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特開2024-136158操作量指示情報生成方法、学習済モデル生成方法、操作量指示情報生成装置、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136158
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】操作量指示情報生成方法、学習済モデル生成方法、操作量指示情報生成装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   E02D 23/02 20060101AFI20240927BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20240927BHJP
【FI】
E02D23/02 F
G06N20/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047163
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000219406
【氏名又は名称】東亜建設工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000222668
【氏名又は名称】東洋建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】593031735
【氏名又は名称】株式会社小島組
(71)【出願人】
【識別番号】390032229
【氏名又は名称】株式会社エス・ケー・ケー
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】琴浦 毅
(57)【要約】
【課題】土木作業を行う作業船上の重機を自律動作させるための操作量指示情報を生成する。
【解決手段】情報処理装置(10)は、土木作業を行う作業船上の重機に対して行われるオペレータの操作内容を表す時系列データを用いて特定された、時刻と操作内容ごとの操作量との関係を表すS字型又は逆S字型の関数であって、シグモイド関数、tanh関数及び指数関数のうちの少なくとも一つを含む関数を用いて、上記作業船上の重機を操作するための操作量指示情報を生成する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
土木作業を行う作業船上の重機に対して行われるオペレータの操作内容を表す時系列データを用いて特定された、時刻と前記操作内容ごとの操作量との関係を表すS字型又は逆S字型の関数であって、シグモイド関数、tanh関数及び指数関数のうちの少なくとも一つを含む関数を用いて、前記作業船上の重機を操作するための操作量指示情報を生成する第1ステップ、
を情報処理装置が実行する操作量指示情報生成方法。
【請求項2】
前記関数に含まれるパラメータを決定する第2ステップ、
を前記情報処理装置が更に実行する請求項1に記載の操作量指示情報生成方法。
【請求項3】
前記土木作業の作業環境を表す環境情報を取得する第3ステップ、を前記情報処理装置が更に実行し、
前記第2ステップにおいては、(i)過去に行われた土木作業の作業環境を表す環境情報と、(ii)過去に行われた土木作業を行った作業船上の重機に対してなされた操作内容ごとの操作量と時刻との関係を表すS字型又は逆S字型の関数を規定するパラメータと、の相関関係を機械学習させた学習済モデルに、前記第3ステップにおいて取得した前記環境情報を入力することにより、前記操作量指示情報の生成に用いる関数のパラメータを決定する、
請求項2に記載の操作量指示情報生成方法。
【請求項4】
前記機械学習の方法として、線形回帰、決定木法、サポートベクターマシン、ニューラルネットワークのいずれかを用いる請求項3に記載の操作量指示情報生成方法。
【請求項5】
前記第1ステップにおいては、前記土木作業における前記重機の複数の動作の各々に対応する関数を用いて、各動作のための操作量指示情報を生成する、
請求項1又は2に記載の操作量指示情報生成方法。
【請求項6】
前記操作量指示情報は、前記重機による操作内容である浚渫用のバケット又は捨石マウンド締固め用の重錘の昇降、前記バケットの開閉、前記重錘又は前記バケットを吊持するクレーンの起伏及び前記クレーンの旋回の少なくとも1つを制御する情報である、
請求項3に記載の操作量指示情報生成方法。
【請求項7】
前記関数は、前記バケット又は前記重錘の高さ、前記バケットの開口度、前記クレーンの起伏及び前記クレーンの旋回角の少なくとも1つを示す情報と、時刻との関係を表す関数である、
請求項6に記載の操作量指示情報生成方法。
【請求項8】
前記環境情報は、作業船および土木作業対象箇所の平面位置、水深、潮位、地盤条件、掘削深度、捨石マウンド高、外力条件、バケット容量、重錘重量、作業船の仕様、及び作業船の動揺特性、の少なくとも1つを示す情報を含む、
請求項3に記載の操作量指示情報生成方法。
【請求項9】
前記第1ステップにおいて生成された操作量指示情報を用いて前記作業船上の重機に土木作業を行わせる第4ステップ、
を前記情報処理装置が更に実行する請求項1又は2に記載の操作量指示情報生成方法。
【請求項10】
(i)入力変数としての作業船上の重機が過去に行った土木作業の作業環境を表す環境情報と、
(ii)出力変数としての当該土木作業を行った作業船上の重機に対してなされた操作内容ごとの操作量と時刻との関係を表すS字型又は逆S字型の関数であってシグモイド関数、tanh関数及び指数関数のうちの少なくとも一つを含む関数を規定するパラメータと、の相関関係を機械学習させた学習済モデルを生成するステップ、
を情報処理装置が実行する学習済モデル生成方法。
【請求項11】
土木作業を行う作業船上の重機に対して行われるオペレータの操作内容を表す時系列データを用いて特定された、時刻と前記操作内容ごとの操作量との関係を表すS字型又は逆S字型の関数であって、シグモイド関数、tanh関数及び指数関数のうちの少なくとも一つを含む関数を用いて、前記作業船上の重機を操作するための操作量指示情報を生成する生成部、
を備えることを特徴とする操作量指示情報生成装置。
【請求項12】
請求項11に記載の操作量指示情報生成装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、前記生成部としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業船上の重機により土木作業を行うための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
作業船による浚渫、捨石マウンドの重錘締固め等の土木工事においてはバケットの昇降、クレーンの旋回等の各種の操作が必要である。例えば港湾工事として代表的な浚渫工事のうち、グラブ浚渫については、作業船上のクレーンを用いて、浚渫用バケットの上昇・下降、水平移動、開閉をオペレータが操作し、浚渫が行われる。また、マウンドの構築のために海底に投入する捨石についても同様にバケットによる石材の掴み、上昇・下降、水平移動、石材の投入等の操作を、また重錘締固めにおいては、重錘の上昇・下降・落下、水平移動をオペレータが操作して、工事が行われる。
【0003】
また、作業機械の動作を把握する技術として、特許文献1には、時系列で変化する稼働に伴う機械の情報を特徴量とする特徴ベクトルを時分割で演算し、複数の特徴ベクトルを複数のクラスタに分類して識別IDを付与することにより分類モデルを作成し、分類モデルに基づいて所定の動作を把握するための出力情報を生成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-83497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、捨石、浚渫、捨石マウンド締固め工事等での土木作業を行う作業船で用いられるクレーン等の建設機械(以下重機ともいう)の操作は経験則によるものが大きく、オペレータの技能によって作業の効率が大きく異なることから熟練のオペレータの豊富な経験と技能が求められるが、高齢化による熟練オペレータの退職により、そのような経験と技能を有するオペレータを確保することは難しくなる一方である。また、若いオペレータにおいても、熟練オペレータの減少により、そのような熟練オペレータから経験と技能を取得する機会が減ってきている。そのため、近年、労働生産性の向上等を目的として、重機の操作を自動化する技術が求められている。特許文献1に記載の技術では、短時間で荷役作業を行うものの、クレーン等の重機を用いた土木作業を自動化することはできなかった。
