IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人 名古屋工業大学の特許一覧

<>
  • 特開-構造物、壁構造体及び壁体 図1
  • 特開-構造物、壁構造体及び壁体 図2
  • 特開-構造物、壁構造体及び壁体 図3
  • 特開-構造物、壁構造体及び壁体 図4
  • 特開-構造物、壁構造体及び壁体 図5
  • 特開-構造物、壁構造体及び壁体 図6
  • 特開-構造物、壁構造体及び壁体 図7
  • 特開-構造物、壁構造体及び壁体 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136118
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】構造物、壁構造体及び壁体
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/343 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
E04B1/343 S
E04B1/343 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047103
(22)【出願日】2023-03-23
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)令和4年3月29日にワーキングスペース NIB SHIBUYA powered by MIDORI.soにて公開 (2)令和5年2月20日に新宿中央公園眺望のもりにて公開
(71)【出願人】
【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(74)【代理人】
【識別番号】100152098
【弁理士】
【氏名又は名称】林 剛史
(74)【代理人】
【識別番号】100152102
【弁理士】
【氏名又は名称】富澤 芳安
(74)【代理人】
【識別番号】100120189
【弁理士】
【氏名又は名称】奥 和幸
(72)【発明者】
【氏名】北川 啓介
(57)【要約】
【課題】容易に製作することができる壁構造体、及び、当該壁構造体に屋根構造体を取り付けることで容易に製作することができ、居住空間として利用可能な内部空間を有する構造物を提供する。
【解決手段】壁構造体と、屋根構造体とを備える構造物であって、前記壁構造体は、壁体と、前記壁体を周方向に束縛する束縛手段とを備え、前記壁体は、複数の壁部材と、外皮部材とを備え、前記壁部材は、短冊状に形成されることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁構造体と、屋根構造体とを備える構造物であって、
前記壁構造体は、壁体と、前記壁体を周方向に束縛する束縛手段とを備え、
前記壁体は、複数の壁部材と、外皮部材とを備え、
前記壁部材は、短冊状に形成されることを特徴とする構造物。
【請求項2】
請求項1に記載の構造物において、
前記壁部材は、周方向に複数配置され、隣り合う前記壁部材の端面同士が密着して配置されることを特徴とする構造物。
【請求項3】
請求項1に記載の構造物において、
前記壁部材は、長辺方向の断面形状が台形に形成されることを特徴とする構造物。
【請求項4】
請求項1に記載の構造物において、
前記壁部材は、長辺方向の断面形状が長方形に形成されることを特徴とする構造物。
【請求項5】
壁構造体と、屋根構造体とを備える構造物であって、
前記壁構造体は、壁体と、前記壁体を周方向に束縛する束縛手段とを備え、
前記壁体は、壁部材と、外皮部材とを備え、
前記壁部材は、複数の溝を有することを特徴とする構造物。
【請求項6】
請求項1または5に記載の構造物において、
前記壁部材は、外側面に前記外皮部材が接合されることを特徴とする構造物。
【請求項7】
請求項1または5に記載の構造物において、
前記壁部材は、断熱材からなることを特徴とする構造物。
【請求項8】
壁体と、前記壁体を周方向に束縛する束縛手段とを備える壁構造体であって、
前記壁体は、複数の壁部材と、外皮部材とを備え、
前記壁部材は、短冊状に形成されることを特徴とする壁構造体。
【請求項9】
請求項8に記載の壁構造体において、
