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特開2024-136066プリンタ、コンピュータプログラム、および、プリンタの使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136066
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】プリンタ、コンピュータプログラム、および、プリンタの使用方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240927BHJP
   B41J 29/393 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B41J2/01 101
B41J2/01 451
B41J2/01 401
B41J2/01 301
B41J29/393 107
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047028
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮坂 達也
(72)【発明者】
【氏名】大桑 裕哉
(72)【発明者】
【氏名】松浦 和成
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 脩平
(72)【発明者】
【氏名】田中 大樹
【テーマコード(参考)】
2C056
2C061
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EB27
2C056EB42
2C056EC06
2C056EC29
2C056EC75
2C056FA04
2C056FA10
2C056FA13
2C056FB03
2C056FD03
2C056FD13
2C056HA60
2C061AP01
2C061AQ05
2C061AR01
2C061KK22
2C061KK25
2C061KK28
2C061KK32
(57)【要約】
【課題】 ヒートプレスのプレス面に温度ムラが生じる場合であっても、被記録媒体に転写された画像の品質劣化を抑止することができる昇華型のプリンタを提供する。
【解決手段】 プリンタは、転写シートに対して昇華型インクを吐出するノズルを有する吐出ヘッドと、制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記転写シート上の画像をヒートプレスにより被記録媒体に転写したときの転写ムラを示す検査画像を取得する検査画像取得動作と、前記検査画像に基づいて前記転写シート上に形成する画像を変更する画像変更動作と、を実行する。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写シートに対して昇華型インクを吐出するノズルを有する吐出ヘッドと、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記転写シート上の画像をヒートプレスにより被記録媒体に転写したときの転写ムラを示す検査画像を取得する検査画像取得動作と、
前記検査画像に基づいて前記転写シート上に形成する画像を変更する画像変更動作と、
を実行する、プリンタ。
【請求項2】
前記検査画像は、
前記転写シート上に形成された所定のパターン画像を前記ヒートプレスにより被記録媒体に転写した後に昇華型インクが残った前記転写シートを撮像した画像、または、
前記ヒートプレスにより加温された感熱紙を撮像した画像、である、
請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記昇華型インクは、互いに異なる複数の色種のインクを含み、
前記検査画像は、前記転写シート上に形成された前記色種ごとの所定のパターン画像を前記ヒートプレスにより被記録媒体に転写した後に昇華型インクが残った前記転写シートを撮像した画像である、
請求項1に記載のプリンタ。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記画像変更動作により変更された画像を前記転写シートに対して昇華型インクを吐出して印刷する再印刷動作を実行すると共に、
前記再印刷動作によって画像が形成された前記転写シートに基づき、再び前記検査画像取得処理を実行する、
請求項1に記載のプリンタ。
【請求項5】
前記制御装置は、前記画像変更動作において、前記検査画像に基づいて、前記転写シート上に形成する画像の濃度を変更する、
請求項1に記載のプリンタ。
【請求項6】
前記制御装置は、前記画像変更動作では、前記検査画像に基づいて前記転写シート上に昇華型インクを吐出するハーフトーン処理を変更する、
請求項5に記載のプリンタ。
【請求項7】
前記ハーフトーン処理の変更では、前記ノズルから吐出する昇華型インクの液滴サイズを大きくする、または、前記ノズルから吐出する昇華型インクのデューティを高くする、
請求項6に記載のプリンタ。
【請求項8】
前記ハーフトーン処理の変更では、前記ノズルから吐出する昇華型インクの液滴サイズを小さくする、または、前記ノズルから吐出する昇華型インクのデューティを低くする、
請求項6に記載のプリンタ。
【請求項9】
前記制御装置は、前記画像変更動作では、前記検査画像に基づいて前記転写シート上に形成する画像を表す画像データの色値を前記画像が濃くなるように変更する、
請求項5に記載のプリンタ。
