(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136085
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】数値制御装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
G05B 19/18 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
G05B19/18 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047058
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(72)【発明者】
【氏名】友野 啓太郎
【テーマコード(参考)】
3C269
【Fターム(参考)】
3C269AB01
3C269BB11
3C269CC02
3C269EF39
3C269GG01
3C269PP02
3C269PP09
3C269QC01
3C269QD02
3C269QE01
3C269QE12
3C269QE15
3C269QE17
3C269QE18
3C269QE22
3C269QE24
3C269QE26
(57)【要約】
【課題】ユーザがカスタマイズした操作画面の操作に起因する不具合の発生を抑制することができる数値制御装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体を提供する。
【解決手段】サードパーティによって開発されたユーザアプリは、ユーザアプリのプロパティ情報と所定の鍵情報とに基づいて生成されたパスワードで暗号化される。ユーザは暗号化された暗号アプリを取得し、数値制御装置への登録を行う。その場合に、暗号アプリのプロパティ情報と所定の鍵情報から、復号に用いるパスワードが生成される(S39)。暗号アプリのパスワードと、生成されたパスワードが一致すれば(S41:YES)、数値制御装置のCPUは暗号アプリを復号し(S42)、復号したユーザアプリを不揮発性メモリに記憶することで(S44)、ユーザアプリを登録する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
NCプログラムに基づいてワークに加工する工作機械の動作を制御する数値制御装置において、
制御装置と、
記憶装置とを備え、
前記制御装置は、
前記工作機械を操作するための操作画面として表示可能な所定のファイル形式によって構成された情報である画面構成情報に基づいて、表示装置への前記操作画面の表示を制御する表示制御部と、
情報の特性を示す特性情報であって前記画面構成情報の前記特性情報と、所定の鍵情報とに基づいて生成される暗号化情報を用いて前記画面構成情報をあらかじめ暗号化した暗号化構成情報を取得する取得部と、
前記暗号化構成情報の前記特性情報と前記鍵情報とに基づいて、前記暗号化構成情報を復号する復号情報を生成する復号生成部と、
前記復号生成部によって生成された前記復号情報が、前記暗号化構成情報が有する前記暗号化情報と一致するか否かを判断する判断部と、
前記判断部によって前記復号情報と前記暗号化情報とが一致すると判断された場合に、前記暗号化構成情報を復号した前記画面構成情報を前記記憶装置に記憶する構成情報記憶部と
を備えたこと
を特徴とする数値制御装置。
【請求項2】
前記表示制御部は、前記判断部によって前記復号情報と前記暗号化情報とが一致しないと判断された場合に、前記表示装置にエラーを表示すること
を特徴とする請求項1に記載の数値制御装置。
【請求項3】
前記暗号化構成情報は、外部装置において暗号化された情報のファイル形式である第1ファイル形式を、前記第1ファイル形式とは異なる第2ファイル形式に変更した情報であり、
前記制御装置は、
前記取得部が取得した前記暗号化構成情報のファイル形式を、前記第2ファイル形式から前記第1ファイル形式に変更する変更部を備え、
前記取得部は、前記第1ファイル形式の前記暗号化構成情報を取得対象から除外して、前記第2ファイル形式の前記暗号化構成情報を取得し、
前記構成情報記憶部は、前記変更部によって前記第1ファイル形式に変更された前記暗号化構成情報を復号して前記記憶装置に記憶すること
を特徴とする請求項2に記載の数値制御装置。
【請求項4】
前記表示制御部は、
前記工作機械を操作するための既存の前記操作画面である初期操作画面の表示を案内する初期案内画面と、
新たに追加された前記操作画面である追加操作画面の表示を案内する追加案内画面と
を表示可能であり、
前記表示制御部は、前記初期案内画面の表示から前記追加案内画面の表示に移行する操作を受け付ける移行指示部を表示すること
を特徴とする請求項3に記載の数値制御装置。
【請求項5】
前記記憶装置に複数の前記追加操作画面の前記画面構成情報が記憶されている場合、
前記表示制御部は、複数の前記追加操作画面の夫々の表示を案内する前記追加案内画面を表示すること
を特徴とする請求項4に記載の数値制御装置。
【請求項6】
前記外部装置において作成される前記画面構成情報のファイル形式は、HTML形式であること
を特徴とする請求項5に記載の数値制御装置。
【請求項7】
前記制御装置は、
前記操作画面の操作に基づき、前記NCプログラムを構成する制御指令と同じ書式で記述される操作指令を生成する指令生成部と、
前記指令生成部によって生成された前記操作指令を記憶する指令記憶部と
を備え、
前記指令記憶部に記憶された前記操作指令に基づいて前記工作機械の動作を制御すること
を特徴とする請求項6に記載の数値制御装置。
【請求項8】
前記制御装置は、前記操作指令の実行において不具合が生じたことに起因し、前記追加操作画面の表示に異常が生じた場合に、操作の入力を受け付ける入力装置によって特定の操作の入力を受け付ける特定入力部を備え、
前記表示制御部は、前記特定入力部が前記特定の操作を受け付けた場合、前記追加操作画面の表示を終了し、前記追加案内画面の表示を行うこと
を特徴とする請求項7に記載の数値制御装置。
【請求項9】
NCプログラムに基づいてワークに加工する工作機械の動作を制御する数値制御装置の制御方法において、
前記数値制御装置は制御装置と記憶装置とを備えており、
前記工作機械を操作するための操作画面として表示可能な所定のファイル形式によって構成された情報である画面構成情報に基づいて、表示装置への前記操作画面の表示を制御する表示制御ステップと、
情報の特性を示す特性情報であって前記画面構成情報の前記特性情報と、所定の鍵情報とに基づいて生成される暗号化情報を用いて前記画面構成情報をあらかじめ暗号化した暗号化構成情報を取得する取得ステップと、
前記暗号化構成情報の前記特性情報と前記鍵情報とに基づいて、前記暗号化構成情報を復号する復号情報を生成する復号生成ステップと、
