(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136142
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】多軸実装センサシステム
(51)【国際特許分類】
G01C 19/00 20130101AFI20240927BHJP
【FI】
G01C19/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047134
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一平
(72)【発明者】
【氏名】船橋 博文
(72)【発明者】
【氏名】明石 照久
(72)【発明者】
【氏名】原田 翔太
(72)【発明者】
【氏名】吉田 貴彦
【テーマコード(参考)】
2F105
【Fターム(参考)】
2F105BB01
2F105BB07
(57)【要約】
【課題】検出精度が改善された多軸実装センサシステムを提供する。
【解決手段】多軸実装センサシステムは、台座と、台座に取り付けられ傾斜面を有する第1-第4ブロックと、を備える。多軸実装センサシステムは、傾斜面に配置されており、第1-第4角速度を測定可能な、第1-第4一軸慣性力センサを備える。多軸実装センサシステムは、第1-第4ピッチ角および第1-第4ロール角を記憶可能に構成されている記憶部を備える。多軸実装センサシステムは、第1-第4角速度に基づいて、3軸角速度を算出する演算部を備える。演算部は、第1-第4ピッチ角および第1-第4ロール角の少なくとも一方に基づいて、第1-第4角速度を補正する第1補正機能を備える。演算部は、第1-第4ピッチ角に基づいて、3軸角速度を補正する第2補正機能を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面を備える台座であって、前記平面に含まれる直交するx軸およびy軸と、前記平面に垂直なz軸と、からなる直交3軸座標系を備える台座と、
前記台座に取り付けられ、前記平面に対して傾斜している傾斜面を有する第1-第4ブロックであって、前記第1ブロックおよび前記第2ブロックは前記x軸方向に整列しており、前記第3ブロックおよび前記第4ブロックは前記y軸方向に整列している、前記第1-第4ブロックと、
前記第1ブロックの傾斜面に配置されており、第1測定軸周りの第1角速度を測定可能な第1一軸慣性力センサと、
前記第2ブロックの傾斜面に配置されており、第2測定軸周りの第2角速度を測定可能な第2一軸慣性力センサと、
前記第3ブロックの傾斜面に配置されており、第3測定軸周りの第3角速度を測定可能な第3一軸慣性力センサと、
前記第4ブロックの傾斜面に配置されており、第4測定軸周りの第4角速度を測定可能な第4一軸慣性力センサと、
第1-第4ピッチ角および第1-第4ロール角を記憶可能に構成されている記憶部であって、
前記第1ピッチ角は、前記第1測定軸が前記平面となす角度と予め定められた所定角度との角度差であり、
前記第2ピッチ角は、前記第2測定軸が前記平面となす角度と前記所定角度との角度差であり、
前記第3ピッチ角は、前記第3測定軸が前記平面となす角度と前記所定角度との角度差であり、
前記第4ピッチ角は、前記第4測定軸が前記平面となす角度と前記所定角度との角度差であり、
前記第1ロール角は、前記第1測定軸を前記平面に投射した投射軸が前記x軸となす角度であり、
前記第2ロール角は、前記第2測定軸を前記平面に投射した投射軸が前記x軸となす角度であり、
前記第3ロール角は、前記第3測定軸を前記平面に投射した投射軸が前記y軸となす角度であり、
前記第4ロール角は、前記第4測定軸を前記平面に投射した投射軸が前記y軸となす角度である、前記記憶部と、
前記第1-第4角速度に基づいて、前記直交3軸座標系における3軸角速度を算出する演算部と、
を備える多軸実装センサシステムであって、
前記演算部は、
前記第1-第4ピッチ角および前記第1-第4ロール角の少なくとも一方に基づいて、前記第1-第4角速度を補正する第1補正機能と、
前記第1-第4ピッチ角に基づいて、前記3軸角速度を補正する第2補正機能と、
を実行可能に構成されている、多軸実装センサシステム。
【請求項2】
前記演算部は、
前記第1補正機能による補正が行われていない補正前の前記第1-第4角速度に基づいて1回目の前記3軸角速度を算出し、
1回目の前記3軸角速度、および、前記第1-第4ピッチ角および前記第1-第4ロール角の少なくとも一方に基づいて、前記第1-第4角速度に対して前記第1補正機能による補正を行い、
前記第1補正機能による補正が行われた補正後の前記第1-第4角速度に基づいて、2回目の前記3軸角速度を算出する、請求項1に記載の多軸実装センサシステム。
【請求項3】
前記第1補正機能では、
1回目の前記3軸角速度に含まれるy軸周り角速度と前記第1ロール角に基づいて、前記第1角速度を補正し、
1回目の前記3軸角速度に含まれるy軸周り角速度と前記第2ロール角に基づいて、前記第2角速度を補正し、
1回目の前記3軸角速度に含まれるx軸周り角速度と前記第3ロール角に基づいて、前記第3角速度を補正し、
1回目の前記3軸角速度に含まれるx軸周り角速度と前記第4ロール角に基づいて、前記第4角速度を補正する、
