(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136061
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】送風装置及び送風方法
(51)【国際特許分類】
F04D 27/00 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
F04D27/00 Z
F04D27/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047020
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】津端 大
(72)【発明者】
【氏名】池田 真弓
(72)【発明者】
【氏名】市山 智
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 健太
(72)【発明者】
【氏名】向山 卓也
(72)【発明者】
【氏名】廣田 裕太郎
【テーマコード(参考)】
3H021
【Fターム(参考)】
3H021CA06
3H021CA09
3H021EA01
3H021EA05
3H021EA12
(57)【要約】
【課題】乗員の快適性を向上可能な送風装置及び送風方法を提供すること。
【解決手段】本開示に係る送風装置1は、乗員が車体枠に覆われていない状態で走行する車両が備える送風装置である。送風装置1は、周囲の環境に関する環境情報を取得する環境情報取得部11と、環境情報に基づいて乗員が不快さを感じるか否かを判定する判定部12と、環境情報に基づいて乗員に対して当たる風の向きを特定する特定部13と、判定部12が、乗員が不快さを感じると判定した場合、特定部13が特定した風の向きに対向する方向に向けて送風する送風部14とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員が車体枠に覆われていない状態で走行する車両が備える送風装置であって、
周囲の環境に関する環境情報を取得する環境情報取得部と、
前記環境情報に基づいて、前記乗員が不快さを感じるか否かを判定する判定部と、
前記環境情報に基づいて、前記乗員に対して当たる風の向きを特定する特定部と、
前記判定部が、乗員が不快さを感じると判定した場合、前記特定部が特定した風の向きに対向する方向に向けて送風する送風部と、を備える、
送風装置。
【請求項2】
前記車両が走行中の場合、前記送風部が、前記車両の進行方向に向けて送風する、
請求項1に記載の送風装置。
【請求項3】
前記環境情報取得部が、前記車両の運転制御情報を、前記環境情報として取得する、
請求項1又は2に記載の送風装置。
【請求項4】
前記送風部が、周囲から取り込んだ空気を、フィルタを介して送風する、
請求項1又は2に記載の送風装置。
【請求項5】
乗員が車体枠に覆われていない状態で走行する車両において、コンピュータが、
周囲の環境に関する環境情報に基づいて、前記乗員が不快さを感じるか否かを判定し、
前記環境情報に基づいて、乗員に対して当たる風の向きを特定し、
乗員が不快さを感じると判定した場合、特定した風の向きに対向する方向に向けて送風することを決定する、
送風方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、送風装置及び送風方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、オープンカー用の気象影響低減システムが記載されている。特許文献1に記載の気象影響低減システムは、オープンカーのシート上方に空気を吹き出すことで、雨等の異物を車両後方に弾く合成気流を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、例えば、電動キックボード等の乗員が車体枠に覆われていない状態で走行する車両の開発が進んでいる。このような車体枠に覆われていない状態で走行する車両は、前述したオープンカーにみられるようなウインドシールドを備えていないため、あらゆる方向から乗員に対して風が当たる。ここで、乗員に対して当たる風は、乗員が感じる不快さの原因になることがある。
【0005】
前述したように、特許文献1に記載の気象影響低減システムは、ウインドシールドや、車体枠を備えるオープンカーに適用されるため、シート上方のみに送風することで乗員が感じる不快さを軽減しようとしている。
【0006】
しかしながら、前述したように、車体枠に覆われていない状態で走行する車両においては、あらゆる方向から乗員に対して風が当たるため、特定の方向に送風するのみでは、十分に乗員の不快さを軽減できない。
また、車両の周囲の環境によっては、乗員に対して当たる風に環境中の不快さを感じる要素(異臭等)が加わり、乗員の不快さを増大させることがある。
