(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136139
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】フィラー含有フィルム、接続体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20240927BHJP
H01R 11/01 20060101ALI20240927BHJP
B32B 7/025 20190101ALI20240927BHJP
H01B 5/16 20060101ALI20240927BHJP
H01B 1/22 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B32B27/00 C
H01R11/01 501C
B32B7/025
H01B5/16
H01B1/22 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047128
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000224
【氏名又は名称】弁理士法人田治米国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 賢一
(72)【発明者】
【氏名】阿久津 恭志
(72)【発明者】
【氏名】塚尾 怜司
(72)【発明者】
【氏名】柄木田 充宏
【テーマコード(参考)】
4F100
5G301
5G307
【Fターム(参考)】
4F100AA20A
4F100AA20B
4F100AA20C
4F100AB01B
4F100AK53A
4F100AK53C
4F100AK54B
4F100AK54C
4F100AT00B
4F100BA03
4F100BA06
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100CA23B
4F100DD09B
4F100EJ17
4F100GB41
4F100JG01B
4F100JG04A
4F100JG04C
4F100YY00B
5G301DA02
5G301DA03
5G301DA05
5G301DA06
5G301DA10
5G301DA12
5G301DA29
5G301DA33
5G301DA42
5G301DA57
5G301DA60
5G301DD08
5G301DE01
5G307HA02
5G307HB03
5G307HC01
(57)【要約】
【課題】異方性導電接続などの圧着時、例えば熱圧着時に、導電粒子等のフィラーの不要な移動を抑制し、フィラーの規則的な配列状態に乱れを生じさせず、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとして利用した場合に異方性導電接続時の導通性を低下させない新たな構成のフィラー含有フィルムを提供する。
【解決手段】フィラー含有フィルムは、第1絶縁層、中間層及び第2絶縁層が順次積層された構造を有する。第1絶縁層は、中間層側に第1凹部を有し、中間層は、側壁部と底蓋部とを有する第2凹部を有し、第2凹部は第1絶縁層の該第1凹部に嵌まり込んでおり、第2凹部にフィラーが保持されている。中間層の第2凹部の底蓋部の厚さは、フィラーの平均粒子径の0.5倍以下である。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1絶縁層、中間層及び第2絶縁層が順次積層されたフィラー含有フィルムであって、
第1絶縁層は、中間層側に第1凹部を有し、
中間層は、側壁部と底蓋部とを有する第2凹部を有し、第2凹部は第1絶縁層の該第1凹部に嵌まり込んでおり、
第2凹部にフィラーが保持されており、
中間層の第2凹部の底蓋部の厚さは、フィラーの平均粒子径の0.5倍以下であるフィラー含有フィルム。
【請求項2】
中間層の層厚は、フィラーの平均粒子径の0.6倍以上10倍以下である請求項1記載のフィラー含有フィルム。
【請求項3】
中間層の該第2凹部の深さが、フィラーの平均粒子径の0.2倍以上2倍以下である請求項1又は2記載のフィラー含有フィルム。
【請求項4】
中間層の該第2凹部の開口径が、フィラーの平均粒子径の1.0倍以上3.0倍以下である請求項1又は2記載のフィラー含有フィルム。
【請求項5】
フィラーの平均粒子径が、1μm以上200μm以下である請求項1又は2記載のフィラー含有フィルム。
【請求項6】
第1凹部が第1絶縁層に規則配列している請求項1又は2記載のフィラー含有フィルム。
【請求項7】
フィラーが導電粒子であり、導電フィルムもしくは異方性導電フィルムとして使用される請求項1又は2記載のフィラー含有フィルム。
【請求項8】
請求項1記載のフィラー含有フィルムで第1部品を第2部品に接続してなる接続構造体。
【請求項9】
導電フィルムもしくは異方性導電フィルムとして使用される請求項7記載のフィラー含有フィルムで第1電子部品を第2電子部品に導電接続もしくは異方性導電接続してなる接続構造体。
【請求項10】
請求項1記載のフィラー含有フィルムで第1部品を第2部品に接続する、接続構造体の製造方法。
【請求項11】
導電フィルムもしくは異方性導電フィルムとして使用される請求項7記載のフィラー含有フィルムで第1電子部品を第2電子部品に導電接続もしくは異方性導電接続する、接続構造体の製造方法。
【請求項12】
請求項1記載のフィラー含有フィルムで第1部品を第2部品に接続する接続方法であって、
第2部品に対し、フィラー含有フィルムをその第1絶縁層側から仮貼りし、仮貼りされたフィラー含有フィルムに対し、第1部品を搭載し、第1部品側から圧着する接続方法。
【請求項13】
導電フィルムもしくは異方性導電フィルムとして使用される請求項7記載のフィラー含有フィルムで第1電子部品を第2電子部品に導電接続もしくは異方性導電接続する接続方法であって、
第2電子部品に対し、フィラー含有フィルムをその第1絶縁層側から仮貼りし、仮貼りされたフィラー含有フィルムに対し、第1電子部品を搭載し、第1電子部品側から圧着する接続方法。
【請求項14】
第1絶縁層、中間層及び第2絶縁層が順次積層されたフィラー含有フィルムの製造に適した前駆体フィルムであって、
前駆体フィルムは、第1絶縁層と中間層とが積層された構造を有し、
第1絶縁層は、中間層側に第1凹部を有し、
中間層は、側壁部と底蓋部とを有する第2凹部を有し、第2凹部は第1絶縁層の該第1凹部に嵌まり込んでいる前駆体フィルム。
【請求項15】
中間層の第2凹部の底蓋部の厚さが、第2凹部の開口径の0.8倍以上1.5倍未満である前駆体フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィラー含有フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
フィラーが樹脂層に分散しているフィラー含有フィルムは、艶消しフィルム、コンデンサー用フィルム、光学フィルム、ラベル用フィルム、帯電防止用フィルム、導電フィルム、異方性導電フィルムなど多種多様の用途で使用されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4)。フィラー含有フィルムを物品に熱圧着して用いる場合、フィラー含有フィルムを形成している樹脂が熱圧着時に不要に流動することを抑制し、フィラーの偏在を抑制することが、光学的特性、機械的特性、又は電気的特性の点から望ましい。特に、フィラーとして導電粒子を含有させ、フィラー含有フィルムを電子部品の実装に供する導電フィルムや異方性導電フィルムとして使用する場合に、電子部品の高密度実装に対応できるように、絶縁性樹脂層に導電粒子を高密度に分散させると、電子部品の実装時の過度の樹脂流動により導電粒子が不要に移動して端子間に偏在し、ショートの発生要因となるので、このような導電粒子の不要な移動を抑制することが要請されている。
