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特開2024-136084解析装置、解析方法および解析プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136084
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】解析装置、解析方法および解析プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/201 20180101AFI20240927BHJP
   G01B 15/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G01N23/201
G01B15/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047057
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000250339
【氏名又は名称】株式会社リガク
(74)【代理人】
【識別番号】110004107
【氏名又は名称】弁理士法人Kighs
(74)【代理人】
【識別番号】100125391
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100208605
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 龍一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 義泰
【テーマコード(参考)】
2F067
2G001
【Fターム(参考)】
2F067AA31
2F067BB04
2F067CC17
2F067EE04
2F067EE10
2F067HH04
2F067KK07
2F067KK09
2F067RR21
2F067RR24
2G001AA01
2G001BA14
2G001CA01
2G001DA09
2G001JA08
2G001LA11
2G001SA01
(57)【要約】
【課題】板状試料内周期的に配列された柱状の散乱体の2方向成分の傾きだけを高速に高精度で測ることができる解析装置、解析方法および解析プログラムを提供する。
【解決手段】解析装置120は、1回のωスキャンでX線の透過により測定された板状試料からの散乱強度のデータを記憶する測定データ記憶部123と、測定された散乱強度のデータを用い、特定の回折点の2方向成分の強度に基づいた波形に対し、散乱ベクトルの座標を散乱体の傾きの座標に座標変換する座標変換部125と、座標変換された傾きの座標に対する強度の波形のピーク位置を特定するピーク位置特定部126と、特定されたピーク位置と板状試料の表面に垂直な方向から散乱体が傾いていない仮定で求まるピーク位置との差分を、散乱体の傾きとして2方向成分で算出する傾き算出部127と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み方向に長い柱状の散乱体が周期的に配列して形成された板状試料の微細構造を解析する解析装置であって、
1回のωスキャンでX線の透過により測定された板状試料からの散乱強度のデータを記憶する測定データ記憶部と、
前記測定された散乱強度のデータを用い、特定の回折点の2方向成分の強度に基づいた波形に対し、散乱ベクトルの座標を散乱体の傾きの座標に座標変換する座標変換部と、
前記座標変換された傾きの座標に対する強度の波形のピーク位置を特定するピーク位置特定部と、
前記特定されたピーク位置と前記板状試料の表面に垂直な方向から散乱体が傾いていない仮定で求まるピーク位置との差分を、散乱体の傾きとして前記2方向成分で算出する傾き算出部と、を備えることを特徴とする解析装置。
【請求項2】
前記座標変換部は、前記2方向成分の散乱ベクトルの座標の一方が0である回折点を用いた単回解析により、前記2方向成分のうちの少なくとも一方の散乱体の傾きの座標への座標変換を行うことを特徴とする請求項1記載の解析装置。
【請求項3】
前記座標変換部は、前記2方向成分の散乱ベクトルの座標のいずれもが0でない回折点を用いたループ解析により、前記2方向成分の散乱体の傾きの座標への座標変換を行うことを特徴とする請求項1記載の解析装置。
【請求項4】
前記2方向成分は、前記板状試料の表面に平行な方向で、かつ単位格子の向いているX方向と前記X方向に直交するY方向の成分であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の解析装置。
【請求項5】
前記2方向成分は、前記板状試料の表面に平行な方向で、かつ前記ωスキャンのスキャン方向であるa方向と前記a方向に直交するa方向の成分であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の解析装置。
【請求項6】
