IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中国電力株式会社の特許一覧

特開2024-136086接近動体検出方法、接近動体検出システム、及び、情報処理装置
<>
  • 特開-接近動体検出方法、接近動体検出システム、及び、情報処理装置 図1
  • 特開-接近動体検出方法、接近動体検出システム、及び、情報処理装置 図2
  • 特開-接近動体検出方法、接近動体検出システム、及び、情報処理装置 図3
  • 特開-接近動体検出方法、接近動体検出システム、及び、情報処理装置 図4
  • 特開-接近動体検出方法、接近動体検出システム、及び、情報処理装置 図5
  • 特開-接近動体検出方法、接近動体検出システム、及び、情報処理装置 図6
  • 特開-接近動体検出方法、接近動体検出システム、及び、情報処理装置 図7
  • 特開-接近動体検出方法、接近動体検出システム、及び、情報処理装置 図8
  • 特開-接近動体検出方法、接近動体検出システム、及び、情報処理装置 図9
  • 特開-接近動体検出方法、接近動体検出システム、及び、情報処理装置 図10
  • 特開-接近動体検出方法、接近動体検出システム、及び、情報処理装置 図11
  • 特開-接近動体検出方法、接近動体検出システム、及び、情報処理装置 図12
  • 特開-接近動体検出方法、接近動体検出システム、及び、情報処理装置 図13
  • 特開-接近動体検出方法、接近動体検出システム、及び、情報処理装置 図14
  • 特開-接近動体検出方法、接近動体検出システム、及び、情報処理装置 図15
  • 特開-接近動体検出方法、接近動体検出システム、及び、情報処理装置 図16
  • 特開-接近動体検出方法、接近動体検出システム、及び、情報処理装置 図17
  • 特開-接近動体検出方法、接近動体検出システム、及び、情報処理装置 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136086
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】接近動体検出方法、接近動体検出システム、及び、情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   G01V 1/00 20240101AFI20240927BHJP
   G01H 17/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G01V1/00 A
G01H17/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047060
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】引野 健治
(72)【発明者】
【氏名】吉崎 司
(72)【発明者】
【氏名】米澤 幹夫
【テーマコード(参考)】
2G064
2G105
【Fターム(参考)】
2G064AB01
2G064AB02
2G064AB13
2G064BA02
2G064BD02
2G064CC02
2G064CC41
2G064CC43
2G064DD02
2G105AA01
2G105BB02
2G105EE01
2G105HH04
(57)【要約】
【課題】予め設定登録された動体6のデータの有無に依らず接近する動体6を検出する、接近動体検出方法を提供すること。
【解決手段】接近動体検出方法は、接近してくる動体6のない状態における周囲音である定常周囲音を集音する第1の集音ステップと、定常周囲音を高速フーリエ変換するステップと、現在の周囲音である現在周囲音を集音する第2の集音ステップと、現在周囲音を高速フーリエ変換するステップと、定常周囲音の高速フーリエ変換データと現在周囲音の高速フーリエ変換データとの差異を計算する差異計算ステップと、差異の大きさと差異が生じている周波数である異常周波数を特定する異常周波数特定ステップと、異常周波数を含み高速フーリエ変換していない音信号である異常音をバンドパスフィルタを用いて抽出する異常音抽出ステップと、異常音の音量又は/及び周波数に基づいて、接近してくる動体6を検出する動体検出ステップと、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接近してくる動体を検出する接近動体検出方法であって、
接近してくる前記動体のない状態における周囲音である定常周囲音を集音する第1の集音ステップと、
集音した前記定常周囲音を録音する第1の録音ステップと、
前記定常周囲音を高速フーリエ変換する第1の高速フーリエ変換ステップと、
高速フーリエ変換された前記定常周囲音のデータである定常高速フーリエ変換データを保存する第1のデータ保存ステップと、
現在の前記周囲音である現在周囲音を集音する第2の集音ステップと、
集音した前記現在周囲音を録音する第2の録音ステップと、
前記現在周囲音を高速フーリエ変換する第2の高速フーリエ変換ステップと、
高速フーリエ変換された前記現在周囲音のデータである現在高速フーリエ変換データを保存する第2のデータ保存ステップと、
前記定常高速フーリエ変換データと前記現在高速フーリエ変換データとの差異を計算する差異計算ステップと、
前記差異の大きさと前記差異が生じている周波数である異常周波数を特定する異常周波数特定ステップと、
前記異常周波数を含み高速フーリエ変換していない音信号である異常音をバンドパスフィルタを用いて抽出する異常音抽出ステップと、
前記異常音又は/及び前記異常周波数に基づいて、接近してくる前記動体を検出する動体検出ステップと、
を有する接近動体検出方法。
【請求項2】
前記第1の集音ステップにおいて、所定期間以上集音し、
前記定常高速フーリエ変換データとして、前記所定時間に得られた複数の高速フーリエ変換データの平均値或いは中央値を採用する、
請求項1に記載の接近動体検出方法。
【請求項3】
前記差異計算ステップにおいて、前記定常高速フーリエ変換データについて所定の大きさ以上の信号をもたらす周波数に基づいてクラスタリングを行い、前記現在高速フーリエ変換データについて所定の大きさ以上の信号をもたらす周波数に基づいてクラスタリングを行い、クラスタリング結果の差異を計算する、
請求項1又は請求項2に記載の接近動体検出方法。
【請求項4】
