IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ デクセリアルズ株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136125
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】フィラー含有フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/18 20060101AFI20240927BHJP
   H01R 11/01 20060101ALI20240927BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240927BHJP
   H01B 5/16 20060101ALI20240927BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240927BHJP
   C08J 9/00 20060101ALI20240927BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B32B27/18 J
H01R11/01 501C
B32B27/00 C
H01B5/16
C09J7/38
C08J9/00 Z CER
C08J9/00 CEZ
H05K1/03 610T
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047111
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000224
【氏名又は名称】弁理士法人田治米国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柄木田 充宏
(72)【発明者】
【氏名】阿久津 恭志
(72)【発明者】
【氏名】塚尾 怜司
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 賢一
【テーマコード(参考)】
4F074
4F100
4J004
5G307
【Fターム(参考)】
4F074AA76
4F074AC32
4F074CB91
4F074CC62Y
4F074DA03
4F074DA14
4F074DA47
4F100AA20A
4F100AA20B
4F100AA20C
4F100AK53A
4F100AK53C
4F100AK54A
4F100AK54B
4F100AK54C
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100CA21
4F100CA30A
4F100CA30C
4F100CB05C
4F100DC12B
4F100DG01B
4F100EJ17
4F100EJ67A
4F100EJ67C
4F100GB41
4F100JG01
4F100JG04A
4F100YY00B
4J004AA10
4J004AB01
4J004BA02
4J004FA05
5G307HA02
5G307HB06
5G307HC01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】フィラー含有フィルムを介して二つの部材を圧着、例えば熱圧着等により接合する際に、コアフィルムの樹脂流動を抑制し、フィラーの意図しない移動を制限でき、また、フィルムの圧着、例えば熱圧着の際に圧着ムラが生じないようにすることができるフィラー含有フィルムを提供する。
【解決手段】絶縁ベース層と粘着層との間に、貫通孔を有するコアフィルムが挟持され、貫通孔にはフィラーが保持されているフィラー含有フィルムは、孔の開口径(O、O2)、フィラーの粒子径P、コアフィルムの層厚C、コアフィルムの中心線Xとフィラーの中心線Yとの間の距離Lが下記の関係式を満足している。

【選択図】図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁ベース層と粘着層との間に、貫通孔を有するコアフィルムが挟持され、該貫通孔にはフィラーが保持されているフィラー含有フィルムであって、
以下の式(1)~(4):
【数1】
(式中、“O”は、コアフィルムの粘着層側表面における貫通孔の開口径であり、“O”は、コアフィルムの絶縁ベース層側表面における貫通孔の開口径であり、“C”は、コアフィルムの層厚であり、“P”は、フィラーの平均粒子径であり、及び“L”は、フィルム厚み方向におけるコアフィルムの中心線Xとフィラーの中心線Yとの間の距離[μm]であり、“S”は、距離Lのフィラーの平均粒子径Pに対する割合[%]である。なお、“L”の正負について、絶縁ベース層側に向かって正とする。)
を満足するフィラー含有フィルム。
【請求項2】
=O2である請求項1記載のフィラー含有フィルム。
【請求項3】
フィラーの平均粒子径Pが、1~200μmである請求項1又は2記載のフィラー含有フィルム。
【請求項4】
貫通孔が規則配列されている請求項1又は2記載のフィラー含有フィルム。
【請求項5】
フィラーが導電粒子であり、導電フィルムもしくは異方性導電フィルムとして使用される請求項1又は2記載のフィラー含有フィルム。
【請求項6】
第1部材と第2部材とが、請求項1記載のフィラー含有フィルムを介して接合されている接合体。
【請求項7】
第1部材と第2部材とを、その間に請求項1記載のフィラー含有フィルムを配置した後に接合する、接合体の製造方法。
【請求項8】
導電フィルムもしくは異方性導電フィルムとして使用される請求項5記載のフィラー含有フィルムで第1部材を第2部材に導電接続もしくは異方性導電接続する、接続構造体の製造方法。
【請求項9】
導電フィルムもしくは異方性導電フィルムとして使用される請求項5記載のフィラー含有フィルムで第1部材を第2部材に導電接続もしくは異方性導電接続してなる接続構造体。
【請求項10】
第1部材の端子と第2部材の端子とを、導電粒子で電気的に接続する、請求項8記載の接合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィラー含有フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
フィラーが樹脂層に分散しているフィラー含有フィルムは、艶消しフィルム、コンデンサー用フィルム、光学フィルム、ラベル用フィルム、耐電防止用フィルム、導電性フィルム、異方性導電フィルムなど多種多様の用途で使用されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4)。フィラー含有フィルムを物品に熱圧着して用いる場合、フィラー含有フィルムを形成している樹脂が熱圧着時に不要に流動することを抑制し、フィラーの偏在を抑制することが、光学的特性、機械的特性、又は電気的特性の点から望ましい。特に、フィラーとして導電粒子を含有させ、フィラー含有フィルムを電子部品の実装に供する導電性フィルムや異方性導電フィルムとして使用する場合に、電子部品の高密度実装に対応できるように、絶縁性樹脂層に導電粒子を高密度に分散させて良好な導通性を確保しようとすると、電子部品の実装時の過度の樹脂流動により導電粒子が不要に移動して端子間に偏在してショートを発生しかねず、良好な導通性と絶縁性とを両立させることが要請されている。
