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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136104
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】膜ろ過装置およびその運転方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 61/08 20060101AFI20240927BHJP
   B01D 61/12 20060101ALI20240927BHJP
   B01D 65/08 20060101ALI20240927BHJP
   C02F 1/44 20230101ALI20240927BHJP
【FI】
B01D61/08
B01D61/12
B01D65/08
C02F1/44 A
C02F1/44 C
C02F1/44 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047082
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 圭悟
(72)【発明者】
【氏名】田島 直幸
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006JA53Z
4D006JA57A
4D006JA58A
4D006JA64Z
4D006JA67Z
4D006KA16
4D006KA41
4D006KE07P
4D006KE08P
4D006KE16P
4D006KE19P
4D006KE30P
4D006KE30R
4D006PA01
4D006PB02
4D006PB23
4D006PB27
(57)【要約】
【課題】省スペースかつ低コストで処理水質を向上させる。
【解決手段】膜ろ過装置10は、逆浸透膜またはナノろ過膜を有するろ過手段11と、原水供給源1とろ過手段11の一次側とを接続する供給ラインL1と、ろ過手段11の二次側とユースポイント2とを接続する透過水ラインL2と、貯水タンク12と、貯水タンク12と供給ラインL1とを接続する合流ラインL6と、透過水ラインL2と貯水タンク12とを接続する返送ラインL7と、供給ラインL1と合流ラインL6との接続部の近傍に設けられ、原水供給源1と貯水タンク12とのどちらをろ過手段11の一次側に連通させるかを切り替える第1の流路切替手段SV1,SV2と、透過水ラインL2と返送ラインL7との接続部に設けられ、ろ過手段11の二次側を貯水タンク12とユースポイント2とのどちらに連通させるかを切り替える第2の流路切替手段TV1と、を有している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆浸透膜またはナノろ過膜を有するろ過手段と、
原水供給源と前記ろ過手段の一次側とを接続する供給ラインと、
前記ろ過手段の二次側とユースポイントとを接続する透過水ラインと、
貯水タンクと、
前記貯水タンクと前記供給ラインとを接続する合流ラインと、
前記透過水ラインと前記貯水タンクとを接続する返送ラインと、
前記供給ラインと前記合流ラインとの接続部またはその近傍に設けられ、前記原水供給源と前記貯水タンクとのどちらを前記ろ過手段の一次側に連通させるかを切り替える第1の流路切替手段と、
前記透過水ラインと前記返送ラインとの接続部またはその近傍に設けられ、前記ろ過手段の二次側を前記貯水タンクと前記ユースポイントとのどちらに連通させるかを切り替える第2の流路切替手段と、を有する膜ろ過装置。
【請求項2】
前記第1の流路切替手段と前記第2の流路切替手段とを制御し、前記膜ろ過装置による膜分離処理を第1の処理と第2の処理とに切り替える制御部を有し、
前記制御部は、前記第1の処理では、前記原水供給源を前記ろ過手段の一次側に連通させるとともに前記ろ過手段の二次側を前記貯水タンクに連通させ、前記原水供給源からの原水を前記ろ過手段に供給して一次透過水と一次濃縮水とに分離し、前記分離した一次透過水を前記貯水タンクに貯留し、前記第2の処理では、前記貯水タンクを前記ろ過手段の一次側に連通させるとともに前記ろ過手段の二次側を前記ユースポイントに連通させ、前記貯水タンクに貯留された一次透過水を前記ろ過手段に供給して二次透過水と二次濃縮水とに分離し、前記分離した二次透過水を前記ユースポイントに供給する、請求項1に記載の膜ろ過装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記膜ろ過装置の膜分離処理を前記第2の処理に切り替える前に、前記貯水タンクを前記ろ過手段の一次側に連通させるとともに前記ろ過手段の二次側を前記貯水タンクに連通させ、前記貯水タンクに貯留された一次透過水を前記ろ過手段に供給して二次透過水と二次濃縮水とに分離し、前記分離した二次透過水を前記貯水タンクに還流させる、請求項2に記載の膜ろ過装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記分離した二次透過水の水質が所定の水質基準を満たした場合に前記還流を終了し、前記膜ろ過装置の膜分離処理を前記第2の処理に切り替える、請求項3に記載の膜ろ過装置。
【請求項5】
前記ろ過手段からの一次濃縮水または二次濃縮水を流通させる濃縮水ラインと、
前記濃縮水ラインから分岐し、前記濃縮水ラインを流れる一次濃縮水または二次濃縮水の一部を外部へ排出する排水ラインと、
前記濃縮水ラインから分岐して前記供給ラインに接続され、前記濃縮水ラインを流れる一次濃縮水または二次濃縮水の残りを前記供給ラインに還流させる還流水ラインと、
前記排水ラインを流れる一次濃縮水または二次濃縮水の流量を調整する流量調整手段と、を有し、
