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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136103
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/20 20060101AFI20240927BHJP
   F15B 11/04 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
E02F9/20 M
F15B11/04 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047081
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀬野浦 聖洸
(72)【発明者】
【氏名】近棟 崇
(72)【発明者】
【氏名】藤田 靖隆
【テーマコード(参考)】
2D003
3H089
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB04
2D003BA01
2D003BA02
2D003CA02
2D003DA03
3H089AA60
3H089BB14
3H089CC01
3H089CC11
3H089DA03
3H089DA13
3H089DB43
3H089EE36
3H089GG02
3H089JJ02
(57)【要約】
【課題】油圧アクチュエータを逆向きに繰り返し動作させる動作を、適切に実行可能な作業機械を提供する。
【解決手段】作業機械は、油圧アクチュエータを第1方向に動作させる第1操作を受け付けて第1操作信号を出力し、油圧アクチュエータを第2方向に動作させる第2操作を受け付けて第2操作信号を出力するアクチュエータ操作装置と、油圧アクチュエータが第1方向に動作する方向に作動油を供給させる第1制御信号、または油圧アクチュエータが第2方向に動作する方向に作動油を供給させる第2制御信号を方向切替弁に出力するコントローラとを備える。コントローラは、油圧アクチュエータを第1方向及び第2方向に交互に動作させる特定操作が行われている状態では、アクチュエータ操作装置からの第1操作信号及び第2操作信号に拘わらず、予め定められた保持時間を隔てて第1制御信号及び第2制御信号を交互に出力する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記車体に支持された作業装置と、
前記作業装置を駆動する油圧アクチュエータと、
作動油を貯留する作動油タンクと、
前記作動油タンクに貯留された作動油を圧送する油圧ポンプと、
前記油圧ポンプから圧送される作動油の前記油圧アクチュエータへの供給方向を切り替える方向切替弁と、
前記油圧アクチュエータを第1方向に動作させる第1操作を受け付けて第1操作信号を出力し、前記油圧アクチュエータを前記第1方向と逆向きの第2方向に動作させる第2操作を受け付けて第2操作信号を出力するアクチュエータ操作装置と、
前記アクチュエータ操作装置から出力された前記第1操作信号及び前記第2操作信号に基づいて、前記油圧アクチュエータが前記第1方向に動作する方向に作動油を供給させる第1制御信号、または前記油圧アクチュエータが前記第2方向に動作する方向に作動油を供給させる第2制御信号を前記方向切替弁に出力するコントローラとを備える作業機械において、
前記コントローラは、前記油圧アクチュエータを前記第1方向及び前記第2方向に交互に動作させる特定操作が行われている状態では、前記アクチュエータ操作装置からの前記第1操作信号及び前記第2操作信号に拘わらず、予め定められた保持時間を隔てて前記第1制御信号及び前記第2制御信号を交互に出力する特定制御を実行することを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において、
前記コントローラは、前記アクチュエータ操作装置から交互に出力される前記第1操作信号及び前記第2操作信号の単位時間当たりの操作回数が閾値以上になった場合に、前記特定操作が開始されたと判定して前記特定制御を実行することを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項2に記載の作業機械において、
前記コントローラは、前記特定操作が開始されたと判定された後、前記アクチュエータ操作装置から交互に出力される前記第1操作信号及び前記第2操作信号の単位時間当たりの操作回数が前記閾値未満になった場合に、前記特定操作が停止されたと判定して前記特定制御を停止することを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項2に記載の作業機械において、
