(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136129
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】エアゾール剤用乳化組成物およびエアゾール剤
(51)【国際特許分類】
C11D 7/22 20060101AFI20240927BHJP
C11D 7/30 20060101ALI20240927BHJP
C11D 7/26 20060101ALI20240927BHJP
B01J 13/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C11D7/22
C11D7/30
C11D7/26
B01J13/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047117
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】592218300
【氏名又は名称】学校法人神奈川大学
(71)【出願人】
【識別番号】509185767
【氏名又は名称】マコトインターナショナル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】田嶋 和夫
(72)【発明者】
【氏名】今井 洋子
(72)【発明者】
【氏名】宮坂 佳那
(72)【発明者】
【氏名】福留 功
(72)【発明者】
【氏名】池田 和寛
【テーマコード(参考)】
4G065
4H003
【Fターム(参考)】
4G065BA07
4G065BB05
4G065CA04
4G065DA03
4G065DA04
4G065DA08
4H003BA20
4H003DA11
4H003DA12
4H003DB02
4H003EB02
4H003EB04
4H003EB09
4H003EB28
4H003ED02
4H003ED28
4H003FA04
4H003FA16
4H003FA21
4H003FA37
(57)【要約】
【課題】不燃性であり、優れた洗浄性および乾燥性を有するエアゾール剤用乳化組成物およびエアゾール剤用乳化組成物を含むエアゾール剤を提供する。
【解決手段】エアゾール剤用乳化組成物は、代替フロンを含む油相(O)と、水相(W)と、自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体および水酸基を有する重縮合ポリマーの粒子の少なくとも一方とを含み、W/O型エマルションである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
代替フロンを含む油相(O)と、
水相(W)と、
自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体および水酸基を有する重縮合ポリマーの粒子の少なくとも一方と
を含み、
W/O型エマルションである、エアゾール剤用乳化組成物。
【請求項2】
さらに変性アルコールを含む、請求項1に記載のエアゾール剤用乳化組成物。
【請求項3】
前記閉鎖小胞体および前記重縮合ポリマーの粒子の少なくとも一方は、前記油相と前記水相との界面に存在する、請求項1に記載のエアゾール剤用乳化組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のエアゾール剤用乳化組成物と噴射剤とを含む、エアゾール剤。
【請求項5】
前記噴射剤は、炭酸ガスおよび窒素ガスの少なくとも一方である、請求項4に記載のエアゾール剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール剤用乳化組成物およびエアゾール剤に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や自転車などの車両には、使用時間の経過に伴い、油分などの汚れが付着する。このような汚れは、車両を構成する各種部品の性能を低下させることがある。そのため、例えば、ブレーキに対してはブレーキクリーナーを、サスペンションなどの部品に対してはパーツクリーナーをそれぞれスプレーによって噴霧することで、各種部品に付着した汚れを除去し、各種部品の表面を洗浄する。
【0003】
ブレーキクリーナーやパーツクリーナーなどのクリーナーとしては、石油系炭化水素をベースとした洗浄剤組成物が用いられ、洗浄剤組成物は液化石油ガス(LPガス)によってエアゾール化されて洗浄対象物に噴霧される。しかしながら、このような洗浄剤組成物(エアゾール剤用組成物)は、引火性が高いため、取り扱いや保管、使用環境などが制限されることがある。
【0004】
このような状況から、石油系炭化水素を不燃性の代替フロンに置き換えることが試みられている。例えば特許文献1には、(Z)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンとHFE系の不燃性フッ素系溶剤とを含有してなり、質量比((Z)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン/HFE系の不燃性フッ素系溶剤)の範囲が30/70~99/1であることを特徴とする、自動車、二輪自動車、自転車、建機、農機、航空機、鉄道車両、船舶などの各種車両・乗物・輸送機関の洗浄用洗浄剤組成物が記載されている。
【0005】