前記座標変換部は、前記特定の回折点の2方向成分の強度に基づいた波形として複数の回折点にわたり積算された波形を用いることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の解析装置。
【請求項7】
厚み方向に長い柱状の散乱体が周期的に配列して形成された板状試料の微細構造を解析する解析方法であって、
1回のωスキャンでX線の透過により測定された板状試料からの散乱強度のデータを準備するステップと、
前記測定された散乱強度のデータを用い、特定の回折点の2方向成分の強度に基づいた波形に対し、散乱ベクトルの座標を散乱体の傾きの座標に座標変換するステップと、
前記座標変換された傾きの座標に対する強度の波形のピーク位置を特定するステップと、
前記特定されたピーク位置と前記板状試料の表面に垂直な方向から散乱体が傾いていない仮定で求まるピーク位置との差分を、散乱体の傾きとして前記2方向成分で算出するステップと、を含むことを特徴とする解析方法。
【請求項8】
厚み方向に長い柱状の散乱体が周期的に配列して形成された板状試料の微細構造を解析する解析プログラムであって、
1回のωスキャンでX線の透過により測定された板状試料からの散乱強度のデータを準備する処理と、
前記測定された散乱強度のデータを用い、特定の回折点の2方向成分の強度に基づいた波形に対し、散乱ベクトルの座標を散乱体の傾きの座標に座標変換する処理と、
前記座標変換された傾きの座標に対する強度の波形のピーク位置を特定する処理と、
前記特定されたピーク位置と前記板状試料の表面に垂直な方向から散乱体が傾いていない仮定で求まるピーク位置との差分を、散乱体の傾きとして前記2方向成分で算出する処理と、をコンピュータに実行させることを特徴とする解析プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚み方向に長い柱状の散乱体が周期的に配列して形成された板状試料の微細構造を解析する解析装置、解析方法および解析プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、深溝パターンによる三次元的な微細化が進む半導体デバイスに対しパターン形状を非破壊かつ簡便に計測するため、透過型小角X線散乱(tSAXS)が行われている。そして、この計測方法の応用として、板状試料内に周期的に配列された柱状の散乱体に対し、適応力の高い複雑な形状モデルを前提に測定および解析に時間をかけて精密に形状を特定する方法(特許文献1参照)や単純な形状モデルを前提に精度は低いが短時間で測定する方法(特許文献2参照)が知られている。また、形状モデル無しで2方向のスキャンによる測定結果から散乱体の傾斜を算出する方法も提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7100897号公報
【特許文献2】特許第7168985号公報
【特許文献3】国際公開第2020/028412号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実際の半導体の検査工程で生じるのは、特許文献1記載の方法が有効な複雑な形状の解析へのニーズだけではない。例えば、試料表面に対する柱状の散乱体の傾きのみ、精度を維持しつつ短時間で測定したい場面がある。特許文献2、3記載の技術は、簡便さを特徴としており、ある程度このニーズに応えることが可能である。しかしながら、柱状の散乱体の2方向成分の傾きを高精度で測定しつつ、さらにその測定および解析を短時間で完了することは難しい。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、板状試料内周期的に配列された柱状の散乱体の2方向成分の傾きだけを高速に高精度で測ることができる解析装置、解析方法および解析プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記の目的を達成するため、本発明の解析装置は、厚み方向に長い柱状の散乱体が周期的に配列して形成された板状試料の微細構造を解析する解析装置であって、1回のωスキャンでX線の透過により測定された板状試料からの散乱強度のデータを記憶する測定データ記憶部と、前記測定された散乱強度のデータを用い、特定の回折点の2方向成分の強度に基づいた波形に対し、散乱ベクトルの座標を散乱体の傾きの座標に座標変換する座標変換部と、前記座標変換された傾きの座標に対する強度の波形のピーク位置を特定するピーク位置特定部と、前記特定されたピーク位置と前記板状試料の表面に垂直な方向から散乱体が傾いていない仮定で求まるピーク位置との差分を、散乱体の傾きとして前記2方向成分で算出する傾き算出部と、を備えることを特徴としている。
【0007】
(2)また、上記(1)記載の解析装置において、前記座標変換部は、前記2方向成分の散乱ベクトルの座標の一方が0である回折点を用いた単回解析により、前記2方向成分のうちの少なくとも一方の散乱体の傾きの座標への座標変換を行うことを特徴としている。
【0008】
