(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136081
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】重合禁止剤及びモノマー組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 2/40 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
C08F2/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047052
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002820
【氏名又は名称】大日精化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【弁理士】
【氏名又は名称】竹山 圭太
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】飯島 良紘
(72)【発明者】
【氏名】矢野 亮太
【テーマコード(参考)】
4J011
【Fターム(参考)】
4J011NA18
4J011NB03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】重合禁止効果に優れたフェノール性の重合禁止剤、並びに製造時及び保存時の安定性に優れているとともに、高分子量化したポリマーを容易に製造することが可能なモノマー組成物を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される重合禁止剤、及びこれを用いたモノマー組成物である。
(一般式(1)中、Rは水素原子又は没食子酸骨格を示し、Lは炭素数2~12のアルキレン基を示す)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される重合禁止剤。
(前記一般式(1)中、Rは水素原子又は下記式(2)で表される基を示し、Lは炭素数2~12のアルキレン基を示す)
(前記式(2)中、*は前記一般式(1)中の酸素原子(O)との結合位置を示す)
【請求項2】
請求項1に記載の重合禁止剤と、ラジカル重合性を有する化合物と、を含有するモノマー組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合禁止剤及びモノマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、(メタ)アクリル基やビニル基を有するラジカル重合性モノマー用の重合禁止剤として、フェノール系、アミン系、ニトロソ系、及びフェノチアジン系の化合物が広く使用されている。なかでも、フェノール系の化合物(重合禁止剤)は、酸素存在下で重合禁止効果が高い一方で、酸素非存在下では重合禁止効果を失うことが知られており、重合工程等の低酸素濃度条件ではポリマーを容易に高分子量化することができる。なお、苛性ソーダ水溶液でモノマーを洗浄すると微量に含まれるフェノール系の重合禁止剤を除去することができ、モノマーを高純度化することが可能である。
【0003】
しかし、従来のフェノール系の重合禁止剤の重合禁止効果は、必ずしも十分に高いとは言えなかった。一方、十分な重合禁止効果を発揮させるべく、重合禁止剤の添加量を増加すると、重合して得られるポリマーの物性及び性能に少なからず影響が及ぶ可能性がある。このため、重合禁止効果の高いフェノール系の重合禁止剤が求められていた。
【0004】
(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸エステル等のモノマーの重合禁止剤として、例えば、4-メトキシ-1-ナフトール類縁体(特許文献1)、ナフトハイドロキノンのスルホン酸塩(特許文献2、3)、4,4’-ジアルコキシ-2,2’-ビ-1-ナフトール(特許文献4)、及び二級アルキル化されたカテコール誘導体(特許文献5)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4556491号公報
【特許文献2】特開2008-239599号公報
【特許文献3】特開2008-239600号公報
【特許文献4】特開2006-199893号公報
【特許文献5】特開平10-53606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1~4で提案された重合禁止剤は、いずれも、酸素非存在下であっても重合禁止効果を発揮してしまう化合物であるとともに、製造工程が煩雑なものであった。また、特許文献5で提案された重合禁止剤は、従来の重合禁止剤に比して必ずしも重合禁止効果に優れているとは言えなかった。
【0007】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、重合禁止効果に優れたフェノール性の重合禁止剤を提供することにある。また、本発明の課題とするところは、製造時及び保存時の安定性に優れているとともに、高分子量化したポリマーを容易に製造することが可能なモノマー組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明によれば、以下に示す重合禁止剤が提供される。