請求項2に記載の多軸実装センサシステム。
【請求項4】
前記第1補正機能では、
1回目の前記3軸角速度に含まれるy軸周り角速度に前記第1ロール角の正弦値を乗じて得られた値を、前記第1角速度から減じることによって、前記第1角速度を補正し、
1回目の前記3軸角速度に含まれるy軸周り角速度に前記第2ロール角の正弦値を乗じて得られた値を、前記第2角速度から減じることによって、前記第2角速度を補正し、
1回目の前記3軸角速度に含まれるx軸周り角速度に前記第3ロール角の正弦値を乗じて得られた値を、前記第3角速度から減じることによって、前記第3角速度を補正し、
1回目の前記3軸角速度に含まれるx軸周り角速度に前記第4ロール角の正弦値を乗じて得られた値を、前記第4角速度から減じることによって、前記第4角速度を補正する、
請求項3に記載の多軸実装センサシステム。
【請求項5】
前記第1補正機能では、前記第1-第4ピッチ角に基づいて前記第1-第4角速度を補正し、
前記演算部では、
補正後の前記第1-第4角速度に基づいて、x軸周り角速度、y軸周り角速度、z軸周り角速度からなる前記3軸角速度を算出し、
前記第2補正機能では、
前記第1-第4ピッチ角に基づいて、前記x軸周り角速度を補正するx軸補正係数、前記y軸周り角速度を補正するy軸補正係数、前記z軸周り角速度を補正するz軸補正係数、を算出し、
算出した前記x軸補正係数、前記y軸補正係数、前記z軸補正係数の各々に基づいて、前記x軸周り角速度、前記y軸周り角速度、前記z軸周り角速度を補正する、
請求項1に記載の多軸実装センサシステム。
【請求項6】
前記第1補正機能では、
前記第1角速度の前記z軸方向のベクトル成分および前記x軸方向のベクトル成分を前記第1ピッチ角に基づいて補正し、
前記第2角速度の前記z軸方向のベクトル成分および前記x軸方向のベクトル成分を前記第2ピッチ角に基づいて補正し、
前記第3角速度の前記z軸方向のベクトル成分および前記y軸方向のベクトル成分を前記第3ピッチ角に基づいて補正し、
前記第4角速度の前記z軸方向のベクトル成分および前記y軸方向のベクトル成分を前記第4ピッチ角に基づいて補正する、
請求項1に記載の多軸実装センサシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、多軸実装センサシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、4つの一軸ジャイロセンサを特定の位置関係で配置することにより、センサの出力値を3軸化するセンサシステム3が開示されている。これにより、XYZ直交3軸の角速度を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、4つのジャイロセンサの測定軸と水平平面とがなす角度が、全て等しいことを前提において、3軸化を行っている。従って、4つの角度に誤差が存在すると、3軸化により得られる角速度に誤差が生じてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で開示する多軸実装センサシステムの一態様は、平面を備える台座を備える。台座は、平面に含まれる直交するx軸およびy軸と、平面に垂直なz軸と、からなる直交3軸座標系を備える。多軸実装センサシステムは、台座に取り付けられ、平面に対して傾斜している傾斜面を有する第1-第4ブロックを備える。第1ブロックおよび第2ブロックはx軸方向に整列しており、第3ブロックおよび第4ブロックはy軸方向に整列している。多軸実装センサシステムは、第1ブロックの傾斜面に配置されており、第1測定軸周りの第1角速度を測定可能な第1一軸慣性力センサを備える。多軸実装センサシステムは、第2ブロックの傾斜面に配置されており、第2測定軸周りの第2角速度を測定可能な第2一軸慣性力センサを備える。多軸実装センサシステムは、第3ブロックの傾斜面に配置されており、第3測定軸周りの第3角速度を測定可能な第3一軸慣性力センサを備える。多軸実装センサシステムは、第4ブロックの傾斜面に配置されており、第4測定軸周りの第4角速度を測定可能な第4一軸慣性力センサを備える。多軸実装センサシステムは、第1-第4ピッチ角および第1-第4ロール角を記憶可能に構成されている記憶部を備える。第1ピッチ角は、第1測定軸が平面となす角度と予め定められた所定角度との角度差である。第2ピッチ角は、第2測定軸が平面となす角度と所定角度との角度差である。第3ピッチ角は、第3測定軸が平面となす角度と所定角度との角度差である。第4ピッチ角は、第4測定軸が平面となす角度と所定角度との角度差である。第1ロール角は、第1測定軸を平面に投射した投射軸がx軸となす角度である。第2ロール角は、第2測定軸を平面に投射した投射軸がx軸となす角度である。第3ロール角は、第3測定軸を平面に投射した投射軸がy軸となす角度である。第4ロール角は、第4測定軸を平面に投射した投射軸がy軸となす角度である。第1-第4角速度に基づいて、直交3軸座標系における3軸角速度を算出する演算部と、
演算部は、第1-第4ピッチ角および第1-第4ロール角の少なくとも一方に基づいて、第1-第4角速度を補正する第1補正機能を備える。演算部は、第1-第4ピッチ角に基づいて、3軸角速度を補正する第2補正機能を備える。