【請求項10】
前記制御装置は、前記画像変更動作では、前記検査画像に基づいて前記転写シート上に形成する画像を表す画像データの色値を前記画像が薄くなるように変更する、
請求項5に記載のプリンタ。
【請求項11】
転写シートに対して昇華型インクを吐出するノズルを有する吐出ヘッドと、コンピュータと、を備えるプリンタにおける前記コンピュータに、
前記転写シート上の画像をヒートプレスにより被記録媒体に転写したときの転写ムラを示す検査画像を取得する検査画像取得動作と、
前記検査画像に基づいて前記転写シート上に形成する画像を変更する画像変更動作と、
を実行させる、コンピュータプログラム。
【請求項12】
転写シートに対して昇華型インクを吐出するノズルを有する吐出ヘッドを備えるプリンタの使用方法であって、
前記転写シート上に昇華型インクを吐出して所定のパターン画像を形成し、
前記転写シート上の前記パターン画像を前記ヒートプレスにより被記録媒体に転写した後に昇華型インクが残った前記転写シート、または、前記パターン画像が転写された前記被記録媒体と、所定の色見本との比較に基づき、前記転写シート上に形成する画像を変更する変更設定の入力を受け付ける、
プリンタの使用方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば昇華型インクで形成された画像が転写された布帛等の被記録媒体の作製にあたって用いられる、昇華型インクを吐出して転写シート上に画像を形成するプリンタ、コンピュータプログラム、および、プリンタの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の印刷機のカテゴリーの1つとして昇華転写式の印刷機が記載されている。また、この特許文献1では、印刷機による印刷画像をカメラ等により読み取り、読み取った画像に基づいて印刷機の印刷不良を検出することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-187111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、昇華型インクにより画像が形成された被記録媒体を作製する処理では、一般的に次のような複数の工程を経る。すなわち、当該処理は、昇華型プリンタにより昇華型インクを吐出して転写シート上に画像を形成する工程と、画像を有する転写シートを被記録媒体に重ねた状態でヒートプレス機を用いて加温して画像を被記録媒体に転写する工程とを含む。
【0005】
従って、被記録媒体に転写された画像の品質は、ヒートプレス機による加温結果によっても影響を受ける。例えば、ヒートプレス機のプレス面は、内部の熱源の発熱によって所定の温度に調整されるが、面内の温度分布は必ずしも均一ではなく部分的に温度ムラが生じ得る。プレス面に温度ムラがあると、転写シートからの昇華型インクの昇華(転写)の進行具合が部分的に異なり、画像の品質に影響する。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1には、ヒートプレスのプレス面に温度ムラが生じる場合の画像品質の劣化抑制については何ら開示されていない。
【0007】
本開示はこのような課題を解決するためになされたものであり、ヒートプレスのプレス面に温度ムラが生じる場合であっても、被記録媒体に転写された画像の品質劣化を抑止することができる昇華型のプリンタ、コンピュータプログラム、および、プリンタの使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は上述した課題を解決するためになされたものであり、本開示に係るプリンタは、転写シートに対して昇華型インクを吐出するノズルを有する吐出ヘッドと、制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記転写シート上の画像をヒートプレスにより被記録媒体に転写したときの転写ムラを示す検査画像を取得する検査画像取得動作と、前記検査画像に基づいて前記転写シート上に形成する画像を変更する画像変更動作と、を実行する。
【0009】
このような構成により、ヒートプレスのプレス面での温度ムラに対応する転写ムラに基づいて、転写シートに形成する画像(例えば、その濃度)を変更するため、温度ムラの画像品質への影響を低減することができる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、ヒートプレスのプレス面に温度ムラが生じる場合であっても、被記録媒体に転写された画像の品質劣化を抑止することができるプリンタ、コンピュータプログラム、および、プリンタの使用方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本開示に係るプリンタの構成を示す外観図である。
図2図2は、プリンタの機能的構成を示すブロック図である。
図3図3は、実施の形態1に係る画品質向上処理におけるプリンタの動作例を示すフローチャートである。
図4図4A図4Cは、検査用のパターン画像の例を示す模式図である。
図5図5は、実施の形態2に係る画品質向上処理におけるプリンタの動作例を示すフローチャートである。
図6図6は、実施の形態3に係る画品質向上処理におけるプリンタの動作例を示すフローチャートである。
図7図7は、実施の形態4に係る画品質向上処理におけるプリンタの動作例(使用例)を示すフローチャートである。