[1]下記一般式(1)で表される重合禁止剤。
【0009】
(前記一般式(1)中、Rは水素原子又は下記式(2)で表される基を示し、Lは炭素数2~12のアルキレン基を示す)
【0010】
(前記式(2)中、*は前記一般式(1)中の酸素原子(O)との結合位置を示す)
【0011】
また、本発明によれば、以下に示すモノマー組成物が提供される。
[2]前記[1]に記載の重合禁止剤と、ラジカル重合性を有する化合物と、を含有するモノマー組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、重合禁止効果に優れたフェノール性の重合禁止剤を提供することができる。また、本発明によれば、製造時及び保存時の安定性に優れているとともに、高分子量化したポリマーを容易に製造することが可能なモノマー組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<重合禁止剤>
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明の重合禁止剤の一実施形態は、下記一般式(1)で表される化合物である。以下、本実施形態の重合禁止剤の詳細について説明する。
【0014】
(前記一般式(1)中、Rは水素原子又は下記式(2)で表される基を示し、Lは炭素数2~12のアルキレン基を示す)
【0015】
(前記式(2)中、*は前記一般式(1)中の酸素原子(O)との結合位置を示す)
【0016】
一般式(1)中、Lで表されるアルキレン基の炭素数は、3~12であることが好ましく、4~10であることがさらに好ましく、4~8であることが特に好ましい。
【0017】
一般式(1)で表される化合物としては、例えば、没食子酸(2-ヒドロキシエチル)、二没食子酸(エタン-1,2-ジイル)、没食子酸(1-ヒドロキシプロパン-2-イル)、没食子酸(2-ヒドロキシプロパン-1-イル)、二没食子酸(プロパン-1,2-ジイル)、没食子酸(3-ヒドロキシプロパン-1-イル)、二没食子酸(プロパン-1,3-ジイル)、没食子酸(2-ヒドロキシブタン-1-イル)、没食子酸(1-ヒドロキシブタン-2-イル)、二没食子酸(ブタン-1,2-ジイル)、没食子酸(3-ヒドロキシブタン-1-イル)、没食子酸(1-ヒドロキシブタン-3-イル)、二没食子酸(ブタン-1,3-ジイル)、没食子酸(4-ヒドロキシブタン-1-イル)、二没食子酸(ブタン-1,4-ジイル)、没食子酸(3-ヒドロキシブタン-2-イル)、二没食子酸(ブタン-2,3-ジイル)、没食子酸(2-ヒドロキシペンタン-1-イル)、没食子酸(1-ヒドロキシペンタン-2-イル)、二没食子酸(ペンタン-1,2-ジイル)、没食子酸(3-ヒドロキシペンタン-1-イル)、没食子酸(1-ヒドロキシペンタン-3-イル)、二没食子酸(ペンタン-1,3-ジイル)、没食子酸(4-ヒドロキシペンタン-1-イル)、没食子酸(1-ヒドロキシペンタン-4-イル)、二没食子酸(ペンタン-1,4-ジイル)、没食子酸(5-ヒドロキシペンタン-1-イル)、二没食子酸(ペンタン-1,5-ジイル)、没食子酸(3-ヒドロキシペンタン-2-イル)、没食子酸(2-ヒドロキシペンタン-3-イル)、二没食子酸(ペンタン-2,3-ジイル)、没食子酸(4-ヒドロキシペンタン-2-イル)、二没食子酸(ペンタン-2,4-ジイル)、没食子酸(2-ヒドロキシヘキサン-1-イル)、没食子酸(1-ヒドロキシヘキサン-2-イル)、二没食子酸(ヘキサン-1,2-ジイル)、没食子酸(3-ヒドロキシヘキサン-1-イル)、没食子酸(1-ヒドロキシヘキサン-3-イル)、二没食子酸(ヘキサン-1,3-ジイル)、没食子酸(4-ヒドロキシヘキサン-1-イル)、没食子酸(1-ヒドロキシヘキサン-4-イル)、二没食子酸(ヘキサン-1,4-ジイル)、没食子酸(5-ヒドロキシヘキサン-1-イル)、没食子酸(1-ヒドロキシヘキサン-5-イル)、二没食子酸(ヘキサン-1,5-ジイル)、没食子酸(6-ヒドロキシヘキサン-1-イル)、二没食子酸(ヘキサン-1,6-ジイル)、没食子酸(3-ヒドロキシヘキサン-2-イル)、没食子酸(2-ヒドロキシヘキサン-3-イル)、二没食子酸(ヘキサン-2,3-ジイル)、没食子酸(4-ヒドロキシヘキサン-2-イル)、没食子酸(2-ヒドロキシヘキサン-4-イル)、二没食子酸(ヘキサン-2,4-ジイル)、没食子酸(5-ヒドロキシヘキサン-2-イル)、二没食子酸(ヘキサン-2,5-ジイル)、没食子酸(4-ヒドロキシヘキサン-3-イル)、二没食子酸(ヘキサン-3,4-ジイル)、没食子酸(7-ヒドロキシヘプタン-1-イル)、二没食子酸(ヘプタン-1,7-ジイル)、没食子酸(8-ヒドロキシオクタン-1-イル)、二没食子酸(オクタン-1,8-ジイル)、没食子酸(9-ヒドロキシノナン-1-イル)、二没食子酸(ノナン-1,9-ジイル)、没食子酸(10-ヒドロキシデカン-1-