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特開2024-136135フィラー含有フィルム、接合体及びその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136135
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】フィラー含有フィルム、接合体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/26 20180101AFI20240927BHJP
   H01R 11/01 20060101ALI20240927BHJP
   H01R 43/00 20060101ALI20240927BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240927BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20240927BHJP
   C09J 9/02 20060101ALI20240927BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C09J7/26
H01R11/01 501C
H01R43/00 H
C09J7/38
C09J201/00
C09J9/02
B32B27/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047124
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000224
【氏名又は名称】弁理士法人田治米国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柄木田 充宏
(72)【発明者】
【氏名】工藤 克哉
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J040
5E051
【Fターム(参考)】
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AR00A
4F100AR00B
4F100AR00C
4F100AT00
4F100BA03
4F100CA21B
4F100CA21H
4F100CB03A
4F100CB05A
4F100DC13B
4F100DD20B
4F100DD25B
4F100DE01B
4F100DE01H
4F100DE04B
4F100DE04H
4F100EH23
4F100EH46
4F100GB41
4F100JG01B
4J004AB01
4J004CA01
4J004CB03
4J004CC07
4J004CE01
4J004FA05
4J004FA08
4J040JA09
4J040JB09
4J040JB10
4J040NA20
5E051CA03
(57)【要約】
【課題】絶縁ベース層と粘着層との間に、貫通孔を有するコアフィルムが挟持され、貫通孔にフィラーが保持されているフィラー含有フィルムを介して二つの部材を圧着、例えば熱圧着等により接合する際に、コアフィルムの樹脂流動を抑制してフィラーの不要な移動を制限でき、また、圧着ムラの発生を抑制し、フィルムの圧着部位全面に亘って均一にフィラーを押し潰すことができるようにする。
【解決手段】絶縁ベース層と粘着層との間に、貫通孔を有するコアフィルムが挟持され、該貫通孔にはフィラーが保持されているフィラー含有フィルムは、式(1)C≦0.8P、式(2)1.2P≦O、式(3)E<Eを満足する。これらの式中、Cはコアフィルムの層厚であり、Pはフィラーの平均粒子径であり、Oはコアフィルムの貫通孔の開口径であり、Eはコアフィルムの圧縮弾性率であり、Epはフィラーの30%圧縮弾性率である。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁ベース層と粘着層との間に、貫通孔を有するコアフィルムが挟持され、該貫通孔にはフィラーが保持されているフィラー含有フィルムであって、
以下の式(1)~(3):
【数1】
(式中、Cはコアフィルムの層厚であり、Pはフィラーの平均粒子径であり、Oはコアフィルムの貫通孔の開口径であり、Eはコアフィルムの圧縮弾性率であり、Epはフィラーの30%圧縮弾性率である。)
を満足するフィラー含有フィルム。
【請求項2】
以下式(1′)~(3′)
【数2】
を満足する請求項1記載のフィラー含有フィルム。
【請求項3】
粘着層の最低溶融粘度を示す温度T[℃]±10℃の範囲で式(3)を満足する請求項1記載のフィラー含有フィルム。
【請求項4】
粘着層の最低溶融粘度を示す温度T[℃]±10℃の範囲で式(3′)を満足する請求項2記載のフィラー含有フィルム。
【請求項5】
粘着層の最低溶融粘度が、絶縁ベース層の最低溶融粘度より低い請求項1又は2記載のフィラー含有フィルム。
【請求項6】
貫通孔が規則配列されている請求項1記載のフィラー含有フィルム。
【請求項7】
フィラーが導電粒子であり、導電フィルムもしくは異方性導電フィルムとして使用される請求項1記載のフィラー含有フィルム。
【請求項8】
第1部材と第2部材とが、請求項1記載のフィラー含有フィルムを介して接合されている接合体。
【請求項9】
導電フィルムもしくは異方性導電フィルムとして使用される請求項7記載のフィラー含有フィルムで第1部材を第2部材に導電接続もしくは異方性導電接続されてなる接合体。
【請求項10】
第1部材と第2部材とを、その間に請求項1記載のフィラー含有フィルムを配置した後に接合する、接合体の製造方法。
【請求項11】
導電フィルムもしくは異方性導電フィルムとして使用される請求項7記載のフィラー含有フィルムで第1部材を第2部材に導電接続もしくは異方性導電接続する、接続構造体の製造方法。