前記復号生成ステップによって生成された前記復号情報が、前記暗号化構成情報が有する前記暗号化情報と一致するか否かを判断する判断ステップと、
前記判断ステップによって前記復号情報と前記暗号化情報とが一致すると判断された場合に、前記暗号化構成情報を復号した前記画面構成情報を前記記憶装置に記憶する構成情報記憶ステップと
を備えたこと
を特徴とする制御方法。
【請求項10】
NCプログラムに基づいてワークに加工する工作機械の動作を制御する数値制御装置を機能させるプログラムにおいて、
前記数値制御装置は制御装置と記憶装置とを備えており、
コンピュータに、
前記工作機械を操作するための操作画面として表示可能な所定のファイル形式によって構成された情報である画面構成情報に基づいて、表示装置への前記操作画面の表示を制御する表示制御ステップと、
情報の特性を示す特性情報であって前記画面構成情報の前記特性情報と、所定の鍵情報とに基づいて生成される暗号化情報を用いて前記画面構成情報をあらかじめ暗号化した暗号化構成情報を取得する取得ステップと、
前記暗号化構成情報の前記特性情報と前記鍵情報とに基づいて、前記暗号化構成情報を復号する復号情報を生成する復号生成ステップと、
前記復号生成ステップによって生成された前記復号情報が、前記暗号化構成情報が有する前記暗号化情報と一致するか否かを判断する判断ステップと、
前記判断ステップによって前記復号情報と前記暗号化情報とが一致すると判断された場合に、前記暗号化構成情報を復号した前記画面構成情報を前記記憶装置に記憶する構成情報記憶ステップと
を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項11】
NCプログラムに基づいてワークに加工する工作機械の動作を制御する数値制御装置を機能させるプログラムにおいて、
前記数値制御装置は制御装置と記憶装置とを備えており、
コンピュータに、
前記工作機械を操作するための操作画面として表示可能な所定のファイル形式によって構成された情報である画面構成情報に基づいて、表示装置への前記操作画面の表示を制御する表示制御ステップと、
情報の特性を示す特性情報であって前記画面構成情報の前記特性情報と、所定の鍵情報とに基づいて生成される暗号化情報を用いて前記画面構成情報をあらかじめ暗号化した暗号化構成情報を取得する取得ステップと、
前記暗号化構成情報の前記特性情報と前記鍵情報とに基づいて、前記暗号化構成情報を復号する復号情報を生成する復号生成ステップと、
前記復号生成ステップによって生成された前記復号情報が、前記暗号化構成情報が有する前記暗号化情報と一致するか否かを判断する判断ステップと、
前記判断ステップによって前記復号情報と前記暗号化情報とが一致すると判断された場合に、前記暗号化構成情報を復号した前記画面構成情報を前記記憶装置に記憶する構成情報記憶ステップと
を実行させるプログラム
を記憶することを特徴とする記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、数値制御装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1が開示する数値制御装置は、工作機械を操作するためのユーザインタフェースの定義情報を不揮発性メモリから読み込み、定義情報に基づくユーザインタフェース画面を表示する。数値制御装置は、定義情報を記憶する定義ファイルをメモリカードに書き出すことができる。ユーザは、パーソナルコンピュータ等の外部機器で定義情報を編集した後、定義ファイルをメモリカードに保存し、数値制御装置の不揮発性メモリに格納する。以後、数値制御装置は、新たに格納された定義情報に基づいて、ユーザがカスタマイズしたユーザインタフェース画面を表示することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ユーザが定義情報を編集又は作成した定義ファイルを自由に数値制御装置に格納できてしまうと、カスタマイズされたユーザインタフェース画面の操作に起因する不具合が生じた場合に、数値制御装置が不具合を解消することが難しいという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、ユーザがカスタマイズした操作画面の操作に起因する不具合の発生を抑制することができる数値制御装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一態様によれば、NCプログラムに基づいてワークに加工する工作機械の動作を制御する数値制御装置において、制御装置と、記憶装置とを備え、前記制御装置は、前記工作機械を操作するための操作画面として表示可能な所定のファイル形式によって構成された情報である画面構成情報に基づいて、表示装置への前記操作画面の表示を制御する表示制御部と、情報の特性を示す特性情報であって前記画面構成情報の前記特性情報と、所定の鍵情報とに基づいて生成される暗号化情報を用いて前記画面構成情報をあらかじめ暗号化した暗号化構成情報を取得する取得部と、前記暗号化構成情報の前記特性情報と前記鍵情報とに基づいて、前記暗号化構成情報を復号する復号情報を生成する復号生成部と、前記復号生成部によって生成された前記復号情報が、前記暗号化構成情報が有する前記暗号化情報と一致するか否かを判断する判断部と、前記判断部によって前記復号情報と前記暗号化情報とが一致すると判断された場合に、前記暗号化構成情報を復号した前記画面構成情報を前記記憶装置に記憶する構成情報記憶部とを備えたことを特徴とする数値制御装置が提供される。
【0007】
構成情報記憶部は、所定の鍵情報を用いてあらかじめ暗号化された暗号化構成情報から、同じ鍵情報を用いて復号した復号構成情報を、画面構成情報として記憶装置に記憶することができる。即ち構成情報記憶部は、所定の鍵情報で復号できない情報は、記憶装置に記憶しない。所定の鍵情報による暗号化を数値制御装置の提供者が行うことによって、数値制御装置は、提供者によって暗号化されていない情報に基づく操作画面を表示することがない。故に数値制御装置は、ユーザがカスタマイズした操作画面の操作に起因する不具合の発生を抑制することができる。
【0008】
第一態様において、前記表示制御部は、前記判断部によって前記復号情報と前記暗号化情報とが一致しないと判断された場合に、前記表示装置にエラーを表示してもよい。表示制御部は、提供者によって暗号化されていない情報を記憶装置に記憶する操作が行われた場合に、表示装置にエラーを表示することができる。故に数値制御装置は、ユーザがカスタマイズした操作画面の操作に起因する不具合の発生を抑制することができる。
【0009】