前記特定操作の判定を実行するか否かを指示する判定指示装置を備えていることを特徴とする作業機械。
【請求項5】
請求項1に記載の作業機械において、
前記保持時間を指示する保持時間指示装置を備え、
前記コントローラは、前記特定制御において、前記保持時間指示装置を通じて指示された前記保持時間を隔てて前記第1制御信号及び前記第2制御信号を交互に出力することを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業装置を備える作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車体と、車体に支持された作業装置と、作業装置を駆動する油圧アクチュエータを操作する操作レバーとを備える作業機械が知られている。また、操作レバーとしては、オペレータの操作に対応する電気信号をコントローラに出力する電気式レバーがある(例えば、特許文献1を参照)。より詳細には、特許文献1には、油圧アクチュエータの応答速度を向上させるために、高応答作業と通常作業とでスタンバイ圧を切り替える技術が開示されている。
【0003】
また、作業機械の代表例としての油圧ショベルでは、バケットシリンダを繰り返し伸縮させることによって、バケットを小刻みに振動させて土砂を振り分ける、所謂「ガラ振り」が行われることがある。すなわち、ガラ振りを行おうとするオペレータは、操作レバーをダンプ側及びクラウド側に交互に倒伏させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-215009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1は、電気式レバーから出力された電気信号を油圧回路に対する制御信号に変換する必要があるため、電気式レバーに対するオペレータの操作と油圧アクチュエータの動作との間にタイムラグは生じてしまう。また、バケットシリンダのピストンには大きな慣性力が働くので、ガラ振りの際の操作レバーの操作速度が速くなると、操作レバーの操作速度にバケットシリンダが追従できない場合がある。
【0006】
本発明は、上記した実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、油圧アクチュエータを逆向きに繰り返し動作させる動作を、適切に実行可能な作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、車体と、前記車体に支持された作業装置と、前記作業装置を駆動する油圧アクチュエータと、作動油を貯留する作動油タンクと、前記作動油タンクに貯留された作動油を圧送する油圧ポンプと、前記油圧ポンプから圧送される作動油の前記油圧アクチュエータへの供給方向を切り替える方向切替弁と、前記油圧アクチュエータを第1方向に動作させる第1操作を受け付けて第1操作信号を出力し、前記油圧アクチュエータを前記第1方向と逆向きの第2方向に動作させる第2操作を受け付けて第2操作信号を出力するアクチュエータ操作装置と、前記アクチュエータ操作装置から出力された前記第1操作信号及び前記第2操作信号に基づいて、前記油圧アクチュエータが前記第1方向に動作する方向に作動油を供給させる第1制御信号、または前記油圧アクチュエータが前記第2方向に動作する方向に作動油を供給させる第2制御信号を前記方向切替弁に出力するコントローラとを備える作業機械において、前記コントローラは、前記油圧アクチュエータを前記第1方向及び前記第2方向に交互に動作させる特定操作が行われている状態では、前記アクチュエータ操作装置からの前記第1操作信号及び前記第2操作信号に拘わらず、予め定められた保持時間を隔てて前記第1制御信号及び前記第2制御信号を交互に出力する特定制御を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、油圧アクチュエータを逆向きに繰り返し動作させる動作を、適切に実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】油圧ショベルの側面図である。
図2】キャブの内部を示す模式図である。
図3】油圧ショベルの駆動回路を示す図である。
図4】油圧ショベルの制御ブロック図である。
図5】ガラ振り制御処理のフローチャートである。
図6】単位時間当たりの操作回数が閾値未満のときの操作レバーの操作方向及び方向切替弁のスプールの位置の推移を示す図である。