つまり、特許文献1に記載の気象影響低減システムにおいては、車体枠に覆われていない状態で走行する車両の乗員の快適性を十分に向上できていないという課題があった。
【0007】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであって、乗員の快適性を向上可能な送風装置及び送風方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る送風装置は、
乗員が車体枠に覆われていない状態で走行する車両が備える送風装置であって、
周囲の環境に関する環境情報を取得する環境情報取得部と、
前記環境情報に基づいて、前記乗員が不快さを感じるか否かを判定する判定部と、
前記環境情報に基づいて、前記乗員に対して当たる風の向きを特定する特定部と、
前記判定部が、乗員が不快さを感じると判定した場合、前記特定部が特定した前記風の向きに対向する方向に向けて送風する送風部と、を備える、
送風装置である。
【0009】
本開示の一態様に係る送風方法は、乗員が車体枠に覆われていない状態で走行する車両において、
コンピュータが、
周囲の環境に関する環境情報に基づいて、前記乗員が不快さを感じるか否かを判定し、
前記環境情報に基づいて、前記乗員に対して当たる風の向きを特定し、
乗員が不快さを感じると判定した場合、特定した前記風の向きに対向する方向に向けて送風することを決定する、
送風方法である。
【発明の効果】
【0010】
本開示によって、乗員の快適性を向上可能な送風装置及び送風方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施形態に係る送風装置の構成を説明するための模式図である。
【
図2】第1の実施形態に係る送風装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】第1の実施形態に係る環境情報取得部の構成を示すブロック図である。
【
図4】第1の実施形態に係る送風部の構成を示すブロック図である。
【
図5】第1の実施形態に係る送風装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
<送風装置の構成>
以下、図面を参照しながら、本開示に係る第1の実施形態について詳細に説明する。まず始めに、本実施形態に係る送風装置の構成について詳細に説明する。
【0013】
図1は、第1の実施形態に係る送風装置の構成を説明するための模式図である。より詳細には、
図1は、本実施形態に係る送風装置1と、送風装置1が導入された車両Vと、車両Vの乗員Dとを図示した模式図である。
【0014】
車両Vは、乗員Dが車体枠に覆われていない状態で走行する車両である。
本実施形態に係る車両Vは、
図1に示すような電動キックボードであり、ハンドルバーに本実施形態に係る送風装置1を備えている。
【0015】
ただし、本開示に係る送風装置を導入可能な車両は、電動キックボードに限定されず、乗員が車体枠に覆われていない状態で走行する車両であればどのような車両であってもよい。例えば、本開示に係る送風装置は、原動機付き自転車や、自動二輪車、自動三輪車、自転車等に導入されてもよい。
【0016】
本実施形態に係る送風装置1は、乗員が不快さを感じる場合や乗員が不快さを感じるおそれがある場合に、乗員に対して当たる風の向きに対向する方向に向けて送風する装置である。本実施形態に係る送風装置1は、
図1に示すように車両Vのハンドルバーに設けられている。
【0017】
図2は、第1の実施形態に係る送風装置の構成を示すブロック図である。
本実施形態に係る送風装置1は、環境情報取得部11、判定部12、特定部13、及び送風部14を備える。
【0018】
なお、送風装置1は、例えば図示しないCPU(Central Processing Unit)等の演算部と、演算部を制御するためのプログラムやデータ等が格納されたRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等の記憶部とを備えている。すなわち、送風装置1は、コンピュータとしての機能を有しており、上記プログラムに基づいて動作する。
【0019】
そのため、
図2に示す送風装置1を構成する各機能ブロック、特に、環境情報取得部11、判定部12、及び特定部13は、ハードウェア的には、上記CPU、記憶部、その他の回路等によって構成でき、ソフトウェア的には、記憶部に格納された送風装置1を制御するためのプログラム等によって実現できる。
即ち、送風装置1は、ハードウェア、ソフトウェア、あるいは両者の組み合わせによって、様々な形態で実現できる。
【0020】
