(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136089
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】ロボットおよびロボットシステム
(51)【国際特許分類】
B25J 9/06 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
B25J9/06 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047063
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100173428
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】田村 与作
(72)【発明者】
【氏名】中村 隆行
(72)【発明者】
【氏名】矢野 一久
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707AS06
3C707AS14
3C707BS15
3C707CV07
3C707CW07
3C707CY29
3C707CY34
3C707DS01
3C707HS27
3C707HT20
3C707KV01
(57)【要約】
【課題】第2アームが回転した際の空気抵抗を低減することができ、またロボットアームの審美性を向上することができるロボットおよびロボットシステムを提供すること。
【解決手段】第2アームは、アームベースと、アームベースの上部を覆うようにアームベースに装着されるアームカバーとを有する。アームカバーは、アームベースの上部と係合し、上方に行くに従って第3回転軸との距離が大きくなるよう傾斜する第1傾斜部と、第1傾斜部より上方に設けられ、上方に行くに従って第3回転軸との距離が小さくなるよう傾斜する第2傾斜部とを有し、アームベースは、第1傾斜部と連続するよう傾斜する第3傾斜部を有する。アームベースとアームカバーとの境界は、第1傾斜部と第3傾斜部との間にある。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、
前記基台に対し、第1回転軸の回りに回転可能に接続される第1アームと、
前記第1アームに対し、前記第1回転軸と平行な第2回転軸の回りに回転可能に接続され、アームベースと、前記アームベースの上部を覆うアームカバーと、を有する第2アームと、
前記第2アームに対し、前記第2回転軸と平行な第3回転軸の回りに回転可能に、かつ前記第3回転軸の軸方向に沿って移動可能に接続される第3アームと、を備え、
前記アームカバーは、
前記アームベースの上部と係合し、上方に行くに従って前記第3回転軸との距離が大きくなるよう傾斜する第1傾斜部と、
前記第1傾斜部より上方に設けられ、上方に行くに従って前記第3回転軸との距離が小さくなるよう傾斜する第2傾斜部と、を有し、
前記アームベースは、前記第1傾斜部と連続するよう傾斜する第3傾斜部を有し、
前記アームベースと前記アームカバーとの境界は、前記第1傾斜部と前記第3傾斜部との間にあることを特徴とするロボット。
【請求項2】
前記アームベースは、前記第3傾斜部の上部に設けられ、前記第1傾斜部の下端部が係合される凹部を有する請求項1に記載のロボット。
【請求項3】
前記凹部は、上方および側方に開放している請求項2に記載のロボット。
【請求項4】
前記凹部は、水平方向に沿った底面を有し、
前記第1傾斜部は、前記底面と当接する水平方向に沿った下端面を有する請求項2に記載のロボット。
【請求項5】
前記第1傾斜部、前記第2傾斜部、および前記第3傾斜部は、前記第3回転軸の外周部に対応する部分に設けられている請求項1ないし4のいずれか1項に記載のロボット。
【請求項6】
前記第1傾斜部は、前記アームカバーと前記アームベースとを固定する固定部材が挿通される挿通孔を有する請求項1ないし4のいずれか1項に記載のロボット。
【請求項7】
前記第1傾斜部は、前記第3傾斜部よりも壁厚が薄い請求項1ないし4のいずれか1項に記載のロボット。
【請求項8】
前記第1傾斜部と前記第2傾斜部との境界は、前記第3回転軸から遠ざかる方向に突出しており、
前記第1傾斜部と前記第2傾斜部とのなす角度の平均値は、90°以上170°以下であり、
前記第1傾斜部の鉛直方向に対する傾斜角度と、前記第3傾斜部の鉛直方向に対する傾斜角度の差の平均値が、±5°以内である請求項5に記載のロボット。
【請求項9】
基台と、
前記基台に対し、第1回転軸の回りに回転可能に接続される第1アームと、
前記第1アームに対し、前記第1回転軸と平行な第2回転軸の回りに回転可能に接続され、アームベースと、前記アームベースの上部を覆うアームカバーと、を有する第2アームと、
前記第2アームに対し、前記第2回転軸と平行な第3回転軸の回りに回転可能に、かつ前記第3回転軸の軸方向に沿って移動可能に接続される第3アームと、を備えるロボットと、
前記ロボットの作動を制御するロボット制御装置と、を備え、
前記アームカバーは、
前記アームベースの上部と係合し、上方に行くに従って前記第3回転軸との距離が大きくなるよう傾斜する第1傾斜部と、
前記第1傾斜部より上方に設けられ、上方に行くに従って前記第3回転軸との距離が小さくなるよう傾斜する第2傾斜部と、を有し、
前記アームベースは、前記第1傾斜部と連続するよう傾斜する第3傾斜部を有し、
前記アームベースと前記アームカバーとの境界は、前記第1傾斜部と前記第3傾斜部との間にあることを特徴とするロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットおよびロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種のロボットを用いてワークに対し搬送、加工、組立および検査等の所望の作業を行い、作業の迅速化、効率化が図られている。
【0003】
特許文献1に記載されているロボットは、基台と、基台に対し、第1回転軸回りに回転可能に接続される第1アームと、第1アームに対し、第1回転軸と平行な第2回転軸回りに回転可能に接続される第2アームと、第2アームに支持される作業ヘッドと、を備える。また、第2アームは、アームベースと、アームベース上に設置され、モーター、減速機等で構成される駆動部と、アームベースに対し着脱可能に装着されるアームカバーと、を有する。アームカバーは、アームベース上に設置された駆動部やその他の駆動系を覆うように、アームベースに装着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されているロボットでは、アームカバーの側壁およびアームベースの側壁が鉛直方向に沿った面であるため、第2アームの回転時に空気抵抗を受けやすい。このため、例えば、第2アームが空気抵抗を受けて回転速度が減速してしまう等の悪影響が生じる。また、空気抵抗を低減するためにアームカバーの側壁およびアームベースの側壁の境界部を突出させてしまうと外観においてアームカバーとアームベースとの一体感が損なわれ、審美性が低下してしまう。このように、従来のロボットは、第2アームの回転時における空気抵抗が大きいことによる悪影響が生じ、また、審美性に乏しい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のロボットは、基台と、
前記基台に対し、第1回転軸の回りに回転可能に接続される第1アームと、
前記第1アームに対し、前記第1回転軸と平行な第2回転軸の回りに回転可能に接続され、アームベースと、前記アームベースの上部を覆うアームカバーと、を有する第2アームと、
前記第2アームに対し、前記第2回転軸と平行な第3回転軸の回りに回転可能に、かつ前記第3回転軸の軸方向に沿って移動可能に接続される第3アームと、を備え、
前記アームカバーは、
前記アームベースの上部と係合し、上方に行くに従って前記第3回転軸との距離が大きくなるよう傾斜する第1傾斜部と、
前記第1傾斜部より上方に設けられ、上方に行くに従って前記第3回転軸との距離が小さくなるよう傾斜する第2傾斜部と、を有し、
前記アームベースは、前記第1傾斜部と連続するよう傾斜する第3傾斜部を有し、
前記アームベースと前記アームカバーとの境界は、前記第1傾斜部と前記第3傾斜部との間にあることを特徴とする。
【0007】
本発明のロボットシステムは、基台と、
前記基台に対し、第1回転軸の回りに回転可能に接続される第1アームと、