【0006】
上記の構成によると、第1-第4一軸慣性力センサに、第1-第4ピッチ角や第1-第4ロール角が存在している場合においても、第1補正機能によって第1-第4角速度を補正することができる。また、第2補正機能によって、3軸角速度を補正することができる。従って、3軸角速度の誤差を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図4】第3ジャイロセンサSE3の検出軸および非検出軸を説明する図である。
【
図5】第3ロール角φ
3eを変化させた場合における、3軸感度のグラフである。
【
図6】第3ピッチ角θ
3eを変化させた場合における、3軸感度のグラフである。
【
図7】ロール角およびピッチ角がセンサ感度に与える影響をまとめた表である。
【
図8】ロール角φおよびピッチ角θの影響の補正手法の基本概念を示す図である。
【
図9】
図8の基本概念をさらに具体化した中位概念を示す図である。
【
図10】ロール角φ
eが発生していない状態の第2ジャイロセンサSE2を示す図である。
【
図11】ロール角φ
eが発生している状態の第2ジャイロセンサSE2を示す図である。
【
図12】第1補正機能C1_1の具体的な内容を説明するフロー図である。
【
図13】第2ピッチ角θ
2eが発生していない状態の第2ジャイロセンサSE2を示す図である。
【
図14】第2ピッチ角θ
2eが発生している状態の第2ジャイロセンサSE2を示す図である。
【
図15】2軸ベクトルに分解する様子を示した図である。
【
図18】第1補正機能C1_2および第2補正機能C2の具体的な内容を説明するフロー図である。
【
図19】実施例2に係る多軸実装センサシステム101の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0008】
(多軸実装センサシステム1の構造)
図1に、多軸実装センサシステム1の概略図を示す。多軸実装センサシステム1は、x軸周り、y軸周り及びz軸周りの角速度を検知する、3軸角速度(ジャイロ)センサシステムである。多軸実装センサシステム1は、慣性力センサ2、演算部3、記憶部4、を主に備えている。慣性力センサ2は、いわゆる積み木式傾斜実装構造を備えている。慣性力センサ2は、台座11、第1ブロックB1-第4ブロックB4、第1ジャイロセンサSE1-第4ジャイロセンサSE4、を主に備えている。台座11は平面11pを備えている。台座11は、平面11pに含まれている直交するx軸およびy軸と、平面11pに垂直なz軸と、からなる直交3軸座標系を備えている。なお本明細書では、台座11を基準とした3軸座標系を、小文字のx、y、zで表している。また第1ブロックB1-第4ブロックB4を基準とした3軸座標系を、大文字のX、Y、Zで表している。
【0009】
第1ブロックB1-第4ブロックB4は、台座11の平面11p上に取り付けられている。第1ブロックB1-第4ブロックB4の各々は、平面11pに対して傾斜している傾斜面B1p-B4pを有している。傾斜面B1p-B4pが平面11pとなす所定角度PAは、全て同一であり、本実施例では45度である。第1ブロックB1および第2ブロックB2は、x軸方向に整列しており、互いに対向している。第3ブロックB3および第4ブロックB4は、y軸方向に整列しており、互いに対向している。具体的には、第1ブロックB1の傾斜面B1pと第2ブロックB2の傾斜面B2p同士が、内向きになるように、x軸方向に並んで対向配置されている。また、第3ブロックB3の傾斜面B3pと第4ブロックB4の傾斜面B4p同士が、内向きになるように、y軸方向に並んで対向配置されている。
【0010】
第1ジャイロセンサSE1-第4ジャイロセンサSE4の各々は、第1ブロックB1-第4ブロックB4の傾斜面B1p-B4pに配置されている。第1ジャイロセンサSE1-第4ジャイロセンサSE4の各々は、搭載面(傾斜面B1p-B4p)に垂直な第1測定軸A1z-第4測定軸A4zを備えている。第1ジャイロセンサSE1は、第1測定軸A1z周りの第1角速度S1を測定可能である。第2ジャイロセンサSE2は、第2測定軸A2Z周りの第2角速度S2を測定可能である。第3ジャイロセンサSE3は、第3測定軸A3Z周りの第3角速度S3を測定可能である。第4ジャイロセンサSE4は、第4測定軸A4Z周りの第4角速度S4を測定可能である。
【0011】
演算部3は、不図示の配線によって第1ジャイロセンサSE1-第4ジャイロセンサSE4に接続されているとともに、記憶部4に接続されている。演算部3は、第1角速度S1-第4角速度S4に基づいて、直交3軸座標系における3軸角速度を算出する部位である。なお、3軸角速度の算出方法は、周知の様々な方法を使用可能であるため、ここでは説明を省略する。
【0012】
記憶部4は、第1ロール角φ1e-第4ロール角φ4e、および、第1ピッチ角θ1e-第4ピッチ角θ4eを記憶するとともに、これらのデータを演算部3に出力することが可能に構成されている。
【0013】
第1ロール角φ
1e-第4ロール角φ
4eについて説明する。第1ロール角φ
1e-第4ロール角φ
4eの各々は、第1ジャイロセンサSE1-第4ジャイロセンサSE4において発生する角度である。