なお、プログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、実施形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、random-access memory(RAM)、read-only memory(ROM)、フラッシュメモリ、solid-state drive(SSD)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、digital versatile disc(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、またはその他の形式の伝搬信号を含む。
【0021】
本実施形態に係る送風装置1は単一の装置として実現されているが、本開示に係る送風装置の構成はこれに限定されず、複数の装置の組み合わせとして実現されてもよい。
また、本実施形態に係る送風装置1はその構成の全てが、車両Vに設けられているが、本開示に係る送風装置の構成はこれに限定されず、構成の一部が車両Vの外部に設けられていてもよい。
例えば、本開示に係る送風装置は、環境情報取得部11、判定部12、及び特定部13を備える外部サーバと、車両Vが備える送風部14との組み合わせとして実現されてもよい。
【0022】
環境情報取得部11は、車両Vの周囲の環境に関する環境情報を取得する。環境情報取得部11は、取得した環境情報を、判定部12及び特定部13に対して出力する。
なお、ここでいう環境情報とは、少なくとも乗員Dが不快さを感じる要素に関する情報と、乗員Dに当たる風の向きに関する情報とを含む情報であり、例えば、車両Vの周囲の気象情報や、地図情報、車両Vの運転制御情報等を含む。
【0023】
図3は、第1の実施形態に係る環境情報取得部11の構成を示すブロック図である。本実施形態に係る環境情報取得部11は、気象情報取得部111と、地図情報取得部112と、運転制御情報取得部113とを備える。
【0024】
気象情報取得部111は、車両Vの周囲の気象情報を取得する。
より詳細には、気象情報取得部111は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)等の人工衛星を利用した位置情報提供システムから車両Vの位置情報を取得する。そして、気象情報取得部111は、取得した位置情報における気象情報を外部サーバから取得する。
【0025】
本実施形態に係る気象情報取得部111が取得する気象情報は、例えば、降雨や日照等の天候に関する情報や、気温及び湿度に関する情報、風向き及び風の強さ(風速等)に関する情報等を含む。
ここで、天候に関する情報に基づくと、例えば、乗員Dが雨に打たれているか否か等を推定できる。そのため、天候に関する情報は、上述した乗員Dが不快さを感じる要素に関する情報に該当する。
また、気温及び湿度に関する情報に基づくと、例えば、乗員Dが暑いと感じているか否か、また、寒いと感じているか否か等を推定できる。そのため、気温及び湿度に関する情報は、上述した乗員Dが不快さを感じる要素に関する情報に該当する。
また、風向きに関する情報は、乗員Dに当たる風の向きを特定するための一要素となる。つまり、風向きに関する情報は、乗員Dに当たる風の向きに関する情報に該当する。また、風の強さに関する情報は、乗員Dが風を強いと感じているか否か等を推定できる。そのため、風の強さに関する情報は、上述した乗員Dが不快さを感じる要素に関する情報に該当する。
【0026】
なお、本実施形態に係る気象情報取得部111が取得する情報は、上述した情報に限定されず、気象情報取得部111は、例えば、上述した情報の一部を取得するような構成であってもよいし、上述した情報以外の気象に関連する情報を取得するような構成であってもよい。
【0027】
また、気象情報取得部111は、送風装置1が備える図示しない風速センサにより、風向き及び風の強さに関する情報を取得してもよい。なお、乗員が不快さを感じると判定した場合に、送風装置1は乗員Dに当たる風の向きに対向する方向から風を送風するので、乗員Dが不快さを感じる要素に関する情報を適切に取得するためには、風速センサを送風装置1から送風される風の影響が及ばない車両Vの位置に取り付けることが好ましい。
【0028】
地図情報取得部112は、車両Vの周囲の地図情報を取得する。
より詳細には、地図情報取得部112は、例えば、GNSS等の人工衛星を利用した位置情報提供システムから車両Vの位置情報を取得する。そして、地図情報取得部112は、取得した位置情報における地図情報を外部サーバから取得する。
【0029】
本実施形態に係る地図情報取得部112が取得する情報は、例えば、車両Vが走行する路面に関する情報や、車両Vが走行する周囲の施設や地形に関する情報等を含む。