前記第1の集音ステップにおいて、洋上風力発電設備を建設しようとする海域において集音が行われる、
請求項1又は請求項2に記載の接近動体検出方法。
【請求項5】
前記動体検出ステップにて、前記異常音の音圧が時間の経過とともに大きくなる場合に前記動体が接近してくると検出する、
請求項1又は請求項2に記載の接近動体検出方法。
【請求項6】
前記動体検出ステップにて、前記異常周波数が所定の周波数である場合に、接近してくる前記動体があると検出する、
請求項1又は請求項2に記載の接近動体検出方法。
【請求項7】
前記異常周波数の分布のデータベースを構築するステップを更に有し、
前記動体検出ステップは、検出された前記異常周波数の分布と前記データベースとに基づいて前記接近してくる前記動体を特定するステップを有する、
請求項1又は請求項2に記載の接近動体検出方法。
【請求項8】
前記動体検出ステップにて、前記異常周波数が時間の経過とともに高い周波数から低い周波数に移行した場合、動体6が接近して来た後離反したと検出する、
請求項1又は請求項2に記載の接近動体検出方法。
【請求項9】
接近してくる動体を検出する接近動体検出システムであって、
集音装置と録音装置と情報処理装置とを有し、
前記集音装置は、接近してくる前記動体のない状態における周囲音である定常周囲音を集音し、更に、現在の前記周囲音である現在周囲音を集音し、
前記録音装置は、集音した前記定常周囲音を録音し、更に、前記現在周囲音を録音し、
前記情報処理装置は、
録音された前記定常周囲音を高速フーリエ変換する高速フーリエ変換部と、
高速フーリエ変換された前記定常周囲音のデータである定常高速フーリエ変換データを保存する記憶部と、
前記現在周囲音を高速フーリエ変換する前記高速フーリエ変換部と、
高速フーリエ変換された前記現在周囲音のデータである現在高速フーリエ変換データを保存する前記記憶部と、
前記定常高速フーリエ変換データと前記現在高速フーリエ変換データとの差異を計算する差異計算部と、
前記差異の大きさと前記差異が生じている周波数である異常周波数を特定する異常周波数特定部と、
前記異常周波数を含み高速フーリエ変換していない音信号である異常音をバンドパスフィルタを用いて抽出する異常音抽出部と、
前記異常音又は/及び前記異常周波数とに基づいて接近してくる前記動体を検出する動体検出部と、
を有する、
接近動体検出システム。
【請求項10】
接近してくる動体の有無を判定するための学習モデルを構築する情報処理装置であって、
周囲音に基づくデータを入力データとして取得する入力データ取得手段と、
前記周囲音の前記入力データにおいて前記接近してくる前記動体の有無の判定結果をラベルとして取得するラベル取得手段と、
前記入力データと前記ラベルとの組を教師データとし教師あり学習を行うことにより、
現在の前記周囲音に基づいて前記接近してくる前記動体の有無を判定するための学習モデルを構築する学習モデル構築手段と、
を備える情報処理装置。
【請求項11】
前記周囲音に基づくデータは、前記周囲音を高速フーリエ変換したデータである、
請求項10に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記ラベル取得手段が、請求項1における動体検出ステップの検出結果に対する正誤の判定結果を前記ラベルとして取得する、
請求項10又は請求項11に記載の情報処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接近動体検出方法、接近動体検出システム、及び、情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、特定の施設に接近してくる動体を迅速に検出して警報を発出する接近警報システムが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、無人飛行機を検出して警報を出す技術が開示されている。特許文献1に開示された技術においては、内燃機関を搭載した無人飛行機の飛行パターンデータが予め登録されている。登録された飛行パターンデータで示される周波数と音圧に基づいて無人飛行機を特定し警報が発出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6079744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、予め登録されていない飛行パターンの無人飛行機の接近に対して警報を発出することができない。又、接近動体の個別データが必要であり、データのない接近動体については検出することができない。
【0006】
本発明は、予め設定登録された動体のデータの有無に依らず接近する動体を検出する、接近動体検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一態様である接近動体検出方法は、接近してくる動体のない状態における周囲音である定常周囲音を集音する第1の集音ステップと、集音した前記定常周囲音を録音する第1の録音ステップと、前記定常周囲音を高速フーリエ変換する第1の高速フーリエ変換ステップと、高速フーリエ変換された前記定常周囲音のデータである定常高速フーリエ変換データを保存する第1のデータ保存ステップと、現在の前記周囲音である現在周囲音を集音する第2の集音ステップと、集音した前記現在周囲音を録音する第2の録音ステップと、前記現在周囲音を高速フーリエ変換する第2の高速フーリエ変換ステップと、高速フーリエ変換された前記現在周囲音のデータである現在高速フーリエ変換データを保存する第2のデータ保存ステップと、前記定常高速フーリエ変換データと前記現在高速フーリエ変換データとの差異を計算する差異計算ステップと、前記差異の大きさと前記差異が生じている周波数である異常周波数とを特定する異常周波数特定ステップと、前記異常周波数を含み高速フーリエ変換していない音信号である異常音をバンドパスフィルタを用いて抽出する異常音抽出ステップと、前記異常音又は/及び前記異常周波数に基づいて、接近してくる前記動体を検出する動体検出ステップと、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、予め設定登録された動体を特定するデータの有無に依らず接近する動体を検出する、接近動体検出方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る接近動体検出システムの模式図である。
