(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136082
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】エキシマランプ
(51)【国際特許分類】
H01J 9/26 20060101AFI20240927BHJP
H01J 65/00 20060101ALI20240927BHJP
H01J 61/54 20060101ALI20240927BHJP
H01J 9/28 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H01J9/26 B
H01J65/00 A
H01J61/54 N
H01J9/28 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047055
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000128496
【氏名又は名称】株式会社オーク製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 真
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 剛
(72)【発明者】
【氏名】芹澤 和泉
(57)【要約】
【課題】点灯始動補助用の補助放電空間を備えたエキシマランプにおいて、点灯始動性と紫外線放射効率を高める。
【解決手段】外側管20の端部20Tを誘電体30の大径部34に設けた拡径部31に溶着させることによって主放電空間S1が形成される放電容器15を備える。また、誘電体30と内側電極40との部分的封着により、補助放電空間S2がランプ軸Cに沿って形成されている。そして、補助放電空間S2において、電極幅方向(Y方向)に沿った誘電体30との離隔距離D1が、誘電体30の管状部分30Gの厚さ(肉厚)T10(=T20)よりも小さい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランプ軸方向に沿って配設された箔状の内側電極を覆う誘電体と、
前記誘電体と溶着して主放電空間を形成する放電容器を備え、
前記誘電体が、ランプ軸方向に沿って、前記内側電極と封着した封着部分と、前記封着部分の間に形成された補助放電空間を囲む管状部分とを有し、
前記補助放電空間において、前記内側電極の幅方向端と前記管状部分の内表面とが、電極幅方向に沿った前記管状部分の厚さよりも小さい離隔距離で離隔している、または、接触していることを特徴とするエキシマランプ。
【請求項2】
前記補助放電空間における、電極厚さ方向に沿った前記内側電極の幅方向中央と前記管状部分の内表面との離隔距離が、前記管状部分の厚さよりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のエキシマランプ。
【請求項3】
前記主放電空間において、電極幅方向に沿った前記誘電体の径が、前記管状部分と前記封着部分との間で略等しいことを特徴とする請求項1に記載のエキシマランプ。
【請求項4】
前記主放電空間において、前記誘電体と電極幅方向に沿った前記放電容器の内表面との距離間隔が、前記管状部分と前記封着部分との間で略等しいことを特徴とする請求項1に記載のエキシマランプ。
【請求項5】
前記封着部分の断面が、長楕円状または長円状であり、
前記管状部分の断面が、中空円状であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のエキシマランプ。
【請求項6】
前記内側電極の幅方向端の厚さが、前記内側電極の中央部と比べて薄いことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のエキシマランプ。
【請求項7】
前記内側電極が、幅方向に沿って厚さ均一の平坦部を幅方向中央に有し、前記幅方向端から前記平坦部の間で鋭く尖ったクサビ形状になっていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のエキシマランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エキシマランプに関し、特に、補助放電空間を備えたエキシマランプに関する。