図2を用いて、第2ジャイロセンサSE2において発生する第2ロール角φ
2eを説明する。
図2は、第2ジャイロセンサSE2を背面から見下ろした図である。第2ブロックB2の傾斜面B2pにおいて、斜面の上下方向に延びる軸をロール軸P
Xとする。ロール軸P
Xは、平面11pに投射したときに、台座11のx軸と平行となる軸である。ロール軸P
X周りの回転角度が、ロール角方向である。第2ジャイロセンサSE2の基準面RP2と傾斜面B2pとの、ロール角方向における角度差が、第2ロール角φ
2eである。基準面RP2は、第2測定軸A
2Zに垂直な面であり、第2ジャイロセンサSE2を第2ブロックB2に実装する際の基準となる面である。本実施例では、基準面RP2は、第2ジャイロセンサSE2の裏面である。換言すると、第2ロール角φ
2eは、第2測定軸A
2Zを平面11pに投射した投射第2測定軸PS
Zが、台座11のx軸となす角度である。
【0014】
なお、第1ロール角φ1e、第3ロール角φ3e、第4ロール角φ4eの内容についても、前述した第2ロール角φ2eの内容と同様である。すなわち、第1ロール角φ1eは、第1ジャイロセンサSE1の第1測定軸A1zを平面11pに投射した投射第1測定軸PSZが、台座11のx軸となす角度である。また第3ロール角φ3eは、第3ジャイロセンサSE3の第3測定軸A3zを平面11pに投射した投射第3測定軸PSZが、台座11のy軸となす角度である。また第4ロール角φ4eは、第4ジャイロセンサSE4の第4測定軸A4zを平面11pに投射した投射第4測定軸PSZが、台座11のy軸となす角度である。
【0015】
第1ピッチ角θ
1e-第4ピッチ角θ
4eについて説明する。第1ピッチ角θ
1e-第4ピッチ角θ
4eの各々は、第1ジャイロセンサSE1-第4ジャイロセンサSE4において発生する角度である。
図3を用いて、第2ジャイロセンサSE2において発生する第2ピッチ角θ
2eを説明する。
図3は、第2ジャイロセンサSE2を、台座11のy軸方向から見た側面図である。第2ブロックB2の傾斜面B2pにおいて、平面11pと平行に延びる軸をピッチ軸P
Yとする。ピッチ軸P
Y周りの回転角度が、ピッチ角方向である。そして、第2ジャイロセンサSE2の基準面RP2(背面)と傾斜面B2pとの、ピッチ角方向における角度差が、第2ピッチ角θ
2eである。換言すると、第2ピッチ角θ
2eは、第2測定軸A
2Zが平面11pとなす角度と、所定角度PA(45°)と、の角度差である。
【0016】
なお、第1ピッチ角θ1e、第3ピッチ角θ3e、第4ピッチ角θ4eの内容についても、前述した第2ピッチ角θ2eの内容と同様である。すなわち、第1ピッチ角θ1eは、第1ジャイロセンサSE1の第1測定軸A1zが平面11pとなす角度と所定角度PAとの角度差である。第3ピッチ角θ3eは、第3ジャイロセンサSE3の第3測定軸A3zが平面11pとなす角度と所定角度PAとの角度差である。第4ピッチ角θ4eは、第4ジャイロセンサSE4の第4測定軸A4zが平面11pとなす角度と所定角度PAとの角度差である。
【0017】
なお、第1ロール角φ1e-第4ロール角φ4e、第1ピッチ角θ1e-第4ピッチ角θ4eは、事前の検査などで把握しておき、予め記憶部4へ記憶させてもよい。または、多軸実装センサシステム1のキャリブレーション時に自動または手動で測定し、記憶部4へ記憶させてもよい。
【0018】
上述したように、第1ジャイロセンサSE1-第4ジャイロセンサSE4は、実質的に同じ構造を有している。そのため、本明細書では、第1ジャイロセンサSE1-第4ジャイロセンサSE4で共通する特徴を説明する場合、何れか1つのジャイロセンサについて代表的に説明することがある。
【0019】
(ロール角φおよびピッチ角θがセンサ感度に与える影響)
ロール角φおよびピッチ角θがセンサ感度に与える影響を調べるためのPoC(Proof of Concept)を作製した。本PoCでは、第3ジャイロセンサSE3において、第3ロール角φ3eの値および第3ピッチ角θ3eの値を様々に変化させた。
【0020】
図4を用いて、第3ジャイロセンサSE3の検出軸および非検出軸を説明する。第3ジャイロセンサSE3は、台座11の3軸に対し、2つの検出軸と1つの非検出軸を備えている。第3測定軸A
3zに垂直な軸(x軸)が非検出軸であり、第3測定軸A
3zと約45度の角度で交わる軸(y、z軸)が検出軸である。なお第4ジャイロセンサSE4の非検出軸はx軸であり、検出軸はy軸およびz軸である。また第1ジャイロセンサSE1および第2ジャイロセンサSE2の非検出軸はy軸であり、検出軸はx軸およびz軸である。
【0021】
そして、本PoCの台座11の3軸に対し、それぞれ一軸回転を印加した。x軸周りに回転させる場合には、x軸が主軸であり、y軸およびz軸が他軸である。y軸周りに回転させる場合には、y軸が主軸であり、z軸およびx軸が他軸である。z軸周りに回転させる場合には、z軸が主軸であり、x軸およびy軸が他軸である。それぞれの一軸回転時において、第1ジャイロセンサSE1-第4ジャイロセンサSE4から出力される第1角速度S
1-第4角速度S
4を取得した。そして、第1角速度S
1-第4角速度S
4を3軸化した。結果を
