(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136087
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】排熱回収アセンブリ及び排熱回収システム
(51)【国際特許分類】
F01D 15/10 20060101AFI20240927BHJP
F01B 23/10 20060101ALI20240927BHJP
F01N 5/02 20060101ALI20240927BHJP
F01D 25/12 20060101ALI20240927BHJP
F01D 25/16 20060101ALI20240927BHJP
F01K 23/02 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
F01D15/10 A
F01B23/10
F01N5/02 B
F01N5/02 J
F01D25/12 Z
F01D25/16 J
F01K23/02 P
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047061
(22)【出願日】2023-03-23
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-07-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 誠
【テーマコード(参考)】
3G081
【Fターム(参考)】
3G081BA02
3G081BC06
3G081BC30
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高温高圧の作動流体で膨張機を駆動する際に、発電機に沿って作動流体が通っても、発電機の温度上昇を抑制し得る排熱回収アセンブリを提供する。
【解決手段】外装ケースの外側から外装ケース内に作動流体を流入させる入口配管と、入口配管の外側を回転可能なロータと、ロータの外側に設けられ外装ケースに固定されるステータとを有する発電機と、外装ケース内で発電機に隣接して設けられる膨張機と、外装ケース内でロータ及び膨張機の回転軸としてロータ及び膨張機が固定されるシャフトと、シャフトと入口配管との間を軸シールするシール部と、シャフトに設けられ、膨張機を回転させる作動流体を外装ケース内の膨張機に導入する第1の流路と、外装ケースに設けられ、シャフトの第1の流路及び膨張機を通した作動流体を、外装ケース内に充満させる第2の流路と、外装ケースの第2の流路から作動流体を外装ケースの外側に流出させる出口配管と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装ケースと、
前記外装ケースに設けられ、前記外装ケースの外側から前記外装ケース内に作動流体を流入させる入口配管と、
前記外装ケース内に設けられ、前記入口配管の外側を回転可能なロータと、前記ロータの外側に設けられ前記外装ケースに固定されるステータとを有する発電機と、
前記外装ケース内で、前記発電機に隣接して設けられる膨張機と、
前記外装ケース内に設けられ、前記ロータ及び前記膨張機の回転軸として前記ロータ及び前記膨張機が固定されるシャフトと、
前記シャフトと前記入口配管との間を軸シールするシール部と、
前記シャフトに設けられ、前記膨張機を回転させる作動流体を前記外装ケース内の前記膨張機に導入する第1の流路と、
前記外装ケース内に設けられ、前記シャフトの前記第1の流路及び前記膨張機を通した前記作動流体を、前記外装ケース内に導入する第2の流路と、
前記外装ケースに設けられ、前記外装ケースの前記第2の流路から前記作動流体を前記外装ケースの外側に流出させる出口配管と、
を有する、排熱回収アセンブリ。
【請求項2】
前記シャフトは、前記ロータと前記膨張機とを連結し、
前記シール部は、前記入口配管の外側と前記シャフトの内側との間をシールする、請求項1に記載の排熱回収アセンブリ。
【請求項3】
