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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136151
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】エキシマランプ
(51)【国際特許分類】
   H01J 65/00 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
H01J65/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047152
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000128496
【氏名又は名称】株式会社オーク製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 真
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 剛
(72)【発明者】
【氏名】芹澤 和泉
(57)【要約】
【課題】箔電極を誘電体で覆うエキシマランプにおいて、放電の偏りを抑える。
【解決手段】誘電体50によって箔電極30を被覆し、誘電体50と放電管20との間に放電空間Sを形成したエキシマランプ10において、断面長楕円状または断面長円状の誘電体50に対し、箔電極30が同軸的な配置された状態で被覆されている。誘電体50は、放電管20に対して同軸的に配置される。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランプ軸方向に沿って帯状に延びる箔電極と、
前記箔電極を被覆する誘電体と、
前記誘電体との間に放電空間を形成する管状の放電容器とを備え、
前記誘電体が、前記箔電極の幅方向に沿って厚さが略一定の四角柱状部と、前記四角柱状部の両端で一体に成形された半円柱状部とによって構成されることを特徴とするエキシマランプ。
【請求項2】
前記誘電体の管軸方向から見た外観形状が、長楕円形または長円形であることを特徴とする請求項1に記載のエキシマランプ。
【請求項3】
前記誘電体の断面が、長楕円状または長円状であることを特徴とする請求項2に記載のエキシマランプ。
【請求項4】
前記誘電体の断面の輪郭線が、前記箔電極の幅方向に平行な一対の直線状の輪郭線と、前記直線状の輪郭線の両端をそれぞれ接続する半楕円状または半円状の輪郭線とによって構成されることを特徴とする請求項3に記載のエキシマランプ。
【請求項5】
前記誘電体において、前記四角柱状部と、前記半円柱状部との境界の位置は、前記箔電極の幅方向両端よりも電極幅中央側にあることを特徴とする請求項1に記載のエキシマランプ。
【請求項6】
前記箔電極の厚さ方向に沿った前記箔電極から前記誘電体の外表面までの距離をT2、前記箔電極の厚さ方向に沿った前記誘電体の幅をW2とし、また、前記箔電極の幅方向に沿った前記誘電体の幅をW1、前記箔電極の幅方向に沿った前記箔電極の端から前記誘電体の外表面までの距離をT1とした場合、以下の式を満たすことを特徴とする請求項1に記載のエキシマランプ。

W2<W1 ・・・・(1)
T2>T1 ・・・・(2)
【請求項7】
前記箔電極の厚さ方向に沿った前記誘電体の幅よりも大きく、前記箔電極の幅方向に沿った前記誘電体の幅より小さい内径を有する突起状部分が、前記放電容器の一方の軸方向端部に同軸的に形成され、
前記誘電体の一方の軸方向端部が、前記突起状部分の内部空間を閉塞しないように、前記突起状部分の内面と部分的に接触することを特徴とする請求項1に記載のエキシマランプ。
【請求項8】
前記箔電極が、前記誘電体に対して同軸的に配置され、
前記誘電体が、前記放電容器に対して同軸的に配置されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のエキシマランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エキシマランプに関し、特に、放電容器内に配置される箔電極および箔電極を覆う誘電体の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