しかしながら、このような洗浄剤組成物では、代替フロンの乾燥が早すぎることから、洗浄対象物の洗浄が完了する前に洗浄剤組成物が洗浄対象物から揮発してしまい、洗浄対象物を十分に洗浄できないことがある。さらには、このような洗浄剤組成物の乾燥性の欠点を補うために、洗浄剤組成物を何度も噴霧することから、使用性にも課題がある。
【0006】
また、エアゾール剤の技術として、特許文献2には、三相乳化技術を利用したエアゾール作成用乳化組成物およびエアゾール剤が記載されている。しかしながら、特許文献2では、これらエアゾール作成用乳化組成物およびエアゾール剤の洗浄分野への適用可能性について、何ら検討されていない。さらには、特許文献2では、これらエアゾール作成用乳化組成物およびエアゾール剤に代替フロンを添加する技術思想についても、何ら開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第6226501号公報
【特許文献2】特開2016-79107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、不燃性であり、優れた洗浄性および乾燥性を有するエアゾール剤用乳化組成物およびエアゾール剤用乳化組成物を含むエアゾール剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[1] 代替フロンを含む油相(O)と、水相(W)と、自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体および水酸基を有する重縮合ポリマーの粒子の少なくとも一方とを含み、W/O型エマルションである、エアゾール剤用乳化組成物。
[2] さらに変性アルコールを含む、上記[1]に記載のエアゾール剤用乳化組成物。
[3] 前記閉鎖小胞体および前記重縮合ポリマーの粒子の少なくとも一方は、前記油相と前記水相との界面に存在する、上記[1]または[2]に記載のエアゾール剤用乳化組成物。
[4] 上記[1]~[3]のいずれか1つに記載のエアゾール剤用乳化組成物と噴射剤とを含む、エアゾール剤。
[5] 前記噴射剤は、炭酸ガスおよび窒素ガスの少なくとも一方である、上記[4]に記載のエアゾール剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、不燃性であり、優れた洗浄性および乾燥性を有するエアゾール剤用乳化組成物およびエアゾール剤用乳化組成物を含むエアゾール剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施例1-1の洗浄性評価における洗浄後の汚れ試験体の外観写真である。
【
図2】
図2は、実施例1-2の洗浄性評価における洗浄後の汚れ試験体の外観写真である。
【
図3】
図3は、実施例1-3の洗浄性評価における洗浄後の汚れ試験体の外観写真である。
【
図4】
図4は、実施例1-4の洗浄性評価における洗浄後の汚れ試験体の外観写真である。
【
図5】
図5は、実施例1-5の洗浄性評価における洗浄後の汚れ試験体の外観写真である。
【
図6】
図6は、比較例1-1の洗浄性評価における洗浄後の汚れ試験体の外観写真である。
【
図7】
図7は、比較例1-2の洗浄性評価における洗浄後の汚れ試験体の外観写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態に基づき詳細に説明する。
【0013】
本発明者らは、代替フロンの乾燥が早すぎることから、代替フロンを用いた洗浄剤組成物に水を添加して、組成物の乾燥を遅く制御する(遅乾)ことを試みた。しかしながら、代替フロンと水とは相溶性がないことから、組成物を均一にするためには、組成物を乳化する必要があることがわかった。しかしながら、従来の乳化技術では、代替フロンと水とを乳化させることは困難であった。
【0014】
そのため、三相乳化技術によって代替フロンと水とを乳化することを試みたところ、代替フロンと水とを安定して乳化することができ、さらには得られた乳化組成物については、不燃性と優れた洗浄性を維持したまま、従来のような代替フロンを用いた洗浄剤組成物に比べて乾燥を遅く制御でき、その結果、乾燥性についても良好であることを見出した。本発明は、このような知見に基づいて、完成させるに至った。
【0015】
実施形態のエアゾール剤用乳化組成物は、代替フロンを含む油相(O)と、水相(W)と、自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体(以下、単に閉鎖小胞体ともいう)および水酸基を有する重縮合ポリマーの粒子(以下、単に重縮合ポリマーの粒子ともいう)の少なくとも一方とを含み、W/O型エマルションである。
【0016】
実施形態のエアゾール剤用乳化組成物は、閉鎖小胞体および重縮合ポリマーの粒子の少なくとも一方を用いた、いわゆる三相乳化法を適用した乳化組成物であり、油中水滴型(W/O型)エマルションである。
【0017】
エアゾール剤用乳化組成物では、内相である水相の周囲に、複数の閉鎖小胞体および複数の重縮合ポリマーの粒子の少なくとも一方が存在し、さらにその外側に、外相である代替フロンを含む油相が存在する。すなわち、閉鎖小胞体および重縮合ポリマーの粒子の少なくとも一方が油相と水相との界面に複数存在すると共に、油相が連続相である。このように、エアゾール剤用乳化組成物では、水相が代替フロンを含む油相中に分散している。
【0018】
エアゾール剤用乳化組成物は、閉鎖小胞体および重縮合ポリマーの粒子の少なくとも一方が粒子状の水相(滴状の水相)の周囲に多数存在する、乳化粒子(三相乳化粒子)を多数含有する。乳化粒子の周囲には、代替フロンを含む油相が存在し、多数の乳化粒子は油相中に分散される。