【0003】
このような要請に対し、接着剤層に、貫通孔が規則的配列で設けられた絶縁性フィルムを積層し、貫通孔に導電粒子を充填した後、別の接着剤層を積層して得られる異方性導電フィルムが提案されている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-15680号公報
【特許文献2】特開2015-138904号公報
【特許文献3】特開2013-103368号公報
【特許文献4】特開2014-183266号公報
【特許文献5】特開2018-174069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献5の異方性導電フィルムでは、異方性導電接続時に過度の樹脂流動が生じた場合には、絶縁性フィルムの貫通孔に充填された導電粒子が貫通孔の一対の開口のいずれかの開口から貫通孔の外へ不要に移動し、導電粒子の規則的な配列状態に乱れを生じさせ、異方性導電接続時の導通性が低下するという問題があった。同様な問題が、絶縁ベース層と粘着層との間に、貫通孔を有するコアフィルムが挟持され、貫通孔にフィラーが保持されているフィラー含有フィルムを介して二つの部材を圧着、例えば熱圧着等により接続する際にも生じることが懸念されている。
【0006】
本発明の目的は、以上の従来の技術の問題点を解決することであり、絶縁ベース層と粘着層との間に、フィラーを保持する貫通孔を有するコアフィルムが挟持されたフィラー含有フィルムを介して二つの部材を圧着、例えば熱圧着等により接続する際の問題を解決しようとするものであり、導電接続もしくは異方性導電接続などの圧着時に、導電粒子等のフィラーの不要な移動を抑制し、フィラーの規則的な配列状態に乱れを生じさせず、導電フィルムもしくは異方性導電フィルムとして利用した場合に導電接続時もしくは異方性導電接続時の導通性を低下させない新たな構成のフィラー含有フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、絶縁ベース層に相当する第1絶縁層と粘着層に相当する第2絶縁層との間に、コアフィルムに相当する中間層を挟持した構成を有するフィラー含有フィルムについて、中間層に貫通孔を設けることなく導電粒子を保持できるようにするために、第1絶縁層に第1凹部を設け、その第1凹部に嵌まり込むような第2凹部を中間層に設け、その第2凹部にフィラーを充填し保持すればよく、その場合に、フィラー含有フィルムを介して二つの部材を圧着、例えば熱圧着等により接続する際の問題が生じないようにするためには、中間層の第2凹部の底蓋部の厚さをフィラーとの関係で特定範囲に限定すればよいことを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明は、第1絶縁層、中間層及び第2絶縁層が順次積層されたフィラー含有フィルムであって、
第1絶縁層は、中間層側に第1凹部を有し、
中間層は、側壁部と底蓋部とを有する第2凹部を有し、第2凹部は第1絶縁層の該第1凹部に嵌まり込んでおり、
第2凹部にフィラーが保持されており、
中間層の第2凹部の底蓋部の厚さは、フィラーの平均粒子径の0.5倍以下であるフィラー含有フィルムを提供する。フィラーとして導電粒子を使用した場合には、このフィラー含有フィルムは、導電フィルムもしくは異方性導電フィルムとして使用できる。
【0009】
また、本発明は、前述のフィラー含有フィルムで第1部品を第2部品に接続してなる接続構造体、好ましくは、導電フィルムもしくは異方性導電フィルムとして使用されるこのフィラー含有フィルムで第1電子部品を第2電子部品に導電接続もしくは異方性導電接続してなる接続構造体を提供する。また、前述のフィラー含有フィルムで第1部品を第2部品に接続する、接続構造体の製造方法、好ましくは、導電フィルムもしくは異方性導電フィルムとして使用されるこのフィラー含有フィルムで第1電子部品を第2電子部品に導電接続もしくは異方性導電接続する、接続構造体の製造方法を提供する。
【0010】
更に、本発明は、前述のフィラー含有フィルムで第1部品を第2部品に接続する接続方法であって、第2部品に対し、フィラー含有フィルムをその第1絶縁層側から仮貼りし、仮貼りされたフィラー含有フィルムに対し、第1部品を搭載し、第1部品側から圧着する接続方法、好ましくは、導電フィルムもしくは異方性導電フィルムとして使用されるこのフィラー含有フィルムで第1電子部品を第2電子部品に導電接続もしくは異方性導電接続する接続方法であって、第2電子部品に対し、フィラー含有フィルムをその第1絶縁層側から仮貼りし、仮貼りされたフィラー含有フィルムに対し、第1電子部品を搭載し、第1電子部品側から圧着する接続方法を提供する。
【0011】
加えて、本発明は、前述のフィラー含有フィルムの製造に適した前駆体フィルムを提供する。この前駆体フィルムは、第1絶縁層と中間層とが積層された構造を有し、
第1絶縁層は、中間層側に第1凹部を有し、
中間層は、側壁部と底蓋部とを有する第2凹部を有し、第2凹部は第1絶縁層の該第1凹部に嵌まり込んでいる構造を有する。前駆体フィルムの中間層に設けられた第2凹部に、常法によりフィラーを充填することによりフィラー含有フィルムが得られる。
【発明の効果】
【0012】
第1絶縁層と第2絶縁層との間に中間層が挟持された構造を有する本発明のフィラー含有フィルムにおいては、第1絶縁層に第1凹部を設け、その第1凹部に嵌まり込むような第2凹部を中間層に設け、その第2凹部にフィラーを充填し保持している。これにより、中間層に貫通孔を設けることなくフィラーを保持可能となる。しかも、中間層の第2凹部の底蓋部の厚さを、第1絶縁層や第2絶縁層の厚さよりも薄い、フィラーの平均粒子径の0.5倍以下に限定している。このため、フィラー含有フィルムを介して二つの部材を圧着、例えば熱圧着等により接続する際の問題(即ち、過度の樹脂流動を十分に抑制することができず、フィラーの不要な移動を招き、フィラーの規則的な配列状態に乱れが生じ、導電フィルムもしくは異方性導電フィルムとして利用した場合に導電接続もしくは異方性導電接続時の導通性が低下するという問題)が生じないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】
図1Aは、本発明のフィラー含有フィルムの断面図である。
【
図2A】
図2Aは、本発明のフィラー含有フィルムの製造方法の説明図である。
【
図2B】
図2Bは、本発明のフィラー含有フィルムの製造方法の説明図である。
【
図2C】
図2Cは、本発明のフィラー含有フィルムの製造方法の説明図である。
【
図2D】
図2Dは、本発明のフィラー含有フィルムの製造方法の説明図である。
【
図2E】
図2Eは、本発明のフィラー含有フィルムの製造方法の説明図である。
【
図2F】