【背景技術】
【0002】
エキシマランプでは、内側電極を覆う誘電体と外側管との間に形成される放電空間に対し、放電ガスが封入される。そして、両電極に対して高周波電圧を印加することによって、放電発光させる。
【0003】
点灯始動性を高めるため、補助放電空間を形成したエキシマランプが知られている(特許文献1参照)。そこでは、箔状の内側電極を被覆する誘電体(内側管)と、外側電極が外表面に配設される外側管との間に主放電空間を形成するとともに、点灯始動補助用の放電空間が、内側電極と誘電体との間に形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
補助放電空間において、箔状電極の電極幅方向に沿った両端部と、補助放電空間を囲む誘電体の内表面との距離間隔が大きいと、点灯始動電圧が高くなってしまう。さらに、補助放電空間に印加される電圧が高くなることで、補助放電により消費される電力も高くなり、主放電による紫外線放射効率を低下させる。
【0006】
したがって、点灯始動補助用の補助放電空間を備えたエキシマランプにおいて、点灯始動性と紫外線放射効率を高めることが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のエキシマランプは、ランプ軸方向に沿って配設された箔状の内側電極を覆う誘電体と、誘電体と溶着して主放電空間を形成する放電容器を備える。内側電極の電極形状は様々であり、例えば、内側電極の幅方向両端の厚さが、内側電極の中央部と比べて薄くなるように構成することができる。また、放電容器は、管状の放電容器として構成することができる。
【0008】
誘電体は、ランプ軸方向に沿って、内側電極と封着した封着部分と、封着部分の間に形成された補助放電空間を囲む管状部分とを備える。例えば、放電容器中央部を含むように主放電空間のランプ軸方向に沿った一部区間に対し、管状部分を形成することが可能である。
【0009】
本発明では、補助放電空間において、内側電極の幅方向端と管状部分の内表面とが、電極幅方向に沿った管状部分の厚さよりも小さい離隔距離で隔離している。または、接触している。例えば、内側電極の幅方向両端が、それぞれ管状部分の内表面と電極幅方向に沿った管状部分の厚さよりも小さい距離間隔で離間しているように構成することができる。また、内側電極の幅方向両端が、それぞれ管状部分の内表面と接触しているように構成することができる。さらに、内側電極の幅方向一方の端が、管状部分の内表面と電極幅方向に沿った管状部分の厚さよりも小さい距離間隔で離間しているように構成し、内側電極の幅方向他方の端が、管状部分の内表面と接触しているように構成することができる。
【0010】
補助放電空間の断面形状は、管状部分の断面形状に従うこととなり、管状部分の断面形状の特性(厚さ、幅などを含む)を考慮し、様々なバリエーションの中から定めることにより、補助放電空間を所望する断面形状にすることが可能である。例えば、補助放電空間における、電極厚さ方向に沿った内側電極の幅方向中央と管状部分の内表面との離隔距離が、管状部分の厚さよりも大きくなるように構成することができる。
【0011】
誘電体の封着部分と管状部分の断面形状に関しても、ランプ軸方向に沿った様々な断面形状のバリエーションの中から定めることができる。例えば、主放電空間において、電極幅方向に沿った誘電体の径が、管状部分と封着部分との間で略等しくなるように構成することができる。また、主放電空間において、誘電体と電極幅方向に沿った放電容器の内表面との距離間隔が、管状部分と封着部分との間で略等しくなるように構成することができる。
【0012】
上述した構成を提供する誘電体の断面形状として、例えば、封着部分の断面が、長楕円状または長円状となり、管状部分の断面が、中空円状となるように構成することができる。
【0013】
内側電極の断面形状は、上述した誘電体の断面形状などに応じて定めることが可能である。例えば、内側電極が、幅方向両端の間に幅方向に沿って厚さ均一の平坦部を有し、幅方向両端から平坦部の間で鋭く尖ったクサビ形状になるように構成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、点灯始動補助用の補助放電空間を備えたエキシマランプにおいて、点灯始動性と紫外線放射効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態であるエキシマランプの概略的断面図である。
