(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136136
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】特装車架装物制御システム
(51)【国際特許分類】
B65F 3/00 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
B65F3/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047125
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000163095
【氏名又は名称】極東開発工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092956
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 栄男
(74)【代理人】
【識別番号】100101018
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 正
(72)【発明者】
【氏名】岡野 啓一
(72)【発明者】
【氏名】山内 正輝
(72)【発明者】
【氏名】尾原 歩希
(72)【発明者】
【氏名】早川 千鶴
(72)【発明者】
【氏名】福原 健大朗
(72)【発明者】
【氏名】木原 柊平
【テーマコード(参考)】
3E024
【Fターム(参考)】
3E024AA01
3E024AA04
3E024BA01
3E024GA01
3E024HB01
3E024HB02
3E024HC02
3E024HE02
(57)【要約】
【課題】安全性を確保しつつ、操作性の高い特装車架装物の動作制御装置を提供する。
【解決手段】 ユーザ携帯装置160は、ユーザ携帯装置側の近距離無線通信手段419、ユーザ携帯装置160の制御手段413を有する。ユーザ携帯装置160には動作制御装置170の動作スイッチは設けられておらず、動作前提スイッチ415が設けられており、制御手段413は、動作前提スイッチ415が操作されると、架装物動作モードを動作不可能状態から動作可能状態にリモート切り換えするリモート切換命令を送信する。動作制御装置170の制御手段513は、リモート切換命令が与えられてから、動作スイッチ516からの動作命令が与えられても、特装車架装物200を動作させる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)特装車架装物の動作制御装置であって、以下のa1)~a3)を有する動作制御装置、
a1)前記特装車架装物を動作させる動作命令を与える動作スイッチ、
a2)前記特装車架装物の動作を制御する制御手段であって、前記架装物の動作モードを動作不可能状態から動作可能状態に切り換えるための動作モード切換命令を受け取るまでは、前記架装物の動作モードを動作不可能状態とし、前記動作モード切換命令を受け取ると、前記架装物の動作モードを動作可能状態に切り換え、前記動作不可能状態で前記動作スイッチからの動作命令が与えられても、前記特装車架装物を動作させず、前記動作可能状態で、前記動作スイッチからの動作命令が与えられると、前記特装車架装物を動作させる第1の制御手段、
a3)近距離無線通信規格でデータ通信する第1の近距離無線通信手段、
B)以下のb1)~b3)を有するユーザ携帯装置、
b1)前記第1の近距離無線通信手段とデータ通信する第2の近距離無線通信手段、
b2)操作者が前記動作制御装置に対する命令を与えるためのスイッチ構成手段であって、前記動作命令を与える動作スイッチは設けられておらず、前記動作モード切換命令を与える動作前提スイッチが設けられたスイッチ構成手段、
b3)前記動作モード切換命令が与えられると、前記第2の近距離無線通信手段によって、前記動作制御装置に当該命令を送信させる第2の制御手段、
を備えた特装車架装物制御システム。
【請求項2】
特装車架装物の動作制御装置と通信を行うユーザ携帯装置であって、
A)前記動作制御装置は以下のa1)~a3)を有し、
a1)前記特装車架装物を動作させる動作命令を与える動作スイッチ、
a2)前記特装車架装物の動作を制御する制御手段であって、前記架装物の動作モードを動作不可能状態から動作可能状態に切り換えるための動作モード切換命令を受け取るまでは、前記架装物の動作モードを動作不可能状態とし、前記動作モード切換命令を受け取ると、前記架装物の動作モードを動作可能状態に切り換え、前記動作不可能状態で前記動作スイッチからの動作命令が与えられても、前記特装車架装物を動作させず、前記動作可能状態で、前記動作スイッチからの動作命令が与えられると、前記特装車架装物を動作させる第1の制御手段、