図2】本発明に係る情報処理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3】本発明に係る情報処理装置の機能的構成を示すブロック図である。
図4】本発明に係る集音装置が海中で集音する音の種類とその周波数帯域を示す図である。
図5】本発明に係る集音装置が空中で集音するプロペラ騒音の音圧の周波数依存性を示す図である。
図6】本発明に係る情報処理装置が、定常周囲音を高速フーリエ変換した結果を示す図である。
図7】本発明に係る情報処理装置が、現在周囲音を高速フーリエ変換した結果を示す図である。
図8】本発明に係る情報処理装置が周囲音に対してバンドパスフィルタをかけて得る、周囲音の異常部を示す図である。
図9】本発明に係る情報処理装置が周囲音に対してバンドパスフィルタをかけて得る、周囲音の異常部に対応する正常時の周囲音を示す図である。
図10】本発明に係る情報処理装置が周囲音に基づいて接近する動体の有無を判定する、第1実施形態におけるプロセスを説明するフローチャートである。
図11】ドップラー効果の状況を示す模式図である。
図12】本発明に係る洋上風力発電設備に接近し離反するドローンから発せられる音の状況を示す模式図である。
図13】本発明に係る情報処理装置が、接近し離反するドローンが存在する場合の周囲音を高速フーリエ変換した結果を示す図である。
図14】本発明の第2実施形態に係る情報処理装置の機能的構成を示すブロック図である。
図15】本発明の第3実施形態に係る情報処理装置の機能的構成を示すブロック図である。
図16】本発明に係る情報処理装置が第3実施形態において行う、教師有り機械学習のフローチャートである。
図17】本発明に係る情報処理装置が教師あり機械学習の結果に基づいて接近する動体の有無を判定するフローチャートである。
図18】機械なし学習に基づく接近する動体の有無の判定結果を教師データに取り込み教師あり学習を行う、第4実施形態におけるプロセスを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態に係る接近動体検出方法及び接近動体検出システム100及び情報処理装置1について図面を参照しながら説明する。なお、各図において、同一構成要素には同一符号を付す。同一構成要素にて第1の構成要素、第2の構成要素のように区別する場合には、符号にa、b等が付加される。
【0011】
図1は、本発明に係る接近動体検出システム100の模式図である。接近動体検出システム100は、情報処理装置1と集音装置2と録音装置3と通信装置4とを備える。集音装置2と録音装置3と通信装置4とは、例えば洋上風力発電設備5に付随して設けられる。接近動体検出システム100は、動体6の接近を検出する。動体6は、例えば無人飛行ドローン6a或いは船舶6bである。情報処理装置1は、洋上風力発電設備5とは離れた例えば地上に設置されている。情報処理装置1は、受信装置4bを有する。
【0012】
集音装置2は、周囲の音である周囲音を集音する装置である。集音装置2は、例えば無指向性マイクロフォンである。録音装置3は、集音装置2により集音された周囲音を録音する装置である。録音装置3は、例えばデジタル録音装置であり、集音装置2からの信号をMPEG形式に圧縮して保存する。通信装置4は、送信装置4aと受信装置4bとを有する。通信装置4を通して、録音装置3に録音された周囲音は情報処理装置1に送信される。
【0013】
図2は情報処理装置1のハードウェア構成を示す。図2に示すように、情報処理装置1は、制御部10と、入出力部16と、通信手段17と、記憶部18と、を備える。制御部10は、プロセッサ11と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、バス14と、入出力インタフェース15とを有する。情報処理装置1は、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な汎用のパーソナルコンピュータであってもよいし、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータであってもよい。
【0014】
プロセッサ11は、各種演算及び処理を行う。プロセッサ11は、例えば、CPU(central processing unit)、MPU(micro processing unit)、SoC(system on a chip)、DSP(digital signal processor)、GPU(graphics processing unit)、ASIC(application specific integrated circuit)、PLD(programmable logic device)又はFPGA(field-programmable gate array)等である。或いは、プロセッサ11は、これらのうちの複数を組み合わせたものである。又、プロセッサ11は、これらにハードウェアアクセラレーター等を組み合わせたものであってもよい。
【0015】
プロセッサ11、ROM12及びRAM13は、バス14を介して相互に接続されている。プロセッサ11は、ROM12に記録されているプログラム又はRAM13にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。プログラムの一部又は全部は、プロセッサ11の回路内に組み込まれていてもよい。
【0016】
バス14は入出力インタフェース15にも接続される。入出力インタフェース15には、入出力部16と、通信手段17と、記憶部18と、が接続されている。
【0017】
入出力部16は、有線又は無線により電気的に入出力インタフェース15に接続される。入出力部16は例えばキーボード及びマウス等の入力部と画像を表示するディスプレイ及び音声を拡声するスピーカ等の出力部とによって構成される。なお、入出力部16はタッチパネルのように表示機能と入力機能が一体的な構成であってもよい。
【0018】
通信手段17は、図1に示した通信装置4を介して通信を行うための装置である。記憶部18は、接近動体検出システム100を制御するプログラム、後述する高速フーリエ変換を実行するプログラム、後述する高速フーリエ変換されたデータを解析するプログラム、後述する定常周囲音、現在周囲音等を記憶する、例えばハードディスクドライブ(HDD)、半導体ドライブ(SSD)等の記憶装置である。