【0006】
本発明の一態様は、上記問題点に鑑みたものである。本発明の一態様は、浚渫作業や捨石マウンドの締固め作業に用いられる重機のための操作量指示情報を生成し、当該情報に基づき自動操作できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る操作量指示情報生成方法は、土木作業を行う作業船上の重機に対して行われるオペレータの操作内容を表す時系列データを用いて特定された、時刻と前記操作内容ごとの操作量との関係を表すS字型又は逆S字型の関数であって、シグモイド関数、tanh関数及び指数関数のうちの少なくとも一つを含む関数を用いて、前記作業船上の重機を操作するための操作量指示情報を生成する第1ステップ、を情報処理装置が実行する。
【0008】
上記の構成によれば、土木作業を行う作業船上の重機を操作内容に応じた自律動作をさせるための操作量指示情報を生成することができる。
【0009】
上記操作量指示情報生成方法において、前記関数に含まれるパラメータを決定する第2ステップ、を前記情報処理装置が更に実行してもよい。
【0010】
上記の構成によれば、情報処理装置が決定したパラメータで表現される簡便な関数を用いて、複雑な演算を行うことなく操作量指示情報を生成することができる。
【0011】
上記操作量指示情報生成方法において、前記土木作業の作業環境を表す環境情報を取得する第3ステップ、を前記情報処理装置が更に実行し、前記第2ステップにおいては、(i)過去に行われた土木作業の作業環境を表す環境情報と、(ii)過去に行われた土木作業を行った作業船上の重機に対してなされた操作内容ごとの操作量と時刻との関係を表すS字型又は逆S字型の関数を規定するパラメータと、の相関関係を機械学習させた学習済モデルに、前記第3ステップにおいて取得した前記環境情報を入力することにより、前記操作量指示情報の生成に用いる関数のパラメータを決定してもよい。
【0012】
上記の構成によれば、機械学習させた学習済モデルを用いてS字型又は逆S字型の関数のパラメータを決定し、決定したパラメータを用いて操作量指示情報を生成することにより、上記土木作業により適した操作量指示情報を生成することができる。
【0013】
上記操作量指示情報生成方法において、前記機械学習の方法として、線形回帰、決定木法、サポートベクターマシン、ニューラルネットワークのいずれかを用いてもよい。
【0014】
上記の構成によれば、線形回帰、決定木法、サポートベクターマシン、ニューラルネットワークのいずれかを用いて機械学習させた学習済モデルを用いて関数のパラメータを決定することにより、土木作業により適した操作量指示情報を生成することができる。
【0015】
上記操作量指示情報生成方法において、前記第1ステップにおいては、前記土木作業における前記重機の複数の動作の各々に対応する関数を用いて、各動作のための操作量指示情報を生成してもよい。上記の構成によれば、土木作業を行う重機の複数の動作の各々に適した操作量指示情報を生成することができる。
【0016】
上記操作量指示情報生成方法において、前記操作量指示情報は、前記重機による操作内容である浚渫用のバケット又は捨石マウンド締固め用の重錘の昇降、前記バケットの開閉、前記重錘又は前記バケットを吊持するクレーンの起伏及び前記クレーンの旋回の少なくとも1つを制御する情報であってもよい。上記の構成によれば、浚渫用のバケット又は重錘を制御するための操作量指示情報を生成することができる。
【0017】
上記操作量指示情報生成方法において、前記関数は、前記バケット又は前記重錘の高さ、前記バケットの開口度、前記クレーンの起伏及び前記クレーンの旋回角の少なくとも1つを示す情報と、時刻との関係を表す関数であってもよい。上記の構成によれば、浚渫用のバケット又は重錘の高さ、バケットの開口度、及びクレーンの旋回角の少なくとも1つを指定する操作量指示情報を生成することができる。
【0018】
上記操作量指示情報生成方法において、前記環境情報は、作業船および土木作業対象箇所の平面位置、水深、潮位、地盤条件、掘削深度、捨石マウンド高、外力条件、バケット容量、重錘重量、作業船の仕様、及び作業船の動揺特性、の少なくとも1つを示す情報を含んでもよい。上記の構成によれば、作業環境により適した操作量指示情報を生成することができる。
【0019】
上記操作量指示情報生成方法において、前記第1ステップにおいて生成された操作量指示情報を用いて前記作業船上の重機に土木作業を行わせる第4ステップ、を前記情報処理装置が更に実行してもよい。上記の構成によれば、作業船上の重機をオペレータが操作することなく、作業船上の重機に土木作業を行わせることができる。
【0020】
また、本発明に係る学習済モデル生成方法は、(i)入力変数としての作業船上の重機が過去に行った土木作業の作業環境を表す環境情報と、(ii)出力変数としての当該土木作業を行った作業船上の重機に対してなされた操作内容ごとの操作量と時刻との関係を表すS字型又は逆S字型の関数であってシグモイド関数、tanh関数及び指数関数のうちの少なくとも一つを含む関数を規定するパラメータと、の相関関係を機械学習させた学習済モデルを生成するステップ、を情報処理装置が実行する。
【0021】
上記の構成により生成される学習済モデルを用いることにより、環境情報を入力することで作業船上の重機を動作させるための操作量指示情報を生成することができる。
【0022】
また、本発明に係る操作量指示情報生成装置は、土木作業を行う作業船上の重機に対して行われるオペレータの操作内容を表す時系列データを用いて特定された、時刻と前記操作内容ごとの操作量との関係を表すS字型又は逆S字型の関数であって、シグモイド関数、tanh関数及び指数関数のうちの少なくとも一つを含む関数を用いて、前記作業船上の重機を操作するための操作量指示情報を生成する生成部、を備える。
【0023】
上記の構成によれば、土木作業を行う作業船上の重機を自律動作させるための操作量指示情報を生成することができる。
【0024】
また、本発明に係るプログラムは、前記操作量指示情報生成装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、前記生成部としてコンピュータを機能させるためのプログラムである。
【0025】
上記の構成によれば、土木作業を行う作業船上の重機を自律動作させるための操作量指示情報を生成することができる。
【0026】
本発明の各態様に係る操作量指示情報生成装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記操作量指示情報生成装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記操作量指示情報生成装置をコンピュータにて実現させる操作量指示情報生成装置の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0027】
本発明の一態様によれば、土木作業を行う作業船上の重機を自律動作させるための操作量指示情報を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】実施形態1に係る浚渫作業を行う重機の一例を示す図である。
図2】実施形態1に係る捨石マウンドの重錘締固め作業を行う重機の一例を示す図である。
図3】実施形態1に係る情報処理装置の機能構成を示すブロック図である。
図4】実施形態1に係る浚渫作業の流れの一例を示す図である。
図5】実施形態1に係る捨石マウンドの重錘締固め作業の流れの一例を示す図である。