前記第2の流路は、前記シャフトの前記第1の流路及び前記膨張機を通した前記作動流体を、前記外装ケース内に充満させる、請求項1又は請求項2に記載の排熱回収アセンブリ。
【請求項4】
前記第2の流路は、前記シャフトの前記第1の流路及び前記膨張機を通した前記作動流体が、前記発電機と熱交換が可能なように、前記外装ケース内に設けられる流路である、請求項1又は請求項2に排熱回収アセンブリ。
【請求項5】
前記出口配管は、前記発電機の外方又は前記膨張機の外方に設けられる、請求項1又は請求項2に記載の排熱回収アセンブリ。
【請求項6】
前記入口配管を通す前記外装ケース内への前記作動流体の流入方向と、前記出口配管から前記外装ケース外への前記作動流体の流出方向とが交差する、請求項1又は請求項2に記載の排熱回収アセンブリ。
【請求項7】
前記入口配管を通す前記外装ケース内への前記作動流体の流入方向は、前記出口配管から前記外装ケース外への前記作動流体の流出方向に沿う、請求項1又は請求項2に記載の排熱回収アセンブリ。
【請求項8】
請求項1又は請求項2に記載の排熱回収アセンブリと、
前記作動流体を前記排熱回収アセンブリに向けて送るポンプと、
前記ポンプと前記排熱回収アセンブリとの間に設けられ、前記作動流体を加熱する熱交換器と、
前記排熱回収アセンブリの前記入口配管に連通し、前記熱交換器を通して送られる前記作動流体を前記入口配管に流入させる上流側管路と、
前記排熱回収アセンブリの前記出口配管に連通し、前記排熱回収アセンブリの前記第2の流路を通過した前記作動流体を前記出口配管から流出させる下流側管路と、
前記排熱回収アセンブリと前記ポンプとの間に設けられ、前記作動流体を冷却する凝縮器と
を有する、排熱回収システム。
【請求項9】
請求項8に記載の排熱回収システムと
前記熱交換器で熱交換して冷却される内燃機関と
を有する車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動流体で駆動する膨張機と膨張機に連結される発電機とを備える排熱回収アセンブリ、排熱回収システム、及び、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
発電機と膨張機とが密閉された外装ケースに収容された排熱回収アセンブリを有する排熱回収システム(トリラテラルサイクルシステム)が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載の排熱回収システムの排熱回収アセンブリは、発電機のロータの中心軸を通して、作動流体で膨張機を駆動するとともに、発電機のロータを回転させ、発電機で発電させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高温高圧の作動流体で膨張機を駆動する際に、発電機に沿って作動流体が通ると、作動流体から発電機に熱伝達され、発電機の温度が上昇する可能性が生じる。
【0005】
本発明は、高温高圧の作動流体で膨張機を駆動する際に、発電機に沿って作動流体が通っても、発電機の温度上昇を抑制し得る、排熱回収アセンブリ、排熱回収システム、及び、車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る排熱回収アセンブリは、外装ケースと、前記外装ケースに設けられ、前記外装ケースの外側から前記外装ケース内に作動流体を流入させる入口配管と、前記外装ケース内に設けられ、前記入口配管の外側を回転可能なロータと、前記ロータの外側に設けられ前記外装ケースに固定されるステータとを有する発電機と、前記外装ケース内で、前記発電機に隣接して設けられる膨張機と、前記外装ケース内に設けられ、前記ロータ及び前記膨張機の回転軸として前記ロータ及び前記膨張機が固定されるシャフトと、前記シャフトと前記入口配管との間を軸シールするシール部と、前記シャフトに設けられ、前記膨張機を回転させる作動流体を前記外装ケース内の前記膨張機に導入する第1の流路と、前記外装ケース内に設けられ、前記シャフトの前記第1の流路及び前記膨張機を通した前記作動流体を、前記外装ケース内に充満させる第2の流路と、前記外装ケースに設けられ、前記外装ケースの前記第2の流路から前記作動流体を前記外装ケースの外側に流出させる出口配管と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高温高圧の作動流体で膨張機を駆動する際に、発電機に沿って作動流体が通っても、発電機の温度上昇を抑制し得る、排熱回収アセンブリ及び排熱回収システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る車両を示す概略的な上面図である。