a3)近距離無線通信規格でデータ通信する第1の近距離無線通信手段、
B)以下のb1~b3)を有すること、
b1)前記第1の近距離無線通信手段とデータ通信する第2の近距離無線通信手段、
b2)操作者が前記動作制御装置に対する命令を与えるためのスイッチ構成手段であって、前記動作命令を与える動作スイッチは設けられておらず、前記動作モード切換命令を与える動作前提スイッチが設けられたスイッチ構成手段、
b3)前記動作モード切換命令が与えられると、前記第2の近距離無線通信手段によって、前記動作制御装置に当該命令を送信させる第2の制御手段、
を特徴とするユーザ携帯装置。
【請求項3】
請求項1の特装車架装物制御システムであって、
前記動作制御装置は、接続認証されたユーザ携帯装置からの架装物動作モード切り換え命令だけを受け付けること、
を特徴とする特装車架装物制御システム。
【請求項4】
請求項1または請求項3の特装車架装物制御システムにおいて、
前記動作前提スイッチは前記動作制御装置を搭載する特装車の運転席キャブ内に、前記動作スイッチは、運転席キャブ外に、それぞれ配置されていること、
を特徴とする特装車架装物制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、特装車架装物制御システムに関し、特に、操作性の高い特装車架装物の動作制御に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、塵芥収集車において、作業者の携帯端末から計量操作することが開示されている(段落0028)。これにより、塵芥収集車に設置された操作機器まで戻らずとも、投入した塵芥を計量することができる。
【0003】
作業者は、前記携帯端末による計量の操作に慣れてしまうと、キャブ内のスイッチ、例えば、PTO切り換えスイッチをオフにしたまま、携帯端末をもって、投入口近傍に移動して、作業を開始してしまうことがある。その場合、作業者は、PTO切り換えスイッチが設置されているキャブ内にもどって、PTO切り換えスイッチをオンにして、ふたたび、投入口近傍に移動して、操作ボタンを操作しなければならず、処理が煩雑であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる問題を解決するために、作業者の携帯端末において、すべてのスイッチをリモート操作可能とすることも考えられる。
【0006】
しかしながら、その場合、前記投入口とは離れた位置で全てのスイッチをリモート操作できるようになり、安全性が確保できないという問題が発生する。
【0007】
かかる安全性の問題は、PTO切り換えスイッチだけでなく、他の架装物動作モード切り換えスイッチについても同様に発生する。
【0008】
また、このような安全性および操作性を両立させるという課題は、塵芥収集車だけでなく、他の種類の架装物を搭載する特装車についても同様に発生する。
【0009】
この発明は、上記問題を解決し、安全性を確保しつつ、操作性の高い特装車架装物の動作制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明にかかる特装車架装物制御システムは、A)特装車架装物の動作制御装置であって、以下のa1)~a3)を有する動作制御装置、a1)前記特装車架装物を動作させる動作命令を与える動作スイッチ、a2)前記特装車架装物の動作を制御する制御手段であって、前記架装物の動作モードを動作不可能状態から動作可能状態に切り換えるための動作モード切換命令を受け取るまでは、前記架装物の動作モードを動作不可能状態とし、前記動作モード切換命令を受け取ると、前記架装物の動作モードを動作可能状態に切り換え、前記動作不可能状態で前記動作スイッチからの動作命令が与えられても、前記特装車架装物を動作させず、前記動作可能状態で、前記動作スイッチからの動作命令が与えられると、前記特装車架装物を動作させる第1の制御手段、a3)近距離無線通信規格でデータ通信する第1の近距離無線通信手段、B)以下のb1)~b3)を有するユーザ携帯装置、b1)前記第1の近距離無線通信手段とデータ通信する第2の近距離無線通信手段、b2)操作者が前記動作制御装置に対する命令を与えるためのスイッチ構成手段であって、前記動作命令を与える動作スイッチは設けられておらず、前記動作モード切換命令を与える動作前提スイッチが設けられたスイッチ構成手段、b3)前記動作モード切換命令が与えられると、前記第2の近距離無線通信手段によって、前記動作制御装置に当該命令を送信させる第2の制御手段を備えている。
【0011】
したがって、前記ユーザ携帯装置から前記動作命令を与えることができる。また、前記ユーザ携帯装置には、前記動作スイッチは設けられていないため、安全性が確保される。