図2Fは、本発明のフィラー含有フィルムの製造方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のフィラー含有フィルムの一例について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、各図中、同一符号は、同一又は同等の構成要素を表している。
【0015】
<フィラー含有フィルムの全体構成>
図1Aは、本発明のフィラー含有フィルム10の断面図である。このフィラー含有フィルム10は、第1絶縁層1と中間層2と第2絶縁層3が順次積層された構造を有している。第1絶縁層1は、フィラー含有フィルム10の部分拡大断面図である
図1Bに示すように、中間層2側に第1凹部4を有している。また、中間層2は、側壁部5aと底蓋部5bとを有する第2凹部5を有する。この第2凹部5は、第1絶縁層1の第1凹部4に嵌まり込んだような状態となっており、換言すれば、第1絶縁層1の第1凹部4の内面を被覆するように設けられており、第2凹部5にフィラー6が保持されている。そして、中間層2の第2凹部5の底蓋部5bの厚さは、フィラー6の平均粒子径の0.5倍以下となっている。以下、フィラー含有フィルム10の構成要素毎に詳細に説明する。
【0016】
<第1絶縁層1>
本発明のフィラー含有フィルム10を構成する第1絶縁層1は、フィラー含有フィルム10を製造する際に、その上に中間層を形成するためのベースとなる層である。そのような第1絶縁層1は、単一の絶縁性樹脂層から構成されていてもよく、複数の絶縁性樹脂層の積層体から構成されていてもよい。また、第1絶縁層1は、粘着性を示すことが好ましい。
【0017】
(第1絶縁層を構成する樹脂組成物)
第1絶縁層1を構成する樹脂組成物は、フィラー含有フィルムの用途に応じて適宜選択され、例えば、熱可塑性樹脂組成物、高粘度粘着性樹脂組成物、あるいは硬化性樹脂組成物を挙げることができる。第1凹部を、プレス型を用いて形成する場合には、熱可塑性樹脂組成物が好ましい。また、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとする場合、従来の異方性導電フィルムの絶縁性樹脂層を形成する樹脂組成物と同様に、重合性化合物と重合開始剤から形成される硬化性樹脂組成物を使用することができる。この場合、重合開始剤としては熱重合開始剤を使用してもよく、光重合開始剤を使用してもよく、それらを併用してもよい。例えば、熱重合開始剤としてカチオン系重合開始剤、熱重合性化合物としてエポキシ樹脂を使用し、光重合開始剤として光ラジカル重合開始剤、光重合性化合物としてアクリレート化合物を使用する。熱重合開始剤として、熱アニオン重合開始剤を使用してもよい。熱アニオン重合開始剤としては、イミダゾール変性体を核としその表面をポリウレタンで被覆してなるマイクロカプセル型潜在性硬化剤を用いることが好ましい。
【0018】
(第1絶縁層1の最低溶融粘度)
第1絶縁層1の最低溶融粘度は、フィラー含有フィルム10を物品に圧着、例えば熱圧着する際の樹脂流動によるフィラー6の不要な移動を抑制し、適度な樹脂流動を導くために、50Pa・s以上であってもよく、好ましくは200Pa・s以上であり、好ましくは15000Pa・s以下、より好ましくは8000Pa・s以下である。ここで、最低溶融粘度を示す温度は、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上であり、好ましくは110℃以下、より好ましくは100℃以下である。最低溶融粘度は、一例として回転式レオメータ(TA Instruments社製)を用い、測定圧力5gで一定に保持し、直径8mmの測定プレートを使用して求めることができ、より具体的には、温度範囲30~200℃において、昇温速度10℃/分、測定周波数10Hz、前記測定プレートに対する荷重変動5gとすることにより求めることができる。なお、最低溶融粘度の調整は、溶融粘度調整剤としての微小固形物の種類や配合量、樹脂組成物の調整条件の変更などにより行うことができる。
【0019】
(第1絶縁層1の層厚)
第1絶縁層1の層厚は、中間層2とフィラー6とを安定的に保持する等のため、フィラー6の平均粒子径の好ましくは0.6倍以上、より好ましくは1.2倍以上、特に好ましくは1.5倍以上である。また、第1絶縁層1の層厚の上限については、使用方法によって変動するものであるが、フィルムの両面を挟持する場合には樹脂流動によりフィラー6の不要な移動を招かないように、フィラー6の平均粒子径の好ましくは10倍以下、より好ましくは5倍以下である。層厚は、公知のシックネスゲージや膜厚測定器により測定することができる。
【0020】
(第1絶縁層1の粘着力)
第1絶縁層1は、フィラー含有フィルムを圧着、例えば熱圧着する物品に対して、圧着前の仮圧着を可能とする粘着力を有していることが好ましい。粘着力は、JIS Z 0237に準じて測定することができ、また、JIS Z 3284-3又はASTM D 2979―01に準じてプローブ法によりタック力として測定することもできる。フィラー含有フィルム10を構成する第1絶縁層1のプローブ法によるタック力は、例えば、プローブの押し付け速度を30mm/min、加圧力を196.25gf、加圧時間を1.0sec、引き剥がし速度を120mm/min、測定温度23℃±5℃で計測したときに、好ましくは1.0kPa(0.1N/cm2)以上、より好ましくは1.5kPa(0.15N/cm2)以上、特に好ましくは3.0kPa(0.3N/cm2)以上である。
【0021】
また、フィラー含有フィルムの粘着力は、特開2017-48358号公報に記載の接着強度試験に準じて求めることもできる。この接着強度試験において、例えば、2枚のガラス板でフィラー含有フィルム10を挟み、一方のガラス板を固定し、他方のガラス板を引き剥がし速度10mm/min、試験温度50℃で引き剥がしていく場合に、固定するガラス板とフィラー含有フィルムとの接着状態を強めておくことで、引き剥がしていくガラス板と、そのガラス板と貼り合わさっているフィラー含有フィルムの面との粘着力を測定することが可能となる。こうして測定される接着強度(粘着力)を、好ましくは1N/cm2(10kPa)以上、より好ましくは10N/cm2(100kPa)以上とすることができる。これは、フィラー含有フィルム10の引き剥がされる方向に存在する面と、引き剥がす物品間の粘着力になる。
【0022】
この他、フィラー含有フィルムの粘着力は、試験片の一端を揃えて接着し(貼り合わせ)、他端を引き上げることにより試験片を剥離させる試験により求めることもできる。この試験方法により計測される粘着力が、上記の接着強度試験と同等(1N/cm2(10kPa)以上)の結果となってもよい。上述の接着強度試験による粘着力が十分に大きければ(例えば10N/cm2(100kPa)以上)、この試験方法での粘着力は上述の接着強度試験による粘着力の10%以上であればよい。
【0023】
このような粘着力は、第1絶縁層1を構成する樹脂組成を適宜調整し、また、後述するフィラー含有フィルムの製造方法によって、フィラー含有フィルムの外表面をなす第1絶縁層1の平滑性を向上させることにより、調整することができる。
【0024】
(第1絶縁層1に設けられている第1凹部4)
本発明において、第1絶縁層1は、中間層2側に第1凹部4が設けられている。この第第1凹部4は、中間層2に形成される第2凹部5を受け入れ支持するものであり、第2凹部5に保持されたフィラー6を間接的に保持する機能を有する。第1凹部4が設けられていない第1絶縁層1の表面は、フィラー含有フィルム10の他部材に対する良好な密着性を担保するために、平坦であることが好ましい。