前記壁部材は、周方向に複数配置され、隣り合う前記壁部材の端面同士が密着して配置されることを特徴とする構造物。
【請求項10】
請求項8に記載の壁構造体において、
前記壁部材は、長辺方向の断面形状が台形に形成されることを特徴とする壁構造体。
【請求項11】
請求項8に記載の壁構造体において、
前記壁部材は、長辺方向の断面形状が長方形に形成されることを特徴とする壁構造体。
【請求項12】
壁体と、前記壁体を周方向に束縛する束縛手段とを備える壁構造体であって、
前記壁体は、壁部材と、外皮部材とを備え、
前記壁部材は、複数の溝を有することを特徴とする壁構造体。
【請求項13】
請求項8または12に記載の壁構造体において、
前記壁部材は、外側面に前記外皮部材が接合されることを特徴とする壁構造体。
【請求項14】
請求項8または12に記載の壁構造体において、
前記壁部材は、断熱材からなることを特徴とする壁構造体。
【請求項15】
複数の壁部材と、外皮部材とを備える壁体であって、
前記壁部材は、短冊状に形成されることを特徴とする壁体。
【請求項16】
請求項15に記載の壁体において、
前記壁部材は、壁長さ方向に連続して配置されることを特徴とする壁体。
【請求項17】
請求項15に記載の壁体において、
前記壁部材は、長辺方向の断面形状が台形に形成されることを特徴とする壁体。
【請求項18】
請求項15に記載の壁体において、
前記壁部材は、長辺方向の断面形状が長方形に形成されることを特徴とする壁体。
【請求項19】
壁部材と、外皮部材を備える壁体であって、
前記壁部材は、複数の溝を有することを特徴とする壁体。
【請求項20】
請求項15または19に記載の壁体において、
前記壁部材は、外側面に前記外皮部材が接合されることを特徴とする壁体。
【請求項21】
請求項15または19に記載の壁体において、
前記壁部材は、断熱材からなることを特徴とする壁体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部空間を有する構造物、構造物の構成要素となる壁構造体及び壁体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内部空間を有する構造物は、テント、簡易住宅等の分野で広く使用されている。このような構造物には、屋外、及び屋内での使用に耐え得る一定の強度や、簡便に製作が可能な作業性が求められている。構造物の構造については、従来各種の検討がされており、例えば、特許文献1には、薄膜体と発泡材を含む構造物が開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の構造物は、内部に閉じた空間を有する構造物であって、外側に配される薄膜体と、その内面に固着される吹き付け発泡材により構成されている。薄膜体は、地面に配置された土台に接合され、薄膜体の内側に送風機によって空気を送風することで、膨らみ自立させることができる。作業者は、自立した薄膜体の形状を維持させたまま、その構造物の内側へ自ら発泡装置を持ち込んで入り、薄膜体の内面に発泡材を吹き付けて構造物の内壁を製作する。
【0004】
特許文献1に記載の構造物は、簡便に製作が可能であり、木材や鉄鋼の柱や梁といった構造体を使用せずとも、強度を確保し安定した形態を保つことができる。また、発泡材による内壁によって構成されているため、断熱性や遮音性を備えており、居住空間として利用可能である。そのため、迅速に居住環境が必要となる災害時等において、仮設住宅や倉庫として活用することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6746165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の構造物の製作方法は、薄膜体の内部に空気を送風して構造物の外観形状を形作り、その内面に発泡材を吹き付けて内壁を製作するため、一定の技術を有する作業者による施工が必要であった。
【0007】
また、このような構造物を、災害時において仮設住宅等に活用する際には、短時間に多くの構造物を製作する必要が生じる場合があるが、従来の構造物の製作方法においては、発泡材の吹き付け作業に要する工数や、コスト面において課題があり、改善の余地があった。
【0008】