【0012】
(2)本発明にかかる特装車架装物の動作制御装置と通信を行うユーザ携帯装置は、A)前記動作制御装置は以下のa1)~a3)を有し、a1)前記特装車架装物を動作させる動作命令を与える動作スイッチ、a2)前記特装車架装物の動作を制御する制御手段であって、前記架装物の動作モードを動作不可能状態から動作可能状態に切り換えるための動作モード切換命令を受け取るまでは、前記架装物の動作モードを動作不可能状態とし、前記動作モード切換命令を受け取ると、前記架装物の動作モードを動作可能状態に切り換え、前記動作不可能状態で前記動作スイッチからの動作命令が与えられても、前記特装車架装物を動作させず、前記動作可能状態で、前記動作スイッチからの動作命令が与えられると、前記特装車架装物を動作させる第1の制御手段、a3)近距離無線通信規格でデータ通信する第1の近距離無線通信手段、B)以下のb1~b3)を有する。b1)前記第1の近距離無線通信手段とデータ通信する第2の近距離無線通信手段、b2)操作者が前記動作制御装置に対する命令を与えるためのスイッチ構成手段であって、前記動作命令を与える動作スイッチは設けられておらず、前記動作モード切換命令を与える動作前提スイッチが設けられたスイッチ構成手段、b3)前記動作モード切換命令が与えられると、前記第2の近距離無線通信手段によって、前記動作制御装置に当該命令を送信させる第2の制御手段。
【0013】
したがって、前記ユーザ携帯装置から前記動作前提スイッチの操作ができる。また、前記ユーザ携帯装置には、前記動作スイッチは設けられていないため、安全性が確保される。
【0014】
(3)本発明にかかる特装車架装物制御システムにおいては、前記動作制御装置は、接続認証されたユーザ携帯装置からの架装物動作モード切り換え命令だけを受け付ける。したがって、接続認証されていないユーザ携帯装置からの架装物動作モード切り換え命令を受け取らない。これにより、誤動作を防止できる。
【0015】
(4)本発明にかかる特装車架装物制御システムにおいては前記動作前提スイッチは前記動作制御装置を搭載する特装車の運転席キャブ内に、前記動作スイッチは、運転席キャブ外に、それぞれ配置されている。したがって、運転席キャブ内にいちいち戻らなくても、前記動作前提スイッチの切換ができる。
【0016】
本明細書において使用した用語の定義について説明する。「接続認証されたユーザ携帯装置からの架装物動作モード切り換え命令だけを受け付ける」とは、そもそもデータ通信を拒否すること、データ通信は許可するが受け取った命令を実行しないことなど、結果的に、架装物動作モード切り換えを行わない場合を全て含む。
【0017】
また、「特装車架装物」とは、実施形態では、第1シリングA1~第4シリンダA4によって駆動させる駆動系、これらの駆動系によって駆動制御される制御対象物(排出板、積込装置)はもちろん,これらの制御を行うための電磁弁などを含む。
【0018】
「スイッチ構成手段」とは、実施形態では、スイッチ群411が表示される表示部130(
図5参照)が該当する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】特装車である塵芥収集車Vについて一部を破断した全体側面図である。
【
図2】塵芥収集車1における各部の制御関係を説明するための概略図である。
【
図3】塵芥収集車1のスイッチ配置を説明する図である。
【
図4】動作制御システム100の機能ブロック図である。
【
図5】ユーザ携帯装置160を、CPUを用いて実現したハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図7】ユーザ携帯装置160における動作前提スイッチが選択された場合のフローチャートおよび特装車架装物の動作制御装置170におけるフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明における実施形態について、図面を参照して説明する。
【0021】
(1.特装車の説明)
(1.1 概要)
特装車である塵芥収集車1の詳細について、
図1を用いて、説明する。塵芥収集車1は、ベース車両Vbと、そのベース車両Vbの組立完成後にその車体F上に架装される塵芥収集作業用の架装物Kとから構成されている。ベース車両Vbには車両側制御装置UV(図示せず)が、また架装物Kには架装物側制御装置UKがそれぞれ配備されている。
【0022】
図1に示すように、ベース車両Vbの車体Fには、エンジンE、バッテリB、電動モータM、動力選択取出機構PS、および車両側制御装置UVが搭載されている。
【0023】