【0025】
第1凹部4は、第2凹部5に保持されたフィラー6を間接的に且つ確実に保持できるように、好ましくは円筒形状、タンブラー形状、あるいはカップ形状の孔である。第1凹部4は、フィラー不動性のために好ましくは開口部から底部へ向かって孔径が同じであるが、底部に向かって孔径が小さくなるようなテーパを有していてもよい。
【0026】
第1凹部4は、第1絶縁層1にランダムに配置していてもよいが、フィラーの捕捉安定性(例えば、フィラー含有フィルムが導電フィルムである場合、電極における粒子捕捉安定性)のために、規則配列パターンで設けることが好ましい。第1凹部4の配置パターンがフィラー含有フィルム10における中間層2の第2凹部5だけでなく、フィラー6の存在パターンと実質的に同義となる。規則パターンの例としては、正方格子、長方格子、斜方格子等の格子配置を挙げることができる。異なる形状の格子が、複数組み合わさったものでもよい。第1凹部4が所定間隔で直線状に並んだ第1凹部列を所定の間隔で並列させてもよい。第1凹部4が密に配置されている領域と疎に配置されている領域が規則的に繰り返されていてもよい。フィラー含有フィルム10を導電フィルムもしくは異方性導電フィルムとする場合には、第1凹部4を互いに離隔した規則的な配置とすることが、端子における捕捉安定性とショート抑制の両立のためにより好ましい。なお、第1凹部4が規則的な配置をしているか否かは、例えばフィルムの長手方向(フィラー含有フィルムを巻装体にした場合の巻取り方向)に第1凹部もしくはフィラーの所定の配置が繰り返されているか否かを観察することで判別することができる。
【0027】
なお、第1凹部4同士の中心間距離や個数密度は、第1凹部4に嵌まり込む第2凹部5同士の中心間距離や個数密度と同じであり、また、第1凹部4の深さ(
図1Bの第1凹部深さh)やその開口径(第2凹部底蓋外径d)は、
図1Bに示されている第2凹部5の形状に依存している。これらの点については、第2凹部5に関連して後述する。
【0028】
<中間層2>
本発明のフィラー含有フィルム10を構成する中間層2は、フィラー6を保持するための第2凹部5を有し、第1絶縁層1や第2絶縁層3の樹脂流動によるフィラー6の意図しない移動を抑制するための層であり、スペーサーシートとしての機能を有する。このような中間層3は、単一の絶縁性樹脂層から構成されていてもよく、複数の絶縁性樹脂層の積層体から構成されていてもよい。
【0029】
(中間層2を構成する樹脂組成物)
中間層2を構成する樹脂組成物は、フィラー含有フィルム10の用途に応じて適宜選択され、例えば、フェノキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリアセタール、ポイカーボネイト、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニルなどの熱可塑性樹脂組成物、高粘度粘着性樹脂組成物、あるいはエポキシ、アクリルなど硬化性樹脂組成物又はこれらの混合物を挙げることができる。第2凹部をプレス型を用いて形成する場合には、熱可塑性樹脂組成物が好ましい。
【0030】
(中間層2の溶融粘度)
中間層2の溶融粘度は、フィラー含有フィルム10を物品に圧着、例えば熱圧着する際の樹脂流動によるフィラー6の不要な移動を抑制するために、圧着時の温度領域において第1接続層の粘度の最低溶融粘度の好ましくは1.1倍以上、より好ましくは1.2倍以上である。溶融粘度は、一例として回転式レオメータ(TA Instruments社製)を用い、測定圧力5gで一定に保持し、直径8mmの測定プレートを使用して求めることができ、より具体的には、温度範囲30~250℃において、昇温速度10℃/分、測定周波数10Hz、前記測定プレートに対する荷重変動5gとすることにより求めることができる。なお、溶融粘度の調整は、溶融粘度調整剤として微小固形物の種類や配合量、樹脂組成物の調整条件の変更などにより行うことができる。
【0031】
(中間層2の層厚)
中間層2の厚さ(
図1Bの中間層厚a)は、フィラー6を安定的に保持する等のため、フィラー6の平均粒子径の0.6倍以上であってよく、好ましくは1.2倍以上、より好ましくは1.5倍以上である。また、中間層厚aの上限については、使用方法によって変動するものであるが、フィルムの両面を挟持する場合には樹脂流動によりフィラー6の不要な移動を招かないように、フィラー6の平均粒子径の好ましくは10倍以下、より好ましくは5倍以下である。層厚は、公知のシックネスゲージや膜厚測定器により測定することができる。なお、フィラーの平均粒子径は、平面画像又は断面画像から求めることができる。また、フィラー含有フィルムに含有させる前の原料粒子としてのフィラーの平均粒子径は、湿式フロー式粒子径・形状分析装置FPIA-3000(マルバーン・パナリティカル社)を用いて求めることもできる。なお、フィラーに絶縁性微粒子等の微粒子が付着している場合には、微粒子を含めない径を粒子径とする。
【0032】
(中間層2に設けられている第2凹部5)
中間層2には、フィラー6を充填し保持するための第2凹部5が設けられている。第2凹部5は、第2絶縁層3側に開口している。第2凹部5は、フィラー6を確実に保持できるように、好ましくは円筒形状、タンブラー形状、あるいはカップ形状の孔である。開口形状は円形に限定されず、矩形や菱形であってもよい。また、カップ状の第2凹部5だけが第1絶縁層1に埋め込まれている態様であってもよいが、この態様の場合には、前述の中間層厚aは0となる。収容されるフィラーから目的に合わせて選択できる。なお、第1凹部4は、フィラー不動性のために好ましくは開口部から底部へ向かって孔径が同じであるが、第2凹部5の形状に応じて底部に向かって孔径が小さくなるようなテーパを有していてもよい。このようなテーパを有することで、フィラーの保持性が高まる。
【0033】
このような第2凹部5は、中間層2にランダム配置パターンで設けてもよいが、フィラーの捕捉安定性のために、規則配置パターンで設けることが好ましい。第2凹部5の配置パターンがフィラー含有フィルム10におけるフィラー6の存在パターンと実質的に同義となる。規則配置パターンの例としては、正方格子、長方格子、斜方格子等の格子配列を挙げることができる。異なる形状の格子が、複数組み合わさったものでもよい。第2凹部5が所定間隔で直線状に並んだ第2凹部列を所定の間隔で並列させてもよい。第2凹部5が密に配置されている領域と疎に配置されている領域が規則的に繰り返されていてもよい。フィラー含有フィルム10を異方性導電フィルムとする場合には、第2凹部5を互いに離隔した規則的な配列とすることが、端子における捕捉安定性とショート抑制の両立のためにより好ましい。なお、第2凹部5が規則的な配置をしているか否かは、例えばフィルムの長手方向(フィラー含有フィルムを巻装体にした場合の巻取り方向)に第2凹部5もしくはフィラー6の所定の配置が繰り返されているか否かを観察することで判別することができる。
【0034】
第2凹部5同士の距離は接続する物品や用途に応じて定めることができ、第1凹部4の個数密度は、通常10個/mm2以上であればよく、30個/mm2以上が好ましく、上限は500000個/mm2以下であればよく、250000個/mm2以下であることが好ましく、100000個/mm2以下がより好ましい。個数密度は、顕微鏡観察によりフィルム面視野を測定して求めることができる。顕微鏡観察の際の観察面積は、2mm2以上、好ましくは10mm2以上であることが好ましい。