【
図2】
図1の断面方向と直交する方向に沿ったエキシマランプの概略的断面図である。
【
図3】
図1のIII-IIIに沿ったエキシマランプの概略的断面図である。
【
図4】
図1のIV-IVに沿ったエキシマランプの概略的断面図である。
【
図5】
図3の誘電体および内側電極を拡大して示した断面図である。
【
図6】
図4の誘電体および内側電極を拡大して示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、図面を参照して本実施形態であるエキシマランプについて説明する。
【0017】
図1は、本実施形態であるエキシマランプの概略的断面図である。
図2は、
図1の断面方向と直交する方向に沿ったエキシマランプの概略的断面図である。
図3は、
図1のIII-IIIに沿ったエキシマランプの概略的断面図である。
図4は、
図1のIV-IVに沿ったエキシマランプの概略的断面図である。
【0018】
エキシマランプ10は、石英ガラスなどの誘電材料から成る放電容器15を備える。放電容器15は、ここでは放電管(以下、外側管という)20を誘電体30に対して同軸的に配置し、誘電体30の大径部34に設けられた拡径部31と溶着させることによって成形される。外側管20は、ここでは管径(ランプ径)方向に沿った断面が中空円状に形成され、円筒状の放電空間(以下、主放電空間という)S1が、外側管20と誘電体30との間に形成されている。主放電空間Sには、キセノンガスなどの希ガスまたはこれらの混合ガスが、放電ガスとして封入されている。
【0019】
誘電体30に被覆された電極(以下、内側電極という)40は、ここでは、管軸(以下、ランプ軸ともいう)C方向に沿って延びる箔状の電極として構成される。内側電極40は、主放電空間Sに露出せず、そのランプ軸C方向に沿った一方の端部40Tは、給電棒(給電線)70と接続する。給電棒70は、外部に設置された電源部(図示せず)と接続している。
【0020】
放電容器15の外面に配設された電極(以下、外側電極という)50は、ここでは導電性の金属からなる線状の電極部を外側管20の外表面に沿って巻き付けて配設した構成であり、管軸Cに沿って螺旋状に巻かれ、所定間隔で離間するように配置されている。
【0021】
箔状の内側電極40は、誘電体30の中心位置にその幅方向および厚さ方向の中心位置を合わせた状態で同軸的に配置されている。また、誘電体30は、外側管20に対して同軸的に配置されている。したがって、内側電極40は、外側管20に対し同軸的な位置に配置され、管軸(ランプ軸)Cに関して対称的な位置に配置されている。
【0022】
ここでは、内側電極40の幅方向をY方向、それに直交する方向(厚さ方向)をX方向として定めている(
図3、4参照)。
図1は、箔状である内側電極40の電極幅方向に沿った断面図を表し、
図2は、電極厚さ方向に沿った断面図を表す。
【0023】
放電容器15には、主放電空間S1とともに、ランプ軸C方向に沿って補助放電空間S2が形成されている。ここでは、補助放電空間S2が、内側電極40と外側電極50とが管径(ランプ径)方向に沿って向かい合う、管軸(ランプ軸)C方向に沿った電極対向区間BLのうち、ランプ中央部を含む一部区間(以下、補助放電空間形成区間という)CLに形成されている。
【0024】
内側電極40、外側電極50は、ここではその極性が陽極、陰極に定められている。そして、高周波(例えば、数kHz~数十MHzの範囲)、高電圧(例えば、数kV~十数kVの範囲)が、給電棒70を介してエキシマランプ10に対して供給される。これにより、主放電空間S1において誘電体バリア放電が生じ、所定スペクトル(例えば、波長172nm)のエキシマ光が、主放電空間S1から放射される。
【0025】
補助放電空間S2は、ここでは大気圧以下の減圧状態にあり、また、点灯始動時の電圧を低下させる大気圧以下の希ガスが封入されている。そのため、内側電極40、外側電極50に高周波電圧が印加されると、主放電空間S1よりも低い点灯始動電圧によって、先に補助放電空間S2で放電が発生する。
【0026】