図8図8は、実施の形態5に係る画品質向上処理におけるプリンタの動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施の形態1)
以下、本開示に係る実施の形態を、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下では、全ての図面を通じて同一又は対応する要素には同一の参照符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、本開示は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除、および、変更が可能である。
【0013】
<昇華型プリンタの全体構成>
図1は、本開示に係る昇華型のプリンタ1の構成を示す外観図である。なお、ここではプリンタ1が使用可能に設置された状態を基準として、図1のように前後方向、左右方向、および、上下方向の各方向を規定する。このプリンタ1は、プリンタ機能およびスキャナ機能を有し、構成としては下部筐体2および上部筐体3等を備えている。
【0014】
下部筐体2は略直方体形状を成し、前方に開口2Aを有している。下部筐体2の内部には、給送トレイ10、排出トレイ11、吐出ヘッド12、カートリッジ装着部13、および、スキャナ部14等が備えられている。このうち給送トレイ10は平坦なトレイ状を成し、所定寸法の転写シートAを複数枚収容可能であって、下部筐体2の下部に前方から着脱可能に収容されている。排出トレイ11は平板状を成し、給送トレイ10の上方に配置され、開口2Aの下部から後方へ延びている。
【0015】
吐出ヘッド12は、昇華型インクを吐出する複数のノズル12aを有している。従って、吐出ヘッド12のノズル12aから昇華型インクを吐出することで、転写シートA上に画像を形成することができる。また、下部筐体2の前部側方には開閉可能なカバー13aが設けられており、このカバー13aを開いた中にカートリッジ装着部13が形成されている。カートリッジ装着部13は、昇華型インクを貯留する複数のカートリッジ15を収容可能なスペースを有し、当該スペース内にカートリッジ15を着脱可能となっている。
【0016】
カートリッジ装着部13にカートリッジ15が装着されると、カートリッジ15内の昇華型インクは、供給チューブを介して吐出ヘッド12へ送られる。図1に示す吐出ヘッド12はシリアル式ヘッドであり、左右方向へ往復するように移動しつつ、ノズル12aから昇華型インクを吐出する。なお、図1のプリンタ1は、互いに異なる複数の色種の昇華型インクを吐出する。そのため、シアン、マゼンダ、イエロー、および、ブラックの4色のインクに対応する4つのカートリッジ15がカートリッジ装着部13に装着可能である。また、図1ではシリアル式ヘッドを例示したが、これに限られず、プリンタ1の吐出ヘッドとして、いわゆるライン式ヘッドを採用してもよい。
【0017】
スキャナ部14は、下部筐体2の上部に設けられている。スキャナ部14は例えばフラットベッド式であり、下部筐体2の天面を成すガラス製の原稿台、イメージセンサ、および、光学系を有している。そして、原稿台に載せられた原稿をスキャンして、原稿に記載された画像を読み取る。
【0018】
上部筐体3は、前後左右の大きさが下部筐体2の上面とほぼ同じ大きさの略直方体状の筐体であり、下部筐体2の上面を覆うようにして設けられている。また、下部筐体2と上部筐体3とは、それぞれの後端部においてのみ連結されており、上部筐体3の前部を下部筐体2の前部から上方へ離間させるように回動させて開くことができる。
【0019】
上部筐体3には、ADF(Automatic Document Feeder)16が備えられている。従って、ADF16に一又は複数の用紙がセットされると、この中から1枚ずつがスキャナ部14の原稿台上に搬送される。
【0020】
図1に示すように、プリンタ1は下部筐体2および上部筐体3の後方に背面給送トレイ17も備えている。従って、プリンタ1は、上述した給送トレイ10に代えてこの背面給送トレイ17から転写シートAを送り、この転写シートAに吐出ヘッド12から昇華型インクを吐出して画像を形成することも可能である。
【0021】
また、下部筐体2の前方には操作パネル18が備えられている。操作パネル18はユーザが様々の情報または指示を入力する入力インターフェースであると共に、ユーザに対して様々の情報を出力する出力インターフェースでもある。そのため、操作パネル18は、タッチパネル式ディスプレイ18aおよびテンキー等の物理ボタン18b等を備えている。
【0022】
なお、プリンタ1は、上述した構成の他、例えば、搬送装置および走査装置なども備えている。詳しい説明は省略するが、搬送装置は、下部筐体2内にて給送トレイ10または背面給送トレイ17から吐出ヘッド12の下方を通って排出トレイ11まで、転写シートAを搬送する。また、走査装置は、吐出ヘッド12を左右方向へ移動(走査)させる。
【0023】
図2は、プリンタ1の機能的構成を示すブロック図である。図2に示すようにプリンタ1は、制御装置30、並びに、この制御装置30に接続された記憶装置31、通信インターフェース32、ヘッド駆動回路33、搬送駆動回路34、走査駆動回路35、パネル駆動回路36、スキャナ駆動回路37、および、ADF駆動回路38を備えている。
【0024】