エンジンEは車輪Wに駆動力を付与する。電動モータMはバッテリBにインバータ12を介して接続されてバッテリBからの電力で作動する。動力選択取出機構PSは、エンジンE及び電動モータMを含む駆動系としての車輪駆動系DからエンジンE又は電動モータMの動力を選択的に取出可能である。車両側制御装置UVはマイコンを主要部として構成されており、エンジンE、電動モータM、バッテリB及び電磁クラッチ11を制御する。エンジンEを始動操作するためのスタータスイッチS-SWも、車両側制御装置UVに接続されている。
【0024】
なお、車両側制御装置UVと、エンジンE、電動モータM及びバッテリBとの各間は、実際には複数の電力線及び/又は信号線で各々接続されるが、その表示を
図1では簡略的に示している。
【0025】
動力取出装置PTOの出力側は、架装物Kの一部である油圧ポンプPに連動、連結される。また、動力取出装置PTOは、車両側制御装置UVに接続されており、同じく車両側制御装置に接続された動力取出スイッチへの操作入力に応じて、変速機10の出力を車輪W側と油圧ポンプP側とに選択的に切り換えて伝達する。具体的には、動力取出スイッチがオフ(OFF)の状態では、変速機10の出力が車輪W側に伝達されて走行駆動に利用される。これに対して、同動力取出スイッチがオン操作された状態では、変速機10の出力が油圧ポンプP側に伝達されてポンプ駆動に利用される。
【0026】
架装物Kは、後端を開放したボックス状の塵芥収容箱1をベース体(架装物本体)としており、この塵芥収容箱1は、ベース車両Vbの車体F上に後付けで搭載、固定される。塵芥収容箱1の後端には塵芥投入箱3が連設されている。塵芥投入箱3は、塵芥を塵芥収容箱1内に投入するための塵芥投入口3aを後端に有する。開閉扉3tは塵芥投入口3aを開閉する。
【0027】
塵芥投入箱3内には、作業機としての塵芥積込装置2が設けられる。塵芥積込装置2は、投入箱3が積込位置にあるときに、投入箱3内の投入塵芥を塵芥収容箱1内に強制的に積み込む。
【0028】
塵芥積込装置2の構造は、圧縮板式と呼ばれる従来周知のものであり昇降体4、第2シリンダA2、圧縮板5、第3シリンダA3とを有する。昇降体4は、塵芥収容箱1の後端開口1aに臨む位置で塵芥投入箱3の左右両側壁に昇降可能に支持されている。第2シリンダA2は、昇降体4を強制昇降させる。圧縮板5は、昇降体昇降用の第2シリンダA2と、塵芥投入箱3内でその横幅一杯に延び且つ昇降体4の下部に前後回動可能に軸支されている。第3シリンダA3は圧縮板5を強制回動させる。
【0029】
また、塵芥排出装置7は、第4シリンダA4および排出板6を有している。排出板6は第4シリンダA4により、運転席側またはその逆側にスライド制御される。塵芥投入箱3のテールゲート3aは、第1シリンダA1により、実線で示す閉状態、または2点鎖線で示す開状態に開閉制御される。
【0030】
(1.2 特装車架装物の動作制御装置のハード構成)
図2に、特装車架装物における各種スイッチおよび電磁弁を抜粋した詳細構成を示す。 制御部60は、
図1に示す塵芥積込装置2、排出板6、及び塵芥投入箱3の各動作を制御するマイクロコンピュータである。制御部60には、後述するように、キャビン内操作盤CFのスイッチ(メインスイッチ33、開閉スイッチ34、排出スイッチ35)、後部操作盤CRのスイッチ(積込スイッチ44、下降スイッチ45、上昇スイッチ46、反転スイッチ47、及び停止スイッチ48)およびPTO切換スイッチ30からの操作信号が入力される。
【0031】
(1.3 キャビン内操作盤CFおよび後部操作盤CRのスイッチ群の配置)
キャビン内操作盤CFおよび後部操作盤CRのスイッチ群の配置について、
図3を用いて説明する。
【0032】
ベース車両Vbの運転室(キャビン)内には、
図1に示すように、キャビン内操作盤CFを有するキャビン内制御装置UFが設けられている。
図3Aに、運転室1a内(車内)に設けられているキャビン内操作盤CFの正面図を示す。キャビン内操作盤CFには、メインスイッチ33、開閉スイッチ34、および排出スイッチ35が設けられている。
【0033】
メインスイッチ33は、「積込」、「OFF」、及び「排出」のいずれかの位置に切り換え操作されるスイッチであり、例えばオルタネイト型のトグルスイッチからなる。
【0034】
開閉スイッチ34は、塵芥投入箱3を上下回動させるために操作されるスイッチである。本実施形態の開閉スイッチ34は、「上」、「OFF」、及び「下」のいずれかの位置に切り換え操作されるスイッチであり、例えばモーメンタリ型のトグルスイッチからなる。
【0035】
排出スイッチ35は、排出板18を前後移動させるために操作されるスイッチである。本実施形態の排出スイッチ35は、「排出」、「OFF」、及び「戻し」のいずれかの位置に切り換え操作されるスイッチであり、例えばモーメンタリ型のトグルスイッチからなる。