図7】単位時間当たりの操作回数が閾値以上のときの操作レバーの操作方向及び方向切替弁のスプールの位置の推移を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る作業機械としての油圧ショベル1の実施形態について、図面を用いて説明する。但し、作業機械の具体例は、油圧ショベル1に限定されず、ホイールローダ、ダンプトラック、クレーン車など、作業装置を有するものであればよい。また、本明細書中の前後左右は、特に断らない限り、油圧ショベル1に搭乗して操作するオペレータの視点を基準としている。
【0011】
図1は、油圧ショベル1の側面図である。図1に示すように、油圧ショベル1は、下部走行体2と、下部走行体2により支持された上部旋回体3とを備える。下部走行体2及び上部旋回体3は、車体の一例である。
【0012】
下部走行体2は、無限軌道帯である左右一対のクローラ4を備える。そして、走行モータ5の駆動により、左右一対のクローラ4が独立して回転する。その結果、油圧ショベル1が走行する。但し、下部走行体2は、クローラ4に代えて、装輪式であってもよい。
【0013】
上部旋回体3は、旋回モータ6によって旋回可能に下部走行体2に支持されている。すなわち、旋回モータ6が回転することによって、下部走行体2に対して上部旋回体3が旋回する。上部旋回体3は、ベースとなる旋回フレーム7と、旋回フレーム7の後部に配置されたカウンタウェイト9と、旋回フレーム7の前方中央に上下方向に回動可能に取り付けられたフロント作業機10(作業装置)と、旋回フレーム7の前方左側に配置されたキャブ(運転席)20とを主に備える。
【0014】
フロント作業機10は、上部旋回体3に起伏可能に支持されたブーム11と、ブーム11の先端に回動(クラウド、ダンプ)可能に支持されたアーム12と、アーム12の先端に回動(クラウド、ダンプ)可能に支持されたバケット13(アタッチメント)と、ブーム11を駆動させるブームシリンダ14と、アーム12を駆動させるアームシリンダ15と、バケット13を駆動させるバケットシリンダ16とを含む。なお、アタッチメントの具体例はバケット13に限定されず、グラップル、カッタ、破砕機、ブレーカ等でもよい。カウンタウェイト9は、フロント作業機10との重量バランスを取るためのもので、上面視円弧形状を成す重量物である。
【0015】
キャブ20は、左右方向(車体の幅方向)において、フロント作業機10に隣接して配置されている。より詳細には、キャブ20は、フロント作業機10の左方(左右方向の一方側)に配置されている。但し、キャブ20の配置は前述の例に限定されず、キャブ20は、左右方向におけるフロント作業機10の一方側に配置されていればよい。
【0016】
図2は、キャブ20の内部を示す模式図である。キャブ20には、油圧ショベル1を操作するオペレータが搭乗する内部空間が形成されている。図2に示すように、キャブ20の内部には、オペレータが着席するシート21と、シート21に着席したオペレータが操作する操作装置22とが設置されている。
【0017】
操作装置22は、上部旋回体3及びフロント作業機10を操作するための左右一対の操作レバー23、24(アクチュエータ操作装置)と、下部走行体2を操作するための左右一対の走行ペダル25、26とを含む。そして、キャブ20に搭乗したオペレータが操作装置22を操作することによって、下部走行体2が走行し、上部旋回体3が旋回し、フロント作業機10が動作する。なお、アクチュエータ操作装置の具体的な態様は、レバーに限定されない。
【0018】
操作レバー23、24は、オペレータによって前後左右に倒伏されることによって、後述するコントローラ50(図4参照)に操作信号を出力する。一方、操作レバー23、24は、中立位置のときに操作信号の出力を停止する。操作信号は、操作レバー23、24の倒伏方向及び倒伏量(すなわち、操作量)を示す。操作信号は、例えば、電圧値で表されてもよいし、PWM(Pulse Width Modulation)信号のデューティー比で表されてもよい。すなわち、操作レバー23、24は、操作量が大きくなるほど、電圧値またはデューティー比が大きい操作信号を出力する。
【0019】
本実施形態では、操作レバー23の左右方向の倒伏がバケットシリンダ16の伸縮(換言すれば、バケット13のダンプ及びクラウド)に対応付けられている。より詳細には、操作レバー23を右側に倒伏(以下、「右傾」と表記する。)させると、バケットシリンダ16が縮小して、バケット13がダンプする。また、操作レバー23を左側に倒伏(以下、「左傾」と表記する。)させると、バケットシリンダ16が伸長して、バケット13がクラウドする。
【0020】