前記第1アームに対し、前記第1回転軸と平行な第2回転軸の回りに回転可能に接続され、アームベースと、前記アームベースの上部を覆うアームカバーと、を有する第2アームと、
前記第2アームに対し、前記第2回転軸と平行な第3回転軸の回りに回転可能に、かつ前記第3回転軸の軸方向に沿って移動可能に接続される第3アームと、を備えるロボットと、
前記ロボットの作動を制御するロボット制御装置と、を備え、
前記アームカバーは、
前記アームベースの上部と係合し、上方に行くに従って前記第3回転軸との距離が大きくなるよう傾斜する第1傾斜部と、
前記第1傾斜部より上方に設けられ、上方に行くに従って前記第3回転軸との距離が小さくなるよう傾斜する第2傾斜部と、を有し、
前記アームベースは、前記第1傾斜部と連続するよう傾斜する第3傾斜部を有し、
前記アームベースと前記アームカバーとの境界は、前記第1傾斜部と前記第3傾斜部との間にあることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明のロボットを備えるロボットシステムの実施形態に係る全体図である。
【
図4】第1アームおよび第2アームの接続部を鉛直下方から見た図である。
【
図5】
図4中B-B線断面図(部分拡大図)である。
【
図6】アームベースからアームカバーを離脱させる手順を説明するための図であって、第2アームを上方から見た図である。
【
図7】アームベースからアームカバーを離脱させる手順を説明するための図であって、第2アームを上方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のロボットおよびロボットシステムを添付図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0010】
<第1実施形態>
図1は、本発明のロボットを備えるロボットシステムの実施形態に係る全体図である。
図2は、
図1中A-A線断面図である。
図3は、
図2の部分拡大図である。
図4は、第1アームおよび第2アームの接続部を鉛直下方から見た図である。
図5は、
図4中B-B線断面図(部分拡大図)である。
図6は、アームベースからアームカバーを離脱させる手順を説明するための図であって、第2アームを上方から見た図である。
図7は、アームベースからアームカバーを離脱させる手順を説明するための図であって、第2アームを上方から見た図である。
図8は、第2アームを上方から見た図である。
【0011】
図1中では、互いに直交する3軸であるX軸、Y軸およびZ軸が設定されており、
図2~
図8中にもそれぞれ同様の3軸が示されている。3軸のうちZ軸方向は鉛直方向を示し、X-Y平面は水平面を示す。また、3軸において、矢印の示す方向を「プラス側」、その反対方向を「マイナス側」と言う。
【0012】
図1、
図2、
図3および
図5中の上下方向は、鉛直方向と一致している。
図1、
図2、
図3および
図5中の上側を「上」、「上部」または「上方」、下側を「下」、「下部」または「下方」とも言う。第1回転軸J1、第2回転軸J2および第3回転軸J3は、いずれも、鉛直方向、すなわちZ軸方向に延びる軸である。ロボットアーム22、第1アーム23および第2アーム24等については、
図1、
図6および
図7中の右側を「基端」または「基端部」、左側を「先端」または「先端部」とも言う。
【0013】
本明細書において、「鉛直」とは、鉛直と一致している場合のみならず、鉛直に対して若干、例えば±10°以内傾斜している場合も含む意味である。また、本明細書において、「平行」とは、2つの対象が平行と一致している場合のみならず、平行から若干、例えば±10°以内傾斜している場合も含む意味である。
【0014】
図1に示すロボットシステム1は、ロボット2と、ロボット2の駆動を制御するロボット制御装置9と、を有している。
【0015】
本実施形態におけるロボット2は、スカラロボットであり、例えば、電子部品、機械部品等のワークの保持、搬送、加工、組立および検査等の各作業(以下これらを総称して単に「作業」と言う。)で用いられる。ただし、ロボット2の用途は、特に限定されない。
【0016】
図1に示すように、ロボット2は、基台21と、基台21に対し回転可能に接続されているロボットアーム22と、を有している。基台21は、水平面と平行な床面100に固定されている。基台21の内部には、ロボット制御装置9が設置されている。なお、図示の構成と異なり、ロボット制御装置9は、基台21の外部に設置されていてもよい。
【0017】
ロボットアーム22は、基端部が基台21に接続され、基台21に対して鉛直方向に沿う第1回転軸J1回りに回転する第1アーム23と、基端部が第1アーム23の先端部231に接続され、第1アーム23に対して鉛直方向に沿う第2回転軸J2回りに回転する第2アーム24と、を有している。なお、先端部231の端面は、被覆部42の先端部424と上下方向に重なる位置に設けられる。
【0018】
第2アーム24の先端部には作業ヘッド25が設けられている。第2アーム24は、第2回転軸J2から作業ヘッド25まで直線状、つまりX軸方向に延在する形状である。
【0019】
作業ヘッド25は、第2アーム24の先端部に、互いに同軸で配置されているスプラインナット251およびボールネジナット252と、スプラインナット251およびボールネジナット252に挿通されているスプラインシャフト253と、を有している。スプラインシャフト253は、第2アーム24に対して、その中心軸であり、かつ鉛直方向に沿う第3回転軸J3回りに回転可能であるとともに、第3回転軸J3に沿って上下方向に移動可能である。
【0020】
換言すれば、作業ヘッド25は、第2アーム24に対し、第2回転軸J2と平行な第3回転軸J3回りに回転可能に、かつ第3回転軸J3の軸方向に沿って移動可能に接続される第3アームである。
【0021】
基台21と第2アーム24とは、例えばケーブルのような可撓性を有する配管10によって接続されている。配管10の基端部は、基台21の上面210を貫通して基台21内に位置している。配管10の先端部は、第2アーム24の上面である天面41Aに形成された後述する幅広開口部412を貫通してアームカバー4内に位置している。
【0022】
配管10内には、基台21の内部から第2アーム24の内部に延びる電力供給線や、信号線等が収納されている。すなわち、これら電力供給線や信号線等は、絶縁被覆されたコードとしてまたはコードを束ねたケーブルとして構成されている。このようなコードやケーブルにより、基台21の内部に設置されたロボット制御装置9と、アームカバー4の内部に位置する第2駆動部28、第1駆動機構291および第2駆動機構292とがそれぞれ電気的に接続される。
【0023】
配管10は、可撓性を有しているため、第1アーム23の回転および第2アーム24の回転によるロボットアーム22の姿勢の変化に十分に追従することができる。
【0024】
スプラインシャフト253の下端部26には、図示しないエンドエフェクターが装着される。エンドエフェクターは、着脱自在であり目的の作業に適したものが適宜選択される。エンドエフェクターとしては、例えば、組立または加工の対象物であるワークを把持するハンド、チャック、孔あけ、研削、研磨等を行う工具、スプレーガン等の塗装具等が挙げられる。
【0025】
ロボット2は、基台21と第1アーム23とを連結し、基台21に対して第1アーム23を第1回転軸J1回りに回転させる第1駆動部27と、第1アーム23と第2アーム24とを連結し、第1アーム23に対して第2アーム24を第2回転軸J2回りに回転させる関節部としての第2駆動部28と、を有している。
【0026】
第1アーム23は、第1駆動部27によって、基台21の上面210に対し、離間した状態で基台21に接続されている。第2アーム24は、第2駆動部28によって、第1アーム23の上面230に対し、所定距離離間した状態で第1アーム23に接続されている。第2アーム24の被覆部42の下端423と上面230との離間距離D3は、特に限定されないが、後述するアームカバー4の離脱操作の際に隙間Gの間に右手HRまたは左手HLの指Fが入ることができる程度とするのが好ましい。
【0027】
また、ロボット2は、スプラインナット251を回転させてスプラインシャフト253を第3回転軸J3回りに回転させる第1駆動機構291と、ボールネジナット252を回転させてスプラインシャフト253を第3回転軸J3に沿った方向に昇降させる第2駆動機構292と、を有する。第2駆動機構292は、第1駆動機構291の下部に位置している。このように配置することにより、スプラインシャフト253の水平方向の振動を抑えることができる。