エキシマランプでは、一対の電極間に数kVの高周波電圧を印加することにより、放電空間においてエキシマ放電を発生させる。例えば、二重管型のエキシマランプでは、軸方向に延びる2つの同軸円筒管によって発光部が構成され、内側管と外側管との間に形成される放電空間に対し、放電ガスが封入される。そして、誘電体である内側管内あるいは管壁に設けられた電極(内側電極)と、外側管の外表面側にある電極(外側電極)との間に高周波電圧を印加することによって、放電発光させる。
【0003】
エキシマランプへ大電力を供給すると、電極を覆う誘電体と電極との間の熱膨張差によって電極が誘電体から剥離しやすくなる。そのため、誘電体に被覆される箔電極の両端部を、ナイフエッジ状に形成する(特許文献1参照)。電極縁部分において電解集中が生じ、電解強度が強くなることにより、比較的低電圧の印加によっても点灯始動可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5504095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
箔電極の両端部付近をナイフエッジ形状にすることにより、ランプ点灯時、箔電極の幅方向縁付近における電解強度が過度に強くなり、放電空間内において放電のランプ周方向に対する偏りが生じる。特に、箔電極を覆う誘電体との密着が十分でない場合、剥離発生に繋がる恐れがある。
【0006】
したがって、箔電極を誘電体で覆うエキシマランプにおいて、放電の偏りを抑えることが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、箔電極を被覆する誘電体の形状に対し、技術的動向が向けられている。本発明の一態様であるエキシマランプは、ランプ軸方向に沿って帯状に延びる箔電極と、箔電極を被覆する誘電体と、誘電体との間に放電空間を形成する管状の放電容器とを備える。そして、誘電体が、箔電極の幅方向に沿って厚さが略一定の四角柱状部と、直方形部の両端で一体に成形された半円柱状部とによって構成される。
【0008】
ここで、「四角柱状部」は、そのランプ径方向に沿った断面が正方形や長方形などの四角形に近似する形状であって、ランプ軸方向に沿って一様な断面形状の柱状体であり、この四角柱状部が箔電極を厚さ方向の両側から被覆することを示す。また、「半円状部」は、そのランプ径方向に沿った断面が半楕円形などの半円形に近似する形状であって、ランプ軸方向に沿って一様な断面形状の半円柱状体であり、この半円柱状部が箔電極の幅方向の両側から被覆することを示す。
【0009】
誘電体の管軸方向から見た外観形状が、長楕円形または長円形となるように構成されている。例えば、箔電極が、誘電体に対して同軸的に配置され、誘電体が、放電容器に対して同軸的に配置されるように、構成することが可能である。
【0010】
ここで、「長楕円形」、「長円形」は、その断面がオーバル状である外観形状であることを示す。ここでの「オーバル状」という用語には、楕円状、互いに略平行な直線部分を間に介在して両端が反円状となる長楕円状や長円状が含まれる。ここで、「長楕円状」とは、互いに略平行な直線部分の区画があって、その両端から半楕円状となった断面形状として定義される。
【0011】
誘電体は、箔電極の形状に応じてその断面を定めることが可能である。例えば、誘電体の断面が長楕円状または長円状となるように構成することが可能である。誘電体の断面の輪郭線に関しては、箔電極の幅方向に平行な一対の直線状の輪郭線と、直線状の輪郭線の両端をそれぞれ接続する半楕円または半円状の輪郭線とによって構成することが可能である。
【0012】
誘電体において、四角柱状部と、半円柱状部との境界の位置は、箔電極の幅方向両端よりも電極幅中央側にあるように、構成することが可能である。
【0013】
例えば、箔電極の厚さ方向に沿った箔電極から誘電体の外表面までの距離をT2、箔電極の厚さ方向に沿った誘電体の幅をW2とし、また、箔電極の幅方向に沿った誘電体の幅をW1、箔電極の幅方向に沿った箔電極の端から誘電体の外表面までの距離をT1とした場合、以下の式を満たすことを特徴とする。