制御装置30は、例えばコンピュータであって、MPUのようなプロセッサ、または、ASICのような集積回路などの回路を含む。記憶装置31は、制御装置30からアクセス可能なメモリであって、例えばRAMおよびROMを有している。このうちRAMには、印刷する画像に関する画像データ、スキャナ部14により取得した画像データ、および、制御装置30の演算時の各種データを一時的に記憶する。ROMは、各種のデータ処理を行うためのコンピュータプログラム(本開示に係るコンピュータプログラム)およびデータを記憶する。従って、制御装置30は、記憶装置31に記憶されたデータを参照しつつ、コンピュータプログラムを実行することで、印刷装置1の各部の動作を制御する。
【0025】
通信インターフェース32は、制御装置30を、印刷装置1の外部機器に対して接続する接続装置である。外部機器としては、他のコンピュータ、通信ネットワーク、記録媒体、ディスプレイ、および他の印刷装置などが挙げられる。印刷装置1は、この通信インターフェース32を介して、外部機器である例えばコンピュータから、画像データを含む各種の情報を取得する。
【0026】
ヘッド駆動回路33は、吐出ヘッド12が有する圧電アクチュエータ等の各駆動素子33aと電気的に接続され、各駆動素子33aの動作を制御する。すなわち、制御装置30は、駆動素子33aを駆動する制御信号をヘッド駆動回路33へ出力し、ヘッド駆動回路33は入力された制御信号に基づいて駆動信号を生成し、この駆動信号を各駆動素子33aへ出力する。その結果、各駆動素子33aは対応する駆動信号に基づいて駆動し、所定のタイミングで所定の吐出圧力を吐出ヘッド12内の昇華型インクに付与するよう動作する。従って、各ノズル12aから吐出される昇華型インクは、その吐出タイミング、および、吐出されるインクの大きさ(インク滴の容量)が制御可能である。
【0027】
搬送駆動回路34は、下部筐体2内に設けられた搬送装置が有する搬送モータ34aと電気的に接続されており、搬送モータ34aは、搬送駆動回路34を介して制御装置30によりその動作が制御される。これにより搬送装置は、給送トレイ17または背面給送トレイ17から吐出ヘッド12の下方を通って排出トレイ11まで、転写シートAを間欠的または連続的に搬送できる。
【0028】
走査駆動回路35は、走査装置が有する走査モータ35aと電気的に接続されており、走査モータ35aは、走査駆動回路35を介して制御装置30によりその動作が制御される。これにより走査装置は、吐出ヘッド10を支持するキャリッジを左右方向へ移動させることができると共に、その可動範囲内の任意の位置にキャリッジを停止させることができる。
【0029】
パネル駆動回路36は、上述した操作パネル18と電気的に接続されえおり、操作パネル18は、パネル駆動回路36を介して制御装置30によりその動作が制御される。
【0030】
スキャナ駆動回路37は、上述したスキャナ部14が有するカメラ37aと電気的に接続されており、カメラ37aは、スキャナ駆動回路37を介して制御装置30によりその動作が制御される。これによりスキャナ部14は、原稿台に載せられた原稿の画像をカメラ37aで撮像し、得られた画像データはRAM等の記憶装置31に記憶される。
【0031】
ADF駆動回路38は、上述したADF16が有するADFモータ38aと電気的に接続されており、ADFモータ38aは、ADF駆動回路38を介して制御装置30によりその動作が制御される。これによりADF16は、ADFモータ38aに連結されたADFローラを回転させ、セットされた一又は複数の転写シートAを1枚ずつ原稿台へ搬送する。
【0032】
<昇華転写印刷>
上述したようなプリンタ1は、ヒートプレス機と共に用いることで、布帛等の被記録媒体(被転写体)に昇華型インクで画像を形成することができる。具体的に説明する。はじめに、プリンタ1の記憶装置31に、被記録媒体に形成する画像に関する画像データが記憶される。このような画像データは、通信インターフェース32を介して外部機器から送られてきたものであってもよいし、プリンタ1が有するスキャナ部14により読み取ったものであってもよい。
【0033】
次に、プリンタ1は、上記画像データから、画像を表裏反転させた反転画像に関する反転画像データを生成する。なお、この反転画像データは、このようにプリンタ1にて生成してもよいし、はじめから通信インターフェース32を介して反転画像データを外部機器から取得するようにしてもよい。
【0034】
次に、プリンタ1は、ユーザによる操作パネル18の操作等により印刷実行の指示が入力されると、例えば給送トレイ10内の転写シートAを搬送装置によって吐出ヘッド12の下方所定位置に搬送する。そして、反転画像データに基づいて吐出ヘッド12から昇華型インクを転写シートAに吐出すると共に、搬送装置によって転写シートAを断続的に搬送する。このようにして、転写シートA上に昇華型インクによって反転画像を形成し、この転写シートAを排出トレイ11に排出する。
【0035】
このようにして転写シートAに形成された反転画像は、ヒートプレス機において、被記録媒体に転写される。すなわち、ヒートプレス機は、一例として下側の支持台および上側の押圧板を有し、支持台上にTシャツ等の被記録媒体が被転写面を上にして配置される。さらに、この被転写面に対して転写シートAが重ねて配置される。このとき、被記録媒体の被転写面に、転写シートA上の反転画像が向い合せになるように配置される。そして、この状態で押圧板が支持台へ向けて降ろされる。
【0036】
