(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136099
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】荷重測定装置及び荷重測定プログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 3/24 20060101AFI20240927BHJP
G01N 3/08 20060101ALI20240927BHJP
G01L 5/1627 20200101ALI20240927BHJP
G01M 7/02 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G01N3/24
G01N3/08
G01L5/1627
G01M7/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047076
(22)【出願日】2023-03-23
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】521114239
【氏名又は名称】笠井 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100100011
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 省三
(72)【発明者】
【氏名】笠井 和彦
(72)【発明者】
【氏名】牟 雨
(72)【発明者】
【氏名】金子 健作
(72)【発明者】
【氏名】アレックス シガイ
(72)【発明者】
【氏名】デイブ エム オサベル
【テーマコード(参考)】
2F051
2G061
【Fターム(参考)】
2F051AB09
2F051BA07
2F051DA02
2F051DB01
2G061AA02
2G061AA11
2G061AA17
2G061AB01
2G061BA08
2G061EA01
2G061EA04
2G061EB04
2G061EB05
(57)【要約】
【課題】試験体の水平荷重を精確に測定できる荷重測定装置及び荷重測定プログラムを提供する。
【解決手段】試験体1を載置する水平可動テーブル2は鉛直方向アクチュエータ11上に設けられ、水平可動テーブル2は水平方向アクチュエータ5によって水平方向に移動可能になっている。試験体1は鉛直方向加圧部材7に固定され、鉛直方向加圧部材7の両側は水平方向ロードセル8、8’を介してフレーム10、10’に固定されている。鉛直方向加圧部材7と固定ベース4との間には、鉛直方向ロードセル柱6、6’が設けられている。制御ユニット12はロードセル柱6、6’及び水平方向ロードセル8、8’の測定値に応じて第1、第2の水平荷重を得、加算して試験体1の水平荷重とし、試験体1の鉛直荷重を得さらに、試験体1の任意のX,Z方向位置における曲げモーメントも算定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験体の荷重を測定するための荷重測定装置であって、
固定ベースと、
前記試験体の下側を載置するための水平可動テーブルと、
前記試験体の上側を載置するための鉛直方向加圧部材と、
前記固定ベース上に設けられ、前記水平可動テーブルを支承部材を介して支承し、前記水平可動テーブルに鉛直力を印加するための鉛直方向アクチュエータと、
前記水平可動テーブルに水平力を印加するための水平方向アクチュエータと、
前記固定ベース上に固定された支持部材と、
前記支持部材と前記鉛直方向加圧部材との間に介在し、水平荷重を測定するための水平方向ロードセルと、
前記鉛直方向加圧部材と前記固定ベースとの間に介在し、前記水平可動テーブルを挟んで対抗した少なくとも2つの鉛直方向ロードセル柱と、
前記水平方向ロードセル及び前記鉛直方向ロードセル柱の歪みゲージに接続された制御ユニットと
を具備し、
前記各鉛直方向ロードセル柱は、
第1の断面積を有する柱部と、