図6】浚渫作業におけるバケットの高さの時間的な変化の一例を示す図である。
図7】浚渫作業におけるクレーンの旋回角度の時間的な変化の一例を示す図である。
図8】浚渫作業におけるバケットの開口度の時間的な変化の一例を示す図である。
図9】浚渫作業におけるクレーンの起伏角度の時間的な変化の一例を示す図である。
図10】捨石マウンドの重錘締固め作業における重錘の高さの時間的な変化の一例を示す図である。
図11】実施形態1に係る操作量指示情報生成方法の流れの一例を示すフロー図である。
図12】実施形態2に係る情報処理装置の機能構成を示すブロック図である。
図13】実施形態2に係る操作量指示情報生成方法の流れの一例を示すフロー図である。
図14】実施形態2に係る学習済モデル生成方法の流れの一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
〔実施形態1〕
<1.操作量指示情報生成方法の概要>
まず、本実施形態に係る操作量指示情報生成方法の概要を説明する。本実施形態に係る操作量指示情報生成方法は、作業船上の重機に土木作業を行わせるための操作量指示情報を生成する方法である。作業船上の重機は一例として、均し、捨て石、浚渫作業等の土木作業を行う重機である。操作量指示情報は、土木作業において重錘、バケット、クラムシェル等の作業用器具を稼動させるための情報である。
【0030】
作業船は、一例として起重機船であり、例えば、台船の甲板上にクレーンを備えるとともに、クレーンのジブの先端より繰り出された一対の吊りワイヤに吊り持ちされた以下の(1)~(3)の装置を具備する。
(1)重錘体を用いて水底マウンドの天端面及び法面を整形する装置
(2)バケットやクラムシェルを用いて水底の土砂を浚渫する装置
(3)バケットやクラムシェルを用いて船倉内の砕石を水底に投入する装置
【0031】
ここで、作業船上の重機の具体例について図1及び図2を用いて説明する。図1は、浚渫作業を行う重機の一例を示す図である。図1において、水面Sに停泊した起重機船W1は、グラブ浚渫を行う重機を備える作業船であり、起重機船W1上の重機は、浚渫用のバケットB11を備えたクレーンC12である。クレーンC12は、台船上に旋回可能に設置された旋回部と、旋回部に回動可能に支持されたジブとを備え、ジブの先端より繰り出された吊りワイヤの先端部にバケットB11が吊り持ちされている。クレーンC12のオペレータは、バケットの高さ(図中のZ軸方向の位置)、クレーンの旋回角度、バケットの開口度、等を調整しながら浚渫作業を行う。
【0032】
図2は、捨石マウンドの重錘締固め作業を行う重機の一例を示す図である。図2において、水面Sに停泊した起重機船W2上の重機は、重錘B21を備えたクレーンC22である。クレーンC22は、台船上に旋回可能に設置された旋回部と、旋回部に回動可能に支持されたジブとを備え、ジブの先端より繰り出された吊りワイヤの先端部に重錘B21が吊り持ちされている。捨石マウンドの重錘締固め作業においては、起重機船W2のジブ先端より繰り出された一対の吊りワイヤに支持された重錘B21の下面を吊りワイヤを繰り出して水底マウンドの天端面に向けて降下させてマウンドの天端面を締固めしている。クレーンC22のオペレータは、重錘B21の高さ(図中のZ軸方向における位置)、クレーンC22の旋回角度、等を調整しながら捨石マウンドの重錘締固め作業を行う。
【0033】
本実施形態に係る操作量指示情報生成方法は、オペレータが重機を操作することなく、重機を自律動作させるための操作量指示情報を生成するものである。本実施形態に係る操作量指示情報生成方法は、土木作業を行う作業船上の重機に対して行われる熟練オペレータの操作内容を表す時系列データを用いて特定された関数を用いて、作業船上の重機を操作するための操作量指示情報を生成する第1ステップ、を情報処理装置が実行する。ここで、操作量指示情報の生成に用いる関数は、時刻と操作内容ごとの操作量との関係を表すS字型又は逆S字型の関数であり、シグモイド関数、tanh関数及び指数関数のうちの少なくとも一つを含む。なお、熟練オペレータとは、経験が長く、習熟度の高いオペレータを意味する。本実施形態によれば、作業船上の重機による土木作業を、複雑な演算を行うことなく、簡便な関数を用いて自動化することができる。
【0034】
<2.情報処理装置の構成>
図3は、本実施形態に係る操作量指示情報生成方法を実行する情報処理装置10の機能構成を示すブロック図である。情報処理装置10は、本明細書に係る操作量指示情報生成装置の一例である。情報処理装置10は、制御部11、記憶部12、通信IF13、及び入出力IF14を備える。制御部11は、パラメータ決定部112、生成部113、及び出力部114を備える。
【0035】
パラメータ決定部112は、土木作業を行なった際に取得した作業環境を表す環境情報に基づき、操作量指示情報の生成に用いる関数に含まれるパラメータを決定する。ここで、上記関数は例えば、バケット又は重錘の高さ、バケットの開口度、重錘又はバケットを吊持するクレーンの起伏及びクレーンの旋回角の少なくとも1つを示す情報と、時刻との関係を表す関数である。ただし、関数は上述した例に限られず、土木作業を行う作業用器具又は重機の稼動量の時間的な変化を表す他の関数であってもよい。
【0036】
生成部113は、パラメータ決定部112が決定したパラメータにより規定される関数を用いて、上記作業船上の重機を自律動作させるための操作量指示情報を生成する。ここで、操作量指示情報は例えば、重機による操作内容である浚渫用のバケット又は捨石マウンド締固め用の重錘の昇降、バケットの開閉、重錘又はバケットを吊持するクレーンの起伏及びクレーンの旋回の少なくとも1つを制御する情報である。
【0037】
出力部114は、生成部113が生成した操作量指示情報を出力する。出力部114は、一例として、入出力IF14に接続された出力装置、例えばディスプレイ等(図示せず)に操作量指示情報を出力する。また、出力部114は、通信IF13に接続された他の装置、例えば携帯式端末等に操作量指示情報を出力してもよく、また、記憶部12の所定の記憶領域に操作量指示情報を書き込むことにより出力してもよい。
【0038】
また、出力部114は、生成部113が生成した操作量指示情報を通信IF13を経由して重錘又はバケットの動作を制御するクレーンの制御装置に出力することにより、作業船上のクレーンの旋回並びに重錘又はバケットの昇降及びバケットの開閉等を制御してもよい。換言すると、出力部114は、生成部113が生成した操作量指示情報を用いて、上記作業船上の重機に土木作業を行わせてもよい。
【0039】
記憶部12は、情報処理装置10が実行する処理に必要な各種のデータを記憶する。記憶部12は特に、作業ログWL及びパラメータPを記憶する。作業ログWLは、過去の土木作業の履歴を示すデータであり、作業船上の重機において過去に行われた操作内容を表す時系列データ、及び土木作業を行なった際に取得した作業環境を表す環境情報を含む。パラメータPは、情報処理装置10が操作量指示情報を生成する際に用いるS字型又は逆S字型の関数に含まれるパラメータである。パラメータPを含む関数は、シグモイド関数、tanh関数及び指数関数のうちの少なくとも一つを含む。なお、記憶部12は情報処理装置10の外付けとし、通信IF13により接続されるようにしてもよい。
【0040】
通信IF13は、他のコンピュータと通信するためのインタフェースである。通信IF13には、他のネットワークを介さずに他のコンピュータと通信を行うためのインタフェース、例えば、Bluetooth(登録商標)インタフェースが含まれ得る。また、通信IF13には、LAN(Local Area Network)を介して他のコンピュータと通信を行うためのインタフェース、例えば、Wi-Fi(登録商標)インタフェースが含まれ得る。入出力IF14には、コンピュータ読み取り可能な記録媒体である入力デバイス及び/又は出力デバイスが接続される。入出力IF14としては、例えばUSBやCD-ROM(Compact Disc ROM)などの光ディスクや磁気ディスク等が挙げられる。
【0041】