前記制御部は、前記膜ろ過装置による膜分離処理時に、前記透過水ラインを流れる一次透過水または二次透過水の流量と前記排水ラインを流れる一次濃縮水または二次濃縮水の流量との和に対する前記透過水ラインを流れる一次透過水または二次透過水の流量の割合である回収率の目標値に基づいて、前記排水ラインを流れる一次濃縮水または二次濃縮水の流量の目標流量を算出し、前記排水ラインを流れる一次濃縮水または二次濃縮水の流量が前記目標流量になるように前記流量調整手段を制御する排水流量制御を実行する、請求項2から4のいずれか1項に記載の膜ろ過装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1の処理では、前記回収率の目標値を第1の目標値に設定し、前記第2の処理では、前記回収率の目標値を前記第1の目標値を上回る第2の目標値に設定する、請求項5に記載の膜ろ過装置。
【請求項7】
前記ろ過手段に供給される原水または一次透過水と、前記ろ過手段からの一次透過水または二次透過水と、前記ろ過手段からの一次濃縮水または二次濃縮水とのいずれかの水温を検出する水温検出手段を有し、
前記制御部は、前記第1の処理では、前記水温検出手段による検出値に基づいて、前記ろ過手段の前記逆浸透膜またはナノろ過膜の膜面にシリカまたはカルシウムが析出しない最大の回収率を算出し、該算出した値を前記第1の目標値として設定する、請求項6に記載の膜ろ過装置。
【請求項8】
前記ろ過手段に供給される原水または一次透過水の導電率を検出する第1の導電率検出手段と、
前記ろ過手段からの一次透過水または二次透過水の導電率を検出する第2の導電率検出手段と、を有し、
前記制御部は、前記第2の処理では、前記水温検出手段による検出値と、前記第1の処理における前記第1および第2の導電率検出手段による検出値とに基づいて、前記ろ過手段の前記逆浸透膜またはナノろ過膜の膜面にシリカまたはカルシウムが析出しない最大の回収率を算出し、該算出した値を前記第2の目標値として設定するか、または、予め定められた値を前記第2の目標値として設定する、請求項7に記載の膜ろ過装置。
【請求項9】
前記ろ過手段に供給される原水または一次透過水の圧力を調整する圧力調整手段を有し、
前記制御部は、前記膜ろ過装置による膜分離処理時に、前記排水流量制御と並行して、前記透過水ラインを流れる一次透過水または二次透過水の流量が予め定められた設定流量になるように前記圧力調整手段を制御する透過水流量制御を実行する、請求項5に記載の膜ろ過装置。
【請求項10】
逆浸透膜またはナノろ過膜を有するろ過手段と、貯水タンクとを有する膜ろ過装置の運転方法であって、
原水供給源を前記ろ過手段の一次側に連通させるとともに前記ろ過手段の二次側を前記貯水タンクに連通させ、前記原水供給源からの原水を前記ろ過手段に供給して一次透過水と一次濃縮水とに分離し、前記分離した一次透過水を前記貯水タンクに貯留する工程と、
前記貯水タンクを前記ろ過手段の一次側に連通させるとともに前記ろ過手段の二次側をユースポイントに連通させ、前記貯水タンクに貯留された一次透過水を前記ろ過手段に供給して二次透過水と二次濃縮水とに分離し、前記分離した二次透過水を前記ユースポイントに供給する工程と、を含む、膜ろ過装置の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜ろ過装置およびその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被処理水に含まれる不純物を除去する水処理装置として、逆浸透膜(RO膜)またはナノろ過膜(NF膜)を有する膜ろ過装置が知られている。この装置では、所定の供給圧力でRO膜またはNF膜に供給された被処理水(原水)が、RO膜またはNF膜により、透過水と濃縮水とに分離される。これにより、不純物が除去された処理水(透過水)を得ることができる。
【0003】
RO膜またはNF膜を有する膜ろ過装置では、多くの場合、水の有効利用(節水)の観点から、不純物を含む濃縮水の一部を濃縮排水として外部に排出し、残りを濃縮還流水としてRO膜またはNF膜の上流側に還流させる構成が採用されている。これにより、すべての濃縮水を濃縮排水として排出する場合に比べて、回収率(透過水の流量と濃縮排水の流量との和に対する透過水の流量の割合)を向上させて節水を実現することができる。それと同時に、このような膜ろ過装置では、水温の変化(すなわち、水の粘性の変化)による透過水の流量変化に対応するために、加圧ポンプの回転数を制御することでRO膜またはNF膜への原水の供給圧力を調整して、透過水の流量を一定に維持する流量制御が行われている。透過水の流量制御では、透過水の流量が一定になるように原水の供給圧力を調整すると、それに応じて濃縮水の流量も変化する。このような濃縮水の流量変化は、ファウリングやスケーリングによる膜の詰まりの発生や、圧力損失の増大による膜の破損につながるため、透過水の流量制御を行う場合には、濃縮水(濃縮還流水または濃縮排水)の流量制御も行うことが望ましい。例えば、特許文献1には、透過水の流量制御に加え、濃縮排水の流量を設定流量に調整する流量制御を行うことが記載されている。
【0004】
一方で、RO膜またはNF膜を有する膜ろ過装置では、処理水質の向上を目的として、複数のRO膜またはNF膜で原水を順次処理することも行われている。特許文献1には、上述した流量制御が行われるRO膜またはNF膜の下流側に、さらに別のRO膜またはNF膜を設け、上流側のRO膜またはNF膜で分離された透過水を下流側のRO膜またはNF膜でさらに処理することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-167146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、複数のろ過手段(RO膜またはNF膜)を有する構成は、設置スペースに余裕がある場合にしか採用することができず、加圧ポンプとして容量が大きいものを採用する必要があるなど、コスト面での制約も大きい。