ここで、路面に関する情報に基づくと、例えば、舗装されていない路面において乗員Dに当たったり、付着したりするおそれがある土埃等の乗員Dの不快さの要因となる粒子が、車両Vの周囲に存在しているか否か等を推定できる。そのため、路面に関する情報は、上述した乗員Dが不快さを感じる要素に関する情報に該当する。
また、車両Vが走行する周囲の施設や地形に関する情報に基づくと、例えば、周囲に異臭を放つ施設等の乗員Dの不快さの要因となる施設が、車両Vの周囲に存在しているか否か等を推定できる。そのため、周囲の施設や地形に関する情報は、上述した乗員Dが不快さを感じる要素に関する情報に該当する。
【0030】
なお、本実施形態に係る地図情報取得部112が取得する情報は、上述した情報に限定されず、地図情報取得部112は、例えば、上述した情報の一部を取得するような構成であってもよいし、上述した情報以外の地図に関連する情報を取得するような構成であってもよい。
【0031】
運転制御情報取得部113は、車両Vの運転制御情報を取得する。
より詳細には、運転制御情報取得部113は、車両Vの運転を制御する図示しない制御装置から、車両Vの運転制御情報を取得する。
【0032】
本実施形態に係る運転制御情報取得部113が取得する運転制御情報は、例えば、車両Vの走行速度に関する情報や、車両Vの走行方向に関する情報等を含む。
ここで、車両Vの走行速度に関する情報や、車両Vの走行方向に関する情報に基づくと、乗員Dに当たる風の向きや風の強さ等を推定できる。つまり、車両Vの走行速度に関する情報や、車両Vの走行方向に関する情報は、乗員Dに当たる風の向きに関する情報に該当する。
【0033】
図2の説明に戻る。
判定部12は、環境情報取得部11から環境情報を取得する。そして、判定部12は、環境情報に基づいて、乗員Dが不快さを感じるか否かを判定する。判定部12は、乗員Dが不快さを感じると判定した場合、その旨を送風部14に対して通知する。
【0034】
より詳細には、本実施形態に係る判定部12は、環境情報取得部11から、気象情報、地図情報、及び運転制御情報を、環境情報として取得する。そして、これらの情報を複合的に用いて、乗員Dが不快さを感じるか否かを判定する。
【0035】
例えば、判定部12は、一般的に不快さを感じる環境の要素を予め設定し、取得した気象情報、地図情報、及び運転制御情報に対して、不快さを感じる環境の要素の有無や度合い等から、乗員Dが不快さを感じるか否かを判定してもよい。
また、判定部12は、後述するように生体反応検出センサの検出情報を用いて、リアルタイムに乗員Dが不快さを感じるか否かを判定してもよい。
さらに、判定部12は、乗員ごとに不快さの感じる環境の要素に関する情報を予め設定して、乗員ごとに不快さを感じるか否かを判定してもよい。
【0036】
例えば、運転制御情報の車両Vの走行速度が10km/h程度で、気象情報の風速が5m/s(18km/h)程度、風の向きが車両Vの進行方向に対して逆向き(向かい風)である場合、乗員Dに対して当たる風の強さは、28km/h程度に相当する。この場合、判定部12は、乗員Dが不快さを感じていると判定してもよい。
判定する基準は、例えば乗員Dに対して当たる風の強さが20km/h等の所定値以上であるか否かでもよく、ユーザごとに判定基準値が設定可能であってもよい。
【0037】
特定部13は、環境情報取得部11から環境情報を取得する。そして、特定部13は、環境情報に基づいて、乗員Dに対して当たる風の向きを特定する。特定部13は、特定した風の向きを送風部14に対して出力する。送風部14は、特定部13が特定した風の向きに対向する方向に送風するが、対向する送風方向の範囲は、例えば、特定した風の向きを0度として、90~180度にしてもよい。
【0038】
より詳細には、本実施形態に係る特定部13は、環境情報取得部11から、気象情報、地図情報、及び運転制御情報を、環境情報として取得する。そして、これらの情報を複合的に用いて、乗員Dに対して当たる風の向きを特定する。
【0039】
例えば、気象情報の風速が略0m/s(自然の風がほとんど無い状況)で、運転制御情報の車両Vの走行速度が10km/h程度の場合、乗員Dに対して当たる風は走行による風のみとなる。この場合、特定部13は、乗員Dに対して当たる風の向きは、車両Vの前方(進行方向)と特定してもよい。
【0040】
例えば、運転制御情報の車両Vの走行速度が3km/h程度で、気象情報の風速が10m/s程度、風の向きが車両Vの進行方向に対して略直角の右側の場合、特定部13は、乗員Dに対して当たる風の向きは、車両Vの前方と右側と特定してもよい。
【0041】
また、特定部13は、異なる向きから複数の風が乗員Dに対して当たる場合、それぞれの風の強さを比較して、乗員Dが不快さを感じる度合いが大きいと推測される最も強い風の向きを特定してもよい。
例えば、特定部13は、直進する車両Vの前後方向及び左右方向のように簡易的に分割して、乗員Dに対して当たる風の向きを特定してもよい。
【0042】