【請求項12】
第1部材の端子と第2部材の端子とを、導電粒子で電気的に接続する、請求項11記載の接合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィラー含有フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
フィラーが樹脂層に分散しているフィラー含有フィルムは、艶消しフィルム、コンデンサー用フィルム、光学フィルム、ラベル用フィルム、帯電防止用フィルム、導電フィルム、異方性導電フィルムなど多種多様の用途で使用されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4)。フィラー含有フィルムを物品に熱圧着して用いる場合、フィラー含有フィルムを形成している樹脂が熱圧着時に不要に流動することを抑制し、フィラーの偏在を抑制することが、光学的特性、機械的特性、又は電気的特性の点から望ましい。特に、フィラーとして導電粒子を含有させ、フィラー含有フィルムを電子部品の実装に供する導電フィルムや異方性導電フィルムとして使用する場合に、電子部品の高密度実装に対応できるように、絶縁性樹脂層に導電粒子を高密度に分散させると、電子部品の実装時の過度の樹脂流動により導電粒子が不要に移動して端子間に偏在し、ショートの発生要因となるので、このような過度の樹脂流動を抑制することが要請されている。
【0003】
このような要請に対し、接着剤層に貫通孔が設けられた絶縁性フィルムを積層し、貫通孔に導電粒子を充填した後、別の接着剤層を積層して得られる異方性導電フィルムが提案されている(特許文献5)。この異方性導電フィルムでは、異方性導電接続時の絶縁性フィルムの過度の樹脂流動を抑制するために、絶縁性フィルム厚を導電粒子径の0.4倍以上1.0倍以下とし、更に、絶縁性フィルムの1mmあたりの導電粒子の数を貫通孔の数の0.9倍以上1.0倍以下に設定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-15680号公報
【特許文献2】特開2015-138904号公報
【特許文献3】特開2013-103368号公報
【特許文献4】特開2014-183266号公報
【特許文献5】特開2018-174069号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献5の異方性導電フィルムでは、絶縁性フィルムの過度の樹脂流動を抑制するためのファクタとして、「絶縁性フィルム厚と導電粒子径との間の関係」及び「導電粒子密度と貫通孔密度との間の関係」以外の要素には十分な注意を向けておらず、そのため、異方性導電接続時に、絶縁性フィルムの過度の樹脂流動を十分に抑制することができず、導電粒子の不要な移動を招き、また、平坦な圧着面を有する圧着(好ましくは熱圧着)ツールで平坦な被接続面を圧着する際に“片当たり”(圧着ツールの圧着面が被接続面に対して傾斜して圧着してしまうこと)して圧着ムラが発生することが懸念されている。このような圧着ムラが生ずると、導電粒子をフィルム圧着部位の全面にわたって均一に押しつぶすことが難しくなり、導通信頼性の低下を招きかねない。同様な問題が、絶縁ベース層と粘着層との間に、貫通孔を有するコアフィルムが挟持され、貫通孔にフィラーが保持されているフィラー含有フィルムを介して二つの部材を圧着、例えば熱圧着等により接合する際にも生じることが懸念されている。
【0006】
本発明の目的は、以上の従来の技術の問題点を解決することであり、絶縁ベース層と粘着層との間に、貫通孔を有するコアフィルムが挟持され、貫通孔にフィラーが保持されているフィラー含有フィルムを介して二つの部材を圧着、例えば熱圧着等により接合する際に、コアフィルムの樹脂流動を抑制してフィラーの不要な移動を制限でき、また、圧着ムラの発生を抑制し、フィルムの圧着部位全面に亘って均一にフィラーを押し潰すことができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、“コアフィルム厚とフィラー径との関係”と、“フィラー径と貫通孔開口径との関係”と、“コアフィルムの圧縮弾性率とフィラーの圧縮弾性率との関係”とに着目し、これらをそれぞれ特定の関係に限定することにより、上述の目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明は、絶縁ベース層と粘着層との間に、貫通孔を有するコアフィルムが挟持され、該貫通孔にはフィラーが保持されているフィラー含有フィルムであって、以下の式(1)~(3)を満足するフィラー含有フィルムを提供する。
【0009】
【数1】
【0010】
上記式(1)~(3)中、Cはコアフィルムの層厚であり、Pはフィラーの平均粒子径であり、Oはコアフィルムの貫通孔の開口径であり、Eはコアフィルムの圧縮弾性率であり、Eはフィラーの30%圧縮弾性率である。フィラーとして導電粒子を使用した場合には、このフィラー含有フィルムは、導電フィルムもしくは異方性導電フィルムとして使用できる。
【0011】