【0019】
図2に示したハードウェア構成は、あくまで一例であり、特にこの構成に限定されるわけではない。シングルプロセッサ、マルチプロセッサ及びマルチコアプロセッサ等の各種処理装置単体によって構成されるものの他、これら各種処理装置と、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)及びFPGA(Field-Programmable Gate Array)等の処理回路とが組み合わせられたものを、プロセッサとしての機能的構成を実現するものとして採用してもよい。情報処理装置1が記憶部18を有するのではなく、記憶部18が別途設けられる構成が採用されてもよい。
【0020】
図3は、本実施形態に係る情報処理装置1の機能的構成を示すブロック図である。図3に示す各機能は、図2に示す情報処理装置1の有するプロセッサ11等により実現される。情報処理装置1は、周囲音受付部101と、高速フーリエ変換部102と、データ蓄積部103と、差異計算部104と、異常周波数特定部105と、異常音抽出部106と、動体検出部107とを有する。
【0021】
周囲音受付部101は、集音装置2が集音し、録音装置3が録音した周囲音を、通信装置4を通して受け付ける。周囲音としては、接近してくる動体6のない状態における周囲音である定常周囲音と、現在の周囲音である現在周囲音とがある。定常周囲音の集音は、例えば、接近してくる動体6がないことを確認の上で行われる。或いは、定常周囲音の集音は、洋上風力発電設備の建設において、洋上風力発電設備を建設しようとする海域で洋上風力発電設備の建設前に行われる。そして、風力発電設備自体からの音響データ、例えば風車のブレードの風切音、は別途取得され、洋上風力発電設備の建設前に集音された音響データと合成される。周囲音受付部101は、録音装置3の録音を適宜デジタル化して記憶部18に記録する。高速フーリエ変換部102は、デジタル化された定常周囲音と現在周囲音とを高速フーリエ変換する。データ蓄積部103は、定常周囲音の高速フーリエ変換されたデータを蓄積する。差異計算部104は、データ蓄積部103が蓄積した定常周囲音の高速フーリエ変換データの例えば平均或いは中央値と、高速フーリエ変換された現在周囲音のデータである現在高速フーリエ変換データと、の差異を計算する。異常周波数特定部105は、差異の大きさと差異が生じている周波数である異常周波数とを特定する。異常音抽出部106は、異常周波数を含み高速フーリエ変換していない音信号である異常音をバンドパスフィルタを用いて抽出する。動体検出部107は、異常音の音量又は/及び周波数に基づいて、接近してくる動体6を検出する。
【0022】
次に、接近動体検出システム100が接近する動体6を検出する態様について、図1から図10を参照してより詳細に説明する。例えば、集音装置2は、洋上風力発電設備5を建設しようとする海域、或いは、洋上風力発電設備5の設置された洋上において集音を行う。図4は、集音装置2が海中で集音する音の種類とその周波数帯域を示す。海中の騒音源としては、例えば、海底探査のエアガン、船舶6bの海運に伴う音、洋上風車の音、杭打ちの音、ソナーや魚群探知機の発する音等が挙げられる。その周波数帯域は数Hzから数十万Hzにまで及んでいる。図5は、集音装置2が空中で集音するプロペラ騒音の音圧の周波数依存性を示す。プロペラの周りにダクトが設けられている場合と設けられていない場合とで異なるが、周波数は10Hzから10000Hz以上にまで亘る。ドローンについては、プロペラの風切音ノイズは10kHz程度以下で広い周波数範囲にわたってフラットに発生する。これは、空気との摩擦が原因で発生するノイズの特徴である。モーターノイズの内、機械ノイズは10kHz付近で発生する。
【0023】
高速フーリエ変換部102は、図4及び図5の結果に基づいて、フーリエ変換での周波数帯域を例えば、1Hzから10万Hzに設定する。
【0024】
図6は、高速フーリエ変換部102が、定常周囲音を高速フーリエ変換した結果を示す。横軸は周波数、縦軸は音の強度或いは音圧を示す。洋上風力発電設備5のブレードの風切音、波の音、風の音等が検出されている。図7は、高速フーリエ変換部102が、現在周囲音を高速フーリエ変換した結果を示す。図6と同様に、横軸は周波数、縦軸は音の強度或いは音圧を示す。洋上風力発電設備5のブレードの風切音、波の音、風の音等が検出されている。図7においては、図6に示した音にない特別な信号が検出されている。図7においては、動体6の接近音と記載されている。動体6は、例えば、無人航空機UAV(Unmanned Aerial Vehicle)である。ここで、定常周囲音の高速フーリエ変換した結果のデータの取得には、所定時間以上の集音が集音装置2によって行われる。そして、所定時間に得られた複数の高速フーリエ変換データの平均値或いは中央値が、定常周囲音を表すものとして採用されてもよい。
【0025】
差異計算部104は、図6に示した定常周囲音が高速変換されたデータと、図7に示した現在周囲音が高速変換されたデータとの差異を計算する。異常周波数特定部105は、差異が所定以上の周波数を特定する。そして、異常周波数特定部105は、図7に示した例えば動体6の接近音に起因する信号を特定する。
【0026】
ここで、未知の動体6を検出する場合に、所定以上の差異、を如何に策定するかが問題となる。現在周囲音を高速フーリエ変換した各周波数の値と、定常周囲音を高速フーリエ変換した対応する周波数の値との差異が、例えば定常周囲音を高速フーリエ変換した値に比してプラス10%以上の周波数を特定する。或いは、入力として、10%とした場合、20%とした場合、30%とした場合などのデータを蓄積し、実際に未登録の動体6の接近音であったかどうかの結果の情報を与え、教師あり機械学習を行う。これにより、差異としてどの程度を所定の値として設定することが適しているかが求められる。
【0027】
異常音抽出部106は、図7に示した例えば飛行する動体6の接近音の周波数である異常周波数を含む所定の周波数範囲について、高速フーリエ変換していない音信号をバンドパスフィルタを用いて抽出する。バンドパスフィルタ機能は、情報処理装置1の制御部10が担うことが可能である。一方、バンドパスフィルタ機能をハードウェアで用意し、異常音抽出部106がハードウェアに対して周波数の中心値、バンド幅を指定してもよい。或いは、高速フーリエ変換部102が、所定の周波数範囲のみを抜き出して、逆フーリエ変換してもよい。