そこで、本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、特別な技術を要さずに容易に製作することができ、迅速かつ費用を抑えて製作することができる壁体、当該壁体を用いた壁構造体、並びに、当該壁構造体を用いて容易に製作することができる内部空間を有する構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、上記課題を達成するためになされたものであって、下記を特徴とするものである。
【0010】
本発明に係る構造物は、壁構造体と、屋根構造体とを備える構造物であって、前記壁構造体は、壁体と、前記壁体を周方向に束縛する束縛手段とを備え、前記壁体は、複数の壁部材と、外皮部材とを備え、前記壁部材は、短冊状に形成されることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る構造物において、前記壁部材は、周方向に複数配置され、隣り合う前記壁部材の端面同士が密着して配置されると好適である。
【0012】
本発明に係る構造物において、前記壁部材は、長辺方向の断面形状が台形に形成されると好適である。
【0013】
本発明に係る構造物において、前記壁部材は、長辺方向の断面形状が長方形に形成されると好適である。
【0014】
本発明に係る構造物は、壁構造体と、屋根構造体とを備える構造物であって、前記壁構造体は、壁体と、前記壁体を周方向に束縛する束縛手段とを備え、前記壁体は、壁部材と、外皮部材とを備え、前記壁部材は、複数の溝を有することを特徴とする。
【0015】
本発明に係る構造物において、前記壁部材は、外側面に前記外皮部材が接合されると好適である。
【0016】
本発明に係る構造物において、前記壁部材は、断熱材からなると好適である。
【0017】
本発明に係る壁構造体は、壁体と、前記壁体を周方向に束縛する束縛手段とを備える壁構造体であって、前記壁体は、複数の壁部材と、外皮部材とを備え、前記壁部材は、短冊状に形成されることを特徴とする。
【0018】
本発明に係る壁構造体において、前記壁部材は、周方向に複数配置され、隣り合う前記壁部材の端面同士が密着して配置されると好適である。
【0019】
本発明に係る壁構造体において、前記壁部材は、長辺方向の断面形状が台形に形成されると好適である。
【0020】
本発明に係る壁構造体において、前記壁部材は、長辺方向の断面形状が長方形に形成されると好適である。
【0021】
本発明に係る壁構造体は、壁体と、前記壁体を周方向に束縛する束縛手段とを備える壁構造体であって、前記壁体は、壁部材と、外皮部材とを備え、前記壁部材は、複数の溝を有することを特徴とする。
【0022】
本発明に係る壁構造体において、前記壁部材は、外側面に前記外皮部材が接合されると好適である。
【0023】
本発明に係る壁構造体において、前記壁部材は、断熱材からなると好適である。
【0024】
本発明に係る壁体は、複数の壁部材と、外皮部材とを備える壁体であって、前記壁部材は、短冊状に形成されることを特徴とする。
【0025】
本発明に係る壁体において、前記壁部材は、壁長さ方向に連続して配置されると好適である。
【0026】
本発明に係る壁体において、前記壁部材は、長辺方向の断面形状が台形に形成されると好適である。
【0027】
本発明に係る壁体において、前記壁部材は、長辺方向の断面形状が長方形に形成されると好適である。
【0028】
本発明に係る壁体は、壁部材と、外皮部材を備える壁体であって、前記壁部材は、複数の溝を有することを特徴とする。
【0029】
本発明に係る壁体において、前記壁部材は、外側面に前記外皮部材が接合されると好適である。
【0030】
本発明に係る壁体において、前記壁部材は、断熱材からなると好適である。
【0031】
上記発明の概要は、本発明に必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた発明となり得る。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、短冊状の複数の壁部材と、その外側面に接合される外皮部材とを備える壁体を用いて、当該壁体を周方向に束縛することによって容易に壁構造体を製作することができる。また、当該壁構造体に屋根構造体を取り付けることで容易に構造物を製作することができ、居住空間として利用可能な内部空間を有する構造物を迅速かつ費用を抑えて提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本実施形態に係る構造物の斜視図