(3)また、上記(1)記載の解析装置において、前記座標変換部は、前記2方向成分の散乱ベクトルの座標のいずれもが0でない回折点を用いたループ解析により、前記2方向成分の散乱体の傾きの座標への座標変換を行うことを特徴としている。
【0009】
(4)また、上記(1)から(3)のいずれかに記載の解析装置において、前記2方向成分は、前記板状試料の表面に平行な方向で、かつ単位格子の向いているx方向と前記x方向に直交するy方向の成分であることを特徴としている。
【0010】
(5)また、上記(1)から(3)のいずれかに記載の解析装置において、前記2方向成分は、前記板状試料の表面に平行な方向で、かつ前記ωスキャンのスキャン方向であるa方向と前記a方向に直交するa方向の成分であることを特徴としている。
【0011】
(6)また、上記(1)から(5)のいずれかに記載の解析装置において、前記座標変換部は、前記特定の回折点の2方向成分の強度に基づいた波形として複数の回折点にわたり積算された波形を用いることを特徴としている。
【0012】
(7)また、本発明の解析方法は、厚み方向に長い柱状の散乱体が周期的に配列して形成された板状試料の微細構造を解析する解析方法であって、1回のωスキャンでX線の透過により測定された板状試料からの散乱強度のデータを準備するステップと、前記測定された散乱強度のデータを用い、特定の回折点の2方向成分の強度に基づいた波形に対し、散乱ベクトルの座標を散乱体の傾きの座標に座標変換するステップと、前記座標変換された傾きの座標に対する強度の波形のピーク位置を特定するステップと、前記特定されたピーク位置と前記板状試料の表面に垂直な方向から散乱体が傾いていない仮定で求まるピーク位置との差分を、散乱体の傾きとして前記2方向成分で算出するステップと、を含むことを特徴としている。
【0013】
(8)また、本発明の解析プログラムは、厚み方向に長い柱状の散乱体が周期的に配列して形成された板状試料の微細構造を解析する解析プログラムであって、1回のωスキャンでX線の透過により測定された板状試料からの散乱強度のデータを準備する処理と、前記測定された散乱強度のデータを用い、特定の回折点の2方向成分の強度に基づいた波形に対し、散乱ベクトルの座標を散乱体の傾きの座標に座標変換する処理と、前記座標変換された傾きの座標に対する強度の波形のピーク位置を特定する処理と、前記特定されたピーク位置と前記板状試料の表面に垂直な方向から散乱体が傾いていない仮定で求まるピーク位置との差分を、散乱体の傾きとして前記2方向成分で算出する処理と、をコンピュータに実行させることを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】透過型のCD-SAXSの測定系を示す斜視図である。
図2】(a)、(b)それぞれホールパターンの単位格子を示す図およびシリコンウェハと格子ベクトルとの関係を示す図である。
図3】(11)の回折点のQzに対する散乱強度プロファイルを示すグラフである。
図4】本発明の測定システムを示すブロック図である。
図5】測定装置の構成を示す平面図である。
図6】本発明の測定および解析の手順を示すフローチャートである。
図7】(a)、(b)それぞれ単回解析およびループ解析を示すフローチャートである。
図8】Q=0nm-1の回折点のθに対する強度に基づくQ波形を示すグラフである。
図9】Q=0nm-1の回折点のθに対する強度に基づくQ波形を示すグラフである。
図10】Q≠0nm-1の回折点のθに対する強度に基づくQ波形を示すグラフである。
図11】Q≠0nm-1の回折点のθに対する強度に基づくQ波形を示すグラフである。
図12】(a)、(b)それぞれ傾きのXY成分の最適化を示すグラフおよび表である。
図13】(a)、(b)それぞれθの単回解析の対象となる回折像およびQ=0nm-1の回折点のθに対する強度に基づくQ波形を示すグラフである。
図14】(a)、(b)それぞれθYの単回解析の対象となる回折像およびQ=0nm-1の回折点のθに対する強度に基づくQ波形を示すグラフである。
図15】(a)、(b)それぞれループ解析の対象となる回折像および回折点のθに対する強度に基づくQ波形を示すグラフである。
図16】(a)、(b)それぞれループ解析の対象となる回折像および回折点のθに対する強度に基づくQ波形を示すグラフである。
図17】(a)、(b)それぞれθの単回解析の対象となる回折像およびQ=0nm-1の回折点のθに対する強度に基づくQ波形を示すグラフである。
図18】θYの単回解析の対象となる回折像である。
図19】(a)、(b)それぞれループ解析の対象となる回折像および回折点のθに対する強度に基づくQ波形を示すグラフである。
図20】(a)、(b)それぞれループ解析の対象となる回折像および回折点のθに対する強度に基づくQ波形を示すグラフである。
図21】単回解析の対象となる回折像である。
図22】単回解析の対象となる回折像および回折点のaに対する強度に基づくQ波形を示すグラフである。
図23】単回解析の対象となる回折像および回折点のaに対する強度に基づくQ波形を示すグラフである。