【0007】
そこで、本発明の目的は、省スペースかつ低コストで処理水質を向上させる膜ろ過装置およびその運転方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するために、本発明の膜ろ過装置は、逆浸透膜またはナノろ過膜を有するろ過手段と、原水供給源とろ過手段の一次側とを接続する供給ラインと、ろ過手段の二次側とユースポイントとを接続する透過水ラインと、貯水タンクと、貯水タンクと供給ラインとを接続する合流ラインと、透過水ラインと貯水タンクとを接続する返送ラインと、供給ラインと合流ラインとの接続部またはその近傍に設けられ、原水供給源と貯水タンクとのどちらをろ過手段の一次側に連通させるかを切り替える第1の流路切替手段と、透過水ラインと返送ラインとの接続部またはその近傍に設けられ、ろ過手段の二次側を貯水タンクとユースポイントとのどちらに連通させるかを切り替える第2の流路切替手段と、を有している。
【0009】
また、本発明の膜ろ過装置の運転方法は、逆浸透膜またはナノろ過膜を有するろ過手段と、貯水タンクとを有する膜ろ過装置の運転方法であって、原水供給源をろ過手段の一次側に連通させるとともにろ過手段の二次側を貯水タンクに連通させ、原水供給源からの原水をろ過手段に供給して一次透過水と一次濃縮水とに分離し、分離した一次透過水を貯水タンクに貯留する工程と、貯水タンクをろ過手段の一次側に連通させるとともにろ過手段の二次側をユースポイントに連通させ、貯水タンクに貯留された一次透過水をろ過手段に供給して二次透過水と二次濃縮水とに分離し、分離した二次透過水をユースポイントに供給する工程と、を含んでいる。
【0010】
このような膜ろ過装置およびその運転方法によれば、単一(同一)のろ過手段で原水を2度処理することが可能になり、2つのろ過手段を有する構成で実施されるのと同様の処理工程を実施することができる。その結果、新たな設置スペースを確保したり、余分なコストをかけたりすることなく、2つのろ過手段を有する構成で得られるのと同様の良好な処理水質を得ることができる。
【発明の効果】
【0011】
以上、本発明によれば、省スペースかつ低コストで処理水質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施形態に係る膜ろ過装置の構成を示す概略図である。
図2】本発明の第2の実施形態に係る膜ろ過装置の構成を示す概略図である。
図3】本発明の第3の実施形態に係る膜ろ過装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0014】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る膜ろ過装置の構成を示す概略図である。
【0015】
膜ろ過装置10は、被処理水に含まれる不純物を除去して処理水を生成する装置であり、逆浸透膜(RO膜)またはナノろ過膜(NF膜)を有するろ過手段11と、貯水タンク12とを有している。ろ過手段11は、被処理水を、不純物を含む濃縮水と、不純物が除去された透過水とに分離する機能を有し、貯水タンク12は、詳細は後述するが、ろ過手段11で分離された透過水を一時的に貯留する機能を有している。
【0016】
また、膜ろ過装置10は、ろ過手段11に被処理水を供給する供給ラインL1と、ろ過手段11からの透過水を流通させる透過水ラインL2と、ろ過手段11からの濃縮水を流通させる濃縮水ラインL3とを有している。供給ラインL1は、上流側が原水供給源1に接続され、下流側がろ過手段11の一次側に接続されている。透過水ラインL2は、上流側がろ過手段11の二次側に接続され、下流側がユースポイント2に接続されている。濃縮水ラインL3は、上流側がろ過手段11の一次側に接続され、下流側が2つのライン、すなわち、濃縮水の一部を外部に排出する排水ラインL4と、その残りを供給ラインL1に還流させる還流水ラインL5とに分岐している。還流水ラインL5は、濃縮水ラインL3から分岐した後、後述する定量ポンプ13の上流側で供給ラインL1に接続されている。
【0017】
貯水タンク12には、合流ラインL6と返送ラインL7とが接続されている。合流ラインL6は、上流側が貯水タンク12の下部に接続され、下流側が供給ラインL1に接続されている。返送ラインL7は、上流側が透過水ラインL2に接続され、下流側が貯水タンク12の上部に接続されている。供給ラインL1のうち合流ラインL6との接続部の上流側には開閉弁SV1が設けられ、合流ラインL6にも開閉弁SV2が設けられている。これら開閉弁SV1,SV2は、原水供給源1と貯水タンク12のどちらをろ過手段11の一次側に連通させるかを切り替える流路切替手段として機能する。また、透過水ラインL2と返送ラインL7との接続部には三方弁TV1が設けられている。三方弁TV1は、ろ過手段11の二次側を貯水タンク12とユースポイント2のどちらに連通させるかを切り替える流路切替手段として機能する。なお、開閉弁SV1,SV2の代わりに、供給ラインL1と合流ラインL6との接続部に三方弁が設けられていてもよく、三方弁TV1の代わりに、透過水ラインL2と返送ラインL7との接続部の近傍に複数の開閉弁が設けられていてもよい。
【0018】