【0028】
ここで、未知の動体6を検出する場合に、所定の周波数範囲、を如何に策定するかが問題となる。例えば周波数範囲を周波数のプラスマイナス10%以内の周波数とする。或いは、入力として、プラスマイナス5%とした場合、10%とした場合、20%とした場合、30%とした場合などのデータを蓄積し、実際に未登録の動体6の接近音であったかどうかの情報を与え、教師あり機械学習を行う。これにより、周波数範囲としてどの程度を設定することが適しているかが求められる。
【0029】
図8は、図7に示す所定の周波数範囲においてバンドパスフィルタを用いて抽出された、現在の音響データの波形(a)と音響データのパワー(b)とを示す。図8(a)において、横軸は時間、縦軸は振幅を示す。図8(b)において、横軸は時間、縦軸は正規化された出力を示す。
【0030】
図9は、図7に示す所定の周波数範囲において抽出された、正常時の音響データの波形(a)と正常時の音響データのパワー(b)とを示す。図9(a)において、横軸は時間、縦軸は振幅を示す。図9(b)において、横軸は時間、縦軸はパワーを示す。正常時においては、振幅はほぼ一定であり、パワーもほぼ一定である。
【0031】
図9に比して、図8においては、振幅が時刻T0に大きくなり、パワーも時刻T0に大きくなっている。そして、時刻T0において、図8(b)に示すように、パワーが所定のしきい値を超えている。動体検出部107は、得られる信号の差異の大きさが時間の経過とともに大きくなり、所定のしきい値を超える時に動体6が接近してくると検出する。動体検出部107は、異常音の音圧が時間の経過とともに大きくなる場合に動体6が接近してくると検出してもよい。所定のしきい値を超える音圧が観測される場合に、動体6が接近してくると検出してもよい。
【0032】
ここで、未知の動体6を検出する場合に、所定のしきい値を超えたパワー、を如何に策定するかが問題となる。例えば所定のしきい値を30dBとする。或いは、入力として、30dBとした場合、50dBとした場合、60dBとした場合、などのデータを蓄積し、実際に未登録の動体6の接近音であったかどうかの情報を与え、教師あり機械学習を行う。これにより、所定のしきい値としてどの程度を設定することが適しているかが求められる。
【0033】
上記において、動体6の接近音の周波数は、異常周波数特定部105により特定されたが、予め、所定の周波数を設定して、音圧の変化を検証してもよい。動体検出部107は、異常周波数が所定の周波数である場合に、接近してくる動体6があると検出してもよい。例えば、ドローンの飛行音のような、異常音である可能性の高い音の周波数が予め設定されている。そして、異常周波数が当該周波数であり、パワーが所定のしきい値を超える場合に、接近してくるドローンがあると検出が行われる。
【0034】
図10は、情報処理装置1が周囲音に基づいて接近する動体6の有無を判定する流れを説明するフローチャートである。図1から図9を適宜参照する。
【0035】
図1及び図3に示すように、周囲音受付部101は、集音装置2が集音し、録音装置3が録音した周囲音を、通信装置4を通して受け付ける。周囲音は、接近してくる動体6のない状態における周囲音である定常周囲音である(ステップS101)。高速フーリエ変換部102は、デジタル化された定常周囲音を高速フーリエ変換する(ステップS102)。データ蓄積部103が蓄積したデータが十分の場合、データの蓄積を終了する。データが十分とは、例えば、それまでに取得したデータの平均或いは中央値からの新規に取得したデータの差異が偏差値として5以下であるような場合である。データ蓄積が終了していない場合(ステップS103:No)、ステップS101に戻る。データ蓄積が終了している場合(ステップS103:Yes)、周囲音受付部101は、集音装置2が集音し、録音装置3が録音した現在の周囲音を、通信装置4を通して受け付ける。周囲音は、現在の周囲音である現在周囲音である(ステップS104)。
【0036】
高速フーリエ変換部102は、デジタル化された現在周囲音を高速フーリエ変換する(ステップS105)。差異計算部104は、高速フーリエ変換された定常周囲音のデータである定常高速フーリエ変換(FFT:Fasr Fourier Transform)データと、高速フーリエ変換された現在周囲音のデータである現在高速フーリエ変換データと、の差異を計算する(ステップS106)。異常周波数特定部105は、差異の大きさと差異が生じている周波数である異常周波数を特定する(ステップS107)。
【0037】
異常音抽出部106は、異常周波数を含み高速フーリエ変換していない音信号である異常音をバンドパスフィルタを用いて音響データとして抽出する(ステップS108)。動体検出部107は、ステップS108で得られた音響データの音圧又は及び周波数に基づいて、接近してくる動体6の有無を判定する(ステップS109)。動体6の監視を続行する場合には(ステップS110:Yes)、処理はステップS104に戻る。動体6の監視を続行しない場合には(ステップS110:No)、処理が終了する。
【0038】
(変形例1)
図7は、差異が単独の周波数の場合を示している。図5のように、飛行する動体6であっても音圧の周波数依存性が異なり、広い周波数帯域で音圧が観察されることがある。この場合、フーリエ変換されたデータの傾向から接近してくる飛行する動体6を特定することができる。例えば、図5の例では、正常時と現在とのフーリエ変換されたデータの差から、ダクトのある飛行する動体6か、ダクトのない飛行する動体6かを判断することができる。動体検出部107は、異常周波数の分布のデータベースを予め構築し、検出された周波数の分布と異常周波数の分布のデータベースとに基づいて接近してくる動体6を特定する。
【0039】
(変形例2)
図9に示した例においては、音圧の変化のみが検証されている。動体6が飛行体であり、接近してきている場合には、動体6の発する音のドップラー効果を利用することができる。図11は、集音装置2のある検知点と動体6との関係と、音波との関係を示す。図11(a)は動体6が静止している場合を、図11(b)は動体6が検知点に接近してきている場合を、図11(c)は動体6が検知点から遠ざかる場合を示す。
【0040】