図24】ループ解析の対象となる回折像および回折点のaに対する強度に基づくQ波形を示すグラフである。
図25】ループ解析の対象となる回折像および回折点のaに対する強度に基づくQ波形を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0016】
[第1実施形態]
[透過型のCD-SAXS]
本発明は、厚み方向に長い柱状の散乱体が周期的に配列して形成された板状試料の微細構造を解析するのに適しており、実験室レベルで実行可能な透過型のCD-SAXSによって試料の散乱体の傾きを算出する用途に応用可能である。特に三次元NANDやDRAMなど、深溝微細加工パターンを持つ半導体デバイスの形状を分析するのに適している。 非常に大きなアスペクト比を持つ深溝微細パターンを非破壊かつ簡便に計測するのに本発明は有効であり、基板に埋もれた構造を解析する場合には好適である。深溝パターンの形状計測は近年の三次元半導体デバイスでも計測要求が高く、本発明は三次元半導体デバイスのインライン計測に大きく寄与できる。
【0017】
図1は、透過型のCD-SAXSの測定系を示す斜視図である。透過型のCD-SAXSでは、試料表面に対して垂直にX線を入射する方位を基準として試料回転(ω回転)を行い、各回折線の積分強度の試料回転角度依存性を測定する。試料回転を行うのは、散乱ベクトルQを変化させて深さ方向の情報を取得するためである。
【0018】
[散乱ベクトルと試料の構造]
図2(a)、(b)は、それぞれホールパターンの単位格子を示す図およびシリコンウェハと格子ベクトルとの関係を示す図である。格子定数がaとbで格子角度がγの単位格子があった場合、回折指数(h,k)の回折条件は、散乱ベクトルQ、Q、Qを用いて与えられる。
【数1】
は単位格子のa軸に平行な方向の散乱ベクトルと定義でき、QはQに直交する方向の散乱ベクトルと定義できる。
【0019】
例えばシリコンウェハ試料であれば、ノッチと呼ばれるマークが付けられ、試料のXY方向と散乱ベクトルQ、Qの方向を一致させて測定を行うことが多い。以下では原則、試料のXY方向と散乱ベクトルQ、Qの方向とが一致しているものとして説明する。
【0020】
なお、ノッチに対してa軸がφだけ回転していた場合,ウェハ基準のチルト角(θWX,θWY)は次のように計算できる。
【数2】
【0021】
[チルト角とQ波形]
円筒の散乱体が、試料の表面に対して垂直な方向に中心軸を有する場合、その円筒の散乱体の形状因子は、以下のように表される。
【数3】
【0022】
また、表面に対してQ方向とQ方向にそれぞれθとθだけ傾いた円筒の散乱体の形状因子は、以下のように表される。
【数4】
【0023】
上記の数式(2)、(3)の破線内を考慮すると、試料の表面に対してQ方向とQ方向にそれぞれθとθだけ傾いているとき、Q方向の波形が以下の量だけ平行移動することになる。
【数5】
すなわち、各回折点についてQ波形のずれを抽出すれば、θとθを求められる。Q波形のずれを算出する際には、中心位置のずれを算出するのが容易である。このように1つのスキャンデータでモデルレスかつ高速に2軸のチルト角を決定することができる。
【0024】
θとθを表す式として以下の式が導ける。
【数6】
【数7】
【0025】
実際に、散乱体に傾きの無い試料と傾きのある試料とでは、Q波形の位置が異なる。図3は、(11)の回折点のQzに対する散乱強度プロファイルを示すグラフである。円のプロットは、試料の表面に垂直な中心軸を有する円筒の散乱体によるQ波形を表しており、正方形のプロットは、試料の表面に垂直な方向から傾いた中心軸を有する円筒の散乱体によるQ波形を表している。図3に示す例では、互いのQ波形の差ΔQzが0.0022nm-1である。
【0026】
[測定システムの構成]
次に、本発明の測定システム100の構成を説明する。図4は、測定システム100を示すブロック図である。測定システム100は、測定装置110および解析装置120を備え、X線を板状試料に照射して、散乱強度の測定により透過型のCD-SAXSの測定および解析を可能にする。解析装置120は、測定装置110を制御するとともに、制御データとともに測定データを管理し、データの解析を可能にする。具体的な構成を以下に説明する。
【0027】
[測定装置の構成]
図5は、測定装置110の構成を示す平面図である。測定装置110は、X線源111、ミラー112、スリットS1、S2、GS、試料台115、真空経路116、ビームストッパ118、検出器119を備えている。X線源111から試料S0までの距離L0、カメラ長Lについては、例えばそれぞれを1000mm、3000mmに設定できる。
【0028】
X線源111には、MoKαを用いることができる。ミラー112は、X線源111から放射されたX線を分光し、分光されたX線を試料S0方向へ照射する。スリットS1、S2は、X線を遮蔽可能な部材よりなり、分光されたX線を絞るスリット部を構成している。このような構成により、板状試料S0の表面に対し垂直方向に近い複数の回転角ωでX線の照射が可能になっている。複数の回転角ωには、-10°から10°の範囲の特定の角度を選ぶことが好ましい。スリットGSは、試料表面上でのX線のスポットサイズを数十μm以下に制限することができる。基本的には、スリットS1、S2でビームサイズを決定し、GSを用いてスリットS1、S2で発生した寄生散乱を除去する。ただし、ごく微小なスポットを作る場合には、GSでビームを小さくすることもできる。