第一態様において、前記暗号化構成情報は、外部装置において暗号化された情報のファイル形式である第1ファイル形式を、前記第1ファイル形式とは異なる第2ファイル形式に変更した情報であり、前記制御装置は、前記取得部が取得した前記暗号化構成情報のファイル形式を、前記第2ファイル形式から前記第1ファイル形式に変更する変更部を備え、前記取得部は、前記第1ファイル形式の前記暗号化構成情報を取得対象から除外して、前記第2ファイル形式の前記暗号化構成情報を取得し、前記構成情報記憶部は、前記変更部によって前記第1ファイル形式に変更された前記暗号化構成情報を復号して前記記憶装置に記憶してもよい。取得部は、第2ファイル形式に変更された暗号化構成情報のみを取得する。即ち、ファイル形式が適切ではない暗号化構成情報は取得されず、復号もなされない。よって数値制御装置は、ユーザがカスタマイズした操作画面の操作に起因する不具合の発生を抑制することができる。
【0010】
第一態様において、前記表示制御部は、前記工作機械を操作するための既存の前記操作画面である初期操作画面の表示を案内する初期案内画面と、新たに追加された前記操作画面である追加操作画面の表示を案内する追加案内画面とを表示可能であり、前記表示制御部は、前記初期案内画面の表示から前記追加案内画面の表示に移行する操作を受け付ける移行指示部を表示してもよい。表示制御部は、既存の初期操作画面の表示の案内と、新たに追加した追加操作画面の表示の案内とを、一つの案内画面で行わない。故にユーザは、所望の操作画面を容易に探して表示させることができる。
【0011】
第一態様において、前記記憶装置に複数の前記追加操作画面の前記画面構成情報が記憶されている場合、前記表示制御部は、複数の前記追加操作画面の夫々の表示を案内する前記追加案内画面を表示してもよい。外部装置で作成された追加操作画面が複数ある場合、夫々に対して追加案内画面が表示される。故にユーザは、外部装置で作成された複数の追加操作画面のうち、所望の追加操作画面を容易に表示装置に表示させることができる。
【0012】
第一態様において、前記外部装置において作成される前記画面構成情報のファイル形式は、HTML形式であってもよい。HTML形式の操作画面は、特別なツールを必要とせず、また装置間の互換性も高いので、外部装置の機種を問わず、容易に作成することができる。
【0013】
第一態様において、前記制御装置は、前記操作画面の操作に基づき、前記NCプログラムを構成する制御指令と同じ書式で記述される操作指令を生成する指令生成部と、前記指令生成部によって生成された前記操作指令を記憶する指令記憶部とを備え、前記指令記憶部に記憶された前記操作指令に基づいて前記工作機械の動作を制御してもよい。外部装置で作成される操作画面によって行われる工作機械の動作は、操作指令に基づくため、簡易な動作である。故に、仮に動作内容に不具合が生じても、容易に不具合の生じた箇所を特定しやすい。
【0014】
第一態様において、前記制御装置は、前記操作指令の実行において不具合が生じたことに起因し、前記追加操作画面の表示に異常が生じた場合に、操作の入力を受け付ける入力装置によって特定の操作の入力を受け付ける特定入力部を備え、前記表示制御部は、前記特定入力部が前記特定の操作を受け付けた場合、前記追加操作画面の表示を終了し、前記追加案内画面の表示を行ってもよい。追加操作画面の表示に異常が生じた場合に、ユーザは、数値制御装置の再起動を行わずとも、追加操作画面の表示のみを終了させ、追加案内画面を表示させることができる。
【0015】
本発明の第二態様によれば、NCプログラムに基づいてワークに加工する工作機械の動作を制御する数値制御装置の制御方法において、前記数値制御装置は制御装置と記憶装置とを備えており、前記工作機械を操作するための操作画面として表示可能な所定のファイル形式によって構成された情報である画面構成情報に基づいて、表示装置への前記操作画面の表示を制御する表示制御ステップと、情報の特性を示す特性情報であって前記画面構成情報の前記特性情報と、所定の鍵情報とに基づいて生成される暗号化情報を用いて前記画面構成情報をあらかじめ暗号化した暗号化構成情報を取得する取得ステップと、前記暗号化構成情報の前記特性情報と前記鍵情報とに基づいて、前記暗号化構成情報を復号する復号情報を生成する復号生成ステップと、前記復号生成ステップによって生成された前記復号情報が、前記暗号化構成情報が有する前記暗号化情報と一致するか否かを判断する判断ステップと、前記判断ステップによって前記復号情報と前記暗号化情報とが一致すると判断された場合に、前記暗号化構成情報を復号した前記画面構成情報を前記記憶装置に記憶する構成情報記憶ステップとを備えたことを特徴とする制御方法が提供される。故に第二態様は、第一態様と同様の効果を奏する。
【0016】
本発明の第三態様によれば、NCプログラムに基づいてワークに加工する工作機械の動作を制御する数値制御装置を機能させるプログラムにおいて、前記数値制御装置は制御装置と記憶装置とを備えており、コンピュータに、前記工作機械を操作するための操作画面として表示可能な所定のファイル形式によって構成された情報である画面構成情報に基づいて、表示装置への前記操作画面の表示を制御する表示制御ステップと、情報の特性を示す特性情報であって前記画面構成情報の前記特性情報と、所定の鍵情報とに基づいて生成される暗号化情報を用いて前記画面構成情報をあらかじめ暗号化した暗号化構成情報を取得する取得ステップと、前記暗号化構成情報の前記特性情報と前記鍵情報とに基づいて、前記暗号化構成情報を復号する復号情報を生成する復号生成ステップと、前記復号生成ステップによって生成された前記復号情報が、前記暗号化構成情報が有する前記暗号化情報と一致するか否かを判断する判断ステップと、前記判断ステップによって前記復号情報と前記暗号化情報とが一致すると判断された場合に、前記暗号化構成情報を復号した前記画面構成情報を前記記憶装置に記憶する構成情報記憶ステップとを実行させることを特徴とするプログラムが提供される。故に第三態様は、第一態様と同様の効果を奏する。
【0017】
本発明の第四態様によれば、NCプログラムに基づいてワークに加工する工作機械の動作を制御する数値制御装置を機能させるプログラムにおいて、前記数値制御装置は制御装置と記憶装置とを備えており、コンピュータに、前記工作機械を操作するための操作画面として表示可能な所定のファイル形式によって構成された情報である画面構成情報に基づいて、表示装置への前記操作画面の表示を制御する表示制御ステップと、情報の特性を示す特性情報であって前記画面構成情報の前記特性情報と、所定の鍵情報とに基づいて生成される暗号化情報を用いて前記画面構成情報をあらかじめ暗号化した暗号化構成情報を取得する取得ステップと、前記暗号化構成情報の前記特性情報と前記鍵情報とに基づいて、前記暗号化構成情報を復号する復号情報を生成する復号生成ステップと、前記復号生成ステップによって生成された前記復号情報が、前記暗号化構成情報が有する前記暗号化情報と一致するか否かを判断する判断ステップと、前記判断ステップによって前記復号情報と前記暗号化情報とが一致すると判断された場合に、前記暗号化構成情報を復号した前記画面構成情報を前記記憶装置に記憶する構成情報記憶ステップとを実行させるプログラムを記憶することを特徴とする記憶媒体が提供される。故に第四態様は、第一態様と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】工作機械1の電気的構成を示すブロック図である。