【0003】
このような要請に対し、ハニカム状に配列した孔部を有する多孔質フィルムの孔部に導電粒子を充填した異方性導電フィルムが提案されている(特許文献5)。この異方性導電フィルムでは、多孔質フィルムの一方の表面における平均孔径Uを、他方の表面における平均孔径Uよりも大きくし、更に、平均孔径Uを導電粒子の平均粒子径dの1.1倍から1.9倍に設定し、更に平均孔径Uを導電粒子の平均粒子径dの0.1倍から1.0倍に設定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-15680号公報
【特許文献2】特開2015-138904号公報
【特許文献3】特開2013-103368号公報
【特許文献4】特開2014-183266号公報
【特許文献5】特開2019-114510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献5の異方性導電フィルムでは、多孔質フィルムの一方の表面における平均孔径Uが導電粒子の平均粒子径の1.1倍~1.9倍と非常に大きくなっているため、孔部への導電粒子の保持性が低下する。しかも、導電粒子を多孔質フィルムの孔部に充填する際に深さ方向の導電粒子位置については全く検討されていない。このため、異方性導電接続時における多孔質フィルムを構成するバインダー樹脂の樹脂流動に伴い、導電粒子が孔部から抜け出る場合があり、導電粒子の偏在を引き起こし、また、異方性導電接続時の熱圧着ツールによる圧着時に、圧着ツールの圧着面が接合すべき接合面に対して傾いてしまう所謂“片当たり”等の圧着ムラが発生し、導通性と絶縁性との両立を担保することが困難になるということが懸念されている。フィラー含有フィルムを導電性フィルムとして使用する場合にも、“片当たり”等の圧着ムラが発生すると、良品・不良品の判別の困難性と煩雑さとが増大しかねない。
【0006】
また、特許文献5の異方性導電フィルムにおいては、好ましい多孔質フィルム厚が5μm~50μmとなっており、他方、好ましい導電粒子径が2μm~3μmとなっているため、孔部に導電粒子が完全に埋没してしまう場合があり、異方性導電接続の際の熱圧着によって導電粒子が十分に押し潰されず、良好な導通性が担保されないということも懸念されている。
【0007】
なお、異方性導電フィルム以外の、多孔質フィルムの孔部にフィラーが充填されているフィラー含有フィルムにおいても、多孔質フィルムを構成するバインダー樹脂の樹脂流動に伴い、フィラーが孔部から抜け出ると、フィラーが意図した配列とならずに偏在するようになり、フィラー含有フィルムに意図した光学的特性、機械的特性、あるいは電気的特性を担保できないことが懸念される。
【0008】
本発明の目的は、以上の従来の技術の問題点を解決することであり、絶縁ベース層と粘着層との間に、貫通孔を有するコアフィルムが挟持され、貫通孔にフィラーが保持されているフィラー含有フィルムを介して二つの部材を圧着、例えば熱圧着等により接合する際に、コアフィルムの樹脂流動を抑制し、フィラーの意図しない移動を制限でき、また、圧着、例えば熱圧着の際の圧着ムラが生じないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、“コアフィルムの表面における貫通孔の開口径と裏面における貫通孔の開口径との関係”と、“コアフィルムの表面における貫通孔の開口径とフィラー径との関係”と、“コアフィルム厚とフィラー径との関係”とに加えて、“コアフィルムのフィルム厚み方向における導電粒子の位置ずれ割合”に着目し、これらをそれぞれ特定の関係に限定することにより、上述の目的を達成できることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
【0010】
即ち、本発明は、絶縁ベース層と粘着層との間に、貫通孔を有するコアフィルムが挟持され、該貫通孔にはフィラーが保持されているフィラー含有フィルムであって、
以下の式(1)~(4)を満足するフィラー含有フィルムを提供する。
【0011】
【数1】
【0012】
上記式中、“O”は、コアフィルムの粘着層側表面における貫通孔の開口径であり、“O”は、コアフィルムの絶縁ベース層側表面における貫通孔の開口径であり、“C”は、コアフィルムの厚みであり、“P”は、フィラーの平均粒子径であり、“L”は、コアフィルムのフィルム厚み方向における中心線Xとフィラーのフィルム厚み方向における中心線Yとの間の距離であり、“S”は、距離Lのフィラーの平均粒子径Pに対する割合[%]であり、換言すれば、フィルム厚み方向におけるコアフィルム3に対するフィラーの位置ずれ割合である。なお、“L”の正負について、絶縁ベース層側に向かって正とする。なお、フィラーとして導電粒子を使用した場合には、このフィラー含有フィルムは、導電フィルムもしくは異方性導電フィルムとして使用できる。
【0013】
また、本発明は、第1部材と第2部材とが、前述の本発明のフィラー含有フィルムを介して接合されている接合体、好ましくは導電フィルムもしくは異方性導電フィルムとして使用されるフィラー含有フィルムで第1部材を第2部材に導電接続もしくは異方性導電接続されてなる接合体を提供する。また、本発明は、第1部材と第2部材とを、その間に同じく前述のフィラー含有フィルムを配置した後に接合する、接合体の製造方法、好ましくは導電フィルムもしくは異方性導電フィルムとして使用されるフィラー含有フィルムで第1部材を第2部材に導電接続もしくは異方性導電接続する、接続構造体の製造方法を提供する。この製造方法においては、第1部材の端子と第2部材の端子とを、導電粒子で電気的に接続することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のフィラー含有フィルムは、“コアフィルムの表面における貫通孔の開口径と裏面における貫通孔の開口径との関係”と、“コアフィルムの表面における貫通孔の開口径とフィラー径との関係”と、“コアフィルム厚とフィラー径との関係”とに加えて、“コアフィルムのフィルム厚み方向における導電粒子の位置ずれ割合”を、それぞれ特定の範囲に限定している。このため、フィラー含有フィルムを介して二つの部材を圧着、例えば熱圧着等により接合する際に、コアフィルムの樹脂流動を抑制し、フィラーの意図しない移動を制限でき、また、フィルムの圧着、例えば熱圧着の際に圧着ムラが生じないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A図1Aは、フィラー含有フィルムの断面図である。
図1B図1Bは、図1Aのフィラー含有フィルムの部分拡大断面図である。