<3.浚渫作業の流れ>
ここで、作業船上の重機が行う土木作業の具体例として、浚渫作業と、捨石マウンドの重錘締固め作業とを用いて説明する。浚渫作業では、オペレータの操作によりバケットの昇降、水平移動、開閉等が制御される。
【0042】
図4は、浚渫作業の流れの一例を示す図である。浚渫作業においては、重機のバケットを水面Sから水底に向け沈降させ、掘削し、旋回し放土する、という一連の動作が繰り返される。図4の例では、浚渫作業は、バケットの下降工程S1、掘削工程S2、バケットの上昇工程S3、バケットの旋回工程S4、土運船への放土工程S5及びバケットの旋回工程S6を含む。
【0043】
バケットの下降工程S1では、バケットを開口状態のまま海底に向けて沈降させる。掘削工程S2では、バケットの開口度を制御して海底面を掘削する。バケットの上昇工程S3では、バケットを閉口状態のまま水面S上に上昇させる。バケットの旋回工程S4では、バケットを閉口状態のまま旋回させる。土運船への放土工程S5では、バケットを下降させ、開口させて放土を行い、開口状態のままバケットを上昇させる。バケットの旋回工程S6では、バケットB11を開口状態のまま旋回させる。このように、グラブ浚渫作業では、バケットの下降(開口状態)、閉口、上昇(閉口状態)、旋回(閉口状態)、下降(閉口状態)、開口、上昇(開口状態)、旋回(開口状態)、が順に行われる。これらが繰り返し実行されることにより、浚渫作業が行われる。
【0044】
なお、バケットの昇降操作、旋回操作及び開閉操作は並行して行われてもよい。例えば、バケットの上昇工程S3とバケットの旋回工程S4とが並行して行われてもよく、また、例えば、バケットの旋回工程S6とバケットの下降工程S1とが並行して行われてもよい。
【0045】
<4.捨石マウンドの重錘締固め作業の流れ>
図5は、捨石マウンドの重錘締固め作業の流れの一例を示す図である。捨石マウンドの重錘締固め作業では、オペレータの操作により重錘の昇降、水平移動、落下(締固め)等が制御される。図5の例では、捨石マウンドの重錘締固め作業は、旋回工程S21、降下工程S22、上昇工程S23、締固め工程S24、及び引き上げ・移動工程S25を含む。
【0046】
旋回工程S21では、クレーンを旋回し、重錘を水平方向における目標位置及び水面からの所定の高さにセットする。降下工程S22では、重錘を降下させて着底させることにより、深度を確認する。上昇工程S23では、重錘を上昇させて目標の高さまで再度引き上げる。締固め工程S24では、重錘を所定の高さから落下させ天端面を打突きし、その衝撃エネルギーにより捨石マウンドの天端面を締め固めさせる。締固め工程S24と上昇工程S23を所定の回数実施したのち、引き上げ・移動工程S25では、次の締固め位置にセットするために重錘を引き上げ、クレーンを旋回させる。
【0047】
<5.具体的な関数表現>
次いで、浚渫作業と捨石マウンドの重錘締固め作業とのそれぞれについて操作内容を表す関数表現の具体例を説明する。操作量指示情報は、一例として、以下のシグモイド関数で表される。
【数1】
ここで、aはゲインであり、tは時刻である。yはシグモイド関数により算出される操作量指示情報であり、例えば、バケット若しくは重錘の高さ、クレーンの旋回角度、又はバケットの開閉度である。
【0048】
(5-1.浚渫作業の場合)
浚渫作業は、上述したように、海底面掘削、バケット上昇、バケット旋回、土運船への放土、バケット旋回、バケット下降、海底面掘削、・・・のサイクルで行われる。このとき、(i)バケットの高さ、(ii)クレーンの旋回角度、(iii)バケットの開閉度、(iv)クレーンの起伏のそれぞれをシグモイド関数で表現する。
【0049】
(5-1-1.バケットの高さ)
図6は、浚渫作業におけるバケットの高さの時間的な変化の一例を示す図である。図6の例で、横軸は経過時間(秒)を示し、縦軸はバケットの高さ(m)を示す。図6の例では、バケットの高さについて、浚渫作業を(a)掘削工程S2、(b)バケットの上昇工程S3、(c)放土工程S5_1、(d)放土工程S5_2、(e)バケットの下降工程S1、の5つの工程に分割し、各動作についてシグモイド関数を決定する。なお、図6の例では、放土工程S5(図4参照)を、放土工程S5_1と放土工程S5_2とに分割している。(a)~(e)の各動作についてシグモイド関数の具体例を説明する。
【0050】
(a)掘削工程S2
まず、掘削工程S2におけるバケットの高さH(m)は、一例として以下の関数で表される。
【数2】
ここで、D1aは、例えば,潮位表基準面(CDL)のような標高基準面からの最大掘削深度(m)であり、D1bは、海底面着底深度(m)である。aは、掘削速度(m/s)に係るパラメータであり、tは、掘削工程S2の開始時刻(s)に係るパラメータである。これらの各パラメータは、一例として、D1a=-10、D1b=-8.5、a=0.3、t=15、である。これらの各パラメータは、一例として熟練したオペレータによる実際の操作内容を関数近似することにより得られる。
【0051】
(b)バケットの上昇工程S3
また、バケットの上昇工程S3におけるバケットの高さH(m)は、一例として以下の関数で表される。
【数3】
ここで、Hは、掘削工程S2の終了時の標高基準面からのバケットの高さ(m)であり、Dは、海底面からの上昇高さ(m)である。aは、上昇速度(m/s)に係るパラメータであり、tは、上昇工程S3の開始時刻(s)に係るパラメータである。上記各パラメータは、一例として、H=-10.0、D=17、a=0.5、t=40、である。これらの各パラメータは、一例として熟練したオペレータによる実際の操作内容を関数近似することにより得られる。
【0052】
(c)土運船への放土工程S5_1
また、土運船への放土工程S5_1におけるバケットの高さH(m)は、一例として、以下の関数で表される。
【数4】
ここで、Hは、バケットの上昇工程S3の終了時の標高基準面からのバケット高さ(m)であり、Dは、放土工程S5_1におけるバケットの高さの変化量(m)である。aは、放土工程S5_1の下降速度(m/s)に係るパラメータであり、tは、放土工程S5_1の開始時刻(s)に係るパラメータである。上記各パラメータは、一例として、H=7.0、D=2、a=2.0、t=71、である。これらの各パラメータは一例として、熟練したオペレータによる実際の操作内容を関数近似することにより得られる。
【0053】
(d)放土工程S5_2
また、放土工程S5_2におけるバケットの高さH(m)は、一例として以下の関数で表される。
【数5】
ここで、Hは、放土工程S5_1の終了時の標高基準面からのバケット高さ(m)であり、Dは、放土工程S5_2のバケットの高さの変化量(m)である。aは、放土工程S5_1の上昇速度(m/s)に係るパラメータであり、tは、放土工程S5_2の開始時刻(s)に係るパラメータである。上記各パラメータは、一例として、H=5.0、D=3、a=2.0、t4=77、である。これらの各パラメータは一例として、熟練したオペレータによる実際の操作内容を関数近似することにより得られる。
【0054】
(e)バケットの下降工程S1
また、バケットの下降工程S1における標高基準面からのバケットの高さH(m)は、一例として以下の関数で表される。
【数6】
ここで、Hは、放土工程S5_2の終了時の標高基準面からのバケット高さ(m)であり、Dは、バケットの下降深さ(m)である。aは、バケットの下降速度(m/s)に係るパラメータであり、tは、下降工程S1の開始時刻(s)に係るパラメータである。上記各パラメータは、一例として、H=8.0、D=16.5、a=0.5、t=100、である。これらの各パラメータは一例として、熟練したオペレータによる実際の操作内容を関数近似することにより得られる。
【0055】
バケットの高さを表す関数の具体例について説明したが、バケットの高さを表す関数は上述した例に限られず、他の関数であってもよい。例えば、バケットの下降工程S1において、空気と水による抵抗値の違いを考慮し、気中部と水中部とでパラメータを異ならせて、別々の関数でバケットの高さを表現してもよい。また、バケットの上昇工程S3についても同様であり、気中部と水中部とでパラメータを異ならせて、別々の関数でバケットの高さを表現してもよい。