なお、バケットシリンダ16の縮小は第1方向の動作の一例であり、バケットシリンダ16の伸長は第1方向と逆向きの第2方向の動作の一例である。また、操作レバー23の右傾は第1操作の一例であり、操作レバー23の左傾は第2操作の一例である。そして、操作レバー23は、オペレータによって右傾された(すなわち、第1操作を受け付けた)ことによって、コントローラ50に第1操作信号を出力する。また、操作レバー23は、オペレータによって左傾された(すなわち、第2操作を受け付けた)ことによって、コントローラ50に第2操作信号を出力する。
【0021】
また、本実施形態では、操作レバー23の前後方向の倒伏がブームシリンダ14の伸縮に対応付けられ、操作レバー24の左右方向の倒伏が旋回モータ6の回転に対応付けられ、操作レバー24の前後方向の倒伏がアームシリンダ15の伸縮に対応付けられている。但し、操作レバー23、24の倒伏方向と、油圧アクチュエータ(旋回モータ6、ブームシリンダ14、アームシリンダ15、及びバケットシリンダ16)の動作方向との組み合わせは、前述の例に限定されない。
【0022】
さらに、図4に示すように、操作装置22は、ガラ振りスイッチ27(判定指示装置)と、保持時間指示ダイヤル28(保持時間指示装置)とを備える。ガラ振りスイッチ27は、操作レバー23が左右方向に倒伏されたときに、後述するガラ振り制御処理を実行するか否か(換言すれば、後述する特定操作の判定(図5のS12)を行うか否か)を指示するものである。保持時間指示ダイヤル28は、後述する保持時間Tの値を指示するものである。なお、判定指示装置及び保持時間指示装置の具体的な形態は、スイッチ及びダイヤルに限定されない。
【0023】
図3は、油圧ショベル1の駆動回路を示す図である。図3に示すように、油圧ショベル1は、エンジン31と、作動油タンク32と、メインポンプ33(油圧ポンプ)と、パイロットポンプ34と、方向切替弁35、36、37、38と、パイロット制御弁40a、40b、41a、41b、42a、42b、43a、43bとを主に備える。
【0024】
エンジン31は、油圧ショベル1を駆動するための駆動力を発生させる原動機である。作動油タンク32は、作動油を貯留する。メインポンプ33は、エンジン31の動力によって回転し、作動油タンク32に貯留された作動油を作動油供給流路L1に圧送する。パイロットポンプ34は、エンジン31の動力によって回転し、作動油タンク32に貯留された作動油をパイロット圧油としてパイロット供給流路L3に圧送する。
【0025】
作動油供給流路L1は、作動油タンク32からメインポンプ33及び方向切替弁35~38を経由して、油圧アクチュエータ6、14~16(図3では、走行モータ5の図示を省略)に至る作動油の流路である。すなわち、作動油供給流路L1は、メインポンプ33によって圧送された作動油を、油圧アクチュエータ6、14~16に供給する供給流路である。
【0026】
また、油圧アクチュエータ6、14~16は、作動油還流流路L2を通じて作動油タンク32に接続されている。作動油還流流路L2は、油圧アクチュエータ6、14~16から方向切替弁35~38を経由して作動油タンク32に至る流路である。すなわち、作動油還流流路L2は、油圧アクチュエータ6、14~16から排出された作動油を、作動油タンク32に還流させる還流流路である。
【0027】
パイロット供給流路L3は、作動油タンク32からパイロットポンプ34及びパイロット制御弁40a~43bを経由して、方向切替弁35~38のパイロットポート35a~38bに至るパイロット圧油の流路である。すなわち、パイロット供給流路L3は、パイロットポンプ34によって圧送されたパイロット圧油を、パイロットポート35a~38bに供給する流路である。
【0028】
また、パイロットポート35a~38bは、パイロット還流流路L4を通じて作動油タンク32に接続されている。パイロット還流流路L4は、パイロットポート35a~38bからパイロット制御弁40a~43bを経由して作動油タンク32に至る流路である。すなわち、パイロット還流流路L4は、パイロットポート35a~38bから排出されたパイロット圧油を、作動油タンク32に還流させる流路である。
【0029】
方向切替弁35~38は、作動油供給流路L1及び作動油還流流路L2上に配置されている。方向切替弁35~38は、作動油供給流路L1を通じて油圧アクチュエータ6、14~16に供給される作動油の供給量及び供給方向と、作動油還流流路L2を通じて油圧アクチュエータ6、14~16から排出される作動油の排出量とを制御する。
【0030】
より詳細には、方向切替弁35は旋回モータ6に対する作動油の給排を制御し、方向切替弁36はブームシリンダ14に対する作動油の給排を制御し、方向切替弁37はアームシリンダ15に対する作動油の給排を制御し、方向切替弁38はバケットシリンダ16に対する作動油の給排を制御する。なお、方向切替弁35~38の構成は共通するので、以下、方向切替弁38について詳細に説明する。
【0031】