【0035】
第2凹部5(即ちフィラー6)の個数密度は、金属顕微鏡を用いて観察して求める他、画像解析ソフト(例えば、WinROOF(三谷商事株式会社)や、A像くん(登録商標)(旭化成エンジニアリング株式会社)等)により観察画像を計測して求めてもよい。観察方法や計測手法は、上記に限定されるものではない。
【0036】
本発明では、第1凹部及び第2凹部のサイズがそれぞれ統一されていることで、発明の効果をより顕著に奏することができる。そのためには、第1凹部及び第2凹部のそれぞれの開口部の大きさおよび深さが、以下の条件を満たすことが望ましい。即ち、フィラー含有フィルムにおいて、観察面積の合計が1mm2以上、好ましくは2mm2以上において、凹部の個数が1000個以上(好ましくは2000個以上)である領域に含まれる凹部の全数の95%以上、好ましくは98%以上、より好ましくは99.5%以上のものが開口部の大きさ及び深さが一致していることが望ましい。ここで、「開口部の大きさ及び深さが一致している」の「一致している」とは、ある第1凹部及び第2凹部のそれぞれの開口部の大きさ及び深さが、計測誤差を考慮し、それぞれ所定の領域に含まれる凹部の開口部の平均の大きさおよび平均の深さの±15%以内、好ましくは±10%以内、より好ましくは±5%以内の範囲内に収まっていることを意味する。なお、開口部の大きさは、開口部の形状が異なるものが存在するため、開口部の面積を円に換算した場合の直径としてもよい。
【0037】
このような第2凹部5の形状は、好ましくは
図1Bに示すように、中間層厚a、第2凹部開口径b、第2凹部底蓋径c、第2凹部底蓋外径d、第2凹部深さe、第2凹部底蓋厚f、第2凹部側壁厚gで特定することができる。本発明のフィラー含有フィルム10においては、第2凹部底蓋厚fが問題になる。これは、第2凹部底蓋厚fが過度に厚くなると、フィラーの不要な移動は抑制できる反面、第1部品と第2部品との接続時にフィラー下部の中間層を排除し難くなり、良好な接続状態を得られにくくなることが懸念されるからである。
【0038】
このため、第2凹部底蓋厚fは、フィラー6の平均粒子径の0.5倍以下、好ましくは0.4倍以下である。ここで、第2凹部底蓋厚fの上限を、フィラー6の平均粒子径を指標として規定した理由は、導通接続の為にフィラーが中間層を貫通する必要がある為であり、例えば小さいフィラーを使用した場合、第2凹部底蓋厚fは薄い必要があるが、粒子が大きくなると小粒子径のフィラーを使用した際より第2凹部底蓋厚fを厚くでき、フィラーの不動性をより制御することができる。
【0039】
なお、第2凹部底蓋厚fが過度に薄くなると(最終的に厚さが0になる(換言すれば、第2凹部5が中間層2の貫通孔となってしまうと))、フィラー含有フィルム10を用いて第1部品と第2部品とを圧着、例えば熱圧着等により接続する際(例えば異方性導電接続時)に、中間層の貫通孔の上下の開口から樹脂が中間層の外側へ流動し易くなり、その結果、貫通孔に保持されていたフィラーの不要な移動を招き、フィラーの規則的な配列状態に乱れが生じることが懸念され、特に、フィラー含有フィルムを導電性フィルムや異方性導電フィルムとして使用した場合には、接続時の導通性の低下が懸念される。従って、第2凹部底蓋厚fは、電子顕微鏡(SEM)で観察できる厚みであればよく、好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上である。
【0040】
第2凹部底蓋厚fのコントロールは、中間層厚aにより調整できるが、より詳細にコントロールしたい場合は、中間層樹脂組成物を有機溶剤により溶解させ凸型の型に塗工したものを第2絶縁層に押し付け転写するなどの方法で中間層の形成をするなどし、この時の塗工条件を任意に調整することにより行うこともできる。
【0041】
また、第2凹部5の側壁部5aの厚さ(
図1Bの第2凹部側壁厚g)は、薄くなりすぎると中間層2の破れによるフィラー不動性の低下が懸念されるので、好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上であり、フィラー6の平均粒子径の好ましくは0.5倍以下、より好ましくは0.4倍以下である。この第2凹部側壁厚gのコントロールは、底蓋部と同様の方法のほかに凸型のテーパなどでも行うことができる。
【0042】
また、中間層2に設けられている第2凹部5の深さ(
図1Bの第2凹部深さe)は、フィラーを保持し易くする観点から、フィラー6の平均粒子径の好ましくは0.2倍以上であり、より好ましくは0.5倍よりも大きいものである。結果的に、第2凹部底蓋厚fよりも大きくなる。なお、一つの凹で一つのフィラー6を収容し且つ保持するという観点から、第2凹部5の深さは、フィラー6の平均粒子径の好ましくは2倍以下、より好ましくは1.3倍以下である。
【0043】
なお、第2凹部5の第2凹部深さeと第2凹部底蓋厚fとを合算した厚さ(e+f)に対する第1凹部4の第1凹部深さhの割合は、第2凹部5の形状安定性の点から壁の厚みを確保し、中間層2の剥離を防止する観点から、好ましくは55%以上、より好ましくは60%以上、好ましくは95%以下、より好ましくは90%以下、更に好ましくは80%以下である。
【0044】
第2凹部5の第2凹部開口径bは、後述するフィラー6の大きさ等によっても異なるが、フィラーを保持し易くする観点から、フィラー6の平均粒子径の好ましくは1.0倍以上、より好ましくは1.2倍以上である。フィラーを収容し易くする観点から、上限はフィラー6の平均粒子径の好ましくは3.0倍以下であってもよく、より好ましくは2.0倍以下、特に好ましくは1.5倍以下である。
【0045】
第2凹部5の第2凹部底蓋径cは、フィラーの収容性を確保するためには第2凹部開口径bと同じか、大きいことが好ましく、フィラーの不動性を確保するためには、第2凹部開口径bより小さくともよい。いずれもフィラー径の0.8倍以上であることが好ましく、1.0倍以上であることがより好ましい。フィラー径よりも大きすぎる場合には、収容性か不動性のいずれかが条件を満たさなくなる虞があるので、フィラー径の2倍未満であることが好ましく、1.5倍未満であることがより好ましい。
【0046】
第2凹部5へのフィラー充填率は、{(フィラー個数/凹部個数)×100(%)}として求めることができる。これは、下記の個数密度と同様にフィルム面視野の観測により求めることができる。フィラー充填率は、95%以上であればよく、98%以上が好ましく、99.5%以上であることがより好ましい。第2凹部5に充填されていない残存フィラー(残存率)が少ない(ゼロに近しい)ことが望ましいが、実用上、第2凹部5個数に対して2%未満、好ましくは1%未満、より好ましくは0.5%未満の残存率であってもよい。残存率をゼロに近づけるように排除作業を行うと、フィルム表面への欠損の理由となりかねないためである。
【0047】
<第2絶縁層3>
本発明のフィラー含有フィルム10を構成する第2絶縁層3は、フィラー含有フィルム10を用いて物品に仮圧着するための層である。そのような第2絶縁層3は、単一の絶縁性樹脂層から構成されていてもよく、複数の絶縁性樹脂層の積層体から構成されていてもよい。
【0048】
(第2絶縁層3を構成する樹脂組成物)