【0028】
第1駆動機構291の作動によりスプラインシャフト253が第3回転軸J3回りに所定方向に回転し、これに伴い下端部26が同方向に回転する。第2駆動機構292の作動によりスプラインシャフト253が第3回転軸J3の軸方向に移動し、これに伴い下端部26が同方向に移動、すなわち上昇または下降する。なお、作業ヘッド25は、スプラインナット251および第1駆動機構291のみを有する構成としてもよい。その場合、作業ヘッド25は、第2アーム24に対し、第2回転軸J2と平行な第3回転軸J3回りに回転可能となる。また、作業ヘッド25は、ボールネジナット252および第2駆動機構292のみを有する構成としてもよい。その場合、作業ヘッド25は、第2アーム24に対し、第3回転軸J3の軸方向に沿って移動可能となる。
【0029】
第1駆動部27、第2駆動部28、第1駆動機構291および第2駆動機構292は、それぞれ、図示しないモーター、減速機、エンコーダー等を有する。各モーターおよび各エンコーダーは、それぞれ、ロボット制御装置9と電気的に接続されている。各エンコーダーは、対応するモーターの回転位置情報を検出し、ロボット制御装置9に送信する。ロボット制御装置9は、各エンコーダーから受信した各モーターの回転位置情報に基づいて、図示しないモータードライバーを介して各モーターへの通電条件を制御する。これにより、ロボットアーム22が作動し、すなわち第1アーム23、第2アーム24およびスプラインシャフト253がそれぞれ作動し、予め定められたプログラムに従いロボットアーム22の姿勢が経時的に変化して、所望の作業を行うことができる。
【0030】
図1に示すように、隙間GのZ軸方向の距離、すなわち、第1アーム23と第2アーム24との離間距離D3と、第1アーム23のZ軸方向の長さD4との比D3/D4は、特に限定されないが、0.1以上0.7以下であることが好ましく、0.2以上0.5以下であることがより好ましい。これにより、離間距離D3を十分に確保することができ、指Fを入れやすくすることができるとともに、第1アーム23の外観形状に占める割合を適正化することにより、見る者に安定感を与えることができ、審美性を高めることができる。
【0031】
同様の観点から、第2アーム24のZ軸方向の長さD1およびD2、すなわち、後述するD1+D2と、離間距離D3との比D3/D1+D2は、特に限定されないが、0.09以上0.6以下であることが好ましく、0.2以上0.4以下であることがより好ましい。
【0032】
次に、第2アーム24の構造について説明する。
図1に示すように、第2アーム24は、第2アーム24の基本骨格をなすアームベース3と、第2アーム24の外観形状の大半を担うアームカバー4と、を備える。アームカバー4は、第2アーム24の上部を覆い、保護するケーシングとして機能する。これにより、第2アーム24の後述する搭載物は、アームカバー4により覆われ、保護される。
【0033】
アームベース3は、剛体で構成され、作業ヘッド25や第2駆動部28、第1駆動機構291および第2駆動機構292等、第2アーム24に搭載される搭載物の各部を支持するものである。アームベース3は、主に、Z軸方向に所定の厚さを有し、直線状、つまりX軸方向に延在する長手形状をなす板状部材で構成されている。また、アームベース3の長手方向と直交する方向、つまりY軸方向のプラス側およびマイナス側にある部分を、それぞれ側部または側面と言う。アームベース3の厚さは、アームベース3の側面30のZ軸方向の長さに等しい。
【0034】
なお、アームベース3は、中空部と、該中空部を複数の空間に仕切るようなリブとを有し、全体として板状をなす構成のものでもよい。これにより、アームベース3は、十分な強度の確保と軽量化とを両立することができる。このような構成のアームベース3では、アームベース3の外周に沿って形成された側壁の外面に側面30が形成される。
【0035】
アームベース3の構成材料としては、例えば、各種金属材料、各種樹脂材料、特に硬質樹脂材料、各種セラミックス等が挙げられ、これらを任意に組み合わせた複合材料であってもよい。このうち、金属材料としては、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム等が挙げられる。
【0036】
アームベース3は、第2駆動部28が設置、固定される設置部31と、作業ヘッド25が設置、固定される設置部32と、を有する。設置部31は、第2回転軸J2の外周部に位置し、設置部32は、第3回転軸J3の外周部に位置する。
【0037】
設置部31は、アームベース3の基端部に設けられ、アームベース3の厚さ方向に貫通する貫通孔で構成されている。設置部31の内周面には、第2駆動部28の図示しない減速機の出力軸の外周面が固定されている。
【0038】
設置部32は、アームベース3の先端部に設けられ、アームベース3の厚さ方向に貫通する貫通孔で構成されている。設置部32の内周面には、作業ヘッド25のスプラインシャフト253を支持する図示しないベアリングの外周面が固定されている。
【0039】
アームカバー4は、アームベース3の上部を覆い、作業ヘッド25や第2駆動部28等、第2アーム24の内部に搭載される搭載物の各部を保護する機能を有する。アームカバー4は、アームベース3に対して着脱可能に装着される。本実施形態では、アームカバー4をアームベース3に装着した際、固定部材としてのネジ5および6を介して固定される。このことに関しては、後に詳述する。また、アームカバー4がアームベース3に装着される際に、アームベース3およびアームカバー4は係合、すなわち、互いに噛み合ったり、一方が他方に引っ掛かったりすることで、相対的に動かないようになっている。また、アームベース3とアームカバー4との間には、
図2に示すように、境界部241が形成される。境界部241は、第2アーム24の外観に現れ、アームベース3およびアームカバー4という2つの部品の間に形成される継ぎ目である。
【0040】
アームカバー4は、アームカバー本体41と、アームベース3の側面30の一部を覆う被覆部42と、を有する。被覆部42は、アームカバー4の基端部、すなわち第2回転軸J2の外周に対応する位置に設けられている。
【0041】
アームカバー本体41は、筐体で構成され、アームベース3の上部を覆うものである。アームカバー本体41は、例えば、樹脂材料を所望の立体形状に成形した板材で構成される。このアームカバー本体は、力を加えると若干変形する程度の弾性を有するのが好ましい。また、アームカバー本体41は、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム等の金属材料による板材を所望の立体形状に成形したものでもよい。
【0042】
図1、
図6および
図7に示すように、アームカバー本体41は、天面41Aおよび基端面41Bを有し、天面41Aおよび基端面41Bには、それぞれ、スリット411が形成されている。スリット411は、天面41Aにおいては、X軸方向に沿って形成されており、アームカバー本体41のX軸方向中央部付近から基端側まで形成されている。特に、第2アーム24を鉛直方向に沿って平面視、すなわちZ軸方向に沿ってプラス側からマイナス側に見ると、スリット411の先端側の端部は、第1アーム23の先端部231よりもX軸方向マイナス側に形成されている。また、スリット411は、基端面41Bにおいては、Z軸方向に沿って上端から下端まで形成されている。また、スリット411は、配管10が天面41Aを貫通する部分から基端面41BのZ軸方向中央部付近にわたって形成され、スリットの幅が広くなっている幅広開口部412を有する。アームカバー4をアームベース3から離脱させる際、配管10が幅広開口部412の長手方向に沿って移動する。従って、幅広開口部412の幅、すなわちY軸方向の長さは、配管10の外径にほぼ等しい値となっている。
【0043】
このようなスリット411および幅広開口部412は、アームカバー4のアームベース3への着脱時に、アームカバー4に外力を加えてアームカバー4を変形させ、着脱の操作を容易に行うことができるようにするためのものである。
【0044】
なお、スリット411および幅広開口部412の形状や配置パターンは、図示の構成に限定されない。例えば、
図8に示すように、スリット411を幅広開口部412よりも幅広に形成し、配管10と接続する配管コネクター413、第1コネクター414、第2コネクター415、およびネジ416が設けられた凹部417を、スリット411から露出するように設けてもよい。このとき、第2アーム24は、凹部417の底部を構成する底部構成部材を有するとともに、天面41Aは、凹部417の側壁部を構成する。配管コネクター413、第1コネクター414、第2コネクター415、およびネジ416は、それぞれ、凹部417の底部に取り付けられる。