方向切替弁38は、遮断位置Aと、ダンプ位置Bと、クラウド位置Cとの間を移動するスプールを備える。遮断位置Aは、作動油供給流路L1及び作動油還流流路L2を遮断して、バケットシリンダ16への作動油の給排を停止する位置である。ダンプ位置B及びクラウド位置Cは、作動油供給流路L1及び作動油還流流路L2を開放して、バケットシリンダ16に対して作動油を給排する給排位置である。また、ダンプ位置B及びクラウド位置Cは、遮断位置Aを挟んで反対側に位置する。
【0032】
より詳細には、ダンプ位置Bは、バケットシリンダ16のロッド室に作動油を供給し、ボトム室から作動油を排出することによって、バケットシリンダ16を縮小させる位置である。クラウド位置Cは、バケットシリンダ16のボトム室に作動油を供給し、ロッド室から作動油を排出することによって、バケットシリンダ16を伸長させる位置である。また、スプールが遮断位置Aに近づくほど、バケットシリンダ16に対する作動油の給排量が減少する。一方、スプールがダンプ位置Bまたはクラウド位置Cに近づくほど、バケットシリンダ16に対する作動油の給排量が増加する。
【0033】
方向切替弁38のスプール初期位置は、遮断位置Aである。また、方向切替弁38は、パイロットポート38aにパイロット圧油が供給され、パイロットポート38bからパイロット圧油が排出されることによって、遮断位置Aからダンプ位置Bに向かって移動する。また、方向切替弁38は、パイロットポート38bにパイロット圧油が供給され、パイロットポート38aからパイロット圧油が排出されることによって、遮断位置Aからクラウド位置Cに向かって移動する。
【0034】
パイロット制御弁40a~43bは、パイロット供給流路L3及びパイロット還流流路L4上に配置されている。パイロット制御弁40a~43bは、パイロット供給流路L3を通じてパイロットポート35a~38bに供給される作動油の供給量と、パイロット還流流路L4を通じてパイロットポート35a~38bから排出される作動油の排出量とを制御する。パイロット制御弁40a~43bは、コントローラ50の制御に従って供給量を制御する電磁切替弁である。パイロット制御弁40a~43bの構成は共通するので、以下、パイロット制御弁43a、43bについて詳細に説明する。
【0035】
パイロット制御弁43aは、パイロットポート38aと、パイロットポンプ34及び作動油タンク32との間に配置されている。また、パイロット制御弁43aは、供給位置Dと、還流位置Eとの間を移動するスプールを備える。供給位置Dは、パイロットポンプ34から圧送されたパイロット圧油を、パイロットポート38aに供給する位置である。還流位置Eは、パイロットポート38aから排出されたパイロット圧油を、作動油タンク32に還流させる位置である。パイロット制御弁43aのスプールの初期位置は、還流位置Eである。そして、コントローラ50から出力される制御信号(例えば、指令電流)が大きくなるほど、スプールが還流位置Eから供給位置Dに近づく。
【0036】
パイロット制御弁43bは、パイロットポート38bと、パイロットポンプ34及び作動油タンク32との間に配置されている。また、パイロット制御弁43bは、供給位置Dと、還流位置Eとの間を移動するスプールを備える。そして、パイロット制御弁43bは、制御信号の大きさに応じてスプールが移動して、供給位置Dもしくは還流位置Eに切替えられる。
【0037】
パイロット制御弁43aを供給位置Dに位置させ且つパイロット制御弁43bを還流位置Eに位置させる(すなわち、方向切替弁38をダンプ位置Bに切り替える)制御信号は、バケットシリンダ16の縮小を指示する第1制御信号の一例である。また、パイロット制御弁43bを供給位置Dに位置させ且つパイロット制御弁43aを還流位置Eに位置させる(すなわち、方向切替弁38をクラウド位置Cに切り替える)制御信号は、バケットシリンダ16の伸長を指示する第2制御信号の一例である。
【0038】
図4は、油圧ショベル1の制御ブロック図である。図4に示すように、油圧ショベル1は、CPU51(Central Processing Unit)と、メモリ52とを有するコントローラ50を備える。メモリ52は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、またはこれらの組み合わせで構成される。コントローラ50は、メモリ52に格納されたプログラムコードをCPU51が読み出して実行することによって、後述する処理を実現する。
【0039】
但し、コントローラ50の具体的な構成はこれに限定されず、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などのハードウェアによって実現されてもよい。
【0040】