第2絶縁層3を構成する樹脂組成物は、第1絶縁層1と同様に、フィラー含有フィルムの用途に応じて適宜選択され、例えば、熱可塑性樹脂組成物、高粘度粘着性樹脂組成物、あるいは硬化性樹脂組成物を挙げることができる。例えば、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとする場合、従来の異方性導電フィルムの粘着層を形成する樹脂組成物と同様に、重合性化合物と重合開始剤から形成される硬化性樹脂組成物を使用することができる。この場合、重合開始剤としては熱重合開始剤を使用してもよく、光重合開始剤を使用してもよく、それらを併用してもよい。例えば、熱重合開始剤としてカチオン系重合開始剤、熱重合性化合物としてエポキシ樹脂を使用し、光重合開始剤として光ラジカル重合開始剤、光重合性化合物としてアクリレート化合物を使用する。熱重合開始剤として、熱アニオン重合開始剤を使用してもよい。熱アニオン重合開始剤としては、イミダゾール変性体を核としその表面をポリウレタンで被覆してなるマイクロカプセル型潜在性硬化剤を用いることが好ましい。
【0049】
(第2絶縁層3の最低溶融粘度)
第2絶縁層3の最低溶融粘度は、上述の第1絶縁層と同じであってもよい。第1絶縁層よりも、意図的に低く設定することも、高く設定することもできる。第1絶縁層と第2絶縁層の最低溶融粘度(および厚み)を調整することで、フィラー含有フィルム10を物品に圧着、例えば熱圧着する際の樹脂流動の制御を精緻に行うことができ、種々の用途への応用が期待できる。異方性導電接続に用いる場合には、フィラー(即ち、導電粒子)の不要な移動の抑制をより精緻に行うことができる。
【0050】
(第2絶縁層3の層厚)
第2絶縁層3の層厚は、上述の第1絶縁層と同じであってもよい。第1絶縁層よりも、意図的に低く設定することも、高く設定することもできる。具体的には、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上である。貼り付けに用いる場合には、薄くすることが好ましい。充填させるために、20μm以上としてもよい。厚すぎると巻装体とした場合に樹脂のはみ出しが懸念されることから、50μm以下であることが好ましい。このように、上限は、目的に合わせて適宜設定することができる。
【0051】
(第2絶縁層3の粘着力)
第2絶縁層3は、フィラー含有フィルムを圧着、例えば熱圧着する物品に対して、仮貼りを可能とする粘着力を有していることが好ましい(物品に貼着可能な粘着力があればよい)。このような第2絶縁層3の粘着力は、第1絶縁層1の粘着力と同じであってもよく、第1絶縁層1の粘着力より強くてもよく、逆に弱くてもよい。物品に貼り付ける面が第1絶縁層1であるか第2絶縁層3であるか、また載置する物品に対して必要な粘着力はどの程度であるか、という観点等から、第2絶縁層3の粘着力と第1絶縁層1の粘着力とをそれぞれ最適化すればよい。
【0052】
このような粘着力は、第2絶縁層3を構成する樹脂組成を適宜調整し、また、後述するフィラー含有フィルムの製造方法によって、フィラー含有フィルムの外表面をなす第2絶縁層3の平滑性を向上させることにより、調整することができる。
【0053】
<フィラー6>
本発明においてフィラー6としては、フィラー含有フィルムの用途に応じて、公知の無機系フィラー(金属粒子、金属酸化物粒子、金属窒化物粒子など)、有機系フィラー(樹脂粒子、ゴム粒子など)、有機系材料と無機系材料が混在したフィラー(例えば、コアが樹脂材料で形成され、表面が金属メッキされている粒子(金属被覆樹脂粒子)、導電粒子の表面に絶縁性微粒子を付着させたもの、導電粒子の表面を絶縁処理したもの等)から、硬さ、光学的性能などの用途に求められる性能に応じて適宜選択される。例えば、光学フィルムや艶消しフィルムでは、シリカフィラー、酸化チタンフィラー、スチレンフィラー、アクリルフィラー、メラミンフィラーや種々のチタン酸塩等を使用することができる。コンデンサー用フィルムでは、酸化チタン、チタン酸マグネシウム、チタン酸亜鉛、チタン酸ビスマス、酸化ランタン、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛及びこれらの混合物等を使用することができる。接着フィルムではポリマー系のゴム粒子、シリコーンゴム粒子等を含有させることができる。導電フィルムや異方性導電フィルムでは導電粒子を含有させる。導電粒子としては、ニッケル、コバルト、銀、銅、金、パラジウムなどの金属粒子、ハンダなどの合金粒子、金属被覆樹脂粒子、表面に絶縁性微粒子が付着している金属被覆樹脂粒子などが挙げられる。2種以上を併用することもできる。中でも、金属被覆樹脂粒子が、接続された後に樹脂粒子が反発することで端子との接触が維持され易くなり、導通性能が安定する点から好ましい。また、導電粒子の表面には公知の技術によって、導通特性に支障を来さない絶縁処理が施されていてもよい。
【0054】
(フィラー6の平均粒子径)
本発明においてフィラー6の平均粒子径はフィラー含有フィルムの用途に応じて定めることができる。例えば、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとして使用する場合、フィラー含有フィルムの製造時のフィラーの押込精度を向上させるため、好ましくは1μm以上、より好ましくは2.5μm以上である。また、フィラー含有フィルムの製造時のフィラーの位置ずれの影響を抑制するため、好ましくは200μm以下、より好ましくは50μm以下である。フィラーの平均粒子径は、平面画像又は断面画像から求めることができる。また、フィラー含有フィルムに含有させる前の原料粒子としてのフィラーの平均粒子径は湿式フロー式粒子径・形状分析装置FPIA-3000(マルバーン・パナリティカル社)を用いて求めることができる。なお、フィラーに絶縁性微粒子等の微粒子が付着している場合には、微粒子を含めない径を粒子径とする。
【0055】
フィラー含有フィルム10におけるフィラー6の平均粒子径のバラツキについては、CV値(標準偏差/平均)を20%以下とすることが好ましい。これによりフィラー含有フィルムの物品への圧着時にフィラー含有フィルムが均等に押圧され易くなり、押圧力が局所的に集中することを防止できる。したがって、フィラー含有フィルムを導電フィルムもしくは異方性導電フィルムとして構成する場合には、接続の安定性が向上し、また接続後には圧痕やフィラーの挟持状態の観察による接続状態の評価を精確に行うことができる。具体的には、導電フィルムもしくは異方性導電フィルムを用いて電子部品同士を導電接続もしくは異方性導電接続した後の検査において、端子サイズが比較的大きいもの(FOBなど)でも、比較的小さいもの(COGなど)でも圧痕や導電粒子の挟持状態の観察による接続状態の確認を精確に行うことができる。従って、導電接続もしくは異方性導電接続後の検査が容易になり、接続工程の生産性を向上させることが期待できる。
【0056】
一方、フィラー含有フィルムをフィルム厚方向に切った断面図では(
図1A)、フィルム厚方向の各フィラーの頂点が、中間層2と第2絶縁層3との界面に平行な面に面一に揃っていることが好ましい。これにより、フィラー含有フィルムを物品に均一に圧着させることが容易となる。
【0057】
<フィラー含有フィルムの製造方法>
本発明のフィラー含有フィルムは、例えば、以下のようにフィラー含有フィルムの前駆体フィルム(
図2D参照)を製造し、得られた前駆体フィルムの中間層の凹部にフィラーを常法により充填することで製造することができる。この前駆体フィルムも本発明の一態様である。
【0058】
<フィラー含有フィルムの前駆体フィルムの製造例>