【0036】
図1に示すように、塵芥投入箱3の塵芥投入口3a周辺の外面には、後部操作盤CRが固定、支持されている。後部操作盤CRの詳細について
図3Bを用いて説明する。塵芥投入箱3における左側の側壁3cの後部には、後部操作盤CRが設けられている。
【0037】
後部操作盤CRの正面には、積込スイッチ44、下降スイッチ45、上昇スイッチ46、反転スイッチ47、及び停止スイッチ48が設けられている。
【0038】
積込スイッチ44は、塵芥積込装置2の各動作モードでの動作を開始させるために操作されるスイッチであり、例えばモーメンタリ型の押しボタンスイッチからなる。下降スイッチ45は、塵芥積込装置2に一次圧縮工程の動作を行わせるため、すなわち押込板7をスライダ5と共に斜め後方に下降させるために操作されるスイッチである。上昇スイッチ46は、塵芥積込装置2に押込工程の動作を行わせるため、すなわち押込板7をスライダ5と共に斜め前方に上昇させるために操作されるスイッチである。反転スイッチ47は、塵芥積込装置2に反転工程の動作を行わせるため、すなわち押込板7を反転させるために操作されるスイッチである。停止スイッチ48は、塵芥積込装置2の動作を停止させるために操作されるスイッチである。
【0039】
本実施形態においては、積込スイッチ44、下降スイッチ45、上昇スイッチ46、反転スイッチ47、及び停止スイッチ48を、モーメンタリ型の押しボタンスイッチから構成したがこれに限定されない。
【0040】
なお、
図2に示すPTO切換スイッチ30は、キャビン内に設けられている。PTO切換スイッチ30は、「作業」及び「終了」のどちらかの位置に切り換え操作されるスイッチであり、例えばロッカースイッチで構成されているが、これに限定されない。
【0041】
(1.4 各スイッチによる制御について)
図2を用いて、各スイッチによる各種シリンダの制御について説明する。
【0042】
PTO切換スイッチ30が「終了」から「作業」に切り換えられると、特装車の走行用エンジン(図示せず)と油圧ユニット(図示せず)とがPTOを介して接続される。これにより、油圧ユニットを駆動させることができる。PTO切換スイッチ30を「作業」から「終了」に切り換えると、PTOによる走行用エンジンと油圧ユニットとの接続が切断される。これにより、油圧ユニットの駆動が規制されるとともに特装車が走行可能な状態となる。このように、PTO切換スイッチ30は、油圧系の動作前提スイッチである。
【0043】
メインスイッチ33が「OFF」であれば、第3シリンダA3、第2シリンダA2、第4シリンダA4、及び第1シリンダA1の各駆動は電気的に規制される。すなわち、メインスイッチ33は、電気的な動作前提スイッチに該当する。メインスイッチ33が「OFF」から「積込」に切り換えられると、第3シリンダA3及び第2シリンダA2の各駆動が許容される。メインスイッチ33が「OFF」から「排出」に切り換えられると、第4シリンダA4及び第1シリンダA1の電気的な駆動が許容される。
【0044】
制御部60は、積込スイッチ44のオフからオンへの切り換わりを検知して、第3シリンダA3用電磁切換弁24、及び第2シリンダA2用電磁切換弁25をそれぞれ切り換え制御する。これにより、第3シリンダA3及び第2シリンダA2の各伸縮駆動(塵芥積込装置2の動作)が制御部60によって制御される。
【0045】
制御部60は、塵芥積込装置2の動作中に停止スイッチ48が操作されると、第3シリンダA3用電磁切換弁24及び第2シリンダA2用電磁切換弁25をそれぞれ切り換え制御し、第3シリンダA3及び第2シリンダA2の各伸縮駆動(塵芥積込装置2の動作)を停止させる。
【0046】
制御部60は、開閉スイッチ34からの通常操作による操作信号の入力に基づいて、第1シリンダA1用電磁切換弁27を切り換え制御する。これにより、第1シリンダA1の伸縮駆動(塵芥投入箱3の上下回動)が制御部60によって制御される。
【0047】
制御部60は、排出スイッチ35からの通常操作による操作信号の入力に基づいて、第4シリンダA4用電磁切換弁26を切り換え制御する。これにより、第4シリンダA4の伸縮駆動(排出板6の前後移動)が制御部60によって制御される。
【0048】
また、近距離無線通信ユニット40が制御部60に接続されており、後述するようにユーザ携帯装置160(
図5参照)の近距離無線通信ユニット121と通信を行う。
【0049】
(1.5 まとめ)
以上説明したように、メインスイッチ33およびPTO切換スイッチ37は、特装車の架装物を動作させる前提となる動作前提スイッチとして機能する。また、積込スイッチ44、下降スイッチ45、上昇スイッチ46、反転スイッチ47、及び停止スイッチ48は、それぞれ塵芥積込装置2の動作に関する操作をするための動作スイッチとして機能する。