コントローラ50は、油圧ショベル1全体の動作を制御する。コントローラ50は、例えば、操作装置22から出力される操作信号に基づいて、エンジン31、メインポンプ33、及びパイロットポンプ34を回転させると共に、パイロット制御弁40a~43bを開閉(制御信号を出力)する。
【0041】
図5は、ガラ振り制御処理のフローチャートである。図6は、単位時間当たりの操作回数が閾値未満のときの操作レバー23の操作方向及び方向切替弁38のスプールの位置の推移を示す図である。図7は、単位時間当たりの操作回数が閾値以上のときの操作レバー23の操作方向及び方向切替弁38のスプールの位置の推移を示す図である。
【0042】
コントローラ50は、ガラ振りスイッチ27によってガラ振り制御処理の実行が指示されている状態において、操作レバー23が左右方向の一方に倒伏(本実施形態では、右傾)された(すなわち、第1操作信号が出力された)場合に、図5に示すガラ振り制御処理を実行する。なお、コントローラ50は、第2操作信号が先に出力された場合にも、ガラ振り制御処理を実行してもよい。
【0043】
「ガラ振り」とは、バケットシリンダ16を繰り返し伸縮させることによってバケット13を小刻みに振動させ、バケット13内の土砂の塊を振り分ける作業である。すなわち、キャブ20に搭乗するオペレータは、ガラ振りを実行しようとする場合に、操作レバー23の左傾及び右傾を交互に繰り返せばよい。後述する閾値Nth以上の速度で操作レバー23の左傾及び右傾を交互に繰り返す操作は、油圧アクチュエータを第1方向及び第2方向に交互に動作させる特定操作の一例である。但し、特定操作の具体的な態様は、前述の例に限定されない。
【0044】
まず、コントローラ50は、操作回数Nを初期化(=1)すると共に、操作時間tの計測を開始する(S11)。操作回数Nは、交互に出力される第1操作信号及び第2操作信号の数(すなわち、特定操作の繰り返し回数)を示す変数である。操作時間tは、操作レバー23から最初に操作信号が出力されてからの経過時間を指す。操作回数N及び操作時間tは、メモリ52に記憶される。
【0045】
次に、コントローラ50は、操作レバー23から単位時間当たりに交互に出力される前記第1操作信号及び前記第2操作信号の数(すなわち、単位時間当たりの操作回数N/t)と、予め定められた閾値Nthとを比較する(S12)。閾値Nthは、例えば、バケットシリンダ16が追従可能な操作レバー23の操作速度の上限値を指す。閾値Nthは、実験やシミュレーションによって予め定められて、メモリ52に記憶されている。
【0046】
次に、コントローラ50は、単位時間当たりの操作回数N/tが閾値Nth未満である場合に(S12:Yes)、特定操作が実行されていないと判定する。そして、コントローラ50は、特定操作が実行されていないと判定した場合に、操作レバー23から出力される操作信号に対応する制御信号を、パイロット制御弁43a、43bに出力する(S13)。すなわち、コントローラ50は、操作レバー23から出力される第1操作信号及び第2操作信号に基づいて、第1制御信号及び第2制御信号をパイロット制御弁43a、43bに出力する。ステップS13の処理は、通常制御の一例である。通常制御の詳細は、図6を参照して後述する。
【0047】
一方、コントローラ50は、単位時間当たりの操作回数N/tが閾値Nth以上である場合に(S12:No)、特定操作が実行されていると判定する。そして、コントローラ50は、特定操作が実行されていると判定した場合に、操作レバー23からの第1操作信号及び第2操作信号の出力タイミングに拘わらず、予め定められた保持時間Tを隔てて第1制御信号及び第2制御信号を、パイロット制御弁43a、43bに交互に出力する(S14)。ステップS14の処理は、特定制御の一例である。特定制御の詳細は、図7を参照して後述する。
【0048】
次に、コントローラ50は、操作レバー23から出力される操作信号が反転した(すなわち、第1操作信号及び第2操作信号の一方から他方に切り替わった)か否かを判定する(S15)。また、コントローラ50は、操作レバー23からの操作信号の出力が停止したか否かを判定する(S16)。
【0049】
そして、コントローラ50は、操作レバー23から出力される操作信号が反転したと判定した場合に(S15:Yes)、操作回数Nを1インクリメントして(S17)、ステップS12以降の処理を実行する。また、コントローラ50は、操作レバー23から出力される操作信号が変化していないと判定した場合に(S15:No&S16:No)、ステップS17の処理を実行せずに、ステップS12以降の処理を実行する。さらに、コントローラ50は、操作レバー23からの操作信号の出力が停止したと判定した場合に(S15:No&S16:Yes)、パイロット制御弁43a、43bを還流位置Eに切り替えて、ガラ振り制御処理を終了する。