【0019】
自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体は、水性成分中で自発的に閉鎖小胞体を形成する性質を有する。また、閉鎖小胞体および重縮合ポリマーの粒子は、いわゆる三相乳化能を有する粒子として知られている。閉鎖小胞体および重縮合ポリマーの粒子の表面は親水性であるため、閉鎖小胞体や重縮合ポリマーの粒子は、互いに斥力が発生する。
【0020】
水相の表面に閉鎖小胞体や重縮合ポリマーの粒子が多数存在する、すなわち水相の表面が多数の閉鎖小胞体や重縮合ポリマーの粒子で覆われることで、水相同士には斥力が発生する。水相間に発生する斥力は、水相間に発生する引力よりも大きい。そのため、油相中での水相同士の凝集、すなわち乳化粒子同士の凝集が抑制され、水相の分散性が維持および向上する。
【0021】
このような三相乳化法は、閉鎖小胞体や重縮合ポリマーの粒子が、ファンデルワールス力により内相である水相に付着することで、水相(内相)と油相(外相)との界面に介在し、代替フロンを含む油相と水相の乳化を可能とするものである。三相乳化機構は、親水性部分および疎水性部分をそれぞれ水相および油相に向け、油水界面張力を下げることで乳化状態を維持する、界面活性剤による乳化機構とは全く異なる(例えば特許3855203号公報参照)。
【0022】
エアゾール剤用乳化組成物では、油相と水相との界面に、複数の閉鎖小胞体のみが存在してもよいし、複数の重縮合ポリマーの粒子のみが存在してもよいし、複数の閉鎖小胞体および複数の重縮合ポリマーの粒子が混在してもよい。
【0023】
エアゾール剤用乳化組成物は、上記のように、界面活性剤による乳化機構と全く異なる三相乳化技術を適用している。そのため、エアゾール剤用乳化組成物は、界面活性剤を含まなくても、安定した乳化状態を維持できる。このように、エアゾール剤用乳化組成物では、従来の界面活性剤を用いた乳化組成物に比べて、界面活性剤の量を大幅に減少でき、場合によっては界面活性剤を含まない。
【0024】
エアゾール剤用乳化組成物を構成する水相は、水性成分であり、油相とは混ざり合わない。水相は、例えば水である。
【0025】
エアゾール剤用乳化組成物における水相の平均粒径は、エアゾール剤用乳化組成物の用途などに応じて適宜選択される。エアゾール剤用乳化組成物は、三相乳化によるものであるため、界面活性剤を利用した従来の乳化組成物と比較して、水相の平均粒径を広い範囲内で制御することができる。例えば、水相の平均粒径は、0.1μm以上である。また、水相の平均粒径は、好ましくは50.0μm以下、より好ましくは25.0μm以下、さらに好ましくは10.0μm以下である。水相の平均粒径が上記範囲内であると、水相の分散性が良好である。水相の平均粒径は、粒度分布測定装置FPAR(大塚電子(株)社製)を用いて動的光散乱法により測定し、Contin解析により得られることができる。
【0026】
エアゾール剤用乳化組成物に含まれる水相の含有割合は、3.0質量%以上であることが好ましく、5.0質量%以上であることがより好ましい。上記水相の含有割合が3.0質量%以上であると、エアゾール剤用乳化組成物の乾燥を遅く制御できるため、エアゾール剤用乳化組成物の乾燥性を向上できる。また、エアゾール剤用乳化組成物に含まれる水相の含有割合は、20.0質量%以下であることが好ましく、10.0質量%以下であることがより好ましい。上記水相の含有割合が20.0質量%以下であると、エアゾール剤用乳化組成物の良好な洗浄性を維持しながら、エアゾール剤用乳化組成物の過剰な遅乾を抑制できる。
【0027】
エアゾール剤用乳化組成物を構成する油相は、代替フロンを含む。油相は、油性成分であり、水相とは混ざり合わず、連続相であり、複数の乳化粒子を分散させる。油相は、代替フロンのみからなってもよいし、代替フロンに加えて他の油性成分を含んでもよい。
【0028】
代替フロンとしては、シス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、(E)-1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン、(Z)-1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン、(Z)-1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、3,3-ジクロロ-1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン、1,3-ジクロロ-1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロパンであることが好ましい。代替フロンは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0029】
エアゾール剤用乳化組成物に含まれる代替フロンの含有割合は、60.0質量%以上であることが好ましく、75.0質量%以上であることがより好ましい。上記代替フロンの含有割合が60.0質量%以上であると、エアゾール剤用乳化組成物の洗浄性が良好である。また、エアゾール剤用乳化組成物に含まれる代替フロンの含有割合は、95.0質量%以下であることが好ましく、90.0質量%以下であることがより好ましい。上記代替フロンの含有割合が95.0質量%以下であると、エアゾール剤用乳化組成物の乾燥を遅く制御できるため、エアゾール剤用乳化組成物の乾燥性を向上できる。