また、膜ろ過装置10は、後述する2つの流量制御を実行するための構成として、供給ラインL1に設けられた定量ポンプ13と、透過水ラインL2に設けられた透過水流量計21と、濃縮水ラインL3に設けられた流量調整弁CV1と、排水ラインL4に設けられた流量調整弁CV2および排水流量計22と、還流水ラインL5に設けられた手動弁MV1とを有している。さらに、膜ろ過装置10は、後述する2つの処理工程を制御するための構成として、貯水タンク12に設けられた水位センサ23と、供給ラインL1に設けられた給水導電率計24と、透過水ラインL2に設けられた透過水導電率計25とを有している。
【0019】
定量ポンプ13は、ろ過手段11に一定流量の被処理水を供給する機能を有している。透過水流量計21は、透過水ラインL2を流れる透過水の流量を検出する流量検出手段として機能する。流量調整弁CV1は、ろ過手段11の一次側にかかる被処理水の圧力(ろ過手段11への被処理水の供給圧力)を調整する圧力調整手段として機能する。流量調整弁CV2は、排水ラインL4を流れる濃縮水(以下、「濃縮排水」ともいう)の流量を調整する流量調整手段として機能し、排水流量計22は、濃縮排水の流量を検出する流量検出手段として機能する。手動弁MV1は、排水ラインL4を流れる濃縮水と還流水ラインL5を流れる濃縮水(以下、「濃縮還流水」ともいう)の圧力バランスを調整する圧力調整弁として機能する。水位センサ23は、貯水タンク12内の水位を検出する機能を有している。給水導電率計24は、供給ラインL1を流れる被処理水の導電率を検出する導電率検出手段として機能し、透過水導電率計25は、透過水ラインL2を流れる透過水の導電率を検出する導電率検出手段として機能する。
【0020】
本実施形態の膜ろ過装置10では、通常運転(膜分離処理)として2つの処理工程を実施することで処理水が生成されるが、膜ろ過装置10は、それら2つの処理工程を制御する制御部20を有している。以下、これら2つの処理工程について説明する。
【0021】
一次処理工程(第1の処理)は、原水供給源1から供給される原水をろ過手段11で処理する工程である。一次処理工程では、開閉弁SV1が開放されるとともに開閉弁SV2が閉鎖されることで、原水供給源1とろ過手段11の一次側が連通され、それと同時に、三方弁TV1が切り替えられることで、ろ過手段11の二次側と貯水タンク12が連通される。そして、定量ポンプ13の作動により、原水供給源1からの原水が供給ラインL1を通じてろ過手段11に供給され、一次透過水と一次濃縮水とに分離される。ろ過手段11で分離された一次透過水は、透過水ラインL2と返送ラインL7とを通じて貯水タンク12に供給されて貯留される。なお、ろ過手段11で分離された一次濃縮水の一部は、一次濃縮排水として排水ラインL4を通じて外部に排出され、残りは、一次濃縮還流水として還流水ラインL5を通じて供給ラインL1に還流される。一次処理工程は、水位センサ23により検出された貯水タンク12内の水位が所定の上限水位に達するまで、あるいは、ユースポイント2からの採水要求があるまで実施される。
【0022】
二次処理工程(第2の処理)は、貯水タンク12に貯留された一次透過水をろ過手段11で処理する工程であり、ユースポイント2からの採水要求があった場合に開始される。第2の処理工程では、開閉弁SV1が閉鎖されるとともに開閉弁SV2が開放されることで、貯水タンク12とろ過手段11の一次側が連通され、それと同時に、三方弁TV1が切り替えられることで、ろ過手段11の二次側とユースポイント2が連通される。そして、定量ポンプ13の作動により、貯水タンク12に貯留された一次透過水が合流ラインL6と供給ラインL1を通じてろ過手段11に供給され、二次透過水と二次濃縮水とに分離される。ろ過手段11で分離された二次透過水は、透過水ラインL2を通じてユースポイント2に処理水として供給される。なお、ろ過手段11で分離された二次濃縮水の一部は、二次濃縮排水として排水ラインL4を通じて外部に排出され、残りは、二次濃縮還流水として還流水ラインL5を通じて供給ラインL1に還流される。第2の処理工程は、水位センサ23により検出された貯水タンク12内の水位が所定の下限水位に達するか、あるいは、ユースポイント2からの採水要求がなくなった時点で停止される。
【0023】
こうして、2つの処理工程を実施することで、単一(同一)のろ過手段11で原水を2度処理することが可能になり、2つのろ過手段(RO膜またはNF膜)を有する構成と同様の処理工程を再現することができる。その結果、新たな設置スペースを確保したり、余分なコストをかけたりすることなく、2つのろ過手段を有する構成で得られるのと同様の良好な処理水質を得ることができる。
【0024】
なお、ユースポイント2からの採水要求があった場合に、採水工程である二次処理工程をすぐに実施するのではなく、その前に、ろ過手段11で分離された二次透過水を貯水タンク12に還流させる採水準備工程を実施してもよい。採水準備工程では、二次処理工程と同様に、開閉弁SV1が閉鎖されるとともに開閉弁SV2が開放されることで、貯水タンク12とろ過手段11の一次側が連通される一方、一次処理工程からの三方弁TV2の切り替えは行われない。そのため、ろ過手段11の二次側と貯水タンク12との連通が維持された状態で、ろ過手段11による一次透過水の分離が行われ、分離された二次透過水は、透過水ラインL2と返送ラインL7とを通じて貯水タンク12に還流される。採水準備工程は、二次透過水の水質が所定の水質基準を満たすようになるまで行われることが好ましい。ここで、二次透過水の水質が所定の水質基準を満たしているか否かは、透過水導電率計25により検出された二次透過水の導電率が所定値以下であるか否かに基づいて判定することができる。すなわち、透過水導電率計25による検出値を所定値以下である場合に、二次透過水の水質が所定の水質基準を満たしていると判定され、所定値を上回る場合に、所定の水質基準を満たしていないと判定される。なお、導電率計の代わりに比抵抗計を設置し、透過水の比抵抗を検出することでその水質を監視してもよい。