【0045】
第1コネクター414は、例えば、第2アーム24やエンドエフェクターに装着されるカメラ用のコネクター等が挙げられる。また、第2コネクター415は、例えば、エンドエフェクターで用いる圧縮空気を供給するためのコネクター等が挙げられる。第1コネクター414および第2コネクター415は、配管コネクター413よりも第2アーム24の先端側であって、スリット411の先端側の端部よりも第2アーム24の基端側に配置される。これにより、第2アーム24が回転する際に、第1コネクター414および第2コネクター415と接続する配線等と配管コネクター413と接続する配管10とが捻じれて干渉してしまうことを防止できる。
【0046】
また、第1コネクター414は、第2駆動部28よりも第2アーム24の先端側の位置に設けられる。これにより、スペースに余裕のある位置に第1コネクター414の配線を配置することができ、配線作業が容易となる。また、第1コネクター414は、第2コネクター415よりも大きく、先端部231の端面と上下方向に重なる位置に設けられる。これにより、第2コネクター415よりも大きな第1コネクター414が第1アーム23により支えられているという安定感を見る者に与えることができ、審美性を高めることができる。
【0047】
また、第2コネクター415は、第1コネクター414よりも第2アーム24の先端側に配置される。これにより、配管コネクター413と第1コネクター414との距離よりも、配管コネクター413と第2コネクター415との距離の方が長くなり、第2コネクター415と接続する配線等の屈曲を、第1コネクター414と接続する配線等の屈曲よりも抑えることができる。特に、電線等と比較して圧縮空気用のチューブは屈曲させにくいため、カメラ用のコネクターを第1コネクター414として設け、圧縮空気を供給するためのコネクターを第2コネクター415として設けることが好ましい。
【0048】
ネジ416は、凹部417に4つ設けられており、4つのうち2つは第2アーム24の基端側に配置され、残り2つは第2アーム24の先端側に配置される。第2アーム24の基端側にある2つは、第1傾斜部43と上下方向に重なる位置に配置され、第2アーム24の先端側にある2つは、第1コネクター414と第2コネクター415との間に配置される。4つのネジ416は、いずれも水平に配置されており、天面41Aの上方に板などを取り付ける際には、板を水平に取り付けることができる。
【0049】
被覆部42は、アームカバー本体41から下方に向かって突出して設けられ、アームベース3にアームカバー4を装着した状態(以下単に「装着状態」と言う)では、アームベース3の側面30の一部を覆う。図示の構成では、被覆部42は、アームベース3の側面30のうち、基端側の部分を覆うように、約半周設けられている。換言すれば、被覆部42は、アームベース3の側面30の関節部である第2駆動部28に対応する部分、すなわち第2駆動部28の外周部を覆うように設けられ、作業ヘッド25の設置部32の外周部には設けられていない。これにより、アームカバー4の、第2駆動部28に対応する部分の剛性をより高めることができ、また、第2駆動部28付近への塵、埃等の侵入防止効果も高まり、これらの相乗効果により、第2駆動部28を有効に保護することができる。さらに、ユーザーが周辺機器や配線などを当該部分に設置してしまうのを効果的に抑制することができ、該設置によってロボットアーム22の動作が阻害されるのを防止することができる。
【0050】
図示の構成では、被覆部42は、Y軸方向から見て、第2駆動部28のX軸方向の全域を覆っている。ただし、この構成に限定されず、被覆部42は、Y軸方向から見て、第2駆動部28のX軸方向における一部を覆っていてもよい。被覆部42の先端部424、すなわち、X軸方向マイナス側の端部は、第2回転軸J2方向、すなわち、Y-Z平面に沿って直線状になっている。なお、先端部424は、側面視、すなわちY軸方向に沿って見たときに、上方、すなわちZ軸方向プラス側に行くに従って第2回転軸J2との距離が大きくなるよう傾斜していてもよい。
【0051】
アームベース3の側面30のうち、中央部よりも先端側の部分は、被覆部42で覆われておらず、すなわち被覆部42から露出している。これにより、露出している部分からアームベース3の放熱を行うことができる。以下、側面30のうち被覆部42から露出している部分を第2面30Bと言い、側面30のうち被覆部42で被覆されている部分を第3面30Cと言う。アームベース3のうち、第2面30Bに対応する部分が、露出部34である。
【0052】
図5に示すように、被覆部42の下端423は、アームベース3の厚さ方向の下端である下面33より下側に位置している。すなわち、被覆部42は、アームベース3の下面33を超えて側面30を被覆している。これにより、側面30の被覆の効果がより向上し、塵、埃等の侵入防止効果、すなわちアームカバー4による内部保護効果がより高まる。ただし、この構成に限定されず、被覆部42の下端423は、アームベース3の下面33とZ軸方向の位置が同じであってもよく、またはアームベース3の下面33より上側でかつアームベース3の上端より下側に位置していてもよい。なお、被覆部42の下端423がアームベース3の下面33を超えるか、同じ位置である場合には、アームベース3の下面33が邪魔にならず、指Fを被覆部42の下端423に引っ掛けやすくなるため、離脱操作がしやすい。
【0053】
図1に示すように、アームカバー4の天面41Aとアームカバー本体41の下端(被覆部42との境界部241)までのZ軸方向の距離、すなわち、アームカバー本体41のZ軸方向の長さD1と、側面30のZ軸方向の長さD2との比D2/D1は、特に限定されないが、0.1以上0.8以下であることが好ましく、0.3以上0.6以下であることがより好ましい。これにより、アームカバー本体41より重く強度の高いアームベース3の第2面30Bを十分に見せるとともに、アームベース3よりも軽いアームカバー本体41が第2アーム24の外観形状に占める割合を適正化することにより、見る者に安定感とともに機敏な印象を与えることができ、審美性を高めることができる。
【0054】
なお、本実施形態では、アームカバー4の天面41A、アームカバー本体41の下端、被覆部42の下端423およびアームベース3の下面33は、水平方向に沿っている。ただし、この構成に限定されず、これらは、水平方向に対して傾斜していてもよい。
【0055】
図4に示すように、Z軸方向マイナス側から見て、被覆部42が第2回転軸J2回りに存在している範囲の角度をθ1としたとき、θ1は、特に限定されないが、10°以上300°以下であることが好ましく、45°以上280°以下であることがより好ましく、90°以上270°以下であるのがさらに好ましい。これにより、被覆部42が広範囲にわたって形成され、被覆部42を設置することによる効果、すなわち離脱操作の操作性の向上効果と、アームベース3の搭載物、特に第2駆動部28の保護効果と、を必要かつ十分に発揮することができる。
【0056】
なお、本実施形態では、被覆部42は、角度θ1の範囲内において、周方向に連続的に形成されているが、これに限らず、周方向に沿って複数の被覆部42が断続的または間欠的に形成されていてもよい。
【0057】
図1、
図4および
図5に示すように、被覆部42は、アームカバー4の装着状態で、空隙Sを介してアームベース3の側面30の第3面30Cを覆う部分を有する。また、被覆部42の外周面421は、第2回転軸J2の軸方向に沿った、すなわち、X-Y平面内の任意の軸を法線とする面である。被覆部42は、空隙Sを介して、側面30の第3面30Cを覆っている。これにより、以下の効果を発揮することができる。
【0058】
第1に、アームカバー4を把持し、アームベース3から離脱させる際、
図5に示すように、被覆部42が側面30(第3面30C)から離れているため、指Fがアームベース3に接触し難くなり、指Fを被覆部42に引っ掛けやすくなる。また、被覆部42と側面30との間に手の指Fを挿入し、被覆部42の下端(下端423)に指Fを引っ掛けてもよい。よって、アームカバー4を把持し易く、アームカバー4を持ち上げ易く、アームカバー4のアームベース3からの離脱操作(以下単に「離脱操作」と言う)を容易かつ迅速に行うことができる。
【0059】