【
図3】ユーザアプリが提供されるまでの開発過程を示す図である。
【
図4】MDI運転時のNC制御処理のフローチャートである。
【
図5】ユーザアプリ登録処理のフローチャートである。
【
図7】ユーザアプリ実行処理のフローチャートである。
【
図9】暗号アプリ登録画面を表示する操作盤12の正面図である。
【
図10】サポートアプリ選択画面を表示する操作盤12の正面図である。
【
図11】ユーザアプリ選択画面を表示する操作盤12の正面図である。
【
図12】アプリK3の操作画面を表示する操作盤12の正面図である。
【
図13】MDI運転の編集画面を表示する操作盤12の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態を説明する。以下、図中に示す矢印の向きで工作機械1の左右、前後、上下を説明する。
【0020】
図1を参照し、工作機械1の構成を説明する。工作機械1は機械部10、制御盤11、操作盤12を備える。機械部10は略直方体状であり、内部に空間(図示略)を有する。作業者は加工対象のワーク(被削材)を機械部10内の空間に配置する。機械部10は空間内に主軸(図示略)を備える。機械部10は内部で主軸に装着した工具でワークに機械加工を施す。機械加工は例えばフライス削り、穴あけ、タップ、切削等である。
【0021】
制御盤11は機械部10の背面に設けられ、機械部10と操作盤12の各動作を制御する。制御盤11は操作盤12に種々の画像の画像信号を出力する。画像信号はHDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface)、DVI(Digital Visual Interface)等の規格に準拠したパルス状の電気信号である。画像は、作業者に操作を促す画像、例えば機械加工を行う為に必要な設定値を示す画像の他、機械加工中のNCプログラムを示す画像等を含む。
【0022】
操作盤12は機械部10の前面に設けられる。操作盤12は表示部20、操作部21を備える。表示部20はバックライトを内蔵する液晶ディスプレイ(LCD)であり、制御盤11が出力した画像信号に基づく画像を表示する。操作部21はボタン、スイッチ、タッチパネル等を備える。タッチパネルは操作盤12の表示部20に設けられる。作業者は、表示部20が表示する画像を見ながら操作部21を操作する。操作盤12は、作業者が操作部21で行った操作の内容を示す操作信号を制御盤11に出力する。制御盤11は操作信号が示す操作の内容に基づき、機械加工の内容を示す制御コマンドを生成し機械部10に出力する。
【0023】
図2を参照し、工作機械1の電気的構成を説明する。上記の通り、工作機械1は機械部10、制御盤11、操作盤12を備える。機械部10は動作部15を備える。動作部15はモータとエンコーダ(図示略)を備える。モータは例えば主軸と移動機構の駆動源である。主軸は工具を装着し高速回転する。移動機構は主軸と工作台(図示略)を相対的に3軸(X軸、Y軸、Z軸)方向に移動する。工作台はワークを支持する。エンコーダは対応する各モータの回転角を検出する。
【0024】
制御盤11は数値制御装置30を備え、機械部10及び操作盤12の夫々の動作を制御する。数値制御装置30はCPU31、ROM32、RAM33、不揮発性メモリ34、入出力インターフェイス35を備える。CPU31はバス36を介して、ROM32、RAM33、不揮発性メモリ34、入出力インターフェイス35と接続する。CPU31は工作機械1の動作を制御する。ROM32はNC制御プログラム及びサポートアプリを記憶する。NC制御プログラムは後述のMDI(Manual Data Input)運転時のNC制御処理(
図4参照)を実行するプログラムである。MDI運転は、NC制御を手動で実行する場合の動作モードである。また、ROM32は、メモリ運転時のNC制御処理(図示略)を実行するNC制御プログラムも記憶する。メモリ運転は、不揮発性メモリ34に登録されているNCプログラムを呼び出し自動運転する動作モードである。ROM32は、各種画面の構成情報、及び後述する鍵情報を記憶する。RAM33は各種情報を一時的に記憶する。不揮発性メモリ34はNCプログラムを含む各種情報に加え、後述のユーザアプリを記憶する。
【0025】
入出力インターフェイス35は機械部10の動作部15、操作盤12のFPGA27、メモリカード読書装置37と電気的に接続する。CPU31は、入出力インターフェイス35を介して動作部15に制御コマンドを出力する。制御コマンドは機械加工等の動作の内容を示す。動作部15は制御コマンドに基づき動作する。故に機械部10は制御コマンドが示す内容に従ってワークに機械加工を施す。動作部15は、入出力インターフェイス35を介してCPU31にエンコーダの検出信号を出力する。CPU31は検出信号に基づき主軸とワークの位置を推定し、動作部15のフィードバック制御を行う。
【0026】
操作盤12は表示部20、操作部21、FPGA27を備える。FPGA27は操作盤12の動作を制御する。FPGA27は表示部20及び操作部21と接続する。FPGA27は、制御盤11のCPU31が出力した画像信号を入出力インターフェイス35を介して受信し、表示部20に出力する。FPGA27は操作部21で受け付けた操作信号を、入出力インターフェイス35を介してCPU31に出力する。
【0027】
メモリカード読書装置37には、読み書き可能な記憶媒体であるメモリカード38が接続される。メモリカード読書装置37は、メモリカード38からデータの読み込みと、メモリカード38へのデータの書き込みを行う。メモリカード38には、後述するユーザアプリが暗号化された暗号アプリが記憶される。
【0028】
数値制御装置30は、工作機械1を提供するメーカによって作成されたアプリケーション(サポートアプリ)を実行することができる。なお、以下説明において、アプリケーションは、「アプリ」と略称する場合がある。サポートアプリはNC制御プログラムから呼び出され、NC制御プログラムの実行を補助する処理を行うための操作画面を表示するアプリである。サポートアプリはROM32に記憶される。数値制御装置30は、更に、サードパーティ又はユーザによって作成されたアプリケーション(ユーザアプリ)を実行することができる。ユーザアプリはサポートアプリと同様にNC制御プログラムから呼び出され、NC制御プログラムの実行を補助する処理を行うための操作画面を表示するアプリである。ユーザアプリは、外部装置(PC等)で作成され、メモリカード38等を介して不揮発性メモリ34に記憶される。ユーザアプリは、サポートアプリだけでは実現できない処理や、ユーザの要望に合わせてカスタマイズした処理等を提供する。
【0029】