W2<W1
T2>T1
【0014】
放電容器の形状は様々であり、例えば、箔電極の厚さ方向に沿った誘電体の幅よりも大きく、箔電極の幅方向に沿った誘電体の幅より小さい内径を有する突起状部分が、放電容器の一方の軸方向端部に同軸的に形成することが可能である。そして、誘電体の一方の軸方向端部が、突起状部分の内部空間を閉塞しないように、突起状部分の内面と部分的に接触するように、構成することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、箔電極を誘電体で覆うエキシマランプにおいて、放電の偏りを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態であるエキシマランプの概略的断面図である。
図2図1のII-IIに沿ったエキシマランプの断面図である。
図3図2の箔電極の拡大断面図である。
図4図2の誘電体の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、図面を参照して本実施形態であるエキシマランプについて説明する。
【0018】
図1は、本実施形態であるエキシマランプの概略的平面図である。図2は、図1のII-IIに沿ったエキシマランプの断面図である。
【0019】
エキシマランプ10は、石英ガラスなどの誘電材料から成る管状の放電管(放電容器)20を備え、ここでは管径(ランプ径)方向に沿った断面が円形状の放電管として構成されている。放電管20内には、キセノンガスなどの希ガス、あるいはこれらの混合ガスが、放電ガスとして封入されている。
【0020】
放電管20内部には、管軸(ランプ軸)Cに沿って帯状に延びる箔電極30が配置されている。箔電極30は、柱状の誘電体50によって被覆されており、放電空間Sに露出せず、誘電体50内に埋設されている。
【0021】
箔電極30は、誘電体50の中心位置にその幅方向および厚さ方向の中心位置を合わせた状態で同軸的に配置されている。また、誘電体50は、放電管20に対して同軸的に配置されている。したがって、箔電極30は、放電管20に対し同軸的な位置に配置され、管軸Cに関して対称的な位置に配置されている。図2では、箔電極30の幅方向をY方向、それに直交する方向(厚さ方向)をX方向として定めている。
【0022】
放電管20の外面に配設された外側電極40は、ここでは導電性の金属からなる線状の電極部を放電管20の外表面に沿って巻き付けて配設した構成であり、管軸Cに沿って螺旋状に巻かれ、所定間隔で離間するように配置されている。給電線70は、箔電極30の管軸Cに沿った端部に接続し、また、外部に設置された電源部(図示せず)と接続している。ここでは、放電管20内において放電が発生する軸方向長さ(発光長)として、外側電極40と箔電極30とが管径(ランプ径)方向に沿って対向する、管軸(ランプ軸)C方向に沿った区間(電極対向区間)を、符号BLで示している。
【0023】
箔電極30、外側電極40は、ここではその極性が陽極、陰極に定められている。そして、高周波(例えば、数kHz~数十MHzの範囲)、高電圧(例えば、数kV~十数kVの範囲)が、給電線70を介して放電ランプ10に対して供給される。これにより、箔電極30を被覆する誘電体50と外側電極40との間で誘電体バリア放電が生じ、所定スペクトル(例えば、波長172nm)のエキシマ光が、放電空間Sから放射される。
【0024】
本実施形態のエキシマランプ10は、小型のエキシマランプとして構成される。例えば、放電管20内で放電が発生する軸方向長さ(発光長)は、20mm~400mmの範囲に定めることができる。また、放電管20の外径は、5mm~30mmの範囲、好ましくは8mm~25mmの範囲に定めることができる。
【0025】
放電管20の肉厚は、エキシマ光による放電管劣化の防止、および放電開始電圧の上昇を抑えることを考慮し、例えば、0.8mm~1.5mmの範囲に定めることができる。また、放電管20の内径は、長い放電距離による放電不安定、短い放電距離による照度不足を抑制することを考慮し、例えば、4mm~28mmの範囲、好ましくは6mm~23mの範囲に定められる。