前記柱部の上下に設けられ、前記第1の断面積より小さい第2の断面積を有し、歪みゲージを有する上部ロードセル部及び下部ロードセル部と
を具備し、
前記制御ユニットは、
前記鉛直方向ロードセル柱の歪みゲージの歪みに応じて前記鉛直方向ロードセル柱の鉛直荷重及び曲げモーメントを演算し、
前記曲げモーメントに応じて前記鉛直方向ロードセル柱の第1の水平荷重を演算し、
前記水平方向ロードセルの荷重測定値により第2の水平荷重を演算し、
前記第1、第2の水平荷重を加算して前記試験体の水平荷重を演算する荷重測定装置。
【請求項2】
前記制御ユニットは、前記鉛直方向ロードセル柱の歪みゲージの歪みに応じて前記試験体の鉛直荷重を演算する請求項1に記載の荷重測定装置。
【請求項3】
前記制御ユニットは、前記第1、第2の水平荷重及び前記鉛直方向ロードセル柱の歪みゲージの歪みに応じて前記試験体の曲げモーメントを演算する請求項2に記載の荷重測定装置。
【請求項4】
前記制御ユニットは、前記鉛直方向ロードセル柱の上部ロードセル部の歪みゲージに応じて演算された前記試験体の鉛直荷重と、当該鉛直方向ロードセル柱の下部ロードセル部の歪みゲージに応じて演算された前記試験体の鉛直荷重とを比較することにより前記荷重測定装置の正常、異常を判別する請求項2に記載の荷重測定装置。
【請求項5】
前記鉛直方向ロードセル柱の歪みゲージは該鉛直方向ロードセル柱の軸方向に沿ってヘアピン状に貼り付けられた請求項1に記載の荷重測定装置。
【請求項6】
試験体の荷重を測定するための荷重測定装置であって、
固定ベースと、
前記試験体の下側を載置するための水平可動テーブルと、
前記試験体の上側を載置するための鉛直方向加圧部材と、
前記固定ベース上に設けられ、前記水平可動テーブルを支承部材を介して支承し、前記水平可動テーブルに鉛直力を印加するための鉛直方向アクチュエータと、
前記水平可動テーブルに水平力を印加するための水平方向アクチュエータと、
前記固定ベース上に固定された支持部材と、
前記支持部材と前記鉛直方向加圧部材との間に介在し、水平荷重を測定する水平方向ロードセルと、
前記鉛直方向加圧部材と前記固定ベースとの間に介在し、前記水平可動テーブルを挟んで対抗した少なくとも2つの鉛直方向ロードセル柱と
を具備し、
前記各鉛直方向ロードセル柱は、
第1の断面積を有する柱部と、
前記柱部の上下に設けられ、前記第1の断面積より小さい第2の断面積を有し、歪みゲージを有する上部ロードセル部及び下部ロードセル部と
を具備する荷重測定装置において、
前記鉛直方向ロードセル柱の歪みゲージの歪みに応じて前記鉛直方向ロードセル柱の曲げモーメントを演算する手順と、
前記曲げモーメントに応じて前記鉛直方向ロードセル柱の第1の水平荷重を演算する手順と、
前記水平方向ロードセルの測定値により第2の水平荷重を演算する手順と、
前記第1、第2の水平荷重を加算して前記試験体の水平荷重を演算する手順とをコンピュータに実行させるための荷重測定プログラム。
【請求項7】
さらに、前記鉛直方向ロードセル柱の歪みゲージの歪みに応じて前記試験体の鉛直荷重を演算する手順をコンピュータに実行させるための請求項6に記載の荷重測定プログラム。
【請求項8】
さらに、前記第2の水平荷重及び前記試験体の鉛直荷重に応じて前記試験体の曲げモーメントを演算する手順をコンピュータに実行させるための請求項7に記載の荷重測定プログラム。
【請求項9】
さらに、前記制御ユニットは前記鉛直方向ロードセル柱の上部ロードセル部の歪みゲージに応じて演算された前記試験体の鉛直荷重と、当該鉛直方向ロードセル柱の下部ロードセル部の歪みゲージに応じて演算された前記試験体の鉛直荷重とを比較することにより前記荷重測定装置の正常、異常を判別する手順をコンピュータに実行させるための請求項7に記載の荷重測定プログラム。
【請求項10】
試験体の荷重を測定するための荷重測定装置であって、
固定ベースと、
前記試験体の下側を載置するための水平可動テーブルと、
前記試験体の上側を載置するための鉛直方向加圧部材と、
前記固定ベース上に固定された支持部材と、
前記鉛直方向加圧部材上に設けられ、前記鉛直方向加圧部材に鉛直力を印加するための鉛直方向アクチュエータと、