【
図2】実施形態の車両の排熱回収システムを例示する構成図である。
【
図3】
図2の排熱回収システムの排熱回収アセンブリを例示する断面図である。
【
図4】
図3の変形例に係る排熱回収アセンブリを例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、
図1から
図3を参照しながら、例えば車両1等の排熱回収システム(トリラテラルサイクルシステム)10の実施形態について説明する。
【0010】
図1に示すように、車両1は、例えば4つ以上の車輪2を有する。車両1は、車両1の内燃機関(圧縮機)3を駆動させると、トランスミッション4を介して車輪2に駆動力が伝達され、移動し得る。
【0011】
図2に示すように、車両1の内燃機関3には、例えば内燃機関3に設けられる熱交換器(ラジエータ)14を通る冷却液が循環する。すなわち、内燃機関3は、熱交換器(ラジエータ)14で冷却され、熱交換器14及び内燃機関3を循環する冷却液により冷却される。なお、
図2において、白抜き矢印は熱交換器14及び内燃機関3を通る冷却液の流れを示し、塗り潰し矢印は排熱回収システム10の作動流体の流れを示す。
なお、熱交換器14には、冷却液を熱交換器14に対して受け渡すサブタンク14a(
図1参照)が接続される。
【0012】
図2に示すように、実施形態の排熱回収システム10は、例えば内燃機関3の排熱を電力に変換して回収する。内燃機関の排熱としては、燃焼による熱が例示される。本実施形態に係る排熱回収システム10の膨張機38に流入する作動流体の状態は、乾き蒸気ではなく、気液二相の状態であり、例えば100℃以下の低温の場合でも排熱を回収することが可能である。それ故、排熱回収システム10の熱源としては、内燃機関3の冷却水が好適であり、本実施形態の排熱回収システム10は排熱として熱交換器14で熱交換される冷却水からの熱を採用し得る。
【0013】
排熱回収システム10は、作動流体が循環する循環通路20に作動流体の流れに関して順に、ポンプ12、熱交換器14、排熱回収アセンブリ16、および、凝縮器18が配置される。
【0014】
ポンプ12は、循環通路20内の作動流体を循環させる。作動流体としてはエタノール、フロン等が例示される。循環通路20は、熱交換器14と排熱回収アセンブリ16との間の、排熱回収アセンブリ16の上流側の管路を上流側管路20aとする。循環通路20は、排熱回収アセンブリ16と凝縮器18の間の、排熱回収アセンブリ16の下流側の管路を下流側管路20bとする。
【0015】
熱交換器14は、例えば内燃機関3を循環する冷却水と熱交換する。熱交換器14の上流側の作動流体は、主に液体であり、熱交換器14の下流側の作動流体は熱交換器14で加熱されて気液二相となる。
【0016】
排熱回収アセンブリ16は、外装ケース32と、入口配管34と、発電機36と、膨張機38と、回転軸(シャフト)40と、シール部42と、作動流体の第1の流路44と、作動流体の第2の流路46と、出口配管48と、を備える。
【0017】
外装ケース32は、例えば略円柱状の外観を有する。外装ケース32は密閉構造を有する。外装ケース32は、例えば、アルミニウム合金、鉄等の金属材料で形成される。外装ケース32には、発電機36、膨張機38、回転軸(シャフト)40、シール部42、作動流体の第1の流路44、及び、作動流体の第2の流路46が収容される。外装ケース32は、作動流体の流れに沿って、発電機36を膨張機38の上流側に収納する。
【0018】