イル)、二没食子酸(デカン-1,10-ジイル)、没食子酸(12-ヒドロキシドデカン-1-イル)、及び二没食子酸(ドデカン-1,12-ジイル)等の直鎖アルキレン基を含む化合物;没食子酸(3-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-イル)、二没食子酸(2-メチルプロパン-1,3-ジイル)、没食子酸(4-ヒドロキシ-2-メチルブタン-1-イル)、没食子酸(4-ヒドロキシ-3-メチルブタン-1-イル)、及び二没食子酸(2-メチルブタン-1,4-ジイル)等の分岐アルキレンを含む化合物;没食子酸(4-ヒドロキシ-cis-シクロヘキサン-1-イル)、二没食子酸(cis-シクロヘキサン-1,4-ジイル)、没食子酸(4-ヒドロキシ-trans-シクロヘキサン-1-イル)、及び二没食子酸(trans-シクロヘキサン-1,4-ジイル)等の環状アルキレンを含む化合物;没食子酸(2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル)等のエーテル結合を含む化合物;等を挙げることができる。これらの化合物(重合禁止剤)は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
一般式(1)で表される化合物として、市販品を用いてもよく、合成品を用いてもよい。一般式(1)で表される化合物は、例えば、没食子酸とジオール化合物とを反応させて調製することができる。ジオール化合物としては、エチレングリコール、プロパン-1,2-ジオール、プロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,2-ジオール、ブタン-1,3-ジオール、ブタン-1,4-ジオール、ブタン-2,3-ジオール、ペンタン-1,2-ジオール、ペンタン-1,3-ジオール、ペンタン-1,4-ジオール、ペンタン-1,5-ジオール、ペンタン-2,3-ジオール、ペンタン-2,4-ジオール、ヘキサン-1,2-ジオール、ヘキサン-1,3-ジオール、ヘキサン-1,4-ジオール、ヘキサン-1,5-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、ヘキサン-2,3-ジオール、ヘキサン-2,4-ジオール、ヘキサン-2,5-ジオール、ヘキサン-3,4-ジオール、ヘプタン-1,7-ジオール、オクタン-1,8-ジオール、ノナン-1,9-ジオール、デカン-1,10-ジオール、及びドデカン-1,12-ジオール等の直鎖アルキレンジオール;2-メチルプロパン-1,3-ジオール、及び2-メチルブタン-1,4-ジオール等の分岐アルキレンジオール;trans-シクロヘキサン-1,4-ジオール、及びcis-シクロヘキサン-1,4-ジオール等の環状アルキレンジオール;ジエチレングリコール等のエーテル結合を含むジオール;等を挙げることができる。没食子酸とジオール化合物を反応させる際に用いる触媒としては、パラトルエンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸無水物、硫酸、塩酸、及びリン酸等の酸触媒を挙げることができる。
【0019】
<モノマー組成物>
本発明のモノマー組成物の一実施形態は、前述の重合禁止剤と、ラジカル重合性を有する化合物とを含有する。
本実施形態のモノマー組成物は、前述の重合禁止剤を含有するため、製造時及び保存時の安定性に優れているとともに、特に低酸素濃度条件下において容易に高分子量化したポリマーを製造することができる。
【0020】
モノマー組成物中の一般式(1)で表される重合禁止剤の含有量は、保管条件等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されない。具体的には、重合禁止剤の含有量は、モノマー組成物の全質量を基準として、0.001~90質量%であることが好ましく、0.003~30質量%であることがさらに好ましく、0.01~10質量%であることが特に好ましい。
【0021】
本実施形態のモノマー組成物は、一般式(1)で表される重合禁止剤以外の重合禁止剤(その他の重合禁止剤)をさらに含有してもよい。その他の重合禁止剤としては、4-メトキシフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、ヒドロキノン、tert-ブチルヒドロキノン、4-tert-ブチルピロカテコール、ナフトハイドロキノン、4-メトキシ-1-ナフトール等のフェノール系の重合禁止剤;ベンゾキノン等のキノン系の重合禁止剤;ジフェニルアミン等のアミン系の重合禁止剤;N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム等のニトロソ系の重合禁止剤;N,N-ジエチルヒドロキシルアミン等のヒドロキシアミン系の重合禁止剤;フェノチアジン類縁体等のフェノチアジン系の重合禁止剤;ジブチルジチオカルバミン酸銅(II)等の金属錯体系の重合禁止剤;等を挙げることができる。
【0022】