【0050】
バケット13をダンプさせようとするオペレータは、操作レバー23を右傾したまま保持する。このとき、コントローラ50は、図5のS11→S12:Yes→S13→S15:No→S16:No→S12:Yes・・・の処理を繰り返し実行する。これにより、バケットシリンダ16が縮小を続けて、バケット13がダンプされる。また、バケット13をクラウドさせるために操作レバー23を左傾したまま保持した場合も、同様の順序で処理が行われる。
【0051】
また、ガラ振りしようとするオペレータは、操作レバー23の右傾及び左傾を交互に繰り返す。このとき、交互に繰り返される操作レバー23の右傾及び左傾が低速である場合(S12:Yes)、コントローラ50は、図5のS11→S12:Yes→S13→S15:Yes→S17→S12:Yes・・・の処理を繰り返し実行する。この場合の操作レバー23の操作信号及びパイロットポート38a、38bに供給されるパイロット圧の推移を、図6を参照して説明する。
【0052】
図6に示すように、コントローラ50は、右傾された操作レバー23から出力される第1操作信号に対応して、パイロット制御弁43a、43bに第1制御信号を出力する(S13)。これにより、方向切替弁38が遮断位置Aからダンプ位置Bに切り替えられる。但し、操作信号を制御信号に変換するタイムラグや遮断位置Aで停止している方向切替弁38のスプールに働く慣性力によって、方向切替弁38のスプールがダンプ位置Bに移動を開始するタイミングは、操作レバー23が右傾された(すなわち、第1操作信号が出力された)タイミングから遅延時間αだけ遅延する。
【0053】
次に、コントローラ50は、操作レバー23が右傾から左傾に切り替えられた(すなわち、第1操作信号から第2操作信号に反転した)場合に(S15:Yes→S17→S12:Yes)、パイロット制御弁43a、43bに第2制御信号を出力する(S13)。これにより、方向切替弁38がダンプ位置Bから遮断位置Aを経てクラウド位置Cに切り替えられる。
【0054】
ここで、単位時間当たりの操作回数N/tが閾値Nth未満であれば(S12:Yes)、操作レバー23が右傾から左傾に切り替えられるまでに、方向切替弁38のスプールはダンプ位置Bに到達して停止している。そのため、操作レバー23が左傾された(すなわち、第2操作信号が出力された)タイミングから、方向切替弁38のスプールがクラウド位置Cに移動を開始するまでの遅延時間αは、直前のステップS13と同等である。
【0055】
以下、単位時間当たりの操作回数N/tが閾値Nth未満となる速度で、操作レバー23の右傾及び左傾が交互に繰り返されると(S12:Yes)、第1操作信号及び第2操作信号の反転タイミングから遅延時間αだけ遅延して、方向切替弁38のスプールがダンプ位置B及びクラウド位置Cの間を移動する(S13)。すなわち、バケット13は、操作レバー23の操作タイミングから遅延時間αだけ遅延するものの、操作レバー23の操作に追従(連動)して小刻みに振動する。
【0056】
一方、交互に繰り返される操作レバー23の右傾及び左傾が高速である場合(S12:No)、コントローラ50は、図5のS11→S12:No→S14→S15:Yes→S17→S12:Yes・・・の処理を繰り返し実行する。この場合の操作レバー23の操作信号及びパイロットポート38a、38bに供給されるパイロット圧の推移を、図7を参照して説明する。但し、図6との共通点の詳細な説明は省略し、相違点を中心に説明する。
【0057】
図7において、最初に操作レバー23が右傾され、次に操作レバー23が左傾された時の処理は、図6と共通する。しかしながら、単位時間当たりの操作回数N/tが閾値Nth以上(S12:No)の場合、方向切替弁38のスプールがダンプ位置Bまたはクラウド位置Cに到達する前に、操作レバー23の操作信号が反転する。このような場合に通常制御を実行すると、移動中のスプールが停止して反対向きに移動を開始するのに更なる時間を要するので、操作レバー23の右傾及び左傾の繰り返し回数が増えるほど、遅延時間α1~α8が徐々に長くなる。
【0058】
そこで、コントローラ50は、最初に単位時間当たりの操作回数N/tが閾値Nth以上になった場合に(S12:No)、特定操作が開始されたと判定する。図7の例では、操作レバー23が2回目に右傾されたタイミングで、特定操作が開始されたと判定される。また、コントローラ50は、単位時間当たりの操作回数N/tが閾値Nth以上である期間は、特定操作が継続していると判定する。さらに、コントローラ50は、特定操作が開始されたと判定された後に、単位時間当たりの操作回数N/tが、閾値Nth以上の状態から閾値Nth未満まで低下した場合に(S12:Yes)、特定操作が停止されたと判定する。