外装ケース32には作動流体の入口配管34が接続される。入口配管34は循環通路20を構成する配管の一つであり、熱交換器14を通過後の作動流体を、外装ケース32の外側から外装ケース32内に流入させる配管である。入口配管34は円柱状の外装ケース32の一端の中心軸上を貫通する。入口配管34の下流側端部は外装ケース32内に配置される。
【0019】
発電機36は、外装ケース32内に設けられる。発電機36には、外装ケース32内の入口配管34が挿通される。発電機36は、入口配管34の外側を回転可能なロータ52と、ロータ52の外側に設けられ外装ケース32に対して静止する(固定される)ステータ54とを有する。ロータ52として例えばコイルが用いられる。ステータ54として例えば永久磁石が用いられる。発電機36は図示しないインバータを介してバッテリ(図示せず)に電気的に接続される。そして、バッテリには、発電機36で発電する電力が蓄電される。
【0020】
膨張機38は、外装ケース32内で、発電機36に隣接して設けられる。膨張機38と発電機36との中心軸は同軸である。膨張機38は、気液二相流の作動流体のエネルギを回転軸40の回転運動に変換する流体機器62と、その流体機器62を収納する膨張機用筐体64とを有する。流体機器62としてはターボ型(遠心式タービンや軸流式タービン)や容積型(ベーン膨張機、スクロール膨張機、スクリュー膨張機)が例示され、特に限定されるものではない。なお、膨張機用筐体64は、第2の流路46に連通し、流体機器62を回転させた作動流体を第2の流路46に排出する排出路64aを有する。
【0021】
回転軸40は、外装ケース32内で、発電機36及び膨張機38の中心軸上に設けられる。回転軸40は、発電機36のロータ52及び膨張機38の流体機器62の回転軸として発電機36のロータ52及び膨張機38の流体機器62が固定される。すなわち、外装ケース32の内部で、発電機36のロータ52及び膨張機38の流体機器62は、共通の回転軸40に連結する。
【0022】
シール部42は、回転軸40と入口配管34との間を軸シールする。より詳細には、シール部42は、入口配管34の外側と回転軸(シャフト)40の内側との間をシールする。シール部42は、膨張機38とロータ52とが一体となった回転軸40と作動流体の入口配管34とを軸シールで圧力遮断する。なお、シール部42は、Oリング状などの円環状であるとする。
【0023】
第1の流路44は、入口配管34に連通し、回転軸40に設けられる。第1の流路44は、例えば回転軸40の中心軸に沿って形成される。そして、第1の流路44は、入口配管34の流路に連通する。第1の流路44は、膨張機38の流体機器62を回転させる作動流体を外装ケース32の膨張機38の膨張機用筐体64内に導入する。
【0024】
第2の流路46は、外装ケース32内に設けられる。第2の流路46は、外装ケース32の例えば膨張機38の膨張機用筐体64の外側と発電機36との間、発電機36の外側等に通される。第2の流路46は、入口配管34、回転軸40の第1の流路44、膨張機38を通した作動流体を、発電機36の外側に導く。
【0025】
外装ケース32には作動流体の出口配管48が接続される。出口配管48は膨張機38を通過し、外装ケース32内の第2の流路46から作動流体を外装ケース32の外側に流出させる配管である。すなわち、出口配管48は、第2の流路46に連通する。出口配管48は、発電機36のステータ54の外側に設けられる。
【0026】
凝縮器18は、排熱回収アセンブリ16を通過し、循環通路20を流れる作動流体を冷却する。凝縮器18は、例えば、凝縮器18に流入した作動流体を凝縮器18内の水により冷却する。
【0027】
次に、本実施形態に係る排熱回収システム10の作用について説明する。
【0028】
ポンプ12は、液体の作動流体を、作動流体の循環通路20を介して熱交換器14、排熱回収アセンブリ16、凝縮器18の順に搬送する。
【0029】
ポンプ12により熱交換器14に向けて送られる液体の作動流体は、例えば内燃機関3を循環する冷却水との熱交換により熱交換器14で加熱され、液体及び気体の気液二相の作動流体に相変化する。熱交換器14から排出された気液二相の作動流体は、排熱回収アセンブリ16の入口配管34から外装ケース32内に導入される。このときの作動流体は、高温高圧である。