ラジカル重合性を有する化合物(いわゆる、モノマー)としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-メチルプロパン(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、べへニル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロデシル(メタ)アクリレート、シクロデシルメチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、t-ブチルベンゾトリアゾールフェニルエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、及びアリル(メタ)アクリレート等の脂肪族、脂環族、及び芳香族アルキル(メタ)アクリレート類を挙げることができる。
【0023】
また、ラジカル重合性を有する化合物(モノマー)として、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基を含有する(メタ)アクリル酸系モノマー類;グリコール基を有する(メタ)アクリル酸系モノマー類;(ポリアルキレン)グリコールモノアルキル、アルキレン、アルキンエーテル、及びエステルのモノ(メタ)アクリレート類;アクリル酸やアクリル酸二量体を含む酸基(カルボキシル基、スルホン酸、リン酸)を有する(メタ)アクリル酸系モノマー類;酸素原子を含有する(メタ)アクリル酸系モノマー類;アミノ基を有する(メタ)アクリル酸系モノマー類;窒素原子を含有する(メタ)アクリル酸系モノマー類;没食子酸(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)、没食子酸(3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル)、没食子酸(4-(メタ)アクリロイルオキシブチル)、没食子酸(5-(メタ)アクリロイルオキシペンチル)、没食子酸(6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル)、没食子酸(2-(2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアミノカルボニルオキシ)エチル)、没食子酸(3-(2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアミノカルボニルオキシ)プロピル)、没食子酸(4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアミノカルボニルオキシ)ブチル)、没食子酸(5-(2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアミノカルボニルオキシ)ペンチル)、及び没食子酸(6-(2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアミノカルボニルオキシ)ヘキシル)等の3個以上の水酸基を有するモノ(メタ)アクリレート類;ハロゲン原子を含有する(メタ)アクリレート類;ケイ素原子を含有する(メタ)アクリル酸系モノマー類;紫外線吸収性基を有する(メタ)アクリル酸系モノマー類;α位水酸基メチル置換アクリレート類;N,N’-ビス(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)ウレア、1-(2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアミノカルボニルオキシ)-2-(メタ)アクリロイルオキシエタン、1-(2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアミノカルボニルオキシ)-3-(メタ)アクリロイルオキシプロパン、1-(2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアミノカルボニルオキシ)-4-(メタ)アクリロイルオキシブタン、1-(2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアミノカルボニルオキシ)-5-(メタ)アクリロイルオキシペンタン、1-(2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアミノカルボニルオキシ)-6-(メタ)アクリロイルオキシヘキサン等の2以上の重合性置換基を有する(メタ)アクリレート類;等を挙げることができる。
【0024】
さらに、ラジカル重合性を有する化合物(モノマー)として、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、及びトリメチロールプロパンのポリアルキレングリコール付加物の(メタ)アクリル酸エステル等の2以上の付加重合性基を有する(メタ)アクリル酸系モノマー類を用いることもできる。また、スチレンや酢酸ビニル等のビニル化合物をモノマーとして用いることができる。
【0025】