数値制御装置30は、NC制御プログラムの実行中に、ユーザの操作によってユーザアプリが呼び出された場合、不揮発性メモリ34に記憶する複数のユーザアプリから、該当するユーザアプリを実行する。ユーザアプリは、例えばHTML形式のデータである。故にサードパーティは、外部装置としてPCのみならず、スマートホン、タブレット等、HTMLを編集可能な各種の外部装置を用いてユーザアプリを作成することができる。また、サードパーティは、外部装置が搭載するOSの違いによる開発環境への影響も少なくして、HTML形式のユーザアプリを作成することができる。
【0030】
数値制御装置30は、出所不明なユーザアプリが実行されることによって工作機械1の動作に不具合が発生することを抑制するため、ユーザアプリの登録(不揮発性メモリ34への記憶)に制限を設けている。以下、数値制御装置30において実行可能なユーザアプリがユーザに提供されるまでの開発過程について説明する。
【0031】
図3に示すように、サードパーティ73は、サードパーティ73のPC74を用いてユーザアプリの開発を行う(S201)。開発の過程において、サードパーティ73は、メーカ72から様々な支援を受けることができる(S202)。メーカによる支援とは、例えば、ユーザアプリの作成方法について説明、ユーザアプリが満たすべき仕様や動作における禁則事項等の説明、ユーザアプリのサンプルの提供、開発過程で生ずる様々な相談等への対応などである。このような過程を経てユーザアプリが完成したら(S203)、サードパーティはメーカにパスワードを要求する(S204)。その際に、サードパーティは、開発が完了したユーザアプリをメーカに送付する。
【0032】
メーカ72は、メーカ72のPC71にインストールされた試験用のアプリを用い、ユーザアプリの動作試験を行う(S211)。試験用のアプリは、例えば、数値制御装置30と工作機械1の動作をシミュレートするアプリである。試験用のアプリ上でのユーザアプリの動作に問題が無ければ試験合格となり(S212)、メーカ72は、PC71にインストールされたパスワード生成用のアプリを用い、パスワードを生成する(S213)。パスワード生成用のアプリは、あらかじめ用意された鍵情報と、ユーザアプリのプロパティ情報とを用いてパスワードを生成するアプリである。プロパティ情報は、ユーザアプリの特性を示す情報であり、例えば、ファイル名、ファイルの種類、アクセス権の設定、作成日時、更新日時、データサイズ、読取り属性などの情報である。ユーザアプリはプロパティ情報を保持しており、上記以外の様々な情報をプロパティ情報に追加することもできる。なお、パスワード生成用のアプリは、ユーザアプリのプロパティ情報に含まれる少なくとも一部の情報を用いてパスワードを生成する。メーカ72は、生成したパスワードをサードパーティ73に通知する(S214)。
【0033】
サードパーティ73は、PC74にインストールされた暗号化用のアプリを用い、通知されたパスワードを使用してユーザアプリの暗号化を行う(S221)。暗号化用のアプリは、メーカ72から提供されてもよいし、ネットワーク等で公開された汎用の暗号化アプリでメーカ72から指定されたものを用いてもよい。サードパーティ73は、ユーザアプリを暗号化した暗号アプリのファイル形式(例えば公知のファイル形式)を、メーカ72から指定されたファイル形式(例えばメーカ72によって独自に開発されたファイル形式)に変更する(S222)。具体的に、サードパーティ73は、暗号アプリの拡張子を、暗号化用のアプリで付与された拡張子に変更する。サードパーティ73は、拡張子を変更した暗号アプリを、例えばネットワーク76において公開してもよいし、ユーザ75に直接提供してもよい(S223)。
【0034】
ユーザ75は、ネットワーク76上に公開された暗号アプリをダウンロードして取得する。或いは、ユーザ75は、サードパーティ73から直接提供を受けることで、暗号アプリを取得する(S231)。ユーザ75は、取得した暗号アプリをメモリカード38に記憶する。ユーザ75は、工作機械1が搭載するメモリカード読書装置37でメモリカード38に記憶する暗号アプリを読込み、ユーザアプリとして数値制御装置30に登録する(S232)。その際に数値制御装置30は、あらかじめROM32に記憶する鍵情報と、暗号アプリのプロパティ情報に含まれる少なくとも一部の情報を用いてパスワードを生成する。ROM32に記憶する鍵情報は、PC71にインストールされたパスワード生成用のアプリの鍵情報と同じ鍵情報である。また、暗号アプリのプロパティ情報として用いられる一部の情報は、暗号化される前のユーザアプリのプロパティ情報のうち、暗号化後も維持される情報である。よって数値制御装置30は、PC71のパスワード生成用のアプリと同じアルゴリズムを用い、暗号アプリからユーザアプリへの復号に用いるパスワードを生成する。このようにして暗号アプリから復号されたユーザアプリは、不揮発性メモリ34に記憶され、NC制御プログラムにおいて呼び出され、実行される。
【0035】
次に、
図4~
図13を参照し、NC制御処理において行われるユーザアプリの運用に関する処理について説明する。工作機械1の電源がオンになると、数値制御装置30のCPU31は、ROM32からNC制御プログラムを読み出し、NC制御処理を実行する。なお、説明の便宜上、以下に説明するNC制御処理は、MDI運転時に実行される処理である。
図4に示すように、CPU31は、ROM32からホーム画面(図示略)の構成情報を読み出し、操作盤12の表示部20に表示する(S11)。ホーム画面は、工作機械1に対する全ての操作の起点となる画面である。
【0036】
CPU31は操作部21のボタン、スイッチ、タッチパネルによって、ユーザによるキー操作を受け付ける(S12)。なお、タッチパネルは表示部20に表示する仮想キーボードに対する操作も受け付けることができる。CPU31は、キー操作が行われるまで待機する(S13:NO)。キー操作があった場合(S13:YES)、CPU31は、操作されたキーの内容が、ユーザアプリを登録する操作、ユーザアプリをバックアップする操作、サポートアプリを実行する操作、NC制御処理の実行を終了する操作の何れでもない場合(S16:NO,S18:NO,S21:NO,S26:NO)、操作されたキーに対応する動作を実行する(S27)。動作実行後、CPU31はS12に戻ってユーザによるキー操作を受け付ける。
【0037】
操作されたキーの内容がユーザアプリを登録する操作である場合(S16:YES)、CPU31は、ユーザアプリ登録処理を実行する(S17)。なお、ユーザアプリを登録する操作は、ホーム画面において保守メニューを選択し、保守メニューにおいてユーザアプリ管理メニューを選択すると表示される一覧から、ユーザアプリ追加ボタンを選択する一連の操作である。
図5に示すように、CPU31は、メモリカード読書装置37に挿入されたメモリカード38に記憶されているデータを読込む(S31)。なお、メモリカード38には、あらかじめ、ユーザ75がネットワーク76から取得した複数の暗号アプリが記憶されているものとする。CPU31は表示部20に、メモリカード38に記憶されている暗号アプリの選択画面を表示する(S32)。