前記水平可動テーブルに水平力を印加するための水平方向アクチュエータと、
前記支持部材と前記鉛直方向加圧部材との間に介在し、水平荷重を測定するための水平方向ロードセルと、
前記鉛直方向アクチュエータと前記支持部との間に介在し、前記鉛直方向アクチュエータに対抗した少なくとも2つの鉛直方向ロードセルと、
前記水平方向ロードセル及び前記鉛直方向ロードセルの歪みゲージに接続された制御ユニットと
を具備し、
前記制御ユニットは、
前記鉛直方向ロードセルの歪みゲージの歪みに応じて前記鉛直方向ロードセルの鉛直荷重を演算し、
前記水平方向ロードセルの測定値により前記試験体の水平荷重を演算する荷重測定装置。
【請求項11】
試験体の荷重を測定するための荷重測定装置であって、
固定ベースと、
前記試験体の下側を載置するための水平可動テーブルと、
前記試験体の上側を載置するための鉛直方向加圧部材と、
前記固定ベース上に固定された支持部材と、
前記支持部材上に設けられ、前記鉛直方向加圧部材に鉛直力を印加するための少なくとも2つの鉛直方向アクチュエータと、
前記水平可動テーブルに水平力を印加するための水平方向アクチュエータと、
前記支持部材と前記鉛直方向加圧部材との間に介在し、前記鉛直方向加圧部材を挟んで対抗した少なくとも2つの水平方向ロードセル柱と、
前記鉛直方向加圧部材と前記鉛直方向アクチュエータとの間に介在し、対抗した少なくとも2つの鉛直方向ロードセル柱と、
前記水平方向ロードセル柱及び前記鉛直方向ロードセル柱の歪みゲージに接続された制御ユニットと
を具備し、
前記ロードセル柱は、
第1の断面を有する柱部と、
前記柱部の上下に設けられ、前記第1の断面積より小さい第2の断面積を有し、歪みゲージを有する上部ロードセル部及び下部ロードセル部と
を具備し、
前記制御ユニットは、
前記鉛直方向ロードセル柱の歪みゲージの歪みに応じて前記鉛直方向ロードセル柱の鉛直荷重及び曲げモーメントを演算し、
前記曲げモーメントに応じて前記鉛直方向ロードセル柱の第1の水平荷重を演算し、
前記水平方向ロードセル柱の測定値により第2の水平荷重を演算し、
前記第1、第2の水平荷重を加算して前記試験体の水平荷重を演算する荷重測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建築物等の構造物で大きな鉛直力を受ける部材、たとえば柱材、免震部材の試験体の荷重つまり水平荷重、鉛直荷重及び曲げモーメントを高精度で測定するための荷重測定装置及び荷重測定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
大型建築物等の構造物で大きな鉛直力を受ける部材、たとえば柱材、免震部材は、部材サイズが大きいので、荷重測定装置を用いて断面積をたとえば0.2倍以下に縮小した試験体の荷重つまり水平荷重、鉛直荷重を測定し、試験体の測定結果を外挿して部材の耐力を評価している。但し、近年、試験体は極力大きなサイズとして部材の試験体の測定結果を内挿して部材の耐力評価を上げる傾向にある。このような水平荷重、鉛直荷重を高精度で測定するための荷重測定装置がある。
【0003】
図6は従来のゴム支承型荷重測定装置を示す図である(参照:特許文献1)。
【0004】
図6において、構造物の試験体101の下部エンドプレート101a側を載置する水平可動テーブル102はローラ103を支承として固定ベース104上に設けられている。固定ベース104上にはさらに水平方向アクチュエータ105が設けられ、水平可動テーブル102は水平方向アクチュエータ105の比較的微小な水平力Hたとえば0.1~3MNによって水平X方向に移動可能となっている。
【0005】
試験体101の上部プレート101b側は積層ゴム106を介してコ字状鉛直方向加圧部材107に固定され、試験体101の両側は水平方向ロードセル108、108’を介してコ字状鉛直方向加圧部材107に固定されている。また、コ字状鉛直方向加圧部材107はローラ109、109’を支承としてフレーム110に設けられると共に、フレーム110は固定ベース104に固定されている。コ字状鉛直方向加圧部材107はフレーム110に設けられた鉛直方向アクチュエータ111の大きな鉛直力Pたとえば40MNによって鉛直Z方向に移動可能となっている。