また、本発明は、第1部材と第2部材とが、前述の本発明のフィラー含有フィルムを介して接合されている接合体、好ましくは導電フィルムもしくは異方性導電フィルムとして使用されるフィラー含有フィルムで第1部材を第2部材に導電接続もしくは異方性導電接続されてなる接合体を提供する。また、本発明は、第1部材と第2部材とを、その間に同じく前述のフィラー含有フィルムを配置した後に接合する、接合体の製造方法を、好ましくは、導電フィルムもしくは異方性導電フィルムとして使用されるこのフィラー含有フィルムで第1部材を第2部材に導電接続もしくは異方性導電接続する、接続構造体の製造方法を提供する。この製造方法においては、第1部材の端子と第2部材の端子とを、導電粒子で電気的に接続することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のフィラー含有フィルムは、“コアフィルム厚とフィラー径との関係”、“フィラー径と貫通孔開口径との関係”、及び“コアフィルムの圧縮弾性率とフィラーの圧縮弾性率との関係”を、それぞれ特定の関係に限定している。このため、フィラー含有フィルムを介して二つの部材を圧着、例えば熱圧着等により接合する際に、コアフィルムの樹脂流動を抑制し、フィラーの意図しない移動を制限でき、また、圧着ムラの発生を抑制し、フィルムの圧着部位全面に亘って均一にフィラーを押し潰すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A図1Aは、フィラー含有フィルムの断面図である。
図1B図1Bは、図1Aのフィラー含有フィルムの部分拡大断面図である。
図2A図2Aは、フィラー含有フィルムの製造方法の説明図である。
図2B図2Bは、フィラー含有フィルムの製造方法の説明図である。
図2C図2Cは、実施例のフィラー含有フィルムの製造方法の説明図である。
図2D図2Dは、実施例のフィラー含有フィルムの製造方法の説明図である。
図2E図2Eは、実施例のフィラー含有フィルムの製造方法の説明図である。
図2F図2Fは、実施例のフィラー含有フィルムの製造方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のフィラー含有フィルムの一例について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、各図中、同一符号は、同一又は同等の構成要素を表している。
【0015】
<フィラー含有フィルム1Aの全体構成>
図1Aは本発明のフィラー含有フィルム10の断面図である。このフィラー含有フィルム10は、絶縁ベース層1と粘着層2との間に、貫通孔thを有するコアフィルム3が挟持されており、貫通孔thにはフィラー4が保持されている構造を有し、以下の式(1)~(3)、好ましくは式(1′)~(3′)を満足することを特徴としている。
【0016】
【数2】
【0017】
【数3】
【0018】
これらの式中、本発明のフィラー含有フィルム10のフィラー4の周辺の部分拡大断面図である図1Bからわかるように、Cはコアフィルムの層厚[μm]であり、Pはフィラーの平均粒子径[μm]を表しており、Oはコアフィルムの貫通孔の開口径[μm]を表している。また、Eはコアフィルムの圧縮弾性率[MPa]であり、Eはフィラーの30%圧縮弾性率[MPa]を表している。ここで、コアフィルムの圧縮弾性率E並びにフィラーの30%圧縮弾性率Eは、公知の手法により測定することができ、コアフィルムについては、測定可能な大きさに公知の手法により個片化すれば、フィラーの測定手法に準じて測定することできる。従って、後述するように、室温(23℃±15℃)において、微小圧縮試験機(フィッシャー社製、フィッシャースコープH-100)を用いて測定することができる。具体的には、コアフィルムの個片を厚み方向に圧縮し、厚さが30%減少したときの硬さ(30%圧縮変形時の圧縮硬さ(K値[MPa]))で測定すればよい。得られるK値は、以下の数式より算出される数値であり、K値が小さいほど柔らかいフィルムであると評価できる。
【0019】
【数4】
【0020】
上記式中、「F」は、コアフィルムの30%圧縮変形時における加重[N]であり、「S」は30%圧縮変形時の変位[mm]であり、「R」は、コアフィルムの圧縮前の厚さ[mm]である。
【0021】
<絶縁ベース層>
本発明のフィラー含有フィルム10を構成する絶縁ベース層1は、フィラー含有フィルム10を製造する際に、その上にコアフィルムを形成するためのベースとなる層である。そのような絶縁ベース層1は、単一の絶縁性樹脂層から構成されていてもよく、複数の絶縁性樹脂層の積層体から構成されていてもよい。また、絶縁ベース層1は、粘着性を示すことが好ましい。
【0022】
(絶縁ベース層を構成する樹脂組成物)
絶縁ベース層1を構成する樹脂組成物は、フィラー含有フィルムの用途に応じて適宜選択され、例えば、熱可塑性樹脂組成物、高粘度粘着性樹脂組成物、あるいは硬化性樹脂組成物を挙げることができる。例えば、フィラー含有フィルムを導電フィルムや異方性導電フィルムとする場合、従来の導電フィルムや異方性導電フィルムの絶縁性樹脂層を形成する樹脂組成物と同様に、重合性化合物と重合開始剤から形成される硬化性樹脂組成物を使用することができる。この場合、重合開始剤としては熱重合開始剤を使用してもよく、光重合開始剤を使用してもよく、それらを併用してもよい。例えば、熱重合開始剤としてカチオン系重合開始剤、熱重合性化合物としてエポキシ樹脂を使用し、光重合開始剤として光ラジカル重合開始剤、光重合性化合物としてアクリレート化合物を使用する。熱重合開始剤として、熱アニオン重合開始剤を使用してもよい。熱アニオン重合開始剤としては、イミダゾール変性体を核としその表面をポリウレタンで被覆してなるマイクロカプセル型潜在性硬化剤を用いることが好ましい。
【0023】
(絶縁ベース層1の最低溶融粘度)
絶縁ベース層1の最低溶融粘度は、フィラー含有フィルム10を物品に圧着、例えば熱圧着する際の樹脂流動によるフィラー4の不要な移動を抑制し、適度な樹脂流動を導くために、200Pa・s以上であってもよく、好ましくは1500Pa・s以上、より好ましくは2000Pa・s以上、さらに好ましくは3000Pa・s以上であり、好ましくは15000Pa・s以下、より好ましくは10000Pa・s以下、特に好ましくは8000Pa・s以下である。最低溶融粘度は、一例として回転式レオメータ(TA instruments社製)を用い、測定圧力5gで一定に保持し、直径8mmの測定プレートを使用して求めることができ、より具体的には、温度範囲30~200℃において、昇温速度10℃/分、測定周波数10Hz、前記測定プレートに対する荷重変動5gとすることにより求めることができる。なお、最低溶融粘度の調整は、溶融粘度調整剤として微小固形物の種類や配合量、樹脂組成物の調整条件の変更などにより行うことができる。