【0026】
放電距離、すなわち誘電体50と放電管20の内径との距離間隔は、放電空間の狭域化による照度不足の防止、放電距離拡大による放電の不安定化防止などを考慮し、2mm~12mmの範囲、好ましくは3mm~10mmの範囲に定めることが可能である。
【0027】
箔電極30は、電極幅に対して厚みが抑えられた極薄の帯状電極として構成される。ここでは、箔電極30の電極幅に対する厚さは、1/30以下、好ましくは1/50以下、更に好ましくは1/100以下に定められる。なお、図2では、箔電極30の厚みを誇張して描いている。
【0028】
例えば、箔電極30の厚さは、電流容量や製造容易さ、および誘電体50との剥離防止などを考慮し、20μm~50μmの範囲に定めることができる。一方、箔電極30の幅は、電流容量や製造容易さ、電極面積肥大化による放電光の遮断防止などを考慮することによって、1.2mm~10mmの範囲に定めることが可能である。
【0029】
箔電極30の電極材料は、導電性の高い金属あるいは合金によって成形することが可能である。また、電界研磨しやすい材料によって構成することもできる。ここでは、モリブデン、あるいはそれを含む合金などが使用されている。
【0030】
誘電体50は、ここでは、誘電材料(SiO2など)によって構成されている。誘電体50の厚さは、絶縁性を維持させる限界、放電開始電圧の上昇防止などを考慮し、例えば、0.1mm~2mmの範囲に定めることができる。
【0031】
放電管20の一方の端部には、突起状部分(以下、排気管という)22が形成されている。排気管22は、ランプ製造工程で形成される部分であり、ここでは、その素材であるガラス管の先端側を加熱変形して縮径し、ガラス管よりも小型のチップ管を溶着することにより、排気管22が一体的に成形される。
【0032】
図3は、図2の箔電極30の拡大断面図である。
【0033】
箔電極30は、上述したように、箔電極の幅wに対して厚みが非常に薄く形成された電極であり、箔電極の幅wに対する厚さtは、1/30以下に抑えられている。箔電極30は、厚さ一定(=t)の平坦部32を有し、そして、平坦部32の幅方向両端32A、32Bから箔電極30の幅方向両端E1、E2までクサビ形に先が薄くなるクサビ形状部34A、34Bを有する。
【0034】
箔電極30のクサビ形状部34A、34Bは、ここでは縁まで鋭く尖ったクサビ形状になっている。すなわち、箔電極30は、幅方向の中心から縁の間で先鋭化しているのではなく、平坦部32の幅方向両端32A、32Bから幅方向両端E1、E2の間で先鋭化している。また、幅方向両端E1、E2が丸まって厚みがある状態ではなくて、箔電極30の幅方向両端E1、E2が尖って先鋭化して、平坦部32の幅方向両端32A、32Bに向けてそれぞれ一定の傾斜角度で厚さが大きくなっている。
【0035】
例えば、箔電極30の幅方向両端E1、E2の角度θ1、θ2(縁Eの角度θ)は、被覆される誘電体との境界部分に生じた隙間による剥離などの生じにくさ、電流容量に応じた平坦部の断面積の大きさ、ジュール熱の発生による温度上昇の抑制などを考慮することによって、2°以上15°以下の範囲、好ましくは10°以下の範囲に定めることができる。なお、平坦部32の断面の傾斜角度は、2°未満の範囲に定めることができる。この角度θは、箔電極30の縁Eから約100μmの範囲付近の断面を拡大観測して、箔電極の縁Eから平坦部32に向けて厚さが大きくなる角度から定めることができる。これにより、箔電極30では、エッジ状の縁Eが、管軸C方向に沿って電極全体に形成されている。
【0036】
平坦部32は、その幅方向中心(中央部)が管軸Cと一致するように形成され、クサビ形状部34A、34Bは、平坦部32に対して対称的形状である。また、クサビ形状部34A、34Bは、箔電極30の電極幅wに対するクサビ形状部34A、34Bの幅方向長さd1(d1/w)は、0.2以下に定められている。ここではその幅方向両端から平坦部32の幅方向両端32A、32Bに向けた断面の傾斜角度θがそれぞれ一定となるように形成されている。
【0037】