【0006】
図6においては、積層ゴム106の水平剛性は水平方向ロードセル108、108’の剛性の0.5%より小さく設定され、積層ゴム106の回転挙動を抑えているので、積層ゴム106の反力を無視して水平方向ロードセル108、108’の水平力Hを試験体101の水平荷重とみなせる。また、積層ゴム106の鉛直剛性は非常に大きいので、鉛直方向アクチュエータ111の鉛直力Pを試験体101の鉛直荷重とみなせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、
図6に示すゴム支承型荷重測定装置においては、積層ゴム106の水平方向剛性は小さいものの無視できず、鉛直力、振幅、振動数、温度等に依存するため、その値の測定は困難である、また、積層ゴム106の曲げモーメントに対する剛性は小さいので、上部エンドプレート101bが回転するため、試験体の抵抗力を左右する境界条件が不確実になる。これらより、試験体101の水平荷重が不確実となり、測定誤差が不明確であるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するために、本発明に係る荷重測定装置は、試験体の荷重を測定するための荷重測定装置であって、固定ベースと、試験体の下側を載置するための水平可動テーブルと、試験体の上側を載置するための鉛直方向加圧部材と、固定ベース上に設けられ、水平可動テーブルを支承部材を介して支承し、水平可動テーブルに鉛直力を印加するための鉛直方向アクチュエータと、水平可動テーブルに水平力を印加するための水平方向アクチュエータと、固定ベース上に固定された支持部材と、支持部材と鉛直方向加圧部材との間に介在し、水平荷重を測定するための水平方向ロードセルと、鉛直方向加圧部材と固定ベースとの間に介在し、水平可動テーブルを挟んで対抗した少なくとも2つの鉛直方向ロードセル柱と、水平方向ロードセル及び鉛直方向ロードセル柱の歪みゲージに接続された制御ユニットとを具備し、各鉛直方向ロードセル柱は、第1の断面積を有する柱部と、柱部の上下に設けられ、第1の断面積より小さい第2の断面積を有し、歪みゲージを有する上部ロードセル部及び下部ロードセル部とを具備し、制御ユニットは、鉛直方向ロードセル柱の歪みゲージの歪みに応じて鉛直方向ロードセル柱の軸力つまり鉛直荷重及び曲げモーメントを演算し、曲げモーメントに応じて鉛直方向ロードセル柱の第1の水平荷重を演算し、水平方向ロードセルの荷重測定値に応じて第2の水平荷重を演算し、第1、第2の水平荷重を加算して試験体の水平荷重を演算するものである。
【0010】
また、本発明に係るコンピュータによって実行される荷重測定プログラムは、試験体の荷重を測定するための荷重測定装置であって、固定ベースと、試験体の下側を載置するための水平可動テーブルと、試験体の上側を載置するための鉛直方向加圧部材と、固定ベース上に設けられ、水平可動テーブルを支承部材を介して支承し、水平可動テーブルに鉛直力を印加するための鉛直方向アクチュエータと、水平可動テーブルに水平力を印加するための水平方向アクチュエータと、固定ベース上に固定された支持部材と、支持部材と鉛直方向加圧部材との間に介在し、水平荷重を測定するための水平方向ロードセルと、鉛直方向加圧部材と固定ベースとの間に介在し、水平可動テーブルを挟んで対抗した少なくとも2つの鉛直方向ロードセル柱とを具備し、各鉛直方向ロードセル柱は、第1の断面積を有する柱部と、柱部の上下に設けられ、第1の断面積より小さい第2の断面積を有し、歪みゲージを有する上部ロードセル部及び下部ロードセル部とを具備する荷重測定装置において、鉛直方向ロードセル柱の歪みゲージの歪みに応じて鉛直方向ロードセル柱の軸力つまり鉛直荷重及び曲げモーメントを演算する手順と、曲げモーメントに応じて鉛直方向ロードセル柱の第1の水平荷重を演算する手順と、水平方向ロードセルの荷重測定値に応じて第2の水平荷重を演算する手順と、第1、第2の水平荷重を加算して試験体の水平荷重を演算する手順とを実行させるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、試験体の水平荷重の演算には例えば水平可動テーブルと鉛直方向アクチュエータの間に生じる摩擦力や水平可動テーブルの慣性力を含まないので、誤差を小さくできる。