図2】本実施形態に係る壁体の斜視図
図3図2に示すA矢視拡大図
図4】本実施形態に係る壁体であって、外皮部材としてテープを使用した実施例を示す斜視図
図5】本実施形態に係る壁構造体の製作過程を示す参考図であって、(a)は束縛手段による束縛前の状態を示す参考図、(b)は束縛手段による束縛後の状態を示す参考図
図6】本実施形態に係る壁構造体の斜視図
図7】本実施形態に係る構造物であって、折畳み可能な扉部を取り付けた実施例を示す斜視図
図8】本実施形態に係る壁構造体であって、運搬又は保管状態の一例を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0035】
図1は、本実施形態に係る構造物の斜視図、図2は、本実施形態に係る壁体の斜視図、図3は、図2に示すA矢視拡大図、図4は、本実施形態に係る壁体であって、外皮部材としてテープを使用した実施例を示す斜視図、図5は、本実施形態に係る壁構造体の製作過程を示す参考図であって、(a)は束縛手段による束縛前の状態を示す参考図、(b)は束縛手段による束縛後の状態を示す参考図、図6は、本実施形態に係る壁構造体の斜視図、図7は、本実施形態に係る構造物であって、折畳み可能な扉部を取り付けた実施例を示す斜視図、図8は、本実施形態に係る壁構造体であって、運搬又は保管状態の一例を示す斜視図である。
【0036】
本実施形態に係る構造物1は、図1に示すように、構造物1の壁面を構成する壁構造体2と、構造物1の天井を構成する屋根構造体3を備え、構造物1の内部には人が居住可能な空間を形成する。
【0037】
壁構造体2は、図1に示すように、一例として略円筒形に形成され、壁体20と、壁体20を周方向に束縛し、壁構造体2の形状を保つための束縛手段40を備える。また、壁構造体2には、構造物1の内部に人が進入するための出入口50が形成され、出入口50には扉部60が取り付けられる。
【0038】
壁体20は、壁構造体2の組立て前の状態においては、図2に示すように、略平板状の形状を有する。本明細書において、壁体20の板長さ方向及び板幅方向とは、図2に示す矢印の方向と定義する。
【0039】
壁体20は、後述する壁構造体2の組立て方法に示すように、板長さ方向に円弧となるように湾曲させることができる。また、壁体20は、構造物1の完成状態において、構造物1の内側に位置する複数の壁部材21と、外側に位置する外皮部材22を備える。
【0040】
壁部材21は、図2に示すように、板厚が一様な短冊状の部材である。また、壁部材21は、短辺が板長さ方向と平行になり、長辺が板幅方向と平行になるように配置され、複数の壁部材21が板長さ方向に沿って連続して配置される。
【0041】
壁部材21は、一例として、図3に示すように、断面形状が略台形に形成される。本明細書において、壁部材21の台形断面の上底に相当する面を内側面21a、台形断面の下底に相当する面を外側面21b、台形断面の脚に相当する面を端面21cと定義する。また、本明細書において、隣り合う壁部材21の外側面21bと端面21cとが作る角部同士が接する箇所を連結部C、隣り合う壁部材21の内側面21aと端面21cとが作る角部同士の隙間を隙間G、端面21cと外側面21bとが作る角度を角度αと定義する。
【0042】
内側面21aは、壁構造体2の完成状態において、略円筒形の内側を向く面となり、外側面21bは、壁構造体2の完成状態において、略円筒形の外側を向く面となる。外側面21bには、図3に示すように、外皮部材22が接合される。外側面21bと外皮部材22は、面ファスナ、接着材、溶着等の周知の手段を用いて接合される。
【0043】
壁部材21の材料は、内部に無数の気泡が形成され、多量の空気を含んだ材料である発泡材が好適に用いられる。壁部材21として発泡材を用いることで、構造物1は断熱性や遮音性に優れた構造物となり、かつ、軽量であるため輸送性にも優れる。発泡材の材料としては、アクリル、ポリウレタン、ポリスチレン、フェノール、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、ウレア樹脂、ウレタン-ウレア樹脂、シリコーン、ポリイミド、メラミン、ガラス、セラミックス、土、爆裂食材等を例示できる。本実施形態において、壁部材21は、発泡材であって、プラスチック系断熱材の一種である押出発泡ポリスチレンであるとして説明を行う。