図9に示すように、メモリカード38には、例えば4つの暗号アプリ(アプリK1,K2,K3,K4)が記憶されており、暗号アプリ選択画面では、4つの暗号アプリが選択可能なボタン形式で表示される。なお、拡張子が指定のファイル形式でないデータは、暗号アプリ選択画面には表示されない。故にCPU31は、拡張子が指定のファイル形式でないデータをユーザアプリとして誤登録することを防止できる。
【0038】
図5に示すように、CPU31は、ユーザがキー操作を行い、キャンセルボタン202(
図9参照)を操作した場合(S33:NO)、ユーザアプリ登録処理の実行を終了してNC制御処理に戻り、ホーム画面を表示する(S11)。S33でユーザがキー操作を行い、登録対象とする暗号アプリ(例えばアプリK4)を選択した状態で登録ボタン201(
図9参照)を操作した場合、又は登録対象とする暗号アプリのアイコンをタッチした場合(S33:YES)、CPU31は、表示部20に免責事項確認項目、同意ボタン、非同意ボタン(図示略)を表示する(S34)。免責事項確認項目は、ユーザアプリはメーカ72が作成したアプリではないため、メーカ72側の免責事項をユーザに確認してもらうための表示である。ユーザが非同意ボタンを操作した場合(S36:NO)、CPU31は、ユーザアプリ登録処理の実行を終了してNC制御処理に戻り、ホーム画面を表示する(S11)。ユーザが同意ボタンを操作した場合(S36:YES)、CPU31は、選択された暗号アプリをメモリカード38からRAM33に読込む(S37)。
【0039】
CPU31は、暗号アプリのファイル形式を、元のファイル形式に変更する(S38)。元のファイル形式は、ユーザアプリを暗号化する際に暗号アプリによって付与されるファイル形式である。CPU31は、暗号アプリのプロパティ情報を読込み、パスワードの生成に必要とする一部の情報を取得する。そしてCPU31は、取得したプロパティ情報と、ROM32に記憶する鍵情報とを用い、パスワードを生成する(S39)。CPU31は、生成したパスワードが暗号アプリのパスワードと一致するか否かを判断し、不一致の場合(S41:NO)、表示部20に、暗号アプリを復号できない旨を表示するエラー表示を行う(S46)。CPU31は、ユーザアプリ登録処理の実行を終了してNC制御処理に戻り、ホーム画面を表示する(S11)。
【0040】
パスワードが一致する場合(S41:YES)、CPU31は、パスワードを用いて暗号アプリを復号する(S42)。CPU31は、復号したユーザアプリを不揮発性メモリ34に記憶させる時点でその他のエラーが生じた場合(S43:YES)、表示部20にエラー表示を行う(S46)。その他のエラー表示は、例えば、ユーザアプリとして登録可能件数の上限に達した場合、ユーザアプリの容量が設定上限を超えた場合、ユーザアプリのファイル形式が、アプリとして使用可能なフォーマットでない場合などに行われる。CPU31は、ユーザアプリ登録処理の実行を終了してNC制御処理に戻り、ホーム画面を表示する(S11)。
【0041】
復号したユーザアプリにエラーがなければ(S43:NO)、CPU31は、ユーザアプリを不揮発性メモリ34に記憶する(S44)。なお、前述したように、ユーザアプリはNC制御プログラムの実行を補助する処理を行うための操作画面を表示するアプリであり、HTML形式で記述されている。操作画面の表示に必要なデータはフォルダに階層化されて納められる。よって不揮発性メモリ34のユーザアプリを記憶する領域に、フォルダに納められたHTML形式のデータが記憶されることで、ユーザアプリの登録は完了する。故に、図示しないが、不揮発性メモリ34のユーザアプリを記憶する領域から、フォルダに納められたHTML形式のデータが削除されることで、ユーザアプリの削除は完了する。なお、後述するバックアップ処理でバックアップした暗号アプリを登録し直すことで、削除されたユーザアプリは復元することができる。CPU31は、ユーザアプリ登録処理の実行を終了してNC制御処理に戻り、ホーム画面を表示する(S11)。
【0042】
図4のS18において、操作されたキーの内容がユーザアプリをバックアップする操作である場合(S18:YES)、CPU31は、バックアップ処理を実行する(S19)。なお、ユーザアプリをバックアップする操作は、ホーム画面において保守メニューを選択し、保守メニューにおいてユーザアプリ管理メニューを選択すると表示される一覧から、ユーザアプリ追加ボタンを選択する一連の操作である。
図6に示すように、CPU31は、不揮発性メモリ34のユーザアプリを記憶する領域に記憶されているデータを読込む(S51)。CPU31は表示部20に、不揮発性メモリ34に記憶されているユーザアプリの選択画面を表示する(S52)。図示しないが、ユーザアプリ選択画面は、
図9に示す暗号アプリ選択画面と同様な画面として表示される。
【0043】
CPU31は、ユーザがキー操作を行い、キャンセルボタン(図示略)を操作した場合(S53:NO)、バックアップ処理の実行を終了してNC制御処理に戻り、ホーム画面を表示する(S11)。S53でユーザがキー操作を行い、バックアップ対象とするユーザアプリ(例えばアプリK4)を選択した状態でバックアップボタン(図示略)を操作した場合、又はバックアップ対象とするユーザアプリのアイコンをタッチした場合(S53:YES)、CPU31は、表示部20に免責事項確認項目、同意ボタン、非同意ボタン(図示略)を表示する(S54)。免責事項確認項目は、バックアップ後にデータを編集した場合、プロパティ情報が変更されてパスワードが不一致となり、復元できなくなってしまう可能性があるため、編集しない旨を念押しし、仮にユーザが編集した場合のメーカ72側の免責事項をユーザに確認してもらうための表示である。ユーザが非同意ボタンを操作した場合(S56:NO)、CPU31は、ユーザアプリ登録処理の実行を終了してNC制御処理に戻り、ホーム画面を表示する(S11)。ユーザが同意ボタンを操作した場合(S56:YES)、CPU31は、選択されたユーザアプリを不揮発性メモリ34からRAM33に読込む(S57)。
【0044】
CPU31は、ユーザアプリのプロパティ情報を読込み、パスワードの生成に必要とする一部の情報を取得する。そしてCPU31は、取得したプロパティ情報と、ROM32に記憶する鍵情報とを用い、パスワードを生成する(S58)。CPU31は、パスワードを用いてユーザアプリを暗号化する(S61)。CPU31は、ユーザアプリを暗号化した暗号アプリのファイル形式を、指定のファイル形式に変更する(S62)。CPU31は、メモリカード読書装置37で暗号アプリをメモリカード38に書込む(S63)。そしてCPU31は、バックアップを行ったユーザアプリを不揮発性メモリ34から消去する(S64)。CPU31は、バックアップ処理の実行を終了してNC制御処理に戻り、ホーム画面を表示する(S11)。