【0024】
(絶縁ベース層1の層厚)
絶縁ベース層1の層厚は、コアフィルム3とフィラー4とを安定的に保持する等のため、フィラー4の平均粒子径Pに対して、好ましくは0.6倍以上、より好ましくは1.2倍以上、特に好ましくは1.5倍以上である。また、絶縁ベース層1の層厚の上限については、樹脂流動によりフィラー4の不要な移動を招かないように、フィラー4の平均粒子径の好ましくは10倍以下、より好ましくは5倍以下である。層厚は、公知のシックネスゲージや膜厚測定器により測定することができる。
【0025】
(絶縁ベース層1の粘着力)
絶縁ベース層1は、フィラー含有フィルムを圧着、例えば熱圧着する物品に対して、圧着前の仮圧着を可能とする粘着力を有していることが好ましい。粘着力は、JIS Z 0237に準じて測定することができ、また、JIS Z 3284-3又はASTM D 2979―01に準じてプローブ法によりタック力として測定することもできる。フィラー含有フィルム10を構成する粘着層2のプローブ法によるタック力は、例えば、プローブの押し付け速度を30mm/min、加圧力を196.25gf、加圧時間を1.0sec、引き剥がし速度を120mm/min、測定温度23℃±5℃で計測したときに、好ましくは1.0kPa(0.1N/cm2)以上、より好ましくは1.5kPa(0.15N/cm2)以上、特に好ましくは3.0kPa(0.3N/cm2)以上である。
【0026】
また、フィラー含有フィルムの粘着力は、特開2017-48358号公報に記載の接着強度試験に準じて求めることもできる。この接着強度試験において、例えば、2枚のガラス板で異方性導電フィルム10を挟み、一方のガラス板を固定し、他方のガラス板を引き剥がし速度10mm/min、試験温度50℃で引き剥がしていく場合に、固定するガラス板とフィラー含有フィルムとの接着状態を強めておくことで、引き剥がしていくガラス板と、そのガラス板と貼り合わさっているフィラー含有フィルムの面との粘着力を測定することが可能となる。こうして測定される接着強度(粘着力)を、好ましくは1N/cm2(10kPa)以上、より好ましくは10N/cm(100kPa)以上とすることができる。これは、フィラー含有フィルム10の引き剥がされる方向に存在する面と、引き剥がす物品間の粘着力になる。
【0027】
この他、フィラー含有フィルムの粘着力は、試験片の一端を揃えて接着し(貼り合せ)、他端を引き上げることにより試験片を剥離させる試験により求めることもできる。この試験方法により計測される粘着力が、上記の接着強度試験と同等(1N/cm(10kPa)以上)の結果となってもよい。上述の接着強度試験による粘着力が十分に大きければ(例えば10N/cm2(100kPa)以上)、この試験方法での粘着力は上述の接着強度試験による粘着力の10%以上であればよい。
【0028】
このような粘着性は、絶縁ベース層を構成する樹脂組成物を適宜調整し、また、後述するフィラー含有フィルムの製造方法によって、フィラー含有フィルムの外表面をなす絶縁ベース層の平滑性を向上させることにより、調整することができる。
【0029】
<粘着層2>
本発明のフィラー含有フィルム10を構成する粘着層2は、フィラー含有フィルム10を用いて物品に仮圧着するための層である。そのような粘着層2は、単一の絶縁性樹脂層から構成されていてもよく、複数の絶縁性樹脂層の積層体から構成されていてもよい。
【0030】
(粘着層2を構成する樹脂組成物)
粘着層2を構成する樹脂組成物は、絶縁ベース層1と同様に、フィラー含有フィルムの用途に応じて適宜選択され、例えば、熱可塑性樹脂組成物、高粘度粘着性樹脂組成物、あるいは硬化性樹脂組成物を挙げることができる。例えば、フィラー含有フィルムを導電フィルムや異方性導電フィルムとする場合、従来の導電フィルムや異方性導電フィルムの粘着層を形成する樹脂組成物と同様に、重合性化合物と重合開始剤から形成される硬化性樹脂組成物を使用することができる。この場合、重合開始剤としては熱重合開始剤を使用してもよく、光重合開始剤を使用してもよく、それらを併用してもよい。例えば、熱重合開始剤としてカチオン系重合開始剤、熱重合性化合物としてエポキシ樹脂を使用し、光重合開始剤として光ラジカル重合開始剤、光重合性化合物としてアクリレート化合物を使用する。熱重合開始剤として、熱アニオン重合開始剤を使用してもよい。熱アニオン重合開始剤としては、イミダゾール変性体を核としその表面をポリウレタンで被覆してなるマイクロカプセル型潜在性硬化剤を用いることが好ましい。
【0031】
(粘着層2の最低溶融粘度)
粘着層2の最低溶融粘度は、上述の絶縁ベース層1と同じであってもよい。絶縁ベース層1よりも、意図的に低く設定することも、高く設定することもできる。絶縁ベース層1と粘着層2の最低溶融粘度(および厚み)を調整することで、フィラー含有フィルム10を物品に圧着、例えば熱圧着する際の樹脂流動の制御を精緻に行うことができ、種々の用途への応用が期待できる。導電接続、特に異方性導電接続に用いる場合には、粘着層の最低溶融粘度が、絶縁ベース層の最低溶融粘度より低いことが好ましい。フィラー(即ち、導電粒子)の不要な移動の抑制をより精緻に行うことができる。
【0032】
(粘着層2の層厚)