【0056】
(5-1-2.クレーンの旋回角度)
次いで、クレーンの旋回角度を表す関数の具体例を説明する。図7は、浚渫作業におけるクレーンの旋回角度の時間的な変化の一例を示す図である。図7の例で、横軸は経過時間(秒)を示し、縦軸は旋回角度(°)を示す。図7の例では、クレーンの旋回角度について、(f)旋回工程S4(土運船への放土時)、(g)旋回工程S6(バケット下降時)、のそれぞれで関数を決定する。
【0057】
(f)旋回工程S4
まず、旋回工程S4におけるクレーンの旋回角θ(°)は、一例として以下の関数で表される。
【数7】
ここで、θは、旋回角(°)であり、tは経過時間(s)である。θは初期角度(°)、Kは、最大旋回角度(°)であり、bは、旋回速度(m/s)に係るパラメータである。tb1は、旋回工程S4の開始時刻(s)に係るパラメータである。上記各パラメータは、一例として、θ=0、K=80、b=0.8、tb1=68、である。これらの各パラメータは、熟練したオペレータによる実際の操作内容を関数近似することにより得られる。
【0058】
(g)旋回工程S6
また、旋回工程S6におけるクレーンの旋回角θ(°)は、一例として以下の関数で表される。
【数8】
ここで、Kは、最大旋回角度(°)であり、Kは、旋回工程S4終了時の残留角度(°)、すなわち次の浚渫作業を行う際の初期角度である。bは、旋回速度(m/s)に係るパラメータであり、tb2は、旋回工程S6の開始時刻(s)に係るパラメータである。上記各パラメータは、一例として、K=80、K=10、b=0.8、tb2=81.4、である。これらの各パラメータは、熟練したオペレータによる実際の操作内容を関数近似することにより得られる。
【0059】
(5-1-3.バケットの開口度)
次いで、バケットの開口度を表す関数の具体例を説明する。図8は、浚渫作業におけるバケットの開口度の時間的な変化の一例を示す図である。図8の例で、横軸は経過時間(秒)を示し、縦軸は開口度(%)を示す。浚渫用のバケットは、上述の図4に示す掘削工程S2~バケットの上昇工程S3において閉口され(閉口工程S31)、その後、放土工程S5において開口することにより放土し(開口工程S32)、バケットの下降工程S1において更に開口する(開口工程S33)し、掘削工程S2において再度閉口される(閉口工程S31)。図8の例では、バケットの開口度について、(h)閉口工程S31(掘削工程S2~バケットの上昇工程S3)、(i)開口工程S32(放土工程S5)、(j)開口工程S33(バケットの下降工程S1)、のそれぞれについて関数を決定する。
【0060】
(h)閉口工程S31
まず、閉口工程S31におけるバケットの開口度R(%)は、一例として以下の関数で表される。
【数9】
ここで、Rは開口度(%)であり、tは経過時間(s)である。Mは、最大開口度(%)であり、cは、閉口速度(m/s)に係るパラメータである。tc1は、閉口工程S31の開始時刻(s)に係るパラメータである。上記各パラメータは、一例として、M=90、c=0.5、tc1=10、である。これらの各パラメータは、熟練したオペレータによる実際の操作内容を関数近似することにより得られる。
【0061】
(i)開口工程S32
また、開口工程S32(土運船への放土工程S5)におけるバケットの開口度R(%)は、一例として以下の関数で表される。
【数10】
【0062】
ここで、Rは閉口工程S31の終了時の開口度(%)であり、Mは、土運船への放土時の最大開口度(%)である。cは、開口速度(m/s)に係るパラメータであり、tc2は、開口工程S32の開始時刻(s)に係るパラメータである。上記各パラメータは、一例として、R=0.0、M=15、c=3.0、tc2=72、である。これらの各パラメータは、熟練したオペレータによる実際の操作内容を関数近似することにより得られる。パラメータM、c、及びtc2は別々に設定されるパラメータであり、各パラメータをそれぞれ適切に設定できれば、開口度Rの時間的変化を適切に表現することができる。
【0063】
(j)開口工程S33
また、開口工程S33におけるバケットの開口度R(%)は、一例として以下の関数で表される。
【数11】
ここで、Rは開口工程S32の終了時の開口度(%)であり、Mは、開口工程S33における最大開口度(%)である。cは開口速度(m/s)に係るパラメータであり、tc3は、開口工程S33の開始時刻(s)に係るパラメータである。上記各パラメータは、一例として、R=15、M=90、c=0.8、tc3=92、である。これらの各パラメータは、熟練したオペレータによる実際の操作内容を関数近似することにより得られる。このとき、開口工程S33は、旋回工程S6と並行して行われてもよく、また開口工程S33の一部又は全部が、旋回工程S6の後に行われてもよい。
【0064】
(5-1-2.クレーンの起伏角度)
次いで、重錘又はバケットを吊持するクレーンの起伏角度を表す関数の具体例を説明する。図9は、浚渫作業におけるクレーンの起伏角度の時間的な変化の一例を示す図である。図9の例で、横軸は経過時間(秒)を示し、縦軸は起伏角度(°)を示す。図9の例では、クレーンの起伏角度について、(k)伏せ工程S4’(土運船への放土時)、(l)起こし工程S6’(バケット下降時)、のそれぞれで関数を決定する。
【0065】
(k)伏せ工程S4’
まず、伏せ工程S4’におけるクレーンの起伏角θ’(°)は、一例として以下の関数で表される。
【数12】
ここで、θ’は、起伏角(°)であり、tは経過時間(s)である。θ’は初期角度(°)、K’は、最大起伏角度(°)であり、b’は、起伏速度(m/s)に係るパラメータである。tb1’は、起伏工程S4’の開始時刻(s)に係るパラメータである。上記各パラメータは、一例として、θ’=30、K’=15、b’=0.8、tb1’=28である。これらの各パラメータは、熟練したオペレータによる実際の操作内容を関数近似することにより得られる。
【0066】
(l)起こし工程S6’
また、起こし工程S6’におけるクレーンの起伏角θ’(°)は、一例として以下の関数で表される。
【数13】
ここで、K’は、最大起伏角度(°)であり、K’は、起伏工程S4’終了時の残留角度(°)、すなわち次の浚渫作業を行う際の初期角度である。b’は、起伏速度(m/s)に係るパラメータであり、tb2’は、起伏工程S6’の開始時刻(s)に係るパラメータである。上記各パラメータは、一例として、K’=15、K’=15、b’=0.3、tb2’=50.0、である。これらの各パラメータは、熟練したオペレータによる実際の操作内容を関数近似することにより得られる。
【0067】
(5-1-4.決定するパラメータ)
上記の関数表現において、D1a、D1b、~D、t~t、a~a、K~K、K’~K’、tb1~tb2、tb1’~tb2’、b~b、b’~b’、M~M、tc1~tc3、c~cの各パラメータを設定すれば、関数によって定められた法則にしたがって作業船を自律動作させるための操作量指示情報を生成することができる。各パラメータは、一例として重機の操作に熟練したオペレータの操作内容を表す時系列データを関数近似することにより得られる。
【0068】
(5-1-5.複数の動作を並行して行う場合)
上述したように、クレーンの起伏の操作、バケットの高さの操作、クレーンを旋回させる操作、及び/又はバケットを開閉する操作は、並行して行われる場合もある。例えば、図6図8の例では、65~80秒の間において、土運船への放土のため、バケットの昇降動作と、クレーンの旋回動作と、バケットを開く動作と、が並行して行われる。各時間において、各動作は、グラフに示される操作値に一致するように(又は差分が小さくなるように)操作される。各動作の足し合わせの結果として、バケットを下げながらクレーン旋回といったように、並行して行われる複数の動作を関数で表現できる。なお、クレーンの起伏操作は主としてその日の作業開始時に発生するが、常に発生する操作ではないので、必要に応じて本関数を用いる。
【0069】
(5-2.捨石マウンドの重錘締固め作業の場合)