【0045】
図4のS21において、操作されたキーの内容がサポートアプリを実行する操作である場合(S21:YES)、CPU31は、サポートアプリ選択画面を表示する(S22)。
図10に示すように、不揮発性メモリ34には、例えば10種類のサポートアプリ(アプリA,B,C,D,E,F,G,H,I,J)が記憶されている。この場合、サポートアプリ選択画面には、10種類のサポートアプリのアイコンと、ユーザアプリの選択画面に移行するための移行ボタン205がアイコン形式で表示される。
【0046】
図4に示すように、ユーザがキー操作を行い、移行ボタン205以外の操作を行った場合(S23:NO)、CPU31は、操作されたキーに対応する動作を実行する(S27)。即ち、ユーザがサポートアプリを選択した状態で決定ボタン203(
図10参照)を操作した場合、又は実行対象とするサポートアプリのアイコンをタッチした場合には、選択されたサポートアプリを実行する動作(図示略)を行う。ユーザがキャンセルボタン204(
図10参照)を操作した場合は、サポートアプリ選択画面の表示を終了し、ホーム画面に戻る動作(図示略)を行う。ユーザがキー操作を行い、移行ボタン205の操作を行った場合(S23:YES)、CPU31は、ユーザアプリ実行処理を実行する(S24)。
【0047】
図7に示すように、CPU31は、割込処理を実行する(S71)。
図8に示すように、割込処理は、ユーザアプリ実行処理と並行に実行される処理である。CPU31は、解除キー211と0キー212の同時入力がなければ待機する(S91:NO)。同時入力があった場合(S91:YES)、CPU31は、ユーザアプリ実行処理に強制的に割込んで、実行中のユーザアプリを強制的に終了させる処理を行う(S92)。即ち割込処理は、ユーザアプリがバグ等により表示停止した場合でも、異常が生じたユーザアプリの実行を終了させて、処理をユーザアプリの選択画面に戻す。
【0048】
図7に示すように、割込処理を実行を開始したら、CPU31は、不揮発性メモリ34のユーザアプリを記憶する領域に記憶されているデータを読込む(S72)。CPU31は表示部20に、不揮発性メモリ34に記憶されているユーザアプリの選択画面を表示する(S73)。
図11に示すように、不揮発性メモリ34には、例えば4種類のユーザアプリ(アプリK1,K2,K3,K4)が記憶されている。この場合、サポートアプリ選択画面には、4種類のサポートアプリのアイコンが表示される。サポートアプリ選択画面には、最大で12種類のサポートアプリのアイコンを表示することができる。
【0049】
図7に示すように、ユーザがキー操作を行い、キャンセルボタン207(
図11参照)を操作した場合(S76:NO)、CPU31は、割込処理の実行を終了した後(S88)、ユーザアプリ実行処理の実行を終了してNC制御処理に戻り、ホーム画面を表示する(S11)。S76でユーザがキー操作を行い、実行対象とするユーザアプリ(例えばアプリK3)を選択した状態で決定ボタン206(
図11参照)を操作した場合、又は実行対象とするユーザアプリ(アプリK3)のアイコンをタッチした場合(S76:YES)、CPU31は、実行対象のユーザアプリの操作画面を表示部20に表示する(S77)。
【0050】
図12に示すように、ユーザアプリK3は、5種類のパラメータの入力結果に基づき、ワークを加工するGコードを生成する。ユーザアプリK3の表示画面は、5種類のパラメータがどの部位の大きさを示すパラメータであるかを簡易図で示した画面であり、パラメータを直感的に入力することが可能である。
図7に示すように、ユーザアプリK3の操作画面において、5種類のパラメータが入力され(S78)、実行ボタン208(
図12参照)が操作されると(S79:YES)、パラメータ通りにワークを加工するための操作コマンド(Gコード)生成される(S81)。操作コマンドは、MDI運転編集画面において生成される制御コマンドである。CPU31は、生成された操作コマンドをRAM33に記憶する(S82)。なお、操作画面においてキャンセルボタン209(
図12参照)が操作された場合(S79:NO)、CPU31は、割込処理の実行を終了した後(S88)、ユーザアプリ実行処理の実行を終了してNC制御処理に戻り、ホーム画面を表示する(S11)。
【0051】
S82で操作コマンドがRAM33に記憶された場合、CPU31は、表示部20にMDI運転編集画面を表示する(S83)。
図13に示すように、MDI運転編集画面は、操作コマンドの編集欄214を有する。編集欄214は、操作コマンドの入力を受け付ける。ユーザは、ユーザアプリ又はサポートアプリで生成した操作コマンドを、コピー&ペーストで編集欄214に貼り付けることも可能である。
【0052】
図7に示すように、ユーザがキー操作を行い、キャンセルボタン217(
図13参照)を操作した場合(S84:NO)、CPU31は、割込処理の実行を終了した後(S88)、ユーザアプリ実行処理の実行を終了してNC制御処理に戻り、ホーム画面を表示する(S11)。S84でユーザがキー操作を行い、貼り付けボタン215(
図13参照)を操作した場合(S84:YES)、CPU31は、RAM33に記憶する操作コマンドを、MDI運転編集画面の編集欄214に貼り付ける(S86)。CPU31は、割込処理の実行を終了した後(S87)、ユーザアプリ実行処理の実行を終了してNC制御処理に戻り、ユーザのキー操作を待機する(S12,S13:NO)。ユーザがキー操作を行い、実行ボタン216(
図13参照)を操作した場合(S13:YES,S16:NO,S18:NO,S21:NO,S26:NO)、CPU31は、操作されたキーに対応する動作を実行する(S27)。即ち、CPU31は、編集欄214に貼付けられた操作コマンドを実行し、動作部15を制御する。機械部10は操作コマンドが示す内容に従ってワークに機械加工を施す。動作実行後、CPU31はS12に戻ってユーザによるキー操作を受け付ける。操作されたキーの内容がNC制御処理の実行を終了する操作であれば(S26:YES)、CPU31はNC制御プログラムの実行を終了する。
【0053】
以上説明したように、CPU31は、所定の鍵情報を用いてあらかじめ暗号化された暗号アプリから、同じ鍵情報を用いて復号したユーザアプリを不揮発性メモリ34に記憶することができる。即ちCPU31は、所定の鍵情報で復号できないユーザアプリは、不揮発性メモリ34に記憶しない。所定の鍵情報によるユーザアプリの暗号化をメーカ或いはサードパーティなどの提供者が行うことによって、数値制御装置30は、提供者外から提供され、所定の鍵情報では暗号化されていないユーザアプリを、操作画面として表示することがない。故に数値制御装置30は、ユーザがカスタマイズした操作画面の操作に起因する不具合の発生を抑制することができる。
【0054】