【0030】
油相が代替フロンに加えて他の油性成分を含む場合、他の油性成分は、代替フロンと溶解することができれば、特に限定されるものではなく、固形油、液状油のいずれも好適である。固形油は常温(25℃)で固体状の油、液状油は常温で液体状の油である。
【0031】
他の油性成分は、固形油のみでもよいし、液状油のみでもよいし、固形油および液状油の混合油でもよい。固形油が多くなると、エアゾール剤用乳化組成物の流動性が低くなり、液状油が多くなると、エアゾール剤用乳化組成物の流動性が高くなる。エアゾール剤用乳化組成物の用途などに応じて、固形油および液状油の含有割合は適宜選択される。
【0032】
固形油としては、常温で固体状の油であれば特に限定されないが、例えば、固形油脂(水添パーム油、パーム油、硬化ヤシ油、カカオバター、ピーナッツバター、ラード、乳脂等)、固形パラフィン、ワックス、高級アルコール(ベヘニルアルコール、ステアリルアルコール、セチルアルコール、バチルアルコール、オクチルドデカノール、オレイルアルコール等)、ロウ(カルナウバロウ、ミツロウ等)等が挙げられる。
【0033】
液状油としては、常温で液体状の油であれば特に限定されないが、例えば、植物油(オリーブ油、アボガド油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、月見草油、ホホバ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、大豆油、茶実油、コメヌカ油、小麦胚芽油、胚芽油、落花生油、ヒマワリ油、アーモンド油、タートル油、トウモロコシ油、ミンク油、パーシック油、サザンカ油、アマニ油、エノ油、カヤ油等)、動物油(牛脂、豚脂、乳脂等)、中鎖脂肪酸トリグリセリド、炭化水素油(スクワレン、スクワラン、流動パラフィン等)、エステル油(メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、エチルヘキサン酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸エチルヘキシル、パルミチン酸オクチル、イソパルミチン酸オクチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、ラウリル酸メチルヘプチル、ラウリン酸ヘキシル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、トリエチルヘキサノイン、ジカプリン酸ネオペンチルリコール、オクタン酸セチル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソプロピル、オレイン酸イソデシル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリット、コハク酸2-エチルヘキシル、セバシン酸ジエチル等)、シリコーン油(シクロペンタシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、メチルポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等)、フッ素油、鉱物油、塩素系溶剤(テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン 等)、芳香族系溶剤(トルエン、キシレン等)等が挙げられる。
【0034】
エアゾール剤用乳化組成物に含まれる油相の含有割合は、エアゾール剤用乳化組成物の用途や上記代替フロンの含有割合などに応じて適宜選択される。油相の含有割合は、例えば、60.0質量%以上、75.0質量%以上であってもよく、また、95.0質量%以下、90.0質量%以下であってもよい。
【0035】
エアゾール剤用乳化組成物における両親媒性物質は、水中において自発的に閉鎖小胞体の形成能を有する両親媒性物質であり、例えば、水中で二分子膜を形成可能な(つまり、水中でベシクルを形成可能な)ものである。自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質(以下、単に両親媒性物質ともいう)としては、下記式(1)で表されるジアルキルアンモニウム誘導体、トリアルキルアンモニウム誘導体、テトラアルキルアンモニウム誘導体、ジアルケニルアンモニウム誘導体、トリアルケニルアンモニウム誘導体、もしくはテトラアルケニルアンモニウム誘導体のハロゲン塩の誘導体が好適である。
【0036】
【0037】
式(1)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、炭素数8以上22以下のアルキル基またはアルケニル基であり、R3およびR4は、それぞれ独立に、水素または炭素数1以上4以下のアルキル基であり、Xは、F、Cl、BrまたはIであることが好ましい。
【0038】
両親媒性物質の好適例としては、上記の他に、リン脂質やリン脂質誘導体など、特に疎水基と親水基とがエステル結合したものが挙げられる。
【0039】
リン脂質としては、下記式(2)で表される構成のうち、炭素鎖長12のDLPC(1,2-Dilauroyl-sn-glycero-3-phospho-rac-1-choline)、炭素鎖長14のDMPC(1,2-Dimyristoyl-sn-glycero-3-phospho-rac-1-choline)、炭素鎖長16のDPPC(1,2-Dipalmitoyl-sn-glycero-3-phospho-rac-1-choline)が好適である。また、グリセリンやスフィンゴシンを中心骨格として脂肪酸が結合し、構造中にリン酸部位とコリン部位を持つ脂質が好適である。