ヒートプレス機では、被記録媒体および転写シートAを挟んだ状態で、押圧板と支持台との間に所定の圧力が加えられる。それと共に、支持台および押圧板、あるいは、これらの何れか一方には、内部に電気的に駆動する熱源が備えられており、所定の温度まで昇温される。従って、被記録媒体および転写シートAは、ヒートプレス機によって加温および加圧される。この結果、転写シートA上の反転画像を形成する昇華型インクが昇華し、対向する被記録媒体に転写される。
【0037】
<制御フローチャート>
ところで、ヒートプレス機の加熱面内の温度分布は必ずしも均一ではなく部分的に温度ムラが生じ得る。加熱面に温度ムラがあると、転写シートからの昇華型インクの昇華の進行具合が部分的に異なり、転写ムラが生じて画像の品質に影響する。そこで本開示に係るプリンタ1は、加熱面の温度ムラに起因する転写ムラを事前に取得し、これに基づき転写シートに形成する画像を変更することで、画像の品質の向上を図る。以下、このような画品質向上処理について詳述する。
【0038】
図3は、実施の形態1に係る画品質向上処理におけるプリンタ1の動作例を示すフローチャートである。プリンタ1の制御装置30は、ユーザにより操作パネル18から入力された指示、あるいは、通信インターフェース32を介して外部機器から入力された指示に基づき、この画品質向上処理の実行を開始する。
【0039】
はじめに概説すると、制御装置30は、転写シートA上の画像をヒートプレス機により被記録媒体に転写したときの転写ムラを示す検査画像を取得する「検査画像取得動作」(ステップS1~S3)を実行する。次に、取得した検査画像に基づいて転写シートA上に形成する画像を変更する「画像変更動作」(ステップS4~S8)を実行する。
【0040】
各動作中の処理について説明すると、まず、検査画像取得動作において制御装置30は、例えば給送トレイ10に収容されている転写シートAを搬送し、吐出ヘッド12から昇華型インクを吐出して、検査用の所定のパターン画像40を印刷する(ステップS1)。
【0041】
この検査用のパターン画像40は、例えば図4Aに示すように、複数のパッチ画像41をマトリクス状に配置したものを用いることができる。図4Aでは各パッチ画像41を矩形状のものとして例示したが、パッチ画像41の形状はこれに限られず適宜定めることができる。また、図4Aに示すパターン画像40を構成する各パッチ画像41は、いずれも同色の昇華型インクで印刷されている。なお、図4Aにおいて転写シートAの四隅に表示しているマーク42は位置決め用の印である。
【0042】
次に、このパターン画像40がヒートプレス機を用いて被記録媒体に転写される。具体的には既に説明したように、パターン画像40が印刷された転写シートAと被記録媒体とが重ねられてヒートプレス機の支持台に設置され、上から押圧板によって押圧されつつ加熱される。これにより、転写シートA上のパターン画像40を形成する昇華型インクが昇華して、被記録媒体に転写される。
【0043】
ここで、転写後の転写シートAには、転写しなかった昇華型インクで形成される残余パターン画像が残る。残余パターン画像は、元のパターン画像40から何割かの昇華型インクが被記録媒体へ移動した結果、濃度が薄くなったパターン画像である。そして、ヒートプレス機の加熱面の温度が均一であれば残余パターン画像は濃度が均一の画像となり、加熱面に温度ムラが存在すると転写ムラが生じるため、残余パターン画像は濃度が不均一で濃度ムラのある画像となる。
【0044】
そこで、制御装置30は、例えばユーザにより、転写後の転写シートAがスキャナ部14の原稿台に載置されたか否かを判断し(ステップS2)、載置されていればスキャナ部14により転写シートAを読み取る(ステップS3)。これにより、転写後の転写シートAに残る残余パターン画像を撮像した画像データを、転写ムラを示す検査画像として取得する。なお、ステップS2の判断は、例えばユーザによって操作パネル18を介してスキャン実行の指示入力がされたか否かにより行うことができ、あるいは、ADFに原稿の先端を検知するためのセンサを設けておきセンサがオンすることで転写後の転写シートAがスキャナ部14の原稿台に載置されたと判断することができる。また、転写シートAの読み取りにおいて、マーク42も含めて読み取ることで、温度ムラが存在する位置と画像上の位置との対応関係を精度よく取得することができる。
【0045】
次に、画像変更動作において制御装置30は、検査画像に基づいて濃度ムラがあるか否かを判断する(ステップS4)。例えば、検査画像である残余パターン画像において、最も濃度が濃いパッチ画像と最も濃度の薄いパッチ画像とを抽出し、各パッチ画像の濃度差を取得する。そして、この濃度差が、予め設定されている閾値以上であれば濃度ムラあり(S4:YES)と判断し、閾値未満であれば濃度ムラなし(S4:NO)と判断することができる。ただし、濃度ムラの有無の判断方法はこれに限られず、他の方法を採用してもよい。
【0046】
ステップS4で濃度ムラなしと判断した場合は、制御装置30は今回の画品質向上処理を終了する。一方、ステップS4で濃度ムラありと判断した場合は、例えば操作パネル18にユーザ向けの所定の選択肢を表示する(ステップS5)。そして、制御装置30は、ユーザが操作パネル18を操作して印刷時間の延長可の指示を入力したか否かを判断する(ステップS6)。例えば本実施の形態1では、濃度ムラによる画品質の低下を解消するために、転写シートA上に形成する画像の濃度を変更する。そして、この濃度変更の方法として、長い印刷時間を要する方法と、短い印刷時間を要する方法とが用意されている。従って、ユーザに対し、印刷時間の延長の可否について問い合わせる内容のメッセージを、操作パネル18に表示すると共に、延長可の入力の有無を判断する。
【0047】