【0050】
(2.1 機能ブロック図)
図4に、本発明の1実施形態にかかる特装車架装物の動作制御システム100(以下動作制御システム100という)の機能ブロックを示す。動作制御システム100は、特装車架装物の動作制御装置170(以下、動作制御装置170という)およびユーザ携帯装置160を備えている。
【0051】
動作制御装置170は、特装車架装物200の動作を制御する装置であり、動作前提スイッチ515、動作スイッチ516、特装車の制御手段513、特装車側の近距離無線通信手段519を備えている。
【0052】
動作前提スイッチ515は、特装車架装物200の架装物動作モードを動作可能状態または動作不可能状態に切り換える。動作スイッチ516は、特装車架装物200を動作させる動作命令を与える。動作前提スイッチ515および動作スイッチ516は、スイッチ群511を構成する。特装車の制御手段513は、動作前提スイッチ515および動作スイッチ516の状態切り換えにより、特装車架装物200の動作を制御する。津動作前提スイッチ515が動作可能状態で前記動作命令が与えられると、特装車架装物200を当該動作命令で特定された動作を実行させ、動作前提スイッチ515が動作不可能状態で前記動作命令が与えられると、特装車架装物200を当該動作命令で特定された動作をさせない制御を行う。特装車側の近距離無線通信手段519は、近距離無線通信規格でデータ通信する。
【0053】
ユーザ携帯装置160は、ユーザ携帯装置側の近距離無線通信手段419、ユーザ携帯装置160の制御手段413を有する。近距離無線通信手段419は、特装車側の近距離無線通信手段519とデータ通信する。ユーザ携帯装置160のスイッチ群411には、前記動作スイッチは設けられておらず、操作されると、前記リモート切換命令を送信する動作前提スイッチが設けられている。制御手段413は、前記動作前提スイッチが操作されると、前記架装物動作モードを動作不可能状態から動作可能状態にリモート切り換えするリモート切換命令を、近距離無線通信手段419により、動作制御装置170に送信させる。
【0054】
近距離無線通信手段519は、かかるリモート切換命令を受信する。動作制御装置170の制御手段513は、ユーザ携帯装置160からの前記リモート切換命令が与えられてから、前記動作命令が与えられても、特装車架装物200を動作させる。また、ユーザ携帯装置160は、動作制御装置170に設けられた動作前提スイッチおよび動作スイッチのうち、前記動作前提スイッチだけを有する。したがって、動作制御装置170において、動作前提スイッチ515が、動作スイッチ516と離れた場所に設置されている場合でも、いちいち動作前提スイッチ515の位置まで移動しなくても、モード切り換え命令をユーザ携帯装置160から与えて、動作スイッチ516を操作すれば、特装車架装物200を動作させることができる。
【0055】
また、ユーザ携帯装置160には、前記動作前提スイッチおよび前記動作スイッチのうち、動作前提スイッチ415だけを設けているので、ユーザ携帯装置160だけでは、特装車架装物200を動作させることができないので、安全性を確保することができる。
【0056】
なお、近距離無線通信手段519は、接続認証された携帯端末からの架装物動作モード切り換え命令だけを受信する。したがって、近くに別のユーザ携帯装置から架装物動作モード切り換え命令があっても、これによる誤動作を防止できる。
【0057】
(2.2 ユーザ携帯装置160のハードウェア構成)
ユーザ携帯装置160を、CPUを用いて構成したハードウェア構成について
図5を用いて説明する。
【0058】
ユーザ携帯装置160は、一般的なスマートフォンの構成であり、CPU123、メモリ127、フラッシュメモリ126、表示部130、無線通信部128、操作部125、音声入出力部124、近距離無線通信ユニット121、およびバスライン129を備えている。近距離無線通信ユニット121はBluetooth(登録商標)規格での通信をおこなう。
【0059】
CPU123は、フラッシュメモリ126に記憶された各プログラムにしたがいバスライン129を介して、各部を制御する。
【0060】
フラッシュメモリ126は、オペレーティングシステムプログラム126o(以下OSと略す)、メインプログラム126mを有する。本実施形態においては、OSとしてAndroid(商標)を採用した。メインプログラム126mの処理は後述する。
【0061】
近距離無線通信ユニット121は特装車架装物の動作制御装置170の近距離無線通信ユニット40(
図2参照)と接続して、各種のデータの送受信を行う。
【0062】
(3.フローチャート)