CPU31は、メーカ或いはサードパーティなどの提供者によって暗号化されていないユーザアプリを不揮発性メモリ34に記憶する操作が行われた場合に、表示部20にエラー表示を行うことができる。故に数値制御装置30は、ユーザがカスタマイズした操作画面の操作に起因する不具合の発生を抑制することができる。
【0055】
CPU31は、メーカ指定のファイル形式に変更された暗号アプリのみをメモリカード38から読込むことができる。即ち、ファイル形式が適切ではない暗号アプリは取得されず、復号もなされない。よって数値制御装置30は、ユーザがカスタマイズした操作画面の操作に起因する不具合の発生を抑制することができる。
【0056】
CPU31は、サポートアプリを選択するサポートアプリ選択画面と、ユーザアプリを選択するユーザアプリ選択画面とを、一つの選択画面にまとめて表示しない。故にユーザは、所望のアプリを容易に探して実行することができる。
【0057】
外部装置で作成されたユーザアプリが複数ある場合、夫々のユーザアプリを選択可能に表示するユーザアプリ選択画面が表示される。故にユーザは、外部装置で作成された複数のユーザアプリのうち、所望のユーザアプリを容易に探し出して表示することができる。
【0058】
外部装置で作成されたユーザアプリが複数ある場合、夫々に対してユーザアプリ選択画面が表示される。故にユーザは、外部装置で作成された複数のユーザアプリのうち、所望のユーザアプリの操作画面を容易に表示部20に表示させることができる。
【0059】
HTML形式の操作画面は、特別なツールを必要とせず、また装置間の互換性も高いので、外部装置の機種を問わず、容易に作成することができる。
【0060】
ユーザアプリによって行われる工作機械1の動作は、操作コマンドに基づくため、簡易な動作である。故に、仮に動作内容に不具合が生じても、容易に不具合の生じた箇所を特定しやすい。
ユーザアプリに異常が生じた場合に、ユーザは、数値制御装置30の再起動を行わずとも、ユーザアプリのみを強制的に終了させ、ユーザアプリ選択画面を表示させることができる。
【0061】
上記説明において、CPU31は、本発明の「制御装置」の一例である。ユーザアプリは、本発明の「画面構成情報」の一例である。表示部20は、本発明の「表示装置」の一例である。不揮発性メモリ34は、本発明の「記憶装置」の一例である。S11,S22,S32,S34,S46,S52,S54,S73,S77,S83の各処理を実行するCPU31は、本発明の「表示制御部」の一例である。プロパティ情報は、本発明の「特性情報」の一例である。パスワードは、本発明の「暗号化情報」及び「復号情報」の一例である。暗号アプリは、本発明の「暗号化構成情報」の一例である。S37の処理を実行するCPU31は、本発明の「取得部」の一例である。S39の処理を実行するCPU31は、本発明の「復号生成部」の一例である。S41の処理を実行するCPU31は、本発明の「判断部」の一例である。S44の処理を実行するCPU31は、本発明の「構成情報記憶部」の一例である。
【0062】
PC74は、本発明の「外部装置」の一例である。メーカ72から提供された暗号化アプリ、又はネットワーク等で公開されておりメーカ72に指定された汎用の暗号化アプリによってユーザアプリを暗号アプリに暗号化する際に付与されるファイル形式は、本発明の「第1ファイル形式」の一例である。メーカ72によって独自に開発されたファイル形式など、数値制御装置30へのユーザアプリの登録において変更が必要とされるファイル形式は、本発明の「第2ファイル形式」の一例である。S38の処理を実行するCPU31は、本発明の「変更部」の一例である。サポートアプリの操作画面は、本発明の「初期操作画面」の一例である。サポートアプリ選択画面は、本発明の「初期案内画面」の一例である。ユーザアプリの操作画面は、本発明の「追加操作画面」の一例である。ユーザアプリ選択画面は、本発明の「追加案内画面」の一例である。移行ボタン205は、本発明の「移行指示部」の一例である。制御コマンドは、本発明の「制御指令」の一例である。操作コマンドは、本発明の「操作指令」の一例である。S81の処理を実行するCPU31は、本発明の「指令生成部」の一例である。S82の処理を実行するCPU31は、本発明の「指令記憶部」の一例である。操作部21は、本発明の「入力装置」の一例である。解除キー211と0キー212の同時入力は、本発明の「特定の操作」の一例である。S91の処理を実行するCPU31は、本発明の「特定入力部」の一例である。
【0063】
本発明は上記実施形態に限定されず、種々の変更を加えることができる。数値制御装置30のCPU31の代わりに、マイクロコンピュータ、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などが、プロセッサとして用いられてもよい。また、操作盤12のFPGA27の代わりに、CPU、マイクロコンピュータ、ASICなどが、プロセッサとして用いられてもよい。表示部20及び操作部21は操作盤12に設けたが、数値制御装置30に設け、制御盤11において操作画面の表示及び操作の入力を受け付けてもよい。また、FPGA27を設けずに、表示部20及び操作部21を入出力インターフェイス35に接続し、CPU31が操作画面の表示処理及び操作入力の受け付け処理を行ってもよい。ユーザアプリはHTML形式のアプリケーションに限らず、XML、SGML等の他のマークアップ言語で記述されたアプリケーションであってもよいし、PHP、JavaScript(登録商標)、C++等、各種プログラミング言語で記述されたソースコードからコンパイルされたアプリケーションであってもよい。
【0064】
S211の動作試験は行われなくてもよい。この場合、サードパーティ73はメーカ72にユーザアプリを送付せず、代わりに、ユーザアプリのプロパティ情報をメーカ72に通知してもよい。また、メーカ72は、S211の動作試験に合格したユーザアプリをS213で生成したパスワードを用いて暗号化し、サードパーティ73の代わりに暗号アプリをネットワーク76等に公開してもよい。この場合、メーカ72は、様々なサードパーティ73の暗号アプリを一元管理し、動作確認がとれたユーザアプリとして、ネットワーク76等でユーザ75に提供してもよい。
【0065】
数値制御装置30をネットワーク76に接続し、ネットワーク76上で公開された暗号アプリを数値制御装置30で直接取得し、ユーザアプリとして登録してもよい。数値制御装置30は、エラー表示を行う場合に音声出力を行ってもよい。ユーザアプリで作成した操作コマンドをMDI運転において実行した。これに限らず、メモリ運転におけるNCプログラムの編集をユーザアプリで行ってもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 工作機械
20 表示部
21 操作部
30 数値制御装置
31 CPU
34 不揮発性メモリ
74 PC
205 移行ボタン
211 解除キー