その結果、ユーザが操作パネル18を操作して印刷時間の延長可の指示を入力した場合は(ステップS6:YES)、制御装置30はハーフトーン処理において、濃度が薄かった部分に対応する画像濃度を濃くするように設定変更する(ステップS7)。すなわち、検査画像において相対的に他の領域よりも濃度が薄かった部分に対応する画像上の部分については、印刷後の画像濃度が元の設定値よりも高くなるようにハーフトーン処理の内容を変更する。これにより、元の設定でハーフトーン処理を実行する場合よりも印刷時間が長くなるが、濃度の濃淡が抑制されると共に、発色のよい画像を印刷することができる。
【0048】
なお、印刷された画像の濃度を濃くするハーフトーン処理の変更方法は特に限定されない。例えば、ノズル12aから吐出する昇華型インクの液滴サイズを元の設定よりも大きくしてもよい。あるいは、ノズル12aから吐出する昇華型インクのデューティを元の設定よりも高くしてもよい。
【0049】
一方、ユーザが操作パネル18を操作して印刷時間の延長不可の指示を入力した場合は(ステップS6:NO)、制御装置30はハーフトーン処理において、濃度が濃かった部分に対応する画像濃度を薄くするように設定変更する(ステップS8)。すなわち、検査画像において相対的に他の領域よりも濃度が濃かった部分に対応する画像上の部分については、印刷後の画像濃度が元の設定値よりも低くなるようにハーフトーン処理の内容を変更する。これにより、濃度の濃淡が抑制されると共に、元の設定でハーフトーン処理を実行する場合よりも印刷時間が短くなる。
【0050】
なお、印刷された画像の濃度を薄くするハーフトーン処理の変更方法は特に限定されない。例えば、ノズル12aから吐出する昇華型インクの液滴サイズを元の設定よりも小さくしてもよい。あるいは、ノズル12aから吐出する昇華型インクのデューティを元の設定よりも低くしてもよい。
【0051】
制御装置30は、上記のようにしてハーフトーン処理の内容を変更すると、再びステップS1の処理へ移行する。すなわち、制御装置30は、画像変更動作により変更された画像を、転写シートAに対して昇華型インクを吐出して印刷する、再印刷動作を実行する。また、この再印刷動作によって画像が形成された転写シートAに基づき、再び検査画像取得処理(ステップS1~S3)および画像変更動作(ステップS4~S8)を実行する。なお、2度目以降の画像変更動作については、ステップS4の判断結果に応じてステップS5以降の実行は省略される。
【0052】
このように、検査画像取得動作(ステップS1~S3)および画像変更動作(ステップS4~S8)を繰り返し実行することで、画品質を確実に向上させることができる。
【0053】
<変形例>
図4Aに例示した検査用のパターン画像40の変形例を図4Bおよび図4Cに示す。図4Bに示すパターン画像40は、昇華型インクの色に応じて、別々の転写シートAに印刷されている。例えば、1枚の転写シートAには、シアンの昇華型インクでパターン画像40Cが印刷されており、このパターン画像40Cにはシアン色のパッチ画像41が複数配置されている。別の1枚の転写シートAには、マゼンダの昇華型インクでパターン画像40Mが印刷されており、このパターン画像40Mにはマゼンダ色のパッチ画像41が複数配置されている。更に別の1枚の転写シートAには、イエローの昇華型インクでパターン画像40Yが印刷されており、このパターン画像40Yにはイエロー色のパッチ画像41が複数配置されている。更に別の1枚の転写シートAには、ブラックの昇華型インクでパターン画像40Kが印刷されており、このパターン画像40Kにはブラック色のパッチ画像41が複数配置されている。
【0054】
図4Cでは転写シートAの一部を拡大して示す。この図4Cに示すパターン画像40Xは、1枚の転写シートAに、複数の色のパッチ画像41を配置した構成となっている。具体的には、1つのパッチ画像41は、これより小さい複数(ここでは4つ)の小領域に分割されており、各小領域は互いに異なる色の昇華型インクで印刷されている。図4Cの例では、1つの矩形状のパッチ画像41が矩形状の小領域41aに四分割され、これら4つの小領域41aはシアン、マゼンダ、イエロー、および、ブラックの各昇華型インクによって印刷されている。そして、このようなパッチ画像41が、図4Aの例と同様に、転写シートA上にマトリクス状に配置されて、パターン画像40Xを構成している。
【0055】
これらの場合、画品質向上処理で用いる検査画像は、転写シートA上に形成された色種ごとのパターン画像40(パターン画像40C,40M,40Y,40Kおよびパターン画像40X)をヒートプレス機により被記録媒体に転写した後に昇華型インクが残った転写シートAを撮像した画像となる。従って、インク種(色種)によって昇華態様が異なる場合であっても、インク種に応じて温度ムラに起因する転写ムラを把握でき、インク種ごとにハーフトーン処理の内容を変更して画品質の向上を図ることができる。
【0056】
なお、図4Bおよび図4Cの例では、シアン、マゼンダ、イエローの色ごとに転写シートAまたは領域を分けて印刷したが、これらシアン、マゼンダ、イエローの昇華型インクを同一の転写シートA上の同一領域に重ねて吐出してパッチ画像を形成してもよい。この場合、パッチ画像の色は、各色のインク吐出量によって決定され、例えば各色について同量のインクを吐出した場合には典型的にはグレーのパッチ画像となる。そして、ヒートプレスによる転写量が全色同一であった場合にはパッチ画像のグレーの濃度が変化し、色ごとの転写量に違いがあった場合にはパッチ画像の濃度および色相が変化する。従って、画品質向上処理のステップS4において、複数のパッチ画像の間での濃度および色相の相対的な違い(すなわち、濃度ムラおよび色相ムラ)の有無を判断することにより、ヒートプレス機の加熱面の温度ムラを把握することができる。