【0044】
壁構造体2が略円筒形に形成される場合、複数の壁部材21の断面形状は、図3に示すように、同一形状の台形に形成されると好適である。このような場合、壁体20を板長さ方向に湾曲させると、隣り合う壁部材21の端面21c同士を密着させることができるため、隣り合う壁部材21の間に隙間が作られることなく、密閉性の高い壁構造体2を製作することができる。
【0045】
また、壁部材21の断面形状は台形に限らず、長方形であっても構わない。壁部材21の断面形状が長方形である場合、壁部材21の加工を容易に行うことができ、経済性に優れた壁構造体2を製作することができる。
【0046】
なお、上記では、壁体20は複数の壁部材21を備え、隣り合う壁部材21が連結部Cにおいて接するように配置される構造について説明を行ったが、壁体20の構造はこれに限らず、隣り合う壁部材21の間に隙間を形成するように複数の壁部材21を配置しても構わない。
【0047】
また、壁体20は、複数の壁部材21によって構成されるものではなく、壁体20と同等の大きさの壁部材21であって、隙間Gに相当する複数の溝を有し、連結部Cに相当する部分が繋がった一体的な構造であっても構わない。このような構造の場合、隙間Gに相当する複数の溝は、壁部材21の板厚の1/2から2/3程度の深さに形成されると好適である。
【0048】
また、壁体20は、壁構造体2の完成形状に対応させて、断面形状の異なる壁部材21を複数組み合わせて形成しても構わない。例えば、壁構造体2の完成形状の壁面が、平面部と曲面部とを組み合わせて構成される場合には、平面部に位置する壁部材21の断面形状が長方形となるように、曲面部に位置する壁部材21の断面形状が台形となるように形成しても構わない。
【0049】
なお、壁部材21の板厚は、居住空間を構成する壁面として機能できる厚みであればよく、必要とされる断熱性や遮音性に応じて、適宜設定して構わない。また、上記では、壁部材21は、板厚が一様である短冊状の部材であるとして説明を行ったが、壁部材21の板厚は一様である場合に限られない。壁部材21の板厚は、例えば、構造物1または壁構造体2の完成状態において、下部に相当する部分が厚くなるように、上部に相当する部分が薄くなるように、長辺方向の厚みを変化させても構わない。このような場合、構造物1または壁構造体2は、安定的に地面に設置することができる。
【0050】
外皮部材22は、壁体20の一面を覆うシート状の部材であって、一枚の外皮部材22に対して、複数の壁部材21が接合される。後述する壁構造体2の組立て方法に示すように、連結部Cに位置する外皮部材22には、壁構造体2の完成状態において、壁構造体2の周方向の引張力が発生する。このため、外皮部材22には、発生する引張力に対して破断することのない材料が用いられる。外皮部材22の材料として、樹脂基材(樹脂フィルム、樹脂シートでもよい)、紙基材、皮革基材等を例示できる。樹脂基材としては、アクリル、ポリオレフィン、ポリエステル、ナイロン、ポリエチレン、及びポリ塩化ビニル等を例示できる。ポリオレフィンとしては、ポリプロピレン等を例示できる。ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート等を例示できる。一例としての樹脂基材は、紫外線吸収剤を含有している。紙基材としては、上質紙、和紙、洋紙、合成紙、不織布等を例示できる。なお、外皮部材22の材料は、これ以外でもよい。外皮部材は、1種類の材料を含有してもよく、2種類以上を含有してもよい。なお、構造物1を屋外に設置する場合には、外皮部材22に耐水性、撥水性又は耐紫外線性が具備されると好適である。また、構造物1の完成状態において、遮音性を高めたい場合には、外皮部材22に遮音性が具備されると好適である。
【0051】