【0040】
【0041】
また、下記式(3)で表される構成のうち、炭素鎖長12のDLPG(1,2-Dilauroyl-sn-glycero-3-phospho-rac-1-glycerol)のNa塩またはNH4塩、炭素鎖長14のDMPG(1,2-Dimyristoyl-sn-glycero-3-phospho-rac-1-glycerol)のNa塩またはNH4塩、炭素鎖長16のDPPG(1,2-Dipalmitoyl-sn-glycero-3-phospho-rac-1-glycerol)のNa塩またはNH4塩が好適である。
【0042】
【0043】
さらに、リン脂質の好適例としては、卵黄レシチンまたは大豆レシチンなどのレシチンが挙げられる。
【0044】
また、両親媒性物質の好適例としては、脂肪酸エステルが挙げられる。脂肪酸エステルとしては、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルが好適である。
【0045】
ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、脂肪酸が飽和不飽和を問わず、直鎖脂肪酸または分岐脂肪酸であり、その脂肪酸とポリグリセリンとのエステルであることが好ましく、その中でも、モノミリスチン酸ポリグリセリル、ジミリスチン酸ポリグリセリル、トリミリスチン酸ポリグリセリル、モノパルミチン酸ポリグリセリル、ジパルミチン酸ポリグリセリル、トリパルミチン酸ポリグリセリル、モノステアリン酸ポリグリセリル、ジステアリン酸ポリグリセリル、トリステアリン酸ポリグリセリル、モノイソステアリン酸ポリグリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸ポリグリセリル、ペンタイソステアリン酸ポリグリセリル、モノオレイン酸ポリグリセリル、ジオレイン酸ポリグリセリル、トリオレイン酸ポリグリセリル、ペンタオレイン酸ポリグリセリル、ポリリシノレン酸ポリグリセリルがより好ましい。その中でも、水中で安定なナノ粒子である閉鎖小胞体が代替フロンとの親和性を持つこと、および閉鎖小胞体が代替フロンの内部に埋没しないで油相と水相との界面に安定に付着固定するために、親水部位としてのグリセリル基を一定程度有することの観点から、アルキル鎖が3本以上、グリセリンが6個以上付加されているポリグリセリン脂肪酸エステルがさらに好ましい。
【0046】
ショ糖脂肪酸エステルとしては、ショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステルが好ましい。
【0047】
エアゾール剤用乳化組成物における重縮合ポリマーの粒子について、水酸基を有する重縮合ポリマー(以下、単に重縮合ポリマーともいう)は、天然高分子、合成高分子、または半合成高分子のいずれでもよく、エアゾール剤用乳化組成物の用途に応じて適宜選択される。その中でも、重縮合ポリマーは、安全性に優れ、一般的に安価である点で、天然高分子であることが好ましく、乳化機能に優れる点で、糖ポリマーであることがより好ましい。
【0048】
重縮合ポリマーの粒子とは、重縮合ポリマーの単粒子、および重縮合ポリマーの単粒子同士が連なったものを包含する一方で、単粒子化される前の重縮合ポリマーの凝集体(網目構造を有する)は包含しない。
【0049】
糖ポリマーは、セルロース、デンプンなどのグルコシド構造を有するポリマーである。例えば、リボース、キシロース、ラムノース、フコース、グルコース、マンノース、グルクロン酸、グルコン酸などの単糖類の中からいくつかの糖を構成要素として微生物が産生するもの、キサンタンガム、アラビアゴム、グアーガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、フコイダン、クインシードガム、トラントガム、ローカストビーンガム、ガラクトマンナン、カードラン、ジェランガム、フコゲル、カゼイン、ゼラチン、デンプン、コラーゲン、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体、シロキクラゲ多糖体などの天然高分子、メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、セルロース結晶体、デンプン・アクリル酸ナトリウムグラフト重合体、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの半合成高分子、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸塩、ポリエチレンオキシドなどの合成高分子が好ましい。
【0050】
エアゾール剤用乳化組成物に含まれる閉鎖小胞体および重縮合ポリマーの粒子の全量は、エアゾール剤用乳化組成物の用途などに応じて適宜選択され、例えば、0.10質量%以上、0.30質量%以上、0.50質量%以上、1.00質量%以上、2.00質量%以上であってもよい。また、上記閉鎖小胞体および重縮合ポリマーの粒子の全量は、例えば、5.00質量%以下、4.00質量%以下、3.00質量%以下、2.00質量%以下、1.00質量%以下、0.75質量%以下であってもよい。閉鎖小胞体および重縮合ポリマーの粒子の全量が上記範囲内であると、エアゾール剤用乳化組成物の乳化安定性が優れている。上記の量は、固形分含量である。
【0051】