第2に、第1駆動部27、第2駆動部28、第1駆動機構291および第2駆動機構292が駆動した際、それらが有する各モーターが発熱し、それらを支持するアームベース3が昇温し、アームベース3の一部は、常温よりも高温、例えば28℃以上70℃以下の温度となることがある。本実施形態のロボット2では、アームベース3は、側面30のうち第3面30Cからも放熱を行うことができ、アームベース3の温度を下げることができる。側面30のうち、被覆部42に覆われていない部分である第2面30Bはもちろんのこと、被覆部42により覆われている部分も、前述したように空隙Sを介して覆われているため、空隙Sを有さない場合に比べより多く放熱を行うことができる。また、空隙Sは、下方に開放しているため、第2アーム24の移動とともに、外部から空気が出入りしやすく、前述した放熱をより効果的に行うことができる。
【0060】
また、図示されていないが、被覆部42は、下方へ向かうに従い側面30(第3面30C)からの離間距離が増大するように傾斜していてもよい。すなわち、被覆部42は、下方へ向かうに従い側面30(第3面30C)から遠ざかるように第2回転軸J2に対して傾斜していてもよい。
【0061】
被覆部42が上記のように傾斜している場合、
図4に示すように、Z軸方向マイナス側から見て、被覆部42が第2回転軸J2回りに存在している範囲の角度をθ2としたとき、θ2は、特に限定されないが、5°以上300°以下であることが好ましく、30°以上270°以下であることがより好ましい。これにより、被覆部42が比較的広範囲にわたって形成され、離脱操作の操作性がより向上する。
【0062】
なお、本実施形態では、被覆部42は、角度θ2の範囲内において、周方向に連続的に形成されているが、これに限らず、周方向に沿って複数の被覆部42が断続的または間欠的に形成されていてもよい。
【0063】
また、θ2をθ1との関係で考察すると、θ2/θ1は、0.05以上1以下であることが好ましく0.2以上0.8以下であることがより好ましく、0.3以上0.6以下であることがさらに好ましい。これにより、被覆部42の存在している範囲を必要かつ十分に確保することができる。
【0064】
θ2/θ1が1未満の場合でも、被覆部42のうち最も基端側、すなわちX軸方向プラス側(例えば、
図4中のスリット411付近の部位)に、被覆部42が形成されていることが好ましい。
【0065】
図1に示すように、アームカバー4は、アームベース3への装着状態で、固定部材であるネジ5および6によってアームベース3に固定される。特に、アームベース3の側面30に固定される。これにより、アームベース3に対しアームカバー4を確実に、安定的に固定することができ、作業中に振動、衝撃、その他の外力等が加わった場合でも、アームカバー4の不本意な脱落等を防止することができる。ネジ5は、被覆部42に形成された図示しない貫通孔およびアームベース3の側面30(第3面30C)に形成されたネジ穴に挿入、螺合することにより、被覆部42をアームベース3に固定する。これにより、アームベース3の側面30(第3面30C)にネジ穴を形成するという簡単な方法でアームカバー4をアームベース3に固定することができる。なお、ネジ5は、アームベース3の下面33より上側であって、被覆部42の先端部424かつ下端423の付近に配置されており、アームカバー4の端部はねじ5によりアームベース3に固定されている。これにより、第2アーム24が動作する際などに、アームカバー4の端部がアームベース3から浮いてしまうことを防止でき、アームカバー4の端部とアームベース3との間に隙間が生じることを抑制できる。結果、第2アーム24内にある第2駆動部28、第1駆動機構291、および第2駆動機構292などから異物が発生しても、異物が第2アーム24の外に出てしまうことを抑制できる。なお、ネジ5は、下端423の付近以外に配置されていてもよい。
【0066】
このようなネジ5によるネジ止めの箇所、すなわち固定箇所は、被覆部42において、1箇所でも複数箇所でもよいが、固定をより確実にするために、複数箇所が好ましい。本実施形態では、ネジ5によるネジ止め箇所は、側面30のうち第3面30CのY軸方向プラス側およびY軸方向マイナス側の計2箇所であるが、これに限定されず、第3面30Cの基端面、すなわちX軸方向プラス側の面に1または2箇所以上形成されていてもよい。
【0067】
また、被覆部42のみをアームベース3にネジ止めする構成であってもよく、アームカバー本体41のみをアームベース3にネジ止めする構成であってもよく、アームカバー本体41および被覆部42の双方をアームベース3にネジ止めする構成であってもよい。
【0068】
また、固定部材として、ネジ5を用いる場合について説明したが、本発明ではこれに限定されず、ネジ5以外の固定部材、例えば、ビス、ボルトおよびナット、フック、クリップ、緊締バンド、磁石等を用いてもよく、あるいは、カシメ、嵌合等の方法で固定してもよい。後述するネジ6による固定部材についても、同様である。
【0069】
アームカバー4は、アームカバー本体41に設けられた第1傾斜部43および第2傾斜部44を有する。また、アームベース3は、第3傾斜部35を有する。これらが形成されていることにより、ロボットアーム22の駆動時、特に、第2アーム24が第1回転軸J1または第2回転軸J2を中心として回転した際(以下単に「回転した際」と言う。)に、第2アーム24が受ける空気抵抗を低減することができる。よって、例えば、第2アーム24の回転速度が不本意に減速してしまうといった、空気抵抗が大きいことによる悪影響を防止することができるとともに、ロボットアーム22の審美性を高めることができる。以下、第1傾斜部43、第2傾斜部44および第3傾斜部35について、詳細に説明する。
【0070】
図1、
図2および
図3に示すように、第1傾斜部43は、アームカバー本体41の被覆部42よりも先端側に位置し、露出部34の上部と係合する部分である。第1傾斜部43は、上方、すなわちZ軸方向プラス側に行くに従って第3回転軸J3との距離が大きくなるよう傾斜している。また、第1傾斜部43は、アームカバー本体41の下端部でかつ被覆部42よりも先端側において、第3回転軸J3の外周部に対応する部分、すなわち設置部32の外周部に対応する部分に設けられている。特に、アームカバー本体41の被覆部42よりも先端側の部分のほぼ全周に形成されている。ただし、この構成に限定されず、第1傾斜部43は、アームカバー本体41の被覆部42よりも先端側において、断続的または間欠的に形成されていてもよい。
【0071】
図2および
図3に示すように、第1傾斜部43は、その外面である第1傾斜面43Aを有する。第1傾斜面43Aは、上方に行くに従って第3回転軸J3との距離が大きくなるよう傾斜する面である。第1傾斜面43Aは、平面、曲面、またはこれらを複合した形状の面で構成することができる。第1傾斜面43Aは、図示の構成に限定されない。第1傾斜面43Aは、図示と異なり、内側(第3回転軸J3に近付く方向)に向かって湾曲した湾曲凹面であってもよく、外側(第3回転軸J3から遠ざかる方向)に向かって湾曲した湾曲凸面であってもよい。
【0072】
図3に示すように、第1傾斜部43は、固定部材としてのネジ6が挿入される挿通孔431を有する。挿通孔431は、第1傾斜部43の壁厚方向に沿って延在する貫通孔で構成される。この挿通孔431にネジ6を挿入、螺合し、第1傾斜部43をアームベース3に固定することにより、アームベース3にアームカバー4を装着した状態を安定的保持することができる。
【0073】
図1、
図2および
図3に示すように、第2傾斜部44は、アームカバー本体41において、第1傾斜部43の上部に位置している。第2傾斜部44は、被覆部42の上端より上方に位置している。
第2傾斜部44は、第1傾斜部43とは傾斜方向が異なり、上方、すなわちZ軸方向プラス側に行くに従って第3回転軸J3との距離が小さくなるよう傾斜している。図示の構成では、第2傾斜部44は、アームカバー本体41の基端面41Bに対応する部分以外に形成されている。すなわち、第2傾斜部44は、アームカバー本体41の先端面41Cおよびこれに続く両側面に形成されている。ただし、この構成に限定されず、第2傾斜部44は、アームカバー本体41の被覆部42よりも先端側の部分にのみ形成されていてもよい。
【0074】
図2、
図3および