図2A図2Aは、フィラー含有フィルムの製造方法の説明図である。
図2B図2Bは、フィラー含有フィルムの製造方法の説明図である。
図2C図2Cは、実施例のフィラー含有フィルムの製造方法の説明図である。
図2D図2Dは、実施例のフィラー含有フィルムの製造方法の説明図である。
図2E図2Eは、実施例のフィラー含有フィルムの製造方法の説明図である。
図2F図2Fは、実施例のフィラー含有フィルムの製造方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のフィラー含有フィルムの一例について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、各図中、同一符号は、同一又は同等の構成要素を表している。
【0017】
<フィラー含有フィルム10の全体構成>
図1Aは本発明のフィラー含有フィルム10の断面図である。このフィラー含有フィルム10は、絶縁ベース層1と粘着層2との間に、貫通孔thを有するコアフィルム3が挟持されており、貫通孔thにはフィラー4が保持されている構造を有し、以下の式(1)~(4)を満足することを特徴としている。
【0018】
【数2】
【0019】
図1Bは、本発明のフィラー含有フィルム10のフィラー4の周辺の部分拡大断面図である。図1Bからわかるように、これらの式中“O”は、コアフィルム3の粘着層2側表面における貫通孔thの開口径[μm]であり、“O”は、コアフィルム3の絶縁ベース層1側表面における貫通孔thの開口径[μm]であり、“C”は、コアフィルム3の厚み[μm]であり、“P”は、フィラー4の平均粒子径[μm]であり、“L”は、フィルム厚み方向におけるコアフィルム3の中心線Xとフィラー4の中心線Yとの間の距離[μm]である。“S”は、距離L[μm]のフィラー4の平均粒子径P[μm]に対する割合[%]であり、換言すれば、フィルム厚み方向におけるコアフィルム3に対するフィラー4の位置ずれ割合[%]である。なお、“L”の正負について、絶縁ベース層側に向かって正とする。
【0020】
以下、本発明のフィラー含有フィルム10の具体的構成要素である“絶縁ベース層1”、“粘着層2”、“コアフィルム3”及び“フィラー4”についてそれぞれ説明し、その後に、本発明のフィラー含有フィルム10を特徴づけるパラメータ構成要素である“コアフィルムの表面における貫通孔の開口径と裏面における貫通孔の開口径との関係を示す式(1)”、“コアフィルムの表面における貫通孔の開口径とフィラー径との関係を示す式(2)”、“コアフィルム厚とフィラー径との関係を示す式(3)”、及び“フィルム厚み方向におけるコアフィルムに対するフィラーの位置ずれ割合を示す式(4)”について説明する。
【0021】
<具体的構成要素>
「絶縁ベース層1」
本発明のフィラー含有フィルム10を構成する絶縁ベース層1は、フィラー含有フィルム10を製造する際に、その上にコアフィルムを形成するためのベースとなる層である。そのような絶縁ベース層1は、単一の絶縁性樹脂層から構成されていてもよく、複数の絶縁性樹脂層の積層体から構成されていてもよい。また、絶縁ベース層1は、粘着性を示すことが好ましい。
【0022】
(絶縁ベース層1を構成する樹脂組成物)
絶縁ベース層1を構成する樹脂組成物は、フィラー含有フィルムの用途に応じて適宜選択することができ、例えば、熱可塑性樹脂組成物、高粘度粘着性樹脂組成物、あるいは硬化性樹脂組成物を挙げることができる。例えば、フィラー含有フィルムを導電フィルムや異方性導電フィルムとする場合、従来の導電フィルムや異方性導電フィルムの絶縁性樹脂層を形成する樹脂組成物と同様に、重合性化合物と重合開始剤から形成される硬化性樹脂組成物を使用することができる。この場合、重合開始剤としては熱重合開始剤を使用してもよく、光重合開始剤を使用してもよく、それらを併用してもよい。例えば、熱重合開始剤としてカチオン系重合開始剤、熱重合性化合物としてエポキシ樹脂を使用し、光重合開始剤として光ラジカル重合開始剤、光重合性化合物としてアクリレート化合物を使用する。熱重合開始剤として、熱アニオン重合開始剤を使用してもよい。熱アニオン重合開始剤としては、イミダゾール変性体を核としその表面をポリウレタンで被覆してなるマイクロカプセル型潜在性硬化剤を用いることが好ましい。
【0023】
(絶縁ベース層1の最低溶融粘度)
絶縁ベース層1の最低溶融粘度は、フィラー含有フィルム10を物品に圧着、例えば熱圧着する際の樹脂流動によるフィラー4の不要な移動を抑制し、適度な樹脂流動を導くために、200Pa・s以上であってもよく、好ましくは1500Pa・s以上、より好ましくは2000Pa・s以上、特に好ましくは3000Pa・s以上であり、好ましくは15000Pa・s以下、より好ましくは10000Pa・s以下、特に好ましくは8000Pa・s以下である。最低溶融粘度は、一例として回転式レオメータ(TA Instruments社製)を用い、測定圧力5gで一定に保持し、直径8mmの測定プレートを使用して求めることができ、より具体的には、温度範囲30~200℃において、昇温速度10℃/分、測定周波数10Hz、前記測定プレートに対する荷重変動5gとすることにより求めることができる。なお、最低溶融粘度の調整は、溶融粘度調整剤としての微小固形物の種類や配合量、樹脂組成物の調整条件の変更などにより行うことができる。
【0024】
(絶縁ベース層1の層厚)
絶縁ベース層1の層厚は、コアフィルム3とフィラー4とを安定的に保持する等のため、フィラー4の平均粒子径Pに対して、好ましくは0.6倍以上、より好ましくは1.2倍以上、特に好ましくは1.5倍以上である。また、絶縁ベース層1の層厚の上限については、樹脂流動によりフィラー4の不要な移動を招かないように、フィラー4の平均粒子径の好ましくは10倍以下、より好ましくは5倍以下である。層厚は、公知のシックネスゲージや膜厚測定器により測定することができる。
【0025】
(絶縁ベース層1の粘着力)
絶縁ベース層1は、フィラー含有フィルムを圧着、例えば熱圧着する物品に対して、圧着前の仮圧着を可能とする粘着力を有していることが好ましい。粘着力は、JIS Z 0237に準じて測定することができ、また、JIS Z 3284-3又はASTM D 2979―01に準じてプローブ法によりタック力として測定することもできる。フィラー含有フィルム10を構成する絶縁ベース層1のプローブ法によるタック力は、例えば、プローブの押し付け速度を30mm/min、加圧力を196.25gf、加圧時間を1.0sec、引き剥がし速度を120mm/min、測定温度23℃±5℃で計測したときに、好ましくは1.0kPa(0.1N/cm2)以上、より好ましくは1.5kPa(0.15N/cm2)以上、特に好ましくは3.0kPa(0.3N/cm2)以上である。
【0026】