また、鉛直荷重の演算にも、水平可動テーブルの周囲の支持材との間に生じる摩擦力などを含まないので、誤差を小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る荷重測定装置の実施の形態を示す図である。
【
図2】
図1の鉛直方向ロードセル柱の詳細を示し、(A)は斜視図、(B)は正面図、(B’)は(B)の上部ロードセル部の拡大正面図、(C)は上部ロードセル部の拡大図、(D)は歪みゲージの配置図である。
【
図3】
図1の制御ユニットの動作を説明するためのフローチャートである。
【
図4】
図3の動作を補足説明するための図である。
図4においては、ロードセル部の断面は、2段階であるところを1段階に簡略表現している。
【
図5】
図1の荷重測定装置の変更例を示す図である。
【
図6】従来のゴム支承型荷重測定装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は本発明に係る荷重測定装置の実施の形態を示す図である。
図1においては、
図6の積層ゴム106の代りに鉛直方向ロードセル柱6、6’を設けている。
【0014】
図1において、試験体1の下部エンドプレート1a側を載置する水平可動テーブル2は支承部材としてのローラ3を介して鉛直方向アクチュエータ11上に設けられ、鉛直方向アクチュエータ11は固定ベース4上に設けられている。水平可動テーブル2は鉛直方向アクチュエータ11の大きな鉛直力Pたとえば40MNによって鉛直Z方向に移動可能になっている。尚、鉛直力を引張力とする場合には、ローラ3をレールに埋込む形式とすることもできる。さらに、固定ベース4に固定されたフレーム10、10’に水平方向アクチュエータ5が設けられ、水平可動テーブル2は水平方向アクチュエータ5の微小の水平力Hたとえば0.1~3MNによって水平X方向に移動可能になっている。
【0015】
試験体1の上部エンドプレート1b側は鉛直方向加圧部材7に固定され、鉛直方向加圧部材7の両側は水平方向ロードセル8、8’を介してフレーム10、10’に固定されている。各水平方向ロードセル8、8’は、水平X方向の力を検出する。尚、水平方向ロードセル8、8’はいずれか1つとすることもできるが、全体の対称性を保つために2つの方が好ましい。
【0016】
鉛直方向加圧部材7と固定ベース4との間には、鉛直方向ロードセル柱6、6’が設けられている。鉛直方向ロードセル柱6、6’は好ましくは鉛直方向加圧部材7の両端に位置し、水平X方向上で対抗している。すなわち、鉛直方向ロードセル柱6、6’は水平可動テーブル2を挟んで対抗している。鉛直方向ロードセル柱6、6’は
図5の積層ゴム106の作用をする。しかし、鉛直方向ロードセル柱6、6’は試験体1の鉛直Z方向荷重、曲げモーメント及び水平X方向荷重を高精度に測定できる。また、鉛直方向ロードセル柱6、6’は鉛直方向加圧部材7の両端に位置することにより鉛直Z方向歪みを効率よく検出できる。
【0017】
制御ユニット12は、たとえば中央処理装置(CPU)、リードオンリメモリ(ROM)、フラッシュメモリ、ランダムアクセスメモリ(RAM)、アナログ/ディジタル(A/D)変換器、D/A変換器、ディスプレイユニット等よりなるコンピュータによって構成され、鉛直方向アクチュエータ11、水平方向アクチュエータ5を駆動すると共に、鉛直方向ロードセル柱6、6’の歪み及び水平方向ロードセル8、8’の水平力測定値の出力を取込んで試験体1の鉛直荷重及び水平荷重と共に曲げモーメントを演算する。尚、鉛直方向アクチュエータ11、水平方向アクチュエータ5は制御ユニット12を介さずに駆動してもよい。
【0018】
図2は
