この結果、一度に高い位置まで連続して流動化処理土4を打設することができるようになって、簡易かつ迅速な盛土の構築が可能になる。鉄道用盛土における工事では、狭隘部等の作業効率が低い箇所での施工や、夜間等の限られた時間での施工が多いが、本実施の形態の盛土の構築方法であれば、施工の急速化・省力化に貢献することができる。
【0055】
さらに、袋体型枠2よりも盛土内部側に配置する袋詰め材3は、盛土構築箇所に隣接した作業ヤードなどで予め作製することができるので、盛土構築箇所での作業時間を短縮することが可能になる。鉄道工事では、夜間の数時間という間合いで施工することが多く、このような短い施工時間においても効率的に盛土1を構築することができるようになる。
【0056】
また、このようにして構築された盛土構造は、盛土1の外縁となる位置に設けられた袋体型枠2と、それよりも盛土内部側に配置された袋詰め材3との間が、突出部52が引っ掛かりとなる定着材5によって連結された状態になっている。
【0057】
このように盛土1の外縁に配置された袋体型枠2が、袋詰め材3及びその周囲の流動化処理土4により定着材5を介して支持される構造になれば、施工中の流動化処理土4の側圧に抵抗できるだけでなく、施工後においても、地震時に袋体型枠2に作用する慣性力に抵抗する反力機構にすることができる。
【0058】
また、袋体型枠2及び保護層6によって流動化処理土4の側面や上面などの表面が覆われることによって、雨水等の滞水や乾燥等の外的要因との接触が低減されて、耐久性を有する盛土1にすることができる。
【0059】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0060】
例えば前記実施の形態では、新たに盛土1を構築する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、盛土の斜面が地震や豪雨などによって崩壊したときに、崩壊した側の斜面の復旧においても本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 :盛土
2 :袋体型枠
3 :袋詰め材
4 :流動化処理土
5 :定着材
51 :軸材
52,52A-52C:突出部
6 :保護層