次いで、捨石マウンドの重錘締固め作業における操作内容を表す関数について説明する。捨石マウンドの重錘締固め作業における重錘の昇降の操作やクレーン旋回の操作は、上記の浚渫作業における操作と同様に関数で表現できる。また、重錘の開放(制御落下)も関数で表現することができる。
【0070】
(5-2-1.重錘の高さ)
図10は、捨石マウンドの重錘締固め作業における重錘の高さの時間的な変化の一例を示す図である。図10の例で、横軸は経過時間(秒)を示し、縦軸は重錘の高さを示す。図10の例では、重錘を制御落下させる締固め工程S24における重錘の高さH(m)をシグモイド関数で表現する。降下工程S22における重錘の高さH(m)は、一例として以下の関数で表される。
【数14】
ここで、Hは重錘の高さ(m)であり、D1aは重錘の着底深度(m)、D1bは重錘の開放位置(m)である。aは落下速度(m/s)に係るパラメータであり、tは落下開始時刻(s)に係るパラメータである。上記各パラメータは、一例として、D1a=-10、D1b=8.0、a=4.0、t=15、である。上記の関数表現において、D1a、D1b、t、a、の各パラメータを設定すれば、関数によって定められた法則にしたがってクレーンC22を自律動作させるための操作量指示情報を生成することができる。各パラメータは、重機の操作に熟練したオペレータの操作内容を表す時系列データを関数近似することにより得られる。なお、図10において説明の簡便上、捨石マウンド天端面上でのリバウンドによる重錘の高さ変位は明示していない。また、重錘の旋回、上昇に関しては先に記載しているバケットの各工程と重複するため割愛する。
【0071】
<6.操作量指示情報生成方法の流れ>
図11は、情報処理装置10が実行する操作量指示情報生成方法の流れの一例を示すフロー図である。ステップM11において情報処理装置10は、作業船上の重機による土木作業を開始するかを判別する。情報処理装置10は例えば、オペレータにより作業を開始する旨の操作量指示情報が入力された場合に作業を開始すると判別する。土木作業を開始する場合(ステップM11;YES)、情報処理装置10はステップM12の処理に進む。一方、土木作業を開始しない場合(ステップM11;NO)、情報処理装置10は作業を開始するまで待機する。
【0072】
ステップM12において、パラメータ決定部112は、記憶部12に記憶されている過去の作業時の作業環境を表す環境情報に基づき,重機に対する操作指示内容を関数近似して表すためのパラメータPを決定する。ステップM12は本明細書に係る第2ステップの一例である。例えば浚渫作業の場合、パラメータ決定部112は、図6及び図7に示した各工程について以下の(a)~(k)のパラメータを決定する。
(a)掘削工程S2におけるバケットの高さを表す関数のパラメータ
(b)上昇工程S3におけるバケットの高さを表す関数のパラメータ
(c)放土工程S5_1におけるバケットの高さを表す関数のパラメータ
(d)放土工程S5_2におけるバケットの高さを表す関数のパラメータ
(e)下降工程S1におけるバケットの高さを表す関数のパラメータ
(f)旋回工程S4におけるクレーンの旋回角度を表す関数のパラメータ
(g)旋回工程S6におけるクレーンの旋回角度を表す関数のパラメータ
(h)閉口工程S31におけるバケットの開口度を表す関数のパラメータ
(j)開口工程S32におけるバケットの開口度を表す関数のパラメータ
(k)開口工程S33におけるバケットの開口度を表す関数のパラメータ
【0073】
また、例えば捨石マウンドの重錘締固め作業の場合、パラメータ決定部112は、重錘の高さを表す関数のパラメータを決定する。ただし、パラメータ決定部112が決定するパラメータPは上述した例に限られず、パラメータ決定部112は土木工事を行う作業用器具の稼動量を表す他の関数のパラメータを決定してもよい。
【0074】
このとき、パラメータ決定部112は、線形回帰、決定木法、サポートベクターマシン、ニューラルネットワーク等の学習手法により学習済みのモデルを用いてパラメータPを決定する。この場合、一例として、学習済モデルは、重機が過去に行った土木作業の作業環境を表す環境情報を入力データ(入力変数)とし、重機に対してなされた操作内容ごとの操作量と時刻との関係をS字型又は逆S字型の関数で近似する際に使用するパラメータを出力データ(出力変数)として入出力の相関を学習させて構築されている。ただし、パラメータPを決定する手法は上述した例に限定されず、パラメータ決定部112は他の手法によりパラメータPを決定してもよい。
【0075】
ステップM13において、生成部113は、ステップM12において決定されたパラメータPにより定まる関数を用いて、作業船上の重機を操作するための操作量指示情報を生成する。ステップM13は本明細書に係る第1ステップの一例である。
【0076】
このとき、生成部113は、土木作業における重機の複数の動作の各々に対応する関数を用いて、各動作のための操作量指示情報を生成する。生成部113は例えば、ステップM13において、(i)バケットの高さH、(ii)クレーンの旋回角θ、(iii)バケットの開口度R、の3つの操作量指示情報を、それぞれ異なる関数を用いて計算する。計算されたバケットの高さHに基づき、バケットの昇降が制御される。また、計算されたクレーンの旋回角θに基づき、クレーンの旋回を制御する。また、計算されたバケットの開口度Rに基づき、バケットの開閉を制御する。このように、生成部113が生成する操作指示情報には、バケットの高さH、クレーンの旋回角θ、バケットの開口度R、等が含まれる。また、生成部113が生成する操作指示情報には、パラメータ決定部112が決定したパラメータPにより指定される操作指示タイミングが含まれる。
【0077】
ステップM14において、出力部114は、ステップM13で生成された操作量指示情報を出力する。ステップM14は、本明細書に係る第4ステップの一例である。出力部114は、一例として、ステップM13で生成された操作量指示情報を、重機を制御する制御機器に出力することにより、作業船上の重機に土木作業を行わせる。このとき、バケットの昇降、クレーンの旋回、及びバケットの開閉は、順に制御されてもよく、また、並行して制御されてもよい。
【0078】
また、出力部114は、入出力IF14又は通信IF13に接続された出力装置に操作量指示情報を出力してもよい。ここで、出力装置は例えば、ディスプレイ、プロジェクタ、印刷装置、携帯式端末、及び/又はスピーカを含む。一例として、出力部114は、(i)バケットの高さH、(ii)クレーンの旋回角θ、(iii)バケットの開口度R、の計算結果を並べて表示装置に表示してもよいし、スピーカから音声指示してもよい。この表示により、オペレータは各時刻で行うべき操作量を把握することができる。なお上述したように、バケットの昇降、クレーンの旋回、バケットの開閉は個別に操作されるものに限らず、並行して操作される場合がある。
【0079】
ステップM15において、情報処理装置10は、作業を終了するかを判別する。情報処理装置10は一例として、土木作業の対象である海底の状況が所定の条件を満たす場合に、作業を終了すると判別してもよい。また、当初に土木作業において例えば主たる工程である掘削工程S2を行う回数を設定しておくようにしてもよい。他の工程、バケットの下降工程S1、バケットの上昇工程S3、バケットの旋回工程S4などの工程は設定された掘削工程S2の回数に紐づけられて必要な回数実施される。土木作業を終了する場合(ステップM15;YES)、情報処理装置10は処理を終了する。一方、土木作業を継続する場合(ステップM15;NO)、情報処理装置10はステップM12の処理に戻る。
【0080】
このように、1サイクル(ステップM12~M14)の土木作業が終了して、次の土木作業に移る際は、パラメータ決定部112は、ステップM12において各関数のパラメータ(最大掘削深度、掘削速度、掘削開始時刻に係るパラメータ等)を再度決定する。
【0081】
<7.情報処理装置の効果>