なお、外皮部材22は、壁体20の一面を覆うシート状の部材であるとして説明を行ったが、外皮部材22の形状はこれに限らず、図4に示すように、テープ状の部材であっても構わない。この場合、テープ状の外皮部材22は、図4に示すように、壁体20の板幅方向に間隔を開けて複数配置されると好適である。連結部Cに位置するテープ状の外皮部材22には、上記と同様に、壁構造体2の完成状態において、壁構造体2の周方向の引張力が発生する。このため、外皮部材22には、発生する引張力に対して破断することのない材料が用いられる。また、テープ状の外皮部材22は、発生する引張力に応じて必要な数量取り付けられる。テープ状の外皮部材22には、上記に例示したシート状の外皮部材22と同様の材料を用いることができる。
【0052】
束縛手段40は、図1に示すように、略円筒形の壁構造体2を周方向に巻き付けて、壁体20が形成する壁構造体2の形状を維持する。束縛手段40は、図1に示すように、壁構造体2の高さ方向に間隔を開けて複数取り付けられると好適であるが、取り付け箇所や数量は、図1に示すものに限らず、壁構造体2の大きさや形状に合わせて適宜設定して構わない。束縛手段40は、後述する壁構造体2の組立て方法に示すように、壁構造体2の形状を維持するために引張力が発生した状態で使用されるため、発生する引張力に対して破断することのない材料が用いられる。また、束縛手段40は、壁構造体2の変形を防ぐため、伸びの少ない材料が用いられると好適である。また、組立て作業性を向上させるため、束縛手段40は、容易に壁構造体2の周囲に巻き付け可能であって、束縛する際に引張力を発生させるための締付装置を備えると好適である。本実施形態において束縛手段40は、例えば、ラチェット式の締付装置を備える結束バンドや面ファスナ式の結束バンド等を用いることができる。
【0053】
なお、上記では、束縛手段40は、壁構造体2を周方向に巻き付けて使用される部品であるとして説明を行ったが、束縛手段40は、壁構造体2を全周に渡って一続きに巻き付ける構造を持つ部品に限らず、複数の束縛手段40を連携させて壁構造体2を周方向に束縛するような構造を持つ部品であっても構わない。
【0054】
屋根構造体3は、構造物1を居住空間として使用する際に、天井として機能し得る形態であればよく周知の形状及び材料を用いて構わない。本実施形態において屋根構造体3は、一例として、壁構造体2と同様の構成要素からなる構造を用いることができる。すなわち、複数の短冊状の部材がその短辺方向に連続して配置され、1つの外皮部材によってこれらの複数の短冊状の部材を接合して板状の屋根体を形成し、当該屋根体を略円錐形に湾曲させて、略円錐形の外観形状を保つために束縛手段を用いて周方向に束縛する構造とすることができる。
【0055】
また、屋根構造体3は、構造物1に取り付けられた状態において、鉛直方向に対する屋根構造体3の表面の角度が45°の略円錐形に形成されると好適である。このような場合、横方向からの風を受けた際、構造物1全体を鉛直方向下向きに押付ける力が発生するため、横風に対して強い構造を持つ構造物1を製作することができる。
【0056】
次に、上記のような特徴を有する壁構造体2の組立て方法について説明を行う。なお、壁構造体2の完成形状は、略円筒形であるとして組立て方法についての説明を行う。
【0057】
まず、上述した構造の壁体20であって、壁構造体2の大きさに対応した所定の板長さ及び板幅を有する壁体20を準備する。
【0058】
次に、図5(a)に示すように、壁部材21が略円筒形の内側、外皮部材22が略円筒形の外側となるように壁体20を板長さ方向に湾曲させ、隣り合う壁部材21の端面21c同士をそれぞれ接触させる。このとき、壁体20の板長さ方向両端部に位置する一方の壁部材21の端面21cと他方の壁部材21の端面21cとの間には、所定の隙間Sが形成される。すなわち、壁部材21は、壁体20を板長さ方向に湾曲させ、隣り合う端面21c同士をそれぞれ接触させた際に、所定の隙間Sを形成するように、図3に示す角度α及び隙間Gがあらかじめ設定されている。
【0059】
次に、束縛手段40を略円筒形に湾曲させた壁体20の外周に巻き付ける。さらに、図5(b)に示すように、束縛手段40を図示しない締付装置を用いて締め付け、隙間Sを塞いだ状態にする。このようにして、所定の数量の束縛手段40による壁体20の締め付けを繰り返し、壁体20を略円筒形の高さ方向において全体的に束縛することで、図6に示すような壁構造体2が完成する。
【0060】