【0030】
高温高圧の作動流体は、入口配管34に連通する第1の流路44を通って、膨張機38の流体機器62に流入する。このとき、作動流体は、膨張機38の流体機器62に流入する前で、膨張機38を駆動する前に、発電機36のロータ52の中心軸に沿って通る。このため、作動流体の一部の熱は、回転軸40を通して発電機36に熱伝達しようとし、発電機36の温度を上昇させ得る。
【0031】
そして、高温高圧の作動流体は、膨張機38の膨張機用筐体64内で膨張し、膨張機38の流体機器62及び流体機器62に固定される回転軸40を回転させる。膨張機38の回転軸40は、発電機36のロータ52の回転軸40でもあるため、回転軸40の回転によりロータ52がステータ54に対して回転し、発電機36で発電される。このとき、作動流体は、その圧力及び温度が膨張機38の膨張機用筐体64内で低下する。すなわち、作動流体は、膨張機38を通る前に比べて、低温低圧となる。
【0032】
発電機36で発電した電力は例えば図示しないバッテリに蓄電されたり、適宜の機器により消費される。
【0033】
シール部42は、入口配管34と、回転軸40及び/又は発電機36のロータ52との間をシールする。このため、シール部42は、入口配管34と、回転軸40及び/又は発電機36のロータ52との間の作動流体の行き来を遮断する。すなわち、シール部42は、膨張機38とロータ52とが一体となった回転軸40と作動流体の入口配管34とを軸シールして圧力遮断する。このため、外装ケース32内の第2の流路46に、直接、高圧の作動流体が流れることを防止する。したがって、外装ケース32の肉厚を、外装ケース32内の第2の流路46に、直接、高圧の作動流体が流れる場合に比べて薄くすることができる。また、入口配管34と発電機36のロータ52との間にシール部42を形成することで、高温の作動流体が入口配管34を流れるときに、入口配管34と発電機36のロータ52とが直接接触する場合に比べて、入口配管34から発電機36のロータ52への熱伝達が抑制される。
【0034】
作動流体は、膨張機38の排出路64aを通して、膨張機用筐体64の外側と外装ケース32との間の第2の流路46に流入する。そして、作動流体は、第2の流路46である、膨張機38の膨張機用筐体64の外側と外装ケース32との間、膨張機38の膨張機用筐体64と発電機36との間、発電機36と外装ケース32との間、を通って、発電機36の外側の出口配管48を通して、外装ケース32から排出される。第2の流路46は、作動流体を、外装ケース32の内部に導入して、行き渡らせる。第2の流路46は、膨張機38を通過した作動流体が、発電機36と熱交換が可能なように、外装ケース32内に設けられる流路である。なお、膨張機38の排出路64aを通した作動流体は、外装ケース32内を充満する。このため、外装ケース32の内壁に対する温度及び圧力は位置によらず一定である。また、外装ケース32の内壁に対する温度及び圧力が位置によって異なっていても、その変動幅は僅かである。
【0035】
作動流体が第2の流路46を通過する際、発電機36の温度が作動流体の温度よりも高い場合、作動流体の液相は発電機36の熱により蒸発し、蒸発する過程で発電機36から気化熱を奪う。これにより、発電機36が冷却される。
【0036】
そして、作動流体は、出口配管48に連通する循環通路20(下流側通路20b)を通して凝縮器18に流入する。凝縮器18に流入した作動流体は、凝縮器18内の水により冷却され、液体の作動流体に相変化する。このように液体となった作動流体は再びポンプ12から液体の作動流体を、作動流体の循環通路20を介して熱交換器14、排熱回収アセンブリ16、凝縮器18の順に搬送する。
【0037】
このように、熱交換器14を通過し、温められた気液二相流の作動流体は、入口配管34、第1の流路44、膨張機38、第2の流路46、及び、出口配管48の順に流通する。
【0038】