また、絶縁ベース層1の粘着力は、特開2017-48358号公報に記載の接着強度試験に準じて求めることもできる。この接着強度試験において、例えば、2枚のガラス板で絶縁ベース層1を挟み、一方のガラス板を固定し、他方のガラス板を引き剥がし速度10mm/min、試験温度50℃で引き剥がしていく場合に、固定するガラス板と絶縁ベース層1との接着状態を強めておくことで、引き剥がしていくガラス板と、そのガラス板と貼り合わさっている絶縁ベース層1の面との粘着力を測定することが可能となる。こうして測定される接着強度(粘着力)を、好ましくは1N/cm2(10kPa)以上、より好ましくは10N/cm(100kPa)以上とすることができる。これは、絶縁ベース層1の引き剥がされる方向に存在する面と、引き剥がす物品間の粘着力になる。
【0027】
この他、絶縁ベース層1の粘着力は、試験片の一端を揃えて接着し(貼り合せ)、他端を引き上げることにより試験片を剥離させる試験により求めることもできる。この試験方法により計測される粘着力が、上記の接着強度試験と同等(1N/cm(10kPa)以上)の結果となってもよい。上述の接着強度試験による粘着力が十分に大きければ(例えば10N/cm2(100kPa)以上)、この試験方法での粘着力は上述の接着強度試験による粘着力の10%以上であればよい。
【0028】
このような粘着性は、絶縁ベース層を構成する樹脂組成を適宜調整し、また、後述するフィラー含有フィルムの製造方法によって、フィラー含有フィルムの外表面をなす絶縁ベース層の平滑性を向上させることにより、調整することができる。
【0029】
「粘着層2」
本発明のフィラー含有フィルム10を構成する粘着層2は、フィラー含有フィルム10を物品に仮圧着して被着させるための層である。粘着層2は、単一の絶縁性樹脂層から構成されていてもよく、複数の絶縁性樹脂層の積層体から構成されていてもよい。
【0030】
(粘着層2を構成する樹脂組成物)
粘着層2を構成する樹脂組成物は、絶縁ベース層1と同様に、フィラー含有フィルムの用途に応じて適宜選択され、例えば、熱可塑性樹脂組成物、高粘度粘着性樹脂組成物、あるいは硬化性樹脂組成物を挙げることができる。例えば、フィラー含有フィルムを導電フィルムや異方性導電フィルムとする場合、従来の導電フィルムや異方性導電フィルムの粘着層を形成する樹脂組成物と同様に、重合性化合物と重合開始剤から形成される硬化性樹脂組成物を使用することができる。この場合、重合開始剤としては熱重合開始剤を使用してもよく、光重合開始剤を使用してもよく、それらを併用してもよい。例えば、熱重合開始剤としてカチオン系重合開始剤、熱重合性化合物としてエポキシ樹脂を使用し、光重合開始剤として光ラジカル重合開始剤、光重合性化合物としてアクリレート化合物を使用する。熱重合開始剤として、熱アニオン重合開始剤を使用してもよい。熱アニオン重合開始剤としては、イミダゾール変性体を核としその表面をポリウレタンで被覆してなるマイクロカプセル型潜在性硬化剤を用いることが好ましい。
【0031】
(粘着層2の最低溶融粘度)
粘着層2の最低溶融粘度は、上述の絶縁ベース層1と同じであってもよい。絶縁ベース層1よりも、意図的に低く設定することも、高く設定することもできる。絶縁ベース層1と粘着層2の最低溶融粘度(および厚み)を調整することで、フィラー含有フィルム10を物品に圧着、例えば熱圧着する際の樹脂流動の制御を精緻に行うことができ、種々の用途への応用が期待できる。異方性導電接続に用いる場合には、フィラー(即ち、導電粒子)の不要な移動の抑制をより精緻に行うことができる。
【0032】
(粘着層2の層厚)
粘着層2の層厚は、上述の絶縁ベース層1と同じであってもよい。絶縁ベース層1よりも、意図的に低く設定することも、高く設定することもできる。具体的には、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上である。貼り付けに用いる場合には、薄くすることが好ましい。コアフィルムの貫通孔にフィラーを充填させるために、20μm以上としてもよい。厚すぎると巻装体とした場合に樹脂のはみ出しが懸念されることから、50μm以下であることが好ましい。このように、上限は、目的に合わせて適宜設定することができる。
【0033】
(粘着層2の粘着力)
粘着層2の粘着力は、フィラー含有フィルムを熱圧着する物品に対して、仮貼りを可能とする粘着力を有していることが好ましい(物品に貼着可能な粘着力があればよい)。このような粘着層2の粘着力は、絶縁ベース層1の粘着力と同じであってもよく、絶縁ベース層1の粘着力より強くてもよく、逆に弱くてもよい。物品に貼り付ける面が絶縁ベース層1であるか粘着層2であるか、また載置する物品に対して必要な粘着力はどの程度であるか、という観点等から、粘着層2の粘着力と絶縁ベース層1の粘着力とをそれぞれ最適化すればよい。
【0034】
このような粘着性は、粘着層2を構成する樹脂組成を適宜調整し、また、後述するフィラー含有フィルムの製造方法によって、フィラー含有フィルムの外表面をなす粘着層2の平滑性を向上させることにより、調整することができる。
【0035】
「コアフィルム3」
本発明のフィラー含有フィルム10を構成するコアフィルム3は、フィラー4を充填するための貫通孔thを有し、絶縁ベース層1や粘着層2の樹脂流動によるフィラーの意図しない移動を抑制するための層であり、スペーサーシートとしての機能を有する。このようなコアフィルム3は、単一の絶縁性樹脂層から構成されていてもよく、複数の絶縁性樹脂層の積層体から構成されていてもよい。
【0036】
(コアフィルム3を構成する樹脂組成物)
コアフィルム3を構成する樹脂組成物は、フィラー含有フィルム10の用途に応じて適宜選択され、例えば、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂などを含有する熱可塑性樹脂組成物や高粘度粘着性樹脂組成物、あるいはエポキシ樹脂、アクリル樹脂等を含有する硬化性樹脂組成物又はこれらの混合物を挙げることができる。
【0037】
(コアフィルム3の溶融粘度)
コアフィルム3の溶融粘度は、フィラー含有フィルム10を物品に圧着、例えば熱圧着する際の樹脂流動によるフィラー4の不要な移動を抑制するために、圧着時の温度領域において絶縁ベース層1の最低溶融粘度の好ましくは1.1倍以上、より好ましくは1.2倍以上である。溶融粘度は、一例として回転式レオメータ(TA Instruments社製)を用い、測定圧力5gで一定に保持し、直径8mmの測定プレートを使用して求めることができ、より具体的には、温度範囲30~250℃において、昇温速度10℃/分、測定周波数10Hz、前記測定プレートに対する荷重変動5gとすることにより求めることができる。なお、溶融粘度の調整は、溶融粘度調整剤として微小固形物の種類や配合量、樹脂組成物の調整条件の変更などにより行うことができる。
【0038】
(コアフィルム3の厚み)
コアフィルム3の厚みは、フィラー4を安定的に保持する等のため、フィラー4の平均粒子径Pとの関係で決定される。この点については後述する。
【0039】
(コアフィルム3の貫通孔th)