このとき、それぞれの壁部材21は、壁構造体2の周方向の圧縮力を受け、壁部材21は弾性変形する。また、このような壁部材21の変形に伴い、連結部Cに位置する外皮部材22には、壁構造体2の周方向の引張力が発生する。また、圧縮された壁部材21の弾性力によって、束縛手段40には壁構造体2の周方向の引張力が発生する。このように、壁構造体2は、径方向内側に配される壁部材21が圧縮力を負担し、径方向外側に配される外皮部材22及び束縛手段40が引張力を負担して一体をなすため、形態が安定した状態となる。また、このような壁部材21の弾性変形によって、隣り合う壁部材21の端面21c同士は密着した状態が維持されるため、気密性の高い壁構造体2を形成することができる。
【0061】
なお、本実施形態において屋根構造体3は、一例として、壁構造体2と同様の構成要素からなる構造を用いることができるため、屋根構造体3についても、上述した壁構造体2と同様の組立て方法を用いることができる。
【0062】
次に、このような壁構造体2を用いて、構造物1を組み立てる方法について説明を行う。
【0063】
まず、上記のように組み立てた壁構造体2及び屋根構造体3を準備して、屋根構造体3を壁構造体2の上部に取り付ける。屋根構造体3の壁構造体2への取り付け方法は、例えば、面ファスナ、接着材、溶着等の周知の手段を用いて取り付けられる。
【0064】
次に、壁構造体2の側面の所定の部分を切り抜き、出入口50を開口する。切り抜いた出入口50の内側部分は、扉部60として使用することができる。扉部60に使用する丁番は、周知の部品を使用することが可能である。また、図1に示すように、扉部60の左右いずれか一方の縁に相当する位置と、壁体20の連結部Cとが一致するように出入口50を開口し、当該部分の外皮部材22を切断せずに残すことで、外皮部材22を丁番として機能させることも可能となる。
【0065】
なお、扉部60は、図1に示すように、略円筒形の壁構造体2の側面と同等な曲率半径を保つように形成してもよく、図7に示すように、扉部60を構成する壁部材21を拘束せずに、連結部Cの位置で外皮部材22を折り曲げ可能となるようにしても構わない。また、図1及び図7では、出入口50及び扉部60は長孔状であることを示すが、出入口50及び扉部60の形状はこれに限らず、任意の形状に設定して構わない。
【0066】
以上の工程により、構造物1の組立ては完了する。このように、本実施形態に係る壁体20によれば、略円筒形に湾曲させた壁体20を束縛手段40により束縛することで容易に壁構造体2を製作することができる。また、本実施形態に係る壁構造体2によれば、壁構造体2に屋根構造体3を取り付け、出入口50及び扉部60を形成することで容易に構造物1を製作することができる。また、本実施形態に係る構造物1によれば、従来の構造物の製作方法のように、発泡材の吹き付け作業を例とする特別な技術を必要とせず、迅速かつ費用を抑えた居住空間として利用可能な構造物を提供することができる。
【0067】
また、本実施形態に係る構造物1は、災害時において仮設住宅等に活用することも可能となるが、そのような場合には、一般的に多くの構造物1が必要となり、運搬面においても課題が生じることが想定される。本実施形態に係る構造物1は、壁体20の材料として発泡材等の軽量な材料が用いられている点において運搬性に優れた構造である。また、壁体20は束縛手段40により束縛されていない状態であれば、図8に示すように、外皮部材22を内側にして巻き取ることが可能となるため、運搬時及び保管時において省スペース性に優れた構造である。
【0068】
なお、上記のとおり、構造物1の内側に位置する壁部材21は、断熱材を使用することができるため、そのまま居住空間として利用することが可能であるが、遮音性や遮光性等を高めるため、構造物1の内面に漆喰等の壁材を塗布しても構わない。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0069】
1 構造物
2 壁構造体
3 屋根構造体
20 壁体
21 壁部材
21a 内側面
21b 外側面
21c 端面
22 外皮部材
40 束縛手段
50 出入口
60 扉部
C 連結部
G、S 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8