以上のように、本実施形態の排熱回収システム10は、高温高圧の気液二相の作動流体を排熱回収アセンブリ16の膨張機38に導入し、発電機36のロータ52をステータ54に対して回転させて、電力を得ることができる。このため、排熱回収アセンブリ16は、循環通路20を通る作動流体を用いて、内燃機関3等の排熱により、電力といったエネルギを得ることができる。
【0039】
また、シール部42により、膨張機38と発電機36のロータ52が一体となった回転軸40と作動流体の入口配管34を軸シールして圧力遮断し、膨張機38内に直接、高温高圧の作動流体を入れる。そして、膨張仕事を終えた低温低圧の作動流体を外装ケース32内を通して、外装ケース32に対して突出する出口配管48から排出することができる。排熱回収アセンブリ16内において、膨張機38を通って低温低圧となった気液二相の作動流体を、外装ケース32内の発電機36の周囲(ロータ52の周囲、及び、ステータ54の周囲)を通すことで、発電機36を冷却することができる。したがって、本実施形態によれば、高温高圧の作動流体で膨張機38を駆動する際に、発電機36に沿って作動流体が通っても、発電機36の温度上昇を抑制し得る、排熱回収アセンブリ16及び排熱回収システム10を提供することができる。
【0040】
本実施形態に係る排熱回収システム10の排熱回収アセンブリ16は、シール部42により、外装ケース32の内壁に、入口配管34に導入される高圧の気液二相の作動流体が直接、圧力を作用させることが防止される。外装ケース32の内壁には、低圧の気液二相の作動流体の圧力が作用するだけである。したがって、外装ケース32を薄くすることができ、外装ケース32を軽量化することができる。また、外装ケース32の外側の大きさを維持することができる。
【0041】
(変形例)
上述した実施形態では、出口配管48が、発電機36のステータ54の外側に設けられ、入口配管34を通す外装ケース32内への作動流体の流入方向と、出口配管48から外装ケース32外への作動流体の流出方向とが直交する。このように、上述した実施形態では、入口配管34を通す外装ケース32内への作動流体の流入方向と、出口配管48から外装ケース32外への作動流体の流出方向とが交差する例について説明した。
【0042】
図4に示すように、出口配管48は、入口配管34に隣接する位置に設けられることも好適である。
図4に示す例では、入口配管34を通す外装ケース32内への作動流体の流入方向は、出口配管48から外装ケース32外への作動流体の流出方向に沿う。本実施形態では、入口配管34と出口配管48とが互いに平行に設けられる。すなわち、出口配管48は、作動流体が発電機36のステータ54の外側を経由した後の下流側に設けられる。このため、より確実に、発電機36の周囲に低温低圧の作動流体を外装ケース32内に行きわたらせ、発電機36を冷却することができる。
【0043】
したがって、出口配管48の位置は、例えば、第2の流路46を通る低温低圧の作動流体によって、発電機36を冷却することができれば、外装ケース32のうち、発電機36の外側や、入口配管34に隣接する位置など、適宜の位置に形成される。また、上述したように、膨張機38の排出路64aを通した作動流体は、外装ケース32を充満する。このため、外装ケース32の内壁に対する温度及び圧力は位置によらず一定であるか、また、位置によって異なっていても、その変動幅は僅かである。このため、出口配管48の位置は、膨張機38の外側にあってもよい。すなわち、出口配管48は、外装ケース32のうち、発電機36の外方又は膨張機38の外方に設けられる。このように、外装ケース32に設けられる出口配管48の位置に自由度がある。このため、本実施形態に係る排熱回収アセンブリ16を用いる場合、良好な車両1の設計等に寄与し得る。
【0044】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0045】