以上説明したように本実施形態によれば、情報処理装置10が、土木作業を行う作業船上の重機に対して行われるオペレータの操作内容を表す時系列データを用いて特定された関数であって、シグモイド関数、tanh関数及び指数関数のうちの少なくとも一つを含むS字型又は逆S字型の関数を用いて、作業船上の重機を操作するための操作量指示情報を生成する。シグモイド関数、tanh関数及び指数関数は複雑な関数ではないため、本実施形態によれば、土木作業を行う作業船上の重機を、複雑な演算を行うことなく簡便な関数を用いて自律動作させることができる。
【0082】
また、本実施形態に係る情報処理装置10は、上記土木作業における上記重機の複数の動作の各々に対応する関数を用いて、各動作のための操作量指示情報を生成する。これにより、本実施形態によれば、土木作業を行う重機の複数の動作の各々に適した操作量指示情報を生成することができる。
【0083】
また、本実施形態において、操作量指示情報は、上記重機による操作内容である浚渫用のバケット又は捨石マウンド締固め用の重錘の昇降、上記バケットの開閉、重錘又はバケットを吊持するクレーンの起伏及びクレーンの旋回の少なくとも1つを制御する情報である。そのため、本実施形態によれば、浚渫用のバケット又は重錘を制御するための操作量指示情報を生成することができる。
【0084】
また、本実施形態において、上記関数は、バケット又は重錘の高さ、バケットの開口度、重錘又はバケットを吊持するクレーンの起伏及びクレーンの旋回角の少なくとも1つを示す情報と、時刻との関係を表す関数である。そのため、本実施形態によれば、浚渫用のバケット又は重錘の高さ、バケットの開口度、及びクレーンの旋回角の少なくとも1つを指定する操作量指示情報を生成することができる。
【0085】
また、本実施形態に係る情報処理装置10は、生成した操作量指示情報を用いて作業船上の重機に土木作業を行わせる。これにより、作業船上の重機をオペレータが操作することなく、作業船上の重機に土木作業を行わせることができる。
【0086】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0087】
<1.操作量指示情報生成装置の構成>
図12は、本実施形態に係る情報処理装置10Bの機能構成を示すブロック図である。情報処理装置10Bは、本明細書に係る操作量指示情報生成装置の一例であり、また、本明細書に係る学習済モデル生成方法を実行する学習済モデル生成装置の一例である。
【0088】
情報処理装置10Bは、推定フェーズと学習フェーズとの2つのフェーズを実行する。推定フェーズは、操作量指示情報を生成するフェーズである。学習フェーズは、操作量指示情報の生成に用いる関数のパラメータPの決定に用いる学習済モデルLM1を、機械学習により構築するフェーズである。
【0089】
情報処理装置10Bは、制御部11B、記憶部12B、通信IF13、及び入出力IF14を備える。制御部11Bは、推定フェーズ実行部110、及び学習フェーズ実行部150を備える。推定フェーズ実行部110は、操作量指示情報を生成するフェーズを実行する。学習フェーズ実行部150は、関数のパラメータの決定に用いる学習済モデルLM1を機械学習により構築する。
【0090】
推定フェーズ実行部110は、環境情報取得部111B、パラメータ決定部112B、生成部113、及び出力部114を備える。なお、情報処理装置10と同じ機能を有する構成は同じ符号を用いて説明する。学習フェーズ実行部150は、訓練データ生成部151及びモデル生成部152を備える。
【0091】
環境情報取得部111Bは、土木作業の作業環境を表す環境情報を取得する。ここで、環境情報は、一例として作業船および土木作業対象箇所の平面位置、水深、潮位、地盤条件、掘削深度、捨石マウンド高、外力条件、バケット容量、重錘重量、作業船の仕様、及び作業船の動揺特性、の少なくとも1つを示す情報を含む。作業船および対象箇所の平面位置は、船や作業対象箇所の平面位置座標および船首角度に関する情報である。水深は、土木作業の対象水域である海又は河川の水深である。潮位は、基準面から測った海面の高さである。地盤条件は、砂や粘土等の土質に関する情報である。掘削深度は、作業船上の重機が行う掘削の深さである。捨石マウンド高は、捨石マウンドの高さである。外力条件は、波、潮流、風、等により作業船にかかる外力である。バケット容量は、バケットの容量であり、重錘重量は重錘の重量である。作業船の仕様は、作業船の大きさ、重さ、形状、船種、等を含む。作業船の動揺特性は、一例として、動揺の振幅、周期、位相差、等を含む。
【0092】
環境情報取得部111Bは、入出力IF14に接続された入力装置が入力した環境情報を取得してもよく、また、通信IF13を介して接続された他の装置が送信した環境情報を受信することにより環境情報を取得してもよい。ここで、入力装置は、オペレータにより操作される装置であり、例えば、タッチパネル、キーボード、マウス、スキャナ、及び/又はマイクロフォンを含む。また、入力装置は、作業船の所定の位置に取り付けられた、作業船の動揺を計測する計測装置であってもよい。
【0093】
また、潮の満ち引きで変化する項目(水深)に関して、環境情報取得部111Bが、対象地の潮見表のデータと作業実施時刻とから潮位を計算し、計算結果を環境情報に含めてもよい。
【0094】
パラメータ決定部112Bは、環境情報取得部111Bが取得した環境情報を学習済モデルLM1に入力することにより、操作量指示情報の生成に用いる関数のパラメータPを決定し、決定したパラメータPを記憶部12Bに書き込む。学習済モデルLM1については後述する。
【0095】
訓練データ生成部151は、学習済モデルLM1の機械学習に用いる訓練データを生成する。ここで、訓練データは、(i)作業船上の重機が過去に行った土木作業の作業環境を表す環境情報と、(ii)当該土木作業を行った作業船上の重機に対してなされた操作内容ごとの操作量と時刻との関係を表すS字型又は逆S字型の関数であってシグモイド関数、tanh関数及び指数関数のうちの少なくとも一つを含む関数を規定するパラメータPtと、のセットを1又は複数含む。
【0096】
ここで、訓練データに含まれる環境情報は、作業ログWLに記録される過去に実際に土木作業が行われたときの環境を表す環境情報である。また、訓練データに含まれるパラメータPtは、過去に実際に土木作業が行われた際の重機に対する操作内容の時間的な変化を関数近似することにより得られるパラメータである。
【0097】
訓練データ生成部151におけるパラメータPtは、一般には、作業ログWLに含まれる時系列データを関数で近似する際の適切なパラメータであり、パラメータを広く変化させながらの試行錯誤的な検討によって決定されるものである。ただし、この手法に限定されるものではない。
【0098】
モデル生成部152は、訓練データ生成部151が生成した訓練データを用いた機械学習により学習済モデルLM1を生成する。
【0099】
学習済モデルLM1は、パラメータ決定部112BがパラメータPを生成する際に用いる学習済モデルである。学習済モデルLM1は、上述の訓練データを用いた機械学習により生成される。換言すると、学習済モデルLM1は、(i)作業船上の重機が過去に行った土木作業の作業環境を表す環境情報と、(ii)当該土木作業を行った作業船上の重機に対してなされた操作内容ごとの操作量と時刻との関係を表すS字型又は逆S字型の関数であってシグモイド関数、tanh関数及び指数関数のうちの少なくとも一つを含む関数を規定するパラメータPtと、の相関関係を機械学習させた学習済モデルである。環境情報は本明細書に係る入力変数の一例であり、パラメータPtは本明細書に係る出力変数の一例である。
【0100】
学習済モデルLM1の機械学習の方法としては、例えば、線形回帰、非線形回帰、決定木法、サポートベクターマシン、ニューラルネットワークのいずれかが用いられる。ニューラルネットワークとしては例えば、畳み込みニューラルネットワーク、又は再帰型ニューラルネットワークの手法が用いられてもよい。ただし、学習済モデルLM1の機械学習の手法は上述した例に限られず、他の手法が用いられてもよい。
【0101】
学習済モデルLM1の入力データは、環境情報取得部111Bが取得した環境情報、すなわちこれから行われる土木作業の作業環境を表す環境情報を含む。また、学習済モデルLM1の出力データは、パラメータPを含む。