【0025】
また、制御部20は、上述した一次処理工程と二次処理工程の実行中に、2つの流量制御、すなわち、透過水の流量制御である透過水流量制御と、濃縮排水の流量制御である排水流量制御とを並行して実行する。具体的には、透過水流量制御では、透過水ラインL2を流れる一次透過水の流量が設定流量になるように流量調整弁CV1が制御される。排水流量制御では、透過水ラインL2を流れる透過水の流量から濃縮排水(排水ラインL4を流れる濃縮水)の目標流量が算出され、濃縮排水の流量がその目標流量になるように流量調整弁CV2の開度が制御される。以下、これら2つの流量制御の詳細について説明する。なお、各流量制御は、一部を除いて両工程で同様に行われるため、以下の一次処理工程に関連した説明は、特に断らない限り、「一次」を「二次」と読み替えることで二次処理工程にも該当する。
【0026】
透過水流量制御では、透過水流量計21による一次透過水の検出流量(検出値)が一定(予め設定された設定流量)になるように、流量調整弁CV1の開度が調整される。例えば、水温が変化すると、水の粘性が変化することで、ろ過手段11で分離される一次透過水の流量も変化するが、この変化に応じて、制御部20は、流量調整弁CV1の開度を調整する。すなわち、水温が低くなると、水の粘性は高くなり、その結果、ろ過手段11からの一次透過水の流量は減少する。そのため、制御部20は、この減少分を補うために、流量調整弁CV1を閉じるように制御することで、ろ過手段11への原水の供給圧力を増加させる。また、水温が高くなると、水の粘性は低くなり、その結果、ろ過手段11からの一次透過水の流量は増加する。そのため、制御部20は、この増加分を打ち消すために、流量調整弁CV1を開くように制御することで、ろ過手段11への原水の供給圧力を低下させる。こうして、流量調整弁CV1の開度が調整され、ろ過手段11の一次側にかかる原水の圧力が調整されることで、透過水ラインL2を流れる一次透過水の流量が一定に維持される。
【0027】
一方で、上述したようにろ過手段11への原水の供給圧力が変化しても、供給ラインL1に定量ポンプ13が設けられていることで、濃縮水ラインL3を流れる一次濃縮水の流量を一定に保持することができる。すなわち、定量ポンプ13は、供給ラインL1を流れる原水の圧力が一定以上のときに吐出流量を一定に保持する機能を有している。そのため、透過水流量制御により、流量調整弁CV1の開度が変化して原水の供給圧力が変化した場合にも、ろ過手段11に供給される原水の流量を一定に保持することができ、それにより、一次濃縮水の流量も一定に保持することができる。その結果、透過水流量制御が排水ラインL4や還流水ラインL5を流れる一次濃縮水の流量に影響を及ぼすことがなくなり、後述する排水流量制御は、純水流量制御と干渉することなく独立して行われることになる。また、このような透過水流量制御は、原水の供給圧力を調整するためにインバータによるポンプの回転数制御を行う必要がないため、例えば、単相100Vの交流電源で動作する加圧ポンプを使用する場合にも実施可能になるなど、高い汎用性を実現する点でも有利である。
【0028】
なお、定量ポンプ13は、供給ラインL1を流れる原水の圧力が一定以上のときに吐出流量を一定に保持することができるものであれば、その種類に特に制限はない。ここで、一定とは、吐出流量が厳密に一定であるだけでなく、所定の誤差範囲内で変動(脈動)していてもよいことを意味する。したがって、定量ポンプ13としては、例えば、ベーンポンプ、ダイアフラムポンプ、プランジャーポンプ、ピストンポンプ、ねじポンプなどが挙げられる。その中でも、低騒音でコンパクトな点で、ベーンポンプ、ダイアフラムポンプを用いることが好ましく、さらに、他のポンプに比べて脈動が少ない点で、ベーンポンプを用いることがより好ましい。
【0029】
また、定量ポンプ13の吐出規定流量は、一方では、ファウリングやスケーリングによる膜の詰まりが発生しない程度であればよく、他方では、圧力損失の増大によって膜を破損させない程度であればよい。ただし、定量ポンプ13の規定吐出流量を必要以上に大きくすることは、定量ポンプ13のサイズが大きくなることにつながるため、エネルギー消費の点で好ましくない。そのため、定量ポンプ13の規定吐出流量は、ろ過手段11の透過流束とろ過手段11に要求される濃縮水の最低流量も考慮して設定され、例えば、ろ過手段11として直径が約10.16cm(4インチ)のRO膜を用いる場合、原水の性状に合わせて300~1800L/hの範囲である。なお、ろ過手段11に要求される濃縮水の最低流量とは、ファウリングやスケーリングによる膜の詰まりが発生しないための濃縮水ラインL3に流すべき濃縮水の最低流量を意味する。
【0030】
排水流量制御では、ろ過手段11の回収率(一次透過水の流量と一次濃縮排水の流量との和に対する一次透過水の流量の割合)を考慮して一次濃縮排水の目標流量が算出され、排水流量計22による二次濃縮排水の検出流量(検出値)がその目標流量になるように、流量調整弁CV2の開度を調整される。このときの回収率は、水の有効利用(節水)の観点から、できるだけ高いことが好ましい。すなわち、一次濃縮排水の流量はできるだけ少ないことが好ましい。しかしながら、定量ポンプ13により一次濃縮水の流量が一定に保持されているため、一次濃縮排水の流量が少なくなると、当然のことながら、還流水ラインL5から供給ラインL1に還流する一次濃縮水の流量が増加する。それにより、原水の不純物濃度が高まると、ろ過手段11のRO膜またはNF膜の膜面に不純物(特に、シリカまたはカルシウム)が析出するスケーリングが起こりやすくなってしまう。したがって、濃縮排水の流量は、一次濃縮水の不純物濃度が溶解度以上の濃度にならない範囲で回収率が最大になるように、すなわち、不純物であるシリカまたはカルシウムが析出しない範囲で回収率が最大になるように設定される。