10…排熱回収システム、12…ポンプ、14…熱交換器、16…排熱回収アセンブリ、18…凝縮器、20…循環通路、20a…上流側管路、20b…下流側管路、32…外装ケース、34…入口配管、36…発電機、38…膨張機、40…回転軸、42…シール部、44…第1の流路、46…第2の流路、48…出口配管、52…ロータ、54…ステータ、62…流体機器、64…膨張機用筐体。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装ケースと、
前記外装ケースに設けられ、前記外装ケースの外側から前記外装ケース内に作動流体を流入させる入口配管と、
前記外装ケース内に設けられ、前記入口配管が挿通され前記入口配管の外側に対して回転可能なロータと、前記ロータの外側に設けられ前記外装ケースに固定されるステータとを有する発電機と、
前記外装ケース内で、前記発電機に隣接して設けられる膨張機と、
前記外装ケース内に設けられ、前記ロータ及び前記膨張機の回転軸として前記ロータ及び前記膨張機が固定されるシャフトと、
前記入口配管と前記シャフト及び/又は前記発電機の前記ロータとの間を軸シールするシール部と、
前記シャフトに設けられ、前記膨張機を回転させる前記作動流体を前記外装ケース内の前記膨張機に導入する第1の流路と、
前記外装ケース内に設けられ、前記シャフトの前記第1の流路及び前記膨張機を通した前記作動流体を、前記外装ケース内に導入する第2の流路と、
前記外装ケースに設けられ、前記外装ケースの前記第2の流路から前記作動流体を前記外装ケースの外側に流出させる出口配管と、
を有する、排熱回収アセンブリ。
【請求項2】
前記シャフトは、前記ロータと前記膨張機とを連結し、
前記シール部は、前記入口配管の外側と前記シャフトの内側との間をシールする、請求項1に記載の排熱回収アセンブリ。
【請求項3】
前記第2の流路は、前記シャフトの前記第1の流路及び前記膨張機を通した前記作動流体を、前記外装ケース内に充満させる、請求項1又は請求項2に記載の排熱回収アセンブリ。
【請求項4】
前記第2の流路は、前記シャフトの前記第1の流路及び前記膨張機を通した前記作動流体が、前記発電機と熱交換が可能なように、前記外装ケース内に設けられる流路である、請求項1又は請求項2に排熱回収アセンブリ。
【請求項5】
前記出口配管は、前記発電機の外方又は前記膨張機の外方に設けられる、請求項1又は請求項2に記載の排熱回収アセンブリ。
【請求項6】
前記入口配管を通す前記外装ケース内への前記作動流体の流入方向と、前記出口配管から前記外装ケース外への前記作動流体の流出方向とが交差する、請求項1又は請求項2に記載の排熱回収アセンブリ。
【請求項7】
前記入口配管を通す前記外装ケース内への前記作動流体の流入方向は、前記出口配管から前記外装ケース外への前記作動流体の流出方向に沿う、請求項1又は請求項2に記載の排熱回収アセンブリ。
【請求項8】
請求項1又は請求項2に記載の排熱回収アセンブリと、
前記作動流体を前記排熱回収アセンブリに向けて送るポンプと、
前記ポンプと前記排熱回収アセンブリとの間に設けられ、前記作動流体を加熱する熱交換器と、
前記排熱回収アセンブリの前記入口配管に連通し、前記熱交換器を通して送られる前記作動流体を前記入口配管に流入させる上流側管路と、
前記排熱回収アセンブリの前記出口配管に連通し、前記排熱回収アセンブリの前記第2の流路を通過した前記作動流体を前記出口配管から流出させる下流側管路と、
前記排熱回収アセンブリと前記ポンプとの間に設けられ、前記作動流体を冷却する凝縮器と
を有する、排熱回収システム。
【請求項9】
請求項8に記載の排熱回収システムと
前記熱交換器で熱交換して冷却される内燃機関と
を有する車両。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本発明の一態様に係る排熱回収アセンブリは、外装ケースと、前記外装ケースに設けられ、前記外装ケースの外側から前記外装ケース内に作動流体を流入させる入口配管と、前記外装ケース内に設けられ、前記入口配管が挿通され前記入口配管の外側に対して回転可能なロータと、前記ロータの外側に設けられ前記外装ケースに固定されるステータとを有する発電機と、前記外装ケース内で、前記発電機に隣接して設けられる膨張機と、前記外装ケース内に設けられ、前記ロータ及び前記膨張機の回転軸として