図5および
図6に示す。
図5は、第3ロール角φ
3eを変化させた場合における、3軸感度である。
図6は、第3ピッチ角θ
3eを変化させた場合における、3軸感度である。上段はx軸回転時、中段はy軸回転時、下段はz軸回転時における測定結果である。
【0022】
この結果から、第3ジャイロセンサSE3に発生した第3ロール角φ
3eは、非検出軸であるx軸回転時において、他軸であるy軸およびz軸の感度を悪化させることが分かる(
図5、領域R1参照)。一方、第3ジャイロセンサSE3に発生した第3ピッチ角θ
3eは、検出軸であるy軸回転時において、主軸(y軸)感度および他軸(z軸)感度を悪化させること(
図6、領域R2参照)、および、検出軸であるz軸回転時において、主軸(z軸)感度および他軸(y軸)感度を悪化させることが分かる(
図6、領域R3参照)。また、第3ロール角φ
3eによる影響と第3ピッチ角θ
3eによる影響とは、重複しないことも分かる。
【0023】
以上の知見を第1ジャイロセンサSE1-第4ジャイロセンサSE4に一般化すると、
図7のようにまとめることができる。すなわちロール角は、一軸ジャイロセンサの非検出軸が回転軸となるときの他軸感度を悪化させる。またピッチ角は、一軸ジャイロセンサの検出軸が回転軸となるときの主他軸感度を悪化させる。
【0024】
(ロール角φおよびピッチ角θの影響の補正手法)
ロール角φおよびピッチ角θの影響の補正手法の基本概念について、
図8に示す。演算部3は、第1補正機能C1、3軸化機能TC、第2補正機能C2を実行可能に構成されている。演算部3には、第1ジャイロセンサSE1-第4ジャイロセンサSE4から、第1角速度S
1-第4角速度S
4が入力される。また記憶部4から演算部3には、第1ロール角φ
1e-第4ロール角φ
4e、および、第1ピッチ角θ
1e-第4ピッチ角θ
4eが入力される。第1補正機能C1は、第1ロール角φ
1e-第4ロール角φ
4eおよび第1ピッチ角θ
1e-第4ピッチ角θ
4eの少なくとも一方と、第2補正機能C2からフィードバックされる3軸角速度ω
x、ω
y、ω
zと、に基づいて、第1角速度S
1-第4角速度S
4を補正する。3軸化機能TCは、第1角速度S
1-第4角速度S
4に基づいて、台座11の直交3軸座標系における3軸角速度ω
x、ω
y、ω
zを算出する。第2補正機能C2は、第1ロール角φ
1e-第4ロール角φ
4e、および、第1ピッチ角θ
1e-第4ピッチ角θ
4eの少なくとも一方に基づいて、3軸化機能TCによって算出された3軸角速度を補正する。
【0025】
また
図9に、
図8の基本概念をさらに具体化した中位概念を示す。第1補正機能C1は、第1補正機能C1_1およびC1_2に分かれている。第1補正機能C1_1は、第1ロール角φ
1e-第4ロール角φ
4eと、第2補正機能C2からフィードバックされる3軸角速度ω
x、ω
y、ω
zと、に基づいて、第1角速度S
1-第4角速度S
4を補正する。第1補正機能C1_1によって補正された第1角速度S
1-第4角速度S
4は、第1補正機能C1_2に入力される。第1補正機能C1_2は、第1ピッチ角θ
1e-第4ピッチ角θ
4eに基づいて、入力された第1角速度S
1-第4角速度S
4を補正する。また第2補正機能C2は、第1ピッチ角θ
1e-第4ピッチ角θ
4eに基づいて、3軸化機能TCによって算出された3軸角速度ω
x、ω
y、ω
zを補正する。
【0026】
(ロール角がジャイロ感度に与える影響の解析)
第2ジャイロセンサSE2を例にして、ロール角が一軸ジャイロの感度に与える影響を、数式で解析した。
図10に、第2ジャイロセンサSE2が理想状態で実装されており、ロール角φ
eが発生していない状態の図を示す。前提条件として、第2ジャイロセンサSE2が3軸ジャイロセンサであると仮定した。この仮定は、数式を立式することを可能にするためのものである。
図10に示すように、第2ジャイロセンサSE2は、測定軸A
2X、A
2Y、A
2Z、を備えている。また測定軸A
2Zは、一軸ジャイロにおける測定軸と一致すると仮定した。測定軸A
2X、A
2Y、A
2Zのそれぞれで検知される角速度を、角速度S
X、S
Y、S
Zとした。第2ジャイロセンサSE2が理想状態で実装されているとき、測定軸A
2Zは、平面11pの法線方向に対し45°傾いている。
【0027】
ここで、台座11のx軸、y軸、z軸のそれぞれに、角速度ω
x、ω
y、ω
zの一軸回転を印加する場合を考える。オイラー角による座標変換行列を用いると、一軸回転速度と3軸感度との関係は、(1)式で表される。
【数1】
【0028】
本来の一軸ジャイロとしての第2ジャイロセンサSE2で検出される角速度は、(1)式における角速度S
Zである。そこで(1)式から角速度S
Zだけを抜き出すと、(2)式となる。
【数2】
【0029】
(2)式より、一軸ジャイロとして理想状態の第2ジャイロセンサSE2は、x軸回転とz軸回転に対し感度を持ち、y軸回転に対しては感度を持たないことが分かる。
【0030】
次に、
図11に示すように、第2ジャイロセンサSE2が誤差を有して傾斜面B2pに実装されており、ロール角φ
eが発生している場合を考える。ここで、ロール角φ
eの影響を受けた測定軸A