1.凸状の型を作製し、その型に中間層形成用樹脂組成物を塗布し乾燥させて中間層を形成し、形成された中間層に第1絶縁層フィルムを圧着し、あるいは第1絶縁層形成用組成物を塗布し乾燥させた後、型から剥離することによりフィラー含有フィルムの前駆体フィルムを得ることができる。
2.中間層形成用樹脂組成物を平板に塗布し、凸状の型を押し付け、乾燥させて中間層を形成し、形成された中間層に第1絶縁層フィルムを貼り付けた後に、型から剥離することにより、フィラー含有フィルムの前駆体フィルムを得ることができる。
3.中間層形成用樹脂組成物を平板に塗布し乾燥させて中間層を形成し、形成された中間層に対して凸状の型を中間層の溶融条件下で押圧し、第1絶縁層フィルムを貼り付けた後、型から剥離することにより、フィラー含有フィルムの前駆体フィルムを得ることができる。
【0059】
上述したように得られる前駆体フィルムは、第1絶縁層、中間層及び第2絶縁層が順次積層されたフィラー含有フィルムの製造に適したものであり、本発明の一態様である。
【0060】
この前駆体フィルムは、第1絶縁層と中間層とが積層された構造を有し、
第1絶縁層は、中間層側に第1凹部を有し、
中間層は、側壁部と底蓋部とを有する第2凹部を有し、第2凹部は第1絶縁層の該第1凹部に嵌まり込んでいる構造を有する。
【0061】
この前駆体を構成する第1絶縁層、第1凹部、中間層及び第2凹部については、本発明のフィラー含有フィルムで説明したとおりであり、特に、第2凹部の底蓋部の厚さは、第2凹部の開口径の0.8倍以上1.5倍未満であることが、フィラーを充填するためには好ましい。
【0062】
本発明のフィラー含有フィルムの具体的な製造例を
図2A~
図2Fに示すが、この製造方法に限定されない。以下、図面を参照しながら説明する。
【0063】
まず、
図2Aに示すように、剥離フィルムRF上に第1絶縁層21を形成する。第1絶縁層の形成は、例えば、剥離フィルムRFに第1絶縁層形成用組成物を常法により塗布し、乾燥することにより行うことができる。
【0064】
次に、
図2Bに示すように、第1絶縁層21の上に、中間層22を形成する。これにより、剥離フィルムRF/第1絶縁層21/中間層22からなる積層体が得られる。中間層22の形成は、例えば、第1絶縁層21に中間層形成用組成物を塗布し、乾燥することにより行うことができる。
【0065】
次に、
図2Cに示すように、ステンレス等の金属平板MB上に、得られた積層体を剥離フィルムRF側から載置し、別途作成した、第2凹部に対応した凸部を有するプレス型PMでプレスする。
【0066】
その後、プレス型PMを取り除くと、
図2Dに示すように、第1絶縁層21には第1凹部24が形成され、中間層22には、側壁部25aと底蓋部25bとを有する第2凹部25が形成される。
【0067】
次に、
図2Eに示すように、積層体の中間層22の第2凹部25にフィラー26を充填する。第2凹部25へのフィラー26の充填は、例えば、中間層22の表面にフィラー26を散布し、スキージングすることにより行うことができる。
【0068】
次に、
図2Fに示すように、第2凹部25にフィラー26を保持している中間層22上に第2絶縁層23を形成することにより本発明のフィラー含有フィルム20を製造することができる。中間層22上における第2絶縁層23の形成は、中間層22に第2絶縁層形成用組成物を塗布し、乾燥することにより行うことができる。
【0069】
<フィラー含有フィルムの使用方法>
本発明のフィラー含有フィルムは、従前のフィラー含有フィルムと同様に物品に貼り合わせて使用することができ、貼り合わせる物品に特に制限はない。したがって、フィラー含有フィルムを介して第1部品と第2部品とが接続されている接続構造体、第1部品と第2部品との間にフィラー含有フィルムを配置し、接続することにより接続構造体を製造する方法も本発明の一部である。例えば、フィラー含有フィルムを導電フィルムもしくは異方性導電フィルムとして構成する場合、圧着ツール、例えば熱圧着ツールを用いて導電フィルムもしくは異方性導電フィルムを、PN接続を利用した半導体素子(太陽電池等の発電素子、CCD等の撮像素子、発光素子、ペルチェ素子)、その他各種半導体素子、ICチップ、ICモジュール、FPCなどの第1電子部品と、FPC、ガラス基板、プラスチック基板、リジッド基板、セラミック基板などの第2電子部品との導電接続もしくは異方性導電接続に使用することができ、またこのフィラー含有フィルムを導電接続や異方性導電接続以外の用途で電子部品に用いることもできる。なお、フィラー含有フィルムを貼り合わせる物品の面は、平滑でもよく、段部や凸形状を有していてもよい。
【0070】
導電フィルムもしくは異方性導電フィルムで接続する第1電子部品及び第2電子部品の形状、大きさ、用途等に特に制限はない。これらの電子部品が小型で端子サイズが狭小化していてもよく、電子部品の搭載に高精度のアライメントが必要とされてもよい。例えば、バンプ面積が数十μm2~数千μm2の極小化された電子部品(例えばミニLEDやマイクロLEDなど)も接続対象とすることができる。一方、外形サイズの大きな電子部品の実装を、導電フィルムもしくは異方性導電フィルムを用いて行うこともできる。また、実装した電子部品を分割することにより小片化して使用してもよい。また、大型TVなどに用いる場合は、フィラー含有フィルムを1辺に1m以上、例えば4.5m以上貼着することもある。この場合、フィラー含有フィルムを導電フィルムもしくは異方性導電フィルムとして使用する以外に、フィラーをスペーサーとしたスペーサーフィルム等として使用してもよい。
【0071】
本発明の導電フィルムもしくは異方性導電フィルムを用いてICチップやウェーハーをスタックして多層化してもよい。なお、本発明の導電フィルムもしくは異方性導電フィルムで接続する電子部品は、上述の電子部品の例示に限定されるものではない。近年、多様化している種々の電子部品に使用することができる。本発明は種々の物品に特に本発明のフィラー含有フィルムを貼り合わせたフィルム貼着体を包含し、特に、第1電子部品と第2電子部品を、導電フィルムもしくは異方性導電フィルムを介して接続した接続構造体を包含する。
【0072】
フィラー含有フィルムを物品に貼り合わせる方法は、フィラー含有フィルムの用途に応じて圧着、好ましくは熱圧着とすることができ、あるいは貼り合わせ時に光照射を利用してもよい。光照射を利用する一例としては、特開2022-151816号公報に記載されているレーザーリフトオフ法に従ってフィラー含有フィルムを個片化し、更に転写させることが挙げられる。レーザーリフトオフ法に適したフィラー含有フィルムとするために使用すべき樹脂材料や粘着材料としては、特開2022-151816号公報に記載されているもの中から選択して使用することができる。
【0073】
フィラー含有フィルムを導電フィルムもしくは異方性導電フィルムとして構成する場合のより具体的な使用方法としては、例えば、第1電子部品がICチップ、第2電子部品が基板の場合に、一般的には第1電子部品を加圧ツール側、第2電子部品を第1の電子部品と対向するステージに載置し、第2電子部品に予め導電フィルムもしくは異方性導電フィルムを貼着させ、加圧ツールを用いて第1電子部品と第2電子部品の圧着、例えば熱圧着を行う。この場合、第2電子部品ではなく第1電子部品に予め導電フィルムもしくは異方性導電フィルムを貼着してもよく、また第1電子部品はICチップに限定されない。
【0074】