コアフィルム3には、フィラー4を充填し保持するための貫通孔thが形成されている。貫通孔thは粘着層2側と絶縁ベース層1側のそれぞれに開口している。開口の平面視形状は好ましくは円形であるが、他の形状であってもよい。本発明においては、粘着層2側の開口径Oと絶縁ベース層1側の開口径Oとを、フィラーの貫通孔へ充填とフィラーの押込みを両立するためにほぼ同じにすることが好ましい。具体的には、絶縁ベース層1側の開口径Oを、粘着層2側の開口径Oの0.95倍以上1.05倍以下、好ましくは1.0倍とすることが好ましい。
【0040】
このような貫通孔thは、コアフィルム3にランダムパターンで設けてもよく、規則パターンで配列させてもよい。このような貫通孔パターンは、フィラー含有フィルム10におけるフィラーの存在パターンと実質的に同義となる。規則パターンの例としては、正方格子、長方格子、斜方格子等の格子配列を挙げることができる。異なる形状の格子が、複数組み合わさったものでもよい。規則パターンであることで、品質管理がし易くなる利点が挙げられる。貫通孔が所定間隔で直線状に並んだ貫通孔列を所定の間隔で並列させてもよい。貫通孔thが密に配置されている領域と疎に配置されている領域が規則的に繰り返されていてもよい。フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとする場合には、貫通孔を互いに離隔した規則的な配列とすることが、端子における捕捉安定性とショート抑制の両立のためにより好ましい。なお、貫通孔thが規則的な配列をしているか否かは、例えばフィルムの長手方向(フィラー含有フィルムを巻装体にした場合の巻取り方向)に貫通孔もしくはフィラーの所定の配置が繰り返されているか否かを観察することで判別することができる。
【0041】
また、貫通孔へのフィラー充填率は、{(フィラー個数/貫通孔個数)×100(%)}として求めることができる。これは、下記の個数密度と同様にフィルム面視野の観測により求めることができる。フィラー充填率は、95%以上であればよく、98%以上が好ましく、99.5%以上であることがより好ましい。フィラーが充填されていない残存貫通孔(残存率)が少ない(ゼロに近しい)ことが望ましいが、実用上、貫通孔th個数に対して2%未満、好ましくは1%未満、より好ましくは0.5%未満の残存率であってもよい。残存率をゼロに近づけるように排除作業を行うと、フィルム表面への欠損の理由となりかねないためである。
【0042】
貫通孔th同士の距離は接続する物品や用途に応じて定めることができ、また、貫通孔thの個数密度は、通常10個/mm2以上であればよく、30個/mm2以上が好ましく、上限は500000個/mm2以下であればよく、250000個/mm2以下であることが好ましく、100000個/mm2以下がより好ましい。個数密度は、顕微鏡観察によりフィルム面視野を測定することができる。顕微鏡観察の際の観察面積は、2mm以上、好ましくは10mm以上であることが好ましい。
【0043】
貫通孔th(即ちフィラー)の個数密度は、金属顕微鏡を用いて観察して求める他、画像解析ソフト(例えば、WinROOF(三谷商事株式会社)や、A像くん(登録商標)(旭化成エンジニアリング株式会社)等)により観察画像を計測して求めてもよい。観察方法や計測手法は、上記に限定されるものではない。
【0044】
本発明では、貫通孔のサイズが統一されていることで、発明の効果をより顕著に奏することができる。そのためには、貫通孔の開口部の大きさおよび深さが、以下の条件を満たすことが望ましい。即ち、フィラー含有フィルムにおいて、観察面積の合計が1mm以上、好ましくは2mm以上において、貫通孔の個数が1000個以上(好ましくは2000個以上)である領域に含まれる貫通孔の全数の95%以上、好ましくは98%以上、より好ましくは99.5%以上のものが開口部の大きさ及び深さが一致していることが望ましい。ここで、「開口部の大きさ及び深さが一致している」の「一致している」とは、ある貫通孔の開口部の大きさ及び深さが、計測誤差を考慮し、それぞれ所定の領域に含まれる貫通孔の開口部の平均の大きさおよび平均の深さの±15%以内、好ましくは±10%以内、より好ましくは±5%以内の範囲内に収まっていることを意味する。なお、開口部の大きさは、開口部の形状が異なるものが存在するため、開口部の面積を円に換算した場合の直径としてもよい。
【0045】
「フィラー4」
本発明においてフィラー4としては、フィラー含有フィルムの用途に応じて、公知の無機系フィラー(金属粒子、金属酸化物粒子、金属窒化物粒子など)、有機系フィラー(樹脂粒子、ゴム粒子など)、有機系材料と無機系材料が混在したフィラー(例えば、コアが樹脂材料で形成され、表面が金属メッキされている粒子(金属被覆樹脂粒子)、導電粒子の表面に絶縁性微粒子を付着させたもの、導電粒子の表面を絶縁処理したもの等から、硬さ、光学的性能などの用途に求められる性能に応じて適宜選択される。例えば、光学フィルムや艶消しフィルムでは、シリカフィラー、酸化チタンフィラー、スチレンフィラー、アクリルフィラー、メラミンフィラーや種々のチタン酸塩等のフィラーを使用することができる。コンデンサー用フィルムでは、酸化チタン、チタン酸マグネシウム、チタン酸亜鉛、チタン酸ビスマス、酸化ランタン、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛及びこれらの混合物等のフィラーを使用することができる。接着フィルムではポリマー系のゴム粒子、シリコーンゴム粒子等を含有させることができる。導電フィルムや異方性導電フィルムでは導電粒子を含有させる。導電粒子としては、ニッケル、コバルト、銀、銅、金、パラジウムなどの金属粒子、ハンダなどの合金粒子、金属被覆樹脂粒子、表面に絶縁性微粒子が付着している金属被覆樹脂粒子などが挙げられる。2種以上を併用することもできる。中でも、金属被覆樹脂粒子が、接続された後に樹脂粒子が反発することで端子との接触が維持され易くなり、導通性能が安定する点から好ましい。また、導電粒子の表面には公知の技術によって、導通特性に支障を来さない絶縁処理が施されていてもよい。
【0046】
(フィラー4の平均粒子径)
本発明においてフィラー4の平均粒子径Pはフィラー含有フィルムの用途に応じて定めることができる。例えば、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとして使用する場合、フィラー含有フィルムの製造時のフィラーの押込精度を向上させるため、好ましくは1μm以上、より好ましくは1.4μm以上、特に好ましくは2.5μm以上である。また、上限には特に制約はないが、フィラー含有フィルムの製造時のフィラーの位置ずれの影響を抑制するため、好ましくは200μm以下、より好ましくは50μm以下、特に好ましくは30μm以下である。フィラー4の平均粒子径Pは、フィラー含有フィルムの顕微鏡観察による平面画像又は断面画像から求めることができる。また、フィラー含有フィルムに含有させる前の原料粒子としてのフィラーの平均粒子径は湿式フロー式粒子径・形状分析装置FPIA-3000(マルバーン・パナリティカル社)を用いて求めることができる。なお、フィラーに絶縁性微粒子等の微粒子が付着している場合には、微粒子を含めない径を粒子径とする。