【0059】
そして、コントローラ50は、特定操作が開始されてから停止されるまでの間、すなわち、特定操作が行われている状態では(S12:No)、ステップS14の処理を繰り返し実行する。すなわち、コントローラ50は、操作レバー23からの第1操作信号及び第2操作信号の出力タイミングに拘わらず、保持時間指示ダイヤル28を通じて指定された保持時間Tを隔てて、第1制御信号及び第2制御信号を交互にパイロット制御弁43a、43bに出力する。換言すれば、コントローラ50は、特定制御において、第1制御信号及び第2制御信号の一方を出力し、保持時間だけ待機してから第1制御信号及び第2制御信号の他方を出力することを、特定操作が行われている期間中に繰り返す。
【0060】
これにより、バケット13は、操作レバー23の操作とは非同期に振動(ガラ振り)する。より詳細には、バケット13は、オペレータによる操作レバー23の右傾及び左傾の繰返し速度より遅い速度で振動する。また、コントローラ50は、操作レバー23の操作が停止されると(S16:Yes)、パイロット制御弁43a、43bを還流位置Eに切り替えて、ガラ振り制御処理を終了する。そのため、特定制御におけるバケット13は、操作レバー23の右傾及び左傾の繰り返し回数より少ない回数だけ振動する。
【0061】
上記の実施形態によれば、例えば以下の作用効果を奏する。
【0062】
上記の実施形態によれば、操作レバー23に対して特定操作が行われた場合に、保持時間を挟んで制御信号が反転する。これにより、操作信号を制御信号に変換するタイムラグや方向切替弁38のスプールに働く慣性力によって、バケットシリンダ16が特定操作に追従できずに、ガラ振りが適切に実行できないという状況を回避できる。
【0063】
なお、特定制御が適用可能なのは、ガラ振りに限定されない。他の例として、ブーム11やアーム12を小刻みに振動させたり、上部旋回体3を左右に小刻みに旋回させる場合にも特定制御を適用することができる。
【0064】
また、上記の実施形態によれば、単位時間当たりの操作回数N/t及び閾値Nthの大小関係によって、特定操作の開始及び停止を判定する。これにより、方向切替弁38のスプールが追従可能な速度で操作レバー23の右傾及び左傾が繰り返されている場合には、操作レバー23の操作に連動してガラ振りが行われる。但し、特定操作の開始及び停止の具体的な判定方法は、上記の例に限定されない。他の例として、コントローラ50は、操作レバー23の操作速度に拘わらず、操作レバー23の右傾及び左傾が繰り返されている期間に特定制御を実行してもよい。
【0065】
また、上記の実施形態によれば、ガラ振りスイッチ27によってガラ振り制御処理(より詳細には、図5のS12)を実行するか否かを選択可能にした。これにより、特定制御(S13)を実行するか否かをオペレータに選択させることができる。但し、ガラ振りスイッチ27は省略可能である。
【0066】
さらに、上記の実施形態によれば、保持時間指示ダイヤル28によって保持時間の長さを調整することができるので、オペレータの所望の速度でガラ振りを実現できる。但し、保持時間Tは、予め定められた固定値であってもよい。この場合、保持時間指示ダイヤル28は省略可能である。
【0067】
なお、駆動回路の具体的な構成は、図3の例に限定されない。他の例として、パイロットポンプ34及びパイロット制御弁40a~43bを省略し、方向切替弁35~38を電磁切替弁としてもよい。そして、コントローラ50は、方向切替弁35~38に制御信号を出力して、スプールの位置を切り替えてもよい。
【0068】
上述した実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 油圧ショベル(作業機械)
2 下部走行体(車体)
3 上部旋回体(車体)
4 クローラ
5 走行モータ
6 旋回モータ
7 旋回フレーム
9 カウンタウェイト
10 フロント作業機(作業装置)
11 ブーム
12 アーム
13 バケット
14 ブームシリンダ
15 アームシリンダ
16 バケットシリンダ
20 キャブ
21 シート
22 操作装置
23,24 操作レバー(アクチュエータ操作装置)
25,26 走行ペダル
27 ガラ振りスイッチ(判定指示装置)
28 保持時間指示ダイヤル(保持時間指示装置)
31 エンジン
32 作動油タンク
33 メインポンプ(油圧ポンプ)
34 パイロットポンプ
35~38 方向切替弁
35a~38b パイロットポート
40a~43b パイロット制御弁
50 コントローラ
51 CPU
52 メモリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7