図1の鉛直方向ロードセル柱6の詳細を示し、(A)は斜視図、(B)は正面図、(B’)は上部ロードセル部の拡大正面図、(C)は上部ロードセル部の拡大図、(D)は歪みゲージの配置図である。尚、鉛直方向ロードセル柱6’も鉛直方向ロードセル柱6と同一の構造をなす。
【0019】
図2の(A)、(B)に示すように、鉛直方向ロードセル柱6は、弾性で変形が非常に小さくなるように材料と断面積を定められた大径部の柱部61及び柱部61の上下に強度が大きいたとえば降状応力850MPa以上のモリブデン鋼よりなる剛性が小さい小径部の上部ロードセル部62、下部ロードセル部63を有する。尚、ロードセル部62、63は同一構成をなしており、同一動作を行う。従って、ダブルチェックも可能となる。
【0020】
図2の(B)、(B’)、(C)に示すように、ロードセル部62(63)は、通常の材料試験に用いられるものの形に近く、フランジ62a、62b;63a、63bから丸みを介して最小径部分に極力一様な歪みが生じ易い構造となっている。
【0021】
図2の(C)、(D)に示すごとく、ロードセル部62は歪みを高精度で測定できるように円周方向たとえば複数たとえば4ヶ所に右回りに歪みゲージ621(A)、622(B)、623(C)、624(D)が設けられている。この場合、
図2の(C)に示すように、各歪みゲージ621(A)、622(B)、623(C)、624(D)はZ軸方向歪みのみを測定できるようにZ方向にヘアピン状に細長く形成されている。尚、最外縁の歪みゲージ622(B)及び最内縁の歪みゲージ624(D)はY軸まわりの曲げモーメントM
yを演算する際にも用いられる。
【0022】
尚、ロードセル部63も、ロードセル部62と同様に、歪みゲージ631(E)、632(F)、633(G)、634(H)を有する。また、鉛直方向ロードセル柱6’も、図示しないが、鉛直方向ロードセル柱6と同様に、歪みゲージ621’(A’)、622’(B’)、623’(C’)、624’(D’)、 631’(E’)、632’(F’)、633’(G’)、634’(H’)を有する。
【0023】
制御ユニット12は、鉛直方向ロードセル柱6、6’それぞれの上部と下部のロードセル部の軸力Pu、Pd、Pu’、Pd’、鉛直方向ロードセル柱6、6’それぞれの上部と下部のロードセル部の曲げモーメントMyu、Myd、Myu’、Myd’、鉛直方向ロードセル柱6、6’それぞれの小さな水平荷重Qx、Qx’を演算する。この場合、鉛直方向ロードセル柱6、6’において、これらの荷重のすべてはZ軸方向歪みのみを用いて演算するので、各歪みが相互干渉することがない。
【0024】
図3は
図1の制御ユニット12の動作を説明するためのフローチャートである。
【0025】
始めに、ステップ301にて、鉛直方向アクチュエータ11及び水平方向アクチュエータ5を鉛直力P、水平力Hとなるように駆動する。
【0026】
次に、ステップ302にて、鉛直方向ロードセル柱6の歪みゲージ621(A)、622(B)、623(C)、624(D);631(E)、632(F)、633(G)、634(H)の歪みεA、εB、εC、εD;εE、εF、εG、εH、鉛直方向ロードセル柱6’の歪みゲージ621’(A’)、622’(B’)、623’(C’)、624’(D’);631’(E’)、632’(F’)、633’(G’)、634’(H’)の歪みεA’、εB’、εC’、εD’;εE’、εF’、εG’、εH’をA/D変換した値及び水平方向ロードセル8、8’の荷重測定値Rx、Rx’を取込む。
【0027】
次に、ステップ303にて、
図4の(A)を参照すると、鉛直方向ロードセル柱6の上部ロードセル62の歪みケージの歪みを用いて、鉛直荷重P
uを次式を用いて演算する。
P
u= 1/4・(ε
A+ε
B+ε
C+ε
D)・E・A
LC
但し、Eはロードセル柱のヤング率(たとえば205GPa)
A
LCは上部ロードセル部62の断面積(たとえば615.75mm
2)である。また、鉛直方向ロードセル柱6’の上部ロードセル62’の歪みケージの歪みを用いて、鉛直荷重P
u’を次式を用いて演算する。
P
u’= 1/4・(ε
A’ +ε
B’+ε
C’+ε
D’)・E・A
LC’