閉鎖小胞体および重縮合ポリマーの粒子の平均粒子径は、例えば、8nm以上2000nm以下程度であってもよいが、粒径が小さいほうが、乳化性は向上する。このことから、閉鎖小胞体や重縮合ポリマーの粒子の平均粒子径は、好ましくは8nm以上800nm以下、より好ましくは8nm以上500nm以下である。エアゾール剤用乳化組成物は、閉鎖小胞体のみを含んでもよいし、重縮合ポリマーの粒子のみを含んでもよいし、閉鎖小胞体および重縮合ポリマーの粒子を含んでもよい。エアゾール剤用乳化組成物が閉鎖小胞体および重縮合ポリマーの粒子を含む場合、例えば、別々に乳化したエマルションを混合してエアゾール剤用乳化組成物を製造してもよい。閉鎖小胞体および重縮合ポリマーの粒子の平均粒子径は、粒度分布測定装置FPAR(大塚電子(株)社製)を用いて動的光散乱法により測定し、Contin解析により求められる値である。上記範囲内の平均粒子径を有する閉鎖小胞体および重縮合ポリマーの粒子の調製方法は、特許第3855203号などに開示されている通り、三相乳化能を有する粒子の調製方法として従来公知であるため、ここでは便宜上省略する。
【0052】
なお、後述の混合溶液に対して光散乱測定を行い、混合溶液中に存在する閉鎖小胞体や重縮合ポリマーの粒子の平均粒子径が、例えば、8nm以上400nm以下であると、閉鎖小胞体および重縮合ポリマーの粒子は三相乳化可能であると判断できる。さらに、原子間力顕微鏡(AFM)観察を行い、閉鎖小胞体および重縮合ポリマーの粒子の少なくとも一方が内相である水相の表面に付着していることを確認することで、エアゾール剤用乳化組成物に含まれる乳化粒子を確認することができる。
【0053】
また、エアゾール剤用乳化組成物は、乳化性、不燃性、洗浄性および乾燥性を阻害しない限りにおいて、上記成分に加えて、各種成分をさらに含んでもよい。
【0054】
各種成分としては、変性アルコールが好ましい。変性アルコールは、油相に含まれ、水性成分に比べて、エアゾール剤用乳化組成物の乾燥を緩やかに遅くできるため、エアゾール剤用乳化組成物の乾燥性(遅乾)を所定値に制御することがさらに容易になる。エアゾール剤用乳化組成物の乾燥性を容易に制御する観点から、エアゾール剤用乳化組成物に含まれる変性アルコールの含有割合は、2.5質量%以上であることが好ましく、5.0質量%以上であることがより好ましい。また、エアゾール剤用乳化組成物の良好な洗浄性と不燃性を維持する観点から、エアゾール剤用乳化組成物に含まれる変性アルコールの含有量は、15.0質量%以下であることが好ましく、10.0質量%以下であることがより好ましい。
【0055】
また、各種成分としては、重曹などが挙げられる。油汚れは酸性であり、重曹は水相に含まれて、水相がアルカリ性になることから、エアゾール剤用乳化組成物の油汚れに対する洗浄性を向上できる。
【0056】
このようなエアゾール剤用乳化組成物は、不燃性であり、優れた洗浄性および乾燥性が求められているクリーナーに好適であり、なかでもブレーキクリーナーやパーツクリーナーに好適である。このようなクリーナーは、不燃性であり、さらには従来の代替フロンのクリーナーに比べて乾燥が遅いため、何度も噴射しなくても洗浄対象物を洗浄でき、使用性に優れている。
【0057】
次に、上記のエアゾール剤用乳化組成物の製造方法について説明する。
【0058】
エアゾール剤用乳化組成物の製造方法は、混合工程と乳化工程とを有する。
【0059】
混合工程では、自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体および水酸基を有する重縮合ポリマーの粒子の少なくとも一方と水性成分とを混合して、混合溶液を得る。混合溶液では、複数の閉鎖小胞体および複数の重縮合ポリマーの粒子の少なくとも一方が水性成分中に分散している。
【0060】
例えば、自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体を用いる場合、混合工程において、水などの水性成分を撹拌機などで撹拌しながら、所定量の両親媒性物質を水性成分に添加することによって、複数の閉鎖小胞体が形成され、複数の閉鎖小胞体と水性成分とが混合される。また、水酸基を有する重縮合ポリマーの粒子を用いる場合、混合工程において、水性成分を撹拌機などで撹拌しながら、複数の重縮合ポリマーの粒子を水性成分に添加することによって、複数の重縮合ポリマーと水性成分とが混合される。
【0061】
閉鎖小胞体および重縮合ポリマーの粒子を用いる場合、閉鎖小胞体が分散している溶液と重縮合ポリマーの粒子が分散している溶液とを混合して混合溶液を製造してもよいし、両親媒性物質および重縮合ポリマーの粒子を水性成分に添加して混合溶液を製造してもよい。
【0062】
また、混合溶液中の閉鎖小胞体や重縮合ポリマーの粒子の分散性を維持するために、乳化工程を実施するまで、混合溶液を混合工程の撹拌速度よりも低速で撹拌し続けてもよい。
【0063】
混合工程の後に行われる乳化工程では、油性成分を撹拌機などで撹拌しながら、混合工程で得られた混合溶液を油性成分に添加することによって、乳化粒子が形成され、油相中に分散している複数の乳化粒子を含有するエアゾール剤用乳化組成物が得られる。乳化粒子について、滴状の水相の表面が複数の閉鎖小胞体および複数の重縮合ポリマーの粒子の少なくとも一方で覆われている。
【0064】
次に、実施形態のエアゾール剤について説明する。
【0065】
実施形態のエアゾール剤は、上記実施形態のエアゾール剤用乳化組成物と噴射剤とを含む。上記で説明したように、上記エアゾール剤用乳化組成物は、不燃性で乳化安定性が良好であり、さらには優れた洗浄性および乾燥性を有するので、エアゾール剤についても、エアゾール剤用乳化組成物と同様の特性を有する。