【0031】
ただし、不純物の溶解度は、水温に応じて変化する。例えば、シリカの場合、その溶解度は温度に比例して増加し、カルシウム(炭酸カルシウム)の場合、温度が上昇するにつれてその溶解度は減少する。そのため、水温が低い場合には、シリカの溶解度が相対的に低く、シリカが析出しやすい(シリカスケールが発生しやすい)が、水温が高くなると、カルシウムの溶解度が相対的に低くなるため、カルシウムが析出しやすく(カルシウムスケールが発生しやすく)なる。そこで、膜ろ過装置10には、図示していないが、原水と一次透過水と二次濃縮水とのいずれかの水温を検出する温度センサ(水温検出手段)が設けられており、この温度センサで検出された水温に基づいて、一次濃縮排水の最適な目標流量が算出される。
【0032】
具体的には、まず、検出された水温でシリカが析出する理論上の回収率(以下、「シリカの析出回収率」という)と、検出された水温でカルシウム(炭酸カルシウム)が析出する理論上の回収率(以下「カルシウムの析出回収率」という)が算出される。なお、シリカの析出回収率とカルシウムの析出回収率のそれぞれの算出方法については後述する。次に、シリカの析出回収率とカルシウムの析出回収率とが比較され、目標回収率として、より小さい方の析出回収率が設定される。そして、この目標回収率と、透過水流量計21による一次透過水の検出流量とに基づいて、以下の式(1)により、一次濃縮排水の目標流量が算出されて設定される。
(一次濃縮排水の流量)=
(一次透過水の検出流量/目標回収率)-(一次透過水の検出流量) (1)
【0033】
スケーリングの発生を確実に抑制するという観点からは、上記式(1)で算出された目標流量を上回る流量を一次濃縮排水の設定流量として設定することもできるが、節水の観点からは、算出された目標流量を一次濃縮排水の設定流量として設定することが好ましい。なお、回収率(目標回収率)として、通常は、パーセントで表した値が用いられるが、上記式(1)では、小数で表した値が用いられることは言うまでもない。
【0034】
ここで、シリカの析出回収率とカルシウムの析出回収率の算出方法についてそれぞれ説明する。
【0035】
(シリカの析出回収率の算出方法)
シリカの析出回収率Yは、検出された水温でのシリカの溶解度(mg/L)をCとし、予め測定された原水のシリカ濃度(mg/L)をFとしたとき、以下の式(2)から算出される。
=(C-F)/C (2)
【0036】
なお、シリカの溶解度の算出方法としては、ASTM(American Society for Testing and Materials)D4993-89などに規定された方法を用いることができる。
【0037】
(カルシウムの析出回収率の算出方法)
カルシウムの析出回収率は、濃縮水のランゲリア指数を算出する方法を利用して算出される。ここで、ランゲリア指数(飽和指数)とは、カルシウム(炭酸カルシウム)の析出の可能性を示す指標であり、水の実際のpHと、理論pH(pHs:水中の炭酸カルシウムが溶解も析出もしない平衡状態にあるときのpH)との差(pH-pHs)を意味する。すなわち、ランゲリア指数が正の値で絶対値が大きいほど炭酸カルシウムが析出しやすくなり、負の値では炭酸カルシウムは析出されない。そのため、カルシウムの析出回収率は、濃縮水のランゲリア指数がゼロになるときの回収率として算出される。なお、より安全側の値として設定するために、カルシウムの析出回収率は、濃縮水のランゲリア指数が負の値になるときの回収率であってもよい。
【0038】
濃縮水のランゲリア指数は、濃縮水のpHと、濃縮水の不純物濃度(カルシウム濃度、総アルカリ度、および蒸発残留物濃度)と、検出された水温とから算出される。ランゲリア指数の算出方法としては、例えば、特開平11-267687号公報(段落[0025]~[0027])などに記載された方法を用いることができる。また、濃縮水の不純物濃度(カルシウム濃度、総アルカリ度、および蒸発残留物濃度)は、予め測定された原水の不純物濃度(カルシウム濃度、総アルカリ度、および蒸発残留物濃度)と、回収率とから算出される。したがって、カルシウムの析出回収率Yは、濃縮水のランゲリア指数がゼロになるときの濃縮水の不純物濃度(mg/L)をCとし、予め測定された原水の不純物濃度(mg/L)をFとしたとき、以下の式(3)の関係で表されることになる。
=(C-F)/C (3)
【0039】
なお、二次処理工程時には、ろ過手段11で一度処理された一次透過水が被処理水としてろ過手段11に供給されるため、一次処理工程時に比べて、ろ過手段11に供給される被処理水の不純物濃度が低くなる。そのため、上述した目標回収率の設定方法では、シリカおよびカルシウムの析出回収率が実際よりも低く見積もられてしまい、それにより、目標回収率も上述した最大の回収率より低く設定され、無駄な濃縮排水が発生してしまう。そこで、二次処理工程時には、さらなる節水のために、このような点も考慮してシリカおよびカルシウムの析出回収率を算出することが好ましく、それに応じて、目標回収率を設定することが好ましい。具体的には、二次処理工程時のシリカの析出回収率Y’およびカルシウムの析出回収率Y’は、以下の式(4)、(5)からそれぞれ算出される。
’=(CN-F)/CN (4)
’=(CN-F)/CN (5)
ここで、Nは、一次処理工程時に給水導電率計24により検出される原水の導電率Cfと、一次処理工程時に透過水導電率計25により検出される一次透過水の導電率Cpとの比Cp/Cfである。
【0040】