【0047】
フィラー含有フィルムにおけるフィラーの平均粒子径Pのバラツキについては、CV値(標準偏差/平均)を20%以下とすることが好ましい。これによりフィラー含有フィルムの物品への圧着時にフィラー含有フィルムが均等に押圧され易くなり、押圧力が局所的に集中することを防止できる。したがって、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとして構成する場合には、接続の安定性が向上し、また接続後には圧痕やフィラーの挟持状態の観察による接続状態の評価を精確に行うことができる。具体的には、異方性導電フィルムを用いて電子部品同士を異方性導電接続した後の検査において、端子サイズが比較的大きいもの(FOBなど)でも、比較的小さいもの(COGなど)でも圧痕や導電粒子の挟持状態の観察による接続状態の確認を精確に行うことができる。従って、異方性導電接続後の検査が容易になり、接続工程の生産性を向上させることが期待できる。
【0048】
一方、フィラー含有フィルムをフィルム厚方向に切った断面図では(図1A)、フィルム厚方向の各フィラーの頂点が、絶縁ベース層1とコアフィルム3との界面に平行な面に面一に揃っていることが好ましい。これにより、フィラー含有フィルムを物品に均一に圧着させることが容易となる。
【0049】
<パラメータ構成要素>
以上説明した本発明のフィラー含有フィルム10は、前述したように、“コアフィルムの表面における貫通孔の開口径と裏面における貫通孔の開口径との関係(式(1))”、“コアフィルムの表面における貫通孔の開口径とフィラー径との関係(式(2))”、“コアフィルム厚とフィラー径との関係(式(3))”、及び“コアフィルムのフィルム厚み方向における導電粒子の位置ずれ割合(式(4))”を、それぞれ特定の範囲に限定している。
【0050】
【数3】
【0051】
本発明のフィラー含有フィルム10のフィラー4の周辺の部分拡大断面図である図1Bからわかるように、これらの式中、“O”は、コアフィルム3の粘着層2側表面における貫通孔thの開口径[μm]であり、“O”は、コアフィルム3の絶縁ベース層1側表面における貫通孔thの開口径[μm]であり、“C”は、コアフィルム3の層厚[μm]であり、“P”は、フィラー4の平均粒子径[μm]であり、及び“L”は、フィルム厚み方向におけるコアフィルム3の中心線Xとフィラー4の中心線Yとの間の距離[μm]である。“S”は、距離L[μm]のフィラー4の平均粒子径P[μm]に対する割合[%]であり、換言すれば、フィルム厚み方向におけるコアフィルム3に対するフィラー4の位置ずれ割合[%]である。なお、“L”の正負について、絶縁ベース層側に向かって正とする。
【0052】
(式(1)の意義)
式(1)は、“コアフィルム3の表面における貫通孔の開口径Oと裏面における貫通孔の開口径Oとの関係”を示す式である。この関係に着目した理由は、フィラーが貫通孔の所定の位置に配置し易くするためである。本発明においては、コアフィルム3の裏面(ベース層1側)の開口径Oを、表面(粘着層2側)の開口径Oとほぼ同じ大きさ、具体的には開口径Oの0.95倍以上1.05倍以下、好ましくは同じ大きさに設定する。これは、コアフィルム3の裏面の開口径Oを表面の開口径Oの0.95倍を下回るもしくは1.05倍を上回り、粘着層側表面の開口径に対して小さくなりすぎても大きくなりすぎても、孔に対して基底部になる粘着層や絶縁ベース層の孔内への侵入度合いなどが微小に変化し、調整し難くなるからである。
【0053】
(式(2)の意義)
式(2)は、“コアフィルム3の開口径Oとフィラー径との関係”を示す式である。この関係に着目した理由は、貫通孔内にフィラーが充填され且つ孔内に保持され易くするためである。本発明においては、コアフィルム3の表面(粘着層側)の開口径Oを、フィラーの平均粒子径Pの0.80倍以上、好ましくは0.85倍以上、1.05倍以下、好ましくは 1.02倍以下に設定する。これは、開口径Oがフィラーの平均粒子径Pの0.80倍を下回ると孔内にフィラーが充填されにくくなり、1.05倍を上回ると孔内にフィラーが保持されにくくなる傾向があるからである。
【0054】
(式(3)の意義)
式(3)は、“コアフィルム厚とフィラー径との関係”を示す式である、この関係に着目した理由は、上記同様に貫通孔内にフィラーが充填され且つ孔内に保持され易くするためである。本発明においては、コアフィルム厚Cを、フィラー4の平均粒子径Pの0.08倍以上、好ましくは0.12倍以上、0.40倍以下、好ましくは0.36倍以下に設定する。これは、コアフィルム厚Cがフィラーの平均粒子径Pの0.08倍を下回るとフィルム厚みがフィラーを保持し難くなり、フィラーが抜けやすい傾向が生じ、0.40倍を上回ると孔径の小ささから押込みがしにくくなる傾向が生じるからである。
【0055】
(式(4)の意義)
式(4)は、“コアフィルムのフィルム厚み方向におけるフィラーの位置ずれ割合”Sを示す式である。この関係に着目した理由は、ツールからの押込みの荷重はフィルム全体に平均的にかかるため、フィルム厚みがフィラー径よりも小さい本発明では荷重がかかる過程で多数個のフィラーが同時に荷重を受けることになるからある。本発明においては、フィルム厚み方向におけるコアフィルム3の中心線Xとフィラー4の中心線Yとの間の距離L[μm]のフィラー4の平均粒子径P[μm]に対する割合S[%]を20%以下、好ましくは15%以下に設定する。これは、割合Sが20%を超えてしまうとフィラーが受ける荷重のかかり具合が不均一になり易くなり、押込み時にフィラーの抜けが発生するなどの不良が発生する懸念があるからである。
【0056】
<フィラー含有フィルムの製造方法>
本発明のフィラー含有フィルム10は、次のように製造することができる。まず、PETフィルム等の表面が平滑な剥離基材20に、絶縁ベース層形成用組成物1′を塗布し(図2A)、常法により乾燥することにより絶縁ベース層1を形成する(図2B)。
【0057】
次に、レーザー加工あるいはフォトリソ加工、スタンプ加工等により貫通孔thを設けたコアフィルム3を、絶縁ベース層1上に公知の手法により積層する(図2C)。
【0058】
続いて、コアフィルム3にフィラー4を散布し、スキージ等を用いてフィラー4を貫通孔thに充填し、貫通孔thに充填されなかったフィラー4をエアブロー等で除去する(図2D)。
【0059】
最後に、コアフィルム3上に、粘着層形成用組成物2′を塗布(図2E)し、必要に応じて圧着ツールで押圧した後、常法により乾燥することにより粘着層2を形成する(図2F)。これにより、剥離基材20を備えたフィラー含有フィルムを得ることができ、剥離基材20を除去すれば、図1Aに示すフィラー含有フィルム10を得ることができる。
【0060】
<フィラー含有フィルムの使用方法>