例えば、動体6であるドローンが洋上風力発電設備5に接近してきて遠ざかる場合には、図12に示すように、高い音から低い音に変化する。高速フーリエ変換した信号においては、図13に示すように、動体6の接近音は、特異な信号として出現する。動体6の接近音は、高周波数から低周波数に信号ピーク周波数が移動する。動体検出部107は、異常周波数特定部105が特定した信号ピークの周波数の変化に基づいて、動体6の接近と脱離とを検出する。動体検出部107は、異常周波数が時間の経過とともに高い周波数から低い周波数に移行した場合、動体6が接近して来た後離反したと検出する。
【0041】
(第2実施形態)
上記の実施形態においては、異常周囲音を含まない定常周囲音についてのみデータの蓄積が行われている。そして、当該蓄積されたデータの平均値あるいは中央値と現在周囲音とが比較されていた。データの蓄積を、異常周囲音を含む可能性のある場合を含めて行い、教師なし学習の一つであるクラスタリングを行う第2実施形態について説明する。
【0042】
図14は、第2実施形態における情報処理装置1の制御部10が有する機能的構成を示す。制御部10は、周囲音受付部101と高速フーリエ変換部102とデータ蓄積部103とクラスタリング部108と動体検出部107と異常周波数特定部105とを有する。周囲音受付部101は、定常周囲音と異常周囲音との区別を行わず、周囲音を受け付ける。高速フーリエ変換部102は、周囲音受付部101が受け付けた周囲音の音響データを高速フーリエ変換する。データ蓄積部103は、高速フーリエ変換された音響データを蓄積する。
【0043】
クラスタリング部108は、データ蓄積部103が蓄積したデータについてクラスタリングを行う。まず、所定の大きさ以上の信号をもたらす周波数とその信号の大きさが各データについて検出される。次に、各周波数を各軸、信号の大きさを座標値としてベクトルが定義されデータ整理が行われる。これらのデータについて主成分分析が行われる。例えば、AからEの周波数が抽出される。各音響データについて、周波数AからEに於ける高速フーリエ変換後の強度がそれぞれ抽出される。結果として、定常周囲音AからDに基づく値の和がX軸、特定の周波数Eに基づく値がY軸として主成分が抽出される。そして、Y軸の値が一定以上のものと、一定以下のものとしてクラスタリングが行われる。
【0044】
特定の周波数は、異常周囲音に基づく周波数である可能性が高い。動体検出部107は、Y軸の値が一定以上のデータによるクラスタを、動体6の接近情報を含む可能性のあるクラスターとして検出する。動体検出部107は、所属するデータの少ない特定のクラスターを動体6の接近情報を含む可能性のあるクラスターとして検出してもよい。動体検出部107が特定の周波数の音を含む一連のデータを含むクラスターを動体6の接近情報を含む可能性のあるクラスターとして検出してもよい。更に、異常周波数特定部105が異常周波数の分布のデータベースを構築してもよい。そして、動体検出部107は、検出された異常周波数の分布とデータベースとに基づいて接近してくる動体6を特定してもよい。
【0045】
本実施形態は、クラスタリングに基づく教師なし学習を行っている。異常周波数を検出した後、その周波数に基づいてバンドパスフィルタを用いて音響データを図8に示すように抽出し、当該音響データの音圧、音圧の変化、周波数の変化に基づいて接近してくる動体6を特定してもよい。
【0046】
(第3実施形態)
以上の説明においては、定常周囲音との比較(第1実施形態)、或いは、教師なし学習(第2実施形態)が行われている。以下、教師あり学習の例について説明する。
【0047】
本実施形態に係る情報処理装置1は、接近してくる動体6の有無を判定するための学習モデルを構築する教師有り機械学習を行う。図15は、制御部10の有する機能的構成のブロック図である。情報処理装置1の制御部10は、周囲音の音響データを受け付ける周囲音受付部101と、周囲音受付部101が受け付けた音響データを高速フーリエ変換する高速フーリエ変換部102と、高速フーリ変換された周囲音のデータを入力データとして取得する入力データ取得部109と、周囲音の入力データにおいて接近してくる動体6の有無の判定結果をラベルとして取得するラベル取得部110と、入力データとラベルとの組を教師データとし教師あり学習を行うことにより、現在の周囲音に基づいて接近してくる動体6の有無を判定するための学習モデルを構築する学習モデル構築部111と、学習モデル記憶部112と、を備える。
【0048】
入力データ取得部109は、周囲音を高速フーリエ変換したデータを図6及び図7に示すように取得する。ラベル取得部110は、データの取得に際して、動体6が接近してきている状態なのかどうかの判定結果をラベルとして取得する。なお、この判定結果は、例えば洋上風力発電設備5を設置する事業者による実際の判定結果であって、動体6が接近してきている、即ち異常、か、動体6が接近してきていない、即ち正常、かの二値で表される判定結果であることが好ましい。周囲音を高速フーリエ変換したデータと対応するラベルとが紐づけされて蓄積される。例えば、殆どの場合においては接近する動体6は存在しないので、図6に示したデータと同様のデータが得られる。ラベルとしては接近する動体6は存在しないという結果となる。接近する動体6が存在する場合、図7に示したデータと同様のデータが得られる。ラベルとしては接近する動体6が存在するという結果となる。
【0049】
学習モデル構築部111は、上記の入力データと、上記のラベルとの組を教師データとして教師あり学習をおこなう。学習モデル構築部111は、接近する動体6が存在するかを判定するための学習モデルを構築し、構築した学習モデルを、動体検出部107に送る。動体検出部107は、学習モデルに基づいて接近する動体6の有無を判定する。例えば、学習モデル構築部111が、図7に示される特異なピークが存在するデータについて、接近する動体6が存在することを示すデータである、と導出することが期待される。
【0050】
なお、本実施形態においては、上記の入力データとしての周囲音の高速フーリエ変換結果が、各々が互いに異なる接近する動体6の音についての結果である場合、複数の接近する動体6に対して1つの学習モデルを構築してもよい。互いに異なる動体6が接近する場合に対しても対応することができる。
【0051】
学習モデル構築部111は、例として、サポート・ベクター・マシーン(Support Vecotr Machine,以下SVMともいう)を用いて実現することができる。
【0052】