さらに、平坦部32は、箔電極30の最大厚さTの7割以上の割合を占める厚さを有するように形成されている。例えば、箔電極30の電極幅wに対する平坦部32の幅方向両端32A、32Bの間の長さd(d/w)は、0.6以上に定められている。
【0038】
このような電極形状により、箔電極30と誘電体50との密着性を高めて剥離を抑えながら、点灯始動性の優れた小型のエキシマランプ10を提供することができる。
【0039】
まず、箔電極30の管軸Cに沿って延びる縁Eが鋭く尖っていることにより、電界集中が生じる。これによって、放電開始電圧を低く抑えながら、放電発光させることができる。また、クサビ形状部34A、34Bが縁まで鋭く尖ったクサビ形状であることにより、箔電極30の縁E付近の断面が軸方向に線状となり、放電開始電圧をより低く抑えることができるとともに、被覆される誘電体50との境界部分に隙間が生じにくくなり、剥離などが生じにくくなる。
【0040】
さらに、箔電極30は誘電体50および放電管20に対して同軸的に配置され、箔電極30の両方の縁Eと放電管20の内面までの距離である放電距離が等しい。そのため、放電管20から全体的にバランス良く光が放射される。
【0041】
一方、箔電極30に対し、平坦部32を形成することにより、箔電極30と誘電体50との密着性を高めて剥離を抑えることができる。すなわち、厚みtが一定の平坦部32を設けることにより、極めて薄い厚さtの箔電極30に対し、比較的大きな断面積が確保されることになる。特に、平坦部32が箔電極30の6割以上を占めるため、ランプ点灯中、断面積が比較的大きな平坦部32を電流が流れることで、箔電極30におけるジュール熱の発生が抑制される。
【0042】
その結果、箔電極30が厚さ方向(X方向)、幅方向(Y方向)に熱膨張するのを抑えることができる。すなわち、大きな断面積を確保するため、箔電極30を幅方向に特段長くする必要がなく、幅方向に沿った熱膨張が大きくなるのを防ぐことができる。また、箔電極30の厚みを特段増す必要がないため、厚さ方向に沿った熱膨張が大きくなるのを防ぐことができる。
【0043】
さらに、平坦部32の幅方向両端32A、32Bからそれぞれ幅方向両端E1、E2に向けて形成されるクサビ形状部34A、34Bが縁まで鋭く尖ったクサビ形状であるため、電解強度を箔電極30の縁Eに集中させながら、誘電体50と箔電極30との間での剥離発生などを抑制することができる。
【0044】
また、断面の傾斜角度一定のクサビ形状部34A、34Bを形成することにより、電解研磨などによってクサビ形状部34A、34B表面を研磨することが容易になる。これにより、誘電体50との境界部分での剥離発生を抑制することができる。
【0045】
なお、箔電極30の形状に関しては、電極幅方向に沿って中央部から滑らかに電極両端に向けて傾斜させた断面をもつナイフエッジ形状とし、平坦部を設けない箔電極で構成することも可能である。
【0046】
図4は、図2に示す誘電体50の拡大断面図である。
【0047】
本実施形態における誘電体50は、図3に示した箔電極30の配置および形状に合わせて、箔電極30の任意の表面から誘電体50の外表面50Sまでの距離(箔電極までの厚み)の相違を少なくした断面形状を有する。
【0048】
具体的には、誘電体50の断面は、長楕円状または長円状となるように定められている。言い換えれば、誘電体50の断面は、オーバル状になっている。誘電体50は、管軸(ランプ軸)Cに沿って箔電極30を被覆する範囲に渡って、略同一の断面形状になっている。
【0049】
ここで、図4に示すように、誘電体50の断面において、箔電極30の幅方向両端E1、E2(平坦部32の幅方向端32A、32B)付近から外側、すなわち誘電体外表面50S2側では、その両側の輪郭線が電極幅方向に対称な一対の半楕円状になっている。一方、箔電極30の平坦部32(中央部)と向かい合う断面輪郭線は、箔電極30から誘電体厚さ方向(X方向)に沿った誘電体外表面までの距離が略等しくなるように、箔電極30の幅方向(Y方向)に沿って平行で電極厚さ方向に対称な一対の直線状の輪郭線となる。この直線状の輪郭線の両端は、それぞれ半楕円状の輪郭線の両端と接続して、連続的につながる長楕円の輪郭線が形成される。誘電体50の断面を、長円状としたときの輪郭線も同様である。
【0050】