本発明のフィラー含有フィルムは、従前のフィラー含有フィルムと同様に物品に貼り合わせて使用することができ、貼り合わせる物品に特に制限はない。したがって、フィラー含有フィルムを介して第1部材と第2部材とが接合されている接合体、第1部材と第2部材との間にフィラー含有フィルムを配置し、接合することにより接合体を製造する方法も本発明の一部である。例えば、フィラー含有フィルムを導電フィルムや異方性導電フィルムとして構成する場合、圧着ツール、例えば熱圧着ツールを用いて導電フィルムや異方性導電フィルムを、PN接合を利用した半導体素子(太陽電池等の発電素子、CCD等の撮像素子、発光素子、ペルチェ素子)、その他各種半導体素子、ICチップ、ICモジュール、FPCなどの第1電子部品と、FPC、ガラス基板、プラスチック基板、リジッド基板、セラミック基板などの第2電子部品との導電接続や異方性導電接続に使用することができ、またこのフィラー含有フィルムを導電接続や異方性導電接続以外の用途で電子部品に用いることもできる。なお、フィラー含有フィルムを貼り合せる物品の面は、平滑でもよく、段部や凸形状を有していてもよい。
【0061】
導電フィルムや異方性導電フィルムで接続する第1電子部品及び第2電子部品の形状、大きさ、用途等に特に制限はない。これら電子部品が小型で端子サイズが狭小化していてもよく、電子部品の搭載に高精度のアライメントが必要とされてもよい。例えば、バンプ面積が数十μm2~数千μm2の極小化された電子部品(例えばミニLEDやマイクロLEDなど)も接続対象とすることができる。一方、外形サイズの大きな電子部品の実装を、導性フィルムや異方性導電フィルムを用いて行うことができる。また、実装した電子部品を分割することにより小片化して使用してもよい。また、大型TVなどに用いる場合は、フィラー含有フィルムを1辺に1m以上、例えば4.5m以上貼着することもある。この場合、フィラー含有フィルムを導電フィルムや異方性導電フィルムとして使用する以外に、フィラーをスペーサーとしたスペーサーフィルム等として使用してもよい。
【0062】
本発明の導電性フィルムや異方性導電フィルムを用いてICチップやウェーハーをスタックして多層化してもよい。なお、本発明の導電性フィルムや異方性導電フィルムで接続する電子部品は、上述の電子部品の例示に限定されるものではない。近年、多様化している種々の電子部品に使用することができる。本発明は種々の物品に特に本発明のフィラー含有フィルムを貼り合わせたフィルム貼着体を包含し、特に、第1電子部品と第2電子部品を、異方性導電フィルムを介して接続した接続体を包含する。
【0063】
フィラー含有フィルムを物品に貼り合わせる方法は、フィラー含有フィルムの用途に応じて圧着、例えば熱圧着とすることができ、あるいは貼り合わせ時に光照射を利用してもよい。光照射を利用する一例としては、特開2022-151816号公報に記載されているレーザーリフトオフ法に従ってフィラー含有フィルムを個片化し、更に転写させることが挙げられる。レーザーリフトオフ法に適したフィラー含有フィルムとするために使用すべき樹脂材料や粘着材料としては、特開2022-151816号公報に記載されているもの中から選択して使用することができる。
【0064】
フィラー含有フィルムを、例えば、導電フィルムや異方性導電フィルムとして構成する場合、そのより具体的な使用方法としては、例えば、第1電子部品がICチップ、第2電子部品が基板の場合に、一般的には第1電子部品を加圧ツール側、第2電子部品を第1の電子部品と対向するステージに載置し、第2電子部品に予め導電フィルムや異方性導電フィルムを貼着させ、加圧ツールを用いて第1電子部品と第2電子部品の圧着、例えば熱圧着を行う。この場合、第1電子部品に予め導電フィルムや異方性導電フィルムを貼着してもよく、また第1電子部品はICチップに限定されない。
【0065】
第1電子部品と第2電子部品を圧着、例えば熱圧着により接続するにあたり、必要に応じて、圧着前に予め導電粒子周辺の樹脂を排除して仮圧着を行ってもよい。これにより、導電フィルムや異方性導電フィルムを電子部品に圧着する際に生じる樹脂流動の影響を低減させ、導電粒子の不要な移動を抑制することができる。具体的には、接続する一方の電子部品を導電フィルムや異方性導電フィルムの一方の面に貼着し、もう一方の電子部品を導電フィルムや異方性導電フィルムの他方の面に貼着して仮圧着を行う際に電子部品を加圧ツールで押圧し、電子部品間の樹脂を部分的に排除し、次いで本圧着として押圧、例えば熱押圧することにより電子部品同士を接続する(以下、本圧着時の押圧だけでなく仮圧着時の押圧を行う接続方法を2段階押し込みによる接続という)。WO2016/143789には、導電粒子がランダムに分散している導電フィルムや異方性導電フィルムを用いて2段階押し込みによる接続を行うことが記載されているが、導電フィル得や本発明のように導電粒子が規則的に配列している導電フィルムや異方性導電フィルムで電子部品同士を接続する場合にこのような2段階押し込みによる接続を行うと、圧着時、例えば熱圧着時の導電粒子の不要な移動を大きく低減させることが可能となる。
【実施例0066】
以下、本発明を実施例・比較例により具体的に説明する。実施例及び比較例において使用した絶縁ベース層形成用樹脂組成物、コアフィルム形成用樹脂組成物及び粘着層形成用樹脂組成物の各配合を以下に示す。
【0067】
<絶縁ベース層形成用樹脂組成物の配合>
フェノキシ樹脂(YP-50、日鉄ケミカル&マテリアル(株)) 40質量部
シリカフィラー(アエロジルR805、日本アエロジル(株)) 25質量部
液状エポキシ樹脂(jER828、三菱ケミカル(株)) 30質量部
シランカップリング剤(KBM-403、信越化学工業(株)) 2質量部
熱カチオン重合開始剤(SI-60L、三新化学工業(株)) 3質量部
【0068】
<コアフィルム形成用樹脂組成物の配合>
フェノキシ樹脂(PKFE、巴工業(株)) 70質量部
ヒュームドシリカ(RY200、日本アエロジル(株)) 30質量部
【0069】
<粘着層形成用樹脂組成物の配合>
フェノキシ樹脂(YP-50、日鉄ケミカル&マテリアル(株)) 40質量部
シリカフィラー(アエロジルR805、日本アエロジル(株)) 5質量部
液状エポキシ樹脂(jER828、三菱ケミカル(株)) 50質量部
シランカップリング剤(KBM-403、信越化学工業(株)) 2質量部
熱カチオン重合開始剤(SI-60L、三新化学工業(株)) 3質量部
【0070】
実施例1~4、比較例1~3
表面に剥離処理が施されたポリエチレンテレフタレート製の剥離フィルム(50μm厚)に、上述の絶縁ベース層形成用樹脂組成物を塗布し、常法により乾燥することにより層厚(3.0μm)の絶縁ベース層フィルムを形成した。
【0071】