粘着層2の層厚は、上述の絶縁ベース層1と同じであってもよい。絶縁ベース層1よりも、意図的に低く設定することも、高く設定することもできる。具体的には、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上である。貼り付けに用いる場合には、薄くすることが好ましい。充填させるために、20μm以上としてもよい。厚すぎると巻装体とした場合に樹脂のはみ出しが懸念されることから、50μm以下であることが好ましい。このように、上限は、目的に合わせて適宜設定することができる。
【0033】
(粘着層2の粘着力)
粘着層2は、フィラー含有フィルムを圧着、例えば熱圧着する物品に対して、仮貼りを可能とする粘着力を有していることが好ましい(物品に貼着可能な粘着力があればよい)。このような粘着層2の粘着力は、絶縁ベース層1の粘着力と同じであってもよく、絶縁ベース層1の粘着力より強くてもよく、逆に弱くてもよい。物品に貼り付ける面が絶縁ベース層1であるか粘着層2であるか、また載置する物品に対して必要な粘着力はどの程度であるか、という観点等から、粘着層2の粘着力と絶縁ベース層1の粘着力とをそれぞれ最適化すればよい。
【0034】
このような粘着性は、粘着層2を構成する樹脂組成物を適宜調整し、また、後述するフィラー含有フィルムの製造方法によって、フィラー含有フィルムの外表面をなす粘着層2の平滑性を向上させることにより、調整することができる。
【0035】
<コアフィルム3>
本発明のフィラー含有フィルム10を構成するコアフィルム3は、フィラー4を充填するための貫通孔thを有し、絶縁ベース層1や粘着層2の樹脂流動によるフィラー4の意図しない移動を抑制するための層であり、スペーサーシートとしての機能を有する。このようなコアフィルム3は、単一の絶縁性樹脂層から構成されていてもよく、複数の絶縁性樹脂層の積層体から構成されていてもよい。
【0036】
(コアフィルム3を構成する樹脂組成物)
コアフィルム3を構成する樹脂組成物は、フィラー含有フィルム10の用途に応じて適宜選択され、例えば、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂などを含有する熱可塑性樹脂組成物や高粘度粘着性樹脂組成物、あるいはエポキシ樹脂、アクリル樹脂等を含有する硬化性樹脂組成物又はこれらの混合物を挙げることができる。
【0037】
(コアフィルム3の溶融粘度)
コアフィルム3の溶融粘度は、フィラー含有フィルム10を物品に圧着、例えば熱圧着する際の樹脂流動によるフィラー4の不要な移動を抑制するために、圧着、例えば熱圧着時の温度領域において絶縁ベース層1の粘度の最低溶融粘度の1.1倍、より好ましくは1.2倍以上である。溶融粘度は、一例として回転式レオメータ(TA Instruments社製)を用い、測定圧力5gで一定に保持し、直径8mmの測定プレートを使用して求めることができ、より具体的には、温度範囲30~250℃において、昇温速度10℃/分、測定周波数10Hz、前記測定プレートに対する荷重変動5gとすることにより求めることができる。なお、溶融粘度の調整は、溶融粘度調整剤として微小固形物の種類や配合量、樹脂組成物の調整条件の変更などにより行うことができる。
【0038】
(コアフィルム3の層厚)
コアフィルム3の層厚は、フィラー4を安定的に保持する等のため、フィラー4の平均粒子径Pとの関係で決定される。この点については後述する。
【0039】
(コアフィルム3の貫通孔)
コアフィルム3には、フィラー4を充填し保持するための貫通孔thが形成されている。貫通孔thは粘着層2側と絶縁ベース層1側のそれぞれに開口している。開口の平面視形状は好ましくは円形であるが、他の形状であってもよい。通常、粘着層2側の開口径と絶縁ベース層1側の開口径とを同じにすることもでき、貫通孔にテーパーを設けてもよい。例えば、粘着層2側の開口径を絶縁ベース層1側の開口径よりも大きくなるように、換言すれば、絶縁ベース層1側から粘着層2側に向かって、貫通孔thが広がるようなテーパーを有することができる。テーパーを設けることにより、フィラー4を移動し難くすることができる。テーパーの程度は、粘着層2や絶縁ベース層1の溶融粘度、層厚、更に接続対象の種類等によって決定することができる。
【0040】
このような貫通孔thは、コアフィルム3にランダムパターンで設けてもよく、規則パターンで配列させてもよい。このような貫通孔パターンは、フィラー含有フィルム10におけるフィラーの存在パターンと実質的に同義となる。規則パターンの例としては、正方格子、長方格子、斜方格子等の格子配列を挙げることができる。異なる形状の格子が、複数組み合わさったものでもよい。規則パターンであることで、品質管理がし易くなる利点が挙げられる。貫通孔thが所定間隔で直線状に並んだ貫通孔列を所定の間隔で並列させてもよい。貫通孔thが密に配置されている領域と疎に配置されている領域が規則的に繰り返されていてもよい。フィラー含有フィルムを導電フィルムもしくは異方性導電フィルムとする場合には、貫通孔を互いに離隔した規則的な配列とすることが、端子における捕捉安定性とショート抑制の両立のためにより好ましい。なお、貫通孔thが規則的な配列をしているか否かは、例えばフィルムの長手方向(フィラー含有フィルムを巻装体にした場合の巻取り方向)に貫通孔もしくはフィラーの所定の配置が繰り返されているか否かを観察することで判別することができる。
【0041】
また、貫通孔へのフィラー充填率は、{(フィラー個数/貫通孔個数)×100(%)}として求めることができる。これは、下記の個数密度と同様にフィルム面視野の観測により求めることができる。フィラー充填率は、95%以上であればよく、98%以上が好ましく、99.5%以上であることがより好ましい。フィラーに充填されていない残存フィラー(残存率)が少ない(ゼロに近しい)ことが望ましいが、実用上、貫通孔th個数に対して2%未満、好ましくは1%未満、より好ましくは0.5%未満の残存率であってもよい。残存率をゼロに近づけるように排除作業を行うと、フィルム表面への欠損の理由となりかねないためである。