【0066】
噴射剤は、炭酸ガスおよび窒素ガスの少なくとも一方であることが好ましい。すなわち、噴射剤は、炭酸ガスのみからなる、窒素ガスのみからなる、または炭酸ガスおよび窒素ガスのみからなることが好ましい。噴射剤が炭酸ガスおよび窒素ガスの少なくとも一方であると、実施形態のエアゾール剤用乳化組成物と同様に、エアゾール剤は不燃性を維持できる。このような観点から、噴射剤は、炭化水素系のガスを含まないことが好ましい。
【0067】
以上説明した実施形態によれば、三相乳化技術によって代替フロンを含む油相と水相とを安定して乳化することで、得られたエアゾール剤用乳化組成物は、不燃性であり、優れた洗浄性および乾燥性を有することができる。
【実施例0068】
次に、実施例および比較例について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0069】
(実施例1-1)
まず、自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質(ペンタイソステアリン酸デカグリセリル(DECAGLYN 5-ISV、NIKKOL社製))により形成された閉鎖小胞体と水とを混合して混合溶液を調製し、続いて油性成分(シス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(CELEFIN(登録商標) 1233Z、沸点39℃、セントラル硝子株式会社製))をホモミキサーで撹拌しながら混合溶液を油性成分に添加して、表1に示す組成のエアゾール剤用乳化組成物を製造した。
【0070】
(実施例1-2)
1233Zおよび変性アルコール(イソプロパノールとエタノールとn-プロパノールの混合溶剤)からなる油性成分を用い、表1に示す組成にしたこと以外は実施例1-1と同様にして、エアゾール剤用乳化組成物を製造した。
【0071】
(実施例1-3)
まず、自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質(ペンタイソステアリン酸デカグリセリル(DECAGLYN 5-ISV、NIKKOL社製))により形成された閉鎖小胞体と水とを混合して混合溶液を調製し、続いて油性成分((E)-1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペンおよび(Z)-1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(AMOLEA(登録商標) AS-300、沸点54℃、AGC株式会社製))をホモミキサーで撹拌しながら混合溶液を油性成分に添加して、表1に示す組成のエアゾール剤用乳化組成物を製造した。
【0072】
(実施例1-4)
AS-300および変性アルコール(イソプロパノールとエタノールとn-プロパノールの混合溶剤)からなる油性成分を用い、表1に示す組成にしたこと以外は実施例1-3と同様にして、エアゾール剤用乳化組成物を製造した。
【0073】
(実施例1-5)
まず、自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質(ペンタイソステアリン酸デカグリセリル(DECAGLYN 5-ISV、NIKKOL社製))により形成された閉鎖小胞体と水とを混合して混合溶液を調製し、続いて油性成分(シス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(CELEFIN(登録商標) 1233Z、沸点39℃、セントラル硝子株式会社製)と、(E)-1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペンおよび(Z)-1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(AMOLEA(登録商標) AS-300、沸点54℃、AGC株式会社製)と、変性アルコール(イソプロパノールとエタノールとn-プロパノールの混合溶剤))をホモミキサーで撹拌しながら混合溶液を油性成分に添加して、表1に示す組成のエアゾール剤用乳化組成物を製造した。
【0074】
(実施例1-6~1-7)
表1に示す組成にしたこと以外は実施例1-5と同様にして、エアゾール剤用乳化組成物を製造した。
【0075】
(比較例1-1)
代替フロン(シス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(CELEFIN(登録商標) 1233Z、沸点39℃、セントラル硝子株式会社製))を用いた。
【0076】
(比較例1-2)
代替フロン((E)-1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペンおよび(Z)-1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(AMOLEA(登録商標) AS-300、沸点54℃、AGC株式会社製))を用いた。
【0077】
【0078】
上記実施例で得られたエアゾール剤用乳化組成物、および上記実施例で得られたエアゾール剤用乳化組成物もしくは上記比較例の代替フロンと噴射剤(炭酸ガスおよび窒素ガス)とを含むエアゾール剤について、下記の測定および評価を行った。その結果を表2に示す。
【0079】
[1] 乳化安定性