図3に示すように、誘電体30は、補助放電空間形成区間CL以外の部分では、内側電極40全周に渡って密着(封着)している。一方、補助放電空間形成区間CLでは、誘電体30は、その両端付近を除いて内側電極40と接していない(
図4参照)。
【0027】
補助放電空間S2は、ランプ製造工程において、補助放電空間に形成された放電から放射される光(電磁波)に対する透過性を有する誘電体(内側管)の素材となるガラス管を、補助放電空間形成区間CLにおいて内側電極40と周方向回り全体で封着させず、ランプ軸方向に沿って内側電極40と周方向回り全体で部分的に封着させることによって形成することができる。
【0028】
誘電体30は、補助放電空間形成区間CLの断面形状と、それ以外の部分の断面形状が異なる。
図3に示すように、誘電体30が内側電極40と密着している部分(以下、封着部分という)30Fでは、その断面が電極幅方向と電極厚さ方向とで外径が異なる長楕円状または長円状になっている。すなわち、箔状の内側電極40に沿って電極幅方向(Y方向)に沿った表面部分を有し、その両側には断面が半楕円状または半円状の曲面部分が形成され、電極厚さ方向(X方向)に対して偏平した形状となっている。
【0029】
一方、補助放電空間形成区間CLにおいて、誘電体30は、管状部分30Gとして構成されている(
図4参照)。管状部分30Gは、電極幅方向(Y方向)、電極厚さ方向(X方向)に対して偏平しておらず、その断面は中空円状(リング状)に形成されている。したがって、補助放電空間形成区間CLでは、
図1に示す電極幅方向(Y方向)に沿った距離間隔D10と、
図2に示す電極厚さ方向(X方向)に沿った距離間隔D20が、略等しい。
【0030】
補助放電空間形成区間CLの両端付近、すなわち誘電体30の封着部分30Fと管状部分30Gとの境界部分では、
図4に示す誘電体30の断面形状は、
図3に示すように徐々に偏平し、複雑な曲面形状を有する。
【0031】
図2に示すように、誘電体30の管状部分30Gの内表面30Hは、その根元付近から電極厚さ方向に沿った断面の封着角度θ1、θ2で内側電極から離れるように拡径していく。ここでは、封着角度θ1、θ2は略等しく、15°~80°の範囲に定められている。
【0032】
図5は、
図3の誘電体および内側電極を拡大して示した断面図である。
図6は、
図4の誘電体および内側電極を拡大して示した断面図である。
【0033】
内側電極40は、
図5、6に示すように、電極幅方向(Y方向)に沿った幅方向端E1、E2付近で先が薄くなるクサビ形状部分44を有し、その間に厚さ一定の平坦部42を有する。ただし、電極幅方向に沿って中央から滑らかに幅方向端E1、E2それぞれに向けて傾斜させるナイフエッジ形状としてもよい。また、電極幅方向に沿って厚さ一定の内側電極40を構成してもよい。
【0034】
本実施形態では、補助放電空間S2において、内側電極40の幅方向に沿った両方の端(以下、幅方向両端という)E1、E2が、誘電体30の管状部分30Gの内表面30Hと近接している。すなわち、内側電極40が、電極幅方向(Y方向)に沿って管状部分30Gの内表面30H近くまで延びている。
【0035】
そして、内側電極40の幅方向両端E1、E2と、管状部分30Gの内表面30Hの電極幅方向(Y方向)に沿った距離間隔(以下、離隔距離という)D1は、管状部分30Gの厚さT10(=T20)よりも短くなるように、定められている(D1<T10)。すなわち、管状部分30Gの肉厚よりも離隔距離D1が短い。
【0036】
また、補助放電空間形成区間CLにおいて、離隔距離D1は、主放電空間S1における管状部分30Gの外表面と外側管20の内表面20Hとの距離間隔D10よりも短い。したがって、内側電極と外側電極との間に印加する高周波電圧は、補助放電空間S2の離隔距離D1の間よりも、主放電空間S1の離間距離D10の間に印加される電圧が支配的になることで、補助放電よりも主放電に電力が供給されるので、点灯始動性を高めるとともに、紫外線放射効率を高めることができる。放電容器15内では、主放電空間S1が支配的な放電空間として形成され、僅かな補助放電が形成される放電空間として補助放電空間S2がランプ軸C方向に沿って形成されている。
【0037】
さらに、