2X’、A
2Y’、A
2Z’のそれぞれで検知される角速度を、角速度S
X’、S
Y’、S
Z’とする。オイラー角による座標変換行列とロール角φ
eを用いると、一軸回転速度と3軸感度との関係は、(3)式で表される。
【数3】
【0031】
(3)式に(1)式を代入して一軸回転速度とロール角φ
eの式にまとめると、(4)式となる。
【数4】
【0032】
ここで第2ジャイロセンサSE2の一軸ジャイロとしての測定軸はA
2Z’であり、その検出角速度はS
Z’である。したがって(4)式からS
Z’だけを抜き出すと、(5)式となる。(5)式は、ロール角φ
eの影響を受けた一軸の第2ジャイロセンサSE2で検出される第2角速度S
2’を示している。
【数5】
【0033】
ロール角φeが発生していない(2)式と、ロール角φeが発生している(5)式とを比較すると、(5)式には下線を引いた(6)式の項が増えている。すなわち(6)式の項は、本来であれば第2ジャイロセンサSE2が感度を持たないy軸回転に対し、感度を持つことを示している。従って(6)式によって、ロール角φeによる感度の主な誤差成分を示すことができる。
【0034】
なお、第1ジャイロセンサSE1、第3ジャイロセンサSE3、第4ジャイロセンサSE4についても、同様の解析を行うことができる。ここでは詳細な説明は省略する。これにより、第1ジャイロセンサSE1-第4ジャイロセンサSE4のそれぞれで発生する第1ロール角φ1e-第4ロール角φ4eが、各ジャイロセンサで検出される第1角速度S1-第4角速度S4に与える影響を求めることができる。
【0035】
(第1補正機能C1-1の内容)
図12に、第1補正機能C1_1の具体的な内容を説明するフロー図を示す。
図12は、第1補正機能C1_1に関連する部分を、
図9から抜き出した図である。第1補正機能C1_1は、前述の(6)式に基づいて誤差成分を除去する機能である。
【0036】
第1補正機能C1_1には、記憶部4から、第1ロール角φ1e-第4ロール角φ4eが入力される。また第1補正機能C1_1には、第1ジャイロセンサSE1-第4ジャイロセンサSE4の各々から、第1ロール角φ1e-第4ロール角φ4eの影響を受けた第1角速度S1’-第4角速度S4’が入力される。最初は、フィードバックループFBによるフィードバックが第1補正機能C1_1にかかっていない。よって第1角速度S1’-第4角速度S4’には第1補正機能C1_1による補正が行われず、そのまま3軸化機能TCへ入力される。
【0037】
3軸化機能TCでは、補正前の第1角速度S1’-第4角速度S4’に基づいて、1回目の3軸角速度ωx、ωy、ωzが算出される。1回目の3軸角速度ωx、ωy、ωzは、フィードバックループFBによって第1補正機能C1_1にフィードバックされる。
【0038】
第1補正機能C1_1は、(6)式に基づいて誤差成分を算出する。具体的には、1回目の3軸角速度に含まれる角速度ω
yに、第1ロール角φ
1eの正弦値(sinφ
1e)を乗じることで、第1角速度S
1’の誤差成分を算出する(
図12、符号M1参照)。そして算出した誤差成分を、第1角速度S
1’から減じる(符号SU1参照)。
【0039】
同様に、1回目の3軸角速度に含まれる角速度ω
yに、第2ロール角φ
2eの正弦値(sinφ
2e)を乗じることで、第2角速度S
2’の誤差成分を算出する(
図12、符号M2参照)。そして算出した誤差成分を、第2角速度S
2’か
ら減じる(符号SU2参照)。
【0040】
同様に、1回目の3軸角速度に含まれる角速度ω
xに、第3ロール角φ
3eの正弦値(sinφ
3e)を乗じることで、第3角速度S
3’の誤差成分を算出する(
図12、符号M3参照)。そして算出した誤差成分を、第3角速度S
3’から減じる(符号SU3参照)。
【0041】
同様に、1回目の3軸角速度に含まれる角速度ω
xに、第4ロール角φ
4eの正弦値(sinφ
4e)を乗じることで、第4角速度S
4’の誤差成分を算出する(
図12、符号M4参照)。そして算出した誤差成分を、第4角速度S
4’から減じる(符号SU4参照)。
【0042】
第1補正機能C1_1による補正が行われた第1角速度S1-第4角速度S4は、3軸化機能TCに入力される。そして3軸化機能TCにおいて、補正後の第1角速度S1-第4角速度S4に基づいて、2回目の3軸角速度ωx、ωy、ωzが算出される。2回目に算出された3軸角速度では、1回目に算出された3軸角速度に比して、検出精度を高めることができる。
【0043】
(ピッチ角がジャイロ感度に与える影響の解析)
第2ジャイロセンサSE2を例にして、ピッチ角が一軸ジャイロの感度に与える影響を、数式で解析した。具体的には、台座11のx軸に角速度ω
xの一軸回転を印加したときに、第2ジャイロセンサSE2から出力される第2角速度S
2について、解析した。
図13に、第2ジャイロセンサSE2が理想状態で実装されており、第2ピッチ角θ
2eが発生していない状態の図を示す。ここで3軸化のために、第2角速度S
2を2軸ベクトルに分解する。ピッチ角の実装誤差がない
図13において、平面11pに対する第2角速度S
2の傾斜角は45°である。よって、x軸ベクトルS
2xとz軸ベクトルS
2zの比率は、1:1である。また、x軸ベクトルS