前記ロータ及び前記膨張機が固定されるシャフトと、前記入口配管と前記シャフト及び/又は前記発電機の前記ロータとの間を軸シールするシール部と、前記シャフトに設けられ、前記膨張機を回転させる前記作動流体を前記外装ケース内の前記膨張機に導入する第1の流路と、前記外装ケース内に設けられ、前記シャフトの前記第1の流路及び前記膨張機を通した前記作動流体を、前記外装ケース内に充満させる第2の流路と、前記外装ケースに設けられ、前記外装ケースの前記第2の流路から前記作動流体を前記外装ケースの外側に流出させる出口配管と、を有する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0044
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0044】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
以下、この出願の特許出願時の特許請求の範囲を付記する。
[付記1]
外装ケースと、
前記外装ケースに設けられ、前記外装ケースの外側から前記外装ケース内に作動流体を流入させる入口配管と、
前記外装ケース内に設けられ、前記入口配管の外側を回転可能なロータと、前記ロータの外側に設けられ前記外装ケースに固定されるステータとを有する発電機と、
前記外装ケース内で、前記発電機に隣接して設けられる膨張機と、
前記外装ケース内に設けられ、前記ロータ及び前記膨張機の回転軸として前記ロータ及び前記膨張機が固定されるシャフトと、
前記シャフトと前記入口配管との間を軸シールするシール部と、
前記シャフトに設けられ、前記膨張機を回転させる作動流体を前記外装ケース内の前記膨張機に導入する第1の流路と、
前記外装ケース内に設けられ、前記シャフトの前記第1の流路及び前記膨張機を通した前記作動流体を、前記外装ケース内に導入する第2の流路と、
前記外装ケースに設けられ、前記外装ケースの前記第2の流路から前記作動流体を前記外装ケースの外側に流出させる出口配管と、
を有する、排熱回収アセンブリ。
[付記2]
前記シャフトは、前記ロータと前記膨張機とを連結し、
前記シール部は、前記入口配管の外側と前記シャフトの内側との間をシールする、付記1に記載の排熱回収アセンブリ。
[付記3]
前記第2の流路は、前記シャフトの前記第1の流路及び前記膨張機を通した前記作動流体を、前記外装ケース内に充満させる、付記1又は付記2に記載の排熱回収アセンブリ。
[付記4]
前記第2の流路は、前記シャフトの前記第1の流路及び前記膨張機を通した前記作動流体が、前記発電機と熱交換が可能なように、前記外装ケース内に設けられる流路である、付記1又は付記2に排熱回収アセンブリ。
[付記5]
前記出口配管は、前記発電機の外方又は前記膨張機の外方に設けられる、付記1又は付記2に記載の排熱回収アセンブリ。
[付記6]
前記入口配管を通す前記外装ケース内への前記作動流体の流入方向と、前記出口配管から前記外装ケース外への前記作動流体の流出方向とが交差する、付記1又は付記2に記載の排熱回収アセンブリ。
[付記7]
前記入口配管を通す前記外装ケース内への前記作動流体の流入方向は、前記出口配管から前記外装ケース外への前記作動流体の流出方向に沿う、付記1又は付記2に記載の排熱回収アセンブリ。
[付記8]
付記1又は付記2に記載の排熱回収アセンブリと、
前記作動流体を前記排熱回収アセンブリに向けて送るポンプと、
前記ポンプと前記排熱回収アセンブリとの間に設けられ、前記作動流体を加熱する熱交換器と、
前記排熱回収アセンブリの前記入口配管に連通し、前記熱交換器を通して送られる前記作動流体を前記入口配管に流入させる上流側管路と、
前記排熱回収アセンブリの前記出口配管に連通し、前記排熱回収アセンブリの前記第2の流路を通過した前記作動流体を前記出口配管から流出させる下流側管路と、
前記排熱回収アセンブリと前記ポンプとの間に設けられ、前記作動流体を冷却する凝縮器と
を有する、排熱回収システム。
[付記9]
付記8に記載の排熱回収システムと
前記熱交換器で熱交換して冷却される内燃機関と
を有する車両。