【0042】
貫通孔th同士の距離は接続する物品や用途に応じて定めることができ、また、貫通孔thの個数密度は、通常10個/mm2以上であればよく、30個/mm2以上が好ましく、上限は500000個/mm2以下であればよく、250000個/mm2以下であることが好ましく、100000個/mm2以下がより好ましい。個数密度は、顕微鏡観察によりフィルム面視野を測定することができる。顕微鏡観察の際の観察面積は、2mm以上、好ましくは10mm以上であることが好ましい。
【0043】
貫通孔th(即ちフィラー)の個数密度は、金属顕微鏡を用いて観察して求める他、画像解析ソフト(例えば、WinROOF(三谷商事株式会社製)や、A像くん(登録商標)(旭化成エンジニアリング株式会社製)等)により観察画像を計測して求めてもよい。観察方法や計測手法は、上記に限定されるものではない。
【0044】
本発明では、貫通孔のサイズが統一されていることで、発明の効果をより顕著に奏することができる。そのためには、貫通孔の開口部の大きさおよび深さが、以下の条件を満たすことが望ましい。即ち、フィラー含有フィルムにおいて、観察面積の合計が1mm以上、好ましくは2mm以上において、貫通孔の個数が1000個以上(好ましくは2000個以上)である領域に含まれる貫通孔の全数の95%以上、好ましくは98%以上、より好ましくは99.5%以上のものが開口部の大きさ及び深さが一致していることが望ましい。ここで、「開口部の大きさ及び深さが一致している」の「一致している」とは、ある貫通孔の開口部の大きさ及び深さが、計測誤差を考慮し、それぞれ所定の領域に含まれる貫通孔の開口部の平均の大きさおよび平均の深さの±15%以内、好ましくは±10%以内、より好ましくは±5%以内の範囲内に収まっていることを意味する。なお、開口部の大きさは、開口部の形状が異なるものが存在するため、開口部の面積を円に換算した場合の直径としてもよい。
【0045】
<フィラー4>
本発明においてフィラー4としては、フィラー含有フィルムの用途に応じて、公知の無機系フィラー(金属粒子、金属酸化物粒子、金属窒化物粒子など)、有機系フィラー(樹脂粒子、ゴム粒子など)、有機系材料と無機系材料が混在したフィラー(例えば、コアが樹脂材料で形成され、表面が金属メッキされている粒子(金属被覆樹脂粒子)、導電粒子の表面に絶縁性微粒子を付着させたもの、導電粒子の表面を絶縁処理したもの等)から、硬さ、光学的性能などの用途に求められる性能に応じてフィラーの30%圧縮弾性率が測定できるものから適宜選択される。例えば、光学フィルムや艶消しフィルムでは、スチレンフィラー、アクリルフィラーなどの樹脂フィラーを使用することができる。接着フィルムではポリマー系のゴム粒子、シリコーンゴム粒子等を含有させることができる。導電フィルムや異方性導電フィルムでは導電粒子を含有させる。導電粒子としては、金属粒子や合金粒子でもよいが、金属被覆樹脂粒子が好ましく、表面に絶縁性微粒子が付着している金属被覆樹脂粒子などが挙げられる。2種以上を併用することもできる。中でも、金属被覆樹脂粒子が、接続された後に樹脂粒子が反発することで端子との接触が維持され易くなり、導通性能が安定する点から好ましい。また、導電粒子の表面には公知の技術によって、導通特性に支障を来さない絶縁処理が施されていてもよい。
【0046】
(フィラー4の平均粒子径)
本発明においてフィラー4の平均粒子径Pはフィラー含有フィルムの用途に応じて定めることができる。例えば、フィラー含有フィルムを導電フィルムもしくは異方性導電フィルムとして使用する場合、フィラー含有フィルムの製造時のフィラーの押込精度を向上させるため、好ましくは1μm以上、より好ましくは1.4μm以上、特に好ましくは2.5μm以上である。また、上限には特に制約はないが、フィラー含有フィルムの製造時のフィラーの位置ずれの影響を抑制するため、好ましくは200μm以下、より好ましくは50μm以下、特に好ましくは30μm以下である。フィラーの平均粒子径は、平面画像又は断面画像から求めることができる。また、フィラー含有フィルムに含有させる前の原料粒子としてのフィラーの平均粒子径は湿式フロー式粒子径・形状分析装置FPIA-3000(マルバーン社製)を用いて求めることができる。なお、フィラーに絶縁性微粒子等の微粒子が付着している場合には、微粒子を含めない径を粒子径とする。
【0047】
フィラー含有フィルムにおけるフィラーの平均粒子径Pのバラツキについては、CV値(標準偏差/平均)を20%以下とすることが好ましい。これによりフィラー含有フィルムの物品への圧着時にフィラー含有フィルムが均等に押圧され易くなり、押圧力が局所的に集中することを防止できる。したがって、フィラー含有フィルムを導電フィルムもしくは異方性導電フィルムとして構成する場合には、接続の安定性が向上し、また接続後には圧痕やフィラーの挟持状態の観察による接続状態の評価を精確に行うことができる。具体的には、導電フィルムもしくは異方性導電フィルムを用いて電子部品同士を導電接続もしくは異方性導電接続した後の検査において、端子サイズが比較的大きいもの(FOBなど)でも、比較的小さいもの(COGなど)でも圧痕や導電粒子の挟持状態の観察による接続状態の確認を精確に行うことができる。従って、導電接続もしくは異方性接続後の検査が容易になり、接続工程の生産性を向上させることが期待できる。
る。
【0048】
一方、フィラー含有フィルムをフィルム厚方向に切った断面図では(図1A)、フィルム厚方向の各フィラーの頂点が、絶縁ベース層1とコアフィルム3との界面に平行な面に面一に揃っていることが好ましい。これにより、フィラー含有フィルムを物品に均一に圧着させることが容易となる。
【0049】
<“コアフィルム厚とフィラー径との関係”、“フィラー径と貫通孔開口径との関係”、および“コアフィルムの圧縮弾性率とフィラーの圧縮弾性率との関係”>