【0029】
試料台115は、台上で試料S0を支持しており、解析装置120の制御を受けて駆動機構により板状試料S0の方位を調整できる。具体的には、図1に示すQ回りのω回転角だけでなく、χ回転角、φ回転角も調整可能である。このような調整により、分光されたX線の試料S0への入射角を変えることができ、散乱強度を回折角に応じて測定できる。
【0030】
試料S0は、板状に形成され、散乱体が試料の主面に平行な方向に周期的に配列している。散乱体としては、例えばホールが挙げられる。すなわち、代表的な試料としては、シリコンウェハの基板であり、その場合、散乱体はエッチングで形成されたホールである。集積度が高くなればなるほど、仕様に対して正確なホール形状の形成を確認できることが重要である。
【0031】
散乱体は、上記のようなホールに限らず、ピラーであってもよい。すなわち、表面に円柱が周期的に形成されているシリコン基板の試料にも本発明は応用できる。また、長い分子配列のようなラインパターン(スペースパターン)が形成された試料であってもよい。
【0032】
真空経路116は、カメラ長を稼ぎつつ、ビームの減衰を防止するために散乱ビームの経路を真空に維持する。ビームストッパ118は、ダイレクトビームを吸収する。検出器119は、例えば試料位置からの円周上を移動可能な半導体の2次元検出器であり、X線の散乱強度を検出することができる。測定装置110と解析装置120とは接続されており、検出された散乱強度データは、解析装置120へ送出される。
【0033】
なお、測定装置110は、レーザ光源および反射光の検出器を有していることが好ましい。レーザ光の反射を利用して板状試料の表面がX線の入射方向に対して垂直になるように板状試料の方位を調整することが可能である。このように調整された方位を基準とすることができ、このときω=χ=0°である。
【0034】
[解析装置の構成]
解析装置120は、例えばメモリおよびプロセッサを有するPCで構成されており、プログラムの実行により各処理の実行が可能である。測定装置110から得られる測定データを処理することで、厚み方向に長い散乱体が周期的に配列して形成された板状試料の微細構造の解析が可能になっている。
【0035】
解析装置120は、コンピュータ121、入力装置128および出力装置129を備えている。また、コンピュータ121は、測定制御部122、測定データ記憶部123、数式記憶部124、座標変換部125、ピーク位置特定部126および傾き算出部127を備えている。コンピュータ121は、PC端末であってもよいし、クラウド上のサーバであってもよい。各部は、制御バスLにより情報を送受できる。
【0036】
測定制御部122は、測定装置110を制御し、制御データおよび測定データを管理する。例えば、測定制御部122は、駆動機構により試料台115を制御し、試料S0の方位を調整する。
【0037】
測定データ記憶部123は、測定されたX線の強度データを記憶する。測定された強度データは、板状試料の表面に対し垂直方向近傍のω回転角で測定され、X線透過に伴い板状試料から散乱され、検出器により検出されたものである。1回のωスキャンで測定されたデータがあれば十分である。数式記憶部124は、散乱強度に対するフィッティングや座標変換のための数式を記憶する。
【0038】
座標変換部125は、測定された散乱強度のデータを用い、特定の回折点の2方向成分の強度に基づいた波形に対し、散乱ベクトルの座標を散乱体の傾きの座標に座標変換する。
【0039】
座標変換部125は、まず各回折点のQ波形を取得する。そして、特定の回折点の2方向成分の強度に基づいた波形として複数の回折点にわたり積算された波形を用いることが好ましい。これにより、高精度でピーク位置を特定できる。
【0040】
座標変換部125は、ユーザの選択やQ波形の有無に応じて単回解析またはループ解析を実行する。単回解析およびループ解析の詳細は後述する。座標変換部125は、ユーザの選択または自動で単回解析またはループ解析の対象となる回折点を選択する。θの単回解析では、Q=0nm-1の回折点を選択し、θの単回解析では、Q=0nm-1の回折点を選択する。ループ解析では、Q≠0nm-1かつQ≠0nm-1の回折点を選択する。いずれの場合も強度の大きい回折点の選択が好ましい。なお、解析装置120では、単回解析およびループ解析のいずれも可能であるが、どちらか一方のみを可能な装置であってもよい。
【0041】