A
LC’は上部ロードセル部62’の断面積(たとえば615.75mm
2)である。
次に、試験体1の鉛直荷重P
Sを次式を用いて演算する。
P
S=P
u+P
u’
尚、演算された鉛直荷重P
Sには摩擦力等の影響がないので、誤差は小さい。
【0028】
次に、ステップ304では、鉛直方向ロードセル柱6、6’が正常か否か、すなわち、鉛直方向ロードセル柱6の上部ロードセル部62の鉛直荷重Puと、鉛直方向ロードセル柱6の下部ロードセル部63の鉛直荷重Pdとがほぼ同一か否か、また、鉛直方向ロードセル柱6’の上部ロードセル部62’の鉛直荷重Puと、鉛直方向ロードセル柱6’の下部ロードセル部63’の鉛直荷重Pdとがほぼ同一か否かを判別する。この結果、鉛直方向ロードセル柱6、6’が共に正常であれば、ステップ305に進み、他方、鉛直方向ロードセル柱6、6’のいずれか一方が異常であれば、ステップ310に進み、終了する。
【0029】
次に、ステップ305にて、
図4の(B)を参照して鉛直方向ロードセル柱6’のY軸曲げモーメントM
yu、M
yd、鉛直方向ロードセル柱6’のY軸曲げモーメントM
yu’、M
yd’を次式を用いて演算する。
M
yu= 1/2・(ε
B-ε
D)・E・Z
M
yd= 1/2・(ε
H-ε
F)・E・Z
M
yu’= 1/2・(ε
B’-ε
D’)・E・Z’
M
yd’= 1/2・(ε
H’-ε
F’)・E・Z’
但し、鉛直方向ロードセル柱6において、
ε
Bは上部ロードセル部62の試験体1から見て最外縁歪みゲージの歪み、
ε
Dは上部ロードセル部62の試験体1から見て最内縁歪みゲージの歪み、
ε
Fは下部ロードセル部63の試験体1から見て最外縁歪みゲージの歪み、
ε
Hは下部ロードセル部63の試験体1から見て最内縁歪みゲージの歪み、
Eはロードセル部のヤング率、
Zは鉛直方向ロードセル柱6’のロードセル部の断面係数
である。
鉛直方向ロードセル柱6’において、
ε
B’は上部ロードセル部62’の試験体1から見て最外縁歪みゲージの歪み、
ε
D’は上部ロードセル部62’の試験体1から見て最内縁歪みゲージの歪み、
ε
F’は下部ロードセル部63’の試験体1から見て最外縁歪みゲージの歪み、
ε
H’は下部ロードセル部63’の試験体1から見て最内縁歪みゲージの歪み、
Z’は鉛直方向ロードセル柱6’のロードセル部62’、63’の断面係数
である。
尚、
図4の(B)に示すごとく、曲げ変形は剛性が大きい柱部61、61’に生ぜず、剛性が小さいロードセル部に集中する。
【0030】
次に、ステップ306にて、鉛直方向ロードセル柱6の水平荷重Qxと鉛直方向ロードセル柱6’の水平荷重Qx’を次式を用いて演算する。
Qx=(Myu+Myd)/(L-LLC)
Qx’=(Myu’+Myd’)/(L’ -LLC’)
但し、鉛直方向ロードセル6において、
Lは鉛直方向ロードセル柱6の全長、
LLCは鉛直方向ロードセル柱6のロードセル部の長さ
である。
鉛直方向ロードセル6’において、
L’は鉛直方向ロードセル柱6’の全長、
LLC’は鉛直方向ロードセル柱6’のロードセル部の長さ
である。
尚、誤差をさらに小さくするためには、アクチュエータ駆動時の鉛直方向ロードセル柱6、6’の幾何学的非線形性を考慮して、水平荷重Qx、Qx’を次式を用いて演算してもよい。
Qx=(Myu+Myd)/(L-LLC)+Pu・θ
Qx’=(Myu’+Myd’)/(L’ -LLC’)+Pu’・θ’
但し、θ、θ’はそれぞれアクチュエータ駆動時の鉛直方向ロードセル柱6、6’の傾きである。近似的な計算方法として、次式を用いて演算してもよい。
θ=(εH-εF)/d・LLC
θ’=(εH’-εF’)/d’・LLC’
但し、d、d’は鉛直方向ロードセル柱6、6’のロードセル部の直径である。
【0031】
次に、ステップ307にて、試験体1の水平荷重HSを次式を用いて演算する。
HS=Qx+Qx’+Rx+Rx’
尚、試験体1の水平荷重HSにも摩擦力等の影響がないので、誤差は小さい。
【0032】
次に、ステップ308にて、
図4の(C)を参照して試験体1内の任意のZ方向とX方向の位置におけるY軸曲げモーメントM