図5、6に示すように、誘電体30は、電極幅方向に沿った断面において、管状部分30Gと封着部分30Fとの間でその幅(外径)が略等しく(W10≒W11)、電極配設区間BL全体に渡って外径の実質的差が生じていない。したがって、主放電空間S1において、管状部分30Gの外表面と外側管20の内表面20Hとの電極幅方向に沿った距離間隔D10と、封着部分30Fの外表面と外側管20の内面20Hとの電極幅方向に沿った距離間隔D11とは、ランプ軸C方向に沿った電極配設区間BL全体に渡って、略一定となり、安定した放電状態を維持することができる。
【0038】
このような補助放電空間S2の形成により、内側電極40の電極消耗を抑制することができる。
【0039】
すなわち、内側電極40が幅方向両端E1、E2において尖ったクサビ形状部分44を有することにより、点灯始動時に電界集中が生じる。そして、補助放電空間S2の形成により、先に補助放電空間S2において放電が生じ、その後、主放電空間S1において放電が生じる。
【0040】
ランプ点灯中、内側電極40の幅方向両端E1、E2付近では電界強度が強いため、スパッタリング現象によって内側電極40の幅方向両端E1、E2が消耗しやすくなる。特に、電極幅方向に沿って中央から滑らかに電極幅方向両端E1、E2に向けて傾斜させるナイフエッジ形状とした場合、厚さが比較的小さい部分が多いため、スパッタリング現象により電極消耗しやすくなる。
【0041】
しかしながら、内側電極40は、電極幅方向(Y方向)に沿った幅方向端E1と幅方向端E2の間の中央に、電極幅方向に沿って厚さ均一の平坦部42を有し、鋭く尖ったクサビ形状部分44を有することで、厚さが比較的小さい部分が少なくなるため、短時間での電極消耗を抑制できる。その結果、主放電空間S1に向けて放射される紫外線を含む光(電磁波)が遮られることが抑制され、長期に渡って補助放電を利用した点灯始動性の高いランプ点灯が行われる。
【0042】
また、上述したように、主放電空間S1の電極幅方向(Y方向)に沿った距離間隔も、ランプ軸C方向に沿って略一定となるため、(D10=D11)電極幅方向(Y方向)に沿った主放電空間S1の放電状態は、ランプ軸Cに沿って相違がない。したがって、電極配設区間BL全体に渡って安定した放電状態を維持することができる。
【0043】
上述したように、誘電体30は、封着部分30Fにおいて、電極厚さ方向(X方向)に偏平した断面長楕円状または長円状でランプ軸Cに沿って延びている。
図5に示すように、誘電体30は、電極幅方向(Y方向)に沿って延びる断面輪郭線が平面状の平面状部32Mと、断面輪郭線が半楕円状または半円状の曲面部32Eから構成される。
【0044】
誘電体30が封着部分30Fにおいて偏平形状であるため、封着部分30Fの電極厚さ方向に沿った幅(外径)W21(
図5参照)は、管状部分30Gの電極厚さ方向に沿った幅(外径)よりも小さい。一方、内側電極40を被覆する封着部分30Fの厚さT21(
図5参照)は、管状部分30Gの電極厚さ方向に沿った厚さ(肉厚)T20(=T10)よりも大きい。
【0045】
そして、内側電極40の幅方向中央と、管状部分30Gの内表面30Hの電極厚さ方向(X方向)に沿った離隔距離D2は、管状部分30Gの厚さT20よりも長くなるように、定められている(D2>T20)。すなわち、管状部分30Gの肉厚よりも離隔距離D2が長い。
【0046】
このように、電極厚さ方向(X方向)に関し、管状部分30Gの厚さを抑え、内側電極40との離隔距離D2を大きくすることにより、電極厚さ方向(X方向)に沿った補助放電空間S2の容積が確保される。そのため、点灯始動時、内側電極40の幅方向両端E1、E2に対し、確実に電界集中を生じさせることができる。また、電極厚さ方向(X方向)に沿った補助放電空間S2の内表面積も確保されるため、内側電極から蒸発した電極材料が、管状部30Gの内表面30Hの電極厚さ方向(X方向)外側に遮蔽膜として広がっても、主放電空間S1に向けて放射される紫外線を含む光(電磁波)が電極材料によって遮られることは抑制されることとなり、長期に渡って補助放電を利用した点灯始動性の高いランプ点灯が行われる。
【0047】
以上説明した本実施形態のエキシマランプ10によれば、外側管20の端部20Tを誘電体30の大径部34に設けた拡径部31に封着させることによって主放電空間S1が形成される放電容器15を備える。また、誘電体30と内側電極40との部分的封着により、誘電体30の内表面30Hが面している補助放電空間S2が、ランプ軸Cに沿った補助放電空間形成区間CLに形成されている。