【0057】
(実施の形態2)
実施の形態2に係るプリンタ1は、その構成については実施の形態1で説明したものと同じであるが、画品質向上処理の一部の内容が異なっている。従って、ここでは画品質向上処理において実施の形態1と相違する部分を中心に説明する。
【0058】
図5は、実施の形態2に係る画品質向上処理におけるプリンタ1の動作例を示すフローチャートである。図5に示すように、制御装置30は、この画品質向上処理でも図3に示したものと同様のステップS1~S6の処理を実行する。一方、図5の画品質向上処理では、図3のステップS7に替えてステップS9を実行し、ステップS8に替えてステップS10を実行する。
【0059】
すなわち、制御装置30は、濃度ムラがあると判断した場合(S4:YES)に、図3の例ではハーフトーン処理の内容を変更して画像の濃度を変更したが、図5の例ではこれに替えて画像データの色値を変更して画像の濃度を変更する。具体的には、ユーザが操作パネル18を操作して印刷時間の延長可の指示を入力した場合(ステップS6:YES)、制御装置30は、濃度が薄かった部分について、転写シートA上に形成する画像が濃くなるように、この画像を表す画像データの色値を変更する(ステップS9)。
【0060】
例えば、色値として256諧調のRBG値を用いる場合であって、(R,G,B)=(0,0,0)が黒、(R,G,B)=(255,255,255)が白を表すとする。この場合、ステップS9において画像を濃くするとき、画像データの色値を表すRGB値を小さい値に変更する。変更する数値は、ステップS4で取得した濃度ムラの大きさに応じて決定してもよいし、予め決まった数値だけ変更することとしてもよい。
【0061】
一方、ユーザが操作パネル18を操作して印刷時間の延長不可の指示を入力した場合(ステップS6:NO)、制御装置30は、濃度が濃かった部分について、転写シートA上に形成する画像が薄くなるように、この画像を表す画像データの色値を変更する(ステップS10)。色値として上記の256諧調のRGB値を用いる場合、ステップS10において画像を薄くするとき、画像データの色値を表すRGB値を大きい値に変更する。変更する数値は、ステップS4で取得した濃度ムラの大きさに応じて決定してもよいし、予め決まった数値だけ変更することとしてもよい。
【0062】
(実施の形態3)
実施の形態3に係るプリンタ1は、その構成については実施の形態1で説明したものと同じであるが、画品質向上処理の一部の内容が異なっている。従って、ここでは画品質向上処理において実施の形態1と相違する部分を中心に説明する。
【0063】
図6は、実施の形態3に係る画品質向上処理におけるプリンタ1の動作例を示すフローチャートである。実施の形態1では、転写ムラを示す検査画像を、転写後の転写シートAをスキャナ部14で読み取って得るようにしている。これに対して本実施の形態3では、転写ムラを示す検査画像として、被記録媒体上に転写された画像(以下、被転写画像)を採用する。従って、実施の形態1で説明した図3のフローチャートのステップS2,S3に替えて、図6ではステップS12,S13を有している。
【0064】
具体的に説明すると、制御装置30は、例えばユーザにより転写後の被記録媒体がスキャナ部14の原稿台に載置されたか否かを判断し(ステップS12)、載置されていればスキャナ部14により被記録媒体を読み取る(ステップS13)。これにより、被記録媒体上の被転写画像を撮像した画像データを、転写ムラを示す検査画像として取得する。なお、図6におけるその他のステップの内容は、図3で説明したものと同じである。
【0065】
本実施の形態3によれば、被記録媒体上の被転写画像に基づいて転写ムラが検出され、濃度が調整される。このように、画品質の向上を図る対象である被転写画像から直接得られる情報に基づいて濃度調整するため、画品質の更なる向上を期待することができる。
【0066】
(実施の形態4)
実施の形態4では、画品質向上処理を行う際のプリンタ1の使用方法を例示する。なお、実施の形態4に係るプリンタ1は、その構成については実施の形態1で説明したものと同じであるが、画品質向上処理の一部の内容が異なっている。従って、ここでは画品質向上処理において実施の形態1と相違する部分を中心に説明する。
【0067】
図7は、実施の形態4に係る画品質向上処理におけるプリンタ1の動作例(使用例)を示すフローチャートである。実施の形態1では、ステップS4での濃度ムラの有無を、検査用のパターン画像40を読み取った制御装置30にて判断した。これに対して本実施の形態4では、濃度ムラの有無を実質的にユーザが目視で判断する。このため、本実施の形態4に係る画品質向上処理は、図7に示すように、図3の例と比べるとステップS2,S3が省かれていると共に、ステップS4とステップS5との間に新たなステップS15が追加されている。
【0068】
図7の画品質向上処理について具体的に説明する。制御装置30は、ステップS1において、例えば給送トレイ10に収容されている転写シートAを搬送し、吐出ヘッド12から昇華型インクを吐出して、検査用の所定のパターン画像40を印刷する(ステップS1)。次に、転写後の転写シートAをスキャナ部14で読み取ることはせず、ユーザによる濃度ムラの有無の判断結果の入力を待つ(ステップS4)。