図6に示すように、第2傾斜部44は、Z軸方向において、第1傾斜部43との境界にある突出部45からアームカバー本体41の天面41Aの直下まで形成されている。すなわち、アームカバー本体41の両側面において、第1傾斜部43よりも上側が第2傾斜部44となっている。ただし、この構成に限定されず、第2傾斜部44の上端は、アームカバー本体41の天面41Aよりも所定距離下側に位置していてもよい。すなわち、第2傾斜部44の上端と天面41Aとの間に、鉛直方向に沿った部分や、第2傾斜部44とは傾斜角度が異なる部分が形成されていてもよい。また、第2傾斜部44は、その第2傾斜面44Aが天面41A、例えば湾曲凸面をなす天面41Aと連続する面を構成していてもよい。
【0075】
第2傾斜部44は、その外面である第2傾斜面44Aを有する。第2傾斜面44Aは、上方に行くに従って第3回転軸J3との距離が小さくなるよう傾斜する面である。第2傾斜面44Aは、平面、曲面、またはこれらを複合した形状の面で構成することができる。第2傾斜面44Aは、図示の構成に限定されない。第2傾斜面44Aは、図示と異なり、内側(第3回転軸J3に近付く方向)に向かって湾曲した湾曲凹面であってもよく、外側(第3回転軸J3から遠ざかる方向)に向かって湾曲した湾曲凸面であってもよい。
【0076】
このような互いに傾斜方向が異なる第1傾斜部43および第2傾斜部44によって、第1傾斜部43および第2傾斜部44の境界にある突出部45付近は外側に向かって山形に突出した形状となる。これにより、第2アーム24が例えば
図2中Y軸方向プラス側に移動するように回転した際、突出部45から第1傾斜面43Aおよび第3傾斜面35Aに沿って下降する気流と、突出部45から第2傾斜面44Aに沿って上昇する気流とが形成されることとなり、従来のような鉛直方向に沿った面形状とした場合と比べて、圧力抵抗(pressure drag)を低減することができる。よって、第2アーム24が回転した際に第2アーム24が受ける空気抵抗を低減することができ、上述したような空気抵抗が大きいことによる悪影響を防止または抑制することができる。なお、圧力抵抗は圧力抗力ともいう。
【0077】
さらに、アームベース3とアームカバー4との境界部241では、スプラインシャフト253の上下方向の移動により第2アーム24の内外に流れる空気の流れが生じ、境界部241を通じて、第2アーム24の内側に向かう流れにより塵や埃等が吸い込まれたり、第2アーム24の外側に向かう流れにより塵や埃等が舞い上げられたりするおそれがある。これに対し、本実施形態では、アームベース3とアームカバー4との境界部241の上方には、それよりも外側に突出した突出部45が位置しているため、上方から降ってくる塵や埃等が積もらない。そのため、塵や埃等が吸い込まれたり舞い上げられたりしにくいという利点がある、このため、ロボット2は、防塵性をより向上することができる。また、第2アーム24を側面視、すなわちY軸方向に沿って見たときに、アームベース3とアームカバー4との境界部241に突出部45が重なっていると、アームカバー4がアームベース3から外れやすくなるとともに、アームカバー4とアームベース3との継ぎ目が突出部45の突出により強調され、アームベース3とアームカバー4との一体感が損なわれてしまう。一方、このような、側面視において境界部241が突出部45と上下方向にずれて重ならない形状であると、アームカバー4がアームベース3から外れにくくなり、第2アーム24の強度を高めることができるとともに、上述の継ぎ目が強調されなくなり、アームベース3とアームカバー4との一体感を向上することができる。
【0078】
図2および
図3に示すように、アームベース3には、第1傾斜部43と連続するように傾斜した第3傾斜部35が設けられている。具体的には、露出部34は、第3傾斜部35を有する。第3傾斜部35は、第1傾斜部43と同方向に傾斜した、すなわち上方に行くに従って第3回転軸J3との距離が大きくなるよう傾斜した部分である。
【0079】
第3傾斜部35は、その外面である第3傾斜面35Aを有する。第3傾斜面35Aは、第1傾斜面43Aと連続するように傾斜し、上方、すなわちZ軸方向プラス側に行くに従って第3回転軸J3との距離が大きくなるよう傾斜する面である。第3傾斜面35Aは、平面、曲面、またはこれらを複合した形状の面で構成することができる。第3傾斜面35Aは、図示の構成に限定されない。第3傾斜面35Aは、図示と異なり、内側(第3回転軸J3に近付く方向)に向かって湾曲した湾曲凹面であってもよく、外側(第3回転軸J3から遠ざかる方向)に向かって湾曲した湾曲凸面であってもよい。
【0080】
第1傾斜部43と第3傾斜部35とが連続しているとは、第1傾斜面43Aと第3傾斜面35Aとが同方向に傾斜しているということを意味する。また、第1傾斜部43と第3傾斜部35とが連続しているとは、第1傾斜面43Aと第3回転軸J3とのなす角度、すなわち第1傾斜面43AのZ軸に対する傾斜角度θAと、第3傾斜面35Aと第3回転軸J3とのなす角度、すなわち第3傾斜面35AのZ軸に対する傾斜角度θCとの差が、概ね10°以下であることを意味する(
図3参照)。
【0081】
第1傾斜部43と第3傾斜部35とが連続していることにより、アームベース3とアームカバー4との境界部241において、従来のような鉛直方向に沿った面形状をなくすことができる。よって、ロボットアーム22の動作に伴い第2アーム24が受ける空気抵抗の低減に寄与する。また、第2アーム24のデザインにおいて、アームベース3とアームカバー4との一体感が高まり、審美性をさらに高めることができる。
【0082】
以上説明したように、本実施形態におけるロボット2は、基台21と、基台21に対し、第1回転軸J1の回りに回転可能に接続される第1アーム23と、第1アーム23に対し、第1回転軸J1と平行な第2回転軸J2の回りに回転可能に接続され、アームベース3と、アームベース3の上部を覆うアームカバー4と、を有する第2アーム24と、第2アーム24に対し、第2回転軸J2と平行な第3回転軸J3の回りに回転可能に、かつ第3回転軸J3の軸方向に沿って移動可能に接続される第3アームとしての作業ヘッド25と、を備える。また、アームカバー4は、アームベース3の上部と係合し、上方に行くに従って第3回転軸J3との距離が大きくなるよう傾斜する第1傾斜部43と、第1傾斜部43より上方に設けられ、上方に行くに従って第3回転軸J3との距離が小さくなるよう傾斜する第2傾斜部44と、を有し、アームベース3は、第1傾斜部43と連続するよう傾斜する第3傾斜部35を有し、アームベース3とアームカバー4との境界である境界部241は、第1傾斜部43と第3傾斜部35との間にある。これにより、第2アーム24が回転した際、第2アーム24が受ける空気抵抗を低減することができる。その結果、例えば、第2アーム24が空気抵抗を受けて回転速度が不本意に減速してしまう、第2アーム24を目標速度で回転するのに必要な消費電力が増大する等の、空気抵抗が大きいことによる悪影響を防止または抑制することができる。また、アームベース3とアームカバー4との一体感が高まることで、第2アーム24の外形形状のデザイン性が向上し、ロボットアーム22の審美性が向上する。
【0083】
なお、本実施形態では、第1傾斜部43および第2傾斜部44は、境界にある突出部45を介してZ軸方向に隣接する構成であるが、本発明ではこれに限定されず、第1傾斜部43および第2傾斜部44の間には、例えば、鉛直方向に沿った面等が存在していてもよい。
【0084】
また、ロボットシステム100は、基台21と、基台21に対し、第1回転軸J1の回りに回転可能に接続される第1アーム23と、第1アーム23に対し、第1回転軸J1と平行な第2回転軸J2の回りに回転可能に接続され、アームベース3と、アームベース3の上部を覆うアームカバー4と、を有する第2アーム24と、第2アーム24に対し、第2回転軸J2と平行な第3回転軸J3の回りに回転可能に、かつ第3回転軸J3の軸方向に沿って移動可能に接続される第3アームとしての作業ヘッド25と、を備えるロボット2と、ロボット2の作動を制御反るロボット制御装置9と、を備える。また、アームカバー4は、アームベース3の上部と係合し、上方に行くに従って第3回転軸J3との距離が大きくなるよう傾斜する第1傾斜部43と、第1傾斜部43より上方に設けられ、上方に行くに従って第3回転軸J3との距離が小さくなるよう傾斜する第2傾斜部44と、を有し、アームベース3は、第1傾斜部43と連続するよう傾斜する第3傾斜部35を有し、アームベース3とアームカバー4との境界である境界部241は、第1傾斜部43と第3傾斜部35との間にある。これにより、第2アーム24が回転した際、第2アーム24が受ける空気抵抗を低減することができる。その結果、例えば、第2アーム24が空気抵抗を受けて回転速度が不本意に減速してしまう、第2アーム24を目標速度で回転するのに必要な消費電力が増大する等の、空気抵抗が大きいことによる悪影響を防止または抑制することができる。また、アームベース3とアームカバー4との一体感が高まることで、第2アーム24の外形形状のデザイン性が向上し、ロボットアーム22の審美性が向上する。