以上説明した本発明のフィラー含有フィルム10は、前述したように、“コアフィルム厚とフィラー径との関係”、“フィラー径と貫通孔開口径との関係”、および“コアフィルムの圧縮弾性率とフィラーの圧縮弾性率との関係”を、それぞれ特定の範囲に限定している。具体的には、本発明は、以下の式(1)~(3)、好ましくは式(1′)~(3′)を満足する。
【0050】
【数5】
【0051】
【数6】
【0052】
(式(1)、(1′)の意義)
本発明において、“コアフィルム厚とフィラー径との関係”に着目した理由は、この関係が、コアフィルムのフィラー保持性に密接に関与していると考えられるからである。具体的には、コアフィルム3の層厚Cを、フィラー4の平均粒子径Pの0.8倍以下、好ましくは0.5倍以上0.8倍以下に設定する。コアフィルム3の層厚Cが、フィラー4の平均粒子径Pの0.8倍を超えると、フィラーが挟持されにくくなる(挟持状態が不十分となる)傾向が顕著となるからである。なお、コアフィルム3の層厚Cが、フィラー4の平均粒子径Pの0.5倍未満となると、フィラーを挟持する際の支えにならない(押込み時に開口径がフィラーを保持する働きが弱まる)場合がある。
【0053】
(式(2)、(2′)の意義)
本発明において、“フィラー径と貫通孔開口径との関係”に着目した理由は、コアフィルムの貫通孔に合わせてフィラーを挟持することで、挟持の状態を均質化させ、且つフィラーを挟持した状態で固定化できると考えられるからである。具体的には、コアフィルム3の貫通孔開口径Oを、フィラー4の平均粒子径Pの1.2倍以上、好ましくは1.5倍未満に設定する。コアフィルムの貫通孔開口径Oが、フィラー4の平均粒子径Pの1.2倍未満となると、フィラーの挟持の際に貫通孔開口径が邪魔をして扁平化がされ難くなるからである。なお、コアフィルムの貫通孔開口径Oが、フィラー4の平均粒子径Pの1.5倍以上となると、フィラーを挟持する際に固定されなくなる現象が現れやすくなるからである。
【0054】
(式(3)、(3′)の意義)
本発明において、“コアフィルムの圧縮弾性率とフィラーの圧縮弾性率との関係”に着目した理由は、フィラーの圧縮作用の一部をコアフィルムの圧縮作用で代替可能とすることで、フィラーとコアフィルムの組み合わせのバリエーションもしくは自由度を豊富にすることが可能となり、低コスト化や検討工数の削減が可能であると考えられるからである。これは、本発明の趣旨にも相当する。具体的には、室温(23℃±15℃)における、コアフィルム3の圧縮弾性率Eをフィラー4の30%圧縮弾性率Eよりも大きく、好ましくは1.2E未満に設定する。コアフィルム3の圧縮弾性率Eをフィラー4の30%圧縮弾性率E以下とすると、粘着層が先に流動する傾向が顕著となり、1.2E以上となると、コアフィルムが溶融してフィラーの固定ができなくなる傾向が顕著になるからである。なお、E、Eを評価する際に、粘着層2の最低溶融粘度を示す温度(T[℃])を基準にすることもできる。積層した状態になると最も低い粘着層の最低溶融粘度が支配的だからである。
【0055】
なお、粘着層2の最低溶融粘度を示す温度(T[℃])±10℃の温度で、式(3)、好ましくは式(3′)を満足することが好ましい。この範囲外であると、これらの式を満足する可能性が著しく低減するからである。また、T[℃]±10℃という温度範囲は、コアフィルムの圧縮弾性率がほぼ一定に保持されている範囲という意義を有する。コアフィルムの圧縮弾性率がほぼ一定に保持されているとフィラーの配置を精密に制御できるというメリットがある。
【0056】
なお、本発明において、室温(23℃±15℃)におけるフィラー4の30%圧縮弾性率は、微小圧縮試験機(例えば、フィッシャー社製、フィッシャースコープH-100)を用いて導電粒子に圧縮荷重を加えたときの導電粒子の圧縮変量を測定し、以下の式により算出されるK値を使用することができる。式中、“F”はフィラーが30%圧縮変形したときの荷重値(N)であり、“S”はフィラーが30%圧縮変形したときの圧縮変位(mm)であり、“R”はフィラーの半径(mm)である。
【0057】
【数7】
【0058】
また、室温(23℃±15℃)におけるコアフィルム3の圧縮弾性率も、前述の微少圧縮試験機を用いて計測することができる。
【0059】
<フィラー含有フィルムの製造方法>
本発明のフィラー含有フィルム10は、次のように製造することができる。まず、PETフィルム等の表面が平滑な剥離基材20に、絶縁ベース層形成用組成物1′を塗布し(図2A)、常法により乾燥することにより絶縁ベース層1を形成する(図2B)。
【0060】
次に、レーザー加工あるいはフォトリソ加工等により貫通孔thを設けたコアフィルム3を、絶縁ベース層1上に公知の手法により積層する(図2C)。
【0061】
続いて、コアフィルム3にフィラー4を散布し、スキージ等を用いてフィラー4を貫通孔thに充填し、貫通孔thに充填されなかったフィラー4をエアブロー等で除去する(図2D)。
【0062】
最後に、コアフィルム3上に、粘着層形成用組成物2′を塗布(図2E)し、常法により乾燥することにより粘着層2を形成する(図2F)。これにより、剥離基材20を備えたフィラー含有フィルムを得ることができ、剥離基材20を除去すれば、図1Aに示すフィラー含有フィルム10を得ることができる。
【0063】
<フィラー含有フィルムの使用方法>