【0102】
記憶部12Bは、情報処理装置10Bが実行する処理に必要な各種のデータを記憶する。記憶部12は特に、作業ログWL、パラメータP、訓練データTD、学習済モデルLM1を記憶する。なお、学習済モデルLM1が記憶部12Bに記憶されているとは、学習済モデルLM1を規定するパラメータが記憶部12Bに記憶されていることをいう。なお、学習済モデルLM1が記憶部12Bに記憶される態様はあくまで一例であり、学習済モデルLM1は記憶部12B以外の他の記憶装置(例えば外部サーバの記憶装置、等)に記憶されて記憶部12Bから独立して存在してもよい。
【0103】
<2.操作量指示情報生成方法の流れ>
図13は、情報処理装置10Bが実行する操作量指示情報生成方法の流れの一例を示すフロー図である。ステップM21において情報処理装置10Bは、作業船上の重機による土木作業を開始するかを判別する。情報処理装置10Bは例えば、オペレータにより作業を開始する旨の操作量指示情報が入力された場合に作業を開始すると判別する。土木作業を開始する場合(ステップM21;YES)、情報処理装置10BはステップM22の処理に進む。一方、土木作業を開始しない場合(ステップM21;NO)、情報処理装置10Bは作業を開始するまで待機する。
【0104】
ステップM22において、環境情報取得部111Bは、土木作業の作業環境を表す環境情報を取得する。ステップM22は、本明細書に係る第3ステップの一例である。
【0105】
ステップM23において、パラメータ決定部112Bは、学習済モデルLM1に、ステップM22で取得した環境情報を入力することにより、上記操作量指示情報の生成に用いる関数のパラメータPを決定する。
【0106】
ステップM24において、生成部113は、ステップM23において決定されたパラメータPにより定まる関数を用いて、作業船上の重機を操作するための操作量指示情報を生成する。ステップM24の処理の内容は上述の実施形態1に係るステップM13の処理の内容と同様である。
【0107】
ステップM25において、出力部114は、ステップM24で生成された操作量指示情報を出力する。出力部114は、一例として、ステップM24で生成された操作量指示情報を、重機を制御する制御機器に出力することにより、作業船上の重機に土木作業を行わせる。
【0108】
<3.学習済モデル生成方法の流れ>
次いで、学習済モデルLM1を生成する方法について図面を参照しつつ説明する。図14は、情報処理装置10Bが実行する学習済モデル生成方法の流れの一例を示すフロー図である。ステップM31において、訓練データ生成部151は、作業ログWLを参照して(i)作業船が過去に行った土木作業の作業環境を表す環境情報と、(ii)関数を規定するパラメータPtと、のセットを1又は複数含む訓練データを生成する。
【0109】
ステップM32において、モデル生成部152は、(i)作業船が過去に行った土木作業の作業環境を表す環境情報と、(ii)パラメータPtとの相関関係を機械学習させた学習済モデルLM1を生成する。モデル生成部152は、一例として、畳み込みニューラルネットワークの学習手法により学習済モデルLM1を生成する。ただし、学習済モデルLM1の学習手法は上述した例に限られず、他の学習手法が用いられてもよい。
【0110】
<4.情報処理装置の効果>
以上説明したように本実施形態によれば、本実施形態に係る情報処理装置10Bは、(i)作業船上の重機が過去に行った土木作業の作業環境を表す環境情報と、(ii)当該土木作業を行った作業船上の重機に対してなされた操作内容ごとの操作量と時刻との関係を表すS字型又は逆S字型の関数であってシグモイド関数、tanh関数及び指数関数のうちの少なくとも一つを含む関数を規定するパラメータPtと、の相関関係を機械学習させた学習済モデルLM1を生成する。生成された学習済モデルLM1を用いることにより、作業船上の重機を動作させるための操作量指示情報を生成することができる。
【0111】
また、操作量指示情報の生成に最適なパラメータPは、作業船および土木作業対象箇所の平面位置、水深、地盤条件(砂や粘土等の土質)、浚渫深、外力条件(波,流れ,風)、使用する浚渫船の種類等によって異なると考えられる。本実施形態に係る情報処理装置10Bは、過去に行われた熟練オペレータの操作内容を関数近似した際のパラメータPtを入力変数とし、環境情報を出力変数として両者を紐づけて機械学習し、機械学習により学習済モデルLM1を構築する。このように機械学習された学習済モデルLM1を用いてパラメータPを決定することにより、高品質、かつ高効率(速い施工速度)の土木工事を実現することができる。
【0112】
また、本実施形態において、作業環境を表す環境情報は、作業船および土木作業対象箇所の平面位置、水深、潮位、地盤条件、掘削深度、捨石マウンド高、外力条件、バケット容量、重錘重量、作業船の仕様、及び作業船の動揺特性、の少なくとも1つを示す情報を含む。そのため、本実施形態によれば、これらの作業環境により適した操作量指示情報を生成することができる。
【0113】
〔付記事項1〕
上述の実施形態1~2に係る情報処理装置10及び10Bの機能は、単体の装置により実現されてもよく、また、複数の装置が協働するシステムにより実現されてもよい。例えば、推定フェーズ実行部110を実装する第1の装置と、学習フェーズ実行部150を実装する第2の装置とが別体の装置として構成され、第1の装置と第2の装置とが協働することにより上述の情報処理装置10Bが実現されてもよい。
【0114】
〔付記事項2〕
上述の実施形態において、気中と水中とでパラメータを異ならせ、別々の関数を用いてもよい。例えば、バケットの下降工程S1におけるバケットの高さHを表す関数に含まれる各パラメータ(t等)、及び、バケットの上昇工程S3におけるバケットの高さHを表す関数に含まれる各パラメータ(t等)を、気中の場合の関数と水中の場合の関数とで別々に設定してもよい。
【0115】
〔付記事項3〕
また、上述の実施形態において、土運船の接舷位置が変わるケースがある。そのようなケースに対してもデータを収集し、収集した作業ログWLを用いてパラメータPを決定することで、接舷位置に適した操作量指示情報を生成することができる。
【0116】
〔ソフトウェアによる実現例〕
情報処理装置10、10B(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特に制御部11、11Bに含まれる各部)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0117】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0118】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1又は複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線又は無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0119】
また、上記各制御ブロックの機能の一部又は全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0120】
また、上記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータ又はクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0121】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0122】
10、10B 情報処理装置
11、11B 制御部
12、12B 記憶部
110 推定フェーズ実行部
111B 環境情報取得部
112、112B パラメータ決定部
113 生成部
114 出力部
150 学習フェーズ実行部
151 訓練データ生成部
152 モデル生成部
図1
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