本実施形態に係る送風部14は、乗員Dに対して当たる風の向きは、車両Vの進行方向と対向する場合が多いため、車両Vの進行方向に向けて送風できるように構成されており、
図1に示すように車両Vのハンドルバーに設けられている。
送風部14は、判定部12が、乗員Dが不快さを感じていると判定した場合、その旨を判定部12から通知される。また、送風部14は、乗員Dに対して当たる風の向きを、特定部13から取得する。
送風部14は、判定部12が、乗員が不快さを感じると判定した場合、特定部13が特定した風の向きに対向する方向に向けて送風する。
【0043】
図4は、第1の実施形態に係る送風部の構成を示すブロック図である。本実施形態に係る送風部14は、吸気口141、フィルタ142、ファン143、送風口144、及び送風方向調整部145を備える。
【0044】
ファン143は、吸気口141及び送風口144を設けられた送風ラインの内部に設けられたファンである。
ファン143は、判定部12が、乗員Dが不快さを感じると判定した場合に、回転するように構成されている。送風部14は、内部に設けられたファン143を回転させることで気流を生成し、送風を実行する。
なお、送風部14は、気象情報取得部111が取得する気象情報(風の強さに関する情報等)や送風装置1が備える風速センサが取得した風の強さに関する情報に基づいて判定される乗員Dに対して当たる風の強さに応じて、送風する風の強さ(ファン143の回転条件など)を調整してもよい。例えば、送風する風の強さは、乗員に当たる風の強さと同レベル以上に設定してもよい。
【0045】
ファン143が回転を開始すると、車両Vの周囲の空気が、吸気口141から取り込まれる。吸気口141から取り込まれた空気は、フィルタ142を介して、送風口144へ向けて流れ、送風口144から外部に送風される。
【0046】
フィルタ142は、吸気口141及び送風口144を設けられた送風ラインの内部に設けられたフィルタである。フィルタ142は、吸気口から取り込まれた大気中に含まれる微粒子を吸着する。
なお、ここでいう大気中の微粒子とは、乗員Dの不快さの原因となる粒子であり、例えば、花粉や、土埃、臭いの原因となる物質等を含む。
【0047】
送風方向調整部145は、乗員Dに対して当たる風の向きを特定部13から取得する。送風方向調整部145は、送風部14の送風方向を制御する。より詳細には、送風方向調整部145は、送風口144の向きを制御し、その結果として、送風部14の送風方向を制御する。
【0048】
特に、本実施形態に係る送風方向調整部145は、車両Vの進行方向に向けて送風できるように構成されている。
乗員Dに対して当たる風の向きは、車両Vの進行方向と対向する場合が多いため、このような構成によると、送風部14は、適切に送風を実行できる。
【0049】
なお、本開示に係る送風方向調整部145の構成はこれに限定されず、あらゆる方向への送風を可能とするために、送風口144を水平方向及び垂直方向に回動させる機構を制御するようにしてもよい。
【0050】
また、送風部14は、複数の送風口144を車両Vの異なる位置に設けて、特定部13が特定した風の向きに応じて、対向する方向に向けて送風する送風口144を切り替えるようにしてもよい。
【0051】
<送風装置の動作>
続いて、第1の実施形態に係る送風装置の動作、即ち、第1の実施形態に係る送風方法について詳細に説明する。
図5は、第1の実施形態に係る送風装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【0052】
まず始めに、環境情報取得部11が、環境情報を取得する(ステップST1)。そして、取得した環境情報に基づいて、判定部12が、乗員が不快さを感じるか否かを判定する(ステップST2)。
判定部12が、乗員Dが不快さを感じないと判定した場合(ステップST2 NO)、送風装置1は、一連の動作を終了する。
【0053】
判定部12が、乗員Dが不快さを感じると判定した場合(ステップST2 YES)、特定部13が、乗員Dに対して当たる風の向きを特定する(ステップST3)。そして、送風部14が特定した風の向きに対向する方向に向けて送風し(ステップST4)、送風装置1は、一連の動作を終了する。
【0054】
なお、ステップST2及びステップST3の実行順序は、逆であってもよい。また、ステップST2及びステップST3は、並行して実行される動作であってもよい。
【0055】
以上説明したように、本実施形態に係る送風装置は、環境情報に基づいて、乗員Dに対して当たる風の向きを特定する。そして、本開示に係る送風装置1は、特定した風の向きに対向する方向に向けて送風する。
【0056】
このような構成によると、乗員Dが車体枠に覆われていない状態で走行するために、乗員Dに対してあらゆる方向から風が当たる車両Vにおいても、送風装置1は、適切な方向に送風し、乗員の不快さを軽減できる。