既に説明したように、制御部60(
図2参照)は、PTO切換スイッチ30が「作業」にモード切り換えされると、油圧ユニットおよび油圧ポンプをオンにし、架装物の油圧制御を動作可能とする。また、メインスイッチ33が「OFF」から「積込」または「排出」にモード切り換えされると、電気回路をオン状態とする。この状態で、各種シリンダの制御をするための動作ボタンが操作されると、架装物は動作する。このような動作前提スイッチを操作した状態でないと、架装物を動作させないのは、安全のためである。
【0063】
本実施形態においては、動作前提スイッチについては、
図6に示すように、ユーザ携帯装置160にて操作可能としている。これにより、前提スイッチの操作を切り換えるにあたって、都度キャビンに戻る必要がない。また、実際の操作ボタン(積込など)はユーザ携帯装置160からは操作できないように、操作ボタンは設けていない。したがって、離れた位置から架装物が動作させることはできないので、安全性も確保される。
【0064】
以下、PTOスイッチおよびメインスイッチをオフのまま、塵芥積込装置2による積込処理を開始使用とした場合の、リモートモード切り換えについて説明する。
【0065】
ユーザ携帯装置160のCPU123(
図5参照)は、動作前提スイッチ入力画面(
図6参照)を表示する(
図7AステップS21)。操作者は、
図6に示すPTOスイッチ322を選択する。CPU123は、積み込み完了ボタンが選択されるか否か判断している(
図7AステップS23)。この場合、積み込み完了ボタンが選択されないので、PTO切換スイッチ321、322のいずれかが選択されるか判断する(ステップS25)。この場合、PTO切換スイッチ322が選択されたので、CPU123は、PTO切換割り込み命令を近距離無線通信ユニット121から送信する(ステップS27)。
【0066】
また、ユーザ携帯装置160の操作者は、
図6に示すメインスイッチ323(積込)を選択する。CPU123は、メインスイッチ323~325のいずれかが選択されるか判断しており(
図7AステップS29)、この場合、メインスイッチ323が選択されたので、CPU123は、メインスイッチ割り込み命令を送信する(ステップS31)。
【0067】
ステップS27、31のあとは、ステップS23以下を繰り返す。また、ステップS29で選択がない場合も、同様である。
【0068】
これにより、前提スイッチのリモート割り込み処理が特装車架装物の動作制御装置170に送信される。
【0069】
図2に示す動作制御装置170の制御部60は、近距離無線通信ユニット40を介して、かかる割り込み命令を受け取ると、受け取った割り込み命令に応じた処理を行う。具体的には、制御部60は、受け取った割り込み命令がPTOスイッチリモート割り込み命令であれば、
図7Bに示すPTOスイッチリモート割り込み処理を実行する。制御部60は、受け取った割り込み命令の種類を判断し(
図7BステップS41)、もし割り込み命令がPTO作業であれば、油圧ユニットおよび油圧モータに動力を接続し(ステップS45)、割り込み命令がPTO終了であれば、油圧ユニットおよび油圧モータを切断する(ステップS43)。
【0070】
また、受け取った割り込み命令がメインスイッチ割り込み命令である場合は、制御部60は、
図7Cに示すメインスイッチリモート割込命令処理を実行する。具体的には、受け取ったメインスイッチ割込命令の種類を判断し(ステップS51)、「積込」であれば第2シリンダA2用電磁切り換え弁25および第4シリンダA4用電磁切り換え弁26(
図2参照)を通電状態とする。また、受け取ったメインスイッチ割込命令の種類が「排出」であれば、第4シリンダA4用電磁切り換え弁26および第1シリンダA1用電磁切り換え弁27を通電状態とする。また、受け取ったメインスイッチ割込命令の種類が「OFF」であれば4つのシリンダ用電磁切り換え弁24~27の通電を解除する。
【0071】
このように、特装車側に設けられている実際に架装物を動作させる動作スイッチと、その動作前提スイッチのうち、動作前提スイッチのみをユーザ携帯装置160にて表示させてリモート操作を可能とすることより、安全性を確保しつつ、作業性を向上させることができる。
【0072】
以上説明したように、本実施形態においては、ユーザ携帯装置160の表示手段を、操作者が塵芥収集車1に対する命令を与えるスイッチ構成手段として構成した。また、かかるスイッチ構成手段には、動作命令を与えるスイッチは設けられておらず、動作モード切換命令を与える動作前提スイッチが設けられている。このように、動作前提スイッチと動作スイッチのうち、ユーザ携帯装置160のリモート操作を行うスイッチとしては、動作スイッチを設けることなく、動作前提スイッチを設けることにより、ユーザ携帯装置160だけで、架装物を作動させてしまうことを防止できる。