次に、表面に剥離処理が施されたポリエチレンテレフタレート製の剥離フィルム(50μm厚)上で、特許第6187665号の段落0111記載の金型と略同様の型を透明性ポリカーボネート系ペレットを用いて作製し、この型に、上述のコアフィルム形成用樹脂組成物の混合物から調整した塗布液(固形分20%に汎用溶剤で希釈)を塗布後、60℃の乾燥器内に5分放置して乾燥することで粘着層側に表面開口径(O)と絶縁ベース層側に裏面開口径(O)とを有する貫通孔thを有するコアフィルムを表1の厚さで得た。また、同様の手法で表面開口径(O)が裏面開口径(O)よりも大きい貫通孔thを形成した(比較例1~4)。
【0072】
次に、貫通孔が形成されたコアフィルムを剥離フィルムから剥離し、先に作成した絶縁ベース層フィルムにコアフィルムを裏面側から積層した(図2C)。
【0073】
続いて、コアフィルムにフィラーを散布し、スキージを用いて表1の平均粒子径Pd[μm]のフィラーを貫通孔に充填し、貫通孔に充填されなかったフィラーをエアブローで除去した(図2D)。
【0074】
最後に、コアフィルム上に、粘着層形成用樹脂組成物をフィラー含有フィルムの総厚みが約18μmになるように塗布(図2E)し、常法により乾燥し、圧着ツールで押圧することにより粘着層2を形成した(図2F)。これにより、絶縁ベース層表面に剥離フィルムを備えたフィラー含有フィルムを得た。剥離フィルムを除去すれば、図1Aに示すフィラー含有フィルムを得ることができる。なお、フィラー含有フィルムの厚み方向におけるコアフィルムの中心線とフィラーの中心線との距離L[μm]を光学顕微鏡にて測定し、得られた結果を表1に示し、更にフィラー含有フィルムの厚み方向におけるコアフィルムに対するフィラーの位置ずれ割合S[%]を算出し、その結果を表1に示した。
【0075】
<評価>
得られたフィラー含有フィルムについて、フィラーの「不動性」とフィラー含有フィルムにおける「圧着ムラ」、更にフィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとして使用した際の「導通性」とについて以下に説明するように試験評価した。
【0076】
(不動性)
フィラーの不動性を評価するために、粒子捕捉性を評価した。具体的には、各実施例及び比較例のフィラー含有フィルムを、粒子捕捉性の評価用ICと、端子(バンプ)パターンが対応するガラス基板(ITO配線)との間に、アライメントを6μmずらして挟み込み、加熱加圧(180℃、60MPa、5秒)して評価用の接続構造体を作成した。この接続構造体において、評価用ICのバンプとガラス基板の端子とが重なる、6μm×66.6μmの領域の100個についてフィラーの捕捉数を計測し、最低捕捉数を求め、以下の粒子捕捉性評価基準に従って評価した。得られた結果を表1に示す。実用上、A又はB評価であることが望まれる。
【0077】
粒子捕捉性の評価用IC
外形 1.6×29.8mm
厚み 0.3mm
バンプ仕様 サイズ 12μm×66.6μm、バンプピッチ 22μm(L/S=12μm/10μm)、バンプ高さ 12μm
【0078】
不動性(粒子捕捉性)評価基準
A: 最低捕捉数が5個以上
B: 最低捕捉数が3個以上5個未満
C: 最低捕捉数が1個以上3個未満
D: 最低捕捉数が0個
【0079】
(圧着ムラ)
圧着後の端子間スペースにおける貫通孔を有するコアフィルムの外観を観察し、フィラーが貫通孔から抜けるほど撓みが大きいものを圧着ムラとした。端子間スペースを10箇所観察して圧着ムラの有無を調べた。実用上、C評価であれば問題ないが、B評価以上が好ましい。
【0080】
圧着ムラ評価基準
A:貫通孔からフィラーが抜けていない
B:貫通孔から抜けたフィラーが10箇所中2箇所以下
C:貫通孔から抜けたフィラーが10箇所中5箇所以下
D:貫通孔から抜けたフィラーが10箇所中6箇所以上
【0081】
(導通性)
各実施例及び比較例のフィラー含有フィルムとしての異方性導電フィルムを、導通特性の評価用ICとガラス基板との間に挟み、加熱加圧(170℃、20MPa、10秒)して評価用接続構造体を作成し、その初期導通抵抗を測定し、以下の導通性評価基準に従って評価した。得られた結果を表1に示す。初期導通抵抗は、実用上、A又はB評価であることが求められる。
【0082】
ここで、評価用ICとガラス基板とは、互いに端子(バンプ)パターンが対応しており、サイズは次の通りである。また、評価用ICとガラス基板を接続する際には、異方性導電フィルムの長手方向とバンプの短手方向を合わせた。
【0083】
導通特性の評価用IC
外形 1.8×20.0mm
厚み 0.5mm
バンプ仕様 幅30μm×長85μm、バンプ間距離50μm、バンプ高さ15μm
【0084】
ガラス基板(Ti/Al配線)
ガラス材質 コーニング社製1737F
外形 30×50mm
厚み 0.5mm
【0085】
導通性評価基準
A: 初期導通抵抗が1.0Ω未満
B: 初期導通抵抗が1.0Ω以上2.0Ω未満
C: 初期導通抵抗が2.0Ω以上4.0Ω未満
D: 初期導通抵抗が4.0Ω以上
【0086】
【表1】
【0087】
<結果の考察>
実施例1~4のフィラー含有フィルムとしての異方性導電フィルムは、式(1)~(4)を満足していたので、いずれの評価項目についてもA又はB評価であった。特に、コアフィルムの層厚が1.0μm前後である実施例2、3の場合には、いずれの評価項目もA評価であった。
【0088】
それに対し、式(1)~(4)のすべてを満足していない比較例1の場合、
すべての評価項目についてC評価であった。また、式(3)及び(4)を満足するが、式(1)及び(2)を満足していない比較例2及び3の場合には、導通性についてはA評価であったが、不動性と圧着ムラについてはC評価であった。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明のフィラー含有フィルムは、“コアフィルムの表面における貫通孔の開口径と裏面における貫通孔の開口径との関係”と、“コアフィルムの表面における貫通孔の開口径とフィラー径との関係”と、“コアフィルム厚とフィラー径との関係”とに加えて、“コアフィルムのフィルム厚み方向における導電粒子の位置ずれ割合”を、それぞれ特定の範囲に限定している。このため、フィラー含有フィルムを介して二つの部材を圧着、例えば熱圧着等により接合する際に、コアフィルムの樹脂流動を抑制し、フィラーの意図しない移動を制限でき、また、フィルムの圧着、例えば熱圧着の際に圧着ムラが生じないようにすることができる。従って、本発明のフィラー含有フィルムは、各種電子部品を基板へ接続する際に有用である。
【符号の説明】
【0090】
1 絶縁ベース層
1′絶縁ベース層形成用組成物
2 粘着層
2′粘着層形成用組成物
3 コアフィルム
4 フィラー
10 フィラー含有フィルム
20 剥離基材
th 貫通孔
フィラー平均粒子径
コアフィルムの粘着層側表面における貫通孔の開口径
コアフィルムの絶縁ベース層側表面における貫通孔の開口径
コアフィルムの厚み
X フィルム厚み方向におけるコアフィルムの中心線
Y フィルム厚み方向におけるフィラーの中心線
L コアフィルムの中心線Xとフィラーの中心線Yとの間の距離
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F