本発明のフィラー含有フィルムは、従前のフィラー含有フィルムと同様に物品に貼り合わせて使用することができ、貼り合わせる物品に特に制限はない。したがって、フィラー含有フィルムを介して第1部材と第2部材とが接合されている接合体、第1部材と第2部材との間にフィラー含有フィルムを配置し、接合することにより接合体を製造する方法も本発明の一部である。例えば、フィラー含有フィルムを導電フィルムや異方性導電フィルムとして構成する場合、圧着ツール、例えば熱圧着ツールを用いて導電フィルムや異方性導電フィルムを、PN接合を利用した半導体素子(太陽電池等の発電素子、CCD等の撮像素子、発光素子、ペルチェ素子)、その他各種半導体素子、ICチップ、ICモジュール、FPCなどの第1電子部品と、FPC、ガラス基板、プラスチック基板、リジッド基板、セラミック基板などの第2電子部品との導電接続や異方性導電接続に使用することができ、またこのフィラー含有フィルムを導電接続や異方性導電接続以外の用途で電子部品に用いることもできる。なお、フィラー含有フィルムを貼り合せる物品の面は、平滑でもよく、段部や凸形状を有していてもよい。
【0064】
導電フィルムや異方性導電フィルムで接続する第1電子部品及び第2電子部品の形状、大きさ、用途等に特に制限はない。これらの電子部品が小型で端子サイズが狭小化していてもよく、電子部品の搭載に高精度のアライメントが必要とされてもよい。例えば、バンプ面積が数十μm2~数千μm2の極小化された電子部品(例えばミニLEDやマイクロLEDなど)も接続対象とすることができる。一方、外形サイズの大きな電子部品の実装を、導電フィルムや異方性導電フィルムを用いて行うことができる。また、実装した電子部品を分割することにより小片化して使用してもよい。また、大型TVなどに用いる場合は、フィラー含有フィルムを1辺に1m以上、例えば4.5m以上貼着することもある。この場合、フィラー含有フィルムを導電フィルムや異方性導電フィルムとして使用する以外に、フィラーをスペーサーとしたスペーサーフィルム等として使用してもよい。
【0065】
本発明のフィラー含有フィルム、例えば、導電フィルムや異方性導電フィルムを用いてICチップやウェーハーをスタックして多層化してもよい。なお、本発明の導電フィルムや異方性導電フィルムで接続する電子部品は、上述の電子部品の例示に限定されるものではない。近年、多様化している種々の電子部品に使用することができる。本発明は種々の物品に特に本発明のフィラー含有フィルムを貼り合わせたフィルム貼着体を包含し、特に、第1電子部品と第2電子部品を、導電フィルムや異方性導電フィルムを介して接続した接続体を包含する。
【0066】
フィラー含有フィルムを物品に貼り合わせる方法は、フィラー含有フィルムの用途に応じて圧着、好ましくは熱圧着とすることができ、あるいは貼り合わせ時に光照射を利用してもよい。光照射を利用する一例としては、特開2022-151816号公報に記載されているレーザーリフトオフ法に従ってフィラー含有フィルムを個片化し、更に転写させることが挙げられる。レーザーリフトオフ法に適したフィラー含有フィルムとするために使用すべき樹脂材料や粘着材料としては、特開2022-151816号公報に記載されているもの中から選択して使用することができる。
【0067】
フィラー含有フィルムを導電フィルムや異方性導電フィルムとして構成する場合のより具体的な使用方法としては、例えば、第1電子部品がICチップ、第2電子部品が基板の場合に、一般的には第1電子部品を加圧ツール側、第2電子部品を第1の電子部品と対向するステージに載置し、第2電子部品に予め異方性導電フィルムを貼着させ、加圧ツールを用いて第1電子部品と第2電子部品の圧着、例えば熱圧着を行う。この場合、第1電子部品に予め導電フィルムや異方性導電フィルムを貼着してもよく、また第1電子部品はICチップに限定されない。
【0068】
第1電子部品と第2電子部品を圧着、例えば熱圧着により接続するにあたり、必要に応じて、圧着、例えば熱圧着前に予め導電粒子周辺の樹脂を排除して仮圧着を行ってもよい。これにより、導電フィルムや異方性導電フィルムを電子部品に圧着、例えば熱圧着する際に生じる樹脂流動の影響を低減させ、導電粒子の不要な移動を抑制することができる。具体的には、接続する一方の電子部品を導電フィルムや異方性導電フィルムの一方の面に貼着し、もう一方の電子部品を導電フィルムや異方性導電フィルムの他方の面に貼着して仮圧着を行う際に電子部品を加圧ツールで押圧し、電子部品間の樹脂を部分的に排除し、次いで本圧着として押圧、例えば熱押圧することにより電子部品同士を接続する(以下、本圧着時の押圧だけでなく仮圧着でも押圧を行う接続方法を2段階押し込みによる接続という)。WO2016/143789には、導電粒子がランダムに分散している導電フィルムや異方性導電フィルムを用いて2段階押し込みによる接続を行うことが記載されているが、本発明のように導電粒子が規則的に配列している導電フィルムや異方性導電フィルムで電子部品同士を接続する場合にこのような2段階押し込みによる接続を行うと、圧着、例えば熱圧着時の導電粒子の不要な移動を大きく低減させることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明のフィラー含有フィルムは、“コアフィルム厚とフィラー径との関係”、“フィラー径と貫通孔開口径との関係”、及び“コアフィルムの圧縮弾性率とフィラーの圧縮弾性率との関係”を、それぞれ特定の範囲に限定している。このため、フィラー含有フィルムを介して二つの部材を圧着、例えば熱圧着等により接合する際に、コアフィルムの樹脂流動を抑制し、フィラーの意図しない移動を制限でき、また、圧着ムラの発生を抑制し、フィルムの圧着部位全面に亘って均一にフィラーを押し潰すことができる。従って、本発明のフィラー含有フィルムは、各種電子部品を基板へ接続する際に有用である。
【符号の説明】
【0070】
1 絶縁ベース層
2 粘着層
3 コアフィルム
4 フィラー
10 フィラー含有フィルム
20 剥離基材
th 貫通孔
フィラー平均粒子径
貫通孔開口径
コアフィルム厚
コアフィルムの圧縮弾性率
フィラーの30%の圧縮弾性率
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F