その結果として、本実施形態に係る送風装置1は、乗員Dの快適性を向上できる。
【0057】
(その他の実施形態)
第1の実施形態に係る送風装置1は、気象情報、地図情報、及び運転制御情報に基づいて、乗員Dに対して当たる風の向きを特定していたが、本開示に係る送風装置1は、例えば、車両Vに備え付けられた風向センサの検出情報に基づいて、乗員Dに対して当たる風の向きを特定してもよい。この場合、環境情報取得部11が、風向センサの検出情報を取得し、特定部13に対して環境情報として出力する。このような構成によると、より精度よく、乗員Dに対して当たる風の向きを特定できる。
【0058】
第1の実施形態に係る送風装置1は、気象情報、地図情報、及び運転制御情報に基づいて、乗員Dが不快さを感じるか否かを判定していたが、本開示に係る送風装置1は、例えば、車両Vに備え付けられた生体反応検出センサの検出情報や、送風装置1とのデータ通信が可能な乗員Dが装着した生体反応検出センサの検出情報に基づいて、乗員Dが不快さを感じるか否かを判定してもよい。
【0059】
なお、ここでいう生体反応検出センサとは、乗員Dが不快さを感じた場合に現れる生体反応を検出するセンサを指す。
この場合、環境情報取得部11が、生体反応検出センサの検出情報を取得し、判定部12に対して環境情報として出力する。このような構成によると、より精度よく、乗員Dが不快さを感じるか否かを判定できる。
【0060】
本開示に係る送風部14は、送風する風の温度調整機能を有していてもよい。そして、送風部14は、車両Vの周囲の気温に応じて温風又は冷風を送風するようにしてもよい。
このような構成によると、乗員Dが気温に起因する不快さを感じる場合に、乗員Dの不快さを軽減できる。
【0061】
また、本開示に係る送風部14は、送風する風にミストを付与する機能を有していてもよい。そして、送風部14は、車両Vの周囲の気温が高い場合に、ミストを付与した風を送風するようにしてもよい。
このような構成によると、乗員Dが気温の高さに起因する不快さを感じる場合に、乗員Dの不快さを軽減できる。
【0062】
以上、本発明を上記実施形態に即して説明したが、本発明は上記実施形態の構成にのみ限定されるものではなく、本願特許請求の範囲の請求項の発明の範囲内で当業者であればなし得る各種変形、修正、組み合わせを含むことは勿論である。
【0063】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
乗員が車体枠に覆われていない状態で走行する車両が備える送風装置であって、
周囲の環境に関する環境情報を取得する環境情報取得部と、
前記環境情報に基づいて、前記乗員が不快さを感じるか否かを判定する判定部と、
前記環境情報に基づいて、前記乗員に対して当たる風の向きを特定する特定部と、
前記判定部が、乗員が不快さを感じると判定した場合、前記特定部が特定した風の向きに対向する方向に向けて送風する送風部と、を備える、
送風装置。
(付記2)
前記送風部が、前記車両の進行方向に向けて送風する、
付記1に記載の送風装置。
(付記3)
前記環境情報取得部が、前記車両の周囲の気象情報を、前記環境情報として取得する、
付記1又は2に記載の送風装置。
(付記4)
前記環境情報取得部が、前記車両の周囲の地図情報を、前記環境情報として取得する、
付記1乃至3のいずれか1項に記載の送風装置。
(付記5)
前記環境情報取得部が、前記車両の運転制御情報を、前記環境情報として取得する、
付記1乃至3のいずれか1項に記載の送風装置。
(付記6)
前記送風部が、周囲から取り込んだ空気を、フィルタを介して送風する、
付記1乃至3のいずれか1項に記載の送風装置。
(付記7)
乗員が車体枠に覆われていない状態で走行する車両において、コンピュータが、
周囲の環境に関する環境情報に基づいて、前記乗員が不快さを感じるか否かを判定し、
前記環境情報に基づいて、乗員に対して当たる風の向きを特定し、
乗員が不快さを感じると判定した場合、特定した風の向きに対向する方向に向けて送風することを決定する、
送風方法。
(付記8)
乗員が車体枠に覆われていない状態で走行する車両において、周囲の環境に関する環境情報に基づいて、前記乗員が不快さを感じるか否かを判定し、
前記環境情報に基づいて、乗員に対して当たる風の向きを特定し、
乗員が不快さを感じると判定した場合、特定した風の向きに対向する方向に向けて送風することを決定する、動作をコンピュータに対して実行させる、
送風プログラム。
【符号の説明】
【0064】
1 送風装置
11 環境情報取得部
111 気象情報取得部
112 地図情報取得部
113 運転制御情報取得部
12 判定部
13 特定部
14 送風部
141 吸気口
142 フィルタ
143 ファン
144 送風口
145 送風方向調整部
V 車両
D 乗員