この場合、学習モデル構築部111は、上記のラベルとして、接近する動体6が存在する異常状態か正常状態かに係る二値化されたラベルを用いる。そして、学習モデル構築部111は、上記の入力データを含む空間を、上記の特定の接近する動体6が存在する状態に該当するか否かに関して、マージンが最大となるように分離する超平面を算出する。更に、学習モデル構築部111は、この超平面の係数を、後述の動体検出部107が接近する動体6の有無の判定のために用いる学習モデルのパラメータとすることが可能である。
【0053】
学習モデル記憶部112は、学習モデル構築部111が構築した学習モデルを記憶する。情報処理装置1は、上記の構成を有することにより、動体6の接近の有無を判定するための学習モデルを構築する。次に、第2実施形態に係る接近動体検出システム100の動作について説明する。
【0054】
図16は、制御部10の動作を示すフローチャートである。ステップS201において、入力データ取得部109が、周囲音の高速フーリエ変換結果を入力データとして取得する。
【0055】
ステップS202において、ラベル取得部110が、ステップS201において取得された周囲音の高速フーリエ変換結果についての接近する動体6の有無についての判定結果をラベルとして取得する。
【0056】
ステップS203において、学習モデル構築部111は、入力データとラベルとの組を教師データとする。
【0057】
ステップS204において、学習モデル構築部111は、ステップS203の教師データを用いて教師あり学習を行う。
【0058】
ステップS205において、機械学習が終了した場合(S205:YES)には、処理はステップS206に移行する。機械学習がまだ終了していない場合(S205:NO)には、処理はステップS201に移行する。
【0059】
ステップS206において、学習モデル構築部111は、構築した学習モデルを動体検出部107に送る。その後処理は終了する。
【0060】
次に、図17を参照し、接近する動体6の有無の判定について説明する。図17は、接近する動体6の有無の判定のフローチャートである。
【0061】
ステップS301において、周囲音受付部101が現在の周囲音を受け付ける。ステップS302において、高速フーリエ変換部102は、周囲音受付部101が受け付けた現在の周囲音について高速フーリエ変換を行う。ステップS303において、動体検出部107は、高速フーリエ変換部102によりフーリエ変換されたデータと学習モデルとに基づいて、接近する動体6の有無を判定する。その後、全ての処理が終了する。
【0062】
(第4実施形態)
上記の実施形態においては、定常時のデータとの比較による例と教師なし学習と教師あり学習との例について説明した。これらを組み合わせた例について説明する。
【0063】
第1実施形態及び第2実施形態において、情報処理装置1は接近する動体6の有無について判定した。この判定結果をラベル取得部110が、ラベルとして取得する。学習モデル構築部111は、入力データとラベルとの組み合わせを教師データに組み入れる。
【0064】
図18は、第4実施形態における処理のフローチャートである。図10及び図16から図17に記載のプロセスと同様のステップについては同一のステップ番号が付与されている。処理がスタートすると、定常時における周囲音の録音が行われ(ステップS101)、高速フーリエ変換が行われ(ステップS102)、データの蓄積或いは教師無しの機械学習が行われる(ステップS101~ステップS102)。データの蓄積或いは機械学習が終了すると(ステップS103)、現在の周囲音の録音がなされる(ステップS104)。更に、高速フーリエ変換が行われる(ステップS105)。最後に、図10に示した処理(ステップS106からS108)を経て、動体検出部107は、移動する動体6の有無を判定する(ステップS109)。
【0065】
判定結果に基づき作成されたラベル(ステップS401)と、周囲音を高速フーリエ変換した入力データとで生成された組(ステップS402)をラベル取得部110は取得する。学習モデル構築部111は、この入力データとラベルとの組を教師データとする(ステップS203)。学習モデル構築部111は、教師データに基づいて機械学習を行う(ステップS204)。更に、動体検出部107は、教師あり学習の結果に基づいて接近する動体6の有無を判定する(ステップS303)。
【0066】
本開示は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされるものである。又、上述した実施形態は、この発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。即ち、本発明の範囲は、実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の開示の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【0067】
以上説明した実施形態に係る接近動体検出方法によれば以下のような効果が奏される。
【0068】
(1)接近動体検出方法は、接近してくる動体6を検出する接近動体検出方法であって、接近してくる動体6のない状態における周囲音である定常周囲音を集音する第1の集音ステップと、集音した定常周囲音を録音する第1の録音ステップと、定常周囲音を高速フーリエ変換する第1の高速フーリエ変換ステップと、高速フーリエ変換された定常周囲音のデータである定常高速フーリエ変換データを保存する第1のデータ保存ステップと、現在の周囲音である現在周囲音を集音する第2の集音ステップと、集音した現在周囲音を録音する第2の録音ステップと、現在周囲音を高速フーリエ変換する第2の高速フーリエ変換ステップと、高速フーリエ変換された現在周囲音のデータである現在高速フーリエ変換データを保存する第2のデータ保存ステップと、定常高速フーリエ変換データと現在高速フーリエ変換データとの差異を計算する差異計算ステップと、差異の大きさと差異が生じている周波数である異常周波数を特定する異常周波数特定ステップと、異常周波数を含み高速フーリエ変換していない音信号である異常音をバンドパスフィルタを用いて抽出する異常音抽出ステップと、異常音又は/及び異常周波数に基づいて、接近してくる動体6を検出する動体検出ステップと、を有する。
【0069】
これにより、予め設定登録された動体6のデータの有無に依らず接近する動体6を検出する、接近動体検出方法が提供される。