製造してから室温で1日間静置した後のエアゾール剤用乳化組成物の乳化状態を目視で観察した。そして、以下のランク付けを行った。○および△が合格であり、×が不合格である。
【0080】
○:油相と水相の分離がみられなかった。
△:一部で油相と水相の分離がみられた。
×:油相と水相が2相に完全に分離した。
【0081】
[2] 洗浄性
エンジンオイル(TOYOTA キャッスル5W30SN/CF)と木炭とを混合した試料をステンレス鋼製の板上に0.2g/50mm
2塗布した後、板をオーブンで150℃、30分加熱して、板上にモデル汚れを付着させた汚れ試験体を作製した。続いて、汚れ試験体を垂直に設置し、汚れ試験体とノズル先端の距離を15cmにして、モデル汚れ全体に対してエアゾール剤を3秒間噴射して、汚れ試験体の洗浄を行った。汚れ試験体からエアゾール剤が完全に乾燥した後、下記式を基に洗浄性を算出した。このような汚れ試験体の洗浄を2回(N=2)行い、平均値を洗浄性(%)とした。また、得られた洗浄性(%)を基に、以下のランク付けを行った。◎、○および△が合格であり、×が不合格である。また、実施例1-1~1-5および比較例1-1~1-2のエアゾール剤で汚れ試験体を洗浄した後の汚れ試験体の外観写真を
図1~7に示す。
【0082】
洗浄性(%)=洗浄後の汚れ試験体の重量(g)×100/洗浄前の汚れ試験体の重量(g)
【0083】
◎:洗浄性が70.0%以上であった。
○:洗浄性が60.0%以上70.0%未満であった。
△:洗浄性が50.0%以上60.0%未満であった。
×:洗浄性が50.0%未満であった。
【0084】
[3] 乾燥性
エアゾール剤を容器に噴射し、噴射直後の容器の重量を測定した。続いて、室温で300秒静置した後の容器の重量を測定した。そして、下記式を基に乾燥性を算出した。また、得られた乾燥性(%)を基に、以下のランク付けを行った。○が合格であり、×が不合格である。
【0085】
乾燥性(残量)(%)=300秒静置した後の容器の重量(g)×100/噴射直後の容器の重量(g)
【0086】
○:乾燥性が2.00%以上であった。
×:乾燥性が2.00%未満であった。
【0087】
[4] 総合評価
洗浄性が合格であり、かつ乾燥性が合格である場合、総合評価は○、すなわち合格とした。洗浄性および乾燥性の少なくとも一方が不合格である場合、総合評価は×、すなわち不合格とした。
【0088】
【0089】
表1~2および
図1~7に示すように、実施例1-1~1-7のエアゾール剤用乳化組成物は、代替フロンを含む油相と、水相と、閉鎖小胞体および重縮合ポリマーの粒子の少なくとも一方とを含み、W/O型エマルションであるため、不燃性であり、優れた洗浄性および乾燥性を有することができた。特に、代替フロンである比較例1-1~1-2に比べて、代替フロンに水性成分を添加してエマルションにした実施例1-1~1-7では、乾燥を遅く制御することができた。また、実施例1-1~1-7では、代替フロンの種類に関わらず、乾燥を遅く制御することができた。また、実施例1-1~1-7のエアゾール剤用乳化組成物の洗浄性は、比較例1-1~1-2の代替フロンと同程度であった。
【0090】
(実施例2-1)
まず、自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質(モノオレイン酸デカグリセリル)により形成された閉鎖小胞体と水とを混合して混合溶液を調製し、続いて油性成分(シス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(CELEFIN(登録商標) 1233Z、沸点39℃、セントラル硝子株式会社製))をホモミキサーで撹拌しながら混合溶液を油性成分に添加して、表3に示す組成のエアゾール剤用乳化組成物を製造した。
【0091】
(実施例2-2)
両親媒性物質をモノステアリン酸ペンタグリセリルに代えたこと以外は実施例2-1と同様にして、エアゾール剤用乳化組成物を製造した。
【0092】
(実施例2-3)
両親媒性物質をジステアリン酸デカグリセリルに代えたこと以外は実施例2-1と同様にして、エアゾール剤用乳化組成物を製造した。
【0093】
(実施例2-4)
両親媒性物質をトリオレイン酸デカグリセリルに代えたこと以外は実施例2-1と同様にして、エアゾール剤用乳化組成物を製造した。
【0094】
(実施例2-5)
両親媒性物質をペンタオレイン酸デカグリセリルに代えたこと以外は実施例2-1と同様にして、エアゾール剤用乳化組成物を製造した。
【0095】
(実施例2-6)
両親媒性物質をペンタオレイン酸テトラグリセリルに代えたこと以外は実施例2-1と同様にして、エアゾール剤用乳化組成物を製造した。
【0096】
(実施例2-7)
両親媒性物質をポリリシノレン酸ヘキサグリセリルに代えたこと以外は実施例2-1と同様にして、エアゾール剤用乳化組成物を製造した。
【0097】
実施例2-1~2-7で得られたエアゾール剤用乳化組成物について、上記と同様にして乳化安定性の評価を行った。そして、実施例2-1の乳化状態を基準にして、各実施例の乳化状態を観察した。その結果を表3に示す。なお、参考として、表3には、実施例1-1で得られたエアゾール剤用乳化組成物の評価結果も示す。
【0098】
【0099】
表3に示すように、両親媒性物質として、アルキル鎖が3本以上、グリセリンが6個以上付加されているポリグリセリン脂肪酸エステルを用いると、エアゾール剤用乳化組成物の乳化安定性が特に向上した。また、このようなエアゾール剤用乳化組成物は、上記実施例1-1~1-7と同様に乳化安定性が良好であることから、優れた洗浄性および乾燥性を有することがわかる。