単回解析が実行されている場合、座標変換部125は、2方向成分の散乱ベクトルの座標の一方が0である回折点を用いて2方向成分のうちの少なくとも一方の散乱体の傾きの座標への座標変換を行う。これにより、単回で座標変換できる。なお、2方向成分は、板状試料の表面に平行な2方向の成分である。2方向成分は、板状試料の表面に平行な方向で、かつ単位格子の向いているx方向とx方向に直交するy方向の成分であることが好ましい。これにより、単位格子の配向性が認識されている試料に対して容易に2成分のチルト角を算出できる。
【0042】
ループ解析が実行されている場合、座標変換部125は、ピーク位置特定部は、2方向成分の散乱ベクトルの座標のいずれもが0でない回折点を用いたループ解析により、2方向成分の散乱体の傾きの座標への座標変換を行う。これにより、多くの回折点を用いて高精度でチルト角を算出できる。
【0043】
ピーク位置特定部126は、座標変換された傾きの座標に対する強度の波形であるQ波形に対しピーク位置を特定する。
【0044】
ピーク位置特定部126は、数式記憶部124からフィッティングのための数式を取得し、フィッティングによりQ波形のピーク位置を算出する。ピーク位置特定部126は、行ったフィッティングが最適か否かを確認し、最適になるまでパラメータを変更する。得られた波形のピークをとるθおよびθが収束したものが、それぞれ散乱体の傾きのX成分TおよびY成分Tである。
【0045】
傾き算出部127は、特定されたピーク位置と板状試料の表面に垂直な方向から散乱体が傾いていない仮定で求まるピーク位置との差分を、散乱体の傾きとして2方向成分で算出する。これにより、測定および解析の時間を短縮化でき、高い解析精度で2方向成分のチルト角を算出できる。
【0046】
入力装置128は、例えばキーボード、マウスであり、コンピュータ121への入力を受け付ける。ユーザは、入力装置128を介して解析の種類の選択や回折点の選択を行うことができる。出力装置129は、例えばディスプレイであり、選択用の画面や解析結果を出力する。
【0047】
[測定および解析の方法]
(全体の流れ)
次に、上記のシステムの構成を用いた測定および解析の方法について説明する。図6は、測定および解析の手順を示すフローチャートである。図6に示すように、まず、板状試料を設置し、位置を調整する(ステップS101)。そして、1回のωスキャンで散乱強度を測定する(ステップS102)。ここまでが測定である。
【0048】
解析では、まず、測定データに基づいて各回折点のQ波形を取得する(ステップS103)。そして、ユーザの選択を受け付け、QとQとを独立に解析する単回解析が選択されたか否かを判定する(ステップS104)。単回解析が選択されない場合(=ループ解析が選択された場合)には、ループ解析を実行し(ステップS105)、ステップS108に進む。
【0049】
単回解析が選択された場合には、Q=0nm-1とQ=0nm-1の両方でQ波形が存在するか否かを判定する。存在しない場合には、ステップS105に進む。存在する場合には、単回解析を実行する(ステップS107)。そして、解析結果を出力して(ステップS108)、一連の手順を終了する。
【0050】
図7(a)、(b)は、それぞれ単回解析およびループ解析を示すフローチャートである。図7(a)に示すように、単回解析では、Q=0nm-1である回折点を用いて、チルト角のX成分としてθのピーク位置を決定する(ステップS201)。そして、Q=0nm-1である回折点を用いて、チルト角のY成分としてθのピーク位置を決定し(ステップS202)、単回解析を終了する。
【0051】
また、図7(b)に示すように、ループ解析では、Q≠0nm-1である回折点と妥当なθを用いてθのピーク位置を決定する(ステップS301)。そして、θ、θが収束したか否かを判定する(ステップS302)。収束判定は、例えばθ、θの差分または変化量が閾値以下であるか否かで行える。収束した場合には、ループ解析を終了する。収束していない場合には、ステップS303に進む。
【0052】
次に、Q≠0nm-1である回折点と決定されたθを用いてθのピーク位置を決定する(ステップS303)。そして、θ、θが収束したか否かを判定する(ステップS304)。収束した場合には、ループ解析を終了する。収束していない場合には、ステップS301に進む。このようにして最終的に収束したθ、θがそれぞれチルト角のX成分およびY成分である。なお、上記の解析ではいずれもθ、θの解析に順序があるが、順序が逆であってもよい。また、以上の解析における各処理はプログラムを実行することで可能である。
【0053】
(単回解析)
例を挙げつつ単回解析の詳細を説明する。単回解析とは、Q=0nm-1とQ=0nm-1の両方でQ波形が存在する場合に、それぞれ単回で数式を用いてチルト角を特定できる解析方法である。この場合、θとθの算出をそれぞれ独立で行うことができる。
【0054】
単回解析では、まず、Q=0nm-1の回折点だけを用い、以下の式を用いてQ波形の横軸をθに座標変換する。図8は、Q=0nm-1の回折点のθに対する強度に基づくQ波形を示すグラフである。
【数8】
図8の下側に示す複数の波形に対し、横軸θ上で強度を積算し、図8の上側の積算を表す波形に対し、ピークサーチによりチルト角のX成分としてのピーク位置を決定する。
【0055】