ここでは、箔電極30の平坦部32と略平行な四角柱状部の外表面50S1が形成される区間M0の部分を、中央部52とする。また、中央部52の両端から電極幅方向(Y方向)の外側に向けて凸状の半円柱部の外表面50S2が形成される区間M1の部分を、曲面部54とする。
【0051】
この四角柱状部は、そのランプ径方向に沿った断面が正方形や長方形などの四角形に近似する形状であって、ランプ軸方向に沿って一様な断面形状の柱状体である。この四角柱状部が一対で、箔電極の幅方向の中央部付近を厚さT2が略一定となるように、電極厚さ方向の両側から被覆する。
【0052】
また、半円状部は、そのランプ径方向に沿った断面が半楕円形などの半円形に近似する形状であって、ランプ軸方向に沿って一様な断面形状の半円柱状体である。この半円柱状部が一対で、箔電極の幅方向の縁付近を電極幅方向の厚さT1、電極厚さ方向の厚さT2で、縁付近を中心に囲むように、電極幅方向の両側から被覆する。
【0053】
一対の四角柱状部の電極幅方向の両端には、それぞれ一対の半円状部が一体に成形され、この四角柱状部と半円柱状部との境界の位置は、箔電極の幅方向両端よりも電極幅中央側にある。
【0054】
中央部52の断面輪郭線は、長円状または長楕円状としたときの直線部分に相当する輪郭線となる。曲面部54の断面輪郭線は、半楕円状としたときは、中央部52に向かって漸近的に曲率が大きくなっていく輪郭線であり、半円状としたときには中央部54に向かって一定の曲率の輪郭線となる。
【0055】
誘電体50の中央部52と曲面部54との境界は、箔電極30の幅方向(Y方向)に沿って、箔電極30の両端E1、E2、好ましくは平坦部32の幅方向端32A、32Bよりも箔電極30の幅方向中央(管軸C)側に位置する。すなわち、箔電極の幅方向(Y方向)に沿った区間M0の長さは、wよりも小さく、好ましくはdよりも小さくなるように定められている。また、区間M1の長さは、T1よりも大きくなるように形成されている。
【0056】
誘電体50の断面輪郭線は、断面円状の誘電体で構成する場合と比べ、箔電極30の断面輪郭線にできるだけ近づけた輪郭線となっている。そのため、箔電極30の幅方向端E1、E2付近における誘電体外表面50Sまでの距離が、平坦部32における誘電体外表面50Sまでの距離と大きく相違しない。
【0057】
例えば、誘電体50の厚さ方向、すなわち箔電極の厚さ方向(X方向)に沿って、箔電極30と誘電体50の中央部52の誘電体外表面50S1との距離をT2、箔電極の厚さ方向(X方向)に沿った誘電体50の幅をW2と定め、また、誘電体50の幅方向、すなわち箔電極の幅方向(Y方向)に沿った誘電体50の幅をW1、箔電極30の両端E1、E2から箔電極の幅方向(Y方向)に沿った誘電体外表面50S2までの距離をT1とすると、以下の式を満たすように、誘電体50の断面形状を定めることができる。

W2<W1 ・・・・(1)
T2>T1 ・・・・(2)
【0058】
なお、誘電体50の断面形状は、長楕円状以外にすることも可能であり、箔電極30の形状などを考慮して定めてもよい。例えば、上述したように、箔電極30が、電極幅方向に沿って中央部から滑らかに電極両端に向けて傾斜させた断面をもつナイフエッジ形状の場合、箔電極30の断面を楕円状にしてもよい。また、箔電極30の両端部付近で丸みを帯びる、あるいは急峻な角度でエッジ状になるような場合、箔電極30の断面を長円状にしてもよい。
【0059】
このような誘電体50を備えたエキシマランプ10は、例えば、以下に説明する製造方法によって製造することができる。
【0060】
まず、箔電極に給電線を抵抗溶接などによって接続し、誘電体被膜材となるガラス管に挿入する。箔電極挿入後にガラス管内を真空にし、その後、誘電体被膜材を外側から加熱し、箔電極と溶着させる。このとき、上述した誘電体50の断面形状となるように、加熱調整を行う。
【0061】
例えば、ガラス管を回転させながらバーナ等により加熱することで、ガラス管の内表面が箔電極の両端(クサビ形状部)と接触するまで周方向に均一に収縮(縮径)させて、箔電極の両端(クサビ形状部)に接触した部分の間のガラス管を箔電極の厚さ方向に沿って収縮させて平坦部と一体化させるという工程をすることにより、断面長楕円状または断面長円状の誘電体を形成することが可能である。なお、誘電体をコーティングする工程やガラス管を切削加工する工程を代わりに行っても良い。