2xとz軸ベクトルS
2zの大きさは、x軸の角速度ω
xと一致する。
【0044】
次に、
図14に示すように、第2ジャイロセンサSE2が誤差を有して実装されており、第2ピッチ角θ
2eが発生している場合を考える。この場合、第2ジャイロセンサSE2の測定軸A
2Zは、45°から第2ピッチ角θ
2eだけ傾くため、感度に偏りが生じる。このときの第2ジャイロセンサSE2での検出角速度を、第2角速度S
2’とする。x軸ベクトルS
2xとz軸ベクトルS
2zとの感度比は1:1から崩れ、他軸(z軸)の感度に誤差が生じる。
【0045】
図15に示すように、第2角速度S
2’を3軸化するため、45°で2軸ベクトルに分解する。この場合、x軸ベクトルS
2x’とz軸ベクトルS
2z’の比率は、1:1となる。しかし第2ピッチ角θ
2eの影響で第2角速度S
2’の感度に偏りが生じているため、x軸ベクトルS
2x’およびz軸ベクトルS
2z’のどちらも、印加されたx軸の角速度ω
xとは一致しない。つまり主他軸感度に誤差が生じる。
【0046】
そこで(7)式に示すように、2軸ベクトル(S
2x’,S
2z’)に対し、オイラー角による座標変換行列を用いる。
【数6】
【0047】
(7)式による補正後の2軸ベクトルを、(S
2x’’,S
2z’’)とする。これにより、
図16に示すように、他軸感度(z軸ベクトルS
2z’’)の誤差を小さくすることができる。しかし背反として、主軸感度(x軸ベクトルS
2x’’)の誤差が大きくなる。
【0048】
(7)式による補正後の2軸ベクトルに基づいて3軸化を行うことにより得られたx軸周り角速度を、ω
PoC-xとする。角速度ω
PoC-xは、(8)式で算出することができる。
【数7】
【0049】
しかし(7)式による他軸感度補正によって、第2角速度S2の2軸ベクトルのうち、主軸感度であるx軸ベクトルS2x’’は誤差が大きい。したがって、(8)式から算出したx軸周り角速度ωPoC-xは、x軸の角速度ωxと一致しない。
【0050】
そこで、(7)式による他軸感度補正によって誤差が大きくなった主軸感度に対して、3軸化後に補正を行う。
図17を用いて説明する。
図17は、対向している第1ジャイロセンサSE1および第2ジャイロセンサSE2を、y軸の負方向から見た側面図である。第2ジャイロセンサSE2には、第2ピッチ角θ
2eの実装誤差が発生している。第1ジャイロセンサSE1は、理想状態であり、ピッチ角が発生していない。第2ジャイロセンサSE2と第1ジャイロセンサSE1とを用いて、主軸であるx軸の角速度を補正する。
【0051】
(7)式による補正後に3軸化することで得られた角速度ω
PoC-xに対して、第1ジャイロセンサSE1の第1ピッチ角θ
1eと第2ジャイロセンサSE2の第2ピッチ角θ
2eとが与える影響は、(9)式で表すことができる。
【数8】
【0052】
(9)式は、前述の(2)式、(7)式、(8)式により求めることができる。このとき主軸感度である角速度ω
xには、下線を引いた(10)式の項が生じている。これがピッチ角の実装誤差による、主軸感度の誤差成分である。ここで、第1ピッチ角θ
1eおよび第2ピッチ角θ
2eが十分に小さい場合には、(9)式の右辺第2項において、cos(2θ
1e)とcos(2θ
2e)とが打ち消し合う。よって右辺第2項を無視することができる。従って、3軸化後の角速度ω
xの補正式は、(11)式で表すことができる。
【数9】
【0053】
そして同様の解析を行うことで、(7)式による補正後に3軸化することで得られたy軸周り角速度ωPoC-xおよびz軸周り角速度ωPoC-zについても、ピッチ角の実装誤差が主軸感度に与える影響を求めることができる。従って、(11)式と同様にして、角速度ωPoC-yから角速度ωyを求める補正式や、角速度ωPoC-zから角速度ωzを求める補正式を得ることができる。これらの補正式は、当業者であれば一義的に導き出すことが可能であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0054】
(第1補正機能C1_2および第2補正機能C2の内容)
図18に、第1補正機能C1_2および第2補正機能C2の具体的な内容を説明するフロー図を示す。
図18は、第1補正機能C1_2および第2補正機能C2に関連する部分を、
図9から抜き出した図である。
【0055】
第1補正機能C1_2には、記憶部4から、第1ピッチ角θ1e-第4ピッチ角θ4eが入力される。また第1補正機能C1_2には、第1ジャイロセンサSE1-第4ジャイロセンサSE4の各々から第1補正機能C1_1を経由して、第1角速度S1’-第4角速度S4’が入力される。第1角速度S1’-第4角速度S4’の各々は、第1ピッチ角θ1e-第4ピッチ角θ4eの影響を受けている角速度である。
【0056】