一方、Q波形に対し、Q=0nm-1の回折点だけを用い、以下の式を用いてQ波形の横軸をθに座標変換する。図9は、Q=0nm-1の回折点のθに対する強度に基づく波形を示すグラフである。
【数9】
図9の下側に示す複数の波形に対し、横軸θ上で強度を積算し、図9の上側の積算を表す波形に対し、ピークサーチによりチルト角のY成分としてのピーク位置を決定する。
【0056】
このような単回解析では、QとQとの相関なしで独立にθ、θを算出できる。一方で解析に使用するための回折点として、Q=0nm-1、Q=0nm-1の回折点を用意する必要がある。
【0057】
(ループ解析)
ループ解析とは、Q=0nm-1とQ=0nm-1のいずれかでQ波形が存在しない場合に、θ、θを繰り返し算出して数値を収束させることで、チルト角を特定できる解析方法である。ループ解析について一例を挙げて説明する。
【0058】
まず、θに初期値として妥当な数値を与える。例えばθ=0に仮定することが好ましい。さらにQ≠0nm-1である回折点を用い、Q波形の横軸を式(5)によりθに変換する。図10は、Q≠0nm-1の回折点のθに対する強度に基づくQ波形を示すグラフである。図10の下側に示す複数の波形に対し、横軸θ上で強度を積算し、図10の上側の積算を表す波形に対しピークサーチによりθのピーク位置を決定する。
【0059】
次に、θに決定されたピーク位置の数値を与える。さらにQ≠0nm-1である回折点を用い、Q波形の横軸を式(6)によりθに変換する。図11は、Q≠0nm-1回折点のθに対する強度に基づくQ波形を示すグラフである。図11の下側に示す複数の波形に対し、横軸θ上で強度を積算し、図11の上側の積算を表す波形に対しピークサーチによりθのピーク位置を決定する。θ、θのピーク位置が収束するまで、上記のθ、θのピーク位置の決定を繰り返す。
【0060】
回転軸がQまたはQ方向と一致した条件で測定が行われた場合、Q=0nm-1またはQ=0nm-1のQ波形が存在しない場合がある。このような場合、チルト角のX成分およびY成分を独立に決定できないが、ループ解析を用いればチルト角のX成分およびY成分を決定することができる。ループ解析は、Q=0nm-1またはQ=0nm-1がある回折点でも用いることができ、多くの回折点を使える。
【0061】
図12(a)、(b)は、それぞれ傾きのXY成分の最適化を示すグラフおよび表である。なお、θおよびθのそれぞれのピーク位置をTおよびTと表している。図12(a)、(b)に示す例では、ループ解析の4サイクル程度で数値が収束している。
【0062】
[実施例1]
以下に実施例を説明する。まず、Q=0nm-1およびQ=0nm-1の両方でQ波形が存在する場合への適用例として、シリコンウェハ試料をノッチに対してウェハ表面に垂直な軸回りに45°回転させ、X―Yの対角45°方向の軸の軸回りに試料をω回転させて測定を行った。そして、得られた測定データに基づいてチルト角度を算出した。
【0063】
図13(a)、(b)は、それぞれθの単回解析の対象となる回折像およびQ=0nm-1の回折点のθに対する強度に基づくQ波形を示すグラフである。図14(a)、(b)は、それぞれθYの単回解析の対象となる回折像およびQ=0nm-1の回折点のθに対する強度に基づくQ波形を示すグラフである。
【0064】
図15(a)、(b)は、それぞれループ解析の対象となる回折像および回折点のθに対する強度に基づくQ波形を示すグラフである。図16(a)、(b)は、それぞれループ解析の対象となる回折像および回折点のθに対する強度に基づくQ波形を示すグラフである。
【0065】
ループ解析は、4サイクルで数値が収束した。図15(b)および図16(b)は、それぞれ3.5サイクル目と4サイクル目のQ波形を示している。これらは収束時のQ波形である。単回解析では、チルト角のX成分Tおよびチルト角のY成分Tとしてそれぞれ-0.865deg、1.082degが得られた。ループ解析では、チルト角のX成分Tおよびチルト角のY成分Tとしてそれぞれ-0.864deg、1.080degが得られた。このように各解析結果が高い精度で一致した。
【0066】
[実施例2]
次に、Q=0nm-1またはQ=0nm-1のいずれかでQ波形が存在しない場合への適用例として、実施例1で用いたシリコンウェハ試料のY軸(Q軸に平行)回りに試料をω回転して測定を行った。そして、取得された測定データに基づいてチルト角を算出した。
【0067】
図17(a)、(b)は、それぞれθの単回解析の対象となる回折像およびQ=0nm-1の回折点のθに対する強度に基づくQ波形を示すグラフである。図18は、θYの単回解析の対象となる回折像である。回転軸とQ方向が一致しているため、Q=0nm-1の回折点のQ依存性が取得できなかった。そのため、θYの単回解析はできなかった。
【0068】
図19(a)、(b)は、それぞれループ解析の対象となる回折像および回折点のθに対する強度に基づくQ波形を示すグラフである。図20(a)、(b)は、それぞれループ解析の対象となる回折像および回折点のθに対する強度に基づくQ波形を示すグラフである。