【0062】
管軸方向に沿った電極縁部に相当するガラス管の位置に、鍔状のいわゆるそろばん珠形状封止部を形成する。そして、一方の端に排気管、他方の端に挿入口を設けた石英ガラスなどの放電管を形成し、箔電極を溶着させた誘電体を、放電管内に挿入し、放電管の挿入口をそろばん珠形状封止部と溶着させる。
【0063】
放電管全体を加熱しながら、排気管を通じた真空引きを行い、不純物を除去する。そして、放電ガスを封入した後に排気管を封止し、放電管の外面に外側電極を配設する。
【0064】
このように本実施形態によれば、誘電体50によって箔電極30を被覆し、誘電体50と放電管20との間に放電空間Sを形成したエキシマランプ10において、断面長楕円状または断面長円状の誘電体50に対し、箔電極30が同軸的に配置された状態で被覆されている。誘電体50は、放電管20に対して同軸的に配置される。
【0065】
電解強度が箔電極30の両端E1、E2付近で過度に大きくならず、エキシマ放電が曲面部54の誘電体外表面50S2に沿って拡がり、ランプ周方向に沿った放電の偏りが生じるのを防ぐことができる。その一方で、箔電極30の両端E1、E2が尖っている(クサビ形状)になっているため、電解集中により、比較的低電圧の印加によっても点灯始動が容易となる。
【0066】
また、箔電極30の幅方向両端E1、E2が、好ましくは平坦部32A、32Bが誘電体50の中央部52よりも誘電体外表面50S2側に位置し、箔電極30が、好ましくは平坦部32が誘電体50の中央部52よりも箔電極の幅方向(Y方向)に沿って延びている。そのため、良好な点灯始動性を維持できる。さらに、曲面部54の断面輪郭線が、曲率が漸近的に大きくなって半円状とすることにより、中央部52と曲面部54との境界付近において、誘電体50の収縮などによるクラック発生を抑制することができる。
【0067】
なお、誘電体50の断面は、その輪郭線が電極幅方向に沿った輪郭線であればよく、厳密に直線状である必要はなく、僅かな曲がりが生じてあってもよい。例えば、箔電極30が、電極幅方向中心から滑らかにナイフエッジ形状に構成される場合、それに合わせた断面輪郭線をもつ中央部を形成してもよい。また、曲面部においても、その断面輪郭線が半円状になるように形成してもよい。
【0068】
次に、図1を用いて、放電管の一方の端部に形成された排気管(突起状部分)に入り込んだ誘電体先端部について説明する。
【0069】
エキシマランプ10は、端部に断面中空円状である排気管22を形成した管状の放電管20を備える。そして、誘電体50の管軸C方向に沿った先端部50Tは、電極対向区間BLを超え、排気管22まで延びている。誘電体50の先端部50Tは、その断面形状が図4に示す長楕円状または長円状の断面を維持するように縮径した形状になっている。
【0070】
排気管22の内径の大きさは、誘電体50が排気管22に部分的に入り込み、保持されるように定められている。具体的には、排気管22の内径が、誘電体50の電極幅方向長さW1よりも小さく、誘電体50の電極厚さ方向長さW2よりも大きい。これにより、誘電体50の先端部50Tは、排気管22の内面22Sと電極幅方向(Y方向)に沿った部分(曲面部54の誘電体外表面50S2)で接触し、放電管20によって同軸的に保持されることで、十分な沿面距離を確保することが可能となり、内側電極40の管軸C方向の先端を起点とする先端部50T付近での沿面放電を防ぐことができる。
【0071】
一方で、誘電体50は、その先端部50Tにおいても、図4に示すような断面長楕円状または断面長円状を有するため、誘電体50の先端部50Tは、排気管22の内部空間をすべて閉塞するように接触せず、排気管22の内面22Sと電極厚さ方向(X方向)に沿った部分(中央部52の誘電体外表面50S1)との間で隙間が生じている。これにより、排気管22を通じた真空引きや放電ガスを封入する排気管として機能する。
【符号の説明】
【0072】
10 エキシマランプ
20 放電管(放電容器)
30 箔電極
40 外側電極
50 誘電体
図1
図2
図3
図4