こうして算出されたシリカの析出回収率Y’とカルシウムの析出回収率Y’とが比較され、目標回収率として、より小さい方の析出回収率が設定されることは、一次処理工程時と同様である。そして、この目標回収率と、透過水流量計21による一次透過水の検出流量とに基づいて、上記式(1)により、一次濃縮排水の目標流量が算出されて設定されることも、一次処理工程時と同様である。このようにして、二次処理工程時のろ過手段11の目標回収率(第2の目標値)を一次処理工程時(第1の目標値)よりも高く設定することができ、さらなる節水を実現することができる。
【0041】
二次処理工程時のシリカおよびカルシウムの析出回収率の算出方法は、上述した方法に限定されるものではない。例えば、ろ過手段11に使用されるRO膜またはNF膜の性能を予め実験的に検証し、それに基づいて、二次処理工程時にろ過手段11に供給される被処理水(一次透過水)の不純物濃度を予測することで、二次処理工程時のシリカおよびカルシウムの析出回収率をそれぞれ算出してもよい。また、ろ過手段11の目標回収率として、一次処理工程時には、上述したように水温に基づいて算出される可変値に設定される一方、二次処理工程時には、それを上回るように予め定められた固定値に設定されていてもよい。
【0042】
シリカおよびカルシウムの析出回収率の算出方法や一次濃縮排水の目標流量の算出方法は、例えば定量ポンプの容量や原水の流量などの装置設計上の制約によって予め回収率や流量に制約がある場合には、上述した限りではない。また、透過水流量制御によって透過水ラインL2を流れる一次透過水の流量が一定に調整されるため、一次濃縮排水の目標流量の算出には、予め定められた透過水の設定流量を用いることもできる。ただし、この方法は、一次透過水の設定流量と実際の流量が一致していない場合に、実際の回収率が目標回収率からずれる可能性があるため好ましくない。すなわち、透過水の実際の流量が設定流量よりも大きい場合には、実際の回収率が目標回収率を上回ることでスケーリングが発生したり、透過水の実際の流量が設定流量よりも小さい場合には、実際の回収率が目標回収率を下回ることで節水を図ることができなくなったりする。
【0043】
したがって、一次濃縮排水の設定流量の算出には、上述したように、透過水流量計21による一次透過水の検出流量を用いることが好ましい。これにより、透過水流量制御において一次透過水の流量制御が適切に実施されず、それにより、一次透過水の流量が実質的に一定に調整されない事態が発生しても、実際の回収率が目標の回収率からずれることを抑制することができる。なお、実際の算出には、一次透過水の検出流量のばらつきなどによる影響を最小限に抑えるために、所定検出時間や所定検出回数における平均流量を用いることが好ましい。
【0044】
上述のように回収率制御を行う場合、流量調整弁CV2としては、電動比例制御弁を用いることが好ましい。これにより、電動比例制御弁の分解能に応じて開度調整を細かく行うことができ、電磁弁の組み合わせなどによる段階式での開度調整に比べて、回収率を滑らかに調整することができる。例えば、50~70%の範囲の回収率を5段階(50%、55%、60%、65%、70%)にしか制御できない段階式では、目標回収率が64%に設定された場合、回収率を60%にしか調整することができず、無駄な濃縮排水が発生してしまう。したがって、流量調整弁CV2として電動比例制御弁を用いることは、このような濃縮排水の無駄も削減することができるため、節水の観点からも有利である。
【0045】
なお、本実施形態では、上述したように、定量ポンプ13により一次濃縮水の流量が一定に維持されるため、排水ラインL4および還流水ラインL5の一方を流れる一次濃縮水の流量を規定するだけで、他方を流れる一次濃縮水の流量も規定することができる。そのため、図示した実施形態では、排水ラインL4に流量制御手段としての流量調整弁CV2と排水流量計22が設けられ、還流水ラインL5には、圧力バランス調整のための手動弁MV1が設けられているが、その逆であってもよい。すなわち、還流水ラインL5に、流量調整弁(比例制御弁)と流量計が設けられ、排水ラインL4に、圧力バランス調整のための手動弁が設けられていてもよい。あるいは、排水ラインL4および還流水ラインL5の両方に、流量調整弁(比例制御弁)と流量計を設けることもできる。
【0046】
上述した実施形態では、1つの制御部20により、膜ろ過装置10のすべての運転制御が行われるが、処理工程の切り替えを行う制御部と、それぞれの流量制御を実行する制御部とが別個に設けられていてもよい。また、それぞれの流量制御も別個に設けられた制御部によって実行されてもよい。
【0047】
(第2の実施形態)
図2は、本発明の第2の実施形態に係る膜ろ過装置の構成を示す概略図である。以下、第1の実施形態と同様の構成については、図面に同じ符号を付してその説明を省略し、第1の実施形態と異なる構成のみ説明する。なお、以下の説明では、便宜上、一次処理工程と二次処理工程とは特に区別しない。
【0048】
本実施形態は、濃縮水ラインL3に設けられていた流量調整弁CV1が供給ラインL1に設けられている点で、第1の実施形態と異なっている。これに伴い、濃縮水ラインL3には、濃縮水ラインL3を流れる濃縮水の流量を一定に保持する定流量弁14が設けられ、供給ラインL1には、第1の実施形態の定量ポンプ13の代わりに、被処理水の圧力変動に応じて吐出流量が変化する加圧ポンプ15が設けられている。流量調整弁CV1は、加圧ポンプ15とろ過手段11との間に配置されている。
【0049】
本実施形態の透過水流量制御は、以下のように行われる。例えば、水温が低くなると水の粘性は高くなり、その結果、ろ過手段11で分離される透過水の流量は減少するが、この減少分を補うように流量調整弁CV1の開度が大きくされ、ろ過手段11への被処理水の供給圧力が増加する。また、水温が高くなると水の粘性は低くなり、その結果、ろ過手段11で分離される透過水の流量は増加するが、この増加分を打ち消すように流量調整弁CV1の開度が小さくされ、ろ過手段11への被処理水の供給圧力が低下する。このように、流量調整弁CV1の開度が調整され、それにより、被処理水の供給圧力が調整されることで、本実施形態においても、透過水の流量を一定に維持することができる。