第1補正機能C1_2では、(7)式に基づいて、他軸感度および主軸感度を補正する。具体的には、第1角速度S1’を2軸ベクトルに分解して得られたz軸ベクトルS1z’(他軸感度)およびx軸ベクトルS1x’(主軸感度)を、(7)式に基づいて補正する(符号M11参照)。これにより、補正後のz軸ベクトルS1z’’およびx軸ベクトルS1x’’を算出する。同様に、第2角速度S2’を2軸ベクトルに分解して得られたz軸ベクトルS2z’(他軸感度)およびx軸ベクトルS2x’(主軸感度)を、(7)式に基づいて補正する(符号M12参照)。これにより、補正後のz軸ベクトルS2z’’およびx軸ベクトルS2x’’を算出する。同様に、第3角速度S3’を2軸ベクトルに分解して得られたz軸ベクトルS3z’(他軸感度)およびy軸ベクトルS3y’(主軸感度)を、(7)式に基づいて補正する(符号M13参照)。これにより、補正後のz軸ベクトルS3z’’およびy軸ベクトルS3y’’を算出する。同様に、第4角速度S4’を2軸ベクトルに分解して得られたz軸ベクトルS4z’(他軸感度)およびy軸ベクトルS4y’(主軸感度)を、(7)式に基づいて補正する(符号M14参照)。これにより、補正後のz軸ベクトルS4z’’およびy軸ベクトルS4y’’を算出する。
【0057】
第1補正機能C1_2からは、補正後の他軸成分(z軸ベクトルS1z’’-S4z’’)および、誤差が大きくなった主軸成分(x軸ベクトルS1x’’およびS2x’’、y軸ベクトルS3y’’およびS4y’’)が出力され、3軸化機能TCに入力される。3軸化機能TCでは、補正後の他軸成分および誤差が大きくなった主軸成分に基づいて、補正前の3軸角速度(補正前角速度ωPoC-x、補正前角速度ωPoC-y、補正前角速度ωPoC-z)が算出される。3軸化の算出方法は様々であってよい。例えば、x軸ベクトルS1x’’およびS2x’’の平均値を、補正前角速度ωPoC-xとしてもよい。y軸ベクトルS3y’’およびS4y’’の平均値を、補正前角速度ωPoC-yとしてもよい。z軸ベクトルS1z’’-S4z’’の平均値を、補正前角速度ωPoC-zとしてもよい。
【0058】
第2補正機能C2には、3軸化機能TCから、補正前の3軸角速度が入力される。また第2補正機能C2が備える補正係数算出機能FCには、記憶部4から、第1ピッチ角θ1e-第4ピッチ角θ4eが入力される。補正係数算出機能FCは、第1ピッチ角θ1e-第4ピッチ角θ4eに基づいて、x軸補正係数Fx、y軸補正係数Fy、z軸補正係数Fzを算出する。x軸補正係数Fxは、補正前角速度ωPoC-xを補正して、補正後の角速度ωxを算出するための係数である。具体的には、x軸補正係数Fxは、3軸化後の角速度ωxの補正式((11)式)の右辺の分母である。y軸補正係数Fyは、補正前角速度ωPoC-yを補正して、補正後の角速度ωyを算出するための係数である。具体的には、y軸補正係数Fyは、3軸化後の角速度ωyの補正式((11)式と同様にして導出可能な式)の右辺の分母である。z軸補正係数Fzは、補正前角速度ωPoC-zを補正して、補正後の角速度ωzを算出するための係数である。具体的には、z軸補正係数Fzは、3軸化後の角速度ωzの補正式((11)式と同様にして導出可能な式)の右辺の分母である。
【0059】
第2補正機能C2は、補正係数算出機能FCから入力される補正係数に基づいて、3軸角速度を補正する(符号M21参照)。具体的には、補正前角速度ωPoC-xをx軸補正係数Fxで除算する((11)式参照)。また同様にして、補正前角速度ωPoC-yをy軸補正係数Fyで除算する。また同様にして、補正前角速度ωPoC-zをz軸補正係数Fzで除算する。これにより、補正後の角速度ωx、ωy、ωzを算出することができる。
演算部103は、第1補正機能C1、3軸化機能TC、第2補正機能C2に加えて、故障診断機能FDおよび出力切替機能OSを備えている。3軸化機能TCは、通常機能TC1および冗長機能TC2を備えている。通常機能TC1は、実施例1で説明したように、4つのセンサ値に基づいて3軸化を行い、3軸角速度ωx、ωy、ωzを出力する機能である。冗長機能TC2は、3つのセンサ値に基づいて3軸化を行い、冗長3軸角速度ωx’、ωy’、ωz’を出力する機能である。また冗長機能TC2は、3軸角速度ωx、ωy、ωzと冗長3軸角速度ωx’、ωy’、ωz’とを比較することで、比較信号CSを生成する。比較信号CSによって、第1ジャイロセンサSE1-第4ジャイロセンサSE4のうちの何れかに故障が発生したことを判断することができる。
故障診断機能FDは、ジャイロセンサの故障有無を診断する。具体的には、比較信号CSに基づいて、第1ジャイロセンサSE1-第4ジャイロセンサSE4のうちの何れか1つに故障が発生しているか否かを判断する。そして故障センサが特定された場合には、アラーム信号ASによって、故障センサを出力切替機能OS、3軸化機能TC、第2補正機能C2に報知する。冗長機能TC2は、アラーム信号ASによって故障センサが報知されると、故障センサを除いた3つのセンサによって3軸化を行い、冗長3軸角速度ωx’、ωy’、ωz’を算出する。また故障診断機能FDは、3軸角速度ωx、ωy、ωzによっても故障有無を診断する。そして、故障センサを特定できないような重大故障が発生した場合には、故障フラグFFを外部へ出力する。
これにより、第1ジャイロセンサSE1-第4ジャイロセンサSE4のうちの何れか1つが故障した場合においても、3軸角速度を出力することができるため、冗長性を確保することが可能となる。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。