【0048】
そして、補助放電空間S2において、電極幅方向(Y方向)に沿った誘電体30との離隔距離D1が、誘電体30の管状部分30Gの厚さ(肉厚)T10(=T20)よりも短く、電極厚さ方向(X方向)に沿った誘電体30の離隔距離D2は、管状部分30Gの厚さT10(=T20)よりも長い。
【0049】
例えば、エキシマランプ10を小型エキシマランプとして構成する場合、放電容器15のサイズ(径の大きさ)は制限される。主放電空間S1のスペースを確保しようとすると、内側電極40を被覆する誘電体30に対し、電極幅方向(Y方向)に沿って延びる箔状の内側電極40を完全に覆う一方で、出来る限り抑える径の大きさを定める必要がある。
【0050】
このような制約下においても、内側電極40の電極消耗を抑えながら、良好な点灯始動補助機能を得ることができる。また、電極幅方向(Y方向)に沿った電界強度の偏りがランプ軸Cに沿って相違がないため、点灯始動時のランプ軸Cに沿った放電が安定して生じる。
【0051】
このようなエキシマランプ10は、例えば、以下に説明する製造方法によって製造することができる。
【0052】
補助放電空間に形成された放電から放射される光に対する透過性を有する誘電体材料により、内側電極(箔状電極)を被覆する小径部と給電棒を被覆する大径部とからなる断面円筒状のガラス管(内側管)を形成する。ガラス管を形成後、内側電極に給電棒を抵抗溶接などによって接続し、有底筒状のガラス管に内側電極と給電棒を挿入する。内側電極と給電棒を挿入後、ガラス管内を減圧状態(真空)にして、封止する。このとき、ガラス管内に大気圧以下で希ガスを封入してもよい。
【0053】
ガラス管を回転させながら加熱し、ガラス管が軟化して収縮(縮径)するように変形させる。このとき、内側電極の管軸方向に沿った両端部付近だけを加熱し、補助放電空間形成区間に相当するランプ軸方向範囲を加熱しない、あるいは加熱を弱めることで、ガラス管の軟化による縮径が抑制(停止)され、補助放電空間が形成される。このとき、加熱調整を行うことで、補助放電空間の容積とガラス管の内表面と内側電極との封着角度θを定めることが可能となる。
【0054】
補助放電空間を形成するとともに、ガラス管の一端に対して径方向に突出する鍔状の拡径部を形成する。なお、ガラス管を回転させず、箔状電極の縁部に対向するガラス管部分だけを軸方向に沿って加熱して密着させるようにしてもよい。内側電極の長さ方向(管軸方向)に沿った端部は、周方向全体を封着させることで、内側電極の端部をガラス管に埋設させて、補助放電空間に露出させない。
【0055】
外側管に関しては、主放電空間に形成された放電から放射される紫外線の波長における透過性を有する石英管の一端を縮径するとともに、開口した排気管(チップ管)を設ける。その一方で、内側管の拡径部と溶着する挿入口を設けた外側管を形成する。
【0056】
そして、内側管を外側管に挿入して同軸配置させ、外側管の挿入口を拡径部に加熱溶着させ、放電管を形成する。その後、排気管を通じて真空引きして不純物を除去し、発光管内に放電ガスを封入して、排気管を加熱溶融により気密封止する。封止後、外側電極を外側管の外表面に配設する。
【0057】
本実施形態では、内側電極40の縁まで鋭く尖ったクサビ形状になっている幅方向端E1、E2の両方を、誘電体30の管状部分30Gの内表面30Hに近接させ、離隔距離D1を定めているが、内側電極40の幅方向の端E1、E2の両方を、管状部分30Gの内表面30Hに接触するようにしてもよい。あるいは、内側電極40の幅方向端E1、E2どちらか一方を誘電体30の管状部分30Gの内表面30Hに離隔距離D1で近接させ、他方を管状部分30Gの内表面30Hに接触するようにしてもよい。
【0058】
補助放電空間形成区間CLは、電極配設区間BLのランプ軸Cに沿った範囲内で、任意定めることが可能である。例えば、ランプ中央部を含むように補助放電空間形成区間CLを規定すればよい。誘電体30に関しては、電極配設区間BL全体に渡って断面円状に構成してもよい。あるいは、管状部分30Gを、誘電体30の封着部分30Fの偏平形状に合わせて、断面長円状、断面楕円状にしてもよい。
【符号の説明】
【0059】
10 エキシマランプ
15 放電容器
20 外側管
30 誘電体
40 内側電極
50 外側電極
S1 主放電空間
S2 補助放電空間