【0070】
(2)(1)の接近動体検出方法は、第1の集音ステップにおいて、所定期間以上集音し、定常高速フーリエ変換データとして、所定時間に得られた複数の高速フーリエ変換データの平均値或いは中央値を採用する。
【0071】
これにより、蓄積された定常高速フーリエ変換データに基づき異常高速フーリエ変換データを抽出する一例の形態が提供される。
【0072】
(3)(1)又は(2)の接近動体検出方法は、差異計算ステップにおいて、定常高速フーリエ変換データについて所定の大きさ以上の信号をもたらす周波数に基づいてクラスタリングを行い、現在高速フーリエ変換データについて所定の大きさ以上の信号をもたらす周波数に基づいてクラスタリングを行い、クラスタリング結果の差異を計算する。
【0073】
これにより、蓄積された定常高速フーリエ変換データの教師なし学習の一例の形態が提供される。クラスタリングの手法が用いられることにより、動体6の接近のない状態でのクラスターと動体6の接近のある状態でのクラスターとに分けることができ、接近する動体6の有無が明確となる。
【0074】
(4)(1)から(3)の何れか1つの接近動体検出方法は、第1の集音ステップにおいて、洋上風力発電設備を建設しようとする海域において集音が行われる。
【0075】
これにより、洋上という監視のし難い場所において、接近する動体6を検出することができる。
【0076】
(5)(1)から(4)の何れか1つの接近動体検出方法は、動体検出ステップにて、異常音の音圧が時間の経過とともに大きくなる場合に動体6が接近してくると検出する。
【0077】
これにより、動体6が出現したというだけでなく、動体6が接近しきていることをより明確に検出することができる。
【0078】
(6)(1)から(5)の何れか1つの接近動体検出方法は、動体検出ステップにて、異常周波数が所定の周波数である場合に、接近する動体6があると検出する。
【0079】
これにより、周波数という限られた動体6の情報に基づいて、接近する動体6があることを検出することができる。
【0080】
(7)(1)から(6)の何れか1つの接近動体検出方法は、異常周波数の分布のデータベースを構築するステップを更に有し、動体検出ステップは、検出された異常周波数の分布とデータベースとに基づいて接近してくる動体6を特定するステップを有する。
【0081】
これにより、正常状態についての教師なし学習に基づいての判定に加えて、異常状態についての判定が明確になる。
【0082】
(8)(1)から(7)の何れか1つの接近動体検出方法は、動体検出ステップにて、異常周波数が時間の経過とともに高い周波数から低い周波数に移行した場合、動体6が接近して来た後離反したと検出する。
【0083】
これにより、動体6が出現したというだけでなく、動体6が接近しきていることをより明確に検出することができる。
【0084】
(9)接近動体検出システム100は、接近してくる動体6を検出する接近動体検出システム100であって、集音装置2と録音装置3と情報処理装置1とを有し、集音装置2は、接近してくる動体6のない状態における周囲音である定常周囲音を集音し、更に、現在の周囲音である現在周囲音を集音し、録音装置3は、集音した定常周囲音を録音し、更に、現在周囲音を録音し、情報処理装置1は録音された定常周囲音を高速フーリエ変換する高速フーリエ変換部102と、高速フーリエ変換された定常周囲音のデータである定常高速フーリエ変換データを保存する記憶部18と、現在周囲音を高速フーリエ変換する高速フーリエ変換部102と、高速フーリエ変換された現在周囲音のデータである現在高速フーリエ変換データを保存する記憶部18と、定常高速フーリエ変換データと現在高速フーリエ変換データとの差異を計算する差異計算部104と、差異の大きさと差異が生じている周波数である異常周波数を特定する異常周波数特定部105と、異常周波数を含み高速フーリエ変換していない音信号である異常音をバンドパスフィルタを用いて抽出する異常音抽出部106と、異常音又は/及び異常周波数とに基づいて接近してくる動体6を検出する動体検出部107と、を有する。
【0085】
これにより、予め設定登録された動体6のデータの有無に依らず接近する動体6を検出する、接近動体検出システム100が提供される。
【0086】
(10)情報処理装置1は、接近してくる動体6の有無を判定するための学習モデルを構築する情報処理装置であって、周囲音に基づくデータを入力データとして取得する入力データ取得手段と、周囲音の入力データにおいて接近してくる動体6の有無の判定結果をラベルとして取得するラベル取得手段と、入力データとラベルとの組を教師データとし教師あり学習を行うことにより、現在の周囲音に基づいて接近してくる動体6の有無を判定するための学習モデルを構築する学習モデル構築手段と、を備える。
【0087】
これにより、動体6自体の情報がない状態においても、過去に於ける接近する動体6の有無の判定結果の情報のみに基づいて、接近する動体6の有無を判定することができる。
【0088】
(11)(10)に記載の情報処理装置1において、周囲音に基づくデータは、周囲音を高速フーリエ変換したデータである。
【0089】
これにより、周囲音の周波数に基づいて接近する動体6の有無を判定することができる。
【0090】
(12)(10)又は(11)の情報処理装置1において、ラベル取得手段が、(1)における動体検出ステップの検出結果に対する正誤の判定結果をラベルとして取得する。
【0091】
これにより、教師なし学習の結果を教師として教師有り学習をさせることになり、動体6の検出がより確実で速く実現され得る。
【符号の説明】
【0092】
1 情報処理装置
2 集音装置
3 録音装置
4 通信装置
5 洋上風力発電設備
6 動体
6a 無人飛行ドローン
6b 船舶
10 制御部
11 プロセッサ
12 ROM
13 RAM
14 バス
15 入出力インタフェース
16 入出力部
17 通信手段
18 記憶部
100 接近動体検出システム
101 周囲音受付部
102 高速フーリエ変換部
103 データ蓄積部
104 差異計算部
105 異常周波数特定部
106 異常音抽出部
107 動体検出部
108 クラスタリング部
109 入力データ取得部
110 ラベル取得部
111 学習モデル構築部
112 学習モデル記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18