sを演算する。すなわち、
M
s=H
s・h-P
u・s+P
u’・s’
-(Q
X+Q
X’)・w-M
yu-M
yu’
但し、P
uは鉛直方向ロードセル柱6の上部ロードセル部62の鉛直荷重、
sは鉛直方向ロードセル柱6とY軸曲げモーメントM
sの評価点とのX方向距離、
P
u’は鉛直方向ロードセル柱6’の上部ロードセル部62’の鉛直荷重、
s’は鉛直方向ロードセル柱6’とY軸曲げモーメントM
sの評価点とのX方向距離、
hは水平方向ロードセル8、8’とY軸曲げモーメントM
sの評価点のZ方向距離、
wは水平方向ロードセル8、8’と鉛直方向ロードセル6、6’の上部ロードセル部の歪ゲージ位置とのZ方向距離、
である。
試験体1のY軸曲げモーメントM
sも摩擦力等の影響がなく、誤差は小さい。
【0033】
そして、
図3のルーチンはステップ309で終了し、試験体1の鉛直荷重P
S、水平荷重H
S及びY軸曲げモーメントM
sはディスプレイユニットに表示される。
【0034】
尚、
図3のフローチャートの全部又は一部は制御ユニット12のROM、フラッシュメモリ等にプログラムとして格納され、コンピュータによって実行される。
【0035】
【0036】
図5の(A)に示すごとく、
図1の鉛直方向ロードセル柱6、6’の代りに鉛直方向ロードセル16、16’を鉛直方向加圧部材7とフレーム10との間に設けると共に、鉛直方向ロードセル16、16’と鉛直方向加圧部材7との間に鉛直方向アクチュエータ11、11’を設ける。この場合、鉛直方向ロードセル16、16’は水平方向ロードセル8、8’と同一構成である。これにより、鉛直方向加圧部材7が左右に少し動き、摩擦力が生じて水平方向ロードセル8、8’に混入する。この結果、水平方向ロードセル8、8’の計測値が乱れる。これを防ぐために、ピン8a、8b、8’a、8’bを押し付けるプレストレスをかければよい。
【0037】
また、
図5の(B)に示すごとく、
図1の鉛直方向ロードセル柱6、6’を鉛直方向加圧部材7とフレーム10との間に設けると共に、鉛直方向ロードセル柱6、6’とフレーム10との間に鉛直方向アクチュエータ11、11’を設ける。この場合には、水平方向ロードセル8、8’の代りに鉛直方向ロードセル柱6,6’と同一構造の水平方向ロードセル柱18、18’を設ける。これにより、水平方向ロードセル柱18、18’は上下の動きに追従しながら水平力と小さな鉛直荷重を測定する。
【0038】
また、上述の実施の形態において、水平X方向に対抗する2つの鉛直方向ロードセル柱6、6’及び水平方向ロードセル8、8’を設けているが、X方向に直交する水平Y方向にも対抗する2つの鉛直方向ロードセル柱及び水平方向ロードセル8、8’を設けてもよい。また、直交しない水平2方向に対抗する2つの鉛直方向ロードセル柱及び水平方向ロードセル8、8’を設けてもよい。さらに、1つの鉛直方向ロードセル柱の代わりに2つ以上の鉛直方向ロードセル柱を設けてもよい。
【0039】
また、
図1、
図5におけるフレーム10、10’は固定ベース4に固定された他の支持部材にもなし得る。
【0040】
さらに、本発明は上述の実施の形態の自明の範囲のいかなる変更にも適用し得る。
【符号の説明】
【0041】
1:試験体
1a:下部エンドプレート
1b:上部エンドプレート
102:水平可動テーブル
3:ローラ
4:固定ベース
5:水平方向アクチュエータ
6、6’:鉛直方向ロードセル柱
7:鉛直方向加圧部材
8、8’:水平方向ロードセル
109、109’:ローラ
10、10’:フレーム
11:鉛直方向アクチュエータ
101:試験体
101a:下部エンドプレート
101b:上部エンドプレート
102:水平可動テーブル
103:ローラ
104:固定ベース
105:水平方向アクチュエータ
106:積層ゴム
107:コ字状鉛直方向加圧部材
108、108’:水平方向ロードセル
109、109’:ローラ
110:フレーム
111:鉛直方向アクチュエータ
P:鉛直力
H:水平力
PS:試験体の鉛直荷重
HS:試験体の水平荷重
MS:試験体の曲げモーメント