【0050】
なお、ろ過手段11への被処理水の供給圧力の変化(流量調整弁CV1の開度の変化)に応じて、ろ過手段11で分離される濃縮水の流量も変化するが、本実施形態では、濃縮水ラインL3に、上述したように定流量弁14が設けられている。そのため、透過水流量制御により流量調整弁CV1の開度が変化して被処理水の供給圧力が変化した場合にも、濃縮水ラインL3を流れる濃縮水の流量を一定に保持することができる。その結果、第1の実施形態と同様に、透過水流量制御が排水ラインL4や還流水ラインL5を流れる濃縮水の流量に影響を及ぼすことがなくなり、排水流量制御を透過水流量制御と独立して行うことが可能になる。
【0051】
ここで、定流量弁14の規定流量は、一方では、ファウリングやスケーリングによる膜の詰まりが発生しない程度であればよく、他方では、圧力損失の増大によって膜を破損させない程度であればよい。ただし、定流量弁14の規定流量を必要以上に大きくすることは、加圧ポンプ15に要求される流量が必要以上に大きくなり、結果的に加圧ポンプ15のサイズが大きくなるため、エネルギー消費の点で好ましくない。そのため、定流量弁14の規定流量は、ろ過手段11の透過流束とろ過手段11に要求される濃縮水の最低流量も考慮して設定され、例えば、ろ過手段11として直径が約10.16cm(4インチ)のRO膜を用いる場合、200~1500L/hの範囲である。
【0052】
ところで、定流量弁14には、定流量弁14を正常に作動させるための作動差圧範囲(定流量弁の一次側と二次側の圧力差の許容範囲)が規定されている。そのため、例えば、ろ過手段11として中高圧用のRO膜を使用する場合や、水温が極端に低下した場合など、条件によっては、被処理水の供給圧力が著しく上昇して濃縮水の圧力が上昇し、定流量弁14の一次側と二次側の圧力差が作動差圧範囲を超えてしまうことがある。その場合、濃縮水ラインL3を流れる濃縮水の流量が一定に保持されないおそれがある。
【0053】
そこで、定流量弁14の上流側の濃縮水ラインL3に、濃縮水ラインL3を流れる濃縮水の圧力を減圧する(すなわち、二次側の圧力を一次側の圧力よりも低くすることができる)減圧弁が設けられていてもよい。これにより、ろ過手段11への原水の供給圧力が著しく上昇する場合であっても、定流量弁14の一次側と二次側の圧力差を作動差圧範囲内に収めて定流量弁14を正常に作動させることができ、濃縮水ラインL3を流れる濃縮水の流量を一定に保持することができる。また、減圧弁を設けることで、それよりも下流側の周辺部材(配管など)にそれほどの耐圧性能が要求されなくなる。そのため、減圧弁の設置は、安全面で有利であるだけでなく、耐圧性能がそれほど高くない安価な汎用品が利用可能になることで、コスト面でも有利である。なお、減圧弁の種類は、濃縮水の圧力を定流量弁14の作動差圧範囲内に減圧することができるものであれば特に限定されるものではないが、定流量弁14の規定流量以上の流量が流れるものや、二次側の圧力が排水ラインL4や還流水ラインL5の通水差圧よりも大きくなるものを選定する必要がある。
【0054】
(第3の実施形態)
図3は、本発明の第3の実施形態に係る膜ろ過装置の構成を示す概略図である。以下、上述した実施形態と同様の構成については、図面に同じ符号を付してその説明を省略し、上述した実施形態と異なる構成のみ説明する。なお、以下の説明では、便宜上、一次処理工程と二次処理工程とは特に区別しない。
【0055】
本実施形態は、第2の実施形態の変形例であり、制御部20が、加圧ポンプ15の回転数を制御するインバータ(図示せず)を備えている点、すなわち、加圧ポンプ15が、ろ過手段11への被処理水の供給圧力を調整する圧力調整手段として機能する点で、第2の実施形態と異なっている。これに伴い、本実施形態では、第2の実施形態の流量調整弁CV1は設けられていない。
【0056】
本実施形態の透過水流量制御は、以下のように行われる。例えば、水温が低くなると水の粘性は高くなり、その結果、ろ過手段11で分離される透過水の流量は減少するが、この減少分を補うように加圧ポンプ15の回転数が上げられ、ろ過手段11への被処理水の供給圧力が増加する。また、水温が高くなると水の粘性は低くなり、その結果、ろ過手段11で分離される透過水の流量は増加するが、この増加分を打ち消すように加圧ポンプ15の回転数が下げられ、ろ過手段11への被処理水の供給圧力が低下する。このように、加圧ポンプ13の回転数が調整され、それにより、被処理水の供給圧力が調整されることで、本実施形態においても、透過水の流量を一定に維持することができる。なお、透過水流量制御により加圧ポンプ13の回転数が変化して原水の供給圧力が変化した場合にも、濃縮水ラインL3に設けられた定流量弁14により、濃縮水ラインL3を流れる濃縮水の流量を一定に保持することができることは、第2の実施形態と同様である。
【符号の説明】
【0057】
1 原水供給源
2 ユースポイント
10 膜ろ過装置
11 ろ過手段
12 貯水タンク
13 定量ポンプ
14 定流量弁
15 加圧ポンプ
20 制御部
21 透過水流量計
22 排水流量計
23 水位センサ
24 給水導電率
25 透過水導電率計
L1 供給ライン
L2 透過水ライン
L3 濃縮水ライン
L4 排水ライン
L5 還流水ライン
L6 合流ライン
L7 返送ライン
SV1,SV2 開閉弁
CV1,CV2 流量調整弁
MV1 手動弁
TV1 三方弁
図1
図2
図3