【0069】
ステップS4で、ユーザによる操作パネル18の操作によって、濃度ムラがない旨の入力があった場合(S4:NO)は、この画品質向上処理を終了する。一方、濃度ムラがある旨の入力があった場合(S4:YES)は、次に、濃度の変更設定についてユーザの入力を受け付ける(ステップS15)。
【0070】
すなわち、ステップS15では、転写シートA上のパターン画像40をヒートプレス機により被記録媒体に転写した後に昇華型インクが残った転写シートAと所定の色見本との比較に基づいて、転写シート上に形成する画像を変更する変更設定のユーザによる入力を受け付ける。あるいは、ステップS15では、パターン画像40が転写された被記録媒体と色見本との比較に基づき、ユーザによる変更設定の入力を受け付ける。例えば、操作パネル18において、最も濃度が濃いパッチ画像と最も濃度が薄いパッチ画像との濃度差を示す情報を、ユーザにより入力可能とする。この濃度差を示す情報は、画像の濃度を変更するときの変更値に対応するものであり、例えば数値により指定する。
【0071】
次に、操作パネル18にユーザ向けの所定の選択肢として、例えば、印刷時間の延長の可否について問い合わせる内容のメッセージを表示する(ステップS5)。
【0072】
その結果、ユーザが操作パネル18を操作して印刷時間の延長可の指示を入力した場合は(ステップS6:YES)、制御装置30はハーフトーン処理において、濃度が薄かった部分に対応する画像濃度を濃くするように設定変更する(ステップS7)。一方、ユーザが印刷時間の延長不可の指示を入力した場合は(ステップS6:NO)、制御装置30はハーフトーン処理において、濃度が濃かった部分に対応する画像濃度を薄くするように設定変更する(ステップS8)。ここで、画像濃度を濃くあるいは薄くする変更量は、ステップS15でのユーザによる入力情報に基づいて決定される。
【0073】
本実施の形態4によれば、ユーザの感覚に応じた濃度調整を行うことができる。従って、ユーザが覚える違和感がより小さい転写画像の画品質向上を実現することができる。
【0074】
(実施の形態5)
実施の形態5に係るプリンタ1は、その構成については実施の形態1で説明したものと同じであるが、画品質向上処理の一部の内容が異なっている。従って、ここでは画品質向上処理において実施の形態1と相違する部分を中心に説明する。
【0075】
図8は、実施の形態5に係る画品質向上処理におけるプリンタ1の動作例を示すフローチャートである。実施の形態1では、転写ムラを示す検査画像を、転写後の転写シートAをプリンタ1が備えるスキャナ部14で読み取って得るようにしている。これに対して本実施の形態5では、転写ムラを示す検査画像を、プリンタ1とは別の外部撮像装置で被記録媒体を撮影して得るようにしている。このため、実施の形態1で説明した図3のフローチャートのステップS2,S3に替えて、図8ではステップS17を有している。
【0076】
具体的に説明すると、制御装置30による動作制御によって転写シートA上に昇華型インクによって反転画像が形成された後(ステップS1)、ユーザは、実施の形態1で説明したようにヒートプレス機を用いて、転写シートA上の反転画像を被記録媒体上に転写する。さらにユーザは、被記録媒体上の被転写画像を、外部撮像装置を用いて撮影して、被転写画像のデータを得る。そして、ユーザは、得られた被転写画像のデータを、通信インターフェース32を介してプリンタ1に入力する。プリンタ1の制御装置30は、入力された被転写画像のデータを、検査画像として記憶装置31に記憶することで、これを取得する(ステップS17)。
【0077】
本実施の形態5によれば、プリンタ1がスキャナ部14を備えない構成であっても、画品質向上処理を実行することができる。なお、上述した外部撮像装置の構成は特に限定されないが、例えば、カメラ、カメラ機能を有する携帯機器、プリンタ1とは別体であって当該プリンタ1に接続可能な外付けスキャナ等を用いることができる。
【0078】
(その他)
上述した実施の形態では、検査画像として、転写後の転写シートAまたは転写後の被記録媒体から得た画像を用いた例を説明した。しかし、検査画像としてはこれに限定されない。例えば、転写シートAおよび被記録媒体に替えて、感熱紙を用いてもよい。感熱紙としては、その表面温度に応じて表面の色が視覚的に識別できる程度に変化するものであればよく、特に限定されない。
【0079】
また、感熱紙を用いた場合、図3のフローチャートであれば、ステップS1の処理、および、ユーザによるヒートプレス機を用いた被記録媒体への転写作業が不要である。また、ステップS2,S3での「転写シート」は「感熱紙」に置換される。このように、感熱紙を用いた場合には、一部の処理や作業を省くことができるため、簡便に画品質向上処理を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本開示は、昇華型インクで形成された画像が転写された布帛等の被記録媒体の作製にあたって用いられる、昇華型インクを吐出して転写シート上に画像を形成するプリンタ、コンピュータプログラム、および、プリンタの使用方法に適用することができる。
【符号の説明】
【0081】
1 プリンタ
12 吐出ヘッド
12a ノズル
14 スキャナ部
18 操作パネル
30 制御装置
31 記憶装置
40 パターン画像
41 パッチ画像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8