第1電子部品と第2電子部品を圧着、例えば熱圧着により接続するにあたり、必要に応じて、圧着前に予め導電粒子周辺の樹脂を排除して仮圧着を行ってもよい。これにより、異方性導電フィルムを電子物品に圧着する際に生じる樹脂流動の影響を低減させ、導電粒子の不要な流動を抑制することができる。具体的には、接続する一方の電子部品を導電フィルムもしくは異方性導電フィルムの一方の面に貼着し、もう一方の電子部品を導電フィルムもしくは異方性導電フィルムの他方の面に仮圧着を行う際に電子部品を加圧ツールで押圧し、電子部品間の樹脂を部分的に排除し、次いで本圧着として押圧、例えば熱押圧することにより電子部品同士を接続する(以下、本圧着時の押圧だけでなく仮圧着時の押圧を行う接続方法を2段階押し込みによる接続という)。WO2016/143789には、導電粒子がランダムに分散している異方性導電フィルムを用いて2段階押し込みによる接続を行うことが記載されているが、本発明のように導電粒子が規則的に配列している異方性導電フィルムで電子部品同士を接続する場合にこのような2段階押し込みによる接続を行うと、圧着時、例えば熱圧着時の導電粒子の不要な流動を大きく低減させることが可能となる。
【0075】
なお、前述した
図2Dに示されるようなフィラー含有フィルムの前駆体フィルムは、フィラー含有フィルムの製造に最適なものであるが、それ自体を他の光学フィルムや電子部品等へ積層することにより、それらの機械的特性(例えば弾性率、耐擦過特性)や光学特性(例えば、光反射・屈折率、光透過性)等を調整する材料として有用である。
【実施例0076】
以下、本発明を具体的に説明する。
【0077】
実施例1~6、比較例1~2
以下の表1に示した配合で第1絶縁層形成用の樹脂組成物及び第2絶縁層形成用の樹脂組成物をそれぞれ調製し、これらの樹脂組成物を用いて特許第6187665号の実施例3と同様にして、それぞれ第1絶縁層フィルム及び第2絶縁層フィルムを得た。また、中間層フィルムは表1の樹脂組成物の塗布液(固形分20%に希釈)を調整後、特許第6187665号の段落0111記載の金型と略同様の型を透明性ポリカーボネート系ペレットを用いて作製し、これに中間層フィルム塗布液を塗布後、60℃の乾燥器内に5分放置して乾燥することで得た。
【0078】
得られた中間層フィルム上に第1絶縁層フィルムを貼り付けた後、型から剥離してフィラー含有フィルムの前駆体フィルムを作成した。
【0079】
導電粒子として、金属被覆樹脂粒子(積水化学工業(株)、ミクロパール、平均粒子径3.2μmまたは4.0μm)を用意した。中間層フィルムと第1絶縁層フィルムを積層した後に、前駆体フィルムの中間層の凹部に導電粒子を充填し、その上に第2絶縁層フィルムを積層することによりフィラー含有フィルムを作成した。フィルムの積層や導電粒子の充填は、特許第6187665号と略同様に行った。このようにして、フィラー含有フィルムとして、実施例1~6、比較例1~2の異方性導電フィルムを作製した。導電粒子の個数密度は28000個/mm2であった。
【0080】
【0081】
<評価>
作製した実施例、比較例及び参考例の異方性導電フィルムに対し、フィラーの不動性と、導通性とを以下のように試験評価した。得られた結果を表2に示す。
【0082】
(不動性)
フィラーの不動性を評価するために、粒子捕捉性を評価した。具体的には、各実施例及び比較例の異方性導電フィルムを、粒子捕捉性の評価用ICと、端子(バンプ)パターンが対応するガラス基板(ITO配線)との間に、アライメントを6μmずらして挟み込み、加熱加圧(180℃、60MPa、5秒)して評価用の接続構造体を作成した。この接続構造体において、評価用ICのバンプとガラス基板の端子とが重なる、6μm×66.6μmの領域の100個について導電粒子の捕捉数を計測し、最低捕捉数を求め、以下の粒子捕捉性評価基準に従って評価した。得られた結果を表2に示す。実用上、A又はB評価であることが望まれる。
【0083】
粒子捕捉性の評価用IC
外形: 1.6×29.8mm
厚み: 0.3mm
バンプ仕様: 幅12μm×長66.6μm、バンプ間距離22μm(L/S=12μm/10μm)、バンプ高さ12μm
【0084】
粒子捕捉性評価基準
ランク 基準
A: 最低捕捉数が5個以上
B: 最低捕捉数が3個以上5個未満
C: 最低捕捉数が1個以上3個未満
D: 最低捕捉数が0個
【0085】
(導通性)
各実施例、比較例及び参考例の異方性導電フィルムを、導通特性の評価用ICとガラス基板との間に挟み、加熱加圧(170℃、20MPa、10秒)して評価用接続構造体を作成し、その初期導通抵抗を測定し、以下の導通性評価基準に従って評価した。得られた結果を表2に示す。初期導通抵抗は、実用上、A又はB評価であることが求められる。
【0086】
ここで、評価用ICとガラス基板とは、互いに端子(バンプ)パターンが対応しており、サイズは次の通りである。また、評価用ICとガラス基板を接続する際には、異方性導電フィルムの長手方向とバンプの短手方向を合わせた。
【0087】
導通特性の評価用IC
外形: 1.8×20.0mm
厚み: 0.5mm
バンプ仕様: 幅30μm×長85μm、バンプ間距離50μm、バンプ高さ15μm
【0088】
ガラス基板(Ti/Al配線)
ガラス材質: コーニング社製1737F
外形: 30×50mm
厚み: 0.5mm
【0089】
導通性評価基準
ランク 基準
A: 初期導通抵抗が1.0Ω未満
B: 初期導通抵抗が1.0Ω以上2.0Ω未満
C: 初期導通抵抗が2.0Ω以上4.0Ω未満
D: 初期導通抵抗が4.0Ω以上
【0090】
【0091】
<結果の考察>
実施例1~6のフィラー含有フィルム(異方性導電フィルム)は、中間層の第2凹部の底蓋部の厚さが、フィラーの平均粒子径の0.5倍以下であるので、不動性と導通性の評価がA又はBであった。それに対し、比較例1のフィラー含有フィルムは、凹部が貫通孔となっていたので、導通性評価がCであった。また、比較例2のフィラー含有フィルムは、第2凹部底蓋厚と第2凹部側壁厚が共に、フィラーの平均粒子径の0.5倍を超えていたので、不動性評価がCであった。
第1絶縁層と第2絶縁層との間に中間層が挟持された構造を有する本発明のフィラー含有フィルムにおいては、第1絶縁層の第1凹部に嵌まり込むような凹部を中間層に設け、その第2凹部にフィラーを充填し保持している。これにより、中間層に貫通孔を設けることなくフィラーを保持可能となる。しかも、中間層の第2凹部の底蓋部の厚さを特定範囲に限定している。このため、フィラー含有フィルムを介して二つの部品を圧着、例えば熱圧着等により接続する際の問題が生じないようにすることができるので、異方性導電フィルムとして有用である。
導電フィルムもしくは異方性導電フィルムとして使用される請求項7記載のフィラー含有フィルムで第1電子部品を第2電子部品に導電接続もしくは異方性導電接続してなる接続構造体。
導電フィルムもしくは異方性導電フィルムとして使用される請求項7記載のフィラー含有フィルムで第1電子部品を第2電子部品に導電接続もしくは異方性導電接続する、接続構造体の製造方法。
導電フィルムもしくは異方性導電フィルムとして使用される請求項7記載のフィラー含有フィルムで第1電子部品を第2電子部品に導電接続もしくは異方性導電接続する接続方法であって、
第2電子部品に対し、フィラー含有フィルムをその第1絶縁層側から仮貼りし、仮貼りされたフィラー含有フィルムに対し、第1電子部品を搭載し、第1電子部品側から圧着する接続方法。