【0069】
ループ解析は、4サイクルで数値が収束した。図19(b)および図20(b)は、それぞれ3.5サイクル目と4サイクル目のQ波形を示している。これらは収束時のQ波形である。単回解析では、チルト角のX成分Tとして-0.864degが得られた。ループ解析では、チルト角のX成分Tおよびチルト角のY成分Tとしてそれぞれ-0.864deg、1.082degが得られた。このようにチルト角のX成分Tが高い精度で一致した。
【0070】
[第2実施形態]
2方向成分は、必ずしもX成分およびY成分でなくてもよい。2方向成分として、板状試料の表面に平行な方向で、かつωスキャンのスキャン方向であるa方向とa方向に直交するa方向の成分を用いることもできる。この場合には、試料の配向性が分からない場合でもスキャン方向を基準に2成分のチルト角を算出できる。
【0071】
(単回解析)
本実施形態では、単回解析が可能である。まず、tanθhkが0となる、スキャン方向の回折点(θhk=0、θhk=π)だけを用いて、以下の式(10)でaを単独に決定する。なお、ωは、Q=0nm-1に対応する試料の回転角度であり、θhkは、指数(hk)の回折点の偏角である。
【数10】
【0072】
次に、式(11)を用いてaを決定する。
【数11】
【0073】
ここでスキャン方向の回折点(θhk=0、θhk=π)およびスキャンに直交する方向の回折点(θhk=±π/2)を選択すると、tanθhkが0もしくは無限大に発散する。そのため、スキャン方向の回折点およびスキャンに直交する方向の回折点を除く回折点を選択する。そして、選択された回折点を用い、上記で決定されたaを用いてaを決定する。このようにループすることなく単回で散乱体の傾きのスキャン方向およびその垂直な方向の成分としてaおよびaを決定できる。
【0074】
そして、以下の式(12)を用い、収束したaおよびaのピーク位置をチルト角のaおよびa方向成分をシリコンウェハ試料のノッチで決まる方向βに変換する。
【数12】
【0075】
(ループ解析)
以下のようなループ解析も可能である。スキャン方向に直交する方向の回折点(θhk=±π/2)を除くすべての回折点を用い、aに初期値として適当な値(例えば0)を与え、式(10)で座標変換したQ波形から全回折点を用いてaのピーク位置を決定する。
【0076】
また、式(11)で座標変換したQ波形をもとに、スキャン方向の回折点(θhk=0、θhk=π)およびスキャンに直交する方向の回折点(θhk=±π/2)を除く全回折点を用い、上記で決定されたaを用いてaのピーク位置を決定する。
【0077】
およびaのピーク位置が収束するまでaおよびaのピーク位置を決定する計算を繰り返す。値が収束したら、式(12)を用い、収束したaおよびaのピーク位置をチルト角のaおよびa方向成分をシリコンウェハ試料のノッチで決まる方向βに変換する。
【0078】
[実施例3]
実施例1で用いた試料を用いて、a方向およびa方向を基準に単回解析を行なった。図21は、単回解析の対象となる回折像である。図22は、単回解析の対象となる回折像および回折点のaに対する強度に基づくQ波形を示すグラフである。図23は、単回解析の対象となる回折像および回折点のa1に対する強度に基づくQ波形を示すグラフである。なお、a0p、a1pは、それぞれa、aのピーク位置を表している。
【0079】
解析の結果、チルト角のX成分Tおよびチルト角のY成分Tとしてそれぞれ-0.864deg、1.082degが得られた。得られた結果は、実施例1、2の結果と高い精度で一致している。
【0080】
[実施例4]
実施例1で用いた試料を用いて、a方向およびa方向を基準にループ解析を行なった。ループ解析の対象となる回折像は、単回解析の対象となる回折像と同じである。図24は、ループ解析の対象となる回折像および回折点のaに対する強度に基づくQ波形を示すグラフである。図25は、ループ解析の対象となる回折像および回折点のaに対する強度に基づくQ波形を示すグラフである。
【0081】
ループ解析は、4サイクルで数値が収束した。図24および図25は、それぞれ3.5サイクル目と4サイクル目のQ波形を示している。これらは収束時のQ波形である。解析の結果、チルト角のX成分Tおよびチルト角のY成分Tとしてそれぞれ-0.864deg、1.082degが得られた。得られた結果は、実施例1、2の結果と高い精度で一致している。
【符号の説明】
【0082】
100 測定システム
110 測定装置
111 X線源
112 ミラー
115 試料台
116 真空経路
118 ビームストッパ
119 検出器
120 解析装置
121 コンピュータ
122 測定制御部
123 測定データ記憶部
124 数式記憶部
125 座標変換部
126 ピーク位置特定部
127 傾き算出部
128 入力装置
129 出力装置
GS スリット
、Q、Q 散乱ベクトル
S0 試料
S1、S2 スリット
チルト角のX成分
チルト角のY成分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25