【0085】
第1傾斜部43、第2傾斜部44、および第3傾斜部35は、第3回転軸J3の外周部に対応する部分、すなわち設置部32の外周部に対応する部分に設けられている。換言すると、第1傾斜部43、第2傾斜部44および第3傾斜部35は、第2アーム24の被覆部42より先端側の部分、特に第2アーム24の先端部に設けられている。第2アーム24が回転した際、第2アーム24の先端部は第2アーム24の基端部よりも移動速度が速いため、より多くの空気抵抗を受ける。この場合、第1傾斜部43、第2傾斜部44および第3傾斜部35が第2アーム24の先端部に設けられていることにより、空気抵抗を低減することによる上記効果をより顕著に発揮することができる。すなわち、第2アーム24が受ける空気抵抗をより効果的に低減することができ、空気抵抗が大きいことによる悪影響をより有効に防止または抑制することができる。また、第2アーム24の外形形状、特に第2アーム24の被覆部42より先端側の部分の外形形状のデザイン性が向上し、ロボットアーム22の審美性が向上する。
【0086】
図3に示すように、第1傾斜面43AのZ軸に対する傾斜角度θAは、特に限定されないが、2°以上50°以下であることが好ましく、5°以上30°以下であることがより好ましい。これにより、一体感をより向上することができる。傾斜角度θAが小さすぎると、第2アーム24が回転した際の空気抵抗を低減する効果が少なくなるおそれがある。傾斜角度θAが大きすぎると、傾斜が急峻となり、一体感が低下するおそれがある。
【0087】
なお、上記「傾斜角度θA」は、第1傾斜面43Aが形成されている領域の全てにおける傾斜角度θAの平均値とする。
【0088】
第2傾斜面44Aと第3回転軸J3とのなす角度、すなわち第2傾斜面44AのZ軸に対する傾斜角度θBは、特に限定されないが、例えば、2°以上40°以下であることが好ましく、4°以上20°以下であることがより好ましい。これにより、審美性をより向上することができる。傾斜角度θBが小さすぎると、第2アーム24が回転した際の空気抵抗を低減する効果が少なくなるおそれがある。傾斜角度θBが大きすぎると、傾斜が急峻となり、アームカバー4内の容積が小さくなるか、またはこれを防ぐためにアームカバー4の突出部45のY軸方向の寸法(幅)を大きくとる必要が生じ、第2アーム24の審美性が低下するおそれがある。
【0089】
なお、上記「傾斜角度θB」は、第2傾斜面44Aが形成されている領域の全てにおける傾斜角度θBの平均値とする。
【0090】
傾斜角度θAと傾斜角度θBとの大小関係は、特に限定されず、θA<θB、θA=θB、およびθA>θBのいずれであってもよい。この場合、傾斜角度θAと傾斜角度θBとの差の絶対値|θA-θB|は、特に限定されないが、0°以上25°以下であることが好ましく、1°以上6°以下であることがより好ましい。これにより、審美性をさらに高めることができる。
【0091】
第1傾斜面43Aと第2傾斜面44Aとのなす角度θDは、180°-(θA+θB)に等しい。この角度θDは、特に限定されないが、90°以上170°以下であるのが好ましく、100°以上160°以下であるのがより好ましい。これにより、第2アーム24の小型化を実現することができるとともに、本発明の上記効果をより顕著に発揮することができる。角度θDが小さすぎると、突出部45の突出量が大きくなりすぎる傾向を示し、アームカバー4のY軸方向の寸法が大きくなり、アームカバー4の大型化を招くおそれがある。一方、角度θDが大きすぎると、第1傾斜部43および第2傾斜部44を設けたことによる本発明の上記効果が減少するおそれがある。
【0092】
なお、上記「角度θD」は、第1傾斜部43および第2傾斜部44が形成されている領域の全てにおける角度θDの平均値とする。
【0093】
第3傾斜面35AのZ軸に対する傾斜角度θCは、特に限定されないが、2°以上50°以下であることが好ましく、5°以上30°以下であることがより好ましい。これにより、審美性をより向上することができる。傾斜角度θCが小さすぎると、第2アーム24が回転した際の空気抵抗を低減する効果が少なくなるおそれがある。傾斜角度θCが大きすぎると、傾斜が急峻となり、露出部34のY軸方向の寸法(幅)を大きくとる必要が生じ、第2アーム24の審美性が低下するおそれがある。
【0094】
なお、上記「傾斜角度θC」は、第3傾斜部35が形成されている領域の全てにおける傾斜角度θCの平均値とする。
【0095】
傾斜角度θAと傾斜角度θCとの大小関係は、特に限定されず、θA<θC、θA=θC、およびθA>θCのいずれであってもよい。この場合、傾斜角度θAと傾斜角度θCとの差は、特に限定されないが、±5°以内であるのが好ましく、±4°以内であるのがより好ましい。これにより、第1傾斜部43と第3傾斜部35との一体感が向上し、審美性をより高めることができる。
【0096】
このように、第1傾斜部43と第2傾斜部44との境界である突出部45は、第3回転軸J3から遠ざかる方向に突出しており、第1傾斜部43と第2傾斜部44とのなす角度θDの平均値、すなわち、第1傾斜面43Aと第2傾斜面44Aとのなす角度θDは、90°以上170°以下であり、第1傾斜部43の鉛直方向に対する傾斜角度θAと、第3傾斜部35の鉛直方向に対する傾斜角度θCとの差の平均値は、±5°以内である。これにより、審美性をより効果的に高めることができる。
【0097】
また、
図2に示すように、第1傾斜部43のZ軸方向の長さをL1とし、第2傾斜部44のZ軸方向の長さをL2とし、第3傾斜部35のZ軸方向の長さをL3としたとき、以下の関係を満足することが好ましい。
【0098】
L2/L1は、3以上100以下であるのが好ましく、5以上100以下であるのがより好ましい。これにより、第2傾斜部44のZ軸方向の長さを十分に確保することができるとともに、第1傾斜部43および第2傾斜部44のZ軸方向の長さのバランスを良好に保つことができ、審美性を高めることができる。
【0099】
L3/L1は、1以上20以下であるのが好ましく、2以上10以下であるのがより好ましい。これにより、第3傾斜部35のZ軸方向の長さを十分に確保することができるとともに、第1傾斜部43および第3傾斜部35のZ軸方向の長さのバランスを良好に保つことができ、審美性を高めることができる。
【0100】
また、
図3に示すように、アームベース3は、第3傾斜部35の上部に設けられ、第1傾斜部43の下端部430が係合される凹部351を有する。凹部351は、第1傾斜部43が第3傾斜部35に係合する部分、すなわち上方に行くに従って第3回転軸J3との距離が大きくなるよう傾斜している第3傾斜部35の内面353に対し、下方に行くに従って第3回転軸J3との距離が小さくなるよう傾斜している第1傾斜部43の下端部430が外側から引っ掛けられる部分である。これにより、凹部351において第1傾斜部43と第3傾斜部35とが係合し、この係合が安定的に維持される。よって、アームカバー4がアームベース3に装着された状態を安定的に保持することができる。
【0101】
凹部351は、第3傾斜部35が存在する部分の全域に形成されている。このため、凹部351は、第3傾斜部35の上部に沿って形成された長尺な溝と言うことができる。凹部351は、上方および側方、すなわち
図3中ではY軸方向プラス側およびZ軸方向プラス側に開放している。これにより、アームカバー4をアームベース3に装着する作業を容易に行うことができる。
【0102】
また、凹部351は、水平方向に沿った底面352を有する。また、第1傾斜部43の下端面432は、水平方向に沿った面である。すなわち、底面352および下端面432は、X-Y平面と平行な面である。これにより、第1傾斜部43の下端部430を凹部351に係合した際、下端面432と底面352とが面接触する。よって、アームカバー4がアームベース3に装着された状態をより安定的に保持することができる。このような凹部351では、境界部241は底面352および下端面432との境界である。なお、底面352および下端面432の間にシールや接着剤などの別の部材を設け、それらを境界部241としてもよい。
【0103】