【0073】
(4.他の実施形態)
本実施形態においては、近距離無線通信ユニットとして、Bluetoothを採用した。したがって、ペアリング機能により、近くに他のユーザ携帯装置が存在しても、誤って、動作前提スイッチの割り込み処理がなされることがない。しかし、これに限定されず、近距離無線通信規格としては、他の通信規格を採用してもよい。また、通信規格にペアリング機能がない場合には、通信を開始するタイミングで登録された機器だけから、前記動作前提モードの切換命令を受け付けるように、制御部60に制御させるようにしてもよい。
【0074】
本実施形態においては、ユーザ携帯装置160では、
図6に示すように、現在のモード切り換え状態が不明となっているが、特装車架装物の動作制御装置170にて、現在の動作前提スイッチの状態を検出し、それをユーザ携帯装置160に送信し、
図6において、現在の状態が分かるように表示(たとえばハイライト表示など)してもよい。
【0075】
本実施形態においては、
図8に示すように、積込動作する画面に、前記架装物動作モード前提スイッチを表示するようにしたが、架装物の動作と関連した画面であれば、どのようなものであってもよい。また、動作前提スイッチ415をユーザ携帯装置160の表示手段に表示することにより、動作前提スイッチ415を構成したが、これに限定されない。
【0076】
本実施形態においては、キャブ内に前記特装車架装物を動作させる前提となる動作前提スイッチが、キャブ外に前記動作スイッチが配置された特装車について説明したが、前記動作スイッチと前記動作前提スイッチが離れて配置される特装車であれば、本件発明を適用可能である。
【0077】
また、本実施形態においては、
図8にてPTOリモートオンスイッチ322が選択されると、PTOオンにする割り込みモードとするとともに、PTOオンにする割り込み命令を送信するようにした。しかし、これに限定されず、PTOリモートオンスイッチ322が選択されると、PTOオンにする割り込みモードとし、その後、別途設けた送信ボタンが選択されると、特装車架装物の動作制御装置170に送信するようにしてもよい。
【0078】
また、本実施形態においては、メインスイッチ割り込みについて3つの状態があったため(OFF、積込、排出)、PTO切換スイッチとメインスイッチを別々にユーザ携帯装置160に表示するようにした。しかし、これに限定されず、割り込み動作前提スイッチが複数有り、それぞれオンとオフしか存在しない場合は、ユーザ携帯装置160にて、1の動作前提スイッチを設けて、その動作前提スイッチが操作されると、前記複数の動作前提スイッチをまとめてオン・オフ切り換えができるようにしてもよい。
【0079】
また、本実施形態においては、割り込み処理で実行したが、これに限定されない。
【0080】
また、本実施形態においては、油圧系については、実際に油圧ポンプ等を接続し、動作ボタンを誤操作しても、物理的に架装物が動作しないようにしている。しかしこれに限定されず、制御部60に、現在の動作前提スイッチの動作モードを記憶させておき、その状態で動作させるかしないかを制御部60が決定するようにしてもよい。
【0081】
本実施形態においては、動作前提スイッチとして、PTO切換スイッチおよびメインスイッチ33を採用したが、架装物動作の動作前提となるスイッチであれば、これに限定されない。また本実施形態においては、特装車として塵芥収集車を例として説明したが、塵芥収集車には限定されない。たとえば、コンクリートポンプ車であれば、ブーム・ジャッキスイッチ(油圧ポンプの油を、ブームまたはジャッキの油圧シリンダに流すかを切り換える)が該当する。また、荷受台昇降装置であれば、キャブ内にある電源スイッチ(車両のバッテリーと荷受台昇降装置とを電気的に接続するか否かを切り換える)が該当する。
【0082】
また、本実施形態においては、塵芥収集車1に、動作前提スイッチおよび動作スイッチを設け、ユーザ携帯装置160には動作前提スイッチおよび動作スイッチのうち、前者だけを設けた場合について説明した。しかしこれに限定されず、塵芥収集車1の動作前提スイッチは省略してもよい。この場合、塵芥収集車1に、動作前提スイッチおよび動作スイッチのうち後者だけが、ユーザ携帯装置160には動作前提スイッチおよび動作スイッチのうち前者だけが設けられる。
【0083】
上記実施形態においては、
図4に示す各機能を実現するために、CPUを用い、ソフトウェアによってこれを実現している。しかし、その一部もしくは全てを、ロジック回路などのハードウェアによって実現してもよい。なお、プログラムの一部の処理を、オペレーティングシステム(OS)にさせるようにしてもよい。