本実施形態のモノマー組成物は、重合開始剤をさらに含有してもよい。重合開始剤としては、光重合開始剤や熱重合開始剤を用いることができる。光重合開始剤としては、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド等のアシルフォスフィンオキシド類;2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、及びジエトキシアセトフェノン等のアセトフェノン類;ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾイン、及びベンゾインメチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、及びヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;その他のハロゲン化ケトン、及びアシルフォスファナート等を挙げることができる。
【0026】
熱重合開始剤としては、アゾ化合物及び有機過酸化物等を用いることができる。アゾ化合物としては、アゾビスイソブチロニトリル、1,1’-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、及び2,2’-アゾビス(2-メチルプロパン酸)ジメチル等を挙げることができる。有機過酸化物としては、ハイドロパーオキサイド系化合物、ジアルキルパーオキサイド系化合物、パーオキシエステル系化合物、ジアシルパーオキサイド系化合物、ケトンパーオキサイド系化合物、パーオキシケタール系化合物、及びパーオキシジカーボネート系化合物等を挙げることができる。
【0027】
本実施形態のモノマー組成物には、その他の添加剤をさらに含有してもよい。その他の添加剤としては、例えば、シランカップリング剤、チキソ付与剤、ブロッキング防止剤、レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤、熱可塑性樹脂、帯電防止剤、ワックス、熱安定剤、結晶化促進剤、結晶化抑制剤、難燃剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、抗ウィルス剤、及び消臭剤等を挙げることができる。
【0028】
<各種製品>
本実施形態のモノマー組成物を用いることで、各種ポリマーを得ることができる。得られるポリマーは、従来公知の用途に有用である。本実施形態のモノマー組成物を用いて製造されるポリマーは、例えば、インク、塗料、コーティング、フィルム、シート、積層体、プラスチック、インクジェットインク、及びカラーフィルター材料等の色材関係材料;エネルギー関係材料;機械部品関係材料;医療機器材料;薬剤・ヘルスケア関係;等の様々な分野に適用することができ、その活用が期待される。
【実施例0029】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0030】
<重合禁止剤フリーのメタクリル酸ベンジルの製造>
(製造例1)
市販のメタクリル酸ベンジル29部を、5%NaOH水溶液15部で3回、及び20%食塩水10部で1回洗浄した。無水硫酸マグネシウム10部を加えて室温で1時間撹拌した後にろ過し、重合禁止剤を除去したメタクリル酸ベンジル14部を得た。
【0031】
<モノマー組成物の製造>
(実施例1)
重合禁止剤を除去したメタクリル酸ベンジル500部、N,N-ジメチルホルムアミド500部、重合開始剤(2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル))1部、及び没食子酸(4-ヒドロキシブチル)1部を混合した。55℃で2.5時間加熱して、モノマー組成物を得た。
【0032】
(実施例2、比較例1~3、参考例1)
表1に示す配合としたこと以外は、前述の実施例1と同様にして、モノマー組成物を得た。
【0033】
【0034】
<モノマー組成物の評価>
調製したモノマー組成物2部をテトラヒドロフラン100部に溶解させ、HPLCを測定した。HPLCの条件を以下に示す。
・分析機器:LC-30AD、SPD-M20A、及びLCMS-8050からなるLCMSシステム(島津製作所社製)
・溶離液:アセトニトリル-イオン交換水(6:4→9:1(v/v)、12分間かけてグラジエント)
・流速:0.2mL/min
・カラム:L-column2 ODS.2μm(3.0×100mm)(化学物質評価研究機構社製)
・カラム温度:40℃
・試料:モノマー組成物のTHF溶液1.0μL
・検出波長:254nm
【0035】
参考例1のモノマー組成物のHPLCのクロマトグラムにおけるメタクリル酸ベンジルに由来するピーク面積を「100(%)」とする、各モノマー組成物のクロマトグラムにおけるメタクリル酸ベンジルの相対量を「モノマー残存率(%)」として算出した。結果を表2に示す。この「モノマー残存率(%)」は、各化合物の重合禁止効果の指標とすることができる。
【0036】
本発明の重合禁止剤は、重合禁止効果に優れており、製造時及び保存時の安定性に優れているとともに、高分子量化したポリマーを容易に製造することが可能なモノマー組成物を調製するための材料として有用である。