また、第3傾斜部35の壁厚は、第1傾斜部43の少なくとも下端部430の壁厚よりも厚い。凹部351の第3傾斜部35の壁厚方向の深さは、第1傾斜部43の下端部430の壁厚と同じである。これにより、第1傾斜部43と第3傾斜部35とが係合した状態において、第1傾斜面43Aと第3傾斜面35Aとの境界部241に段差が形成されるのを防止または抑制することができる。よって、第2アーム24のさらなる空気抵抗の低減および審美性の向上に寄与する。なお、
図3中では、下端部430以外の部分の第1傾斜部43の壁厚も下端部430の壁厚と等しいが、下端部430以外の部分の第1傾斜部43の壁厚を下端部430の壁厚よりも厚くしてもよい。その場合、第1傾斜部43の強度を高めることができる。
【0104】
また、凹部351の底面352とは異なる、第3傾斜部35の内面353には、固定部材としてのネジ6が挿入されるネジ穴354が設けられている。第1傾斜部43の下端部430を凹部351に係合した際、ネジ穴354と挿通孔431とは、直線状の並んだ状態で連通し、これらにネジ6が一括して挿入、螺合される。これにより、第1傾斜部43と第3傾斜部35とを、例えばネジ6を用いたネジ止めにより固定することができ、この固定も容易、確実に行うことができる。よって、アームカバー4がアームベース3に装着された状態をより安定的に保持することができる。
【0105】
このようなネジ6によるネジ止めの箇所、すなわち固定箇所は、第1傾斜部43において、1箇所でも複数箇所でもよいが、固定をより確実にするために、複数箇所が好ましい。本実施形態では、
図6に示すように、ネジ6によるネジ止め箇所は、第1傾斜部43のうち、Y軸方向プラス側およびY軸方向マイナス側の2箇所と、X軸方向マイナス側(アームカバー4の先端)の1箇所の計3箇所であるが、これに限定されず、第1傾斜部43の第3回転軸J3の外周部に対応する部分に1箇所形成されているか、または外周方向に沿って2箇所または4箇所以上形成されていてもよい。
【0106】
このように、アームベース3は、第3傾斜部35の上部に設けられ、第1傾斜部43の下端部430が係合される凹部351を有する。これにより、アームカバー4がアームベース3に装着された状態を安定的に保持することができる。なお、図示の構成に限定されず、アームカバー4の第1傾斜部43の下端部430に、第3傾斜部35の上部が係合される凹部351を設けることもできる。
【0107】
また、凹部351は、上方および側方に開放している。これにより、アームカバー4をアームベース3に装着する作業を容易に行うことができる。
なお、図示の構成に限定されず、凹部351に代え、内面353の外側に外面を加えて上方のみに開放する凹部とすることもできる。また、内面353の代わりに外面に置き換えて
図3中でY軸方向マイナス側およびZ軸方向プラス側に開放する凹部351とすることもできる。また、凹部351自体が省略されていてもよい。
【0108】
また、凹部351は、水平方向に沿った底面352を有し、第1傾斜部43は、底面352と当接する水平方向に沿った下端面432を有する。これにより、アームカバー4がアームベース3に装着された状態をより安定的に保持することができる。なお、図示の構成に限定されず、凹部351に底面352を設けず、下端面432が当接しない構造とすることもできる。
【0109】
第1傾斜部43は、第3傾斜部35よりも壁厚が薄い。これにより、第1傾斜部43と第3傾斜部35とが係合した状態、特に、第1傾斜部43が凹部351に係合された状態において、第1傾斜面43Aと第3傾斜面35Aとの境界部241に段差が形成されるのを防止または抑制することができる。よって、第2アーム24のさらなる空気抵抗が図れる。また、審美性の向上に寄与する。なお、図示の構成に限定されず、第3傾斜部35を、第1傾斜部43よりも壁厚を薄くすることもできる。その場合、段差が形成されるのを防止または抑制するために、上述のようにアームカバー4の第1傾斜部43の下端部430に、第3傾斜部35の上部が係合される凹部351を設けることが好ましい。
【0110】
また、第1傾斜部43は、アームカバー4とアームベース3とを固定する固定部材としてのネジ6が挿通される挿通孔431を有する。これにより、アームカバー4を第1傾斜部43において、例えばネジ止めによりアームベース3に固定することができる。よって、アームカバー4がアームベース3に装着された状態をより安定的に保持することができる。また、アームカバー4がアームベース3に対し、定められた位置および姿勢で確実に固定されるため、審美性の向上にも寄与する。
【0111】
次に、アームカバー4をアームベース3から離脱する離脱操作の手順について説明する。
【0112】
手順1:
アームカバー4の装着状態において、まず、図示しないドライバーを用いて全てのネジ5および6を取り外す。
【0113】
手順2:
次いで、
図6に示すように、例えば、右手HRで被覆部42を把持し、左手HLでアームカバー本体41の先端部を把持する。この際、
図5に示すように、右手HRの指Fを被覆部42の外周面421の内側に挿入し、引っ掛ける。
【0114】
手順3:
次いで、左手HLでアームカバー本体41の先端部を上方に持ち上げるとともに、指Fを外周面421に引っ掛けたまま右手HRで被覆部42を上方に持ち上げる。アームカバー4を持ち上げる際、配管10は、スリット411の幅広開口部412内をその長手方向に移動する。
【0115】
手順4:
次いで、手順3でアームカバー4を持ち上げた状態を維持しつつ、
図6および
図7に示すように、左手HLを持ちかえて、被覆部42のスリット411よりもY軸方向マイナス側の部分を左手HLで把持し、右手HRを持ちかえて、被覆部42のスリット411よりもY軸方向プラス側の部分を右手HRで把持する。このとき、
図7に示すように、被覆部42のY軸方向マイナス側の側部を左手HLで把持し、被覆部42のY軸方向プラス側の側部を右手HRで把持してもよいし、被覆部42の基端部側であって、スリット411のY軸方向マイナス側にある外周面421を左手HLで把持し、Y軸方向プラス側にある外周面421を右手HRで把持してもよい。
【0116】
そして、アームカバー本体41のY軸方向マイナス側の部分とY軸方向プラス側の部分とが離間するように、すなわちスリット411が開くようにアームカバー本体41に力を加え、スリット411が開いた状態でスリット411から配管10が離脱するようにアームカバー4を若干持ち上げる。この際、第1傾斜部43と第2傾斜部44との境界である突出部45が、外方に突出しているため、目視しなくてもどの位置を把持すべきかを、手で触った感覚で把握しやすくすることができる。
【0117】
手順5:
次いで、アームカバー4からスプラインシャフト253を抜去するように、アームカバー4をさらに上方に持ち上げる。
【0118】
このような手順1~5を経てアームカバー4をアームベース3から離脱させることができる。なお、手順1~5において、用いる手の左右は逆であってもよい。
【0119】
以上、本発明のロボットおよびロボットシステムを図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これらに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明のロボットおよびロボットシステムは、他の任意の構成物が付加されていてもよい。
【符号の説明】
【0120】
1…ロボットシステム、2…ロボット、3…アームベース、4…アームカバー、5…ネジ、6…ネジ、9…ロボット制御装置、10…配管、21…基台、22…ロボットアーム、23…第1アーム、24…第2アーム、25…作業ヘッド、26…下端部、27…第1駆動部、28…第2駆動部、30…側面、30B…第2面、30C…第3面、31…設置部、32…設置部、33…下面、34…露出部、35…第3傾斜部、35A…第3傾斜面、41…アームカバー本体、41A…天面、41B…基端面、41C…先端面、42…被覆部、43…第1傾斜部、43A…第1傾斜面、44…第2傾斜部、44A…第2傾斜面、45…突出部、100…床面、210…上面、230…上面、231…先端部、241…境界部、251…スプラインナット、252…ボールネジナット、253…スプラインシャフト、291…第1駆動機構、292…第2駆動機構、351…凹部、352…底面、353…内面、354…ネジ穴、411…スリット、412…幅広開口部、413…配管コネクター、414…第1コネクター、415…第2コネクター、416…ネジ、417…凹部、421…外周面、423…下端、424…先端部、430…下端部、431…挿通孔、432…下端面、F…指、G…隙間、HL…左手、HR…右手、J1…第1回転軸、J2…第2回転軸、J3…第3回転軸、S…空隙